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« 「 オペラ座は生きている〜バレエの聖地 パリ・オペラ座の”伝説”的劇場の秘密〜」放映 | トップページ | 3/20 ソワレ パリ・オペラ座バレエ団 「ジゼル」 Paris Opera Ballet Giselle »

2010/03/22

3/20 マチネ パリ・オペラ座バレエ団「ジゼル」 Paris Opera Ballet Giselle

2010年3月20日 10:00
パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「ジゼル」(全3幕)

感想が滞っていて申し訳ありません。まだマチュー&デルフィーヌ・ムッサンのシンデレラの感想も書いていなかったですね。なんとかオペラ座「ジゼル」最終公演を見終わった後は熱を出して死んでいました。今もまだ風邪っぽくて喉が痛いし。今日が休日で本当に良かったです。

*****
ゲネプロでも観たアニエスとジョゼの組み合わせ。この日は3階センターで通常なら大変見やすい席だったのだけど、1幕はともかく、この版での2幕の照明が非常に暗いため、目を凝らさないとよく見えなかった。オペラグラスを使うと、舞台を追いきれなくなるからあまり使いたくないのだけど、使わないと特に2幕前半は何が行われているかわからないほどで。数千円節約するんだったら1階で見なさいという教訓だった。

アニエスのジゼルは、いつものクールビューティのアニエスからは想像できないほど、意外なまでに可愛らしく純朴そうな村娘。そこに、華奢なアニエス独特の幸薄そうな雰囲気が加わって、もともと長生きできない娘なんだろうなと思わせる。長年のパートナーシップを組むジョゼとの息はぴったり。ジョゼはひと目でこの人は貴族以外の何者でもないんだろうなとわかるすらりと美しい容姿に、この上ない気品が漂う。身体の弱いジゼルを気遣う優しさを持っているけど、いざバチルドに問い詰められると、上手くごまかして言い逃れようとする。今までの誠実さは何だったの!とジゼルがその実像とのギャップに衝撃を受けて正気を失うのもよく分かる。

アニエスが演じたジゼル狂乱のシーンは、ジゼルの腺病質なところと繊細すぎるところがよく現れていた。アニエスはきっとすごく考えて役作りをしていったのだと思う。大きく乱れることはないのだけど、あまりにも一気に悲しみがやってきて、その激しい痛みに苦悶しているような、心の中で苦しさと戦っているかのような表情。アニエスのジゼルは、「ハムレット」でオフィーリアが発狂して死んだときにはこんな感じだったのではないかと思わせた。ゲネプロのときよりも表現を抑えていて、本当に人が大きな悲しみを受けると、思考回路が止まってしまうってことを表現しているようだった。すごく演劇的なアプローチだったと思うし、大袈裟さは微塵もないのに正視しがたいほどの痛みが伝わってきた。

それなのに、あんなに優しかったジョゼのアルブレヒトだったのに、彼は思わずジゼルから顔を背けてしまって自分が置かれている現実から目をそらそうとしていた。その一瞬の不誠実さがアルブレヒトたる所以なのではないかと感じた。ジゼルの苦しみがいよいよ頂点に達して、死ぬ前に彼に抱きついたときに、ようやく彼は自分の罪深さを知ったのではないだろうか。

ヒラリオンのジョシュア・オファルトは、オペラ座の公演でこの役を踊るのは初めてだったはず。演技はまだ薄い感じで、もう少し情熱がほしいところ。背がすらりと高く脚が美しいけど、貴公子の役ではないので重心を低くしていた。ややしつこくジゼルに迫り、アルブレヒトにはすぐナイフを向けるなど粗野な感じはよく出ていた。ジゼルが死んだ後、アルブレヒトが彼に刀を向けるところは、もっと「斬るなら斬ってみろ」と手を広げるなどの工夫があっても良いのでは。(もう一人のヒラリオン役、ニコラ・ポールの方がこの点は上手だったと思うけど、それは経験の差で仕方ない)

クーランド大公がヤン・サイズ。若くてハンサムな、王子様のような大公。確かバール版はジゼルは大公がベルタに産ませた落胤という設定だと思ったけど、ヤンが演じるとその設定には違和感がある。クーランド大公が家の中に入る前にジゼルの顔を手にとってじーっと見つめるシーンがあるが、「この子も大きくなったな」と考えているのか、それとも「この村には似つかわしくない美しい娘だ」と思ったのか、どっちなのだろうか。

バチルドは、この手のキャラクターロールには欠かせないベアトリス・マルテルで、ちょっととうは立っているものの美人。ジゼルの狂乱のシーンでアルブレヒトを厳しく問い詰めるところがかなり怖い。マルテルは2幕ではウィリの一人としても踊っているというのがすごい。

