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2010/06/12

6/9 ニューアドベンチャーズ「マシュー・ボーンの白鳥の湖」 Matthew Bourne's Swan Lake

2010年6月9日(水) 19時公演 

ザ・スワン:ジョナサン・オリヴィエ
王子:ドミニク・ノース
女王:ニーナ・ゴールドマン
執事:スティーヴ・カーカム
ガールフレンド:マドレーヌ・ブレナン
幼年の王子:フィル・ジャック・ガードナー

マシュー・ボーン版「白鳥の湖」の日本公演は2005年以来5年ぶり。その間に、この作品に魅せられるあまり、パリ、オーストラリアのパース、ソウルと追いかけて行ったのだけど、2007年の夏に観たのが最後だった。3年の間隔が開いてからこの作品を観て、何回観ても新しい発見があって面白い作品だと思うとともに、この作品と共に過ごした日々がとても懐かしく感じられたのだった。

このボーン版を観てからの何年かの間に、古典の「白鳥の湖」の全幕も数え切れないくらい観ていて音楽や振付の細かい点まで記憶するようになっていた。そして改めてこの版を観てみると、音楽のテンポを変化させることによって作品にまったく新しい生命が吹き込んだボーンの手腕には唸らされる。2幕の群舞や王子とザ・スワンのパ・ド・ドゥでは、ボーンがプティパ/イワーノフの原振付をよく理解し、敬意を払った上で換胎奪骨しているのが判って微笑ましい限り。娯楽性、ブラックユーモア、音楽へのこだわり、そして王子の痛ましいまでの魂の彷徨と、さまざまな要素が巧みに重ねあわされて本当によくできた作品だ。

初日のザ・スワン/ザ・ストレンジャー役はジョナサン・オリヴィエ。元ノーザン・バレエ&アルバータ・バレエのプリンシパル。マリインスキーのダニーラ・コルスンツェフや、リチャード・ギアによく似た面差しで、野生動物としてのザ・スワンのワイルドさやセクシーさはあまりない。だが長身ですらりとして均整の取れたプロポーションの持ち主で、何よりも白鳥を踊るにふさわしい腕の使い方が美しい。けれども、あくまでも男らしい美しさなのである。足の甲やつま先がよく伸びているし、音楽性にも優れているし、何よりも跳躍が大きくて力強い。いいダンサーを見つけてきたね、マシューって嬉しくなってしまった。ザ・スワンの役柄というのは、今回は特に”あまり感情表現を表さず、王子から見て理想的な存在"として演じられているとのことだが、その解釈に非常に説得力があった。

ザ・ストレンジャー(古典で言えばオディール)を演じている時のジョナサンは、ちょい悪おやじという風情。今までのザ・ストレンジャーは登場した後に女王の腕を嘗め回す演技をしていたのだけど、今回はそれはなし。あからさまな色気や悪の魅力というのは出さなくてストイックで寡黙、男らしいストレンジャー。革パンツに包まれた脚がすらりとしているし、ルースカヤの音楽に乗せたソロの動きが敏捷でカッコいい。黒鳥のグランパの王子のヴァリエーションの曲で女王とデュエットを踊った後に大きなトゥール・アンレールを跳んで座り込むように着地するのだけど、このときの跳躍がもうびっくりするくらい高かった。ジョナサンはコーダでのミュージカルのような群舞を率いてのスピーティなダンスでは、見事な音楽性を発揮していて、本当に踊りの上手い人なんだなって感じた。

一方、王子役はドミニク・ノース。2005年の公演では王子に止めを刺す9番スワンだったけど、その後オーストラリアなどで王子を踊ったのを観ている。2005年の時にはたしかまだ10代で非常に若い感じだったし、2007年の王子は演技がとても薄かった。今回、やや線は細いもののかなり大人に成長していて、しかも大変な美青年になっていたのに驚いた。ドミンクはもともと踊りは綺麗なダンサーだったわけだけど、今回もジョナサンとのパ・ド・ドゥでユニゾンで踊っていても同じ高さでジャンプしていたりして、素晴らしかった。彼が演じる王子は、他の王子役ダンサーが演じたような、愛情に飢えプレッシャーに押しつぶされそうになっている屈折した王子ではない。少々気は弱そうだけど、素直に育ったまっすぐな青年で、ザ・スワンとの出会いによって新しい世界を知って希望に満たされていく様子が伝わってきた。演技面での作りこみはあまり感じられないのに、4幕では豹変。
妄想と悪夢から目が覚めたと思ったら、そこには傷ついたザ・スワン。仲間の白鳥たちに襲われて血を流しているその姿に衝撃を受けて彼の意識はさらに乱れてしまう。王子はここで彼と一緒に行きたいと願うものの、ザ・スワンの死で心を千々に打ち砕かれて涙を流しながら崩れ落ちる。王子のわが身を切られているかのような苦しみを伴った慟哭には思わず引き込まれてしまい、こちらも涙せずにはいられない。

