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2009/11/02

チューリッヒ・バレエ「Peer Gynt」DVD ハインツ・シュペルリ振付

Music : Edvard Grieg, Brett Dean, Mark-Anthony Turnage arranged by Heinz Spoerli
Conductor, Musical Direction : Eivind Gullberg Jensen
Choreography : Heinz Spoerli
Recorded in December 2008 at the Opernhaus Zurich

Peer Gynt : Marijn Rademaker / Philipp Schepmann
Solveig : Yen Han
Ase : Ana Carolina Quaresma
Ingrid : Juliette Brunner
Anitra : Julie Gardette
The King of the Mountain : Arman Grigoryan
The King of the Mountain's Daughter : Sarah-Jane Brodbeck
Death : Vahe Martirosyan

Singers
Solveig, Soprano : Chritiane Kohl
Peer Gynt, Tenor : Boguslaw Bidzinski

Zürich Ballet, the Zürich Opera Orchestra and the Zürich Opera Chorus

Filmed at the Zürich Opera House, 11 & 12/2008
Bel Air Classiques
Duration : 110min NTSC Region All

待望のマリイン・ラドメーカー(シュツットガルト・バレエ)主演のチューリッヒ・バレエ「ペール・ギュント」のDVD化。ストーリーは基本的にはイプセンの原作に沿ったものとなっているが、グリークの音楽だけでは振付家の意図を伝えるのに不足しているということで、シュペルリはBrett DeanとMark-Anthony Turnageに作曲を依頼。現代音楽的なこれらの曲を使用したところでは、ダンスのスタイルもコンテンポラリー的なものになっている。さらに、ペール・ギュントの内面の声については、俳優を語り手としており(英語字幕表示可能)、またペール・ギュントとソルヴェイグをはじめオペラ歌手による独唱もある。

シュツットガルト・バレエのDVDが最近まったくリリースされなくなってしまったので、マリイン・ラドメーカーの若く美しい姿を映像に収めてくれてありがとう、とまずはファンとして感謝。HDで収録した映像は非常に美しく、マリインの美貌を堪能できるし、定評のあるチューリッヒ・オペラの演奏も素晴らしい。

「ペール・ギュント」は過去にノイマイヤーが振付をしたことがあるようだけど、それは未見で、オペラ作品を含めて映像化されたことがほとんどないはず。もともと、イプセンの戯曲自体が、舞台化を目的として書かれたものではないので、題材そのものは魅力的なれど、舞台化するのは難しい作品だと思う。

シュペルリ得意の、モダンでありながらも幻想的な作風は、作品世界にはよくマッチしている。舞台は魔の山やモロッコ、エジプトとエキゾチックな場所を移り変わっていき、ブルーを基調とした魔術的な照明がドラマティックだし、砂を敷き詰めた舞台が、永遠のさすらい人ペール・ギュントの心情も表現していて効果的だ。

現実感に乏しく、夢見がちな青年ペール・ギュントのイメージに、マリインはぴったり。輝く金髪と際立つ容姿の美しさでオーラを放ち、物語の核となる存在感があり、ロマンティックな狂気を感じさせてくれる。美しいつま先による軽やかな跳躍もさることながら、彼は上半身のアラインメントやポール・ド・ブラに神経が行き届いていて非常に美しく、正しいクラシックダンサーとしての踊りをしている。敷き詰められた砂の上で長いソロを踊るシーンがあるのだが、砂を撒き散らしながらも、足元の不安定さなどを微塵も感じさせずに、うっとりするような軌跡と残像を見せてくれる。

ソルヴェイグのイェン・ハンはミスキャスト。何よりもメイクがダメなのだと思うけど、若く美しいマリインの相手役を演じるには老けたイメージで華がなく、外見的な釣り合いがまったく取れていない。北欧が舞台の作品にアジア系は似合わないし、表現も平板で弱く哀れな雰囲気しかない。せめてもう少しメイクや衣装を工夫できなかったのだろうか。

他のダンサーでは、山の魔王のアルマン・グリゴヤンがダイナミックな跳躍、インパクトのある役作りでとても印象的だった。結婚式のシーンや、トロールたちのシーンでの男性ダンサーによる群舞も面白い。アニトラの官能的なダンスも見所。ただ、台詞が出てくるのに違和感を感じる人もいると思う。「ペール・ギュント」のあらすじを頭に入れておけば、台詞の内容は理解できなくても問題ないように思える。果たして、台詞専用の役者を用意することが適切だったのかは、私にはわからない。一方、歌手による独唱は、グリーグによる美しいスコアが耳に残り、また歌い手の実力も十分でドラマティックな効果をあげることに成功している。

全体的には面白い作品で楽しめたけど、ペール・ギュント役にマリインのようなスター性のあるダンサーを起用しないと、魅力が半減してしまうと思った。

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Bel Air Classiquesによるプレビュー動画

なお、この「ペールギュント」はARTE(フランス、ドイツのテレビ局)にて11月30日に放映されるとのことです。

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バレエのDVD・ビデオ」カテゴリの記事

コメント

 いつも迅速な情報をありがとうございます。早速アマゾンで注文してしまいました。1~3週間で来るそうです。
 私も「ペール・ギュント」に興味は持っていましたが、あまりに破天荒なストーリー故、なかなかイプセンの意図が理解できません。また、本質的には詩であり、通常のドラマとしての構造を持っていないため、これをどうやって舞台にかけるのか判然とせず、「またそのうち」と放置しておりました。
 しかし!出来上がったものがあるのでは観ないわけにはいかない!…というのがドラマ好きの困ったところです。つけてくださった動画を見たところでは踊りはいい感じなので、全体として「もしかして、失敗作…?」かもしれないけれど(朗読は気になります。)、ラドメイカーさん達素敵なダンサーを楽しめるから、まぁいいか。また、失敗なら失敗で、どこがうまくいかなかった原因なのか、考えよう。3,174円で躊躇した私はケチなのか…いえ、DVD一つであれこれ楽しめる私は幸せ者?ともかく、到着を楽しみに待とうと思います。

MIYUさん、こんばんは。

「ペール・ギュント」は、ストーリーを読んでも、奇想天外でとらえどころがない話なのですよね。映像を観ると、なかなか上手く処理しているな、って思うんですよね。台詞については、英語字幕ONで見ると、細かい内容が理解できるので、わかりやすくなるとは思うのですが・・常に俳優がいるわけではなくて、ダンスを見せるときにはほとんどいないのですけど。
でも映像は綺麗だし、音楽も良いし、何よりマリインが美しいし、目の保養になる作品だと思います!DVDは私はまだ見ていないものが山のようにたまっているんですよね~。家でなかなかチャンネル権をもらえないもので

なんか連投になってすみません。
昨日のザルツブルク音楽祭からハーゲンSQとチューリッヒ・バレエのコラボ公演です。
xfs.jp/WTdzB

rednalさん、こんにちは。

ザルツブルク音楽祭のハーゲンSQとチューリッヒ・バレエのコラボ公演は、ご覧になった人の感想をブログで読んで、興味を持ったところです。いつもありがとうございます。

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