3/10 ニーナ・アナニアシヴィリのジゼル(まだこれから)
遅くなってしまったので、一言だけ。
ニーナのジゼルのひたむきさと純粋さ、「ジゼル」を観ていてこんな気持ちになったのは初めてです。ウィリとなってもなおイノセントな少女のままアルブレヒトを愛しぬき、体温を保ったまま情感豊かに演じられたジゼルを観て思わず涙がこぼれました。1幕では、生き生きとしていてまるでジゼルという女の子が本当に存在しているかのような演技は素晴らしかったです。狂乱のシーンでのニーナの、あまりにも純粋すぎたゆえの狂気を感じさせた壊れ方には胸を締め付けられました。でも、一幕ではヴァリエーションでジャンプ系をほとんど省略していて、ニーナも踊れなくなったのかと切なくなりました。とは言ってもひとつひとつのラインは美しく、回転も正確でミスらしいミスも見当たらないところがすごいのですが。
しかし、2幕では多少振付は変えていたものの、アダージオではきちんとスーブルソーもアントルシャもきれいに跳んでいて、たおやかで美しかったです。ニーナのしなやかな腕の表現力の雄弁さには目を瞠った。アルブレヒトを強く愛するがゆえに、ウィリの姿としてこの世にとどまり、かれを守り抜く、ジゼルの強いひたむきな意思は、少女独特の強さのように見えましたが、ニ幕の間,ミルタとの葛藤の中でどんどん大人になって行くのが見えました。なのに、ようやくアルブレヒトが救われた時に見せた表情、それはやはり愛する人との別れに悲しむ一人の少女のもので、なんと胸を締め付ける哀しくも美しい表現だったことか!
ウヴァーロフの誠実な(アルブレヒトに誠実って言葉を使うのはとっても変ですが)パートナーぶりと、愛が全開の2幕の踊りにも心打たれました。ニーナもウヴァーロフも、持てるものをすべて出し切って、最高の舞台にしようという心意気が伝わってきました。その心意気が、テクニックとかそんなものをはるかに超越して、バレエの神様が降臨したような奇跡を呼んだといえます。
このような心に残る舞台を見せられると、なかなか寝付けそうにないです。とりあえず日曜日のロミオとジュリエットの安い席を押さえたので、楽しみにしているような、せつないような。
音楽 : アドルフ・アダン
台本 : テオフィル・ゴーチエ,
ジュール=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ
振付 : ジャン・コラーリ,ジュール・ペロー,
マリウス・プティパ
振付改訂 : アレクセイ・ファジェーチェフ
改訂振付補佐 : タチヤーナ・ラストルグーエワ
装置・衣裳 : ヴャチェスラフ・オークネフ
照明 : パウル・ヴィダル・サーヴァラング
指揮 : ダヴィド・ムケリア
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団
<出 演>
ジゼル : ニーナ・アナニアシヴィリ
アルブレヒト : アンドレイ・ウヴァーロフ
ベルタ(ジゼルの母) : ニーノ・オチアウーリ
アルブレヒトの友人 : ユーリー・ソローキン
公爵(バチルドの父) : パータ・チヒクヴィシヴィリ
バチルド(アルブレヒトの婚約者) : マイア・アルパイーゼ
ハンス(森番) : イラクリ・バフターゼ
ジゼルの友人 : アンナ・ムラデーリ,ニーノ・ゴグア
テア・コパレイシヴィリ,エカテリーナ・スルマーワ
ニーノ・アルブタシヴィリ,エカテリーナ・シャヴリアシヴィリ
パ・ド・シス : テオーナ・アホバーゼ,ニーノ・マハシヴィリ
ラーナ・ムゲブリシヴィリ,ニーノ・マティアシヴィリ
ワシル・アフメテリ,オタール・ヘラシヴィリ
メルガリエフ・ヤッサウイ
パ・ド・シスでのソロ:ヤサウイ・メルガリーエフ
ミルタ(ウィリの女王) : ラリ・カンデラキ
ウィリたち : エカテリーナ・スルマーワ,アンナ・ムラデーリ
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