山岸凉子「アラベスク 完全版 第1部」
実は大変お恥ずかしいことに、山岸凉子先生の名作バレエ漫画「アラベスク」を今まで読んでいなかったのです。山岸凉子先生の「テレプシコーラ」や「牧神の午後」「ヴィリ」は読んでいるし、「日出処の天子」などもその昔読んでいたのですが・・・(有吉京子先生の「SWAN」も読んだのが4年位前だし) もちろん、コミックは昔からいろいろ読んでいたのですが、10代のころはどちらかというと少年コミックの方が好きだったし、10代のときはバレエから関心が離れていたということもあって、バレエ漫画を読んでいなかったのです。
その「アラベスク」の完全版が発売になるというので、良い機会だと思って今回発売になった第一部の1巻,2巻を買って読みました。連載当時のカラー原稿と2色原稿をすべて完全復刻したとのことで、すごく美しいです。過去、単行本に収録されなかったカラー原稿も使われているそうで。絵柄は、何しろ1970年代初頭の作品なのでちょっと古い感じはしますが、バレエを自らも習っていて良く知っている山岸先生の描くバレエダンサーのラインはとても正確で指先まで行き届いており、非常にきれいです。何よりも、作品の中に込められた魂が伝わってくるところが素敵です。
読み始めたら、あまりにも面白いので2冊一気に読んでしまいました。ヒロインのノンナ・ペトロワはバレリーナとしては長身過ぎることや、優等生の姉にコンプレックスを抱いている女の子。今ではロシアでは168センチは大きすぎるというよりは、ほぼ理想的な身長だと思いますが。ウクライナのバレエ学校に通うノンナが、突然スター・ダンサーのユーリ・ミロノフに抜擢され、レニングラードバレエ学校(今のワガノワ)に編入し、新作「アラベスク」のヒロイン候補となる・・・。さまざまなライバルたちが登場し、心温まる友情あり、鬼コーチへの恋心ありと、少女漫画の王道的なストーリーではあるけど、当時のバレエ界のことを熟知してしっかりと描かれているので、面白く読めてしまいます。ノンナがさまざまなチャンスをモノにしていっても、まだ自信がないところが、読者の共感を呼ぶのかもしれません。実在の大スター、イリーナ・コルパコワの名前が出てくるところに、ちょっとにやりとしてしまいました。
第2部1巻、2巻が発売されるのは5月22日だそうですが、待ち遠しいです。
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子どもの頃読んでました、バレエの絵が本当に美しくて
ため息をつきながら。
お話が進んでいくとタチアナ・タヤキナとかも・・・
完全版、私も手に入れようと、こちらで拝見して思いました。
投稿: マーシャ | 2010/03/28 22:58
マーシャさん、こんばんは。
「アラベスク」の山岸さんの絵、美しいですよね~。バレエの美しさを絵で表現することはすごく難しいと思うんですけど、やはりここがきちんと描かれているから、今の時代に読んでも素敵~って思えるんだと思います。もし10代に読んでいたら、きっともっと早くバレエに目覚めていたというか、子供時代に習っていたバレエを再開したのかもしれません。
まだ第2部が出ていないのですが、早く先が読みたくて困っています(笑)
投稿: naomi | 2010/03/29 00:51
naomiさん
情報有難うございました。私も未だ読んでなかったので昨日注文しました。30日に配達だそうで楽しみです。
投稿: 隣のハミー | 2010/03/29 09:13
ハミーさん、こんばんは。
ハミーさんも読んでいらっしゃらなかったんですね!けっこうハマりますよ。30日に届くとは早い!また感想を聞かせてくださいね。
投稿: naomi | 2010/03/30 01:18
naomiさん、こんばんは。
やっぱりお若い、と(失礼ですけど)思っちゃいました。「アラベスク」、初めてなんて。山岸さんは20代半ばで、ご自身の子ども時代の経験と数冊の写真集だけで、これを書いたそうですけど、信じられませんよね。
投稿: shushu | 2010/03/30 22:35
shushuさん、こんばんは。
いや、若くないですよ(笑)でも、リアルタイムで「アラベスク」を読むような年代でなかったです。すでに読み継がれている名作として、存在自体は知っていたんですけど、今まで読む機会がなぜかなかったのですよね。
「アラベスク」の舞台は旧ソ連で、おそらくその時代には、今のように簡単に情報が手に入らなかったと思うので、それでこれだけの内容を描くことができた山岸さんって本当にすごいって思います!
投稿: naomi | 2010/03/31 02:17