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« 韓国ユニバーサルバレエの「オネーギン」 Onegin by Korea's Universal Ballet | トップページ | ABTが11月に北京公演 ABT Beijing Tour November 2009 »

2009/08/25

「エトワール 最後の60日 密着マニュエル・ルグリのバレエ人生」

待ちに待ったドキュメンタリー「エトワール最後の60日 密着マニュエル・ルグリのバレエ人生」

http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20090821-10-24683

マニュエル・ルグリが定年によりオペラ座のエトワールを引退した、と聞いてもなかなか現実感がなかった。アデュー公演を観に行った友達の話、ネットの記事や動画、それに雑誌や先日出た本「パリ・オペラ座のマニュエル・ルグリ」を見て読んで、引退したという事実が突きつけられても、それが現実のものとはなかなか考えられなかった。世界バレエフェスティバルでも、今まで通りの素晴らしい踊りと表現を見せてくれていたし。でも、この番組を見て、やっと、彼がオペラ座のエトワールを引退し、それととともにダンサーとしての新しい世界の扉を開いたのだと思った。

華やかなデフィレで番組の幕は開ける。

いつも通りにガルニエに出勤するルグリ。バーレッスンには、マチアス・エイマン、バンジャマン・ペッシュ、アリス・ルナヴァンらの姿が。一生懸命腕立て伏せをするルグリ。

「ル・パルク」の舞台で、エトワールとしてのルグリと最後の共演をしたオーレリー・デュポン。「ル・パルク」の「解放」のパ・ド・ドゥを見せてくれたのが嬉しかった。カーテンコールで涙ぐむオーレリー。見事なパートナーシップで知られた二人が、彼のアデュー公演で組めなかったのは、身長の差が問題だったのだろうか?

「昔から二人で踊るのが好きでした」と語るルグリ。

「スーパーバレエレッスン」にも生徒として出ていたエレオノール・ゲリノーとファビアン・レヴィヨン。若手ダンサー公演に出演する彼らのために、自作「ドニセッティ・パ・ド・ドゥ」を指導するルグリ。お手本の跳躍がはっとするほど鮮やかで、とても40代半ばの人とは思えない。けっこう指導は厳しくて、若手二人はへとへとになっている。

「オネーギン」のドレスリハーサルで「鏡のパ・ド・ドゥ」。演奏はピアノのみ。ルグリのような名手でも、なかなか上手くいかなくて苦労している様子。

一方で、ルグリはガルニエの中の学食のようなカフェで、そしてリハーサル室で、パトリック・ド・バナと「A Picture Of…」の改定作業に取り掛かっている。ルグリの完璧な判断能力の部分でなく、彼の感情をかきまわすような作品にしたいというパトリック。最後にバイバイ、と小さく手を振る印象的なところが、彼の今までの世界との別れと新しい世界への誕生を象徴しているようで、切ない。

そしていよいよアデューの日が。いつも通りに、朝11時に出勤するルグリ。まずはデフィレのリハーサル。このデフィレの部分、もう少し映してくれるかなと期待していたのだけどほんのちょっとだった。だけど、デフィレのところでルグリは思わず涙ぐむ。このシーンにはこちらも思わずほろっときた。リハーサルが終わった後、バレエ学校の小さな生徒たち、そして校長のエリザベット・プラテルが彼のところに寄って来る。憧れのスターを前に、キラキラと瞳を輝かせた子供たちからプレゼントされたのは、ルグリの学校時代の写真、そして成績表を貼ったアルバム。思わず、すぐにそのプレゼントを持って楽屋に引っ込んでしまうルグリ。

本番の準備のためにメイクをするルグリは、カメラに向かって独白を始める。彼は自分ではまったく気がついていなかったけれども、実は学校時代の成績は極めて悪かったそうだ。彼はただバレエが好きで、バレエに打ち込んで、その結果今の彼がいる…。言うのは簡単だけど、厳しい競争世界の中でひたむきに努力しても、彼ほどの高みに達することができる人は滅多にいないということにも、気がつかされる。

