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« 3/20 マチネ パリ・オペラ座バレエ団「ジゼル」 Paris Opera Ballet Giselle | トップページ | 3/26ニューヨークで開催のYAGP2010ガラとワシリエフ・ガラ »

2010/03/24

3/20 ソワレ パリ・オペラ座バレエ団 「ジゼル」 Paris Opera Ballet Giselle

2010年3月20日 18:30
パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「ジゼル」(全3幕)

この回の「ジゼル」も素晴らしかった。もともとはイザベル・シアラヴォラがジゼル役の予定だったのが怪我で降板、代役はデルフィーヌ・ムッサンが踊ることになった。でも、去年9月のガルニエでの「ジゼル」でもデルフィーヌとバンジャマン・ペッシュは共演しているとのこと。非常にパリ・オペラ座らしい正統派「ジゼル」を見せてくれたと思うし、主演の二人が役をよく練り上げ完成させているのが伝わってきた。何よりも、デルフィーヌ・ムッサンのジゼルが心に残る感動的な演技を見せてくれた。


バンジャマン・ペッシュのアルブレヒトは、これぞオペラ座のアルブレヒト像というか、出てきたとたん超プレイボーイなお貴族様であるのがよーく伝わってくる。アムールの国フランスの人だな、と思える、熱烈な愛情表現をしてくれちゃって、チョイ悪男っぽいのが素敵。私は実はペッシュがかなり好きなので、彼のそんなところが観られてすごく嬉しかった。一番面白かったのが、ジゼルが1幕でのヴァリエーションを踊るときのこと。アルブレヒト役のダンサーは上手にあるベンチに腰掛けて、踊るジゼルを見つめている。ジゼルは大好きな彼の前で踊れるのが嬉しくて仕方なくて、踊りながらも時々アルブレヒトに視線を送って微笑む。マチアスのアルブレヒトも、ジゼルに投げキッスを送っていたけど、ベンチから立ち上がってジゼルに近づいてまでしてキスを送ったのはバンジャマンだけだった(と思う)。純真なジゼルは、こういうラテン系恋愛猛者にかかったらイチコロだろうなって思ってしまった。しかし、彼は単なるいい加減なプレイボーイではなかった。ジゼルが狂乱の末に彼の腕の中で息を引き取ったときの取り乱しようといったら、今回の4人のアルブレヒトの中でも一番だった。うわーなんてことをしてしまったんだと激しく後悔し、ヒラリオンに掴みかかろうとするような勢いで襲い掛かり、斃れているジゼルにしがみつき、ウィルフリードが引き離そうとしてもなかなか離れられない。こんな熱いアルブレヒトは観たことがない。

デルフィーヌのジゼルはというと、派手さはまったくないけれども、とても40歳とは思えない少女の可憐さ、華奢な身体から漂ってくる儚さがあった。病弱なのは伝わってくるけれども、アニエスのジゼルほどの腺病質ではなくて、健気で純朴な印象。都会的な色男のアルブレヒトにコロッと参ってしまうような。それにしても、先日のニーナ・アナニアシヴィリ(46歳)といい、今回のデルフィーヌといい、ジゼルという役は年を重ねたバレリーナでも演技力如何によってはすごく若く可愛くなるし、年齢と経験を重ねることで、演技に説得力を出すことができるのだと実感。(年をとっているからいいというものではないのは言うまでもないが!)若さで突っ走っていたドロテ・ジルベールも初々しくて良かったけど、デルフィーヌの繊細な演技にはとても惹きつけられた。

そして圧巻だったのが狂乱のシーン。デルフィーヌの壊れていく様子は、繊細なガラス細工のような少女が突然自分の生きる支えだった愛を失い、茫然自失となって自分を見失い、壊れたぜんまい仕掛けの人形のようになって最後には命が消えてしまう、そんな様子を彼女は体当たりで表現していた。狂乱のシーンといっても大騒ぎすることはなく、最初は穏やかに微笑んで花占いをはじめる。その哀しい微笑が静かに少しずつ、だけど完璧なまでに壊れていく様子が痛ましくて・・・。アルブレヒトのあまりにも激しい慟哭のスイッチを入れるには十分なものだった。このシーンでの、二人の演技が見事に化学反応を起こしているのが見えたのもすごかった。
今回4人のジゼル役を観て、この狂乱のシーンでもそれぞれ素晴らしい演技を見せてくれたと思うのだけど、個人的にはこのデルフィーヌの演技が一番痛切に胸に響いた。

ヒラリオン役はニコラ・ポール。長身でほっそりとしているダンサー。ジョシュア・オファルトが演じたヒラリオンほどの粗野さはなく、純情で真面目そう。ジゼルを想うがゆえにアルブレヒトの正体を暴いたということがよくわかる演技だ。1幕の最後、ジゼルの死に怒りを炸裂されたアルブレヒトに対して「いっそ殺してくれ」と両腕を広げ身を投げ出していた。

