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バレエ公演感想2009

2010/01/24

1/23 新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」短評

今日(もう昨日ですが)は、新国立劇場でさいとう美帆さんとマイレン・トレウバエフの「白鳥の湖」を観てきました。オデット・オディールデビューのさいとうさんですが、まずは良い初役を飾れたのではないかと思います。小柄な彼女は体型的にはいわゆるオデット体型ではないですが、手足の長さよりも、たおやかさや情感、正確なアンドゥオールと伸びた甲がオデットには重要だと思うので、さいとうさんはその点、良かったと思います。

さいとうさんはとても丁寧に踊っており、また適度なメリハリと目をひきつける華がありました。役デビューとはいえ、主役としての経験が豊富であるゆえ、緊張している様子もなく、"見せ方"を心得ていると思いました。2幕のヴァリエーションで少々スタミナ切れをしていたのと、3幕のグランフェッテで32回までは回れなかったのが惜しい感じでした。が、小柄で愛らしい容姿ゆえの守ってあげたくなるようなオデット、特に大げさに表情を作ることなく自然な演技で、可愛らしさに秘められた怖さを表現できていたオディールと役作りも良かったです。

マイレンは、今回は役デビューのさいとうさんを引き立たせるサポート役中心で控えめでしたが、彼の確実で誠実なサポートがあったからこそ、さいとうさんのデビューも上手くいったのではないかと思いました。彼の王子は、おおらかな愛でオデットを包んでいて、心を打ちました。マイレンは絶好調ではなかったけれども、いつもながらのふわりと浮かび上がるようなマネージュには惚れ惚れしましたし、それから1幕終盤や3幕で見せた超高速シェネが強烈に美しかったです。また彼の演技は細かくて、道化とのやり取りはユーモラスで思わず目が離せなくなるし、王子の性格付けもしっかりとしていて、きちんと王様の候補として育てられ、まっすぐでしっかりとした貴公子なのがよくわかりました。

ソリスト陣もとてもよかったです。今日の道化の福田さん、いいですね~。将来が凄く楽しみです。それからトロワ&チャルダッシュの長田さんがやはりすごく上手いです。チャルダッシュのパートナーの古川さんも、この役はお手の物ですね。19日のスペインの福岡さんが超素敵だったのですが、この日の芳賀さん、江本さん、西川さん、楠元さんも良かったです。ルースカヤの湯川さんも、このつまらない踊りを彼女が踊るとドマティックになって、魅せますね。2羽の白鳥の堀口さんのラインが儚げでとても美しく、次に「白鳥の湖」を上演する時には、彼女の主演というのもありえるのかもしれないと思いました。(でも、4羽の大きな白鳥での、踊りが大きく詩情溢れる寺島ひろみさんを観て、彼女のオデット/オディールが今回無かったのが残念だったと実感しました)

4幕が、なぜか王子が到着したあとの「悲しみのアダージョ」がカットされて、いつのまにか気がつかないうちにロットバルトがやっつけられてしまうという展開になっていました。正直、このカットは非常に残念というか、4幕がまったく盛り上がらなくて改悪としか言いようがありません。12月のマリインスキーの来日公演、ロパートキナが演じた白鳥では、4幕が最も感動的だったので、ますますこの改変が残念です。

それを除けば、本当に良い公演だったと思います。コンサートマスターによるヴァイオリンソロも素晴らしかったです。これで19日のショックがだいぶ癒されました。

オデット/オディール:さいとう美帆
ジークフリード王子 :マイレン・トレウバエフ
ロートバルト:貝川鐵夫
王妃    :坂西麻美
道化    :福田圭吾
家庭教師  :石井四郎
王子の友人(パ・ド・トロワ):本島美和 /長田佳世
                江本拓
小さい4羽の白鳥:遠藤睦子/西山裕子
          寺島まゆみ/長田佳世
大きい4羽の白鳥:川村真樹/寺島ひろみ
          本島美和/丸尾孝子
スペインの踊り :西川貴子/楠元郁子
          江本拓/芳賀望
ナポリの踊り  :伊東真央/井倉真未/八幡顕光 ◆
ルースカヤ   :湯川麻美子
ハンガリーの踊り:長田佳世/古川和則
2羽の白鳥   :寺田亜沙子/堀口純
新国立劇場バレエ団
指揮:アレクセイ・バクラン
東京交響楽団
  ヴァイオリン独奏:グレブ・ニキティン
  チェロ独奏   :ベアンテ・ボーマン

2010/01/06

12/11 マリインスキー・バレエ「オールスター・ガラ」(まだ途中)

2009年12月11日(金) 19:00~21:55
オールスター・ガラ


もう公演から1ヶ月近く経過してしまって、いまさらという感じなのだけど、一応覚書として。

≪シェエラザード≫
ヴィシニョーワのゾベイダは淫蕩なのだけど、自己完結したエロスという印象が強く、エロスの対象は自分自身であって他者ではないように思えた。このヴィシニョーワ&-ルプの組み合わせの「シェヘラザード」は2008年の春にNYで観ていて、その時も、意外なほどこのヴィシニョーワ=コールプのペアがクールというか体温が低いように感じられた。「白鳥の湖」の時の二人の方が、運命の恋人同士という感じで濃厚な情念が漂っていたかのように思える。それは、ヴィシニョーワが白鳥という人間ではない存在であり、魔物のように見えたからだ。

今回のヴィシニョーワは、王の愛妾であり、明らかに王から見ると愛玩物でありなおかつハーレムにいる女たちの中でもお気に入りという程度の存在なのだけど、黄金の奴隷に対しては、あくまでも女王様であり主人であるという主従の関係が見える。だけど、もちろんコールプが演じているのだから、黄金の奴隷もただの奴隷であるはずはない。一見女主人の足元にかしづいているかのように見えながらも、実は油断も隙もない。ジゴロのように妖しい魅力を持ちながらも、もう一方ではイヴに禁断の林檎を食べさせるように仕向けた蛇の姿をした悪魔のようでもある。細身でしなる肢体のコールプは、あるときはパンサーのようであるが、ヴィシニョーワの身体にからみつくと、それはアナコンダのようだ。

この二人の間に愛はなく、刹那の快楽だけが存在している。お互いをむさぼりつくすかのように全てを焼け尽くすがごとくの激しい官能表現が火花を散らせているが、魔獣の交わりのようでもあり、どこか空虚さが漂う。

狂乱の宴が絶頂を迎えた頃、シャリアール王が帰ってきて一転殺戮が繰り広げられる。黄金の奴隷も倒され、一人残されたゾベイダ。急に弱気になって許しを乞う豹変した彼女の姿を見るにつけ、彼女は天然の小悪魔だと感じた。さっきまでの女王様ぶりとは打って変わり、可哀想な女の子のようで、なんという女優ぶりなのだろうと恐れ入った。躊躇することなくゾベイダが自害したのを見て思ったのは、快楽の果てを知り尽くして、彼女はもう思い残すことも無かったのだろうということ。

それにしても、ヴィシニョーワとはなんという強力な磁力を持つバレリーナだろう。彼女と似たものを持っている人はどこにも見当たらない、唯一無二の存在。そして彼女に対抗できるのは、いまやコールプしかいないのかもしれない。

(続く)

≪シェエラザード≫ [45分]
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
振付:ミハイル・フォーキン
振付復元:イザベル・フォーキン,アンドリス・リエパ
装置・衣裳:アンナ・ネジナヤ,アナートリー・ネジニー
シャリヤール王 : ウラジーミル・ポノマリョーフ
王の弟 : カレン・ヨアンニシアン
宦官長 : ロマン・スクリプキン
ゾベイダ : ディアナ・ヴィシニョーワ
黄金の奴隷 : イーゴリ・コールプ
オダリスク : アナスタシア・ペトゥシコーワ
       : エフゲーニヤ・ドルマトーワ
       : リュー・チヨン

≪シンデレラ≫ 第2幕のパ・ド・ドゥ [8分]
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/振付:アレクセイ・ラトマンスキー
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ  ミハイル・ロブーヒン

≪ロミオとジュリエット≫ バルコニーの場面 [8分]
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/振付:レオニード・ラヴロフスキー
ヴィクトリア・テリョーシキナ  エフゲニー・イワンチェンコ

≪チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ≫ [10分]
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/振付:ジョージ・バランシン
アリーナ・ソーモワ  レオニード・サラファーノフ

≪瀕死の白鳥≫ [4分]
音楽:カミーユ・サン=サーンス/振付:ミハイル・フォーキン
ディアナ・ヴィシニョーワ

≪ザ・グラン・パ・ド・ドゥ≫ [9分]
音楽:ジョアッキーノ・ロッシーニ/振付:クリスティアン・シュプック
ウリヤーナ・ロパートキナ  イーゴリ・コールプ

≪海賊≫ 組曲 [35分]
華やぎの国~メドーラのヴァリエーション~オダリスク~パ・ダクション~コーダ
音楽:アドルフ・アダン,ほか/振付:ピョートル・グーセフ
装置:テイムラス・ムルヴァニーゼ (補佐:ミハイル・シシリヤンニコフ)
衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨーワ
メドーラ : ヴィクトリア・テリョーシキナ
コンラッド : ダニーラ・コルスンツェフ
アリ : ウラジーミル・シクリャローフ
ギュリナーラ : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
オダリスク : マリーヤ・シリンキナ
       : ヤナ・セーリナ
       : エリザヴェータ・チェプラソワ

