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2009/06/01

スラムドッグ$ミリオネア Slumdog Millionaire

アカデミー賞8部門受賞
最優秀作品賞、最優秀監督賞(ダニー・ボイル)、最優秀主題歌賞
最優秀作曲賞 最優秀編集賞 最優秀録音賞 最優秀撮影賞 最優秀脚色賞
原作「ぼくと1ルピーの神様」ヴィカス・スワラップ
監督:ダニー・ボイル
音楽:A・R・ラフマーン
http://slumdog.gyao.jp/
http://www.imdb.com/title/tt1010048/

アカデミー賞8部門、主要3部門に輝いたこの作品。期待しすぎると肩透かしだと思うし、普通に楽しい映画だけど、後に残るものはあまりない感じ。逆に、そういう映画が作品賞を取ったという事実自体は、いいことだと思う。この閉塞感で息が詰まりそうな世界の中で、このように楽しくて、見る者が希望を与える作品が評価されたのだから。

ムンバイのスラム街出身でコールセンターのお茶汲みとして働く青年が、クイズ番組でどんどん勝ち抜いていく物語。ストーリーの展開は、ほぼ予想通りで進んでいく。インドを舞台にしているものの、ダニー・ボイルというイギリス人が監督し、フォックス・サーチライトというハリウッドの会社が配給していることもあり、なんとなく、西洋人から見たインドというところが感じられてしまった。

ただ、ストーリーが予測どおりに進んで行き、ハッピーエンドで終わるというのは、インドのマサラムービーの典型的なパターン。エンドテロップでは、主人公とヒロインの二人が駅のホームで踊りまくり、いつのまにか群集が現れてダンス大会になる大団円というのは、マサラ・ムービーへの大いなるリスペクトが感じられて、すごく嬉しくなってしまった。本当はもっと踊りとか歌とか入っているといいな、と思ったけど、米資本の映画だしこれ以上上映時間は長くできないから仕方ないかな。エンドテロップの踊りまくり世界には、幸福感がぎゅっと詰まっていて、このエンディングがあっただけで大抵のことは許してしまっていいや、って思ってしまうほど楽しくて素敵。

音楽を担当しているのが、昔「ムトゥ踊るマハラジャ」が日本で公開されたときに「インドの小室哲哉(!)」として紹介されたヒットメーカーのA・R・ラフマーンというのはポイントが高い。アンドリュー・ロイド・ウェーバーと組んで作ったミュージカル「ボンベイ・ドリームズ」をロンドンで観たのだけど、音楽が素晴らしかった。そのA・R・ラフマーンの音楽作りの才能は、この作品でも発揮されている。

語り口はすごくうまくて、ダニー・ボイルがブレイクした「トレインスポッティング」を思わせる、テンポの良い編集やカメラワークが巧み。あまりの快進撃に疑惑を向けられて警察で取り調べを受けた主人公ジャマールが、なぜ勝ち進むことができたのかという理由を話す時に、それが彼の数奇な半生の物語と結びついていくという語り口が、実に見事だ。

孤児だったジャマールは、兄サリムとともに身体一つで過酷な社会の中を生き抜いてきた。インチキな観光ガイドとして二人が観光客からお金を稼ぐ姿の生き生きとしたたくましさが、微笑ましい。ギャングになった兄のキャラクターがすごく魅力的で、大切なジャマルの宝物を売り飛ばしたり、いろいろとひどいことをしてきたのだけど、でもそんな兄が最後に見せる男気には、泣けた。欲を言えば、もう少しこの兄とのエピソードが見たかった気がする。

ヒンズー教徒とイスラム教徒の対立、少女売春、ギャング、そしてお金を稼がせるために歌の上手い少年を失明させるといったインドの社会状況(そして、インドが現在、英語圏のコールセンターとして機能しているということ)も出てくるのだけど、このあたりはちょっと表層的で、社会性みたいなものも盛り込んでみました、って感じで、そんなものは出さなくても良かったんじゃないかと思うほど。

個人的に一番ウケたのは、ジャマールの少年時代、粗末な掘っ立て小屋の中のトイレにこもっている時に、大人気の映画スターがやってきた時のエピソード。トイレに鍵がかかって出られなくなったジャマールが、トイレの中にダイブして、糞尿まみれの笑っちゃうほどひどい状態で、ヘリコプターから降りてきたスターにサインをもらうのだ。トイレにダイブする、というのは「トレインスポッティング」の中でも出てきた描写なので、思わずニヤリとしてしまった。このあたりの、空撮を巧みに使ったカメラワークの巧みさには、もうクラクラしてしまう!

最初にこの映画に出てくる「なぜジャマールは勝ち進むことができたのか?」という問いへの答え、それは「それが運命だったから」だった。学校にもろくに通っていない彼が、勝ち進めたのは、運が良かったからとも言えるけど、それまでの過酷な人生があったからこそ、難問に答えられたということだ。つまり、「運命」というのはそういうことなんだなって思った。そして、もう一つ「運命」は、孤児時代からの幼馴染、ラティカとの恋。幾多の困難と別れを乗り越えて、二人がめぐり合えたのも「運命」。だけど、その運を掴むことは、たやすいことじゃないんだな、ということが感じられた。この「困難を乗り越えて二人が結ばれるラブストーリー」というのも、もちろんマサラ・ムービーのお馴染みのパターンだ。ワンパターンといえばそうかもしれないけど、古今東西の映画の普遍的なテーマを、笑いあり、涙あり、サスペンスありで色彩豊かに描いていて、ワクワク感はずっと持続した。

観ている間はすごく面白いんだけど、期待しすぎない方がいいのかも。アカデミー賞をたくさん取った映画としてではなく、普通の娯楽映画としてみれば、すっごく楽しめると思う。

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