そしていよいよ「オネーギン」。クランコ財団の制約が厳しくて、さまざまなシーンから少しずつだけの抜粋。最後の「手紙のパ・ド・ドゥ」。タチアナが彼の手紙を破り、ここから出て行きなさいと命じられ、激しく嘆きながら部屋を出て行き、舞台袖へと駆けていくまでのルグリをカメラは追う。このわずかな抜粋だけでは、どのような舞台だったかをうかがい知ることはできない。が、クレールマリ・オスタのタチアナは、独特の険があり、夫にも愛されていない不幸な女のようで、冷淡な感じもして、オネーギンのアデューの相手としては非常に物足りないように思えた。だから、最後のタチアナの表情ではなく、舞台袖へと走っていくルグリの姿を映したのは大正解だと言える。

カーテンコールでは、ルグリの最高のパートナーの一人であったモニク・ルディエールとルグリのツーショットをカメラが捉えていたのが感動的だった。そして現役のエトワールたち、ローラン・イレールなど過去のエトワールたちも舞台に上がってきて彼とハグする。バルコン席には、シルヴィ・ギエムの姿もあった。「この日を持ってエトワールの称号を返上した」というナレーションで、ああ、彼はもう元エトワールになってしまったのだと実感する。

最後には、オペラ座を後にしながらも、今までの彼とは変わらないルグリが、リラックスした雰囲気で歩いている。エトワール引退をしても、まだまだルグリのバレエ人生は続いていくんだな、と思った。

勢いで、DVDを持っているのに、引き続き放送された「ドン・キホーテ」を最後まで観てしまった!

「眠れる森の美女」や「ロミオとジュリエット」の市販映像の抜粋の時間が多かったのがちょっともったいなかった。が、短い放送時間、権利上の制約があった中で、ルグリのエトワールとしての最後の日々を見事に凝縮していて、非常に良くできた番組だったと思う。見逃した方は、地上波NHK教育テレ「芸術劇場」での放送をぜひ!

NHK教育テレビ「芸術劇場」
9月18日 22時30分~
エトワール最後の60日 ~マニュエル・ルグリ~
バレエ「ドン・キホーテ」(ハイライト)

http://www.nhk.or.jp/art/

【楽曲情報】

バレエ「ル・パルク」から 
 振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
マニュエル・ルグリ、オーレリ・デュポン、

バレエ「眠りの森の美女」第3幕からデジレ王子のバリエーション 
 振付:マリウス・プティパ ルドルフ・ヌレーエフ
マニュエル・ルグリ

「バレエ「ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ」から  
振付:マニュエル・ルグリ」
エレオノール・ゲリノー、ファビアン・レヴィヨン

「バレエ「ロミオとジュリエット」から  
振付:ルドルフ・ヌレーエフ
マニュエル・ルグリ、モニク・ルディエール、

「バレエ「眠りの森の美女」第3幕パ・ド・ドゥから 
振付:マリウス・プティパ ルドルフ・ヌレーエフ
マニュエル・ルグリ、オーレリ・デュポン、

「デ・フィレ」マニュエル・ルグリ、パリ・オペラ座バレエ団団員、

「バレエ「オネーギン」から 
 振付:ジョン・クランコ
マニュエル・ルグリ、クレール・マリ・オスタ、

「舞曲」国立リヨン管弦楽団、エマニュエル・クリヴィヌ(C)

「王宮のコンセール第3番:イ長調」
バルトルド・クイケン(TRANSVERSE FL)、
フランス・ブリュッヘン(TRANSVERSE FL)、
ユルク・シェフトライン(OB)、

「フランチェスカ・ダ・リミニ作品32:幻想曲」
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、
ワレリー・ゲルギエフ(C)、

