8/6 世界バレエフェスティバル 特別プロ「白鳥の湖」 World Ballet Festival SWAN LAKE Rojo & Bonelli
第12回世界バレエフェスティバル 全幕特別プロ
「白鳥の湖」
http://www.nbs.or.jp/stages/0908_wbf-special/swan.html
タマラ・ロホのオデットとオディール、素晴らしかった!
あまり白鳥のイメージのない彼女だけど、彼女にしかできない、生身の存在感を示し、感情豊かで、心からの台詞が聞こえてきそうなドラマティックな白鳥だった。目線の使い方、音楽との合わせ方、すべて完璧で、ぞくぞくした。タマラはプロポーションに恵まれているほうではないし、オデットが似合う体型ではないのに、静止したときの一つ一つのポーズが絶妙に決まっていて、息を呑むほど美しい。背中の角度、腕のつけかた、指先、すべてが計算しつくされていて一瞬たりとも目が離せない。女優バレリーナとして知られる彼女だし、目力の強い視線の送り方も必殺ではあるのだけど、表情ではなく、身体で語ることができる。オデットが今ここに、現実に確かに存在していることを感じさせてくれた。
オデットのときも、オディールのときも、一貫としてミステリアスなファム・ファタルだったタマラ。オデットの時には、タマラは白鳥の女王としての誇り高さと強さ、悲劇性、その中にもどこか夢見ているような謎めいた部分と、生身の女性としての肉体性が共存していて、とても多層的だけど、異性を虜にして離さないような吸引力を持っていた。2幕の終わり、王子から離れたくないの、と全身を使って激しく抵抗する姿が胸を締め付けるようにドラマティックで、ロットバルトによって白鳥の姿に戻された瞬間、音楽とぴたりと合わせて凍りつき、一瞬のうちに白鳥に変身して去っていく化身のようすが、本当に魔法にかけられて姿を変容させたようだった。人間から白鳥へと姿を変えていく様子をここまで鮮やかに見せることができるバレリーナを観るのは初めてだ。
オディールは、アダージオでは押し出しが強く、誘惑的で、悪魔的だった。ただ、わかりやすい邪悪さや、派手な威嚇的な表現ではなく、悠然としたたたずまいだけで見る者を殺す、エレガントであでやかな立ち姿に凄みがあってぞっとするほど。ヴァリエーションでは、魅入られたら最後という魔性の美女で、まるで黒鳥の姿をしたマノンのようだった。高らかに勝利を宣言するグラン・フェッテは、最初に4回転が2回あって、それから途中まで3回転がたくさん入って、最後まで余裕たっぷり。ヴァリエーションで、ピルエットからそのまま脚をアティチュードにして、さらに3回転しようとしたけど3回転目ではさすがにちょっとぐらついてしまったけど、そこまで果敢な挑戦をするというのがタマラの凄いところ。コーダの終盤でポアントでバランスしながら後退していく時、音をたっぷりととってアラベスクで長いバランスを3回。アダージオでも、音楽1小節分くらいの見事な静止バランスを見せてくれたが、彼女のバランスは、技術を見せ付けるのではなく、ドラマにアクセントを加えるためのものであるという説得力がある。
4幕のオデットは、王子の裏切りに悲しんでいるものの、結ばれず白鳥の姿のままで終わるという運命を受け入れる強い意思が見られて、よりいっそうの誇り高さが伝わってくる。憐れさとはまったく無縁で、その孤高の姿に打たれて、王子がロットバルトと果敢に戦い、勝利を手にするという物語がはっきりとした輪郭で見えていて、説得力があった。
ボネッリの王子は、とにかくサポートがうまい。彼はカブリオールなど、足さばき系が苦手のようでで3幕ヴァリエーションでは失敗していたけれども、コーダのピルエット・ア・ラ・スゴンドは足先が綺麗に伸びてすごくよく回っていた。王子と、それ以外のダンサーの違いは、つま先の違いだということを改めて実感。ナイーブな役作り、オデットに心底惚れ込んだひたむきな王子で、演技はとてもよかったと思う。パートナーとして重宝されているのがすごく良くわかった。
