第12回世界バレエフェスティバル開催記念 World Ballet Festival Archives Screening
秘蔵記録映像上映会
2009.06.28(日) 日経ホール(大手町)

(第4回世界バレエフェスティバル出演者のサインボード)
貴重な映像の数々が観られる素晴らしい機会!NBSに深く感謝です。会場のロビーには、歴代バレエフェスティバルのサインボード、そして出演ダンサーの衣装の展示もありました。
「ロミオとジュリエット」 Romeo and Juliet
振付:スキビン 音楽:ベルリオーズ
マーゴ・フォンティーン イワン・ナジー Margot Fonteyn, Ivan Nagy
第1回(1976)より
マーゴ・フォンテーン、相当なお年のはずなのに、とても若く可愛らしく見えて、ジュリエットそのものだった。そういえばロンドンに住んでいる時に、母がフォンテーンの踊りを観に行ったことを思い出した。
「ラ・バヤデール」 La Bayadere
振付:プティパ 音楽:ミンクス
マリアーナ・チェルカスキー フェルナンド・ブフォネス Marianna Tcherkassky, Fernando Bujones
第1回(1976)より
ブフォネスのエレガントな中での超絶技巧!素敵。今こういう持ち味のダンサーっていない気がする。50歳という若さで亡くなってしまったのが本当に惜しまれる。

ロベルト・ボッレ着用「ラ・バヤデール」ソロルの衣装
「レダ」Leda
振付:ベジャール 音楽:日本の伝統音楽
マイヤ・プリセツカヤ ジョルジュ・ドン Maya Plisetskaya, Jorge Donn
第2回(1979)より
前半は白鳥の翼をつけたドン、後半は、チュチュ姿ではなくレオタードで「瀕死の白鳥」を踊るプリセツカヤ。多分上演の抜粋なのだと思うけど、これではどんな作品なのかがわかりにくい。でも、プリセツカヤの瀕死の白鳥の滑らかな腕の使い方はたおやかで静謐で、見入ってしまうほど美しかった。
「パ・ド・カトル」 Pas de Quatre
振付:ドーリン 音楽:プーニ
アリシア・アロンソ カルラ・フラッチ ギレーヌ・テスマー エヴァ・エフドキモワ Alicia Alonso, Carla Fracci Ghislane Thesmar, Eva Evdokimova
第2回(1979)より
この作品は、超豪華なスターバレリーナ4人をそろえたところがポイントなので、作品そのものが面白いわけではないし…。でもこの4人の並びが観られるだけで凄いこと。
「ドン・キホーテ」 Don Quixote
振付:M.プティパ,A.ゴールスキー 音楽:ミンクス
エカテリーナ・マクシーモワ ウラジーミル・ワシーリエフ Ekaterina Maximova, Vladimir Vasiliev
第2回(1979)より
カーチャがとても可愛い中テクニックもばっちりで、ワシーリエフは典型的なボリショイの男性的ダンサーで、素敵なコンビを作っていた。カーチャももうこの世にはいないのよね…(涙)。
「ボレロ」 Bolero
振付:ベジャール 音楽:ラベル
ジョルジュ・ドン 第3回(1982)より Jorge Donn
この時代の「ボレロ」は、リズムが服を着用していたのね。初演のデュスカ・シフオニスの映像も、リズムが様々な服を着用していたのが猥雑感があって、かえってセクシーだと思ったのだが。佐々木忠次氏が「闘うバレエ」で、「ボレロ」のリズムは上半身が裸がいい」とベジャールに助言したのだそうだけど、私は服を着ているほうが好きだな。ジョルジュ・ドンのボレロって特別で、すごく生身の人間が踊っている感じて、官能的なのだと思う。当たり前のことかもしれない、彼のように踊る人は、世の中に一人もいないと思う。
「海賊」 Le Coisaire
振付:プティパ 音楽: ドリゴ
エヴァ・エフドキモワ ペーター・シャウフス Eva Evdokimova, Peter Schaufuss
第3回(1982)より
シャウフスといえばブルノンヴィルのダンサーだし、エフドキモワといえば「ジゼル」や「ラ・シルフィード」の妖精もののイメージが強いのだけど、良いダンサーは、一味違ったものを踊ったとしても一流だと思い知らされる。エフドキモワは手足が長くてしなやかで、とても美しくメドーラを踊った。
「ジゼル」 Giselle
振付:コラーリ&アロンソ 音楽:アダン
アリシア・アロンソ ホルヘ・エスキヴェル Alicia Alonso, Jorge Esquival
第3回(1982)より
非常に映像が悪いのが惜しまれるけれども、アロンソの浮遊感があって、とても生きているとは思えないジゼルは鮮烈。
「白鳥の湖」黒鳥のパ・ド・ドゥ Black Swan Pas de Duex
振付:プティパ 音楽:チャイコフスキー
ジョイス・クォーコ ピーター・ブロイヤー Joyce Cuoco. Peter Peter Bruer
第3回(1982)より
ジョイス・クオーコは「海賊」でのものすごいピルエットやフェッテでセンセーションを起こした人だけど、ここでも、アダージオでトリプルのピルエットを余裕で回っていて、技術の高さを感じさせた。
「オネーギン」 鏡のパ・ド・ドゥ Onegin
振付:クランコ 音楽:チャイコフスキー、シュトルツ
マリシア・ハイデ リチャード・クラガン Marcia Haydee, Richard Cragun
第4回(1985)より
ハイデのタチアーナは、情感豊かで少女らしくて、本当に素晴らしい!二人とも動きがとても流麗で、止まることがないと思うほど、自然な動きを見せてくれている。この映像がけっこう編集されて切れ切れになってしまうのが非常にもったいない。