指揮 : パーヴェル・ブベリニコフ 管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

2009/12/27

12/26 新国立劇場バレエ 「くるみ割り人形」 

12月26日(土) 14:00~ 新国立劇場 オペラパレス
新国立劇場バレエ 「くるみ割り人形」 


金平糖の精:さいとう美帆 
王子   :マイレン・トレウバエフ 
クララ  :小野絢子 
雪の女王 :堀口純 
ドロッセルマイヤー:森田健太郎
シュタルバウム  :逸見智彦(全日)
シュタルバウム夫人:楠元郁子(全日)
フリッツ     :加地暢文 
ハレーキン  :江本拓
コロンビーヌ :伊東真央
トロル    :八幡顕光
ねずみの王様 :市川透
くるみ割り人形:八幡顕光
スペイン :西川貴子/古川和則
アラビア :寺島ひろみ/貝川鐵夫
      今井奈穂/大湊由美/中田実里/原田有希
中国   :寺島まゆみ/江本拓
トレパック:福岡雄大/八幡顕光/福田圭吾
葦の精  :高橋有里/長田佳世/大和雅美
花のワルツ:遠藤睦子/丸尾孝子/西山裕子/寺田亜沙子
      陳秀介/高木裕次/輪島拓也/芳賀望

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一度チケットを取ったものの、諸般の事情で売りに出し、しかし結局観られることになって買い直した。1階席の一番後ろの端というのは新国立劇場では初体験だったけど(ほかの興行主だったらこの席はA席だと思う。ここがSというのはぼり過ぎ)、端でも比較的全体は観られた。チケットがソールドアウトだったらしく、当日券売り場にかなりの人が戻り席を求めて並んでいた。「くるみ」で土曜日マチネ公演というのは子供連れも行きやすいんでしょう。

もちろん大好きなマイレンの王子を観るというのが第一目的だったのだけど、牧阿佐美のインタビューや、初日や最初の方の公演を観た友人からの感想を聞いて、かなりネガティブな気分に。観終わった後感じたのは、プロローグとエピローグのどうしようもない薄っぺらい寒々しさ、花のワルツなどコール・ド振付がどうしたらこんなにつまらなくなるんだと思うほど面白くない、パ・ド・ドゥの振付が必要以上に難しいというか、テクニックを見せ付けるための振付になっている、衣装や装置が無駄に豪華、だけどダンサーたちは素晴らしいというものだった。

ジ・アトレに掲載された牧阿佐美のインタビューを読んで、新国立の素晴らしいソリストたちの踊りを堪能してもらうために、クララ、雪の女王、金平糖の精と分けて、他のソリストたちも見せ場を用意すると語っていて、なんという志の低さかとあきれたのだった。それでは発表会と何ら変わらないのではないかと思った。「くるみ割り人形」の観客は子供も多いし、楽しかったね~幸せな気分になったね、というところが大事なのに、それよりも、そして物語の整合性よりも、テクニック披露合戦を優先させるとは。

プロローグとエピローグを除けば、筋はオーソドックスなものだったと思うけど、とにかくこのプロローグとエピローグには殺意が起きるくらい、趣味のよろしくないものだった。同じ悪趣味でも、原作のホフマンの怪奇譚的なものや、バール版やヌレエフ版の心理描写があればまだ良かったのかもしれないけど。プロローグは現代の東京で、クララはクリスマスなのに鍵っ子でたった一人で家族の帰りを待っているという設定。そこに、現代人の風刺というか、携帯でメールを打っている女性とか、ヒップホップを踊る青年、会社員、ビニール傘を持った女性、ブランドの紙袋を持った女性、けんかしているカップルなどが登場。しかし、なんともこれがどうにもこうにも寒くて、しかも現代というよりバブルっぽいというか80年代っぽい(80年代には携帯はあまり普及していなかったけど)。現代人の孤独を描いたつもりなんだろうけど、どうにもこうにもセンスが悪くて。

クララ役の小野絢子さんは、とにかく愛らしくて素晴らしかった。容姿も可憐でクララ役がぴったりだし、この薄っぺらい脚本の中で、懸命にクララの寂しい気持ちやときめきを繊細に表現していて、魂を役の中に吹き込むのに成功していた。ラインもとても綺麗だし、音楽性も豊かで。クララの踊るシーンが少なく、特に2幕のディベルティスマンにおいて、クララは舞台の片隅に腰掛けてひとりぼっちで踊りを見ているだけで、ほとんどお仕置きで別に座らされているって感じで、寂しそうだし気の毒だったのが本当に残念。せっかくのおとぎの国に連れて行ってもらったはずなのに、そこでも一人ぼっちにさせてしまうとは、夢も希望も無いと思うのだけど。

エピローグでは、また冒頭と同じ現代の東京へとクララは戻り、そこではプロローグと同じような登場人物たちが、寒々しくスカスカの現代の風景で相変わらず孤独感を滲ませている。くるみ割り人形を手にしたクララはひとり眠りにつくと、ドロッセルマイヤーがサンタクロースに変身して橇に乗って飛んで行く。サンタを出せば夢らしくなると考えたのだろうけど、何一つ変わっていないし、幸福感のかけらも無い終わり方でがっかりした。せめて、戻っていったところには家族が待っていたとかママが起こしに来るとかあればいいのに・・・。前回の「くるみ割り人形」のワイノーネン版では、ピンクピンクの華やかな世界で、過剰感もあるものの、幸福感を感じさせてくれたのに・・。

新国立劇場のコール・ドはいつ観ても素晴らしい。先日のマリインスキーのコール・ドよりも良いくらいだ。雪の女王のソロをメーンにしている振付に不満はあるものの、群舞はとてもよく揃っていて美しく、足音も小さくてクオリティは高く、整列した時の一瞬の美に思わず息を呑んだ。雪の女王の堀口さんもプロポーションがきれいで、雰囲気はとてもよかったけど場を支配する何かがまだ足りない気がする。しかし、今が伸び盛りという感じは伝わってきた。

ディヴェルティスマンのメンバーは大変豪華で、一人一人が主役を踊ってもおかしくないメンバーぞろい。中でも、トロールとトレパックを踊った八幡さんは凄い!テクニックがあるダンサーという領域を突き抜けていて、踊る歓びを感じさせてくれるようになった。軽やかで、つま先もしっかり美しい。トレパックで共演した福岡さん、福田さんの二人も十分凄いんだけど、八幡さんはその仲でも頭一つ飛びぬけている。トロールは不気味なメイクで(ちょっと子供には恐いかも)、箱を飛び出しては舞台を所狭しと飛び回るのだけど、全身ばねのような中でも、クラシックバレエの美しさがある。

アラビアは、誰が見てもエジプトって感じのいでたちなのだけど、寺島ひろみさんの細くくびれた腰のラインのきれいさと、クレオパトラのようなメイクでの妖艶さ、柔らかい肢体が素敵だった。その次の中国は、ちょっと着物のような衣装に白塗りと、中国というよりなんちゃって日本って雰囲気なんだけど、その白塗りメイクもばっちり似合う寺島まゆみさんがとても可愛らしかった。トレパックの3人は前述の通り。スペインは、衣装とメイクがここだけ冴えなくて残念。古川さんの踊りはとてもよかったと思うんだけど。葦の精のトリオが、長田さん、高橋さん、大和さんという実力者3人を揃え、3人ともとても音感にすぐれて、よかったのだけど、真ん中にいた長田さんが、とても魅せる踊りで特に素晴らしかった。彼女のような特に上手な人がいると舞台が締まるなあ、としみじみ。ここの振付は、もうびっくりするくらいの難しいテクニックを盛り込んだものとなっていて、それをちゃんと踊れるこの3人は凄いことを実感させられた。ディベルティスマンに関して言えば、このバレエ団のソリストレベルの高さを感じられ、とても楽しめた。

花のワルツの振付は本当につまらなくて、衣装もクラシックチュチュじゃないのが残念。ソリストは西山さん、遠藤さん、輪島さんと芳賀さんの元K-Balletコンビなど素晴らしいメンバーをそろえているというのに、後方席から見ても群舞がきれいに見えない・・・。ワルツが並んで女性を軽くリフトする振付、どこかで見たことがあると思うんだけど、面白くないし。オーソドックスな振付にしておけば良かったのに。。

