9/5 東京ニューシティ管弦楽団 第64回定期演奏会 指揮:アンドレイ・アニハーノフ
アンドレイ・アニハーノフ客演指揮者就任記念演奏会
「怒濤のロシア音楽」
指揮:アンドレイ・アニハーノフ
コンサートマスター:浜野孝史
<第1部>
リムスキー・コルサコフ 「スペイン奇想曲 op.34」
バレエ組曲「白鳥の湖」op.20より(アニハーノフ編纂)
1.情景(第2幕 No.10) <2幕冒頭>
2.パ・ダクシオン(オデットと王子)(第2幕 No.13)<オデットと王子のグラン・アダージオ>
3.情景:賓客の入場とワルツ(第3幕 No.17)<ファンファーレと招待客、花嫁候補によるワルツ>
4.情景(第3幕 No.18)<オディールのヴァリエーション(グリゴローヴィチ版やブルメイステル版で使用される曲)>
5.パ・ド・ドゥ(第3幕 No.19a)<チャイコフスキー・パ・ド・ドゥのアダージオの曲>
6.情景(第3幕 No.24)<王子がオディールに愛を誓わされる>
7.間奏曲(第4幕 No.25)<4幕の冒頭の曲>
8.情景(第4幕 No.28)
9.最後の情景(第4幕 No.29)
<第2部>
ラフマニノフ 「交響曲第2番 ホ短調 op.27」
アンコール
チャイコフスキー「くるみ割り人形」より金平糖のPDDのアダージオ
ここ数日仕事が忙しくて残業続きの上、体調が優れず、さらに蕁麻疹が悪化して手の甲がとても気持ち悪い状態になっていたりします。大抵土曜日の午前中は死んでいるのですが、ぎりぎりに家を出たところ、普段滅多に行かない池袋で土地勘がなく、(中央線より北は生活圏から外れているので)、しかも一度しか行ったことがない東京芸術劇場の大ホールだったため、間違って中劇場に行ってしまったりして。大ホールのエスカレーターって、5階に相当する高さで、しかも3階席だったので、そこまで行くのに大変だったこと!というわけで、残念ながらぎりぎり開演に間に合わず、1曲目のリムスキー=コルサコフはモニターの前で聴く羽目に・・・
でも、「白鳥の湖」から聴けて本当に良かったです。コンサートマスターのグラン・アダージョでのソロ、ハープによるカデンツァの弦の響きも美しくてうっとりしました。バレエの伴奏ではなくて演奏会なので、バレエを観ている時とテンポが違う(ちょっと速め)のですが、アニハーノフさん、そしてオーケストラの気合が伝わってきました。ニューシティ管弦楽団の演奏もすごく良かったです。
バレエの演奏では、大抵3幕のファンファーレでトランペットが外すことが多くてずっこけるのですが、演奏会だから当然のようにそこも正しく演奏されていて。いやはや、バレエではあそこでトランペットがこけることがなかった方が珍しいですからね。
3幕は、パ・ド・ドゥの曲がブルメイステル版の曲順になっていて、オディールのヴァリエーションはグリゴローヴィチ版での曲だったし(オーボエの旋律が妖しげな短調のこの曲、大好き)、その後にチャイコフスキー・パ・ド・ドゥのアダージオを使っていて、思わずミラノ・スカラ座のチャイコフスキー・ガラやモスクワ音楽劇場の「白鳥の湖」の舞台が思い出されてきました。
4幕の演奏が、も~素晴らしかったです。「聴け、怒涛のロシア音楽」というキャッチコピーほど、ここまでは爆音ではなかったのですが、4幕の「情景」から「最後の情景」までは本当にドラマティックで、ティンパニも炸裂していて、盛り上がりました。最後の情景のところは、私はマシュー・ボーンの「白鳥の湖」と、ノイマイヤーの「幻想 白鳥の湖のように」をいつも思い出すのですよね。この二つの演出は、4幕の「最後の情景」の凄絶なまでの盛り上がり方を、もの凄くうまく使っている演出だと思うのです。そこを指揮する時のアニハーノフの身体の動きも、3階席のバルコニーだったのでとてもよく見えて、全身を使って飛び跳ねるように指揮しているのがわかりました。
今まで数限りなく「白鳥の湖」の舞台を観てきているわけですが、こうやって、アニハーノフさんの入魂の指揮と、高いクオリティと、オーケストラピットではなく舞台の上で演奏しているゆえにクリアな音質による演奏を聴くと、さまざまな舞台の記憶が脳裏に浮かんできます。とともに、バレエ公演でこのレベルの演奏を聴けたらどんなにいいことだろうと思いました。アニハーノフさんがレニングラード国立バレエの指揮で来ていた頃は、この音が聴けたんですよね。全曲でないのは残念ですが、それでもアニハーノフによる選曲のセンスが、聴き所をばっちり押さえていて素晴らしかったです。一昨年のNHK音楽祭でのゲルギエフによる「白鳥の湖」抜粋とはかなり選曲が違っていました。(ゲルギエフは、チャルダッシュを選んでいましたね)
