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2009/10/26

タマラ・ロホが語る、芸術と国家の関係性Tamara Rojo talks about funding for the arts in times of economic crisis

ガーディアン紙で、タマラ・ロホが芸術と国家の関わり方について、興味深いことを語っています。

Britain offers great art a true sanctuary Tamara Rojo
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/oct/25/tamara-rojo-arts-funding

タマラは、故国スペインに有力な古典バレエ団がない理由をよく聞かれるそうです。「世界の多くのバレエ団には、素晴らしいスペイン人のダンサーがいて、スペインでバレエを学んできたのに故国には仕事がなく、キャリアを追求するために移民しなければならないのです。スペインには古典バレエの伝統がないとよく言われますが、それは間違いで、19世紀から20世紀前半までは、コール・ド・バレエが存在していました。これは、文化的、歴史的というより政治的な問題があるのです」

ロイヤル・バレエのプリンシパルとして、タマラは世界中で踊るチャンスに恵まれています。昨年は、ロイヤル・バレエで30公演に出演しただけでなく、ロシア、中国、日本、キューバ、イタリア、スペイン、米国で踊りました。

タマラによれば、「どんなに状況の悪い国でも芸術家は生き延びることができるし、芸術の勢いは止まることはないと思われているけれども、それは皮肉です。実際には、国によって、芸術がどれほど栄えているか大きな違いがあります」とのこと。

「米国や日本では、芸術は最低限しか国家からの援助を得ることができず、代わりに裕福なパトロン、個人や企業が税制上の優遇を得て寄付することによって、運営がまかなわれています。国庫の負担は少ないけれども、当然スポンサーは口を出します。劇場の名前や絨毯の色程度のこともあるけれど、最悪の場合、芸術的なポリシーの変更や、レパートリーへの影響が出ることがあります」

「また、現在の経済情勢によって、さまざまな問題が噴出しています。昨年、北米の多くのカンパニーは生き残るために人員整理を行いました。日本では、ほとんどのダンサーは給料を受け取ることができず、公演ごとにギャラが支払われ、生活するために他の仕事をしなければなりません」

「東京で初めてゲスト出演した時のこと。初日のガラ・ディナーで、テーブルで給仕をしている人々は、さっきまで一緒に舞台に立っていたダンサーであることに気がつきました。私は公演後はいつもとてもお腹がすいているのに、その晩は食欲を失ってしまいました」

「フランスのモデル、それはイタリアやスペインでも大同小異のところがありますが、文化庁を通して政府が介入しています。管弦楽団やオペラ、バレエカンパニーは公的なものです。政府は経費をまかない、芸術は医療や教育のように、官公庁として運営されています。ヨーロッパ・カウンシルは「文化的な君主制」とこれを呼んでいます。スペインにおいても同様です。政府が芸術を運営することは、アーティストが政治家や貴族に頼りきることにつながります」

「政治状況が移り変わりやすい時には、それはひどい結果をもたらすことになります。過去5年間私はミラノ・スカラ座に客演しましたが、その間3人の芸術監督が代わりました。スカラ座に出演するのはとても楽しかったけれども、多くのダンサーたちが、不安定さと芸術的なフラストレーションを感じているのがわかりました」

「また、政治的な庇護が、反対の結果をもたらすことがあります。スペインの国立コンテンポラリーダンスカンパニーであるスペイン国立ダンスカンパニーは、20年もの間同じ芸術監督(ナチョ・ドゥアト)によって率いられており、「芸術的な君主制」の例となっています」

「英国民は、身の丈に合ったあり方を誇りに思うべきです。政府と芸術家たちをアーツカウンシルがつないでいます。このアーツカウンシルのやり方は、スカンジナビアの国の多く、シンガポール、そして韓国においても受け継がれています。この方法は、ナチスの試練の後、芸術に政治が介入することを阻止するために始まったものです」

「バレエカンパニーのような大きな芸術団体は、国家からの支援を必要としていますが、同時に創造の自由を得ていなければなりません。意思決定に透明性と客観性が必要となりますが、これが現在の英国モデルの本質的な価値に他なりません。私の故国スペインに同じようなシステムが導入されない限り、個人がバレエカンパニーを持とうとして、それがどんなにすぐれた理想を持っていたとしても、現在の政府の気まぐれに振り回されることを運命付けられ、失敗するという悲しい結末が待っているのです」


※アーツカウンシル・イングランド:イングランド芸術協会、英国の文化庁のようなところで、政府からは距離を置いて存在している。ACE(アーツ・カウンシル・オブ・イングランド)、SAC(スコティッシュ・アーツ・カウンシル)、ACW(アーツ・カウンシル・オブ・ウェールズ)、ACNI(アーツ・カウンシル・オブ・北アイルランド)の4つの団体がある。

アーツカウンシルについて詳しくは、文部科学省のサイトを参照ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad200001/hpad200001_2_109.html


