BlogPeople


2018年6月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« マリア・コチェトコワ、越智インターナショナルバレエに出演予定/岸辺バレエスタジオ発表会 | トップページ | 「毛沢東のバレエダンサー」Mao's Last Dancer リー・ツンシン »

2009/09/01

ベルリン国立バレエ「カラヴァッジオ」(ビゴンゼッティ振付)DVD Caravaggio by Mauro Bigonzetti

『カラヴァッジオ』~マウロ・ビゴンゼッティによる2幕のバレエ
音楽:ブルーノ・モレッティ Bruno Moretti (原曲:モンテヴェルディ Claudio Monteverdi)
出演:
 ウラジミール・マラーホフ Vladimir Malakhov
 ポリーナ・セミオノワ Polina Semionova
 ベアトリス・クノップ Beatrice Knop
 ミハイル・カニスキン Mikhail Kaniskin
 ドミトリー・セミオノフ Dmitry Semionov
 エリサ・カリッロ・カブレラ Elisa Carrillo Cabrera
 中村祥子 Shoko Nakamura
 ミヒャエル・バンジャフ Michael Banzhaf
 レオナルド・ヤコヴィナ Leonard Jakovina
 ベルリン国立歌劇場バレエ団 Staatsballett Berlin
演奏:ポール・コネリー Paul Connelly(指揮)ベルリン国立歌劇場管弦楽団 Staatskapelle Berlin
コレオグラフィ:マウロ・ビゴンゼッティ Mauro Bigonzetti
照明・装置:カルロ・チェッリ
衣装:クリストファー・ミラー、ロイス・スワンデル

収録時期:2008年
収録場所:ベルリン国立歌劇場 Staatsoper Unter den Linden
特典映像:メイキング(29分、字幕:英語・独語・仏語・西語・伊語・ルーマニア語)
収録時間:119分(本編90分、特典29分)
画面:カラー、16:9
音声:PCMステレオ、ドルビー・デジタル5.1サラウンド、DTS5.1サラウンド
NTSC Region All

デレク・ジャーマン監督の映画「カラヴァッジオ」(1986年作品、若き日のショーン・ビーンが出演)がとても好きだったので、この波乱万丈の人生を送った16世紀の画家カラヴァッジオをマラーホフが演じ、ビゴンゼッティが振付けると聞いてわくわくしていた。

DVDを見て、最初に思ったのは、クローズアップが多すぎということ。最近のバレエのDVDには、その傾向が強くて非常に困る。顔や足先といったパーツを切り取るように映しているので、全体がどうなっているのがわかりにくい。そして、この作品に明確なストーリーがないこともあって、最初は「美しいけど、難解」というイメージを持ってしまった。

ところが、この作品は観ているうちに中毒になって、気がつけば何回も何回も繰り返して観るようになってしまった。振付の独創性や面白さ、ダンサーの美しい肉体を浮かび上がらせ、陰影がくっきりとした照明の美しさもあるのだけど、何よりもカラヴァッジオとほぼ同時代に生きた作曲家モンテヴェルディの音楽(「ポッペーアの戴冠」「オルフェオ」やマドリガーレ集より)をベースにオーケストレーションされた音楽が耳に残り、素晴らしいのだ。

作品は第一部と第二部に分かれており、第一部は、カラヴァッジオと、彼を取り巻くルネッサンス期からバロック期の過渡期の世界を描いている。ビゴンゼッティは、その世界を「光、闇、聖、生、技術、信頼、そして好奇心」と語っている。彼のミューズ的な存在であり、「光」を象徴するポリーナ・セミオノワ、暗い欲望そして「死」を象徴するベアトリス・クノップ。この二人の存在が、彼の人生を支配する。ルネッサンス時代のローマを思わせる色彩豊かな衣装に包んだ若いカップルたちが、生き生きとした様子で画面を横切る。ルネッサンスの自由さと活気が満ちている。それに対して、肌色の腰布一枚のカラヴァッジオは、聖セバスチャンのような受難の姿をしていて、身を刻まれるような創造の苦しみに苛まれている。他のソリストたちも肌色をベースとしたドレープが巻きついた衣装をまとっている。中村祥子さんとミハイル・カニスキン、エリサ・カリッロ・カブレラとドミトリー・セミオノフ&カニスキンといった組み合わせの踊り。十字架のように両腕を広げたマラーホフと、背中を深く反らせたポリーナの姿が絵画の中に収斂していく。