ボネッリは、なんといっても、4幕でのロットバルトの対決の時の熱さが良かったと思う。1幕の坊ちゃん然とした王子とはまるで別人で、オデットとの出会い、オディールに翻弄されたことによって、大きく成長し、情熱を燃やして悪魔相手に戦いを挑む。4幕のオデットの潔さに打たれて、戦うことを決意した、というのがきちんと見える演技だった。
木村さんのロットバルトが素敵だった!彼は日本一脚が綺麗なダンサーなのだと思う。ロットバルトのときのあの巨大な鉄兜はほとんどギャグのようで、いかがなものかと思うけど、その兜からチラリと覗くクールな目と髭がとてもお似合い。マネージュの美しさも絶品で、ボネッリよりも上だった。
ディベルティスマンでは、スペインの平野さんが、つま先も綺麗に伸びてカッコよかった。マズルカの田中さんも(3羽では今一歩だったけど)、なかなか良かった。3羽の白鳥は、真ん中の高木さんが断然良かった。でも、花嫁候補でもその美しくたおやかな上半身で光っていた西村さんに、3羽に入ってほしかった。
感想をゆっくり書きたいところだけど、今利き手にひどい蕁麻疹ができてしまって、キーボードを打つのが辛いので、ここまで。
◆主な配役◆
オデット/オディール:タマラ・ロホ Tamara Rojo
ジークフリート王子:フェデリコ・ボネッリ Federico Bonelli
王妃:松浦真理絵
悪魔ロットバルト:木村和夫
道化:松下裕次
【第1幕】
家庭教師: 野辺誠治
パ・ド・トロワ:高村順子-佐伯知香-長瀬直義
ワルツ(ソリスト):西村真由美、乾友子、吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子
【第2幕/第4幕】
四羽の白鳥:森志織、福田ゆかり、岸本夏未、阪井麻美
三羽の白鳥:高木綾、奈良春夏、田中結子
【第3幕】
司会者:永田雄大
チャルダッシュ
(第1ソリスト):乾友子-長瀬直義
(第2ソリスト):森志織、福田ゆかり、高橋竜太、氷室友
ナポリ(ソリスト): 高村順子-松下裕次
マズルカ(ソリスト): 田中結子、山本亜弓、横内国弘、野辺誠治
花嫁候補たち:西村真由美、佐伯知香、村上美香、岸本夏未、渡辺理恵、川島麻実子、大塚玲衣
スペイン:高木綾、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
*****
東京バレエ団の「白鳥の湖」のゴールスキー版の振付は、美しくないし、つまらない。特に2幕の白鳥群舞のフォーメーションの形の醜さは許しがたい。下手に凝っていることで、変になっているし、腕の先だけ動かす振付が奇妙で、ぜんぜん綺麗じゃない。白鳥というよりはアヒルみたいだった。こんな美しくない振付では、せっかく頑張っているダンサーたちがかわいそうだ。その上、主役ペアの前にコール・ドが立って、一階席からだととても邪魔だった。コール・ドはとてもよく揃っていたけど、足音は軍隊の行進のように大きかった。特に4羽の白鳥の足音の大きさは耳を疑うほど。4羽はあんなに高く跳ばなくていいから、足音をもう少し小さくしてほしい。衣装と舞台装置は新しくなっていたようだけど、趣味がすごく悪かった。特に1幕の女性の衣装の黄色とグリーンのパステルカラーのティアードスカートはかなり変。トロワの女性の水色のドレスは可愛かったけど。
それから、パ・ド・トロワの出来が悪くてがっかり。女性二人は音に全然合っていないし、長瀬さんはどこか悪かったのだろうか?彼のチャルダッシュも、全然民族舞踊になっていなかった。古典を見ると、改めて東京バレエ団は世代交代がうまく進んでいない気がしてしまう。松下さんは前よりは良くなっているけど、つま先が全然伸びていない。軸がぶれないのは立派だが、ピルエット・ア・ラ・スゴンドの脚の角度はもう少し高いほうが良い。(フェデリコ・ボネッリは、つま先も伸びていたし、90度にずっと保って回転していた)