ダンスマガジンの編集長対談でも、タマラ・ロホはバレエ芸術について、その未来についてさまざまな考えを語っていました。彼女が日本のバレエの現状についてもよく知っていることに驚かされます。別のインタビューで彼女は語っていましたが、2006年の世界バレエフェスティバルのときに、日本のファンから10年日記をプレゼントされたとのこと。2016年に彼女は41歳となるので、その頃にダンサーを引退することを考え、将来芸術監督となるための準備を進めるために、その日記を活用しているとのことだそうです。


追記:個人がスペインにバレエカンパニーを持とうとしても、というくだりですが、アンヘル・コレーラが設立したコレーラ・バレエのことを指しているのかもしれません。二人とも素晴らしいアーティストだし個人的にも好きなので、もしそうだったとしたら残念に思います。アンヘルもスペインに古典のカンパニーを根付かせようと必死に努力しているところですから。

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バレエ(情報)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは、初めて書き込みます。
先日、パリオペラ座のすべてを見てバレエ団の運営とは何ぞ、と考えていたので、
興味深く記事を拝読しました。
芸術家であり職人でもある団員が、国家公務員として雇用され、年金が他よりかなり優遇されている事を、恵まれた事と思いながらも、
この先、文化政策の名の下でのバレエ団員に優遇を続ける事をフランス国民に容認させるために、相応の経済的パーフォーマンスをあげることの重要性と芸術としてのバレエの両立・・・
芸術監督の危機感に頷いてしまいました。

こんばんは。
Twitterで紹介されていたので、私もこの記事読んでみました。(でも、すごくざっくり…詳しい訳どうもありがとうございます。)
先だってのダンスマガジンのインタビューでも、ロホの斬り込み方が凄いな~と感心していたのですが、先を見据えていろいろと考えているのが伝わってきますよね。
芸術と、その創造的自由を守りながら育成、援助していくことは、本当に少しずれると難しい側面を持っていて、書かれているように、いろんな国で、いろんな違うやり方で(おそらく)試行錯誤しているんだな、と思いました。その中でも、英国のアーツカウンシルは上手くいっている様ですね。紹介された文部科学省のサイトも、これから読んでみます。
とても興味深い記事でした。

macskaさん、はじめまして!

「パリ・オペラ座のすべて」はルフェーブルの存在感が強烈でしたよね。(同じワイズマンによるABTのドキュメンタリーも、強烈な芸術監督のおば様が登場しますが)オペラ座は国家公務員待遇で、職業としてバレエダンサーが成立しない日本から比べると、本当に羨ましいことこの上ないです。チケット代も半額は国からの補助なので、比較的安い値段で公演を観ることができるし。が、タマラがいみじくも言っているように、ルフェーブル芸術監督時代も長くなり、カンパニーはすっかりコンテンポラリー偏重となってしまうという弊害も出てきていますよね。芸術とお金の両立というのは、いつの時代も大きな問題で色々と考えさせられてしまいます。

YUIOTOさん、こんばんは。

なかなか面白い記事ですよね。タマラについては、本当に賢く意志が強くすごいなあ、と思う反面、必ずしも同意できないところもあるわけです。が、これだけ真剣に芸術について考えていて、考えをきちんと発表できる人というのは貴重だと思うし、彼女のような人がバレエ界には必要なのだと思います。
日本のアーツマネジメント、文化行政は本当に貧弱なのですが、経済情勢の厳しい今だからこそ、芸術の重要性を再認識しなければならないと思うんですよね。

こんばんわ。有木笙です。ご無沙汰しております。

いつも、タイムリーで貴重な情報をありがとうございます。これまでも、コレーラさんの話題をご提供くださいましてどうもありがとうございます。
今回のタマラ・ロホさんの率直なご発言、直接言及されていないとはいっても、コレーラのファンとしては、読ませていただいて辛いものがありました。
ファンというものはエモーショナルになりがち、と言いますか、それが楽しいというものかと思うのですが、あまり偏るのも怖いとも思っています。
タマラさんは、完全主義者で理知的な魅力のある方だと思います。また、身びいきばかりでもないのですが、コレーラさんが、自分の船をしたてて荒海に乗り出していったことにも魅力を感じています。
スペインという踊る人々の国に、クラシックバレエを健全な形で根付かせたいという願いを抱いている点では、お二人とも一致しているのではないでしょうか。その過程において、両者が一見たがいにむつまじく手を取り合っているように見えなかったとしても、おたがいの存在があるからこそ、よりいっそう自分の方法論を検証できるのではないでしょうか。私は、同じ時期に、ウリャーテのもとで学んだ、才能溢れたダンサー2人が、その時以来どういう関係なのかはわかりません。ただ、コレーラのファンとして、本当はもっと踊るほうに専念してくれたらと願いながらも、そのカンパニーの成功を祈らないではいられないのです。そして、その確たる成功までには、タマラさんのような知的な同胞は、得がたい宝なのではないか、そう考えています。
 身近に感じられても欧米はやはり、異文化なのですね。日本育ちの日本人である私には、タマラさんの率直さ、コレーラさんの、ときにはオープンな発言にちょっとドキッとしたりしています。外国のメディアから情報を頂くときには、そのメディアがふだんどういう色調なのか自分はわかっていないのだからと自戒すべきかもしれないと考えることもあります。言葉の壁に悩みましたが、言葉の先にも課題がありそうです。でも、その先に理解があるはずという希望を忘れたくない、今はそう思っています。
 これからも、楽しみに読ませていただきます。お元気で。

有木笙さん、こんばんは。お久しぶりです!