アニハーノフ指揮、東京ニューシティ管弦楽団で今度牧阿佐美バレエ団の「白鳥の湖」の演奏をするんですよね。この音で観られるのは良いのですが、牧というのがちょっと・・・。「スーパーバレエレッスン」を観ていると、牧のダンサーの悪いところが目に付いてしまって、とても公演を観ようとは思えないんですよね。
ラフマニノフの交響曲二番を聴くのは初めて。曲調は変われども4つの楽章を通じて、主題が根底に流れているところがいいなあ、と思って聴き入りました。第3楽章のアダージオだけ、指揮棒を置いて指揮をしていたんですね、マエストロ。柔らかくてきれいな手の動きを見てしまいました。音の方も、それに見合った柔らかくゆっくりとして美しい旋律で。第4楽章のフィナーレは晴れやかで華麗で、アニハーノフさんは、舞台から落ちちゃうんじゃないかと思うくらい飛び跳ねていて、カッコよかったです。オーケストラのメンバーも、釣られたようにノリノリで、身を乗り出さんばかりに気合入りまくりで演奏しているのが見えました。
カーテンコールの時、上手で譜面台が運び込まれ、さらにハープがもう一台運ばれてくるにつけ、アンコールに期待しました。すると、2台のハープから、真珠の珠のようなつややかな旋律、そしてチェロの暖かく少し哀しくて美しいメロディが流れてきます。そう、「くるみ割り人形」の金平糖の精のアダージオです!なぜかこの曲を聴くと、いつも涙が出そうになります。そして、金平糖の精といえば、吉田都さんの金平糖が目に浮かぶのです。実は都さんの金平糖の精は、ロイヤルとバーミンガム・ロイヤルの映像でしか観たことがないのに。
やっぱり生の演奏に触れることは、他では換えがたい経験だと思いました。アニハーノフさん、牧以外のバレエ団での指揮をぜひお願いしたいです。
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コメント
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Naomiさんも行かれたんですね。

私ももちろん行きました
お会い出来なかったのが残念です
でも、本当に素晴らしかった。
特に白鳥、くるみは感涙です。
恐らく彼の指揮をずっと観てきた人は同じだったと思います。
ラフマニノフの交響曲二番を通して聴くのは私も初めてですが、やはり良い音楽は初めて耳にしたとしても、感動を与えてくれますね。
もちろん、今回はアニハーノフの指揮あってこその「良い音楽」だったのかもしれませんが・・・
いずれにしても心を持って行かれてしまいました。
冬のマリインスキーでタクトを振ってくれないかと期待してしまいます。
ところで体調は大丈夫ですか?
今週の涼しさから一変、昨日は暑かったから普段健康な人でも、体調を崩しやすい状況になりますよね。
体力を維持出来ないと、劇場にも足を運べませんから、ご自愛すべし!!です。
投稿: Shige | 2009/09/06 06:23
Shigeさん、こんにちは。
Shigeさんもいらしていたんですね!お会いしたかったです。この日は友達と来ていたのですが、偶然自分の席の後ろに別の友達が座っていたりして、やっぱりマールイファンが多数集結した公演だったんだなって思いました。東京芸術劇場の大ホールはなかなか行く機会がなくて、どういう構造になっているのかも今ひとつわからないんですよね。
でも本当に素晴らしい公演でしたね!誘ってくれた友達に感謝です。「白鳥の湖」も「くるみ」も至福の時間でしたね。思わず舞台が脳裏に浮かんでくるドラマティックな音ですよね。
そういえば、マリインスキーの来日公演は、「イワンと仔馬」以外はニューシティが演奏なので、アニハーノフさんが振る可能性もゼロではないですよね!?ぜひお願いしたいところです。
ホント、体調は一番気をつけないといけないところです。なんと今日も起きたら1時半!で結局洗濯したりお料理をしたり片づけをしていたら一日が終わってしまいました。たくさん寝られたからいいのだけど、なんとももったいないような。
投稿: naomi | 2009/09/06 23:42