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2010/03/07

3/5 グルジア国立バレエ「ロミオとジュリエット」(その1)

今まで本当に素晴らしい舞台を見せてくれていたニーナも、実はもうすぐ47歳。地方公演で見た人の感想で、ちょっとお疲れ気味だと聞いていたので、少しだけ不安を持ちながら舞台に臨んだのだけど、そんな不安はまったくの杞憂だった。ニーナは本当に凄い!観客に愛される華と暖かさを持つ、不世出のバレリーナであることを改めて実感。そしてロミオという役で初めて観るウヴァーロフも愛にあふれており、踊りの切れも素晴らしく、今までの彼の印象を塗り替える素敵な演技を見せてくれた。ニーナとウヴァーロフの姿は、舞台の上で永遠のものとして心の中に焼き付けられた。時を忘れさせてくれる感動をくれた、そんな舞台だった。

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「ロミオとジュリエット」といえば、やはりマクミラン版ばかりを観てきていて、原典と言っていいラブロフスキー版について多くの人はマクミラン版やクランコ版と比較して面白くないと言う。実は私はラヴロフスキー版を観たことがなくて、それも懸念材料だった。今まで、ガラではロシア系のダンサーが1幕のバルコニーのシーンのパ・ド・ドゥを踊ったのは何回か観ているんだけど、バルコニーシーンなのにバルコニーがないとはいかに?と思ったし、ガラで観る限りは、たとえそれがヴィシニョーワのように素晴らしいダンサーでも作品として、振付としていまいちだなあ、と思っていたのだ。

だけど、この日、この版を観て、ラヴロフスキー版も意外といいなあと思ってしまったのだ。マクミラン版が見せる1幕の猥雑で活気にあふれた様子がないのは物足りない。でも、この版には、この版なりの良さがあるんだと思った。現在の「ロミオとジュリエット」のバレエ作品の多くの原点になっているのがとてもよくわかる。

ケネス・マクミランの伝記を読むと、ボリショイ・バレエが1950年代にロンドンに、ガリーナ・ウラノワ主演のラヴロフスキー版「ロミオとジュリエット」を上演したところ大センセーションを巻き起こしたという記述がある。ロイヤル・バレエ(当時はサドラーズ・ウェルズ・バレエ)は、何とかしてこの作品の上演権獲得を目指すのだが、ラヴロフスキーがボリショイで失脚するなどさまざまな障害がありそれは実現しなかった。バレエ団は自前の「ロミオとジュリエット」を代わりに作ろうとして、その結果生まれたのが、マクミラン版である。ラヴロフスキー版を観たマーゴ・フォンテーンが自伝の中で語った言葉が登場する、「批評家からはオールド・ファッションだと批判されたラヴロフスキー版「ロミオとジュリエット」のプロダクションの古風さこそが素敵だと思った。ディアギレフが今世紀初頭にその革新性と引き換えに捨てたバレエの中のリアリズムがこの作品の中にあり、今それを改めて見るとかえって新鮮に感じる。豊饒なルネッサンス時代の地方での生活のイメージがわきあがってくる」
今回のロミオとジュリエットの舞台装置はグルジア国立バレエのオリジナルのものであるが、確かに古風ではあるものの、重厚で華麗、ルネッサンス時代を意識したものでとても素敵だった。

マクミランの「ロミオとジュリエット」では、一瞬場面が凍りつくシーンがあって、それが非常に効果的な演出となっている。ロミオとジュリエットがキャピュレット家の宴で初めて出会うシーン、バルコニーシーンのはじめに長く二人で見詰め合うシーン、そしてジュリエットが3幕でロミオと別れ、長い時間ベッドの上に座り、ある決意を秘めるシーンなどなど・・・ラヴロフスキー版にはそういった"溜め"がなく、ダンスがよどみなく流れるように続いていく印象が強い。後半になるとマイムは登場するが、全体的にはマイムや顔の表情ではなく踊りで感情を表現することに重点を置いている。そして、ニーナもウヴァーロフも、この"踊りで感情を表現する"ことにものすごく優れているのがすごくよくわかった。

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2枚の赤い緞帳が上がってヴェローナの街が登場すると、中央の像の傍らで佇む、憂いに満ちた男性。それがウヴァーロフが演じるロミオであることに気がつくのにしばらくかかった。ほかの観客もそうだったようで、ウヴァーロフであると気がついていたら当然あったであろう拍手がなかったことがそのことを象徴している。この時点で、もしかしてロミオ役は今までの彼のイメージを覆すものになるんじゃないかって予感がした。