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コメント
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Naomiさん
白鳥、観に行かれていたんですね。
=>会場で探したのですが、あの人だかりだとメールで連絡しない限り会うのは
難しいですね (-"-;;
私も観ましたぁ~~本当に素晴らしかったです。
う~ん、単に素晴らしいという言葉が陳腐になってしまうくらい良かったです。
Naomiさんと同様、あまりタマラ・ロホには白鳥というイメージを持って
いなかったのですが、今まで観たどの白鳥よりも感動をもらえたと思います。
2幕の白鳥に戻るシーンは不覚にも涙が出そうになってしまいました。
Naomiさんの感想と完全に重複しちゃいますが、3幕では見せてくれた技術的要素、
とても高度で丁寧でありながら、その見せ方が全く嫌味じゃないですね。
感情を表現すること、オディールを演じることの補足的な要素として高度な
技術を組み込んでいる(と思う)のでとても素直に「オディール」として
受け入れることが出来ます。
なんだか上手く言えませんが、本当に観て良かったと思える、そして終わった後に
幸せな気持ちになれた公演でした。
そうそう、Aプロのコメントで書き忘れましたが、私もジゼルはかなりテンション
下がりました・・・6月の悪夢のようなジゼルが蘇ってきて・・・
来年のラ・シルも観たいなと思っていましたが、両日とも上野さんなのであきらめます。
多分、彼女の舞台はもう観に行かないような気がします・・・
Bプロは月曜日に観に行くので、Naomiさんとは会えないですが、ガラで
会えると良いですね。
まだ、バレエフェスも中盤ですから、楽しみましょう~~~
投稿: Shige | 2009/08/07 08:40
naomiさん、こんにちは
タマラ・ロホ、素晴らしかったですーー!
私も彼女にオデットのイメージはなく、
「どうなのかしら?」と正直思っていたのですが、いい意味で裏切ってくれました。
オディールはもちろんの事、情感溢れるオデット、本当に本当に素晴らしかった。。
この舞台が観られて幸せでした。
この興奮を持続したまま、明日はBプロです。
上野まで回数券を買えばよかったと思う今日この頃です(笑)
投稿: kimi | 2009/08/07 09:33
Shigeさん、こんばんは。
いらしていたんですね~。昨日も大入り満員で、私も来ている友達に会えなかったりしたんですよね。東京文化のロビーって狭いのかしら?
確かにタマラの白鳥は、素晴らしいという言葉が陳腐に思えるくらいの、芸術性の高い白鳥でしたね~。これで周りがもう少し(以下略)。
素晴らしい白鳥を踊るバレリーナはたくさんいますが、彼女ほどのドラマティックな白鳥は今までなかったと思います。私はこの東京バレエ団版の振付が嫌いなので、実のところ期待値があまり高くなかったのですが、本当に見に行って良かったです!幸せな気持ちになりましたよね。
Shigeさん、6月は吉岡さんじゃないほうのジゼルをご覧になったのですね。ジゼルって、やっぱりすんごく難しい役なんだと思います。だからこそ、この役を踊りたいというバレリーナが多いってわけで。でもガラでジゼルを見せるなら、それなりに素晴らしいものを見せてくれないと納得できないですよね。多分今回のバレエフェスに出た人たちの多くは、ジゼルを踊ったことがあると思うし。
ラ・シルはそういうわけで、さようなら~です。私も彼女の舞台はもう見ないと思います。ベジャールプロもパスだし。
ガラもきっとものすごい人出になるかと思いますが、お会いできますように!
投稿: naomi | 2009/08/07 20:44
kimiさん、こんにちは。
ホント、タマラのオデット、素晴らしかったですよね~!彼女だからもちろん上手いとは思っていたけど、これほどのものを見せてくれるとは!