この日のペザント・パ・ド・ドゥはアレッシオ・カルボネと新プルミエのリュドミラ・パリエロ。アレッシオは前日出演のときに前半ちょっと乱れ気味で少し不調かと思ったのだけど、この日は復活。後半の細かいパを音にピッタリあわせて巧みだった。そしてリュドミラも、柔らかめで美しい動き、とてもきれいにまとめていたと思う。

(2幕)
デルフィーヌのウィリとなった姿の美しさに息を呑む。「シンデレラ」も観ていたので、彼女がプロポーションに恵まれているのは判っていたけれども、華奢な身体、長い手脚、首から背中、そして指先までのなだらかなラインは理想的なジゼル体型だった。体重がまったくないようなふわふわとした浮遊感で踊る彼女は、完全に精霊だった。アニエスのジゼルも霊的な存在だったけれども、デルフィーヌはアニエスよりは体温を感じさせていた。ひんやりとしているのではなく、包み込むようなぬくもりがほんの少しあった。彼女の顔に表情というものは殆どないけれど、アルブレヒトへの死を超えた想いだけが彼女にウィリの姿をとらせて、舞台の上に存在していたかのように見えた。ジゼルの魂が舞台の上に降臨したかのような、崇高で儚く美しいものを体験した。コントロールが指先やつま先まで行き届いていて、向こう側が透けて見えるかのような透明感があった。

バンジャマンの2幕のアルブレヒトは、自己憐憫とナルシズム全開で、彼のアルブレヒトならこう来なくっちゃね!とちょっと膝を叩きたくなった。遊び人が深く反省したらこんなふうだ、って感じ。そして2幕でも、ジゼルに対する愛情だだ漏れで、熱いこと。こんな情熱的なアルブレヒトはそうそういないんじゃないかな。「シンデレラ」で膝を痛めたらしく、踊りは若干安全運転だけどきっちりしていて美しい。ミルタに踊らされるところは、アントルシャ・シスはなくて、ソ・ド・バスクの繰り返しの後はジュッテ・アントルラッセだった。 (以前、彼が新国立劇場の「ジゼル」に客演したときには素晴らしいアントルシャ・シスを見せてくれたものだった・・・新国立が「ジゼル」を最後に上演してから何年たつんだろう。というか、自慢のコール・ドを生かせる演目なのに、そしてザハロワ様が踊りたいと言っているのに、なんで新国立では「ジゼル」をやらないのか、とーっても疑問。話がずれてしまった)
アントルシャじゃなかったのはちょっとだけ残念だったけど、それでも踊らされるバンジャマンはもう息も絶え絶えで、このままでは本当に死んでしまう、という必死さがものすごく伝わってきた。ここでも本当に熱い男だわ。
サポートも好調で、ジゼルをまるで体重がないようにふっと持ち上げたところはきれいに決まっていた。

アルブレヒトが救われたことに少しだけ安堵の表情を見せたジゼルが後ろ向きにパ・ド・ブレして、墓の向こうへと消えていく。ジゼルのお墓に捧げた百合の花を拾って舞台中央へと歩いていったアルブレヒトは正面を見据え、ジゼルを想って茫然とし、その花一輪を落として立ち尽くしてしまう、その姿もドラマティックだった。(R列だったので、本当の最後の最後は見えなかった・・・)大人のダンサー二人が見せてくれた、素晴らしいパートナーシップに大満足。

ドゥ・ウィリはシャルリーヌ・ジザンダネとマチルド・フルステー。シャルリーヌは着地がすごくきれいで音のとり方もばっちり。彼女はすごく前途有望だと思う。マチルドは柔らかくてアラベスクが美しい。もうひとつのキャストのダヤノヴァとブレも良いし、今回、ドゥ・ウィリはみんなすごく良かった。

ミルタのエミリー・コゼットは、前日より踊りが好調のようだった。彼女もパ・ド・ブレがきれいだし、ですごく怖いミルタで威厳があって女王らしい。同じ大柄ダンサーでも、マリ=アニエスとはだいぶ違った雰囲気なのだ。踊りも硬質なので、ますます怖い感じが良く出ていた。

考えてみれば、「ジゼル」を初めて上演したのがパリ・オペラ座なのである。その正統派「ジゼル」を見せてくれた一晩の、夢のような舞台であった。


◆主な配役◆

ジゼル:デルフィーヌ・ムッサン Delphine Moussin
アルブレヒト:バンジャマン・ペッシュ Benjamin Pech
ヒラリオン:ニコラ・ポール Nicolas Paul

ウィルフリード:ジャン=クリストフ・ゲリ Jean-Christophe Guerri
ベルタ、ジゼルの母:ヴィヴィアン・デクチュール Viviane Descoutures
クールランド大公:ヤン・サイズ Yann Saiz
バチルド姫:ベアトリス・マルテル Béatrice Martel

ペザント・パ・ド・ドゥ:リュドミラ・パリエロ、アレッシオ・カルボネ Ludmila Pagliero Alessio Carbone,

ミルタ:エミリー・コゼット Emilie Cozette
ドゥ・ウィリ:マチルド・フルステー、シャリーヌ・ジザンダネ Mathilde Froustey Charline Giezendanner

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:コーエン・ケッセル

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