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2009年6月

2009/06/30

ピナ・バウシュ逝去… Pina Bausch RIP

Twitterで知ったのですが、ピナ・バウシュが亡くなりました。まだ68歳。

あまりに突然のことで、思わず茫然としています。まだまだたくさんの作品を創ってくれると信じていたのに。こんなこと、信じたくないです。来年の来日も決まっていたのに。ピナのいない世界で生きていけるのかしら、と思うほどショックです。

ピナの作品、好きでした。特に「パレルモ、パレルモ」は大好きでした。ご冥福をお祈りします。

http://www.spiegel.de/kultur/gesellschaft/0,1518,633505,00.html

http://www.news-adhoc.com/pina-bausch-ist-tot-idna2009063038081/

上記ドイツ語記事によれば、亡くなったのは6月30日の朝で、ガンだったそうです。日曜日までは舞台にも立っていたそうで、ガンと診断されて5日後だったとのことです。

英語のソースも出ました。

http://www.guardian.co.uk/stage/2009/jun/30/pina-bausch-dies-dancer

最新号のダンスマガジンにも出てましたが、映画監督ヴィム・ヴェンダーズと3Dの映画を製作する予定で、9月から撮影に入るはずでした。「春の祭典」「カフェ・ミュラー」「フルムーン」の3作品を撮影する予定だったようですが、どうなってしまうのでしょうか。

オフィシャル・サイトにも訃報が載っていました。
http://www.pina-bausch.de/news.htm

このガーディアンの追悼記事が素晴らしいので、リンクしておきます。ピナは、ダンスの世界のみならず、あらゆる芸術に大きな影響を与えてきた人だと思いますが、本当に彼女を失うことで、世界は大きなものを失ったと思いました。

http://www.guardian.co.uk/culture/charlottehigginsblog/2009/jun/30/dance-pinabausch

追記:招聘元の日本文化財団のサイトにも、訃報が載っていました。

http://www1.ocn.ne.jp/~ncc/

「ピナ・バウシュは、これからも自分の作品が世界中で上演されるようにと言い残し、穏やかな表情でこの世を去りました。」

そして、来年のヴッパタール舞踊団の来日予定も載っています。来てくれるものと期待しましょう。

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 来日公演
ピナ・バウシュが創り上げたタンツテアターの傑作、日本初演!

photo: 飯島篤
「私と踊って」
Komm tanz mit mir(1977)

振付・演出 ピナ・バウシュ
美術・衣裳 ロルフ・ボルツィク
音楽 古いドイツ歌謡より リュート伴奏、独唱、合唱

2010年6月 東京ほか
※詳細は追って発表いたします。

7/3 さらに追記
ガーディアン紙に、各界著名アーティストからの追悼文が載っています。
http://www.guardian.co.uk/stage/2009/jul/03/pina-bausch-tributes
若いときのピナは、とても美人なのですよね。

アラン・プラテル、ウェイン・マクレガー、デボラ・ブル、ペドロ・アルモドヴァル、シディ・ラルビ・シェルカウイ、ヤン・ファーブル、モニカ・メイソン、マーク・モリス他の追悼文があり、彼女が以下に大きな存在だったかを思わせてくれます。

ゴールデン・バレエ・コースターにパリ・オペラ座のジョシュア・オファルト出演/NBAバレエ団のチャンネル

NBAバレエ団からのプレスリリースで、今年のゴールデン・バレエ・コースター・ガラに、パリ・オペラ座のスジェ、ジョシュア・オファルトが追加で出演するとありました。

http://www.dreamnews.jp/?action_press=1&pid=0000007727

ジョシュア・オファルトは昨年末のオペラ座の「ライモンダ」では連日ベルナール役を踊り、長身でテクニックもある期待の若手ダンサーです。

■第9回ゴールデン・バレエ・コースター・ガラ 2009
7/26(日)・27日(月)東京・ゆうぽうとホール:18:00開演

■出演(予定)
アシュリー・ボーダー、 ホアキン・デ・ルス(NYCB)
アディアリス・アルメイダ、 ジョセフ・ミハエル・ガッティ(コレーラ・バレエ)
エフゲーニャ・オブラスツォーワ (マリインスキー・バレエ)
秋元 康臣、 ヤロスラフ・サレンコ(NBAバレエ団)

オクサーナ・クチェルク、ロマン・ミハレフ (ボルドー・バレエ)
クリスティナ・タランティエワ、 アレクセイ・タランティエフ(モルドバ国立バレエ団)
シャロン・ウェナー 久保 紘一 (コロラド・バレエ)
ミュリエル・ズスペルギー カール・パケット ジョシュア・オファルト(パリ・オペラ座バレエ)
ヤニーナ・パリエンコ、 アレクセイ・コリャーギン (ボリショイ・バレエ)
原嶋 里会 (NBAバレエ団)

特設サイトができており、出演者のプロフィールを見ることもできます。
http://www.nbaballet.org/performance/costargala09.html

■演目(予定)
7/26日
眠れる森の美女 、黒鳥(白鳥の湖より)、スターズ・アンド・ストライプス(G・バランシン振付)、ジゼル 、ブルジョアジー、アザーダンス(J・ロビンス振付)<両日>、ドン・キホーテ<両日>、サタネラ<両日>、村のドンファン<両日>、 バッハのフーガ<両日>

7/27日
海賊 、ソナチネ(G・バランシン振付)、 葉は色褪せて(A・チューダー振付)、ドリーブ組曲 、タリスマン 、アザーダンス(J・ロビンス振付)<両日>、ドン・キホーテ<両日>、サタネラ<両日>、 村のドンファン<両日>、バッハのフーガ<両日>

※なお、オープニングは、「第12回NBA全国バレエコンクール」のファイナリスト、中・高校生男子17名による、安達哲治振付による「ライジング・スターズ」を公演
(アクリ瑠嘉、加藤清流、水井駿介、出野佑都、佐野朋太郎、大藤明礼生、井福俊太郎、加藤凌、
池内寛人、内堀裕仁、鈴木詠翔、熊谷駿、酒井大、関口啓、三浦丈明、吉田邑那、松野乃知)

ところで、このリリースにもありますが、NBAバレエ団がYouTubeにチャンネルを設置し、前回(2007年)のゴールデン・バレエ・コースターの抜粋映像を観ることができます。

ヤンヤン・タンの「カルメン」、フィリップ・バランキエヴィッチとエレーナ・テンチコワの「カジミールの色」と「眠れる森の美女」、ブルックリン・マックの黒鳥のヴァリエーションと「ディアナとアクテオン」、デルフィーヌ・ムッサンとカール・パケットの「シンデレラ」「ジゼル」、ヤロスラフ・サレンコの「薔薇の精」、マリア・リチェットと久保紘一の「スプレンディッド・アイソレーションIII」 などが、ほんのちょっとずつですが、観ることができます。

なお、ジョシュア・オファルトは、カール・パケット、ミュリエル・ズスペルギーとともに、8月2日、びわ湖ホールにて、有馬龍子バレエ団の「ジゼル」に出演するのですよね。カールはオペラ座ではまだアルブレヒトを踊っていないと思うので、興味ありです。(バレエフェスと時期は被っていますが)
http://www.kyoto-ballet-academy.com/news/detail.html?1239587046

2009/06/29

第12回世界バレエフェスティバル開催記念 秘蔵記録映像上映会 World Ballet Festival Archives Screening

第12回世界バレエフェスティバル開催記念 World Ballet Festival Archives Screening
秘蔵記録映像上映会
2009.06.28(日)  日経ホール(大手町)

P1030826s
(第4回世界バレエフェスティバル出演者のサインボード)

貴重な映像の数々が観られる素晴らしい機会!NBSに深く感謝です。会場のロビーには、歴代バレエフェスティバルのサインボード、そして出演ダンサーの衣装の展示もありました。

「ロミオとジュリエット」 Romeo and Juliet
振付:スキビン 音楽:ベルリオーズ
マーゴ・フォンティーン イワン・ナジー Margot Fonteyn, Ivan Nagy
第1回(1976)より