ペザント・パ・ド・ドゥはユレルとティボーで、ユレルはゲネプロでは相当ダメ出しを食らっていたけど今回は上手くまとめていて良かったと思う。ティボーは羽が生えたように軽やかで素晴らしい踊りを見せてくれるのだけど、同時に、いつまでたってもこのポジションから脱却できないことが気の毒に思えてしまった。

2幕は3階席だと暗くて見えづらかったけど、正面だったので真っ暗闇の中にぼーっとウィリたちの白い姿が浮かび上がる美しさとフォーメーションは堪能した。それにしても、群舞が揃っていないし足音は大きい。そもそも、揃えようとしていないのではないか、と考えることもできる。不揃いさや足音よりも、アラベスクで交差するところで、後ろ脚が下がっている人たちがたくさんいたのがちょっとまずかったことだと思う。一人一人のウィリがそれぞれの意思を持っていることは感じられたし、メソッドは統一されているし体型もみなこのスタイルが似合っているが。暗い照明の効果もあったと思うけど、ここのウィリたちは怖い!何重にも巻かれたシフォンの衣装が空気をはらみ残像を残していく様子も美しい。

ミルタのマリ=アニエス・ジロはDVDでのパフォーマンスよりずっと良かった。彼女のパ・ド・ブレはまさに芸術品で、滑らかに滑るようで、あまりにも小刻みなためにポアントの足先がステップを刻んでいることすら忘れてしまいそうになるほど。背が高いだけでなく、体つきがしっかりしていることもあるけど、女王の威厳でこの人の右に出る人はいないだろう。だけど、マリ=アニエスのミルタはあまり怖くなく、冷たくもない。まだ体温を残しているかのようで、女王としての務めだから男たちに死をもたらしているということが伝わってきた。命乞いをするアルブレヒトから顔をそむけるようにしていのも、彼の顔を見ていると同情してしまって殺せないから。かつて人を愛したことのある自分を必死に思い出さないようにしている風に見えて、そんなミルタが哀しい存在に思えてくる。

ドゥ・ウィリの二人は、この距離と暗さで顔の区別がつかず、カーテンコールでやっと、舞台に向かって右側がサラ・コーラ・ダヤノヴァなのを確認。「シンデレラ」の冬でも活躍していた彼女は素晴らしかった。もう一人のマリ=ソレーヌ・ブレもアラベスクがやわらかく美しい。


さて、ジョゼ・マルティネスの2幕のアルブレヒトなのだけど、もう~めちゃめちゃノーブルで貴公子オーラ出しまくり。マントを片側をうまく腕に巻きつけて裏地を見せ、長い脚を覗かせる姿が美しい。ジゼルの墓に花を捧げて地面に横たわる姿も絵になる。深く後悔しているのがすごくよく伝わってきた。

ミルタに命令されてアルブレヒトが踊らされるシーンは、3階ほどソ・ド・バスクをしてミルタに跪き命乞い。それからアントルシャ・シスを18回くらい。ジョゼのアントルシャ・シスは高さもあって足先はもちろん美しく伸びており、これが40歳のダンサーとは到底思えない。ジゼルが墓へと消えて行ったあと、正面を見据える姿も絵になっていた。

アニエスのウィリ姿はというと、去年の世界バレエフェスティバルでのひんやりとして、死霊そのものというジゼルよりは少し体温を上げていた。でも、目は光を失っていたかのようで、どこも見ていなかった。アルブレヒトにジゼルの姿が見えていないのと同様、ジゼルにもアルブレヒトが見えていないんじゃないかと思うほど。完全に精霊となっていて、会場を冷たい空気で満たしていた。彼女の長くしなやかなラインが非常に美しい。アニエスって前に「白鳥の湖」でオデットを踊っているのを見たときには、踊りが非常に硬質だと思ったのだけど、今回その印象はすっかり払拭された。

この二人のパートナーシップは素晴らしく、お互いの姿が見えていなくても心が寄り添ってひとつになっていく様子を見ることができた。完成度が高い舞台だったけど、もうこの二人の「ジゼル」を観る機会はないのかもと思うと寂しい。体調が万全だったらさらに楽しめたかも、と思うとますます残念。


◆主な配役◆

ジゼル:アニエス・ルテステュ Agnès Letestu
アルブレヒト:ジョゼ・マルティネス José Martinez
ヒラリオン:ジョシュア・オファルト Joshua Hoffalt

ウィルフリード:ジャン=クリストフ・ゲリ Jean-Christophe Guerri
ベルタ、ジゼルの母:ヴィヴィアン・デクチュール Viviane Descoutures
クールランド大公:ヤン・サイズ Yann Saïz
バチルド姫:ベアトリス・マルテル Béatrice Martel

