ハンブルク・バレエ、2009年7月バレット・ターゲの紹介記事 Ballett Tage of the Hamburg Ballet
今年7月に開催された恒例のハンブルク・バレエのバレット・ターゲ(バレエ週間)のレビュー&写真がBallet.coに掲載されていました。
http://www.ballet.co.uk/magazines/yr_09/sep09/bm-john-neumeier-hamburg-ballet.htm
公演の美しい写真のほかにも、バレエ学校や、2012年にオープンする予定のフィルハーモニック・ホールの予想図、ノイマイヤーのコレクションをベースにした「ニジンスキー展」で展示されたニジンスキーによる絵画作品なども掲載されています。
まずは7月10日のプログラム、先日世界バレエフェスティバルでも上演された「Verklungene Feste いにしえの祭り」、「Josephs Legend ヨゼフの伝説」(公演3時間前にヨゼフ役のティアゴ・ボァディンが降板して、アレクサンドル・リアブコが急遽代役を演じました)の2作品。
7月11日の「バレエ・リュスへのオマージュ」と題しての公演は、「放蕩息子」(セイレーンをエレーヌ・ブシェ、放蕩息子を新星アレクサンダー・トラッシュが踊りました)、ニジンスキー版の「春の祭典」(選ばれし乙女役は、シルヴィア・アッツオーニ)、そして、やはりバレエフェスで「シャムの踊り」が踊られたノイマイヤーの新作「アルミードの館」の3作品。
「アルミードの館」は、ノイマイヤーの「ニジンスキー」の後日談であり、精神病院に収容されたニジンスキーの回想で始まります。ニジンスキー役は、オットー・ブベニチェク。そしてこの作品の中にも、セルゲイ・ディアギレフを思わせる人物が登場します。舞台美術の一部は、アレクサンドル・ブノワがデザインしたオリジナルを使用しているとのことです。
この評者は、ノイマイヤーは物語に映画的、もしくは夢のようなものを与えようとしていると感じたようです。ゆっくりと変化していく場面、背景でのゆっくりと歩く人物などによる奇妙なかき乱し方。そして夢のごとく、目が醒めた時、それがいったいどのような意味だったのだろうかと不思議に思うような作品であると。
そして7月12日は、第35回ニジンスキー・ガラ Nijinsky Gala XXXV。
チケット入手が非常に困難なことで知られている特別な公演です。5,6時間以上にわたる公演とは、まるで世界バレエフェスのガラ公演のようですね。
16もの作品が踊られたこのガラ。まずは、「ぺトルーシュカ」のシルヴィア・アッツオーニとロイド・リギンスが素晴らしかったようです。ロイヤル・バレエからはジョナサン・コープとリアン・ベンジャミンが「火の鳥」で客演。引退しているコープは、2年ぶりの舞台だったとのことですが、とてもそのようには見えず、マジカルなパフォーマンスだったとのこと。「アルミードの館」は、ティアゴ・ボァディンの代わりにヨハン・ステグリが「シャムの踊り」(バレエフェスで踊られたあの作品ですね)を踊り、オペラ座からマチアス・エイマンが「薔薇の精」を踊って、高い跳躍で観客を魅了しました。少女役は、レティシア・プジョル。ミュンヘン・バレエからは8人のダンサーがゲスト出演し、ニジンスキー振付の「牧神の午後」を踊りました。牧神はティグラン・ミカエリャン、ニンフはダリア・スホルコワ。
第2部は、ピカソが奇抜な衣装と舞台装置をデザインしたので有名な「パラード」。レオニード・マシーン振付、エリック・サティの音楽によるもので、Donlan Dance Companyという10人だけのカンパニーが上演しました。Aoi Nakamuraという日本人の女性ダンサーも出演していたとのことです。ニジンスカ振付による「青列車」は、アレクサンダー・トラッシュ(最近のノイマイヤーのお気に入りダンサーなのだそうです)が踊りました。「アポロ」は、オペラ座からの客演で5人のダンサーが踊りましたが、エルヴェ・モローの降板に伴い代役として出演したのがフロリアン・マニュネで、さすがに彼にアポロ役は荷が重かったようです。
第3部は、主にノイマイヤーの作品で構成されていました。ノイマイヤー作品以外では、まずは「ジゼル」。やはりエルヴェ・モローの代役として出演したステファン・ビュヨンと、イザベル・シアラヴォラが作り上げた世界は素晴らしかったようで、全幕が楽しみとの評者のコメント(というわけで、この組み合わせで日本でも見られると良いのですが)。また、ウラジーミル・マラーホフとシルヴィア・アッツオーニのジェローム・ロビンス振付による「牧神の午後」、マラーホフはドラマティックで息を呑むほど素晴らしく、そしてシルヴィアは魅力的で、ドラマティックなインテリジェンスを感じさせ、評者によると今まで観たロビンス版の「牧神」でもっとも良かったそうです。シルヴィアはこの作品を踊るのが初めてで、マラーホフとは2日ほどリハーサルをしただけ、しかも「春の祭典」など他の作品と並行していたそうですから、彼女の凄さがわかるというものですね。
「ヴェニスに死す」は、アレクサンドル・リアブコとイヴァン・ウルバンが踊り、とても感動的だったそうです。ノイマイヤー版の「ペトルーシュカ」はカロリーナ・アギュエロとヨハン・ステグリに加え、ハンブルク・バレエ学校の生徒たちも出演して楽しくチャーミングな舞台だったとのこと。
5時間5分の長きにわたったガラは、15分間のカーテンコールの後に幕を下ろしました。
この公演についての番組が、ハンブルク・バレエのFacebookで紹介されていました。
http://www.youtube.com/watch?v=L7eN-qm-g18
ドイツ語の番組ですが、リハーサルの様子や、「春の祭典」、さらにはティアゴ・ボァディンが踊る「アルミードの館」のシャムの踊りの映像を少し見ることができます。ティアゴ、妖しくて素敵ですね~。ノイマイヤー、ティアゴやシルヴィア・アッツオーニのインタビューもあります。
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コメント
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充実のバレエ祭りを充実のエントリーで紹介してくださってありがとうございます。
おかげさまで、ダンマガに使われていたマラーホフの写真をダウンロードすることができました( ̄ー ̄)ニヤリ
それにしても、すごい内容で、本家ロシアの白夜祭での、結婚や春の祭典を凌ぐようですね。ハンブルクのオーディエンスがうらやましい。日本でもバレエフェスで散々楽しみましたが、こういったテーマ性のあるお祭りはなかなかできることではないですよね。ハンブルクバレエというか、ノイマイヤってやはり、知力、実力、人脈などが揃った人物なのですね。
投稿: ショコラ | 2009/09/08 20:57
ショコラさん、こんばんは。
マラーホフの「牧神の午後」の写真、素敵ですよね♪評を書いた方も絶賛しているし。
ニジンスキー・ガラって、チケットの売出しが1年近く前なのに一瞬で売切れてしまっていて、私の友達で毎年ハンブルク詣でをしている人でもチケットが入手できないほどの人気なのですが、それも納得の内容ですよね!ゲストも毎年とても豪華だし、コンセプトもしっかりと作っているし(でも来年のゲストカンパニーは東京バレエ団だけど)。もうノイマイヤーは35年間も芸術監督を務めているのですが、ノイマイヤーのいないハンブルク・バレエって想像できませんよね。
投稿: naomi | 2009/09/09 01:04