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« 吉田都さんとスティーヴン・マックレーのロミオとジュリエット | トップページ | 6/24 英国ロイヤル・バレエ団「うたかたの恋」 The Royal Ballet Mayerling »

2010/07/01

6/29 ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」 The Royal Ballet Romeo and Juliet Miyako's Farewell

ロイヤル・バレエでの吉田都さんの舞台は、思い出に残る一夜となった。

まずは、英国ガーディアン紙に掲載された、この舞台の舞台裏のスライドショーをご紹介
http://www.guardian.co.uk/stage/gallery/2010/jun/30/royal-ballet-ballet

ロイヤルでの最後の舞台を飾るというのに、都さんは踊りも演技も抑制が効いていて、必要以上に自己主張しない。楚々としていて控え目な中に情感と共に音楽があふれ出すという、都さんの踊りの美点が現れた素敵な舞台となった。

登場シーンの都さんは、幼いといってもいいくらいのみずみずしい可愛らしさで、乳母に「胸もふくらんできたでしょう?」って触れられる時にも「えっ?私わからない!」って不思議な顔をしちゃう。大きな瞳を好奇心でキラキラさせながらも、パリスに引き合わされた時には結婚という実感もないものだから、恥らう中にも笑顔を見せてしまうのが可愛い。

マクミラン版の「ロミオとジュリエット」でとても好きなシーンがある。1幕のキャピュレット家での宴。ジュリエットがパリスとパ・ド・ドゥを踊り終わってロミオと初めて目が合って一瞬世界が立ち止まる時。そしてジュリエットがパリスらに促されて上手側へと歩いていくものの、二人は目を合わせたまま。「騎士たちの踊り」の重厚なテーマが一段と高鳴る中で、舞台の左と右に分かれた二人は、群衆の中にいるというのにまるで二人だけの世界にいるかのような瞬間。ふたりが運命的な恋におちたことが良く伝わってくる。

都さんのジュリエットは、あまりにも急速に恋に燃え上がる自分に戸惑い、ためらい、そしてほんの少し恥ずかしそうになる瞬間もあるのだけど、それでも湧き上がる恋心を抑えられず胸の高鳴りをそのまま身体の動きで表していた。大げさになることは一瞬もなく、スピード感があるわけではない。一つ一つの動きに無駄がなく、それでいて実のところは隅々まで神経が行き届いていて、音楽と一体化していてひたすら美しい。至福の時はバルコニーのシーンでやってきて、ふわりと滑らかに音楽を奏でるかのような都さんの踊りを観ていると、夢の中にいる気持ちになり、あまりの美しさにじわ~と涙があふれてきた。

結婚式での都さんは、ロミオと離れたくないという気持ちはあっても、乳母によって「そろそろ行かなくちゃ」と引き離される時には比較的従順で、激しく彼を求めているわけではない。だからこそ、3幕最初の別れの朝のパ・ド・ドゥが胸を締め付けるように目に映る。初めての朝を迎えてもジュリエットはまだ14歳の少女のままで、何で今彼と別れなければならないのか判らない、判りたくない。14歳の女の子の気持ちのままで、身を切り裂かれるような別れの悲しみに苦しんでいる。ロミオが朝の光の中へと消えていって一人残された時には、ほんの少し大人の玄関にたったかのようだったのに、両親やパリスが入ってくるとヤダヤダ、とまた子供に逆戻り。本能のままにパリスを拒否してベッドにもぐりこんでしまう。

パリスを拒んだことで父親に張り倒されたジュリエット。その瞬間にまた「騎士たちの踊り」の音楽が高まると場面は凍りつき、ジュリエットは14歳の女の子でありながらたった一人で世界に戦いを挑んでいることが実感されて、その孤立感に慄然としてしまう。

しかも、とても優雅で気品あふれる佇まい、優しげだったパリスが、思い通りにならないジュリエットに業を煮やして彼女を力づくでものにしようとするのだから、残酷な展開だ。彼の腕の中で、すでに命のない人形のように踊るジュリエット。そんな哀しく辛い場面でも美しい形を保ち、完璧なアティチュードでパリスに導かれジュリエットはプロムナードする。その隙のないプロムナードの中に、まだほんの少女なのに、自らの意思に沿わない結婚を強いられることの悲しみと息苦しさが伝わってくる。