金平糖の精には、さいとう美帆さん。他の日にはクララも踊ったということで、キャラクター的にはどちらかといえばクララ向きの可愛らしい雰囲気。金平糖の精って、もうすこし夢のような存在というか、甘い中にも威厳があったほうがいいと思うし、ちょっと求心力が弱いと思えるところがあった。とはいえ、必要以上に難しくしてある振付をきちんとこなしていて、キラキラ感もあり堂々とした踊りだったと思う。マイレンは、今回も絶好調で美しく伸びたつま先、ふわりとしたマネージュ、完璧な5番で、その踊りの精緻さとエレガントさに惚れ惚れとした。ちょっとはにかんでシャイな雰囲気なのも、気品があって良い。(が、ヴァリエーションの時にはきっちりとキメ顔を作るところがポイント) さらに、サポートがもう素晴らしくって、さいとうさんと組むことが多いからということもあると思うけど、息がぴったり。金平糖の精が後ろ向きに跳んだところを王子が持ち上げて肩の上にリフトするというとっても難易度の高いリフトもスムーズに決まった。このアダージョの振付は、くるみというよりちょっと「眠れる森の美女」に似ていたと思う。コーダのさいとうさんの回転も素晴らしかった。そして本当の最後の最後になって、ようやくクララが一同の中に迎えられて、大団円。

主要キャスト・・さいとうさん、マイレン、小野さん、堀口さんをはじめ、八幡さんほかディベルティスマンのメンバーも非常に出来が良くて、女性コール・ドも素晴らしく、バレエ団の踊りの素晴らしさ、充実振りは実証されたので、ある意味においてはとても満足できた。それだけに、作品の出来が残念なのだ。せめて、プロローグとエピローグは改訂して欲しいなって思う。ああもったいない。

2009/12/23

12/22 YAGPガラ/シュツットガルト・バレエ「オネーギン」のキャスト変更 YAGP 2010 Japan Gala

今日はYAGP 2010 Japan Galaに行って来ました。

http://www.yagp.org/japan/2010gala.html

アシュレイ・ボーダーとゴンサロ・ガルシアの「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」が音楽性があって素晴らしく、これが本物のバランシンだなって思いました。(マリインスキーのソーモワは相変わらず音痴で、前よりはよくなっていたけどやっぱりちょっと・・だったので)ゴンサロ・ガルシアも決して小柄ではないのに、軽やかで正確なポジションで、着地音のしないマネージュが凄かったです。コーダでの大胆なフィッシュダイブも鮮烈でした。
せっかくの音符が溢れるような素敵なパフォーマンスだったのに、なぜか途中で手拍子が客席から飛び出して唖然・・・YAGP出場者の関係者だと思いますが、こういうことは厳に謹んで欲しいものです。チャイコフスキー・パ・ド・ドゥで手拍子が出たなんて前代未聞です。 

酒井はなさんとジェイソン・レイリーの「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」も、この間のマリインスキーで観たロパートキナとコールプのと全然違っていて、踊る人による違いを楽しめました。はなさんのはじけたコミカルさも本当にキュートですよね。ジェイソンは愛嬌たっぷりな中に独特のしなやかさがあって素敵でした。

それから、やはりアリーナ・コジョカルの「海賊」でのキラキラ感は尋常じゃなくて、歌うように踊りつつも、コーダでは突き刺さるようなシャープなイタリアン・フェッテを見せてくれました。パートナーのセルゲイ・ポルーニンは、ずいぶん背が伸びて大人っぽくなりましたね。まだ荒削りな感じのところもありますが、ダイナミックさと優雅さを併せ持ち、非常に華があるダンサーです。

康村和恵さんと清水健太さんの「ロミオとジュリエット」、康村さんのはかなげな繊細さがとても美しくて。清水さんのロミオは、熊川さんよりロマンティックで情熱的で良かったと思います。YAGPの創始者であるABTのゲンナディ・サヴェリエフは、得意中の得意である「ゴパック」を踊ってみせて、ファイブフォーティを連発して場内を沸かせました。

今年のローザンヌ・コンクールに出場して現在ABTIIに所属しているテルモ・モレイラや、日本のYAGP予選入賞者の中にも、おーっというテクニックの持ち主がいました。「パリの炎」の木ノ内 周さんはなかなか凄かったです。

しかし現在北米の荒天により、クリストファー・ウィールダンのカンパニー、モルフォーセスのドリュー・ジャコビーが来日不可能となってしまい、また同じくモルフォーセスのルビナルド・プロンクはリハーサル中の怪我で出演できなくなってしまったとのことで、舞台で挨拶(そして上半身を中心とした動きを少し)してくれました。

第1 部
1. グラン・デフィレ Grand Defile
振付:カルロス・ドス・サントス・ジュニア ・Carlos dos Santos, Jr.
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー ・Peter Ilyitch Tchaikovsky
YAGP 2010 日本予選参加者 YAGP 2010 Japan Semi-Finals Participants

2. ワン・タンゴ One Tango
振付:レイモンド・レベック ・Raimondo Rebeck
音楽:アスター・ピアソラ ・Astor Piazzola
玉川 貴博 Takahiro Tamagawa (YAGP Alumnus)
シュツットガルト・バレエ ジョン・クランコ・スクール John Cranko School of Stuttgart Ballet

3. サタネラよりグラン・パ・ド・ドゥ "Satanella" Pas de Deux
振付:マリウス・プティパ ・Marius Petipa
音楽:チェザーレ・プーニ ・Cesare Pugni
毛利 実沙子 Misako Mori (YAGP Alumna)
末原 雅広 Masahiro Suehara (YAGP Alumnus)
ソウダバレエスクール Soda Ballet School

4. オラ Hora
振付:島﨑 徹 ・Toru Shimazaki
音楽:作者不詳 ・Unknown
淵上 礼奈 Reina Fuchigami (YAGP Alumna)
英国ロイヤルバレエスクール The Royal Ballet School

5. コッペリアよりスワニルダのバリエーション Variation from Swanilda
振付:アルテュール・サン・レオン ・Arthur Saint-Leon
音楽:レオ・ドリーブ ・Leo Delibes
左右木 茉琳 Marin Soki
左右木健一・くみバレエスクール Soki Ballet School
YAGP 2010 日本予選 プリコンペティティブ部門第1 位 YAGP 2010 Japan Semi-Finals
Pre-Competitive Age Division 1st Place

6. グラン・パ・クラシックよりバリエーション Variation from Grand Pas Classique
振付:ヴィクトル・グゾフスキー ・Victor Gsovsky
音楽:ダニエル=フランソワ=エスプリ・オベール ・Daniel-François-Esprit Auber
宮川 新大 Arata Miyagawa
坪田バレエ団附属坪田バレエスクール Tsubota Ballet School
YAGP 2010 日本予選 シニア部門男子第1 位 YAGP 2010 Japan Semi-Finals
Senior Age Division Men 1st Place

7. アワ・ソングズ Our Songs
振付:島﨑 徹 ・Toru Shimazaki
音楽:アルカンジェロ・コレリー ・Arcangelo Corelli
小池バレエスタジオ Koike Ballet Studio
YAGP 2010 日本予選 アンサンブル部門 YAGP 2010 Japan Semi-Finals Ensemble Category
8. パリの炎よりグラン・パ・ド・ドゥ "The Flames of Paris" Pas de Deux
振付:ワシリー・ワイノーネン ・Vasily Vainonen
音楽:ボリス・アサフィーエフ ・Boris Asafiev
涌田 美紀 Miki Wakuta (YAGP Alumna)
木ノ内 周 Shu Kinouchi (YAGP Alumnus)
ABT ジャクリーン・ケネディ・オナシス・スクール American Ballet Theatre Jacqueline Kennedy Onassis School

9. シャドウ Shadow
振付:金田 あゆこ ・Ayuko Kaneta
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、ダフト・パンク ・Peter Ilyitch Tchaikovsky, Daft Punk
金田こうのバレエアカデミー Kaneta Kono Ballet Academy
YAGP 2009 NYC ファイナル アンサンブル部門 金メダル YAGP 2009 NYC Finals Ensemble Category Gold Medal

10. グラン・パ・ド・ドゥ Le Grand Pas de Deux
振付:クリスチャン・シュプック ・Christian Spuck
音楽:ジョアッキーノ・ロッシーニ ・Gioachino Rossini
酒井 はな Hana Sakai
新国立劇場バレエ団 New National Theater Ballet, Tokyo
ジェイソン・レイリー Jason Reilly
シュツットガルト・バレエ団 Shututtgart Ballet

第2 部
1. デフィレ Defile
振付:クリスチャン・シュプック ・Christian Spuck
音楽:ジャン・シベリウス ・Jean Sibelius
YAGP 出身者 YAGP Alumni
YAGP 2010 日本予選参加者 YAGP 2010 Japan Semi-Finals Participants

2. ノット・エニー・モア Not Any More
振付:レイモンド・レベック ・Raimondo Rebeck
音楽:ラサ・デ・セラ ・Lhasa de Sela
スカイラー・ブラント Skylar Brandt (YAGP Alumna)
テルモ・モレイラ Telmo Moreira (YAGP Alumnus)
ABT II

3. ロミオとジュリエットよりパ・ド・ドゥ “Romeo and Juliet” Pas de Deux
振付:熊川 哲也 ・Tetsuya Kumakawa
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ ・Sergei Prokofiev
康村 和恵 Kazue Yasumura
清水 健太 Kenta Shimizu (YAGP Alumnus)
K バレエカンパニー K-Ballet Company