マーゴ・フォンテーン、相当なお年のはずなのに、とても若く可愛らしく見えて、ジュリエットそのものだった。そういえばロンドンに住んでいる時に、母がフォンテーンの踊りを観に行ったことを思い出した。


「ラ・バヤデール」 La Bayadere
振付:プティパ 音楽:ミンクス  
マリアーナ・チェルカスキー フェルナンド・ブフォネス Marianna Tcherkassky, Fernando Bujones
第1回(1976)より

ブフォネスのエレガントな中での超絶技巧!素敵。今こういう持ち味のダンサーっていない気がする。50歳という若さで亡くなってしまったのが本当に惜しまれる。

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ロベルト・ボッレ着用「ラ・バヤデール」ソロルの衣装

「レダ」Leda
振付:ベジャール 音楽:日本の伝統音楽
マイヤ・プリセツカヤ ジョルジュ・ドン Maya Plisetskaya, Jorge Donn
第2回(1979)より

前半は白鳥の翼をつけたドン、後半は、チュチュ姿ではなくレオタードで「瀕死の白鳥」を踊るプリセツカヤ。多分上演の抜粋なのだと思うけど、これではどんな作品なのかがわかりにくい。でも、プリセツカヤの瀕死の白鳥の滑らかな腕の使い方はたおやかで静謐で、見入ってしまうほど美しかった。


「パ・ド・カトル」 Pas de Quatre
振付:ドーリン 音楽:プーニ
アリシア・アロンソ カルラ・フラッチ ギレーヌ・テスマー エヴァ・エフドキモワ Alicia Alonso, Carla Fracci Ghislane Thesmar, Eva Evdokimova
第2回(1979)より

この作品は、超豪華なスターバレリーナ4人をそろえたところがポイントなので、作品そのものが面白いわけではないし…。でもこの4人の並びが観られるだけで凄いこと。


「ドン・キホーテ」 Don Quixote
振付:M.プティパ,A.ゴールスキー 音楽:ミンクス 
エカテリーナ・マクシーモワ ウラジーミル・ワシーリエフ Ekaterina Maximova, Vladimir Vasiliev
第2回(1979)より

カーチャがとても可愛い中テクニックもばっちりで、ワシーリエフは典型的なボリショイの男性的ダンサーで、素敵なコンビを作っていた。カーチャももうこの世にはいないのよね…(涙)。


「ボレロ」 Bolero
振付:ベジャール 音楽:ラベル
ジョルジュ・ドン 第3回(1982)より Jorge Donn

この時代の「ボレロ」は、リズムが服を着用していたのね。初演のデュスカ・シフオニスの映像も、リズムが様々な服を着用していたのが猥雑感があって、かえってセクシーだと思ったのだが。佐々木忠次氏が「闘うバレエ」で、「ボレロ」のリズムは上半身が裸がいい」とベジャールに助言したのだそうだけど、私は服を着ているほうが好きだな。ジョルジュ・ドンのボレロって特別で、すごく生身の人間が踊っている感じて、官能的なのだと思う。当たり前のことかもしれない、彼のように踊る人は、世の中に一人もいないと思う。


「海賊」 Le Coisaire
振付:プティパ 音楽: ドリゴ  
エヴァ・エフドキモワ ペーター・シャウフス Eva Evdokimova, Peter Schaufuss
第3回(1982)より

シャウフスといえばブルノンヴィルのダンサーだし、エフドキモワといえば「ジゼル」や「ラ・シルフィード」の妖精もののイメージが強いのだけど、良いダンサーは、一味違ったものを踊ったとしても一流だと思い知らされる。エフドキモワは手足が長くてしなやかで、とても美しくメドーラを踊った。


「ジゼル」 Giselle
振付:コラーリ&アロンソ 音楽:アダン
アリシア・アロンソ ホルヘ・エスキヴェル Alicia Alonso, Jorge Esquival
第3回(1982)より

非常に映像が悪いのが惜しまれるけれども、アロンソの浮遊感があって、とても生きているとは思えないジゼルは鮮烈。


「白鳥の湖」黒鳥のパ・ド・ドゥ Black Swan Pas de Duex
振付:プティパ 音楽:チャイコフスキー
ジョイス・クォーコ ピーター・ブロイヤー Joyce Cuoco. Peter Peter Bruer
第3回(1982)より

ジョイス・クオーコは「海賊」でのものすごいピルエットやフェッテでセンセーションを起こした人だけど、ここでも、アダージオでトリプルのピルエットを余裕で回っていて、技術の高さを感じさせた。


「オネーギン」 鏡のパ・ド・ドゥ Onegin
振付:クランコ 音楽:チャイコフスキー、シュトルツ 
マリシア・ハイデ リチャード・クラガン Marcia Haydee, Richard Cragun
第4回(1985)より

ハイデのタチアーナは、情感豊かで少女らしくて、本当に素晴らしい!二人とも動きがとても流麗で、止まることがないと思うほど、自然な動きを見せてくれている。この映像がけっこう編集されて切れ切れになってしまうのが非常にもったいない。

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(マリシア・ハイデ着用の「ロミオとジュリエット」の衣装)

「ドン・キホーテ」 Don Quixote
振付:プティパ 音楽:ミンクス
モニク・ルディエール パトリック・デュポン Monique Loudieres, Patrick Dupont
第4回(1985)より

伝説的なパトリック・デュポンのパフォーマンス、凄いです。やんちゃな彼の性格がよく見えてくるのもポイント。ポーンと大きな跳躍で飛び込んできて、跳ぶわ回るわ。そんなデュポンを相手にしているルディエールも余裕たっぷりで、涼しい顔で凄いことをやって見せる。これは生で観たかったわ。


「失われた時を求めて」 Les Intermittences du Coeur
振付:プティ 音楽: サン=サーンス
ドミニク・カルフーニ デニス・ガニオ Dominique Kharfouni, Denis Ganio
第4回(1985)より

美脚カップル。ドミニク・カルフーニのラインの美しさにはため息ばかり。


「グラン・パ・クラシック」 Grand Pas Classique
振付:グソフスキー 音楽:オベール
シルヴィ・ギエム マニュエル・ルグリ Sylvie Guillem, Manuel Legis
第5回(1988)より

このときのギエムの踊りは伝説的なものとなっているみたいだけど、今ひとつ私には訴えかけるものはなく、ただ脚がずいぶん上がって、テクニックが素晴らしい、というだけ。コンサートピースだから仕方ないけど。それより、若い日のルグリを観られたのが良かった。この当時からサポートが見事で、うまくギエムを立てている。グラン・パ・クラシックといったらやっぱり男女のヴァリエーション、特に女性ヴァリエーションが見せ場だと思うので、それをカットしてしまったのがもったいない。


特別プログラム「白鳥の湖」第5回(1988)より Swan Lake Special Program
Act 1
ペーター・シャウフス(1幕:王子)パトリック・デュポン(道化) Peter Schauffus (Prince), Patrick Dupont(Jester)
アニー・マイエ - ヤナ・クーロワ - イルジ・ホラック(1幕:パ・ド・トロワ)Pas de Trois Annie Mayet, Jana Kurova, Jiri Horak
Act2
エヴァ・エフドキモワ(2幕:白鳥)デヴィッド・ニクソン(2幕:王子)Eva Evdokimova, David Nixon
Act3
カルラ・フラッチ - ウラジーミル・デレヴィヤンコ(3幕:ロシア)Carla Fracci, Vladimir Derevianko (Russian Dance)
シルヴィ・ギエム(3幕:黒鳥)マニュエル・ルグリ(3幕:王子)Sylvie Guillem, Manuel Legris
シリル・アタナソフ(3幕:ロットバルト),Cyril Atannassoff (Rothbart)
Act4
マリシア・ハイデ(4幕:白鳥)リチャード・クラガン(4幕:王子) Marcia Haydee, Richard Cragun