(マリシア・ハイデ着用の「ロミオとジュリエット」の衣装)
「ドン・キホーテ」 Don Quixote
振付:プティパ 音楽:ミンクス
モニク・ルディエール パトリック・デュポン Monique Loudieres, Patrick Dupont
第4回(1985)より
伝説的なパトリック・デュポンのパフォーマンス、凄いです。やんちゃな彼の性格がよく見えてくるのもポイント。ポーンと大きな跳躍で飛び込んできて、跳ぶわ回るわ。そんなデュポンを相手にしているルディエールも余裕たっぷりで、涼しい顔で凄いことをやって見せる。これは生で観たかったわ。
「失われた時を求めて」 Les Intermittences du Coeur
振付:プティ 音楽: サン=サーンス
ドミニク・カルフーニ デニス・ガニオ Dominique Kharfouni, Denis Ganio
第4回(1985)より
美脚カップル。ドミニク・カルフーニのラインの美しさにはため息ばかり。
「グラン・パ・クラシック」 Grand Pas Classique
振付:グソフスキー 音楽:オベール
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ Sylvie Guillem, Manuel Legis
第5回(1988)より
このときのギエムの踊りは伝説的なものとなっているみたいだけど、今ひとつ私には訴えかけるものはなく、ただ脚がずいぶん上がって、テクニックが素晴らしい、というだけ。コンサートピースだから仕方ないけど。それより、若い日のルグリを観られたのが良かった。この当時からサポートが見事で、うまくギエムを立てている。グラン・パ・クラシックといったらやっぱり男女のヴァリエーション、特に女性ヴァリエーションが見せ場だと思うので、それをカットしてしまったのがもったいない。
特別プログラム「白鳥の湖」第5回(1988)より Swan Lake Special Program
Act 1
ペーター・シャウフス(1幕:王子)パトリック・デュポン(道化) Peter Schauffus (Prince), Patrick Dupont(Jester)
アニー・マイエ - ヤナ・クーロワ - イルジ・ホラック(1幕:パ・ド・トロワ)Pas de Trois Annie Mayet, Jana Kurova, Jiri Horak
Act2
エヴァ・エフドキモワ(2幕:白鳥)デヴィッド・ニクソン(2幕:王子)Eva Evdokimova, David Nixon
Act3
カルラ・フラッチ - ウラジーミル・デレヴィヤンコ(3幕:ロシア)Carla Fracci, Vladimir Derevianko (Russian Dance)
シルヴィ・ギエム(3幕:黒鳥)マニュエル・ルグリ(3幕:王子)Sylvie Guillem, Manuel Legris
シリル・アタナソフ(3幕:ロットバルト),Cyril Atannassoff (Rothbart)
Act4
マリシア・ハイデ(4幕:白鳥)リチャード・クラガン(4幕:王子) Marcia Haydee, Richard Cragun
一昨年のルグリのガラでも似たような趣向の「白鳥の湖」の上演があったけど、バレエフェスティバルならではのお遊びは楽しくて良い!このメンバーの豪華なこと!まずパトリック・デュポンの道化が笑っちゃうくらいすごい。手をコミカルに振り回しながらくるくる回るのって、初めて観た気がする。白鳥の二人、エヴァ・エフドキモワとマリシア・ハイデがまた美しくて情感豊かで、素晴らしい。シリル・アタナソフの怪しげなロットバルトの存在感が強烈。カルラ・フラッチのルースカヤというのも、とても珍しくて貴重。