私も土日とBプロ、木曜日にガラ、次の土曜日には眠りと上野通いです。ホント、上野までの回数券を買っておけばよかったです。うちからはちょっと遠いので、スイカをチャージしてもすぐになくなっちゃうんですよね。体力面が心配なので、栄養ドリンクも買い込んでおきました(笑)
投稿: naomi | 2009/08/07 20:54
タマラの白鳥、黒鳥すばらしかたですね~。
帰宅時、本当にいいものみたなあって最高にいい気分でした。
東京バレエ団のバヤは吉岡さんの日のチケットを会場で購入しました。以前、シルフィードを吉岡さんで見て素敵だったから。相手も木村さんなので余計に見たいと。
上野さんはクラシックの演目でいまいちですよね。プティなどのほうがよいのですかねえ。
ずいぶん前にマラーホフと白鳥を踊った際に、がっかりしたので、クラシックの演目とくにバレエブランは見ないと決めました。
東バでは小出さん、吉岡さんが好きなのですが、小出さんが出演できない現在は、吉岡さんの日しか選択肢がないので困っています。
くるみ割りのほうのチケットも、コジョカルさんの日を購入しましたが、こういう演目なら小出さんが待ち遠しいなあ。
投稿: bumineko | 2009/08/08 17:22
naomiさん、
蕁麻疹お気の毒に、、、
タマラの白鳥私もすっかり魅了されました〜〜
もう一度見たいです。
東バの振り付けトロワが馴染めませんでした。
群舞のフォーメーションも美しくなかったし。
4幕はすごく好きですけど。
衣装新調だったんですか、それにしてはいまいちパッとしないですね。。
投稿: ずず | 2009/08/08 18:29
naomiさん こんばんは!
sakuraです♪
タマラほんとに凄かったですよねっ!!!
まさしく皆様と同感で、言葉では言い表せないくらいの感動と驚きを戴きました><!
2幕の幕切れのシーンは私も涙ぐみました。・・・切なかったです・・・。
6月の<コッペリア>も素晴らしかったですが、<白鳥>はまた違った素晴らしさと感動を戴きましたっ><
タマラ、最高ですp><q!!!
今まで観てきた<白鳥>の中でも「一番ドラマチックな白鳥!」といっても過言ではありません。
これからの活躍に期待大のダンサーです。
来年のロイヤルの来日でまた踊って欲しいです♪
Bプロは楽日に行きます。
naomiさんのレポ拝見して、さらに期待度増です><!
投稿: sakura | 2009/08/10 00:31
buminekoさん、こんばんは。
お返事遅くなってしまってすみません。
ホント、良いものを観たな~って満足感いっぱいでしたよね。終わった後、上野駅のコンコースで友達と語り合っていたら30分以上経ってしまって、タマラ・ロホが通りました。すごく可愛かったです。(そして実物はすごく細いんですよね)
私ももちろん、「ラ・バヤデール」は吉岡さんと木村さんの日に行きます。私の友達はみんなこの日ですね。
私も上野さんのはやはりマラーホフの白鳥以来避けているんですけど、「ラ・シルフィード」はシングルキャストなので困っています。も~Bプロの黒鳥の酷さには、これがプロの踊りなのかと思ったくらいです。
今回「ラ・シル」には吉岡さん出ないんですよね。小出さんの復帰も待ち遠しいです。彼女の「ジゼル」良かったですものね。
投稿: naomi | 2009/08/10 23:12
ずずさん、こんばんは。
白鳥の時、探したんですけど見つけられませんでした
タマラの白鳥、素晴らしかったですね~!今まで観たことのないオデットには驚かされました。
そうそう、特に1幕の衣装、趣味悪!ですよね。せっかくロットバルトは木村さんだったのに、3幕のアップリケと、鹿の角のような鉄兜、はじめて見た人は笑いをこらえるのが大変なんじゃないかと。4幕の演出はそう悪くないけど、2幕のフォーメーションはドタバタしているんですよね。アヒルのように腕をばたばたさせながら、軍隊のような足音を響かせながらドドーっと駆け込んでくるのがなんとも。
投稿: naomi | 2009/08/10 23:18
sakuraさん、こんばんは。
>今まで観てきた<白鳥>の中でも「一番ドラマチックな白鳥!」といっても過言ではありません。
私もそう思いました!こんな白鳥を観たのは初めてです。
来年のロイヤルの来日、ロミオとジュリエット、マイヤリングは主演しそうですよね。「ロミジュリ」は今度DVDが出るんですが、BBCで放映されたのを観ました。タマラのジュリエットも素晴らしかったですよ♪楽しみですね!
投稿: naomi | 2009/08/11 00:12