ペザント・パ・ド・ドゥ:メラニー・ユレル、エマニュエル・ティボー Mélanie Hurel ,Emmanuel Thibault

ミルタ:マリ=アニエス・ジロー Marie-Agnès Gillot
ドゥ・ウィリ:マリ=ソレーヌ・ブレ、サラ=コーラ・ダヤノヴァ Marie-Solène Boulet Sarah Kora Dayanova

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:コーエン・ケッセル

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

はじめてコメントさせて頂きます。
最近除かせて頂くようになり、パリ・オペでほぼ日課に・・(笑)

ほぼnaomi様と同じコースでした。
(ただ土曜にダブルはきついと思い、アニエス&ジョゼは初日に)
アニエスのジゼル予想以上で、ご指摘の通り、
私も現代的アプローチに驚きました。
狂乱のところでペンダントを「ぽとり」と落としたり、
抑えた演技の中に、きちんと考え抜かれたものがあって。
ええっ、アニエスってこんな繊細な、こんな演技をするのだったっけ・・・?って思ってました。静かな痛みがひたひたと。

私もジロのミルタ、DVDよりずっと良かったと思います。
ジゼルに同苦するひとりの女としての心を飲み込んでいる様子が
その威厳の中にもちゃんと伝わってきて。
(ああ、もう当分誰のミルタも観なくていい・・・
 と思ったほどです)

naomi様は舞台の細かいところまでよくご覧になっていて、
そうそうとうなづいたり、えっ、そうだったのと
今更気付いたりしながら拝見しています。

お身体、どうか無理なさらないで下さいね。

ice blueさん、こんにちは。

ご来訪ありがとうございます!本当に拙い感想で(しかも遅筆で)恐縮ですが・・・
ホント、土曜日にダブルヘッダーじゃなくて、木曜日にアニエス&ジョゼを観れば良かったのですよね。シンデレラもダブルヘッダーをしたわけですが、シンデレラのときよりしんどかったです。

アニエスのペンダントを落とすシーン、印象的でしたよね。オーレリもかなり派手に落としていましたが。「アニエス・ルテステュ 美のエトワール」のDVDで、アニエスがどれほどジゼル役を演じることを願っていたかが出ています。ジゼル役は黒髪で小柄なバレリーナが演じることが多いため、彼女のように長身の人にはなかなかチャンスが与えられないけれど、なんとしても演じたいという。その思い入れの強さが、役作りに現れていますよね。登場したときの可愛らしさにもびっくりしました。

ジロさんのミルタもそうですよね。大きな踊りの中に、もともと持っていた心の優しさが垣間見えて、でもウィリの女王としては人間らしさを取り戻してはならない、その葛藤が感じられたように思えたのです。パドブレの美しさといい、跳躍の大きさといい、腕の使い方といい、彼女ほどのミルタはなかなかいないでしょうね。

私も意外と他の人が気がついていることを見落としていたりとか、勘違いをしちゃっていることも多いわけですが、こうやっていろいろな方と舞台について語り合えるのは楽しいです。今後もどうぞよろしくお願いいたします!

Naomiさんこんにちは、風邪の具合はその後いかがですか?
熱がある中マチネ+ソワレを鑑賞なさったとはガッツありますね!

それにしても2幕前半は真っ暗でしたね。Naomiさんのゲネの感想から覚悟はしていたのですが、舞台正面の塊が何かを最後まで理解できませんでした(墓堀?と思ってしまいました)。でもそんな事はどうでもよくなるくらいすばらしいジゼルでした!とくにアニエスジロ、もともと彼女の事はすごく好きなのですが贔屓目なしに観ても文句なしのパドブレでしたね~いったいどうしたらあんな運びが出来るのでしょうか。アニエス+マルティネス組も言うことなしで、、、書かれてる通り、アニエスの踊りはどちらかというと硬めの印象を私も持っており、踊りを通じて感情が見えやすい人とそうでない人がいるとしたら少なくとも私が過去見た彼女の踊りは後者が多かったのですが
今回その印象がひっくりかえるくらい踊りを通じて心の叫びが聞こえてきて、、、
このペアもマルティネス引退で解消なんですかねー残念な限りです。

TGIFさん、こんばんは。

風邪のほうは少しずつ良くなっています。連休でだいぶ休養をしたので・・ありがとうございます。今日も寒かったですね。

私もマリ=アニエスは好きなのですが、彼女のミルタがここまで素晴らしいとは思いませんでした!背が高くて大柄なのに、本当に静謐な感じのゆるぎない上半身、細かいパドブレがもう奇跡的な感じでしたよね。そしてアニエスの踊りのしなやかさとデリケートな演技にも驚かされました。本当にオペラ座エトワールの底力を感じましたね。ジョゼもオペラ座を去ってもダンサーとしては引退しないと信じて、またこの二人のパートナーシップを見る機会があればと思います。

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