(グレッグ・ホースマン着用「パキータ」男性ソリストの衣装)
「ライモンダ」 Raymonda
振付:グリゴローヴィチ 音楽:グラズノフ
ニーナ・アナニアシヴィリ アンドリス・リエパ Nina Ananiashivili, Andris Liepa
第6回(1991年)
ニーナのライモンダ、大輪の白い薔薇のように華やかで楚々としていて、うっとり~。ちょうどこの映像観ていた時間、ニーナはABTの引退公演を終えたばかりのはず。
「椅子」 The Chairs
振付:ベジャール 音楽:ワーグナー
マリシア・ハイデ ジョン・ノイマイヤー Marcia Haydee, John Neumeier
7回(1994年)
この上演は記憶に残っている。無数の椅子が舞台に並べられていて、ノイマイヤーがマリシア・ハイデをサポートしていた。ノイマイヤーの存在感がすごく大きかった。
「パリの炎」 Flames of Paris
振付:ワイノーネン 音楽:アサフィエフ
フェルナンダ・タバレス=ディニス ホアン・ポアダ Fernanda Tavares-Nines, Joan Boada
第8回(1997)より
二人ともテクニックは強靭でものすごいんだけど、テクニックの強いダンサーというのはたくさんいるので、人の記憶に残るのって難しいんだなって改めて思った。ガラ形式の公演、それもプティパなどの古典のパ・ド・ドゥばかりというのは、今ひとつ満足度が高くない。ともすればテクニック合戦になってしまって、よほどのことがない限り、心に何かが残ることがなくなってしまう。
「エスメラルダ」 Esmeralda
振付:プティパ 音楽:プーニ
アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス Agnes Letestu, Jose Martiez
第8回(1997)より
二人とも若い!細長い!初々しい!
「マノン」 寝室のパ・ド・ドゥ Manon
振付:マクミラン 音楽:マスネ
アレッサンドラ・フェリ ウラジーミル・マラーホフ Alessandra Ferri, Vladimir Malakhov
第9回(2000)より
この二人も若くて美しい。演技が若いというか、自分たちのラブラブな世界に入り込んでいるというのが、短い抜粋映像でもよくわかる。

マラーホフ着用「薔薇の精」の衣装
「アダージェット」 Adagetto
振付:ベジャール 音楽:マーラー
ジル・ロマン Gil Roman
第10回(2003)より
ジル・ロマンの「アダージェット」はいつ観ても素敵。
「チャイコフスキー・パ・ドドゥ」 Tchaikovsky Pas de Duex
振付:バランシン 音楽: チャイコフスキー
アリーナ・コジョカル アンヘル・コレーラ Alina Cojocaru, Angel Corella
第10回(2003)より
この二人の「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」は、こんなバランシンってあり?って当時議論を呼んだはず。アンヘル・コレーラって全幕では技術を控えめに抑えて、役作りをすごく考えて取り組む人だけど、ガラではお祭り男になって盛り上げてくれるところに、人の良さを感じる。二人ともこの舞台で踊れることがすごく嬉しそうで、幸せ感が映像からも伝わってくる。それに、ペアとしてのバランスもいいし、二人ともかわいいし。アリーナ・コジョカルは7月に、コレーラ・バレエの「ラ・バヤデール」に客演する予定。
「優しい嘘」 Doux Mesonges
振付:キリアン 音楽:C.モンテヴェルディ、C.ジェズアルド、グレゴリオ聖歌
シルヴィ・ギエム ニコラ・ル=リッシュ Sylvie Guillem, Nicolas Le Riche
第10回(2003)より
この演目は、ギエムの強靭さが生きていて、抜粋で観ていても面白い。ニコラは、ギエムと踊ると自分を前面に出さないように見えるけど、素晴らしいコンビネーション。
「椿姫」 第3幕パ・ド・ドゥ Lady of the Camelias
振付:ノイマイヤー 音楽:ショパン
ジョエル・ブーローニュ アレクサンドル・リアブコ Joelle Bulogne, Alexandre Riabko
第11回(2006)より
この二人の「椿姫」は今年2月~3月の来日公演の、焼け尽くすような情熱的な二人の演技が記憶に新しいのだけど、全幕を観た後では、抜粋だと物足りない感じ。最大の問題は、ピアノのあまりの下手さ!抜粋で観てもあまりのミスタッチの多さにあきれ果ててしまう。お願いだから、世界バレエフェスティバルの一流のスターの舞台の伴奏に、レッスンピアニストなんか使わないで欲しい。どんなに下手な演奏でもテープよりはましと思っているのだが、この破壊的な演奏は名演を台無しにしている。特にショパンの「バラード」は、アルゲリッチやルビンシュタイン、ラン・ランなど世界の著名なピアニストの音源が溢れていて、有名な曲なんだから、誰が聴いてもミスをしているのが明らかになってしまって、興をそぐこと甚だしい。
「扉は必ず…」 Il faut qu'une porte
振付:キリアン 音楽:ハウブリッヒ(クープランの「プレリュード」を基に)
オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ Aurelie Dupont, Manuel Legris
第11回(2006)より
このあたりになると、記憶がまだ鮮明に残っている。この作品はすごく面白いし、スリリングだし、斬新だし、ユーモラスだし、抜粋ででも観られると本当に嬉しい。ルグリやオーレリーの違った一面が見られるのも良い。また観る機会があればいいんだけど。
「Two」
振付:マリファント 音楽:カウトン
シルヴィ・ギエム Sylvie Guillem
第11回(2006)より
今回、ギエムの上映がやたら多くない?「Two」はしょっちゅう上演されている作品だし、これを上映するくらいなら違う人の踊りが観たい。
「ロミオとジュリエット」より“バルコニーのパ・ド・ドゥ” Romeo and Juliet
振付:クランコ 音楽:プロコフィエフ
ポリーナ・セミノオワ フリーデマン・フォーゲル Polina Semionova, Friedemann Vogel
第11回(2006)より
二人とも長身なのだけど、背の高いフリーデマンと並んでも、ポリーナはデカく見えてしまう。あまり女の子っぽくない、美少年ジュリエット。
「ジュエルズ」より'ダイヤモンド’ Diamonds from Jewels
振付:バランシン 音楽:チャイコフスキー
ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ Diana Vishneva, Vladimir Malakhov
第11回(2006)より
この二人の「ダイヤモンド」は、これまたあまりバランシンぽくないわけだけど、濃厚でドラマティックな世界を作り上げていて、抜粋で観てもその濃さがよく伝わってくる。このペアには独特のケミストリーがあるので、今年の世界バレエフェスティバルでの「ル・パルク」や「カジミールの色」がとても楽しみ。
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古いバレエフェスのパンフレットを引っ張り出して、英語読みを調べてしまいました。
初期の頃のバレエフェスの映像は古くて画質も良くなく、ダンサーのプロポーションも今の人たちほど良くなかったりするのだけど、その分、スター性や芸術性が高かったことを実感させられます。この中で特に印象に残ったのは、ブフォネス、エフドキモワ、マリシア・ハイデ、そしてパトリック・デュポン。中でも、今年3月に亡くなってしまったエフドキモワは、華奢で手脚の長い容姿の美しさもさることながら、短い映像の中でも、芸術性の高さ、存在しているだけで美そのもののバレリーナであったことを実感させてくれます。本物の妖精になってしまったのですね…。

