7/9 ABT「ロミオとジュリエット」Romeo and Juliet
相変わらずWi-Fiの調子が悪いので、取り急ぎキャストのみ
Romeo Cory Stearns
Juliet Hee Seo
Mercutio Craig Salstein
Benvolio Daniil Simkin
Paris Alexandre Hammoudi
Lady Capulet Kristi Boone
Lord Capulet Roman Zhurbin
Friar Laurence Frederic Franklin
出演者に一人もプリンシパルがいないというフレッシュなキャスト。ロミオのコリー・スターンズ、ジュリエットのヒー・セオは初役。しかも、ヒー・セオはコール・ドからの抜擢。舞台終了後、95歳の誕生日を迎えたフレデリック・フランクリンのお祝いがあり、主役二人から花束が手渡され、風船が天から舞ってきた。それは、バレエ・リュスの伝統を知る最後の世代から、新しい世代へとバトンが手渡された瞬間だった。本当はみんなでハッピーバースデーを歌えたら良かったんだけど、オーケストラが組合の規定で帰ってしまった後だったので、それがちょっと残念。
2幕のローレンス神父登場のシーンでは、いつまでも鳴り止まない万雷の拍手がフランクリンさんに贈られ、フランクリンさんが客席に向けて優雅に一礼するまで長く続いた。ロミオとジュリエットを幼いころから知っていて、惜しみない愛情を向けてきたローレンスの想いが伝わってきた。
月曜日にあったドレスリハーサルで、コリーとヒー・セオを観た友人は、大丈夫なのかすごく不安になったそうだったけど、ふたを開けてみたら、ミスもなく、若い二人の瑞々しさが伝わってくる好演。パ・ド・ドゥではさすがにちょっとぎこちないところもあったけれども、こういうところは経験を積み重ねていけばきっと大丈夫。コリーはとても若々しく、ロミオそのものだった。彼は長身で顔が小さく、脚のラインも非常に美しいし、跳躍も高いし、きれいなアンドゥオールができる人。「ロミオとジュリエット」はジュリエットの成長物語として受け止められることが多いけれども、彼のロミオは、短い時間の間に成長していく様子がよく伺えた。マキューシオの死の後、ためらうことなく剣を取って、激しい勢いでティボルトに襲い掛かるところは、本当に若いというか青い感じだった。マルセロも、エルマンも、剣を取るまでかなりためらって、ベンヴォーリオに「さあ!」と促されてようやく剣を取るのだ。
というわけで、ダニール・シムキンのベンヴォーリオは、ベンヴォーリオなのにやけに血の気が多くて、ティボルトをしきりに挑発していたりで、まるでマキューシオみたいだった。次回はきっと彼にマキューシオ役が回ってくるんじゃないかと思う。ダニールは童顔の上小柄で華奢だけど、顔がとても小さいので全体的なバランスは良い。ロシア的なテクニックの持ち主で股関節がやわらかく、踊りがきれいなのだけど、人によっては、ベンヴォーリオ役なのにでしゃばりすぎ、と思うかもしれない。
個人的に応援しているクレイグ・サルステインがマキューシオ役で、ひょうきんで明るく熱い演技をしていて、踊りもはじけており、ショーストッパーになっていてうれしい限り。もう一人応援しているアレクサンドル・ハムーディがパリス役で、長身で甘いハンサムでノーブルで、なんでこんなに素敵なパリスになびかないの、と思ってしまうほど。マクミラン版のパリス役って実はかなりいやなやつで、3幕で嫌がるジュリエットとむりやり踊ろうとして嫌われて憤然と立ち去るし、墓場のシーンでは、ロミオの姿を見つけるとパッとマントを脱ぎ捨て、「出て行け」と指差し、次に剣で襲い掛かるということで、ロミオは自分のみを守るためにやむなく彼を殺すという設定。だけど、アレックスのパリスは、ジュリエットを失った深い悲しみに沈んでいて、彼女を深く思うがゆえに、という感じが出ていて、良かった。
ジュリエット役のヒー・セオは手脚は長くてラインがとても綺麗なバレリーナ。顔立ちもかわいらしい。難を言えば、東洋人なので、若干顔が大きく感じられてしまうこと。(もちろん、一般人よりはずっと顔が小さい) コリーが人間離れしているくらい顔が小さい上、自分が東洋人だから気になるのかもしれないけど。顔が少し大きいと、表情の演技が実際以上に大仰に見えてしまうきらいがある。ただ、彼女も演技そのものは非常に瑞々しく、かわいらしいジュリエットだった。彼女のジュリエットは、実のところあまり成長しない。最後まで純粋でまっすぐで、疑うことなく情熱のままに突き進んでいく。ほかの人と演技が少し違うな、と思ったのは、息を吹き返したジュリエットが墓場のシーンでロミオの死体を見つけたとき、最初は彼が死んでいるとは思わなくて、見つけられた喜びで少し微笑み、やがて彼の死を知って慟哭するというところ。この解釈は、ジュリエットの嘆きにより悲痛な印象を与えてくれるので新鮮だった。
(つづく)
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