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« パリ・オペラ座バレエ 2010-2011シーズン公式発表 Saison 2010-2011 à l'Opéra de Paris | トップページ | ロイヤル・バレエ2010-2011シーズン Royal Ballet 2010/2011 Season Announced »

2010/03/10

3/5 グルジア国立バレエ「ロミオとジュリエット」(3幕~完)

「ロミオとジュリエット」という作品の面白さのひとつには、劇中での世界観と視野の変化があると思う。

街の喧騒の中で、大勢の人々の中で始まる1幕。ジュリエットが登場するまでにも少し時間がかかるくらいで、ヴェローナの街という大きな舞台から始まって、さまざまな登場人物が交錯するキャピュレット家の宴へ。だけど、二人の恋が走り出すと、次第に外の世界の存在感はどんどん希薄になって、ロミオとジュリエット(中でもジュリエット)の二人がくっきりと際立っていく。バルコニーのシーンでも、まるで、この世界にはこの二人しか存在していないかのように感じられる。マキューシオとティボルトが死を迎える場面が、モブシーンの終わり。やがてパリスも両親もジュリエットにとっては存在しないものも同然の存在へとなっていく。

最後は暗い墓所でのたった二人の世界、それも二人同時には存在できなくて、仮死状態または本当に死んでいる恋人だけがいるという、視点がたった一人の世界へと収斂していく。

マクミランが秀逸なのは、二人の死でバレエを完全に終わらせて、この狭い視点で完結させたところ。ラヴロフスキー版では、二人の死をきっかけに両家の和解が成立するという幕切れになっている。平和への祈りという意味ではこちらが正解なのだろうけど。

****

Img_0252

「ロミオとジュリエット」3幕は、ジュリエットとロミオの別れの朝のシーンから。このシーンは、初めての朝を迎えた愛し合う二人が離れなくてはならず、それが今生の別れになってしまうという胸を締め付けられるシーン。今まで観て来たマクミラン版の多くのジュリエット役が、急にこの場面で大人びてアンニュイ感を漂わせ始めたりしていた。でも、ニーナのジュリエットは、まだ恋とは何かということを知り始めたばかりの少女であり、この場面でもまだ10代半ばの女の子のまま。ロミオには行かないでほしいと一生懸命引きとめようとしながらも、これが本当に最後だとは思わっていないのが伝わってくる。悲しげに、だけど優しくジュリエットを抱きしめて、ロミオは行ってしまう。

その余韻も冷めやまぬうちに、ジュリエットの両親とパリスが入ってくる。これまでパリスは端正で気品のある貴公子然としていたのに、ここでは彼は嫌がるジュリエットに対してけっこうしつこい。ジュリエットはもうめちゃめちゃ彼のことを嫌っているのがわかった。ロミオが出て行った窓のカーテンを開け、外の風景を幾たびも見ては、彼のことを強く想うジュリエット。

ジュリエットがなんとしてでもロミオと結ばれるために、決意を胸に秘めるシーン。マクミラン版では、ジュリエットはベッドの上でじっとしながら正面を向き、ほんの少しの表情の変化で重大な決意を胸に抱くさまを描いている。ジュリエット役のバレリーナにとっては演技の見せ場である。ここでジュリエットの成長振りと強さが表現されている。ラヴロフスキー版では、ジュリエットはそのような"静”の状態ではなく、強い意思を全身のしなやかな動きで表しているようであった。そしてここでも、まだまだ少女のままのジュリエットの姿をニーナが好演。たった数日でジュリエットがまるで母性愛を持った存在にまで成長するわけがない、と幼くまっすぐ痛々しいまでの情熱があふれんばかりの様子で神父のところへと駆けていく。新婦の前で泣き崩れ、ナイフを手に自らの命を絶とうとするそぶりも見せるジュリエットだけど、それは死を願うというより、ロミオと結ばれたいという気持ちの表れ。だから、神父に仮死状態になる薬を飲んで、後に彼と会うという解決策を与えられたとき、彼女は素直に喜ぶ。そして部屋に戻ったジュリエットは、逡巡し恐怖と戦いながらも神父にもらった薬を飲んで、意識を失いベッドへと倒れこむ。