アンヘルも、タマラも、故国スペインのバレエを盛り上げたいという気持ちは同じなのだから、本当はスペインが生んだ2大スターが力を合わせればいいのだと思うんですけど、外部からはうかがい知れぬ色々なことがあるのでしょうね。でも、有木笙さんが仰るとおり、なんとか上手く協力できるようになればいいなって思います。

まだまだアンヘルは踊り盛りだから、踊る姿をもっと観たいというのはファンの願いですよね。それでもなお、芸術監督業にも力を入れてスペインのバレエを盛り上げていこうというアンヘルの熱い気持ちは本当に素晴らしいなって思います。タマラの考えからも学ぶことは色々あるでしょうし、色々と吸収しながら、困難なことを成功させて欲しいと心から願います。

ロホは昔から実に率直に語るので、インタビューは面白いですよね。ロイヤルへの移籍当時から、大胆発言をしていました。この点、良い子発言の多いコジョカルとは逆ですね。

あと、コレーラとは合わないようですね。確か以前に、一緒に踊ってみて、踊りに対する考え・姿勢が全く違うことがよくわかったと言っていたような気がします。

こんばんは、初めて書き込みいたします。いつも速くて内容の濃い情報をアップしてくださり、興味深く拝見しています。ありがとうございます。

ロホの芸術に対する経営的視点と知識の幅広さ、奥深さ、そして頭脳明晰さには本当に驚かされますね。ただ、東京での公演初日後のガラディナーで、さっきまで一緒に踊っていたダンサーがウェイトレス/ウェイターになっていたというくだり、どう思われますか? ガーディアンのウェブサイトを見ると、それついて「本当とは信じられない」とコメントする人がいて、それに対して「ダンサーだって普通の人なのだからしなければならない状態なら(そういう仕事も)するだろう」と答えている人がいます。
でも、具体的に想像してみると、世界バレエフェスのオープニングディナーで、単にホスト側の人間として、東京バレエ団のダンサーさんたちがサービスする係りになっていたのでは?と思ったりするのですが・・・つまり、生活困窮のためにしているアルバイトではないと思いたいのですが? 瑣末なことですみません。

norideさん、こんにちは。

日本のダンスマガジンで、三浦雅士氏と彼女が対談を行ったのを読みましたが、バレリーナとして活躍しながらも大学と大学院を卒業していて、賢い人だなって思いました。作品の解釈もとてもユニークで、以前「マノン」について、マノンはデ・グリューやレスコーの犠牲者であって、ファム・ファタルとして描くのは正しくないと言っていたのを記憶しています。確かに、彼女の歯に衣を着せぬ物言いはとても読んでいて面白かったですね。

彼女とアンヘル・コレーラが仲違いをしているらしいというのは、やはり海外のメディアで読んだと思うのですが、確かに以前は一緒に踊ったこともあったと思うんですよね。部外者からすると、そのあたりはよくわからないところなのですが。以前、アンヘルはロイヤル・バレエにも客演していましたからね。

ClaraSch.さん、こんにちは。

ご指摘の点ですが、私も最初にこの記事を読んだ時に疑問に思いつつ、ついつい(手抜きで)補足をするのを忘れてしまいました。仰るとおり、東京バレエ団のダンサーが、パーティで給仕のアルバイトをするということは考えにくいです。日本人は、お客さんに対して、飲み物を勧めたり、代わりに食べ物を取ってきたりといったことに気が利くと思うので、そういう丁寧な対応をされた彼女が、ダンサーたちが働いているものだと誤解した可能性が高いですよね。もしかしたら、その誤解を訂正するために、誰かがコメントをつけたほうがいいかもしれませんね。

というわけで、いつもこんな風にいい加減に書いてしまっていて申し訳ありません!以後気をつけます。

こんにちは。ClaraSch.です。ご丁寧なお返事ありがとうございます! いい加減だなんておっしゃらないでください。そんなこと全くないですし、このことより、本文で書いていらっしゃった点の方がずっと重要だと思いますし。
おっしゃるとおり、ガーディアンのComment is Freeに、この件へ(日本人としての?)コメントを誰かがしておくべきかもしれないと私も思います。きっと状況もご想像の通りだと思います。でも、実際にどうだったかは、関係者の方にしかわからないことではありますから、出席していたわけでないものが発言するのも・・・という気もしたりします。難しく考えすぎでしょうか?

ClaraSch.さん、こんばんは。
そうですね、実際にその場に居合わせたわけでもなく、東京バレエ団の関係者に確認したわけでもないから、それもそうだと思います。
その公演の後が実際どうだったかはさておき、月給が出るバレエ団が、日本では数えるほどしかないのは事実ですよね。自分の通っている教室にはセミプロのダンサーやバレエ協会に所属している人もいるので、チケットノルマが大変という話も、よく聞きます。箱モノにはお金を出しても、なかなか人にはお金を出してくれないのが日本の文化行政ですよね。

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