第二部は、カラヴァッジオの内面によりフォーカスした、親密で妖しい世界が展開する。カラヴァッジオの生は性と暴力で彩られていく。美青年レオナルド・ヤコヴィナとのセクシャルなパ・ド・ドゥ。クノップによって踏みつけられるマラーホフ。ヤコヴィナと重なったマラーホフの身体の上に、深紅の血飛沫が降り注ぐ。そして差し出された盆の中にカラヴァッジオが手を突っ込むと、その手は赤く染まり、禍々しい血の刻印を取り巻く人々に刻み付けていく。後半生には殺人にも手を染めたカラヴァッジオを象徴させるように。

光と影を巧みに駆使したカラヴァッジオの作風をダンスで表現したともいえるこの作品。あるときは厳かに、あるときは神々しく、そしてあるときには生々しく。ダンサーの肉体をくっきりと陰影によって浮かび上がらせ、滅び行く運命にあるからこそ美しい、肉体の瞬間の美を切り取った賛歌となっている。創造の苦痛と喜びを喘ぐように体現し憑依した演技は、マラーホフならではのもので、彼以外の人がこの役を演じるのを考えるのは難しい。

ビゴンゼッティの振付はとても独創的だ。ソロ、パ・ド・ドゥ、パ・ド・トロワ、さらに複数のダンサーを複雑に絡ませた踊り、群舞と組み立て方が面白いし、クラシックの技術をベースにしながらもそれにとらわれていない。とても美的に完成された作品なのだけど、美しさにこだわるあまり、暴力性や残酷さはあまり前面に出ていない。

カラヴァッジオの絵画を思わせる作品に、アンジェラン・プレルジョカージュの「MC14/22 "Ceci est mon corps"~これが私の体」がある。ビゴンゼッティとの違いは、暴力性の度合いである。プレルジョカージュの作品は圧倒的で暗黒的な暴力性と理不尽さから浮かび上がってくる崇高さがあった。「カラヴァッジオ」は、振付の古典的な典雅さ、唯美的な面ではずっと高度だと思うのだけど、きれいにまとまりすぎているところがあるのかもしれない。

それでも、この作品の光の扱い方の巧みさ、耳に残る音楽、美しい肉体の饗宴とビゴンゼッティの独創性には快い刺激があり、何回も繰り返し見直したくなる魅力がある。ポリーナ・セミオノワ、中村祥子、ベアトリス・クノップ、エリサ・カカリッロ・カブレラと女性ダンサーたちはいずれも非常にパワフルで美しい。彼女たちは、古典よりもこういう現代作品の方がずっと魅力を発揮できるのではないかと感じさせた。

******
特典映像は、ビゴンゼッティはじめ、音楽、照明、衣装のスタッフと、マラーホフ、ポリーナ・セミオノワ、ベアトリス・クノップ、レオナルド・ヤコヴィナのインタビュー、そしてリハーサルシーンのドキュメンタリーが約30分。輸入版でも、日本語字幕を選ぶことができる。ビゴンゼッティは、振付を行うときにも自分でかなり動いて見せるのだけど、現在48歳の彼がえらくカッコいい。ナチョ・ドゥアトをちょっと華奢にした感じ。
また、ベルリン国立バレエのソリストであるマリア・ヘレナ・バックリーMaria-Helena Buckley が撮影した、想像力を掻き立てる舞台写真とリハーサル写真(各5分)も特典映像としてついている。(ジャケットの写真も彼女の手によるもの)

Caravaggio (Ws Sub Ac3 Dts) [DVD] [Import]Caravaggio (Ws Sub Ac3 Dts) [DVD] [Import]

