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« Diaghilev's Theater of Marvels NYPLパフォーミングアーツ館のバレエ・リュス展 | トップページ | 7/9 ABT「ロミオとジュリエット」Romeo and Juliet »

2009/07/10

7/8 ABT「ロミオとジュリエット」Romeo and Juliet その1(ジュリエット編)

Choreography by Sir Kenneth MacMillan
Music by Sergei Prokofiev

Romeo Marcelo Gomes
Juliet Paloma Herrera
Mercutio Carlos Lopez
Tybalt Issac Stappas
Benvolio Daniil Simkin
Paris Grant DeLong
Lady Capulet Stella Abrera
Lord Capulet Roman Zhurbin

パソコンのWi-Fiの接続が悪いので、取り急ぎキャストのみ。

マルセロの情熱的なロミオ、観られて良かった~。パロマのジュリエットは、ナチュラルな演技が本当にジュリエットそのもの。若くて純粋で向こう見ずなジュリエットで、はまり役。この二人の組み合わせは息もぴったりで、見た目のバランスも良くて。

最初にこんなに素晴らしいロミオとジュリエットを観て、もうメーンディッシュをいただいてしまった気分・・。実際、マルセロのロミオが観たくて行ったわけだけど、観られて幸せなのと、これから当分観ることができないという寂しさの両方を感じてしまっている。


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***

今回、5人のジュリエットを観て、それぞれのダンサーが魅力的なジュリエットであったと思う。しかし、アレッサンドラ・フェリが引退してしまった今、もっともジュリエットらしいジュリエットは、パロマ・ヘレーラなんだと私は思う。

パロマのジュリエットはとても自然体で、実際にジュリエットってこんな女の子なんだろうなって思わせてくれる。パロマ・ヘレーラというバレリーナではなく、ジュリエットそのものが舞台の上で生きているようなのだ。ジュリエットが登場する瞬間、彼女の幼さを強調するように、必要以上に子供ぽく振舞うジュリエットもいるのだけど、パロマはあくまでも等身大の女の子。元気いっぱいで、夢見がちで、生き生きとして血が通っている。ノイマイヤーが振付けた「ロミオとジュリエット」でのジュリエット像に近いかもしれない。外見的にも、黒髪でつぶらな瞳のパロマは、ジュリエットにぴったり。

バルコニーのシーン、初めての恋の歓びを、パロマは初々しく、高揚感に胸を高鳴らせながら舞う。そのフレッシュさを見ていると、自分が初めて恋に落ちたときのどきどきするような気持ちを思い出してしまうほどだ。パロマは今までにも増して軽やかで、純粋に恋する乙女になっていた。バルコニーを駆け上っていくとき、途中で一瞬止まって、ロミオを振り返る。

彼女のジュリエットは、2幕から急に情熱的に変化していく。大急ぎで少女から大人への階段を上っていく様子が手に取るように判る。結婚式では、ローレンス神父によって結ばれた二人が、短い儀式のあとで立ち上がり、ぎゅっと抱き合う。それから一度は彼らはそれぞれの家に帰るべきところなのだけど、ジュリエットは離れがたく、乳母に止められてもロミオの方へと手を伸ばして、もう一度彼の元へと行こうとする。本能で彼を求めている、そんな強い熱情が伝わってくる。演技そのものは、抑え目であるにも関わらず、身体の動きで情念を伝える力は、長いことジュリエットを踊ってきて、当たり役としてきたパロマならではのもの。

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3幕の寝室での、別れの朝のパ・ド・ドゥ。ロミオがジュリエットを抱きしめてショールに包み、二人が大きく背中を反らせる哀切なシーン。そこでも、パロマは、まるでわが身が切り裂かれることに抵抗しているかのようだった。ロミオへの愛、執着、彼は追放されてしまうという事実を突きつけられていても、それを必死に否定しようとジュリエットはもがき、錯乱しているといってもいいほどで痛ましい。しかし最後にロミオが優しいキスをすると、そのままするりと窓から出て行ってしまう。

そのすぐ後に、黒いヴェールを被ってティボルトの喪に服しているキャピュレット夫人と夫、婚約者パリスと乳母が入ってくる。パリスと踊らされるジュリエット。ロミオとの別れを、わが身が引き裂かれるかのように悲しんだ後に、親の決めた婚約者と踊らなければならないとは、なんと残酷なことなのだろう。パリスは決して悪い男ではない。だが、嫌がるジュリエットを組み敷くかのように手を取って踊ろうとするとき、まるでパリスがジュリエットをレイプしているようにすら見えてしまう。このあたりでは、マクミランの振付のダークな部分、人間の暗黒面の表現がかいま見えてきて、背筋が寒くなる。

パリスに対して嫌悪感を明らかにし、父親にも泣きつくも突き飛ばされるジュリエット。最後はベッドに飛び込んでシーツをかぶってしまう。しかし、それはジュリエットの単なるわがままや反抗心で結婚に抵抗しているというのではなく、なんとしてでもロミオと一緒になりたいという強い意志の表れである。