一昨年のルグリのガラでも似たような趣向の「白鳥の湖」の上演があったけど、バレエフェスティバルならではのお遊びは楽しくて良い!このメンバーの豪華なこと!まずパトリック・デュポンの道化が笑っちゃうくらいすごい。手をコミカルに振り回しながらくるくる回るのって、初めて観た気がする。白鳥の二人、エヴァ・エフドキモワとマリシア・ハイデがまた美しくて情感豊かで、素晴らしい。シリル・アタナソフの怪しげなロットバルトの存在感が強烈。カルラ・フラッチのルースカヤというのも、とても珍しくて貴重。

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(グレッグ・ホースマン着用「パキータ」男性ソリストの衣装)

「ライモンダ」 Raymonda
振付:グリゴローヴィチ 音楽:グラズノフ
ニーナ・アナニアシヴィリ アンドリス・リエパ Nina Ananiashivili, Andris Liepa
第6回(1991年)

ニーナのライモンダ、大輪の白い薔薇のように華やかで楚々としていて、うっとり~。ちょうどこの映像観ていた時間、ニーナはABTの引退公演を終えたばかりのはず。


「椅子」 The Chairs
振付:ベジャール 音楽:ワーグナー
マリシア・ハイデ ジョン・ノイマイヤー Marcia Haydee, John Neumeier
7回(1994年)

この上演は記憶に残っている。無数の椅子が舞台に並べられていて、ノイマイヤーがマリシア・ハイデをサポートしていた。ノイマイヤーの存在感がすごく大きかった。


「パリの炎」 Flames of Paris
振付:ワイノーネン 音楽:アサフィエフ
フェルナンダ・タバレス=ディニス ホアン・ポアダ Fernanda Tavares-Nines, Joan Boada
第8回(1997)より

二人ともテクニックは強靭でものすごいんだけど、テクニックの強いダンサーというのはたくさんいるので、人の記憶に残るのって難しいんだなって改めて思った。ガラ形式の公演、それもプティパなどの古典のパ・ド・ドゥばかりというのは、今ひとつ満足度が高くない。ともすればテクニック合戦になってしまって、よほどのことがない限り、心に何かが残ることがなくなってしまう。


「エスメラルダ」 Esmeralda
振付:プティパ 音楽:プーニ
アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス Agnes Letestu, Jose Martiez
第8回(1997)より

二人とも若い!細長い!初々しい!


「マノン」 寝室のパ・ド・ドゥ Manon
振付:マクミラン 音楽:マスネ
アレッサンドラ・フェリ ウラジーミル・マラーホフ Alessandra Ferri, Vladimir Malakhov
第9回(2000)より

この二人も若くて美しい。演技が若いというか、自分たちのラブラブな世界に入り込んでいるというのが、短い抜粋映像でもよくわかる。

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マラーホフ着用「薔薇の精」の衣装

「アダージェット」 Adagetto
振付:ベジャール 音楽:マーラー
ジル・ロマン Gil Roman
第10回(2003)より

ジル・ロマンの「アダージェット」はいつ観ても素敵。


「チャイコフスキー・パ・ドドゥ」 Tchaikovsky Pas de Duex
振付:バランシン 音楽: チャイコフスキー
アリーナ・コジョカル アンヘル・コレーラ Alina Cojocaru, Angel Corella
第10回(2003)より

この二人の「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」は、こんなバランシンってあり?って当時議論を呼んだはず。アンヘル・コレーラって全幕では技術を控えめに抑えて、役作りをすごく考えて取り組む人だけど、ガラではお祭り男になって盛り上げてくれるところに、人の良さを感じる。二人ともこの舞台で踊れることがすごく嬉しそうで、幸せ感が映像からも伝わってくる。それに、ペアとしてのバランスもいいし、二人ともかわいいし。アリーナ・コジョカルは7月に、コレーラ・バレエの「ラ・バヤデール」に客演する予定。


「優しい嘘」 Doux Mesonges
振付:キリアン 音楽:C.モンテヴェルディ、C.ジェズアルド、グレゴリオ聖歌
シルヴィ・ギエム ニコラ・ル=リッシュ Sylvie Guillem, Nicolas Le Riche
第10回(2003)より

この演目は、ギエムの強靭さが生きていて、抜粋で観ていても面白い。ニコラは、ギエムと踊ると自分を前面に出さないように見えるけど、素晴らしいコンビネーション。


「椿姫」 第3幕パ・ド・ドゥ Lady of the Camelias
振付:ノイマイヤー 音楽:ショパン
ジョエル・ブーローニュ アレクサンドル・リアブコ Joelle Bulogne, Alexandre Riabko
第11回(2006)より

この二人の「椿姫」は今年2月~3月の来日公演の、焼け尽くすような情熱的な二人の演技が記憶に新しいのだけど、全幕を観た後では、抜粋だと物足りない感じ。最大の問題は、ピアノのあまりの下手さ!抜粋で観てもあまりのミスタッチの多さにあきれ果ててしまう。お願いだから、世界バレエフェスティバルの一流のスターの舞台の伴奏に、レッスンピアニストなんか使わないで欲しい。どんなに下手な演奏でもテープよりはましと思っているのだが、この破壊的な演奏は名演を台無しにしている。特にショパンの「バラード」は、アルゲリッチやルビンシュタイン、ラン・ランなど世界の著名なピアニストの音源が溢れていて、有名な曲なんだから、誰が聴いてもミスをしているのが明らかになってしまって、興をそぐこと甚だしい。


「扉は必ず…」 Il faut qu'une porte
振付:キリアン 音楽:ハウブリッヒ(クープランの「プレリュード」を基に)
オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ Aurelie Dupont, Manuel Legris
第11回(2006)より

このあたりになると、記憶がまだ鮮明に残っている。この作品はすごく面白いし、スリリングだし、斬新だし、ユーモラスだし、抜粋ででも観られると本当に嬉しい。ルグリやオーレリーの違った一面が見られるのも良い。また観る機会があればいいんだけど。


「Two」
振付:マリファント 音楽:カウトン
シルヴィ・ギエム Sylvie Guillem
第11回(2006)より

今回、ギエムの上映がやたら多くない?「Two」はしょっちゅう上演されている作品だし、これを上映するくらいなら違う人の踊りが観たい。


「ロミオとジュリエット」より“バルコニーのパ・ド・ドゥ” Romeo and Juliet
振付:クランコ 音楽:プロコフィエフ
ポリーナ・セミノオワ フリーデマン・フォーゲル Polina Semionova, Friedemann Vogel
第11回(2006)より

二人とも長身なのだけど、背の高いフリーデマンと並んでも、ポリーナはデカく見えてしまう。あまり女の子っぽくない、美少年ジュリエット。


「ジュエルズ」より'ダイヤモンド’ Diamonds from Jewels
振付:バランシン 音楽:チャイコフスキー
ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ Diana Vishneva, Vladimir Malakhov
第11回(2006)より

この二人の「ダイヤモンド」は、これまたあまりバランシンぽくないわけだけど、濃厚でドラマティックな世界を作り上げていて、抜粋で観てもその濃さがよく伝わってくる。このペアには独特のケミストリーがあるので、今年の世界バレエフェスティバルでの「ル・パルク」や「カジミールの色」がとても楽しみ。

*****
古いバレエフェスのパンフレットを引っ張り出して、英語読みを調べてしまいました。


初期の頃のバレエフェスの映像は古くて画質も良くなく、ダンサーのプロポーションも今の人たちほど良くなかったりするのだけど、その分、スター性や芸術性が高かったことを実感させられます。この中で特に印象に残ったのは、ブフォネス、エフドキモワ、マリシア・ハイデ、そしてパトリック・デュポン。中でも、今年3月に亡くなってしまったエフドキモワは、華奢で手脚の長い容姿の美しさもさることながら、短い映像の中でも、芸術性の高さ、存在しているだけで美そのもののバレリーナであったことを実感させてくれます。本物の妖精になってしまったのですね…。

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ルドルフ・ヌレエフ着用の「眠れる森の美女」カラボスの衣装。