4. プシュケ Psyche
振付:島地 保武 ・Yasutake Shimaji
音楽:熊地 勇太 ・Yuta Kumachi
衣装:川口 知美(Costume80+) ・Tomomi Kawaguchi
酒井 はな Hana Sakai
新国立劇場バレエ団 New National Theater Ballet, Tokyo
島地 保武 Yasutake Shimaji
ザ・フォーサイス・カンパニー The Forsythe Company

5. コントラディクション Contradiction
振付:カルロス・ドス・サントス・ジュニア ・Carlos dos Santos, Jr.
音楽:セルゲイ・ゴルデイエフ ・Sergey Gordeev
ルビナルド・プロンク Rubinald Pronk
モルフォーセス/ザ・ウイールドン・カンパニー Morphoses/The Wheeldon Company

6. チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ Tchaikovsky Pas de Deux
振付:ジョージ・バランシン ・George Balanchine
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー ・Peter Ilyitch Tchaikovsky
アシュリー・ボーダー Ashley Bouder
ゴンザロ・ガルシア Gonzalo Garcia
ニューヨーク・シティ・バレエ New York City Ballet

7. ゴパック Gopak
振付:ロスチフラフ・ザハーロフ ・Rostislav Zakharov
音楽:ヴァシリー・ソロヴィヨフ=セドイ ・Vasily Solovyov-Sedoi
ゲナディ・サヴェリエフ Gennadi Saveliev
アメリカン・バレエ・シアター American Ballet Theatre

8. 海賊よりグラン・パ・ド・ドゥ "Le Corsaire" Pas de Deux
振付:マリウス・プティパ ・Marius Petipa
音楽:リッカルド・ドリゴ ・Richard Drigo
アリーナ・コジョカル Alina Cojocaru
セルゲイ・ポルーニン Sergei Polunin
英国ロイヤルバレエ団 The Royal Ballet

ところで、シュツットガルト・バレエの12月25日マチネの「オネーギン」のキャストが変更になり、オネーギン役が今日出演したジェイソン・レイリーになっています。(ヨーロッパも悪天候だというのに、大急ぎで帰ってこなくちゃいけなくて大変ですよね・・・)タチヤーナはアリシア・アマトリアン。当初予定されていたタチヤーナ役のミリアム・サイモンが怪我をしたようで、パートナーのエヴァン・マッキーも降板したとのことです。(というわけで、クリスマスはシュツットガルトの予定でしたが、私も予定をキャンセルしました・・・)さらに併せてグレーミン役も初役のアレクサンダー・ジョーンズからニコライ・ゴドノフに代わっています。

12/25 Onegin
Ballett in drei Akten nach Alexander Puschkin

Onegin Jason Reilly
Lenski William Moore
Tatjana Alicia Amatriain
Olga Hyo-Jung Kang
Fürst Gremin Nikolay Godunov

14.00-16.30

2009/12/21

12/20 シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー「聖なる怪物たち」Sacred Monsters Sylvie Guillem & Akram Khan

シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー
「聖なる怪物たち」
芸術監督・振付:アクラム・カーン

ダンサー:シルヴィ・ギエム、アクラム・カーン

振付(ギエムのソロ):林懐民
振付(カーンのソロ):ガウリ・シャルマ・トリパティ

音楽:フィリップ・シェパード
およびイヴァ・ビトヴァー、ナンド・アクアヴィヴァ、トニー・カサロンガの歌より

照明:ミッキ・クントゥ
装置:針生康
衣裳:伊藤景
構成:ギィ・クールズ

演奏:アリーズ・スルイター(ヴァイオリン)
ラウラ・アンスティ(チェロ)
コールド・リンケ(パーカッション)
ファヘーム・マザール(ヴォーカル)
ジュリエット・ファン・ペテゲム(ヴォーカル)

Direction artistique, chorégraphie, interprétation: Akram Khan
Interprétation: Sylvie Guillem

Chorégraphie du solo de Sylvie Guillem: Lin Hwai-Min
Chorégraphie du solo d'Akram Khan: Gauri Sharma Tripathi
Lumieres: Mikki Kunttu
Décors: Shizuka Hariu
Costumes: Kei Ito
Dramaturgie: Guy Cools

「聖なる怪物」というのは、19世紀フランスで使われ始めた大スターに対するニックネームだそうな。

クラシックバレエのダンサーとしてのシルヴィ・ギエムは、凄いとは思うものの実際のところは私の好みとはちょっと外れていた。マリファントの作品を踊るギエムを見ても、凄い、究極のダンサーだとは思うのだけど、琴線に触れる部分が無かった。ところが、この「聖なる怪物たち」のギエムは、もう~ものすごく魅力的で、チャーミングで、リラックスしながらもやっぱり凄くって。「大好き!」と言ってもいいくらい、素敵だった。

日本人の舞台芸術家、針生康さんによる、白く、シンプルでセンスの良い舞台芸術。和紙をしわくちゃにしたような、カーブした白壁が美しい。上手に、ヴァイオリン、チェロ、パーカッション奏者と、二人の歌手。まず、舞台上で演奏される音楽が素晴らしくて。東洋的な音楽と西洋音楽を融合させたような現代音楽なのだけど、スリリングで旋律がエキゾチックで美しい。シルヴィは長い鎖を持っているかのように見えたけど、実際にはそれは鈴を鎖状につなげたもの。

シルヴィのソロは、クラウド・ゲイト・ダンスシアターの林懐民(リン・ファンミン)が振付けたもので、シャープでスタイリッシュで強靭なのにしなやか、彼女の驚異的なエクステンションが盛り込まれている。天を突き刺すばかりのつま先、完璧なアティチュードターン、細長いのに雄弁で力強い腕。そしてアクラム・カーンが、シルヴィがバレエダンサーとなるまで、そしてなってからの彼女の足跡について語り始める。クリシュナになりたかったけど、髪が薄くなって、さてどうする?という独白も。この台詞の応酬については、予めダイアローグをNBSのサイトで予習しておいたのが役に立ったけど、シルヴィもアクラムも聞き取りやすい英語で話してくれたので、字幕を見る必要はほとんどなかった。
http://www.nbs.or.jp/stages/0912_sacredmonsters/movie.html

ダンスの中に会話があるのは、不思議な感じもしたけれども、とても親密な空気を創り上げることに成功していた。天才少女として出発し、異端児としてある種「怪物」扱いされてきたシルヴィ。自分の持っていたクリシュナ像との乖離を感じて、新しい世界を切り開いていったアクラム。異なるバックグラウンドを持つ二人が、お互いの持つ世界を尊重しつつ、さらに新しい地平を切り開いていく、それも肩肘張らず、伸びやかに、様々なくびきから解放された自由な姿で。やり取りにはユーモアがこめられていて、イタリア語を話すシルヴィに、「イタリア語はわからないよ」ってアクラムが返すところも可笑しいし、チャーリーブラウンに出てくるサリーの話をするシルヴィが、とてもキュートで生き生きしている表情を見せてくれた。「エマーヴェイユ」(驚嘆)の話を一生懸命するところの、まさにクリスマスツリーを目の前にした子供のようにキラキラした瞳をしたシルヴィを見て、なんて魅力的な人だろう、ってこちらも自然に笑顔になった。(そして、イスラム教徒として育てられたからクリスマスツリーのことを言われても、という絶妙なアクラムの返し技!)

二人がパ・ド・ドゥを踊る時、動きはシンクロしているしタイミングは見事に合っている。明らかにダンススタイルが違うのだけど、その異なったダンススタイルが融合はしていないけど共存していて、1+1が100になったような感じで、魂が共鳴しているように見えた。背が高くて細く、色が白くて赤い髪のシルヴィ。褐色の肌に小柄でがっしりしているアクラム。この二人の外見の組み合わせの妙。

アクラムのカタック(インド古典舞踊)に基づいた動きがまた凄い。足に無数の鈴をつけて、鈴の音をさせながら足を踏み鳴らす。目にも留まらぬ速さのステップ。重心を低くし、強靭で疾走感あふれるアクラムの回転。呼応するように、高速でアティチュードターンやシェネをするシルヴィ。異文化が交錯しながら、まだ見ぬ新しい地平を切り開いていく様子に、こちらが「エマーヴェイユ」する思いでワクワクした。

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2009/12/14

12/10 マリインスキー・バレエ「オールスター・ガラ」(まだ途中)

2009年12月10日(木) 19:00~21:55
オールスター・ガラ

≪シェエラザード≫ [45分] Scheherazade
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ/振付:ミハイル・フォーキン
振付復元:イザベル・フォーキン,アンドリス・リエパ
装置・衣裳:アンナ・ネジナヤ,アナートリー・ネジニー
シャリヤール王 : ソスラン・クラーエフ
王の弟 : カレン・ヨアンニシアン
宦官長 : ロマン・スクリプキン
ゾベイダ : ウリヤーナ・ロパートキナ Uliana Lopatkina
黄金の奴隷 : ダニーラ・コルスンツェフ Danila Korsuntsev
オダリスク : アナスタシア・ペトゥシコーワ
       : エフゲーニヤ・ドルマトーワ
       : リュー・チヨン