ロミオが去ったベッドの上に一人腰掛けて佇むジュリエット。一体私はこれからどうすればいいのか、途方に暮れている。恋しいロミオは追放されてしまったし、このままでは無理やりパリスと結婚させられてしまう。このシーンは、「ロミオとジュリエット」の中でも、ジュリエット役のバレリーナの演技の見せ所である。一見、ただ座っているだけのように見えても、その中でジュリエットは逡巡している。やがて、ある決意をしたジュリエットは、沈みがちだった表情をほんの少し輝かせ、グリーンのショールを翼のように広げて、ローレンス神父の元へと走っていく。パロマのここでの演技は、とても自然で、大きな表情の変化を見せるわけではないのに、心情の変化がよくわかる。音楽が大音量で鳴っているなかベッドの上に座っている間に、一大決心をして、その決心は正しいものであるというポジティブな確信を持って走っていく。ジュリエットの真摯な思いが疾走していく。

そして最後の場面、仮死状態から目覚めたジュリエットは、墓場をロミオの姿を求めて駆け回り、パリスの死体に続き、斃れているロミオの姿を見つける。ロミオの肩を揺らして、目を覚まして!生き返って!とすがりつくも、すでに彼が事切れていることに気づく。ロミオ、大丈夫?と彼のことを想うパロマのジュリエットは、この場面においても初々しく、少女らしさを残している。そして大きく口を開けて絶叫する。声はしないけれども、ジュリエットの激しい慟哭が聞こえてくるようだった。パリスの傍らに落ちていた剣を拾い迷うことなく自らに突き立て、最後の力を振り絞ってロミオの指先に触れようとベッドの上を這って、ようやく彼に触れたところで、絶命。

パロマのジュリエットは、最初から最後までひたむきで純粋、等身大な少女だったと思う。ジュリエットはごく短い期間の間に、初恋、結婚、そして永遠の別れを経験し、内に秘めた芯の強さが表面に出てきて成長するものの、本質は変わらない。観る者が彼女と一緒に胸をときめかせ、一緒に成長し、引き裂かれる悲しみに胸を詰まらせ、そして重大な決意に共感する。物語の主人公というよりは、今ここに生きている一人の女の子を見ているかのようで、それゆえ、じわりと心に残る感動を与えてくれる。そんなパロマのジュリエットが、大好き。

長くなってしまったので、ロミオ編はまた改めて書きます。

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ABT(アメリカン・バレエ・シアター)」カテゴリの記事

コメント

わ、マルセロのロミオ、いいですね!
彼は去年の日本のABTガラでみましたが、とっても素敵な男性になっていました。ロミオもきっと素敵だったんだろうと思います。

パロマのジュリエット、当たり役といわれていますが、いつか見たいです。次のABTの来日公演でR&Jやってくれないかしら。

ショコラさん、こんにちは。

マルセロのロミオ、いいですよ~今回観たロミオ役のダンサーはどの人も素敵でしたけどね。彼は見かけの割りに踊りはとてもエレガントだし、甘さとセクシーさと情熱を持ち合わせていていいんですよね。ABTの来日が再来年とちょっと先なのが残念です…

buminekoさん、こんばんは。

そうなんです、パロマのジュリエットはホントにあたり役なんです。いつまでも少女らしいイノセントでピュアな雰囲気を持っているんですよね。マルセロとこの役で共演することが多いので、二人の息もぴったりだし、雰囲気も合っているんですよね。

ABTは純クラシックよりは、断然マクミラン作品が合っていると思うので、ホント次の来日はロミジュリを期待したいです。その前にロイヤルがロミジュリを持ってきますが。
(私の初ABTは、フェリとボッカのロミジュリ@89年の来日公演で、も~言葉にできないくらい素晴らしかったです)

パロマのジュリエット、マルセロとも合うんですね。なるほど。彼も大好きです。ABTの日本公演マチネの終了後、楽屋出口で見かけた彼が、とってもかわいかったです。ファンとのおしゃべりに夢中になる仲間のそばで、ハングリーとつぶやき続け、ゴリラのようにうろうろしていた彼。とってもお茶目でかわいかったですよ。終演後でおなかがすいていたんでしょうね。マルセロ相手でR&Jを見たいです。

buminekoさん、こんばんは。

マルセロにそんな一面があるんですね~私の印象だと、意外と落ち着いているというか、ジェントルマンな感じなのですが、そんな風にお茶目なのですね。お茶目なマルセロといえば、2003年の世界バレエフェスティバルのガラのおまけでの、彼のキトリは鮮烈でした。1幕のキトリのカスタネットのソロを、ポアントを履いて、見事な反りのジャンプを見せてくれたんですよね。今年バレエフェスに出ないのが残念です。

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