「マ・メール・ロワ」
マリカ,イナ、モニク・アース(PF)、

「エクスタシー」ケルン・サロン・オーケストラ、

「Dancing in Retrograde」


この番組の見所をプロデューサーが紹介した番組「BS スタイル -密着 マニュエル・ルグリのバレエ人生-」

http://www.youtube.com/watch?v=_vRwQWKqTLQ

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バレエのTV番組」カテゴリの記事

コメント

やはりNHKさまと深く感謝しました。

バレエという極上の芸術を極めた偉大なダンサーの、人生最大であろうこの60日間をかいま見ることが出来、しかも記録として残ったことほんとにうれしく思います。

こんばんは。ともりーなと申します。いつもお邪魔させていただいています。

いろいろ不満はあれど、NHKには感謝感謝です。フィルムはまだまだたくさんあると思いますので、長編版を作っていただきたいものです。

デフィレのシーンは思いのほか少なかったのですが、ルグリがリハで涙ぐんでいるところをしっかりカメラが捉えていました。見ているこちらも思わずぐっときました。

それでは、またこれからも立ち寄らせていただきます。

naomiさん、こんばんは。

友達に録画をお願いしたものの、まだ見ていないので、naomiさんの記事も途中まで読んで、あとは我慢することにしました。自分の眼で見てから続きを読ませて頂きます。
ルグリに関しては、踊っている映像はこれまでにも出ているものの、彼の生き方を捉えたような映像はなかったので、このドキュメンタリ−は本当に楽しみです。
新しい本も、本当に美しくて読み応えがあって、最近の一番の宝物です。
ルグリ様の踊りもまた見たいけど、naomiさんにも劇場でお会いしたいで〜す。

ずずさん、こんばんは。

本当にNHK様様ですよね!今年は特にバレエ関係の放送が多い気がするし、今週末からはスーパーバレエレッスンも始まるし!渋谷方面に足を向けて寝られません。
ルグリさんが素晴らしいダンサーであり最高の芸術家の一人であるのは疑いないことなのですが、こうやって彼の日常を観ると、なにげないように見える日常の中に、彼が超一流である所以が浮かび上がってくるんですよね。エトワール引退間近でも黙々とバーレッスンに、そして腕立て伏せに励み努力を惜しまない。そんな様子をテレビで見ることができる私たちは幸せですよね

ともりーなさん、こんにちは。はじめまして、ですね。
実はともりーなさんのブログも時々拝見していました。ルグリさんのアデューに行かれたんですね!素晴らしい~。
それだけに、この番組をご覧になって、その時の思いがよみがえられたことかと思います。
確かに、1時間では足りないですね、きっとこの番組を作るのに相当たくさんの映像素材があったはず。草刈さんのドキュメンタリーも、後日放送されたものは倍くらいの長さがあったから、そういうのを放送するか、DVD化して欲しいですよね、本当に。オネーギンはクランコ財団の関係で難しそうですが、デフィレはもう少し観ていたかったです。
でも、その時間の短さを除けば、とてもよい番組でしたね。ルグリさんがみんなに愛されているのも良くわかりました。

クロードさん、こんばんは。

はい、ぜひ番組をご覧になってから感想を読まれることをお勧めします!ルグリさんの青い目は本当に綺麗ですね。
確かに、ルグリさんの踊っている映像や指導している映像はあっても、彼自身を撮ったドキュメンタリーはなかったと思います。DVD化されると良いですよね(DVDに落としても、保存状態が悪くて駄目になることもあるので)
そういえばしばらくクロードさんにはお会いしていない気がしました!私は次は9月26日の東京バレエ団の「ラ・バヤデール」に行きます。どこかでお会いできますように!

naomiさん、こんにちは。
これ、すごく良い番組みたいですね!You Tubeのハイライトに見入ってしまいました。本当に、引退する人とは思えないジャンプ!NHK、このところ、バレエファンには嬉しい番組を持ってきてくれて、いいですね~。都さんのレッスンも見たいわあ~

こちら、そろそろ秋っぽくなってきました。朝方は寒いです

Ponさん、こんにちは。

良い番組でした!本当にNHKさんありがとうって思いましたよ。番組の予告にも出ていましたが、バレエ好きのディレクターさんがいるのと、NHKの会長もバレエ好きらしいですね。来月には地上波でも放映するので、録画し忘れないようにしなければ。
それにしても、ルグリさんが44歳だなんて、踊りを見る限りでは信じられないくらいです。「ル・パルク」で来日した時も、全幕なのに若手の誰よりも踊りが(技術的な意味でも)うまくてスタミナがありましたからね。

東京は残暑がぶり返してきて昼間は暑いです。モントリオールではそろそろ「21世紀のエトワールたち」公演があるのかしら。

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