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2009/10/05

10/4 パルコ劇場「中国の不思議な役人」

作: 寺山修司
【パルコ劇場「新」スタンダードシリーズ】
中国の不思議な役人 Der Wunderbare Mandarin

演出: 白井晃
音楽: 三宅純
振付: 小野寺修二
照明: 沢田祐二
出演: 平幹二朗(中国の不思議な役人) 秋山菜津子(女将校) 岩松了(西瓜男)
夏未エレナ(花姚) 田島優成(麦)
小野寺修二(一寸法師) 春海四方(両替商) 吉田メタル(怪力)
内田淳子(魔耶) 町田マリー(毒薊) エミ・エレオノーラ(切り抜き)
初音映莉子(赤い鳥) 高山のえみ 吉村華織(梨貞、ソプラノ歌手)
岡田あがさ 佐藤ひでひろ(鏡売り) 河内大和(人間犬)
田村一行(無頼・大駱駝艦) 奥山ばらば(無頼・大駱駝艦)他
■ ミュージシャン
宮本大路(sax) 
スティーヴ エトウ(perc)

http://www.parco-play.com/web/play/fushigi

「中国の不思議な役人」といえば、バレエファンにはモーリス・ベジャール振付のバレエでおなじみ。こちらの作品は、バルトークの音楽は使用せず、ストーリーのモチーフだけを借りて、寺山修司が脚色。1977年以来、32年ぶりにパルコ劇場で上演されたということで、初演は故・伊丹十三が主演、そして山口小夜子が魔耶を演じたそう。今回は白井晃が演出し、音楽はピナ・バウシュ、パトリス・ルコント、フィリップ・ドゥクフレ等、世界中のクリエーターから信頼を得ている作曲家・三宅純が書き下ろしたとのこと。

ベジャール作品の中ではその倒錯した世界とデカタンスが魅惑的でお気に入りの作品、寺山修司の作品だったらどんな感じだったのか興味があり、またキャストも豪華な上、得チケで4500円というお得な値段だったので観に行くことに。このお値段を考えると、も~めっちゃ得した気分で楽しめた!こういう妖しくて退廃的で混沌としている舞台作品、大好き!

大きなポイントは、演劇と言うのはバレエと同じで総合芸術なんだな、ということを思わせてくれたこと。赤、ピンク、ブルーといったけばけばしい色を、ダークな舞台の上に映し出した照明(照明の沢田祐二さんは、新国立劇場のバレエの照明でも有名)。1920年代の上海の魔窟=娼館を出現させたような凝った美術。冒頭、真っ暗な中、少女の等身大人形がマッチの明かりで浮かび上がり、ローラン・プティの「コッペリア」のように一瞬でバラバラに壊れるところから、掴みは完璧。この「一瞬でばらばらになる人体」というモチーフは、後にも登場する。舞台上にサックスとパーカッションのミュージシャンがいて演奏してくれる音楽もカッコよく、さらには二期会所属のソプラノ歌手吉村華織さんが娼婦の一人として出演しながら歌も歌う。そして元「水と油」で、「空白に落ちた男」で鮮烈な印象を残した小野寺修二さんがダンスを振付け、また自身も狂言回しのような、宦官のような一寸法師を怪演。白塗りにした大駱駝艦のダンサー二人の舞踏、と踊りもふんだんにある。

平幹二朗の中国の不思議な役人の圧倒的な存在感といったら!以前、今はなきベニサン・ピットでTPTの演劇を観に行った時、偶然隣の席に平幹二朗が座っていたことがあったのだけど、言われなければ気がつかない普通の人のようだった。なんと現在75歳の彼だが、きらびやかな衣装に長髪をなびかせ、「がっははは~」と朗々と、豪快に笑う堂々とした立ち姿の迫力。殺しても殺しても決して死なず、何百年も生き続けている怪物という存在に説得力がある。登場シーンでは必ず仰々しいテーマ音楽が流れ、そして階段のセットがしつらえられ、上手くいかないと登場シーンがやり直されるというのがすっごく可笑しい。つまりは、「中国の不思議な役人」という存在自体、幻想が生み出した怪物であるということなのだろう。役人は、死にたくても死ねないのだ。

13歳の少女娼婦花姚役の夏未エレナは、とても可愛らしく、ややふっくらとしているところが初心な少女っぽくて良い。普段、細すぎるバレリーナばかりを見ているので、これくらいの方が女の子っぽくていいな、と。拉致された少女が無理やり娼婦にさせられ、そんな彼女を見初めた中国の不思議な役人が毎日彼女の元に通ってくる。最初は彼のことを嫌がっていた花姚が、少しずつ心を開いて役人を受け入れるようになってくる、その時の蕾が花開いたようにあでやかな色香を徐々に身に着けてきているのが見ていてわかる。ベッドの上で花姚の脚に触れる役人がとてもエロかった。

川島芳子を思わせるような男装の麗人、きりりとして美しく悪の魅力輝く女将校役には、秋山菜津子さん。歌も踊りも達者で、場内を支配する力がある。

鏡のモチーフが頻繁に使われている。鏡を背負って売って回る鏡売りの男。鏡は、自分が映らない鏡、自分しか映らない鏡、自分の周りの人だけが映る鏡、などいろいろあって、現実と非現実の世界を行ったり来たりするのに使われる。花姚が誘拐される時の仮面を使った踊りー仮面が吸い付いたり離れたりするのが面白い。それから、「切り抜き」と呼ばれる肺病持ちの娼婦が、上海中の本屋にある本から、[私」など特定の文字だけを切り抜いて回ったり、しまいには自分の影を切り抜き始めて、自分自身が紙になってしまって風に飛んでいってしまうなんて設定も斬新で面白い。

音楽、踊り、美術、演劇・・・この作品ではさまざまな芸術が舞台の上で坩堝のように混ざり合い、混沌としていて不条理で摩訶不思議ながらも、独特の忘れがたい毒気と色気のある禁断の果実のようにに仕上がった。面白かった!

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