19時開演は、職場から上野まで遠い私は本当に助かる。ある程度は余裕を持って劇場につけるので、最初からリラックスして見られるし。でも、今回のマリインスキー来日の東京公演は何でこんなに平日ばかりなのだろうか。絶対に動員に影響していると思うのだけど…。平日に18時半なり19時に上野に行ける人ばかりとは限らないし、子供連れにもきついと思うし、地方から来る人もいるんだし。

最初マリインスキーの今回の来日公演が発表された時には、「フォーキン・プロ」を上演するとのことで、大喜びしたものだった。「シェヘラザード」が大好きで、去年の4月のマリインスキーのNY公演でフォーキン・プロを上演したので、NYまで観に行って大満足したのだ。それが一転オールスターガラとなってがっかりしたのだが、「シェヘラザード」を上演してくれるというので、本当に嬉しかった。しかも、パ・ド・ドゥではなく、ちゃんと脇のダンサーもつけて、舞台装置も持ち込んで全部やってくれたというのが素晴らしい。が、最大の問題はオーケストラ。オーバーチュアも演奏してくれるのはいいのだが、いきなりここでの演奏がへたっていて萎える。

ロパートキナのゾベイダは、華奢な身体もしなやかでとても艶やか、美しくセクシーなのだけど、王に愛されていてもとても淋しそうで空虚感が漂い、籠の鳥のよう。宦官長を買収して奴隷の部屋の鍵を手に入れるときには、悲壮感というか、もう彼を出してもらわないと死んでしまうわ、という切迫感があるようだった。とても高貴でクールそうに見えても、その中には愛に飢えている小さな女の子がいるようだった。鍵を開け、鍵の束を宦官長に投げ返すところが本当に嬉しそうで。

解放されて飛び出してきたダニーラ・コルスンツェフの黄金の奴隷。今まで、王子などのノーブルな役での彼しか観てこなかったからだけど、上半身の逞しさと顔の小ささにびっくり。うわ~意外とセクシーじゃない?、と思ったのだけど、ゾベイダを見る目が子犬のようで・・・(この日観た友達がみんな、ダニーラはワンコのようだったと言っていて)。でも、その熱すぎる真摯なまなざしは、真剣にゾベイダを愛しているのが直球で伝わってきて、思わず胸が熱くなる。ゾベイダの足元に立派な体躯の奴隷が身を投げ出して、彼女の足にまとわりつく姿・・・うーん切ない。おずおずと女王様の身体に手を触れるときの遠慮がちな様子も切ない。

そんな純情一途な奴隷の姿を見て、ゾベイダの心が一気に燃え上がり、官能の青い炎が立ち上る。あくまでも女主人と奴隷という立場を踏まえてリードしつつも、時に自制心が崩れて思わず快楽に身をゆだねて身をくねらせるゾベイダの姿は、サディスティックでありながらも抑えきれない欲望が漏れて来て大変エロいことに。折り重なる二人の姿は、いけないことをしているという感じがよく出ていて、すごく妖しくてエロティックだった。

アダージオから一転アップテンポになって、二人がシンクロして踊る時の前アティチュードにした脚の角度がぴったりと揃っているところにゾクゾクした。二人の気持ちが一つになっているんだな、と。華奢なロパートキナを包み込むような大柄なダニーラには、包容力が感じられ、ここでも女王様でありながらも心の中に小さな女の子を抱えているゾベイダの心境、一瞬の刹那の幸せが見えてくるようだった。

ダニーラはあの長身と大きな体躯なのに、ジュッテの後ろ足も高くて美しいし、着地の音も見事に消していた。ランベルセをするときの柔らかさも素敵だし、長い腕と立派な上腕筋も美しい。難を言えば、奴隷役を演じていて、力強い踊りを見せていても、やっぱり彼は貴公子的であるということ。奴隷たちの群舞を引きつれて先頭で踊っても、若い彼らと比較してパワーでも劣っていないし大きいので迫力がある。だけど、ひときわ踊りが美しくエレガントなので、彼はもともとの出自は高貴なものだったのかしら、と思ってしまった。そういう被虐的な設定だとますますこちらとしては萌えるわけだけど。

狂乱の宴が最高潮となり、ゾベイダが階段の上から奴隷へと腕を差し出しもう一度、という最高にセクシャルな瞬間が到来しようととき。シャリアール王が弟と共に帰ってきて、ハーレムは一転して大殺戮が繰り広げられる。後宮の人々が無残にも皆殺しにされ、黄金の奴隷も斃れる。一人残されたゾベイダは、甘えるように命乞いをして、肢体を王に色っぽく絡ませる。が、それはただ命乞いをするふりをしただけのもの。隙を見て彼から短刀を奪い、一思いに突き刺して自害。その時の彼女の表情には、お気に入りの奴隷を失って再び籠の鳥として生きることには意味は無い、というため息と厭世感が、誇り高さと共に感じられた。ゾベイダは黄金の奴隷を本気で愛していたわけではない。だけど、彼は彼女の自由と矜持の象徴だったのではないか、それを失ってしまったからには、もう生きることには何の価値も無いと感じさせたロパートキナのアプローチだった。


≪ジゼル≫ 第2幕のパ・ド・ドゥ [9分] Giselle
音楽:アドルフ・アダン/振付:ジュール・ペロー,ジャン・コラーリ,マリウス・プティパ
アリーナ・ソーモワ  ミハイル・ロブーヒン Alina Somova Mikhail Lobukhin

コレゴワの代役でソーモワがジゼル役に。彼女はこの役を踊ったことがあるのかしら?ウィリの役なので、メイクも抑え目で、踊りの方も丁寧に踊ろうとしているのはよく伝わってきた。でも、長すぎる手脚をコントロールするのに苦労していた模様。それから、どうも彼女の首の動きが気になってしまった。ジゼル2幕なのに首を上げすぎていたと思う。ジゼルは首から背中へかけてのラインがとても大事なのに。ロブーヒンも普段アルブレヒトを踊っているのかなあ。当初は「タリスマン」に出演予定だったけどオスモルキナの降板で「ジゼル」出演となったわけで。彼はやっぱり、力強い役は似合うけど、貴公子キャラではないのだよね。テクニックはあるので、ヴァリエーションの時の跳躍の高さには目を見張ったけど、アルブレヒトではなかった。いずれにしても、珍しいものが観られたということで。

≪グラン・パ・クラシック≫ [11分] Grand Pas Classique
音楽:ダニエル・オーベール/振付:ヴィクトール・グゾフスキー
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ  マクシム・ジュージン Evgenia Obraztsova Maxim Zyuzin

叙情的で愛らしいオブラスツォーワが「グラン・パ・クラシック」を踊るというのも、珍しい機会。「グラン・パ・クラシック」といえばテリョーシキナの強靭なテクニックが印象的だったからだ。で、ジェーニャはあまり調子が良くなかったのか、ピルエットの軸はずれるし、バロネのところも鉄壁ではなかったけど、笑顔で乗り切ったところは良かった。マキシム・ジューシンもテクニックがすごく強い、ってわけではないと思うけど、爽やかな若者で、ビジュアル的にジェーニャとのバランスが良い。つま先もポール・ド・ブラもとても美しく、きちんと教育されたダンサーだなっていうのがよくわかる。アントルシャ・シスも綺麗だった。彼の将来はすごく期待できそう。

それから音楽のアレンジがとても妙で、これではダンサーは踊りにくかろう、と心底気の毒に思いました。

≪シンデレラ≫ 第2幕のパ・ド・ドゥ [8分] Cinderella
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/振付:アレクセイ・ラトマンスキー
ディアナ・ヴィシニョーワ  イーゴリ・コールプ Diana Vishneva Igor Kolb

ラトマンスキーの「シンデレラ」はヴィシニョーワが初演キャストだったそうで、ここでようやく役に合ったダンサーの演目を観ることができたとしみじみ。このシーンは、舞踏会にやってきたシンデレラが王子と出会うところなのだけど、最初からヴィシニョーワがゴージャスで美しさで光り輝き、女王様の風格。チュチュではなくてドレスなので、ちょっとだけヌレエフ版の「シンデレラ」のようだった。そして彼女の驚異の身体能力!コンテンポラリー要素の強いエッジの効いたパをやすやすと軟体動物のように踊り、自由奔放なシンデレラを演じて見せた。かと思ったら、シンデレラが帰らなくてはならない時間を気にして、舞踏会の客人たちに「今何時?」とちょっと焦りながら聞いて回っているところはコケティッシュで可愛らしい。盛装した美男美女の中で一人白いタキシード姿のコールプ、立ち姿は美しいんだけどやっぱりちょっと異様さがある。でも、彼のサポートは本当に上手くって、あのサポートがあるから、ヴィシニョーワが自由自在にしなやかに動き回れるんだな、と思った。二人の交わす視線は甘く、会話が聞こえてきそう。ラストのマイムの意味はよくわからなかったけど、その中に込められた想いは伝わってきた。