あと出演者で印象的だったのは1幕の劇中劇の蛾の乙女ときこり役の二人。蛾の乙女は友達によればアシュリー・ショー、きこりは幼年の王子役でもあるフィル・ジャック・ガードナー。蛾の乙女はこの作品で唯一ポアントを履いて踊る役。そしてきこりが素晴らしい高い跳躍と見事なピルエット、超コミカルでキュートな演技で笑えた。今までも数多くの芸達者なダンサーが踊ってきた役だけど今回の彼は本当に可笑しくて、何回もこのシーンを見ているのに思わずクスクス。ガールフレンド役のマドレーヌ・ブレナンもすごく芸達者で、飼い犬のコーギーに吠えられてキャーっと声を上げてみたり劇中劇でひどい観劇態度を見せていたと思うと、やがては王子に同情的に変化していくところをうまく見せていた。

だがやっぱりこの作品の凄さというのは、圧倒的な迫力の2幕と、恐ろしくも美しい第4幕の白鳥たちの群舞にあるのだと思う。ただ単純に男性のダンサーたちが白鳥の湖のコール・ドを踊っているというだけではない。2幕では彼らは王子に、生きること、自由であることの美しさとかけがえのなさを踊りを通して伝えているのが胸に迫ってきて、思わず熱いものがこみ上げてくる。4幕では、圧倒的に美しくドラマティックなチャイコフスキーの音楽に乗せて、野生動物としての厳然とした掟、生きていくことの苛烈さを伝えている。王子のベッドの上に白鳥たちが群がり、ザ・スワンとユニゾンの動きで対峙するところの身震いする感覚、時代が移っても、いつまでもこの作品は新鮮さを保ち続けているのは、王子を中心としてザ・スワン、ストレンジャーの人物造形のユニークさもさることながら、この2幕、4幕のワイルドな白鳥たちがうちのめされてしまうような世界観を魅せているからなのだと思う。
この身震いする感じを味わうために自分はせっせとこの舞台を観に通うんだなって実感する。とりあえずあと2回分のチケットは確保済み!

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさん!
HESSです。こんにちは!
いよいよ観られたんですね。私は2回観ましたが、1回目がジョナサン&サム・アーチャー、2回目(最終日)がジョナサン&ドミニクでした。ジョナサンは確かにとてもいいダンサーで、ザ・スワンのほうが特によかったですね。本当に大きく見えました。1回目は公演3日目でしたので、女王様ともそれほど盛り上がりませんでしたが、最終公演では、もう、ノリノリで、腕嘗め回すだけでなく、お胸まで触ってましたよ。^^;娘と観てたんですが、ちょっとあせりました。
王子は、私はサムの方がもう少しよかったかな、という感じです。ドミニクはとても明るい王子で、ザ・スワンに触れるときにも、恐る恐るではなくて、「わー、これはなんだろう!」ってな感じで、すぐに手を差し伸べるところとかは本当に小さな男の子のようで可愛いと思いました。
しかし、今回でソウル公演4度目ですが、何回観てもやはり好きですね。2年後くらいにまた来てほしいです。今度はまたどんな素敵なダンサーが踊ってくれるのか、本当に楽しみです!^^

naomiさん、こんにちは。
12日最初の公演に行ってきました。
私は今回が始めての「マシュー・ボーンの白鳥の湖」でした。
予備知識まったくなしで観たので、最初はどうなることかと思ったのですが、最後は涙が止まりませんでした。
ジョナサン・オリヴィエすばらしかったです。
naomiさんは「2回分のチケットは確保済み」との事。私も、もう1回観てしまいそうです。

HESSさん、こんにちは。

韓国の感想、ありがとうございます!日本からもけっこう観にいった人が多かったようで。サム王子は残念ながらまだこちらでは出演がないのですよね。HESSさんはじめ、サムも良かったとのことと聞いて、一度は観られればなって思います。ドミニク王子は本当に可愛いですよね。ジョナサンも、どんどん途中から乗っていたとのこと、千秋楽に向けてどのように変化していくか、楽しみです。私は明日(もう今日ですが)のマチネを観て、それから最終日なのです。
韓国は羨ましいことに、日本より1回多く来ているんですよね~。本当にあと2年後くらいに観られれば良いなって思います!

アカショウビンさん、こんにちは。

初めてのマシュー版スワンレイクで感動したって聞いて、私も嬉しいです~。この作品、リピートするたびに新しい発見があるし、キャストによっていろいろと違いがあってハマるんですよね!今回、後半の公演がロイヤル・バレエの来日に丸かぶりでこれ以上はチケットは買い足せないと思うのですが、重なっていなかったらどんなことになっていたか(汗)本当にジョナサン・オリヴィエは予想以上に良かったです!

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