最初のヴェローナの街角のシーンを見ているときには、あまり気持ちが盛り上がらなかった。なぜかっていうと、ひとつにはオーケストラの演奏があまりにもトホホだったこと。プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」は確かに難曲だけど、演奏の明らかなミスがあるだけでなく、テンポも今ひとつで群舞がいまひとつ音楽に乗り切れていなかった。しかも最初のこのシーンにはマキューシオもベンヴォーリオも登場しないのだ。この版での舞台を観るのは初めてとあって、パリスとティボルトの区別もちょっとつきにくい。あの有名な音楽に乗せての「騎士たちの踊り」(クッションダンス)は、分厚いクッションを使った舞台美術は素敵なのに演奏がすごく薄っぺらいので気分が高揚しなかったのが残念。

登場シーンのニーナはすごく可愛らしかった。おてんばで、女の子というよりもっと中性的、やんちゃで辺りを走り回っていそう。でもアラベスクなどのポーズはすごく綺麗だし、懸念していたジャンプもちゃんと脚を大きく開いて跳んでいた。キャピュレット家の宴に参加しているニーナのジュリエットはその場面とは打って変わって落ち着いておりやや大人っぽく見えてしまって、やっぱりニーナも年をとっちゃったのかな、と思った。でも、その印象はこのシーンだけで、ここから先は本当に少女っぽく、生き生きとしていて愛らしいジュリエットそのものになった。

この宴のシーンでようやくロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオが揃う。長身のウヴァーロフと並ぶと岩田さんがとても小柄で、縮尺が違う人が並んでいるようだった。でも岩田さんの踊りは素晴らしい!とても正確でキレがあり、軽やかで綺麗だ。上半身の動きもシンプルながら美しい。岩田さんの性格の真面目さが踊りに出ているようで、ひょうきんなんだけど軽薄ではないマキューシオ。ウヴァーロフも、いつもの王子の雰囲気はなく、かといってザハロワといつも踊っているバジルともまた違っていて、すごく楽しげでリラックスしていてロミオになっている。いつもの彼から、一皮もふた皮も剥けた感じで、素のままでロミオになり切っている彼のエモーションが感じられた。

そしてバルコニーのシーン。やっぱりバルコニーはないのだけど、後方が石段プラットホーム状になっていて、重厚な舞台装置。初めての恋に震えるジュリエットとロミオ。マクミラン版のような複雑なリフトはないけれども、純粋なラインの美しさを追求した古典的な振付は、踊り手が素晴らしく、なおかつ踊りで心境を表現することができていればやっぱり感動的である。ウヴァーロフは踊りが絶好調のようで、跳躍は高く伸びやかで、あの長身とは思えないくらい軽やかだ。ものすごく若々しい。ニーナはジュッテ・アントルラッセのときに後ろに高く脚が上がっていてつま先がきれいに伸び、ふわっと浮かび上がるようで、不調が伝えられていたとは思えない。パ・ド・ドゥのときには、とにかくウヴァーロフの愛情あふれるサポートが素晴らしくて、ニーナがジュッテするところを彼が軽々と持ち上げると、天にも登るように高揚した二人の気持ちが伝わってくる。二人が正面を向いて、つないだ腕を上げてアラベスクするポーズの美しいことといったら。最後は、高々とニーナをリフトするのだけど、このサポートもビシッと安定感抜群で、ロミオのジュリエットに対する熱く一途な愛が伝わってきて、観ているこちらにも思わず熱いものがこみあげてきた。

(続く)

≪ロミオとジュリエット≫ 全 3 幕
2010年3月5日(金) 18:30~21:30

音楽 : セルゲイ・プロコフィエフ
台本 : レオニード・ラヴロフスキー,
     セルゲイ・プロコフィエフ,セルゲイ・ラドロフ
振付 : レオニード・ラヴロフスキー
振付改訂 : ミハイル・ラヴロフスキー
振付改訂補佐 : ドミートリー・コルネーエフ,イリーナ・イワノワ
           アレクセイ・ファジェーチェフ
指揮 : ダヴィド・ムケリア
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

<出 演>
  ジュリエット : ニーナ・アナニアシヴィリ
  ロミオ : アンドレイ・ウヴァーロフ
  ティボルト(キャピュレット卿夫人の甥) : イラクリ・バフタ-ゼ
  マキューシオ(ロミオの友人) : 岩田守弘
  ヴェローナの太守 : パータ・チヒクヴィシヴィリ
  キャピュレット卿(ジュリエットの父) : ユーリー・ソローキン
  キャピュレット卿夫人 : ニーノ・オチアウーリ
  ジュリエットの乳母 : タチヤーナ・バフターゼ
  パリス(ジュリエットの婚約者) : ワシル・アフメテリ
  パリスの小姓 : テオーナ・ベドシヴィリ
  ローレンス神父 : パータ・チヒクヴィシヴィリ
  ジュリエットの友人 : ラリ・カンデラキ
  吟遊詩人 : ヤサウイ・メルガリーエフ
  モンタギュー卿(ロミオの父) : マヌシャール・シハルリーゼ
  ベンヴォーリオ(ロミオの友人) : ゲオルギー・ムシヴェニエラーゼ
  居酒屋の主人 : ベサリオン・シャチリシヴィ

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