お宝映像がずいぶんNBSには眠っているんですね。第1回、3回、4回(他の回も可能性あるけど)はテレビでも放映されていて、最初の方は少しその映像で観たものがありました。私がバレエフェスに最初に行ったのは第7回(1994年)なのですが、それから10年近くブランクがあって、次に行ったのは2003年の第10回なのです。

最新の第11回からの映像が多いのは、やはり現役のダンサー、それも今年のバレエフェスに出演する人が多いという大人の事情からなのでしょうかね。2006年のはやっぱり記憶に新しいので、もうちょっと古いのをたくさん観たかった気がします。「扉は必ず…」はやっぱり面白い作品なので観られて良かったですが。

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マリアネラ・ヌニェス着用の「眠れる森の美女」オーロラの衣装

それと、たくさんの作品を上映したいというサービス精神の表れとは思うのですが、かなり映像に編集が入っており、どんな作品なのか全体像がつかめなかったり、特に女性ヴァリエーションの省略があったりしたのが残念。「オネーギン」などは素晴らしいパフォーマンスだっただけに、パ・ド・ドゥの全部を観たかったです。次回やる時には、上演本数を減らしても、カットなしで観たいです。

そして、この会場にやってきた人の多くの願いは、今回上映された映像を、DVD化してほしいということでしょう。もちろん権利の問題等があって、実現は難しいことではあると思うのです。でも、最初の方のバレエフェスに出演したダンサーの中には、亡くなっている方も多いんですよね。フォンテーン、ブフォネス、ドン、エフドキモワ、マキシーモワなど。彼らの偉業をたたえるためにも、映像は出して欲しいなって思います。エフドキモワなどは市販映像も多分出ていませんよね。

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リサ・パヴァーン着用「パキータ」の衣装

しかし、これだけの貴重な映像を見せてくださったことを、NBSに深~く感謝しなければなりません。3回の上映とも、大入り満員だったようなので、ぜひ第2回の上映会も企画していただければ、とても嬉しいです。

P1030844s
(第10回世界バレエフェスティバル出演者のサインボード)
******

上映会、楽しかったのですが終わったあと、夜の「コッペリア」の前に、友達と表参道の「糖朝」で豆腐花やマンゴープリンなどスイーツ三昧したのが、また楽しかったです。マンゴープリン、美味しかった~!

2009/06/28

愛を読むひと The Reader

愛を読むひと The Reader
http://www.aiyomu.com/
http://www.imdb.com/title/tt0976051/

製作年 : 2008年
製作国 : アメリカ=ドイツ
監督 : スティーヴン・ダルドリー
製作:アンソニー・ミンゲラ、シドニー・ポラック
脚本:デビッド・ヘア
撮影:クリス・メンゲス、ロジャー・ディーキンス
原作: ベルンハルト・シュリンク 「朗読者」Der Vorleser
出演 : ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス、レナ・オリン、ブルーノ・ガンツ

原作「朗読者」の邦訳が出た時に読んで、それから10年近く経っての映画化。日本でも当時ベストセラーとなったこの小説のタイトルではなくて、なぜこんな安っぽい邦題にしてしまったのかが大きな疑問。邦訳では、主人公の名前ははミヒャエルだったのに、英語で製作されているため、英語読みのマイケルとなっているのに違和感を覚えた。また、字幕には、時々明らかに誤訳と思われるところがあった。


(ネタバレしているので、未見の方は気をつけてください)

映画を観る前に、もう一度原作を読み直してみた。とても読みやすい邦訳で、ミヒャエルの一人称でストーリーは綴られている。この本を読んだ当時、とても心が動かされて涙を流したと記憶しているのだけど、2回目だからということもあったのか、いろいろな質問を投げかけられたような気がして考え込んでしまった。裁判の序盤で、「あなたならどうしましたか?」とハンナが裁判長に向けた問いは、私にも向けられているのではないかと思った。

本を読むという行為を通して、人の内面の世界は無限に拡大していくものだということが、この作品では隠喩いる。文字が読めないハンナが、頑固で不器用で、ナチスの犯罪行為の意味も理解できていなかったことの悲劇性を伝えている。

原作にほぼ忠実に映画は作られている。より判りやすく、ドラマ的な効果を上げるように付け加えられた描写や、省略されたところはあっても。

******

映画ならではの演出としては、15歳の時のミヒャエルが次から次へと様々な小説(ときにはコミックまで)を朗読していくところが情感豊かで素晴らしい。その間にふたりが愛し合っているところのカット割りが、軽い陶酔感を覚えるほど鮮やかで、恋愛の高揚感をも伝えている。小説を朗読することが愛を意味していたということを強く印象付けており、また強制収容所でハンナがユダヤ人の少女に本を読ませていたという証言にも繋がる。大人になってからのミヒャエルが、テープを吹き込むところもそう。朗読という行為を通して、ミヒャエルはハンナへの思いを伝えようとしていたということがよくわかる。

恋の高揚感の中にも、ハンナが実は字が読めないということを暗喩する描写がさりげなく散りばめられているのが、とても哀しい。ラテン語やギリシャ語まですらすらと読めるミヒャエルは、ハンナがまさか字が読めないなんて思いも寄らなかったことだった。

原作にないエピソードとしては、ミヒャエル(マイケル)と同じゼミを受けている生徒の一人の台詞がある。あの被告人の6人の元看守の女性たちは、たまたま捕まって裁判を受けているけれども、ナチスに関わった人間はものすごく多くいて、罪を問われている人だけではなく、その時代の人々皆が有罪なのではないか、と。

ナチズムを止めることができず、選挙で投票してヒトラーを選んだ人々にだって、罪があると考えることはできる。罪に問われた被告人たちは、職務を全うするために結果的に恐ろしい犯罪行為を行った。自分が同じ立場だったら、果たしてどうしたのだろうか。このシーンがあることで、この重大なテーマが判りやすく浮かび上がってくるのである。

それなのに、他の被告人たちは、自分たちの罪をハンナになすりつけて、罪から逃れようとする。刑の大小はあったとしても、有罪という意味では、皆同じだというのに。

******
哲学者だったミヒャエルの父の言葉が、大きなテーマとして全編を流れている。「私は、大人たちに対しても、他人が良いと思うことを自分自身が良いことと思うことより上位におくべき理由はまったく認めないね」人に対して良かれと思ったことが、本当に良いこととは限らないのだ。人間の想いというのは、しばしばすれ違うもの。

高校の同級生たちが誕生日パーティを企画してくれていたのに、パーティには出ずにハンナの元に駆けつけた若き日のミヒャエル。仕事から戻ってきてひどく疲れているハンナは不機嫌で彼の相手をしない。自分が何かを相手のためにしていると思っていても、それは自己満足に過ぎない。相手がどう思っているかということについては、思い図ることができない。看守時代のハンナが、収容者の中でお気に入りの若くて弱い女の子を見つけ、朗読させ、かわいがるもののアウシュヴィッツに送り返して死なせたというエピソードも、その例の一つだ。生き残った母娘のうちの娘のほうが、その事実を指摘し、「ほんとうにそれでよかったのでしょうか」と投げかける。

無期懲役の刑を下されたハンナの元へ、ミヒャエルは自らの朗読を収録したテープを送り続けるようになる。ハンナはそのテープを元に、刑務所の中で文字を覚え、やがてミヒャエルに手紙を書くようになる。返事がほしい、と書いても彼からは手紙は来なくて、テープばかりが送り続けられるようになる。こうしたミヒャエルの行為も、半分は自己満足なのではなかったのか?出所する彼女の社会復帰に向けて、住むところや職の世話もしようとした。だけど、彼の行ったことには決定的な何かが抜け落ちており、最後の悲劇へとつながってしまう。

そして、ハンナの秘密である、彼女が文盲であるということを裁判官に話すことについて、ミヒャエルは悩んだ挙句それを行わなかった。彼女の刑期が、それにより短くなったとしても、文盲であることを恥じていた彼女の気持ちを優先したのだった。しかし、それで本当に良かったのだろうか。