この次のシーンがラヴロフスキー版の大きな特徴なのだが、追放されたロミオが、旅先マントヴァでジュリエットのことを想いながら哀しみに満ちたソロを踊る。時には床に突っ伏すほどの強い苦悩。そこへジュリエットが死んでしまったという報せがベンヴォーリオから届くのだ。顔を覆って嘆くロミオ。あまりのロミオの悲しみようが胸に痛くて。彼は慟哭しながら拳を天に向けて突き上げて、ひとつの決意をする。こんなにも率直に感情を表に出しているウヴァーロフの姿が鮮烈だ。

(続く)

ジュリエットの葬列。中央にある石段の上にある墓の上に、シフォンに包まれた仮死状態のジュリエットが横たえられる。崩れ落ちるように悲しむ乳母や母、ジュリエットへと近寄り手を差し伸べるパリス。パリスも葬列とともにこの場を去るので、マクミラン版のようにロミオには殺されない。

葬列が去った後、墓所に駆け込むロミオ。横たわるジュリエットの体を抱き上げる。仮死状態のジュリエットの体は、だらりと下がるのではなく、まるで死後硬直しているかのように地面と平行した状態でつま先まできれいにぴんと伸びている。その微動だにしないジュリエットを高々と持ち上げるロミオ。ぴたりと静止したリフトを見るにつけ、ロミオはジュリエットがすでにこの世にいないものだと確信したのがよく伝わってくる。マクミラン版のように死体と踊っているような感じでないけれど、こちらのほうが現実的な演出だと思う。ジュリエットの死を確信したロミオは持参した毒をあおり、一度は跪くけれど最後にもう一度、ジュリエットの体に触れると、後ろ向きに石段の上から落ちるように斃れる。

目が覚めたジュリエットはロミオが石段のところで横たわっている姿を見つけ、死んでいることを知る。腕を大きく広げて、声にならない叫びを上げる。床にロミオが呷った毒薬の残りを見つけて飲むものの、それだけでは死ねないことが分かり、迷わずジュリエットはロミオの腰に挿してある短剣をとって胸を一突きし、彼の顔に最後に触れた後絶命する。彼がこの世にいないことが分かったとたん、何のためらいもなくまっすぐに死へと突き進んでいくジュリエット。それもまた彼女の純粋で情熱的な生き方の行き着く先だったことを、ニーナの最後までイノセントで少女らしいジュリエットが体現していた。火傷しそうな幼い熱情が疾走した物語が、「ロミオとジュリエット」なのだということがすごく伝わってきた。

だから、若い二人が墓所の石段で折り重なって斃れているところで両家の和解が実現するのは、とってつけたというか蛇足という感じが否めない。でも、このシーンは原作にあるものだし、極力さらりと表現していて最後の余韻を妨げないようにしているのは良かったのではないか。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

ブログを毎日楽しみにしています! 貴重な情報や、バレエに対する真摯な感想を拝見するのを本当に楽しみにしているんですよ。

ところで、ニーナ アナニアシヴィリさんが芸術監督をしているグルジアバレエ団が、2月26日から台湾で公演を行います。まだチケットがあるようなので、台北でニーナさんが踊る時に、観光も兼ねて行こうかと、真剣に考えています!昨年の日本公演では脚の怪我でかなり大変だったと聞いているので、今回の長期ツアーは怪我なく、最高のコンディションで舞台に立てることを心から願っています。

ご参考までに、以下が関連サイトになります。
ブログを楽しみにしていますので、ずっと続けてくださいね。

http://newaspect.org.tw/English/index.php

http://www.artsticket.com.tw:80/CKSCC2005/Product/Product00/ProductsDetailsPage.aspx?ProductID=hx0fZA09nGcjJP9gdHRe2&Area=C&Id=9204

http://www.artsticket.com.tw/CKSCC2005/Product/Product00/ProductsDetailsPage.aspx?ProductID=hx0fZA09nGcjJP9gdHRe2&Area=C&Id=9204

名無しさんの方、こんにちは。

ニーナとグルジア国立バレエの台湾公演についての情報提供、ありがとうございます!
デヴィッド・マッカテリのFacebookで台湾にニーナと行く、って書いてあったので台湾公演があるんだ、と思ったんですが、詳しくありがとうございます。ずいぶん長い公演なんですね。
台北でバレエを見たことはないんですが、劇場自体には行ってみました。とても豪華で素敵な劇場ですよね。台湾はご飯も美味しいし、きっと楽しいと思います。怪我なく素晴らしい踊りを見せてくれますように。いかれた場合、ぜひ報告をお聞かせくださいね。

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