ArtHaus Musik 2009-06-30
売り上げランキング : 19789

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

できれば、デレク・ジャーマンの映画「カラヴァッジオ」も併せて観るとさらに面白いと思うのだけど、残念ながらこちらの国内盤は廃盤。PALフォーマットの英国盤は、Amazon.co.ukで入手可能(私もUK盤を持っている)

Caravaggio [1986] [DVD]Caravaggio [1986] [DVD]
Nigel Terry

Bfi Video 2007-01-29
Sales Rank : 6012

See details at Amazon
by G-Tools


« マリア・コチェトコワ、越智インターナショナルバレエに出演予定/岸辺バレエスタジオ発表会 | トップページ | 「毛沢東のバレエダンサー」Mao's Last Dancer リー・ツンシン »

バレエのDVD・ビデオ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは

>美青年レオナルド・ヤコヴィナ!!!そうでしょ~う!(笑)レオナルドってそうでしょ~う?!ベルリンで眺めがいいのは彼だけではないか・・・?!と思ってるほどです(笑)ダンサーとしては、まだまだ成長過程らしいので今後に期待なのですが。「オネーギンはどう?!」と聞いたら、どれほど自分がオネーギンを踊りたいか!って
そのためなら持てるすべての情熱も傾ける~って、瞳をランランと輝かせながら語ってくれました。オネーギンの話になったら男の子達は、皆さん、語る!のでホント興味深いです。エヴァンもそうでしょう?!


 「カラヴァッジオ」は見てないので、今はノーコメントで。

ゆいーちかさん、こんばんは。

そう、レオナルド・ヤコヴィナって初めてこの映像で認識しましたが、素敵な方ですね!確かにカンパニーのサイトを見ても、ベルリンってビジュアル系男子が少ないような感じがします。ビジュアル面は団長が一人で担っている感じ(笑)
「オネーギン」って、男性ダンサーにとっては夢の役のようですよね。みんな一度は踊りたいって願うという。レオナルドもいつか踊れる人が来るといいですね。似合いそうですし。
エヴァンにも、オネーギンの話をしたら、シュツットガルトの歴代オネーギンの話を延々とし始めて止まらなくなっていました。もう何年もこの役に向けて準備をしてきたと言っていましたよ。

naomiさんこんにちは。
私も買ったのですが、まだみていないんですよ。4月に振られたので、秋にカラヴァッジョ目当てにベルリンに行こうと思っているので、それまではみないつもりなんです・・・。だからnaomiさんの記事もちらっとだけ拝読しました(笑)

レオナルド・ヤコビナ、ハンサムですよね。彼は確か、監督が出演しない演目だった白雪姫で王子様でブレイクしているはずです。彼がカラヴァッジョでマラホフとの白眉の男同志のPDDに抜擢されたのを知ったときは(確かヤコビナとPDDでしたよね?)、嫉妬で狂いそうになりました(笑) ヴィシニョーワやポリーナには全く嫉妬しないんですけど^^;; ベルリンではマイケル・ブンザードというダンサーが、カラヴァッジョやほかの作品でマラホフが主演しない日の主演なので実力的にはマイケルさんが上なんだろうと思います。踊りとしては、かなり端正で美しいらしいです。

ベルリン国立バレエ団が招致されることを願うばかりです。

ショコラさん、こんにちは。

カラヴァッジオ、ベルリンまで見に行かれる予定なんですね!いいなあ。私、ドイツは何回も行っているのに一番メジャーなベルリンとミュンヘンだけ行っていないんですよね。
レオナルド・ヤコヴィナ、白雪姫の王子様役に入っていますね~。嫉妬でメラメラ、なんとなくわかります(笑)でも、不思議とこのPDDはあまりエロくないんですよね。美しい人同士が踊るとかえってエロスがないのかもしれません。ヴィシニョーワもあんなに色っぽいのに、マラーホフと踊るとエロスを感じないですよね。ポリーナにしても、男前な感じだからかしら。ベアトリス・クノップも男前な姐さんという感じだし。
マイケル・ブンザーフも、この「カラヴァッジオ」の主要な役の一人として出演していますよ。ソリストの中では、ポリーナ兄と並んで目立たない方の役なんですが、彼もなかなかカッコいい方だと思います。
いずれにしても、マラーホフが踊れるうちにベルリン国立バレエ、呼んで欲しいですよね。「カラヴァッジオ」や「白雪姫」「燃える心」「チャイコフスキー」など観たいですもの。NBSは古典じゃないと呼んでくれないんでしょうかね。カラヴァッジオは、私は面白いと思ったんだけどなあ。