人と人との気持ちのすれ違い、相手の気持ちを慮ることの難しさ、複雑で一言では伝えられない感情について、見事に描ききった脚色が行われている。

ただ、一つだけ不満があるとしたら、それは出所を近くに控えていたハンナをミヒャエルが面会に訪れた時のこと。映画では、ハンナは自分の犯した罪について悔いていなかったということを表明していて、ミヒャエルは非常に裏切られた気持ちになって、彼女に対して微妙に冷淡な態度を取る。ところが、原作では、若き日の情事について、「裁判で話題になった時にはそのことは考えなかったの?」とミヒャエルが尋ねたところ、ハンナが「私はどっちみち誰にも理解してもらえないし、私が何者で、どうしてこんなことになってしまったのか、誰も知らないという気がしていたの。裁判所だって私に弁明を求めることができないわ。ただ、死者にはそれができるのよ。死者は理解してくれる」と答える。その言葉に、彼女の深い苦悩と孤独を感じることができたので、映画はハンナの描き方について、あまり優しくないと思ったのだった。映画では、ミヒャエルは躊躇しながらハンナの手に触れるが、原作では、別れ際にミヒャエルは彼女をそっと抱きしめるのだ。

反面、最後に登場する、ハンナの遺したお金と形見の缶を届けにミヒャエルがニューヨークに、生き残りの娘を尋ねる場面は、上手くエピソードを膨らますことができていたと思う。その娘を演じたのが、レナ・オリンという名女優だったということもあるけれども。「人々は私に収容所で何が得られたのか尋ねるけれども、収容所で得られたものは何もない」と言い切って頑なな態度を見せていた彼女が、お金を入れていた缶を目にした途端に、ハンナのことを少し理解するようになったのだ。戦争犯罪人であっても、同じ人間であり、同じ立場にいたら、どうしていたのかということについても、彼女は考えることができたのだと思う。他人の気持ちを理解するのは非常に困難なことではあるけれども、無理なことではない、そんな希望を与えてくれることで、悲しい物語に少しの救いを感じることができたのだった。

******
ハンナを演じたケイト・ウィンスレットは、頑固で真面目、孤独感を滲ませている故に少年にとって魅惑的な存在という女性に見事になりきっていた。骨太でちょっとくたびれた体型が、36歳のドイツ人の女性というふうに見えていて。あまりの真面目さと不器用さ、職務への忠実さゆえに、法廷でどんどん追い詰められていく彼女の姿が胸に痛く響く。刑務所に入って、実際以上の年齢に見えるほど老けてしまったときにも、大きな青い瞳だけはとても美しかった。

少年時代のミヒャエルを演じたデヴィッド・クロスはドイツ人で、撮影当時17歳という若さ。ほっそりとして背が高いけど、けっして美少年ではないところが、なんともリアルな感じがして、説得力のある演技を見せていた。中年以降のミヒャエル役のレイフ・ファインズは、陰があって苦悩するキャラクターがぴったり合っている。デヴィッド・クロスと顔があまり似ていないのが残念。

不満がないわけではない。ハンナとの面会シーンの台詞の違いと、少年時代のミヒャエルがプールでハンナの姿を見かけたのに駆け寄れなかったエピソードがなかったのが、個人的には惜しいと思った。台詞がドイツ語じゃないのも。が、ベストセラーの映画化という点では、非常に成功している。いくつもの重い問いを、ハンナ=ケイト・ウィンスレットのあのまっすぐな青い瞳で問いかけられ、私は答えを探すのに苦労している。

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2009/06/27

マイケル・ジャクソンの訃報と、バーミンガム・ロイヤル・バレエ

今朝聞いたマイケル・ジャクソンの訃報は、未だに全然実感が伴っていなくて。マイケルはいつまでも生きているんじゃなかったのかしら、と思っていたのに。マイケル・ジャクソンの「スリラー」は、私が初めて買った洋楽アルバムでした。中学3年の時に、担任の先生に勧められて買ったのでした。本当にあのアルバムは凄かった!一曲もできの悪い曲がなくて、完璧でした。

何年か前に、友達の家でマイケルのプロモーションビデオをまとめて観たのですが、どれもとても面白かったです。改めて、彼のダンスは凄い、まさに革命的だったと実感しました。最近のアルバムは聴いていなかったし、彼が思うように活動できなかった様子が伝わってきていて切なかったのです。栄光と無残を体現していた彼の人生には、人の生の儚さを感じてしまいます。人生のある時期においては、本当によく聴いていたし、彼の死で一つの時代が終わったな、と思います。思わず、Amazonで彼のアルバムをポチしてしまいました。ご冥福をお祈りします。今はゆっくり休んで。

CDが売れなくなってしまい、音楽はダウンロードするのが当たり前となってしまいました。彼のように絶大な人気を獲得し、1億枚もアルバムを売って社会現象を起こすようなアーティストは、今後出て来ないでしょうね。

*****
さて、今バーミンガム・ロイヤル・バレエは本拠地のヒッポドローム劇場でLove and Lossと題して、「ギャラントゥリーズ」「The Dance House」「真夏の夜の夢」のトリプル・ビルを上演しています。(6月26日、27日)
http://www.brb.org.uk/masque/index.htm?act=Production&urn=12482

その中の、「The Dance House」というデヴィッド・ビントレー振付の作品。この作品は、マイケル・ジャクソンの「スリラー」の有名なプロモーションビデオにインスピレーションを得ていたという、すごい偶然がおきています。

http://www.brb.org.uk/NE09-Dance-House.html

この作品は、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲1番を使用しています。ビントレーがこの作品の構想を練っていた時、リストの「Totentanz(死の舞踏)」を聴いていて、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のプロモーションビデオの、ゾンビたちによる群舞を連想し、8人のダンサーたちが死体として派手に踊っていたら面白いのではないかと思ったそうです。

その時ビントレーは、元カンパニーのダンサーから、やはり元ダンサーの一人が亡くなったという知らせを受けたそうです。彼は、友人であったそのダンサーを追悼しながら、「死」をダンスで描こうと考えたそうです。ホラー映画の奇妙な可笑しさと、ショスタコーヴィチの音楽のアナーキーなユーモア、そして死に対する感覚が一つに収束し、この作品が出来上がったとのこと。

マイケル・ジャクソンの音楽やダンスは、本当に様々な分野に影響を与えていたのですね。彼は亡くなってしまっても、その音楽や芸術は、私たちの記憶の中で、そして映像記録やCDの中で生き続けるのだと思いました。

DANCE MAGAZINE 8月号 / 「パリ・オペラ座のマニュエル・ルグリ」/スターダンサーズ・バレエ「シンデレラ」DVD発売

DANCE MAGAZINE 8月号の表紙はマルセロ・ゴメスとジュリー・ケント。「マノン」の衣装を着用しています。ジュリー・ケントは今産休中なのですよね。マルセロの、口角がきゅっと上がった笑顔が好きなんで、この表紙はちょっと嬉しいです。

巻頭は「ザハーロワのすべて」で、写真がたくさん載っているのですが、ニーナ・カプツォーワの写真が一枚もないのですね…。ザハロワと三浦雅士氏の対談も掲載されています。対談で印象的だったのは、彼女が「ジゼル」を日本で踊りたいと思っているのに、なんで日本では「ジゼル」をやらないのか不思議だと語っていること。新国立でもボリショイでも、最初は「ジゼル」という予定が入っているのに、いつの間にか「白鳥の湖」や「ドン・キホーテ」に変わったりするそうです。「チケットが売れるか売れないか、心配されているのかもしれません」とけっこう率直なことを言っています。そういえば新国立では、しばらく「ジゼル」が上演されていないんですよね。ザハロワの日本での舞台って、やはり「白鳥の湖」と「ドン・キホーテ」ばかりで、世界バレエフェスティバルでもこの二つの作品なので、観客としても、たまには「ジゼル」でのザハロワを観たいって思います。