≪瀕死の白鳥≫ [4分] Dying Swan
音楽:カミーユ・サン=サーンス/振付:ミハイル・フォーキン
ウリヤーナ・ロパートキナ Uliana Lopatkina

ロパートキナの「瀕死の白鳥」は、至高のもの。漣のように滑らかなパ・ド・ブレ、白い翼は傷つきながらも天に向かって羽ばたく。誇り高く孤独な白鳥は苦闘し、さまざまな感情を昇華させながら、やがて死を受け入れ、ため息をついて永遠の眠りにつく。4分間が永遠の時のように思えた。ロパートキナの顔と胸の角度が絶妙で、白鳥の化身である彼女の強い意志と高潔な魂を感じさせた。

≪タランテラ≫ [7分] Tarantella
音楽:ルイス・モロー・ガチョーク/編曲:ハーシー・ケイ/振付:ジョージ・バランシン
ヴィクトリア・テリョーシキナ  レオニード・サラファーノフ Viktoria Tereshikina Leonid Sarafanov
ピアノ・ソロ:リュドミラ・スヴェシニコワ

「タランテラ」は、身体能力と音楽性にすぐれた、どちらかといえば小柄なダンサーがきびきびと踊るイメージの強い演目。サラファーノフもテリョーシキナも大柄なわけではないけど、手足が長くて細くて、いかにもロシア的なダンサーなので、バランシンの「タランテラ」という感じはしなかった。でも、この二人はやっぱり凄いダンサーだ。ロシアン・アカデミックでしなやかで、こんなに身体が動くの?という凄いテクニックを見せてくれた。高く脚を蹴り上げて、頭上に掲げたタンバリンを足で打つサラファーノフ、得意のプレパレーションなしの連続トゥールザンレールもたっぷりと見せてくれた。テリョーシキナの長い脚でのエシャッペのきれいなこと。なによりも、二人ともとっても楽しそうで、客席とコミュニケーションを取りながらノリノリで踊ってくれたのが嬉しい。サラファーノフは客の乗せ方も上手くて、場内には手拍子が響き渡った。これを観て、この二人が好きになった人もたくさんいるのでは?

≪海賊≫ 組曲 [35分] Le Coisaire Suite
華やぎの国~メドーラのヴァリエーション~オダリスク~パ・ダクション~コーダ
音楽:アドルフ・アダン,ほか/振付:ピョートル・グーセフ
装置:テイムラス・ムルヴァニーゼ (補佐:ミハイル・シシリヤンニコフ)
衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨーワ
メドーラ : アリーナ・ソーモワ Alina Somova
コンラッド : エフゲニー・イワンチェンコ Evgeny Ivanchenko
アリ : ウラジーミル・シクリャローフ Vladimir Shklyarov
ギュリナーラ : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ Evgenia Obraztsova
オダリスク : マリーヤ・シリンキナ Maria Shrinkina
: ヤナ・セーリナ Yana Selina
: エリザヴェータ・チェプラソワ Elizaveta Cheprasova

指揮 : パーヴェル・ブベリニコフ 管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

2009/12/11

12/10 マリインスキー・バレエ「オールスターガラ」(まだこれから)

色々とやることがたまってしまって、今日感想を書く余裕が無いので、取り急ぎキャストのみ。

今日もとっても楽しくて、豪華で最高でした。難を言えば、オーケストラが全然ダメ(特に「シェヘラザード」と「シンデレラ」は酷かった。。。特に「シェヘラザード」は金管の酷さに泣きたくなった)だったのと、上演順は「海賊」が先で「シェヘラザード」を最後に持っていったほうが盛り上がったのでは、というところでしょうか。あとはほとんど満足です。あ、「海賊」のラストで幕が下りるのが早すぎてせっかくの決めポーズが見られませんでした!ってことで、ダンサーはみんな素晴らしかったです。

ソーモワのジゼルはちょっと微妙でしたが(柔らかすぎるのと、首の使い方がちょっと変)、メドーラの方は今までの悪い癖がなくなっていてとても良かったと思います。メイクなども今までより落ち着いていて、可愛らしかったし。

「シェヘラザード」、ダニーラ・コルスンツェフの黄金の奴隷、セクシーさは低めだけれども、一途で忠実な奴隷で、女主人を見つめる熱いまなざしがとても素敵でした。ノーブルな役が多い人ですが、あの衣装を着ると、実は非常にたくましい上半身の持ち主で、顔がとても小さく腕が長く、非現実的なくらい素晴らしい体型だと惚れ惚れしました。大柄なのに着地音も少なく、ジュッテがものすごく綺麗でした。ロパートキナはとても色っぽかったけど、でも去年のNYでコズロフ相手に踊った時の方がエロエロ度は上で、今回はもう少し自制心があったような。

それから「タランテラ」のテリョーシキナとサラファーノフが凄かったです。これがバランシンか?と聞かれると違うような気もしますが、二人とも弾けていて、実に楽しそうに踊っていました。サラファーノフが頭上に掲げたタンバリンを、バットマンで足先で打ちつけいていたのに驚きました。エシャッペしてポアントのままプリエする独特の振付でのテリョーシキナの脚がまた凄かったです。この人たちの身体能力、しなやかさ、ありえないくらい凄すぎ!それから、「タランテラ」はリュドミラ・スヴェシニコワさんのピアノがすごくカッコよかったです。

明日がマリインスキー祭りの最終日。大変でしたが、楽しかったです。あと一日、頑張ります~


2009年12月10日(木) 19:00~21:55
オールスター・ガラ

≪シェエラザード≫ [45分]
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ/振付:ミハイル・フォーキン
振付復元:イザベル・フォーキン,アンドリス・リエパ
装置・衣裳:アンナ・ネジナヤ,アナートリー・ネジニー
シャリヤール王 : ソスラン・クラーエフ
王の弟 : カレン・ヨアンニシアン
宦官長 : ロマン・スクリプキン
ゾベイダ : ウリヤーナ・ロパートキナ
黄金の奴隷 : ダニーラ・コルスンツェフ
オダリスク : アナスタシア・ペトゥシコーワ
       : エフゲーニヤ・ドルマトーワ
       : リュー・チヨン

≪ジゼル≫ 第2幕のパ・ド・ドゥ [9分]
音楽:アドルフ・アダン/振付:ジュール・ペロー,ジャン・コラーリ,マリウス・プティパ
アリーナ・ソーモワ  ミハイル・ロブーヒン

≪グラン・パ・クラシック≫ [11分]
音楽:ダニエル・オーベール/振付:ヴィクトール・グゾフスキー
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ  マクシム・ジュージン

≪シンデレラ≫ 第2幕のパ・ド・ドゥ [8分]
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/振付:アレクセイ・ラトマンスキー
ディアナ・ヴィシニョーワ  イーゴリ・コールプ

≪瀕死の白鳥≫ [4分]
音楽:カミーユ・サン=サーンス/振付:ミハイル・フォーキン
ウリヤーナ・ロパートキナ

≪タランテラ≫ [7分]
音楽:ルイス・モロー・ガチョーク/編曲:ハーシー・ケイ/振付:ジョージ・バランシン
ヴィクトリア・テリョーシキナ  レオニード・サラファーノフ
ピアノ・ソロ:リュドミラ・スヴェシニコワ

≪海賊≫ 組曲 [35分]
華やぎの国~メドーラのヴァリエーション~オダリスク~パ・ダクション~コーダ
音楽:アドルフ・アダン,ほか/振付:ピョートル・グーセフ
装置:テイムラス・ムルヴァニーゼ (補佐:ミハイル・シシリヤンニコフ)
衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨーワ
メドーラ : アリーナ・ソーモワ
コンラッド : エフゲニー・イワンチェンコ
アリ : ウラジーミル・シクリャローフ
ギュリナーラ : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
オダリスク : マリーヤ・シリンキナ
: ヤナ・セーリナ
: エリザヴェータ・チェプラソワ

指揮 : パーヴェル・ブベリニコフ 管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

2009/12/10

12/9 マリインスキー・バレエ イワンと仔馬  Mariinsky Ballet Little Humpbacked Horse

ものすごーく面白かったし楽しかったです。でも、疲れた~。これでも、「眠り」は1回しか行かなかったし、昨日のゲルギエフ指揮のほうの「イワンと仔馬」は行かなかったのに、あと2日連続で上野通いがあるかと思うと、自分の体力の無さを思い知らされるというか。仕事しながら連日上野通いは辛い・・・上野から家が遠いというのもあるんだけど。ジャパンアーツのブログでは、連日サイン会のレポートもアップされていていいなあ、って思うんだけどとても並ぶ元気がありません。踊った後で遅くまでサイン会をやるダンサーたち、大変だわ。

「せむしの仔馬」の物語は、ロシア人なら誰でも知っているおとぎ話なのだそうです。もう今回で日本公演は終わりだけど、一応ストーリーはプログラムなどで予習して行ったほうがいいかもしれません。

