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« 山岸凉子「アラベスク 完全版 第1部」 | トップページ | 3/28新国立劇場バレエ団 ボリス・エイフマンの《アンナ・カレーニナ》 Boris Eifman's Annna Karenina New National Theatre »

2010/03/28

3/21 パリ・オペラ座バレエ団「ジゼル」Paris Opera Ballet Giselle 

公演から一週間が経ってしまって、だいぶ細部を忘れてきてしまっているけれども、念のため。まだ終わってから一週間しか経っていないんだ、という気持ちもする。


ニコラ・ル=リッシュのアルブレヒトは、1幕からもういきなり「いいところのお坊ちゃま」という雰囲気があって、明らかに周囲の村人とは異質な感じ。村人たちといっても、オペラ座の誇る若手スタイル良しハンサムな皆様なのだが、その中にいても、貴族性というか、支配者階級特有の立ち居振る舞い、育ちのよさが目立つというのはさすがだ。ジゼルをだまそうとか傷つけようという意図も罪悪感もまるでなく、綺麗な女の子がいたから付き合ってみました、みたいなノリである。パンフレットの解説に、フランスでは女性には敬愛の情を強く示すのが騎士としての嗜みとされていたと書いてあるが、ニコラはそれを体現しているなと思った。

そういう姿勢を示していたアルブレヒトだからこそ、ジゼルは恋に落ちたのだとも解説には書いてあったが、オーレリーの演技にもそのへんは感じられていた。オーレリーのジゼルは、ただの村娘にしては高貴すぎる美しさがあって、クールランド大公の落胤という説が納得できるほど。バチルドのドレスにそっと頬擦りする様子にすら、気品が漂うオーレリー。だがその美しさはあまりにも繊細で壊れやすく、まるで陶器のようである。そんな彼女だから、アルブレヒトの正体が明かされた時に、心が一瞬のうちに脆くも砕け散ってしまった様子が本当によく判った。オーレリーの狂乱の演技は美しく静かだけに、なおのこと痛ましさがひりひりと伝わってくるようだった。バチルドに贈られたネックレスを引きちぎって落とす音がすごく大きかったのも印象的。

そんなジゼルの姿を見ていても、ニコラのアルブレヒトは、いったい何が起きているのかすら理解できない様子だった。心が壊れていくジゼルを見てもおろおろするばかりで、彼女が死んだときにようやく自分の罪の重さに気がついたよう。2幕でアルブレヒトが百合を持って登場するところでは、彼はそれだけに深く反省して神妙な面持ちでジゼルの墓へと歩んでいく。

ウィリとなったオーレリーのジゼル。オーレリーは体型的にはいわゆるジゼル体型ではなく重みを感じさせるが、透明度は高いのにもかかわらず、アルブレヒトへと向ける深遠な情を感じさせてくれた。本当にジゼルは心から彼を愛していたのだということを感じさせてくれる踊りであり、演技なのだ。印象的だったのが、ジゼルの気配に気づき始めたアルブレヒトへ、彼女が百合の花を落とすところ。他のジゼル役のバレリーナははらはらと花々をアルブレヒトの手元に落としていくのだが、オーレリーは一つ一つの花を手渡していく。少しでもアルブレヒトに触れたいという彼女の気持ちの現われなのだろうかと思った。

「シッダールタ」のパリでの初日を終えて前日に日本にやってきた二人だけれども、踊りには長旅の疲れは見えなかった。ミルタに踊らされるニコラのダイナミックな跳躍は見ごたえ十分だったが、その後に倒れこむ様子は苦しげで、ミルタの強大な力を感じさせた。ソ・ド・バスクの繰り返しの後のアントルシャ・シスの数は少なかったが、全身全霊で踊っているのが伝わってくる。ようやく朝がやってきて、アルブレヒトが救われることが判って、ジゼルは去っていくが、その去り際の名残惜しげにアルブレヒトに視線を向け、腕を伸ばした様子に思わず涙。

ジゼルが消えた後、ジゼルの墓にかかっていたマントに気づいたアルブレヒトが、そのマントを拾い、ずるずると引きずっていきながらとぼとぼと歩いていく姿が心に残った。アルブレヒトは新しい明日を生きていくのではなく、ジゼルのことをずっと忘れないで、彼女の思い出とともに生きていくんだろうな。


この日は日本公演最終日だったため、カーテンコールには、1幕のみ出演のダンサーたちも登場。また、この公演を最後に引退するジャン・クリストフ・ゲリ(ウィルフリード役)が中央に出て温かい拍手を浴びるという場面も。降って来たトリコロールの紙テープがとても素敵だった。

パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「ジゼル」(全2幕)

◆主な配役◆

ジゼル:オレリー・デュポン Aurelie Dupont
アルブレヒト:ニコラ・ル・リッシュNicolas Le Riche
ヒラリオン:ジョシュア・オファルト Joshua Hoffalt

ウィルフリード:ジャン=クリストフ・ゲリ Jean-Christophe Guerri
ベルタ、ジゼルの母:ヴィヴィアン・デクチュール Viviane Descoutures
クールランド大公:ヤン・サイズ Yann Saiz
バチルド姫:ベアトリス・マルテル Béatrice Martel

ペザント・パ・ド・ドゥ:メラニー・ユレル、エマニュエル・ティボー Melanie Hurel, Emmanuel Thibault

ミルタ:マリ=アニエス・ジロー Marie-Agnès Gillot
ドゥ・ウィリ:マリ=ソレーヌ・ブレ、サラ=コーラ・ダヤノヴァ Marie-Solène Boulet Sarah Kora Dayanova

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:コーエン・ケッセル

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

詳しく教えてくださりありがとうございます。場面が目に浮かぶようでした。観に行けばよかったなという気持ちです。

rakiaさん、こんばんは。
楽しんでいただけて嬉しいです。チケットを取るのが大変だったのが頷ける、とても素敵な舞台でした。またこの二人のジゼルを見る機会があればいいですよね!

振り付けプレルジョカージュ、マントヴァーニ音楽による新作バレエ'シッダールタ'の4月9日パリ国立歌劇場における公演です。
http://xfs.jp/hH56R

rednalさん、こんばんは。

シッダールタの映像のご紹介、ありがとうございます。新作が早速放送されるなんて凄いですね~。日本での「ジゼル」と新作「シッダールタ」の掛け持ちで主役のニコラとオーレリーは大変だったんですよね。

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