デンマーク・ロイヤル・バレエの来日公演の記事は4ページだけで思ったより少なかったです。その分たっぷり載っているのが、マニュエル・ルグリのパリ・オペラ座のアデュー公演の記事(ルグリのインタビューつき)で、10ページに加えて、オーレリー・デュポン、マチュー・ガニオ、ドロテ・ジルベールのインタビュー合わせて6ページも載っているんですよね。モニク・ルディエールやエリザベット・モーランなど往年のエトワールの姿を見ることができたのは嬉しいですが。

4月にニューヨークで行われたYAGPガラとピョートル・ペストフ・ガラの記事では、ニコライ・ツィスカリーゼのプティ「カルメン」の写真がとてもカッコよくて素敵です。ツィスカリーゼとマラーホフのインタビューのほか、オリヴァー・マッツやローラン・フォーゲル(フリーデマンの兄)などの懐かしい人々のインタビューも。

New File on Dancersは、新国立劇場の堀口純さんが登場。ボリショイ劇場での「椿姫」のマルグリット役に抜擢された彼女ですが、やはり来シーズンからはソリストに昇格することが決まっているんですね。

海外レポートでは、やはりハンブルク・バレエの「バレエ・リュス100周年記念特別公演」のレポートが貴重でした。「ニジンスキー」ではスタニスラフ役で、服部有吉さんがゲスト出演し、産休に入っていたアンナ・ポリカルポヴァがロモラ役で復帰。ニジンスキー・コレクションの展覧会についても紹介されていました。その服部有吉さんのインタビューも後ろの方に掲載されています。2010年のバンクーバーオリンピックの関連イベントでも仕事をするそうですね。

新書館から、 ルグリのバレエ人生を記録した本「パリ・オペラ座のマニュエル・ルグリ」が発売されるとの広告が載っていました。オペラ座への思い、自ら選んだ忘れがたい10大ステージ、そしてルディエール、プラテル、ゲラン、モーランら縁の深いダンサーやコリオグラファーが語る素顔、などが載っているそうです。

http://fairynet.co.jp/SHOP/9784403320323.html

また、同じく新書館から、スターダンサーズ・バレエ団の「シンデレラ」のDVDが発売されるとの広告も。こちらは8月5日発売です。この舞台は観たことがないのですが、とても評判がいいんですよね。今年の公演を収録したもののようで、林ゆりえさんと福原大介さんが出演しています。

公演の広告では、金田・こうのバレエアカデミーの「ロミオとジュリエット」の公演告知があり、かなり豪華なゲストが出演します。
ジュリエット:金田あゆ子 ロミオ:高岸直樹 マキューシオ:大嶋正樹、ベンヴォーリオ:貝川鐵夫
8月26日(水)18:30~ゆうぽうとホール

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2009年 08月号 [雑誌]DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2009年 08月号 [雑誌]

新書館 2009-06-27
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余談ですが、ダンスマガジンって、海外のバレエ団にはかなり早く発送しているみたいで、日本に住んでいる私よりも早く最新号を手にしたって聞きました。(載っているから送っているって訳ではないみたいで、毎号送っているんですね)そして、自分たちについての記事が載ったかどうか、みなさん気にしているんですよね。紙媒体だと、どうしても校正だの印刷だので最新の情報が載らないのは仕方ないですよね。

2009/06/26

ABTの秋シーズンとイザベル・ゲラン/「シルヴィア」サイト

現在、ABTのMETシーズンは「白鳥の湖」が上演中ですが、秋のシーズンが発表されました。(まだオフィシャルには記載なし)

今年の秋は、いつも公演を行うシティセンターが改装工事中のため、リンカーン・センターのエイヴァリー・フィッシャー・ホールという普段はニューヨーク・フィルが使っている劇場での上演となります。

10月7日から10日までの4日間という短いシーズンですが、このほかに、10月2日から4日まで、 Richard B. Fisher Center for the Performing Arts at Bard Collegeという劇場での公演があるとのことです。こちらは、マンハッタンから90キロ離れたNY州のHudson Valleyにある劇場です。

3つの新作が予定されており、一つは、アレクセイ・ラトマンスキーの振付作品、それからNYCBのバンジャマン・ミルピエ振付作品、そして女性振付家Aszure Barton(バリシニコフ・アーツ・センターの常任アーティストだそうです)の作品とのこと。

また、上演される作品の一つに、ジェローム・ロビンスの「アザー・ダンシズ」がありますが、こちらの振付指導を行うのは、元パリ・オペラ座のエトワール、イザベル・ゲランなんです。久しぶりに名前を聞く気がしますが、お元気なんですね。

*******
ABTでは、「白鳥の湖」の次に「シルヴィア」が上演されるのですが、「シルヴィア」の特設サイトができていました。
http://www.abt.org/sylvia/

あらすじ、フレデリック・アシュトンやレオ・ドリープについて、フォトギャラリーなどがあるのですが、面白い企画だな、と思ったのはFun For Kidsと称して、「シルヴィア」の舞台写真のジグソーパズルがネット上で楽しめるというコンテンツ。
http://www.abt.org/sylvia/kids.html

7月4日の独立記念日の「シルヴィア」マチネ公演では、大人の同伴者一人につき、4歳から17歳の子供が一人無料で観ることができるのです。正直あまりチケットが売れていないという話もあるようですが。ちなみにこの日のキャストは、パロマ・ヘレーラとマルセロ・ゴメスです。オリオン役は、個人的にABTの若手で一押しのアレクサンドル・ハムジ。長身でハンサムなフランス出身のダンサーです。

2009/06/25

服部有吉さんの活動予定/NHK-BS-hi「名曲探偵アマデウス」7/12出演 Yukichi Hattori in 3D and Alberta Ballet

先日世田谷美術館の「身体展示」でアンケートを書いたところ、服部有吉さんのファンクラブからお知らせが届きました。

まずは、7月12日(日)20:00~20:44のNHK-BS-hi「名曲探偵アマデウス」に出演されるとのお知らせがありました。

第40回 ドビッシー「ベルガマスク」出演「月の光」新作振付ソロを踊られるとのことです。全部は放送されないそうですが、インタビューも流れるそうです。

7月31日~8月2日、池袋 あうるすぽっとでの「3D」公演に続き、

8月3日(月)には、あうるすぽっと 夏のダンス企画「ダンパリ」でのワークショップ&パフォーマンスがあります。
http://www.owlspot.jp/workshop/090507_detail.html
14:00~17:00は服部さん、そして18:30~21:00は辻本知彦さんのワークショップです。

*****
それから、服部さんが所属するカナダ・アルバータ・バレエの出演予定も紹介されていました。
http://www.albertaballet.com/

「ロミオとジュリエット」
10月22日~24日 カルガリー公演
11月6・7日 エドモントン公演

「くるみ割り人形」 フリッツ&くるみ割り人形役
12月10日~13日 カルガリー公演
12月18日~23日 エドモントン公演

2010年
アルバータ・バレエ
再演「Tubular Bells」服部有吉 振付・出演
1月7日~10日 カルガリー公演
4台のピアノと4人のダンサーによるコラボレーション

新作「七つの大罪」原作/ブレヒト 構成・演出・振付:服部有吉
3月25日~27日 カルガリー公演
4月9日~10日 エドモントン公演

短い期間の間に二つも振付作品が上演されるなんて、服部さんの創作意欲は素晴らしいですね!いつかこれらの作品も日本で見られたらいいなって思います。

シュツットガルト・バレエ「じゃじゃ馬ならし」と「オルフェオとエウリディーチェ」のキャスト Der Widerspenstigen Zähmung & Orphée et Euridice

6月も終わりに近づいてきたので、いつも出るのが遅いシュツットガルト・バレエの「じゃじゃ馬ならし」の7月キャストが発表されていました。

http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/spielplan/

Katharina Alicia Amatriain
Petrucchio Jiri Jelinek

Katharina Sue Jin Kang
Petrucchio Filip Barankiewicz

Petrucchio Jason Reilly
Katharina Maria Eichwald

この3パターンのようです。なお、7月11日はBALLETT IM PARKと称して、無料で劇場前の公園にて生中継映像を観ることができるとか。(12日のジョン・クランコ・スクールの公演も同じく生中継されます)