追記:ジャパンアーツのブログで、写真入りのあらすじがあります。9日のキャストとほぼ同じダンサーによる写真も。
http://ja-ballet.seesaa.net/article/123612954.html

キッチュでロシア的な衣装や装置がキュートでなんとも和みます。王様の冠はサンタさんの帽子のようだし、馬たちの、馬を模したステップや手つきがかわいい。なんといっても、仔馬のキュートなことといったら!去年マリインスキーに入団したばかりのイリヤ・ペトロフは、幼さの残る顔立ちと素朴さが本当に仔馬みたいで、華奢で微笑ましいことといったら、もう!軽やかですばしっこくて愛らしくて、ペットにしたいくらい。イワンと仔馬が並んで一緒に跳躍しながら横切ったりマネージュするところは、さすがにペトロフはロブーヒンに負けているところもあったけど、でもこの二人が並んで跳ぶところには、胸がすくような爽快感とワクワク感がありました。

原色を多用してポップな中にも、ちょっとグロテスクだったりシュールだったりするデザインが紛れ込んでくるところが、子供向けの作品とは一線を画しています。大きな月に模様が浮かび上がったり、ジプシーたちがでっかく顔をプリントしたシャツを着ていたり、海の精たちが胸のところに自分の顔を逆さまにプリントした服を着ていたりと、考えてみると悪夢に出てきそうなくらい不気味だったりします。大体、海の底に住んでいる精たちは白塗りにスイムキャップをかぶっていて、まるで暗黒舞踏のようだったりするし。怪しい集団があちこちに出てきて笑えました。

ラトマンスキーの振付って、他の現代振付家とはちょっと違っていて、力強いところと軽やかなところが同居していたり、民族性が濃厚に出ていたり、でも音楽性も豊かで面白いんです。

前回の来日公演では「白鳥の湖」で道化を踊っていたアンドレイ・イワーノフが王様役。本当に絵本から抜け出たようなこれまたちっちゃくてバカで可愛い王様で、落書きしたようなメイクしているし。確かに姫君に言い寄ったり、ちょっとエロ爺な王様だけど憎めない感じで、熱湯の中で死んでしまうほど悪い人には見えなかったような。でもその死にっぷりも絵になっていました。死んでいる人を指して言うのも不謹慎ですが、その姿にはおなかを抱えて笑いそうになっちゃいました。イワーノフの演技がもう達者で、可愛くて助平で面白い!それからずる賢い侍従のバイムラードフは、あのカッコいいスペインとも、妖しいカラボスともまた違った、なんともクネクネしていて笑える小悪党を演じていて爆笑モノ!帽子を取られてあっけに取られる表情からは思わず台詞が聞こえてきそう。彼の表情の変化を見ているだけでも飽きないのに、身体の動きもすごいことになっていて、一つ一つの身体のパーツのあまりの雄弁さにあっけに取られるほどでした。

もちろんテリョーシキナが素晴らしかったのはいうまでもありません。お姫様だし、可愛いところもあるんだけど生まれ持った高貴さで輝いているし、王様のところに来てからのアンニュイぶりや、王様を拒絶してイワンと仲良くしようとするイタズラな表情はちょっと色っぽい。彼女はラインが美しいだけでなく、柳のようにしなやかな身体を持っていて、特にランベルセの綺麗なこと。しなやかなんだけど、くにゃっとしなくて凛としているのが彼女の素敵なところです。

イワン役のロブーヒンは、最初はちょっとおバカな感じで純朴なところが、キャラクターによく合っていました。豪快な持ち味の人だと思うんだけど、前回の来日や合同ガラのときよりも踊りが丁寧になっていました。1幕の(間に小さなプレパレーションが入るものの)6回連続トゥール・ザン・レールも決まっていたし、特に最後の方の鬼のような連続ブリゼ・ボレでもすごくよく身体が動いていて、つま先も綺麗でした。王子様に変身するところが面白くって、熱湯の中に入ったかと思ったら、めちゃめちゃわかりやすく堂々と着替えているんですよね~。水槽の前で踊ってごまかそうとする仔馬がまた可愛くって。ラストのソロの前に、イワンが「やるの?本当にやっていいの?」って姫君に確認してから「じゃあ、やっちゃうね」って踊りだすのが、なんともほほえましくて。そして二人のパ・ド・ドゥはとてもロマンティックでスウィートでした。

エカテリーナ・コンダウローワは、雌馬の時のエルフのような大きな耳もセクシーでキュートだったし、海の女王での、その場を支配するゴージャスでクールな美しさもさすが。大柄なのに、踊りは丁寧で柔らかくて、存在感たっぷり。

ジプシーの中に、「白鳥の湖」のスペインでラテン系の色男ぶりが印象的だったカレン・ヨアンニシアンがいました。あの奇抜な衣装を着ていても、エキゾチックな美しさは相変わらず。ジプシー軍団は女性ダンサーたちも、エレーナ・バジェノワヤポリーナ・ラッサーディナ、リュー・チヨンといったプリンシパル・キャラクター・アーティストを投入していて、みんなとっても艶やかで官能的でした。(なのに、あの顔プリントシャツ・・・)

他愛も無いストーリーと言えばそこまでなのですが、カラフルでおもちゃ箱をひっくり返したような多彩さが楽しくて、あっというまの2時間でした!マリインスキー管弦楽団の演奏も、厚みがあって色彩豊かで良かったです。ものすごくノッていました。大団円で楽しく終わった後、幕の中から出演者たちの歓声が聞こえてきたのも嬉しい余韻でした。

2009年12月9日(水) 19:00~21:20
イ ワ ン と 仔 馬 全2幕
音楽 : ロジオン・シチェドリン
振付 : アレクセイ・ラトマンスキー (2009年)
台本 : マクシム・イサーエフ
音楽監督 : ワレリー・ゲルギエフ
装置・衣裳 : マクシム・イサーエフ
照明 : ダミール・イスマギロフ
指揮 : アレクセイ・レプニコフ
管弦楽 : マリインスキー歌劇場管弦楽団

≪出演≫
姫君 : ヴィクトリア・テリョーシキナ
イワン / 皇子 : ミハイル・ロブーヒン
仔馬 : イリヤ・ペトロフ
侍従 : イスロム・バイムラードフ
皇帝 : アンドレイ・イワーノフ
父親 : ロマン・スクリプキン
雌馬 / 海の女王 : エカテリーナ・コンダウーロワ
大きな馬たち : アンドレイ・エルマコフ/ カミーリ・ヤングラゾフ
ダニーロ : ソスラン・クラーエフ
ガヴリーロ : マクシム・ジュージン
娘たち : ヤナ・セーリナ/エカテリーナ・イワンニコワ/クセーニャ・ロマショワ/ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク/エリザヴェータ・チェプラソワ/オリガ・ミーニナ
ジプシーたち : ラファエル・ムーシン/フョードル・ムラショーフ/カレン・ヨアンニシアン/エレーナ・バジェーノワ/アナスタシア・ペトゥシコーワ/ポリーナ・ラッサーディナ/リュー・チヨン/アリサ・ソコロワ

2009/12/04

12/3 マリインスキー・バレエ「眠れる森の美女」ヴィシニョーワ&コルプ 短評

マリインスキー・マラソン、今日は「眠れる森の美女」初日でした。さすがにもう資金も体力もないので、「眠り」は1回きりしか行きません。来週は「イワンと仔馬」の2日目とガラ2日間の予定です。「イワン~」のゲルギエフ指揮の日をパスする代わりに?日曜日に所沢ミューズでのゲルギエフ指揮マリインスキー管に行ってきます。

でも、改めて調べると所沢(というか航空公園)って今住んでいるところからめちゃめちゃ遠くて、片道2時間もかかることに気がついて相当後悔中・・・私実家が武蔵野市で、一度だけ実家にいる時に所沢ミューズに行ったことがあるので、その時の感覚でそんなに遠くないと思っていたら大間違いでした。基本的に中央線沿線より北にはできれば行きたくないんです。

そんなことはどうでもいいことなのですが、今日のマリインスキーの「眠れる森の美女」、これぞグローリアスというか、マリインカの伝統と栄光の力を見せ付けられた思いがしました。ヴィシニョーワの輝きの眩しいこと。「白鳥の湖」では、ヴィシニョーワは自分に似合わないとされている役を、強引に自分の解釈で一つのオリジナルな物語に仕立てていく力技を見せてくれて、そのものすごい根性と情熱を見た思いがしました。「眠れる森の美女」は、そこまで力を入れなくても似合っているわけで。

ヴィシニョーワって、「生命力」のバレリーナだと思います。「白鳥の湖」ではそれが裏返しになって「死」に転化していたわけですが。1幕の登場シーンのヴァリエーションでは、ピチピチ跳ねるようで元気いっぱい、好奇心旺盛でびっくりするほど可愛いお姫様だけど、初々しさ溢れる圧倒的なまばゆい輝きで、舞台を光で満たしていました。2幕の幻影のシーンでは、これが一転また妖気を漂わせていて、美しいんだけどちょっと怖いというべきか、怖いほど美しいというべきか、幻影ならではの幽玄さ。王子のキスで目覚めた後が、とても一幕の16歳の姫と同じと思えないほどの生命力とエロスに満ちていて、それなのに目覚めたら王子の下へ、ではなくママとパパのところへいくところがまた憎いというか焦らしているなって感じさせました。