レオナルドとのPDDはそれほどエロくなかったのですね!なんだかほっとしました。ポリーナもヴィシニョーワも、クノッブさんも、みんなプロフェッショナルな面が女性としての面よりも前に出る感じですよね。でもそういう人とでないと、マラーホフが一緒に踊れないんだと思います。

naomiさんがカラヴァッジョを良いと言ってくださって嬉しいです。ビゴンゼッティの作品は去年の夏のエトワールガラでみた1作品とカジミールだけですが、彼の作品は難解に見えて、人間臭くて温かみがあって、インテリにもミーハーにも受け入れられそうだと、私は勝手に理解しています(笑)。

NBSさんは、BBLも招致しているし、ノイマイヤさんとも近いしいので、コンテンポラリーでも内容によっては承諾してもらえると思います。でも今度のPOBはなにげにジゼルなんですよね。。。

ショコラさん、こんにちは。

ホント、このカラヴァッジオをライヴで観られるのは羨ましいです!ぜひ楽しんできてくださいね。マラーホフのパートナーとなる人はみんな素晴らしいダンサーばかりですが、たしかにすごく女っぽい人はいないかもしれませんね。

そしてビゴンゼッティの作品についての理解、それで合っていると思います。彼は音楽のセンスが抜群に良いと思うんですよね。私は観ていないんですが、シュツットガルト・バレエでも「若者のすべて」という、ヴィスコンティの映画をバレエにしているんですよね。マリインとジェイソン・レイリーが主演しているんですが。それに、ビゴンゼッティ本人も、特典映像のメイキングを見るとすごく素敵な人です。

最近はササチュー氏も年を取ってしまって、海外まで新作を見に行くのは厳しい感じですよね。それに、オペラ座が「ル・パルク」を別の会社で招聘した時に、ルグリのガラのキャスト表の裏に、来年来るコンテの公演はうちは関係ありません、NBSではグランド・バレエでオペラ座を呼ぶとわざわざ書いてあったので、NBSは古典にこだわっているのかな、なんて思ったりして。ベジャールやノイマイヤーは佐々木氏にとっては(特にベジャールは)特別の存在だから、別格なんでしょうけど。

ビゴンゼッティはシュツットガルトとよく仕事をしているのですね。さすが、naomiさん。

ところで、フェスのガラでジュエルズの衣装について「カリンスカの白い衣装(マリインカ仕様でちょっとクリーム色)」と書かれていたのですが、ググってみてとても勉強になりました。ヴィシのあのちょっと肌色っぽいのは、衣装が古いのではなく、そういう色なんですね。へんなタイミングでコメントしてすみません^^;;

家にほったらかしになっている、「怒っている人集まれ」を読んで、「闘うバレエ」も買ってみようかと思いました。

ショコラさん、こんばんは。お返事遅くなりました。

ジュエルズの衣装といえばパリ・オペラ座のクリスチャン・ラクロワがデザインしたものが有名ですが、バランシン財団が怒ったんですよね~。バランシン作品のフワフワしたチュチュは、カリンスカがデザインしたものなんですよね。ロイヤルなどは、やはりカリンスカのクリーム色の衣装を使っていますよね。(だけど、マリインスキーの「ジュエルズ」はDVD用に収録したのに、バランシン財団が気に入らなかったらしく、お蔵入りする可能性が高いそうです。オペラ座の、残像が残って観難いほうはDVD化されたのに)

「闘うバレエ」面白いですよ~。最近文庫本になってお値段的にも手に取りやすくなりました。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« マリア・コチェトコワ、越智インターナショナルバレエに出演予定/岸辺バレエスタジオ発表会 | トップページ | 「毛沢東のバレエダンサー」Mao's Last Dancer リー・ツンシン »