また、少し前ですが、6月27日に初演されるクリスチャン・シュプック振り付け「オルフェオとエウリディーチェ」の初演キャストも発表されています。

Orphée Luciano Botelho
Euridice Alla Kravchuk/Catriona Smith
Amor Christina Landshamer

4 Solopaare
Alicia Amatriain, Oihane Herrero, Myriam Simon, Rachele Buriassi
Nikolay Godunov, Roland Havlica, William Moore, Damiano Pettenella

Suite de l'Amour
Alexis Oliveira
Dimitri Magitov, Tomas Danhel, Mikhail Soloviev, Brent Parolin

この作品は、オペラ歌手や合唱隊が舞台に立って歌うというものになっているとのことで、シュツゥトガルトでは初めての試みだそうです。しかも、ダンサーまでも歌を歌うシーンがあるとか。

クリスチャン・シュプックのインタビュー
http://www.stuttgarter-nachrichten.de/stn/page/2101157_0_9223_--quot-oper-ist-eine-aufregende-kunst-quot-.html

シュプックの作品は、日本では「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」くらいしか知られていませんが、今、ヨーロッパの様々なバレエ団からたくさんの振り付け依頼が舞い込んでおり、2013年まで予定はびっしりだそうです。

「オルフェオとエウリディーチェ」のバレエは、ピナ・バウシュがパリ・オペラ座に振付けたものや、マッツ・エックの作品、そして新国立劇場ではドミニク・ウォルシュの作品が上演されましたね。どのような作品になるのか興味深いところです。

余談ですが、美しい金髪で知られるマリイン・ラドメイカーの今の髪型はボウズです(笑)。「じゃじゃ馬ならし」で復帰すると言っていたのに、出演者の中に名前がないですね。カールスルーエのガラでは無事踊ったようです。

ホセ・カレーニョが2011年にABTを引退 Jose Manuel Carreño announces retirement from ABT in 2011

ダンソマニ日本版さま(いつもありがとうございます)経由のニュースです。

現在新国立劇場の「コッペリア」公演で来日中のホセ・カレーニョ。彼が東京でのインタビューで、2011年にABTを引退すると表明したとの記事が、Danza Balletに出ています。

http://www.danzaballet.com/modules.php?name=News&file=article&sid=2982

2011年以降も、ホセはダンサーとしての活動は続けますが、小品中心となり、古典全幕は踊らなくなるとのこと。たびたび指導者としても来日しており、今後もバレエの教師となる可能性が高いとのことです。

カレーニョは、新国立でのゲスト出演の後は、日本に残り、7月12日には名古屋での公演に出演するそうです。そしてもちろん、8月は世界バレエフェスティバルに出演します。

********
ホセ・カレーニョは世界バレエフェスティバルの常連でもあったし、ABTの来日公演や東京バレエ団へのゲスト出演などで、日本でもすっかりお馴染みのダンサーですよね。その彼が2年後とはいえ、ABT引退とは、時の流れを感じます。去年のABTの来日公演でも、いくつかの出演をキャンセルしたものの、美しいピルエット、安定したサポートで気品溢れるパフォーマンスを見せてくれました。2007年の「ダンシング・フォー・エイズ・オーファンズ」公演で、スージン・カンと踊った「ジゼル」の2幕のパ・ド・ドゥは本当に感動的でした。また、世界バレエフェスティバルのガラ公演での華麗なポアントワークとユーモア溢れるノリノリの演技も、忘れがたいものがあります。

今週末には、ニーナ・アナニアシヴィリのABT引退公演も行われます。世代交代の時期が来ているのですね。もしかしたら、世界バレエフェスティバルへの彼の出演も、今回が最後になるのかもしれませんね。

とりあえず、28日のタマラ・ロホとの「コッペリア」を楽しみにします。(26日の初日は売ってしまいました)

2009/06/23

11月 コジョカル&マックレー、東京バレエ団「くるみ割り人形」 Cojocaru & McRae in Tokyo Ballet's Nutcracker

バレエの祭典の来期会員宛に、11月のコジョカル&マックレー出演の東京バレエ団「くるみ割り人形」鑑賞日のお伺いと追加席優先申し込みの案内が来ていました。

また、公演のオフィシャルサイトもできていました。
http://www.nbs.or.jp/stages/0911_nuts/index.html 

出演:アリーナ・コジョカル、スティーヴン・マックレー(ロイヤル・バレエ)

公演日
2009年11月20日(金)7:00p.m.
2009年11月21日(土)6:00p.m.
2009年11月22日(日)3:00p.m. 

会場:東京文化会館

入場料(税込)
S ¥13,000、A ¥11,000、B ¥9,000、C ¥7,000、D ¥5,000、E ¥3,000
ペア券、親子ペア券(お子様が半額/8/29(土)よりNBS電話予約のみで受付)もあります。

2009年7月25日(土) 10:00a.m.~発売

[名古屋公演]
12月4日(金)
愛知県芸術劇場
お問い合わせ:052-241-8118

[岩国公演]
12月12日(土)
シンフォニア岩国
お問い合わせ:0827-29-1600

新プリンシパルのスティーヴン、怪我から復活したアリーナ、久しぶりの日本でのお目見えです。アリーナはその前にバレエフェスの全幕「眠れる森の美女」もありますが。

11月22日は、神奈川県民ホールでのマリインスキー・バレエの「白鳥の湖」もありますね。

****

東京バレエ団といえば、世界バレエフェスティバルの全幕プロのキャストも発表されています。
http://www.thetokyoballet.com/schedule/

バレエフェスのガラ公演のチケットは当たりました。小額ですがNBSに寄付をしているので、当たったのかもしれません。でもチケット代、高いですよね。あれだけのメンバーだから、高いのは当然かもしれませんが。


追記
東京バレエ団のブログで、世界バレエフェスティバルの全幕プロのリハーサルの様子が、森志織さんのレポートでアップされています。とても楽しげな雰囲気です。そして、みんなでYumikoのレオタードを一斉に新調したんですね。さすがにプロのバレリーナが着るとカッコいいです。「眠れる森の美女」でシンデレラを踊る渡辺理恵さんの脚が、きれいですね。
http://www.thetokyoballet.com/blog/

2009/06/22

ロイヤル・オペラハウスA World Stageでセルゲイ・ポルーニンをフィーチャー Sergei Polunin featured on ROH Site

ロイヤル・オペラハウスのサイトでは、A World Stage と題して、季節ごとに一人のアーティストをフィーチャーしています。現在は、セルゲイ・ポルーニンをフィーチャー。まだ昇進のアナウンスがされていませんが、このサイトではファースト・ソリストと紹介されているので、昇格が決まっているのでしょう。

http://www.roh.org.uk/aworldstage/#/sergeipolunin

故郷ウクライナでの荒涼として美しい自然の中で、彼が跳躍する様子を撮影した映像、リハーサル映像、新聞での批評、iPodの彼のプレイリスト、そしてプロフィールが掲載されています。

セルゲイはまだ19歳なのですね!ローザンヌ・コンクールで金賞に輝いたのも記憶に新しいところではあるのですが。彼はウクライナで3歳でバレエを始めるも、途中で体操選手を目指し、9歳でバレエに戻り、家族でキエフに引っ越してキエフバレエ学校に入学します。体操の訓練をしていたので、バレエ向きの身体ではないと言われながらも、「カルメン」を観たことでバレエを本格的に志し、人一倍努力しました。学費は、父親がポルトガルで、祖母がギリシャで出稼ぎをして賄いました。12歳の時に、母親が彼はレニングラードで学ぶべきだとワガノワを受験させ、合格したものの、学校のアカデミックな雰囲気に恐れをなして彼は入学しませんでした。

13歳の時に、今度はロイヤル・バレエスクールへビデオを送り、かなり時間がかかった後に入学を許可されたものの、3万2000ポンドもの学費がかかると聞いて驚かされます。ロイヤル・バレエスクールへの入学を断念しようとしていたところ、幸運が舞い込みます。セルゲイのバレエ教師の犬が、彼の英語教師の犬を追いかけ始め、二人は話し合い、ついに彼にスポンサーを見つけたのです。

