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« ABTの2010年METシーズンにノイマイヤーの「椿姫」!Lady of the Camellias in ABT 2010 MET Season | トップページ | 『鴻池朋子展~インタートラベラー 神話と遊ぶ人』 »

2009/09/13

9/12 マチネ 「兵士の物語」The Soldier's Taleウィル・タケット振付

演出・振付:ウィル・タケット
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
美術:レズ・ブラザーストーン

兵士:アダム・クーパー
ストーリーテラー:ウィル・ケンプ
悪魔:マシュー・ハート
兵士の婚約者/王女 ゼナイダ・ヤノウスフスキー
http://www.heishi.jp/

Image0451

私、ストラヴィンスキーの「兵士の物語」の音楽があまり好きではなく、NDTでナチョ・ドゥアト主演で振付けられた作品もDVDで観たけどやはり苦手で、さらにバレエフェスのためお金もなくてどうしようかな、と思っていたのです。が、ダンスマガジンで千円引きの企画があったので、チケットを取りました。結果的には、観に行ってよかったと思います。とても面白かったし、こういうダンスとも演劇ともいえるダークで諧謔風味あふれる奇妙な舞台を、しかもオリジナルキャストで日本で観られるのってすごく貴重な機会。

開演前からストーリーテラー(狂言回し)役のウィル・ケンプが舞台を歩き回っていると聞いたので、ちょっと早めに着席。確かに、いつのまにかシルクハットをかぶったウィル・ケンプが舞台の上を歩き回っている。チケットを買ったのが遅くて、さすがに劇場のほぼ最後列。最後列ということを考えれば見やすいのだけど、表情はちょっと見えない。舞台美術は、マシュー・ボーン作品でも知られるレズ・ブラザーストーンで相変わらずセンスが抜群。悪魔を描いた垂れ幕がかかり、アンティークな芝居小屋のようなキッチュな空間、両端にも客が何人か着席。舞台の中央前方にはぽっかりとオーケストラピットが開いている。舞台両側には字幕。

そして舞台の始まり。ウィル・ケンプが、一人一人、「私の劇場へようこそ!」と言いながら、スポットライトが当たった登場人物を紹介していく。オーケストラピットの中の楽団や、舞台上の客にも挨拶。「バレエの世界から招きました」と紹介されたゼナイダ・ヤノウスキーは、化粧鏡の前でタバコをくわえお酒をラッパ飲みしているし!そしてウィルが、ストーリーを語り始める。彼の英語は滑舌よく、とっても聞き取りやすい。軽やかな身のこなしで、上手く狂言回し役を果たしている。出演者はみんな、派手なメイクをしているのだけど、私の距離からだと、オペラグラスを使っても照明の加減のためか、それほどすごく顔を作っているって感じじゃなくて違和感はなし。久しぶりに見るアダム・クーパーは長身でプロポーション良く、ぼろぼろの服を着ていてもカッコよかった。

2週間の休暇をもらった兵士が、故郷に帰ろうとしたところ、老人の姿をした悪魔に出会い、大事にしていた粗末なヴァイオリンと、本を交換してしまう。この本には未来のことが書いてあるのだという。「本をもらっても、読めないと思うし」と言って、わざと逆さまに本を持つ兵士が可笑しい。そして悪魔の家に招かれて、3日間だけだと思っていたら実際には3年で、その間に婚約者は結婚して子供までいるし、故郷には自分を知るものは誰もいない。兵士は本に書いてあることを実践して大金持ちになり、ついでに病気だった王女の病気を治して彼女と結婚したものの、心は満たされない。悪魔とギャンブルをしてわざと負け、もうけた金を返して彼の呪縛を解く。しかし・・・。

演技者として一番おいしいのは、やはり演技派として知られるマシュー・ハート。ひとくちに悪魔といっても、老人、老婆、見るからに怪しい詐欺師のおじさん、そして半獣半人のようなザ・デビルなお姿(ちょっとムチムチだったけど)まで、姿を変え、手を変え品を変えて兵士の心の中に侵食していく姿を怪演。きっと演じていてもめっちゃ楽しいだろうな、と思った。小柄で童顔、どちらかといえば愛嬌のある彼が、どんどん怪しさを増して悪魔の正体を表わしていく様子には、ゾクゾクさせられた。ハマりすぎていて怖いほど!

アダム演じる兵士は、ヒーローではなく、悪魔に簡単につけ込まれてしまう弱くて平凡な男。アダムがスターオーラを封印して、マシューやウィルらの濃い演技をうまく際立たせていた。彼が大事にしていた小さくてみすぼらしいヴァイオリンこそは、彼の魂の象徴であり、そのヴァイオリンを渡してしまうということは魂を悪魔に売り渡してしまったんだなっていうことが良くわかった。意外と踊るシーンもあって、思ったより踊れていた。舞台がごちゃごちゃと装置があるためとても狭いので、若干踊りにくそうだったけど、やっぱり彼のように手脚が長いと踊りが映える。その上、台詞まわしもとても達者で声も良く通る。