3幕の登場はチュチュではなくローブデコルテに縦ロールヘアで登場して、ゴージャスで貫禄のあるお姫様。でも、グラン・パ・ド・ドゥでは輝きはそのままに、また初々しい(だけど確実に大人への階段を上っている)満開の薔薇の花のような姫に戻っていました。サポートつきピルエットで8回も回っていたのにはびっくり。

改めて言うまでもないことなのですが、ヴィシニョーワはその柔軟で強靭な肉体もさることながら、音楽性に非常にすぐれたバレリーナです。特に3幕グラン・パ・ド・ドゥでの、自分自身が楽器となって音楽を伝えていく様子が、オーロラ姫の満開に咲き誇った輝きをより一層際立たせていました。ともすれば濃厚になりがちな彼女の持ち味を、音の絶妙な取り方により軽やかに変えていっているところが凄いと思いました。

コールプのちょっと怪しいけど基本ノーブルで優雅、ちょっとシャイな王子ぶりもとても良かったです。いつも片頬でにやりと笑うのがたまりません。ヴィシニョーワとの並びはやっぱりすごく濃くて、一人ずつ踊っている時には普通なのに、合わせ技になると何倍にも濃さが増幅されます。絶世の美女でありかつ気品溢れるリラのコンダウーロワや愛らしいオブラスツォーワも、そして「白鳥の湖」からフル回転で大活躍のヤナ・セーリナ、群舞で常に重要な位置にいるオクサーナ・スコリク・・・コール・ドのダンサーの一人一人の美しいこと!魅力的なダンサーはいくらでもあげられるのですが、明日も仕事で朝から会議なので、また改めて書きます。コメントもまだつけられなくてすみません。

そうだ、イスロム・バイムラードフのカラボスは最高でした!王子にやっつけられるところがあまりはっきりしない演出がもったいないのですが、杖をつきつつもエポールマンがきれいで色っぽく妖しいカラボスは、アポテオーズとカーテンコールでかなり美味しいところを持っていきました。あのキメキメのスペインを踊っていた同一人物とは思えませんわ。


2009年12月3日(木) 18:30~22:10
眠 れ る 森 の 美 女
プロローグとアポテオーズ付き全3幕
※本日キャスト変更がございます。
<サファイアの精>ヤナ・セーリナ→マリーヤ・シリンキナ
<白い猫>クセーニャ・オストレイコーフスカヤ→ ヤナ・セーリナ

音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付 : マリウス・プティパ (1890年)
改訂振付 : コンスタンチン・セルゲーエフ (1952年)
台本 : イワン・フセヴォロジスキー
マリウス・プティパ
装置・衣裳 : シモン・ヴィルサラーゼ
指揮 : ボリス・グルージン
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

≪出演≫
オーロラ姫 : ディアナ・ヴィシニョーワ
国王 : ウラジーミル・ポノマリョーフ
王妃 : エレーナ・バジェーノワ
デジレ王子 : イーゴリ・コールプ
求婚者たち : コンスタンチン・ズヴェレフ
        : マクシム・ジュージン
        : アレクセイ・チモフェーエフ
        : デニス・フィルソーフ
リラの精 : エカテリーナ・コンダウーロワ
優しさの精 : マリーヤ・シリンキナ
元気の精 : アンナ・ラヴリネンコ
鷹揚さの精 : エレーナ・ユシコーフスカヤ
勇気の精 : ヤナ・セーリナ
のんきの精 : ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
ダイヤモンドの精 : ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
サファイアの精 : マリーヤ・シリンキナ
金の精 : アンナ・ラヴリネンコ
銀の精 : エリザヴェータ・チェプラソワ
悪の精カラボス : イスロム・バイムラードフ
カタラビュット / ガリフロン : ソスラン・クラーエフ
家来 : アナトーリー・マルチェンコ
フロリナ王女 : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
青い鳥 : アレクセイ・チモフェーエフ
白い猫 : ヤナ・セーリナ
長靴をはいた猫 : フョードル・ムラショーフ
赤ずきん : エレーナ・ユシコーフスカヤ
狼 : アナトーリー・マルチェンコ
子供たち : バレエ シャンブルウエスト (指導:今村博明,川口ゆり子)

2009/12/02

12/1 マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」ロパートキナ&イワンチェンコに行ってきました

遅くなってしまったので、とりあえず一言感想です。

エフゲーニャ・オブラスツォーワがパ・ド・トロワを降板していました。今回、彼女は全然東京というか関東地方の公演に出演していないのですが、あさっての「眠れる森の美女」のフロリナ姫役は出てくれるのかしら?ジェーニャは人気があるのに、今回「眠り」オーロラ役はびわ湖だけだというのがそもそも間違っていると思います・・・

日曜日、昨日に続いて今日もエカテリーナ・コンダウーロワが大きな白鳥に入っていました。ひときわ大きくて美女で赤い髪なのですぐにわかります。「火の鳥」役を踊っていたことがあるせいか、動きがとても鳥っぽいです。


ゲルギエフのショスタコーヴィッチプロに当初行くつもりだったので(チケットを家人に取り上げられてしまったので・・爆演でこちらも素晴らしかったそうです)、チケットは会場で買ったのですが、ロパートキナ主演の日というのに上階はガラガラで、なんてもったいないこと!と思いました。私の友達はロシアバレエを観る人が少ないということもあって、あまり知り合いにも会わなかったし。今回、連日の上野通いでちゃんと感想を書く余裕がないのですが、マリインスキーって改めて恐ろしく平均レベルが高いと思いました。トロワを踊っているのが若手だったり、小粒感が否めないところはあるんですが、男女とも、ダンサーのプロポーションとビジュアルの美しさに息を呑みます。上階から見てもすごくよくわかります。その上、衣装がゴージャスなのに色使いがシックで気品があって美しいこと~。特に、2幕(黒鳥)の民族舞踊の衣装がセンス良くて素敵でした。

ロパートキナは、金曜日より調子は良さそうだけど、絶好調ではない感じ。それにしても、彼女の白鳥は本当に絶品で、息をする暇も惜しいほど。ただ、パートナーが違うとこれほどまでに演じ方も違うのかと思いました。ダニーラ・コルスンツェフは愛情たっぷりで包容力のある王子なので、彼の誠実な愛により、ロパートキナもいつもより温かい表現を見せていて、心が少しずつ溶けていくさまを見せてくれていました。イワンチェンコは王子というより王様なので(!)そうすると、ロパートキナも白鳥の女王としての気高さ、崇高さ、少し冷たいくらいの研ぎ澄まされた表現の中に、悲劇性が強められていました。3年前にゼレンスキーと観た時のロパートキナに近いような印象を受けました。そんな中、3幕の裏切りに悲しむオデットの姿は哀しく、一人の女性としての感情が現れていて、胸を強く締め付けられました。

なかなかジークフリートに心を開かない、氷のようなオデットでしたが、コーダで見つめ合うときの眼差しの澄み切った美しさには、彼を信じてみようという思いが見えていました。最後にロットバルトが転がっているのを見て、自分が人間に戻れたことを知った時の、花が開いたような愛らしい微笑みがとても美しく心を揺さぶるものでした。理知的でクールな印象の強いロパートキナですが、笑顔は本当にかわいらしいんですよね。

それにしても、ロパートキナのオデットを観ていると、本当に時が止まってしまったように思えます。磨き抜かれた芸術そのものと同じ空気を吸っている、同じ場所にいるという事実に、思わず身震いしてしまいます。

イワンチェンコの王子は、面白かったです。背が高くて脚が長くて、オールバックが似合う苦みばしった男前なんだけど、すっごくニヒルで王子というより王様。間違った選択をしそうにない感じです。というか、腹に一物ある感じで、実は最後にロットバルトを倒したところも、実はロットバルトと事前に段取りの打ち合わせをしていて、ロットバルトは死んだふりをしているだけなのかも、と思ったりして。乾杯の踊りで杯を持つ姿があまりにも似合いすぎていて。ガウンなんか着て安楽椅子でブランデーグラスを傾けていても可笑しくない。艶やかな美女エレーナ・バジェノーワの女王の方が、白鳥よりよほどお似合いなのではと思ってしまう。2幕でオディールに騙されて追いかけていくところ、あまり本気で追わないし、捌けていくところも、途中から歩いちゃっているし。ロットバルトの翼をべりっともぎ取ってポイって捨てるところのやっつけ感にも少々ウケてしまいました。

でも、イワンチェンコ、いいダンサーなんですよね。サポートは上手だし、ロパートキナと息はあっていてちゃんと愛もある。テクニックも巷で言われているほど弱くない。トゥールザンレールできちんと5番に降りられるし、ジュッテ・アントルラッセの後ろ脚はきれいに高く上がっているし。それに、何しろ男前でカッコいい。素敵なんだけど、でも王様なんですよね。

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