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2010/04/24

国立モスクワ音楽劇場バレエ ブルメイステル版「白鳥の湖」

スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念
国立モスクワ音楽劇場バレエ ブルメイステル版「白鳥の湖」
Stanislavski & Nemirovich-Danchenko Moscow Academic Music Theatre "Swan Lake"
(2010.4.18 オーチャードホール)

振付・演出:ウラジーミル・ブルメイステル[1953年]
美術:ウラジーミル・アレフイエフ

オデット/オディール:ナターリヤ・ソーモワ
ジークフリート王子:ミハイル・プーホフ
王妃:ガリーナ・イスチェンコ
悪魔ロットバルト:アントン・ドマショーフ
道化:デニス・アキンフェーエフ

2007年のモスクワ音楽劇場バレエのブルメイステル版「白鳥の湖」は素晴らしい公演だった。ブルメイステル版がストーリーがしっかりした演出であることもさることながら、主演のタチアナ・チェルノブロフキナとゲオルギー・スミレフスキーの圧倒的な存在感が印象深くて心に残る舞台だった。

今回の来日公演でも、またあのブルメイステル版「白鳥の湖」が観られると思って楽しみにしていて、チェルノブロフキナは残念ながら今回の来日メンバーには入っていないけれども、スミレフスキーの王子を期待してチケットを取った。彼のエレガントで行き届いた踊りに加えて、王子のひたむきさや純粋さを伝え、台詞が一つ一つ聞こえてきそうな演技に魅せられていたのだ。

ところが、スミレフスキー夫人であるナタリア・クラピーヴィナがおめでたのために降板。それに伴って、「白鳥の湖」のキャストが玉突きで変更となってしまい、スミレフスキーが観られなくなってしまった。これが痛かった。代役のミハイル・プーホフは前回の来日公演の「くるみ割り人形」の王子で観ているのだけど、どうも踊りが重くて好みではなかったのだ。

やはりプーホフの王子は物足りなかった。演劇性が重要なブルメイステル版「白鳥の湖」で、あまり演技をしていないのだ。彼の王子は、ある意味では面白かったといえるかもしれない。エレガントさがまったくなくて王子らしくないというか、やんちゃで傲慢な王子だったからだ。結婚相手を選びたくないのも、母親に対する反抗心ゆえのことであり、もっと遊びたかったからという風に見えた。ブルメイステル版だと、1幕で王子は一人の姫に目をつけて彼女とパ・ド・ドゥを踊るわけだけど、それが結婚前の王子のおイタのように見えたから、そういう意味では面白かった。遊ぶだけ遊んでみて、やっぱりやーめたって感じだったのだ。プーホフの、あのエフゲニー・イワンチェンコ張りのオールバックの髪型だったのが、ますますそんなゴーマンな雰囲気に拍車をかけていた。でも、イワンチェンコほどの迫力というか、ブランデーグラスの似合う重厚な行き遅れ王子ではなくて、もっと軽くてチンピラなんだよね。
(こんなことを書いていると、なんだかんだ言って楽しんだみたいに読める・・・実際やっぱり面白かったのかも)

ナターリヤ・ソーモワはプロポーションに恵まれていて、清潔感のあるバレリーナ。オデットはとても丁寧に踊っていて美しかったけど、インパクトは弱かった。オディールは愛らしく、迫力や色香はまったくないけれど魅力はあったしオデット=オディールなのがよく判るから王子も間違えるよね、って思わせた。彼女の楚々とした踊りは好感度は高かったから、これからに期待したいところ。白鳥のコール・ドは美しく、よく揃っていたけどオーチャードの舞台が狭いためか、24人しか舞台に乗っていなかった。ブルメイステル版のコール・ドのフォーメーションはちょっと変わっていて空間をうまく使っており、、自在に変化していく様子がとても面白い。群舞の中にも意思というものが感じられて、作品の演劇性を増幅しているようなのだ。

それにしても、ブルメイステル版の3幕の演出は魔術的。こんなにもドラマティックでわくわくさせ面白い白鳥の3幕も他にはないって改めて思った。民族舞踊のダンサー全員がロットバルトという設定はよくあるパターンではあるものの、彼らは単なる賑やかしとしてのディヴェルティスマンではなく、物語を進める上で不可欠の存在として登場しているし、それぞれが邪悪でセクシーで目が離せない。オディールはキャラクターダンスの間に、まるで魔法のように現れては消えて王子を幻惑する。魔術師ロットバルトがマントをさっと引くと、イリュージョンのごとくオディールが出てくるところの鮮やかでカッコいい演出といったら!ずらりと壁のように並んだロットバルトの手下一味の妖しくもスタイリッシュな姿にはもう~ぞくぞくする。また3幕の衣装がゴージャスで重厚で美しいのだ。今まで観た「白鳥の湖」の3幕の衣装の中でも最も華麗で、しかもドラマを盛り上げる重要な要素として活躍していた。スペインの赤、ナポリのイエローが黒やゴールドと絡み合ってバロックな雰囲気を作っていたけど、一番素敵だったのはマズルカの群青のような、夜のような深いブルーで、万華鏡のように照明をキラキラと映し出していて、美しい悪夢のようだった。このキャラクターダンスの間は至福の時間が流れていたといってもいい。

この版の3幕PDDのコーダの、畳み掛けるような展開がすごく好きなのだけど、ここやマズルカで、ティンパニーが暴走するがごとく鳴りまくっていたのが面白かった。席が2階バルコニーだったでオーケストラピットの中が見えたのだけど、意外と編成が小さくて、中でも弦楽器が少なかったような。2幕のアダージオでのソロなどは音の響きが素晴らしかったが、弦の音の薄さに対して、打楽器の爆音が強く出てしまってバランスが悪かった感じがした。それでも、やはり劇場付のオーケストラということで舞台との一体感があり、こういう演奏でバレエが観られるのは幸せなことだなあ、としみじみと思ったのであった。

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コメント

こんにちは  naomiさん

今回の「白鳥の湖」はキャスト変更の影響が大きかったようですね。

ただ第3幕の、王子に思考する余裕さえ与えない、怒涛のごとき魅惑の踊り・音楽・演出は、豪華な衣装と相俟って更にパワーアップし、見応えのある総合芸術を創り上げたようで、この幕だけでも見たかったという思いです。
次回を期待いたします。(できれば東京文化会館で、、)

またE・イワンチェンコを挙げて頂いたので、小型版の王様の様な王子の風貌や踊りが想像できましたし、更に、D・コンスルツェフならブルメイステル版の王子をどの様に演じるのかしら、という想いにも駆られました。

これからもnaomiさんの辛口で素敵なコメントを楽しみにしています。      uzume

uzumeさん、こんばんは。

ブルメイステル版の3幕は本当に面白いです!DVDでもパリ・オペラ座のとミラノ・スカラ座のが出ているけど、やっぱり生で観ると何倍もわくわくしてしまいますね。そういえば2007年の大晦日でのスカラ座での「チャイコフスキー・ガラ」もブルメイステル版白鳥の3幕変形版でした。音楽の使い方もちょっと変わっていて、オディールのグランフェッテの曲が1幕に登場するし、ヴァリエーションはチャイコフスキー・パ・ド・ドゥの曲だし、すごくオリジナリティがあるんですよね。この版の面白さは伝わってきていると思うので、きっと遠くない将来にまたダンチェンコの白鳥来日公演が実現するはず!

ダニーラ・コルスンツェフの白鳥王子、観たいですね!

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