ゼナイダ・ヤノウスキーは、この出演者の中で唯一の現役クラシックダンサーで、長身ということもありアラベスクのラインがとっても綺麗。背中も柔らかい。王女役の時にはポアントを着用。この王女役というのがまた面白くて、一言で言えば壊れている。最初は病気で口が聞けないという設定なのだけど、ワガママだったり変な表情をしてみたり、くるくる変わる表情を見ているだけでも飽きない。シンデレラの灰かぶり姫のような粗末な服での、純真で素朴そうな婚約者役と見事に演じ分けていた。

というわけで、4人の出演者がとても生き生きと演じてくれていて面白かったのだけど、台詞が非常に多いので、字幕に気をとられていると肝心の舞台を見逃す危険性がある。踊りのシーンもないわけではなく、兵士と婚約者のパ・ド・ドゥはとても美しく切ないし、兵士と王女の踊りはファニーで楽しいんだけど、踊りよりも演技のシーンの方が見ていて楽しいのだよね。

個人的には面白かったし、英国的なバッド・テイストのブラック・コメディ的趣味が全開で楽しかったし、ストラヴィンスキーの奇妙な音楽もそれほど気にならなかったけど、1回見て内容が頭に入ったのでもう一回ちゃんと観たいなって思った。できればもう少し前で表情が見える席で。

上演時間は1時間15分とかなり短く、休憩なし。というわけで、お手洗いなどは先に行って置いた方がいいかも。

チャコットのダンスキューブには、ゲネプロのレポートもあるので、よろしかったらご覧ください。
http://www.chacott-jp.com/magazine/interview-report/genepro/post-10.html

追記:9月13日マチネの公演にはテレビカメラが入っていて、友達が聞いてくれた話しによると、WOWOWで収録し放送する予定だそうです。

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バレエ公演感想2009」カテゴリの記事

コメント

昨日のソワレを見てきました。75分って短いなあと思っていたけれど、かなり濃厚な舞台でしたね。舞台上のお客さんは関係者だったのでしょうか。
終演後に友人と隣のパブで食事をしていたら、なんと演出・振付のウィルさんをはじめとする関係者の皆さんがぞろぞろと現れました。新聞の評を読んだり、プレゼントを開けたりしていましたよ。初日に較べて今夜はほんとに気持ちよく公演することができたというようなことをおっしゃっていました。
舞台では年配かしらと思っていたマシュー君、素顔はほんとに若いのが驚きでした。

こんばんは。
昨日のソワレを観てきました。寓話的でありながらとても濃厚な世界観がとても気に入って、どっぷりと余韻に浸っています。
悪魔を踊ったマシュー、凄かったですね!怖い中にも愛嬌が見え隠れして、何だかとても惹き付けられました。

24601さん、こんばんは。

ホント、濃厚な作品で、たっぷり味わえましたよね。かなり台詞も多いし、演劇を見ているようなところがありました。

私もマチネの終演後にオペラシティ内のカフェでお茶をしていたら、遅い昼食のためにアダム、ウィル、マシューとスタッフの方が来ていました。初日と二日目の両方を見た人の話では、やっぱり二日目の方が良かったみたいですね。慣れてきたのかしら?
マシュー・ハートは一昨年ロンドンでマシュー・ボーンの「白鳥の湖」の王子役を踊っていたんですよね。見てみたかったです。アダムとはロイヤル・バレエスクールで一学年違いだったってパンフレットに書いてありました。

Elieさん、こんばんは。

お話としては、よくある寓話的というか教訓的な不条理話なのに、演者たちの熱演や、舞台装置などの妙で楽しめた作品でしたね。私も気に入ったので、もう一回観に行くことにしました。

マシュー・ハート、演技力がすごいって聞いてはいたけど、実際に見てみてやっぱりすごいなあって思いました。4つの悪魔の化身を演じ分けていて、怖いけど可愛いみたいなところがあって悪役なのに魅力的でしたね。

今日のソワレを見に行きます。
楽しみです。

猫好きさん、こんばんは。

私も急遽、今日観に行ってしまいました。
猫好きさんは楽しまれましたか?今日はヴァイオリンが壊れるというハプニングがありましたね!

naomiさまこんばんは。
兵士急遽の追加で2度見てくださってありがとうございます。
別に関係者ではありませんが、彼らのファンとして
とてもうれしいです。
私の大好きなマシュー・ハートのことについても
気に入っていただけてうれしいです。
私は、まだ彼の悪魔を見ていないのですが
彼には、いろんな顔がありそこが魅力なのです。
私は大阪に来るまで待っているので
いよいよもうすぐです。
彼のロイヤル映像版のマイヤリングでのブラットフィッシュの
ソロは絶品です。泣けてきます。

きょんさん、こんにちは。

きょんさんは今週末の大阪公演をご覧になるんですよね!今から観られるなんてちょっと羨ましいです。この作品、好き嫌いが出る作品のようで気に入った方もそうではない方もいたようですが、誰もがマシュー・ハートの演技を絶賛していましたね。きょんさんの強力推薦も納得です!本当に彼はうまい!邪悪さの中にも愛嬌があって、4人を演じ分けているのに、一貫として悪魔なのがわかるんですもの。狭い舞台の上を駆け回り飛びまわり、声色も使い分け・・・楽しみにされてくださいね。

マイヤリング、ビデオがあるので見直してみますね!

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