一人になりベッドの上に座り正面を見据えた都さんは、悲しみの色が少しずつ和らぎ、やがて色づくかのように晴れやかな笑顔へと花開いてゆきロレンス神父の元へと駆けていく。まるで啓示を受けたかのように。これが恋を知ったことで彼女が獲得した強さなのだ。仮死状態になる薬を手にした時のジュリエットの慄き。ためらうあまりベッドの陰に隠れてしまうほどだけど、覚悟を決めて一思いに飲み干す。

目覚めた時、ジュリットは天を仰ぐように腕を伸ばして、しばらくしてようやく自分が暗い墓所にいることに気がつく。ロミオが横たわっているのを見つけてほんの一瞬だけ喜び、彼に触れ、揺さぶり、彼にもう命がないことに気がつくと小さく叫び声を上げる(決して鳴り響くような叫び声ではない)。ロミオが飲み干した毒薬の残りを飲もうとするも残っていないことが判ると、迷わず落ちていた短剣でお腹を一突きし、一度は倒れるものの最後の力を振り絞って彼の元へと這っていく。そして彼の手にようやく触れることができたところでジュリエットは天を仰ぎ、微笑をうかべて死んでいく。

日曜日に同じキャストで観た時に、ここでの都さんの演技に少々驚かされたのだけど、二度目に観て確信した。最後にジュリエットの目に映ったのは、天国で彼女を待っているロミオの姿だったことを。「ロミオとジュリエット」は悲劇ではあるけれども、死を乗り越えるほどの強い愛で結ばれたロミオに出会えたジュリエットは幸せだったのだ。その穏やかな微笑みは、やはり年若い少女のものだった。


一方、都さんのロイヤル・バレエさよなら公演のパートナーに選ばれたスティーヴン・マックレー。赤みがかった金髪の若々しい容姿の彼の持つ疾走感は、短い生涯を一瞬のうちに駆け抜けたロミオにぴったり。特にアレグロでの動きが素晴らしくて、コマのようにくるくるくるくるといつまでも回っている超高速シェネや、空間を切り裂くようなアントルラッセに連続ソ・ド・バスクも鮮やか。サポートも的確で、都さんが一番美しい体勢を保つことができるようにリフトをキープできていて、恋の高揚感をかもし出すのに成功していた。彼の演技は比較的あっさりしているものの、要所要所はしっかりと押さえていて、ロミオという青年の性格付けはくっきりと見せることができていた。冒頭でロザラインに迫るところの情熱的なところから始まり、ジュリエットと出会って恋を知った後ではなじみの娼婦につれなくしつつもおでこにチュっ!とキスしてみたり、ほんのりと甘さが漂っているところがいい。マキューシオとティボルトが剣を交える前に止めさせようとする演技などもしっかりと伝わってきた。気品とやんちゃさと甘さが同居していて、これから先どうやって成長していくかとっても楽しみ。同時に、ロイヤルの引退公演に若い彼をパートナーとして選んだ都さんは、次の世代へとバトンを渡したんだなと感慨に浸らせてくれた。

ロイヤル・バレエの舞台が見ごたえたっぷりなのは、脇役のダンサーの演技の充実が大きい。愛人を失った悲しみを絞り出すようなキャピュレット夫人を演じるジェネシア・ロサートの慟哭、執念だけで最後に立ち上がってロミオに襲い掛かろうとしていたトーマス・ホワイトヘッド演じるティボルトの気迫。厳しさの中にも娘への愛情が感じられるキャピュレット公ギャリー・エイヴィスの美丈夫ぶり。ロレンス神父や乳母、そして街の人々まで、貴族から娼婦まで一人一人が舞台の上でしっかりと息づいているのを感じられた。

そんな素晴らしい演技者、舞台人が揃ったロイヤル・バレエで踊り続けられた都さんの舞台人生は厳しくも幸せなものだっただろう。そして、これから先も都さんの舞台上の人生は続いていくし、ロイヤル・バレエも世代交代を重ねながらもしっかりと息づいていくのだと思った、歴史的な一晩だった。


うず高く詰まれた花束、舞台上に集結したダンサーたち(私服に着替えている人もいた)、そしてスタッフに祝福された都さんだけど、一歩脇に引いて彼らへも拍手を贈るようにと促している姿が印象的だった。エドワード・ワトソン、ジョナサン・コープ、ケヴィン・オヘア、そしてモニカ・メイソン芸術監督らにハグされ花束を渡されながらも、最後まで周囲を立てることを忘れない都さんの気配りが感じられて、立派な人ほど謙虚なんだな・・・って改めて思ったのだった。