ルドルフ・ヌレエフ着用の「眠れる森の美女」カラボスの衣装。
お宝映像がずいぶんNBSには眠っているんですね。第1回、3回、4回(他の回も可能性あるけど)はテレビでも放映されていて、最初の方は少しその映像で観たものがありました。私がバレエフェスに最初に行ったのは第7回(1994年)なのですが、それから10年近くブランクがあって、次に行ったのは2003年の第10回なのです。
最新の第11回からの映像が多いのは、やはり現役のダンサー、それも今年のバレエフェスに出演する人が多いという大人の事情からなのでしょうかね。2006年のはやっぱり記憶に新しいので、もうちょっと古いのをたくさん観たかった気がします。「扉は必ず…」はやっぱり面白い作品なので観られて良かったですが。

マリアネラ・ヌニェス着用の「眠れる森の美女」オーロラの衣装
それと、たくさんの作品を上映したいというサービス精神の表れとは思うのですが、かなり映像に編集が入っており、どんな作品なのか全体像がつかめなかったり、特に女性ヴァリエーションの省略があったりしたのが残念。「オネーギン」などは素晴らしいパフォーマンスだっただけに、パ・ド・ドゥの全部を観たかったです。次回やる時には、上演本数を減らしても、カットなしで観たいです。
そして、この会場にやってきた人の多くの願いは、今回上映された映像を、DVD化してほしいということでしょう。もちろん権利の問題等があって、実現は難しいことではあると思うのです。でも、最初の方のバレエフェスに出演したダンサーの中には、亡くなっている方も多いんですよね。フォンテーン、ブフォネス、ドン、エフドキモワ、マキシーモワなど。彼らの偉業をたたえるためにも、映像は出して欲しいなって思います。エフドキモワなどは市販映像も多分出ていませんよね。

リサ・パヴァーン着用「パキータ」の衣装
しかし、これだけの貴重な映像を見せてくださったことを、NBSに深~く感謝しなければなりません。3回の上映とも、大入り満員だったようなので、ぜひ第2回の上映会も企画していただければ、とても嬉しいです。

(第10回世界バレエフェスティバル出演者のサインボード)
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上映会、楽しかったのですが終わったあと、夜の「コッペリア」の前に、友達と表参道の「糖朝」で豆腐花やマンゴープリンなどスイーツ三昧したのが、また楽しかったです。マンゴープリン、美味しかった~!
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