東京公演最終日の模様はNBSのROH公式ブログでも
http://www.nbs.or.jp/blog/roh2010/contents/2010/07/post-48.html

ジュリエット:吉田都  Miyako Yoshida
ロミオ:スティーヴン・マックレー Steven McRae

マキューシオ:ブライアン・マロニー Brian Maloney
ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド Thomas Whitehead
ベンヴォーリオ:セルゲイ・ポルーニン Sergei Polunin
パリス:ヨハネス・ステパネク Johannes Stepanek

キャピュレット公:ギャリー・エイヴィス Gary Avis
キャピュレット夫人:ジェネシア・ロサート Genesia Rosato
エスカラス(ヴェローナ大公):ベネット・ガートサイド Bennet Gartside
ロザライン:タラ=ブリギット・バフナニ
乳母:クリステン・マクナリー
僧ロレンス:アラステア・マリオット
モンタギュー公:アラステア・マリオット
モンタギュー夫人:ローラ・マッカロク

ジュリエットの友人:リャーン・コープ、べサニー・キーティング、イオーナ・ルーツ、
エマ=ジェーン・マグワイア、ロマニー・パジャク、サビーナ・ウエストコム
3人の娼婦:ラウラ・モレーラ、ヘレン・クロウフォード、フランチェスカ・フィルピ
マンドリン・ダンス:ホセ・マルティン、
ポール・ケイ、蔵健太、ミハイル・ストイコ、アンドレイ・ウスペンスキー、ジェームズ・ウィルキー
舞踏会の客、街人たち:英国ロイヤル・バレエ団


指揮:ボリス・グルージン
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

素晴らしい舞台でしたね。shine
ロイヤルの皆さんに愛されていた都さんの引退を、寂しいながらも笑顔で送り出そうという
カンパニーの温かさを感じました。
この公演がテレビ放映されるのを気長に待ちたいと思います。

まだまだ綺麗に踊れる都さんなので、ガラなどで舞台を観ることが出来るのは楽しみです。

ガーディアンの写真は臨場感があって、素敵ですね。

Naomiさま
こんばんは!素晴らしいレビューありがとうございます。
感じたこと全てを語って下さっていて
あの日の舞台が蘇ってきて、またまた感動しました。
皆に愛されていたのが伝わってくるセレモニー
都さんのロイヤル最後の舞台に立ち会えた事、宝物になりました。
秋の放映が待ち遠しいです!
ロイヤルを堪能できた1週間・・・クタクタになりましたが
毎日充実してました。

ロイヤル終わって淋しくて虚脱感いっぱいです。。。

ガーディアン紙の写真素敵ですよね。
naomiさんはもうご存知かもしれませんが、写真を撮影したJeremyさんの名前を検索してみたら公式サイトが出てきたので、そこから29日の写真がたくさん載っているページを見つけました!
http://jeremysuttonhibbert.photoshelter.com/gallery/20100630-Japan-Royal-Ballets-Romeo-And-Juliet/G0000_fg3AeszR.Q/P0000toEnFw8IJFY

都さんとスティーブン、こんなふうだったんだ~と思うとジーンときてしまいました。。早く動いてる姿をTVで見たいです~♪

くみさん、こんばんは。

本当に最後のカーテンコールは暖かい雰囲気でいっぱいでしたよね。「プロフェッショナルの流儀」のための撮影もあるとのことで楽しみです。
都さん、まだガラなどには出演予定とのことですし、私も「バレエの神髄」は観にいくんですが、全幕でも機会があれば主演してほしいですよね。踊りを観ているととても引退をするには早すぎるとしか思えませんでした。

エミリーさん、こんばんは。

まだまだ書き足りないことがあるような気がするのですが、でもあの時の思いを共有できて嬉しいです!
「リーズの結婚」から始まって10日間ほど、連日の上野通いは確かにクタクタになりましたが、充実していましたよね。放映の方も本当に楽しみです♪

プリマローズさん、こんばんは。

私もロイヤルの公演が終わってちょっと虚脱感に襲われています。しばらくバレエを観る予定もないし。

ところで、Jeremyさんのサイト、教えてくださってありがとうございました!気がついてなかったのですが、素敵な写真が満載ですね。せっかくこれだけの写真があるのだから、ガーディアン以外でもどこかで使われるといいなあ。

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