13歳でロイヤル・バレエスクールの第5学年に入ったセルゲイは、最年少で唯一の外国人でした。寮では6人部屋でとても楽しくて、1週間たったらもうホームシックも忘れてしまったとのことです。ウクライナのバレエ学校とは違ってプレッシャーをかけられることもなく、生徒の自主性に任されていたことで、自分から努力して強いダンサーになることができたと彼は言います。

YAGPではディアナとアクテオン、くるみ割り人形、そして自身で振付けたコンテ作品を踊ってグランプリを受賞し、ローザンヌでは、バスを間違えて本番に遅刻しそうになりながらも、金賞を受賞します。

アッパースクールの1年目の終わりに、セルゲイはロイヤル・バレエでの「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング」の役を掴み、それが大きな飛躍のきっかけとなりました。その役を得るのに1年近くかかりましたが、ついに得られて大きな達成感を味わったそうです。2007年にはロイヤル・バレエに入団し、3年目の今年、彼はファースト・ソリストに昇進しました。

来シーズン、セルゲイは「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」に主演する予定だそうです。
http://www.roh.org.uk/discover/artistdetail.aspx?id=1422

男性スターがほぼ不在のロイヤル・バレエにあって、彼は期待の星ですね!

ベルリン国立バレエの新作「Das flammende Herz」

6月20日初演のベルリン国立バレエの新作「Das flammende Herz」のリハーサル写真が、AFPのサイトにアップされていました。

http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2613250/4284888

この作品については、ベルリン国立バレエのオフィシャルを参照すると、
http://www.staatsoper-berlin.org/spielplan/detailansicht.php?id_event_date=189759&id_event_cluster=66846&id_language=2

18世紀の著名なロマン派詩人パーシー・ビッシュ・シェリーの疾風怒濤の人生を描いた作品です。パーシー・シェリーは、美貌と才能で多くの女性を魅了しました。が、その奔放で不道徳とされる生活から激しく批判され、後に後妻となったメアリ・シェリーと新大陸へと駆け落ちをして、友人バイロン卿を頼ります。やがてヨーロッパに戻りますが、放浪の生活を送ります。メアリ・シェリーは、後ほど「フランケンシュタイン」を書いて歴史に残る小説家となりましたが、才能に溢れていたパーシー・シェリーの作品はそれほど著名ではありません。先妻ハリエットは入水自殺をし、パーシーも船に乗っているときに嵐に襲われて水死します。

こちらでも、リハーサルの写真を見ることができます。
http://www.picturesberlin.de/staatsballett_flammende_herz/index.html

振り付けはパトリス・バール、初演キャストは、パーシー・シェリーはもちろんウラジーミル・マラーホフ、メアリはポリーナ・セミオノワ、入水自殺をする最初の妻ハリエットにナディア・サイダコワ、メアリの妹でバイロンの子供を産むクレアにベアトリス・クノップ、というキャストです。衣装のデザインはルイザ・スピナッテリです。2時間40分という全幕作品に仕上がっています。

Percy Shelley Vladimir Malakhov
Mary Wollstonecraft Polina Semionova
Harriet Westbrook Nadja Saidakova
Harriet Grove Iana Salenko
Jefferson Hogg Dinu Tamazlacaru
Claire Clairmont Beatrice Knop
Lord Byron Martin Buczkó
Teresa Guiccioli Elisa Carrillo Cabrera
Jane Williams Elena Pris

Choreography and Staging Patrice Bart
Music Felix Mendelssohn Bartholdy
Costumes Luisa Spinatelli

気のせいか、最近マラーホフは実在の人物の伝記的な作品を演じることが多くなってきたようですが、とても面白そうな題材ですね。なかなかベルリン国立バレエの作品を日本で観る機会がないので、そんなに遠くないうちに(マラーホフがまだ現役のうちに)来日して欲しいものです。

2009/06/21

ナタリー・ポートマンがバレエ界を舞台にした映画に主演?Natalie Portman Is A Black Swan

ミッキー・ロークが主演してゴールデングローブ賞に輝いた映画「レスラー」が現在日本で公開中です。この映画の監督ダーレン・アロノフスキー(「π」「レイクエム・フォー・ア・ドリーム」)の次回作は、ニューヨークのバレエ界を舞台にしたスーパーナチュラル・スリラー「Black Swan」に決まったそうです。

http://eiga.com/buzz/20090617/4

Hollywood Reporterによると、同作のヒロインにはナタリー・ポートマンがほぼ決定。撮影は2、3カ月以内にニューヨークで始まるとのことです。
http://www.hollywoodreporter.com/hr/content_display/film/news/e3iecfa450e38f03b776f13cac7f05baa3b

ニューヨーク・シティ・バレエを舞台に、ベテランのバレリーナ(ナタリー・ポートマン)が、もう一人のバレリーナと激しいライバル争いをするさなか、超常現象に巻き込まれるというスリラー作品。ライバルのバレリーナは、実は超常現象が引き起こした幻なのではないかという内容で、バレエ版「アザース」(ニコール・キッドマン主演のスリラー)のような作品だそうです。

「レスラー」の成功を受けてユニバーサルから製作のゴーサインが出たばかりで、詳細は不明なのですが、NYCBが製作に協力しているようです。

ナタリー・ポートマンはとても上手い女優だと思いますが、小柄で、あまりバレリーナ的な体型ではないですよね。バレエのシーンがあるとしたら、もちろん吹き替えになるんでしょうね。imdbによると、バレエの経験はあるようですが。

「レスラー」はミッキー・ロークの本格的な復活作ですし、評判がいいので、ぜひ観に行きたいです。

デヴィッド・ホールバーグのオフィシャルサイト Official Site of David Hallberg

ABTのプリンシパル、デヴィッド・ホールバーグのオフィシャルサイトがオープンしたと、友達に教えていただきました。

http://www.davidhallberg.com/index.html

日記もありますが、まだ一日しか書いていなかったりします。ギャラリーでは写真をたくさん見ることができますが、ホントに彼は美しいですね~。脚のラインの美しさも絶品です。

現在METで行われているABTのシーズンでも、彼の踊りは大絶賛を浴びており、特に「ラ・シルフィード」での脚捌きが素晴らしいとのことです。辛口で知られるNew York Timesのアレイスター・マコーリー氏も、彼に関してはいつも絶賛していますね。今のABTを牽引しているのは、マルセロ・ゴメス、エルマン・コルネホ、そしてデヴィッドの3人だと個人的には思います。

6/19 シアターコクーン「桜姫」現代版

Bunkamura20周年記念企画
桜姫
原作 四世 鶴屋南北
脚本 長塚圭史
演出 串田和美
出演 大竹しのぶ(マリア(桜姫)/墓守)、笹野高史(墓守他)、白井晃(セルゲイ(清玄))、中村勘三郎(ゴンザレス)、古田新太(ココージオ(残月))、秋山菜津子(イヴァ(長浦))、佐藤誓(イルモ(入間悪五郎))

http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_09_sakura_gendai.html

P1040093s

鶴屋南北による歌舞伎の「桜姫」は以下のような物語である。

物語は、僧清玄(せいげん)と稚児(ちご)の白菊丸(しらぎくまる)による江の島での心中から始まります。
1人命を取り留め、17年後に高僧となった清玄は、出家を望んで寺にやってきた吉田家の息女桜姫(さくらひめ)が、実は白菊丸の生まれ変わりだと知ります。桜姫は、強盗に入った釣鐘権助(つりがねごんすけ)の子を生み、今でもその権助を忘れられない罪の深さを償おうと、出家を思い立ち寺を訪れたのでした。しかし桜姫は、偶然桜谷の草庵で恋しい権助と再会します。
この後、桜姫に白菊丸の面影を追う清玄と、密通がばれて吉田家を追われた桜姫が、めまぐるしく変転していきます。

出典:日本文化振興会「歌舞伎への誘い」より

もともと不条理に満ちた物語を、時代設定は不詳の、南米と思しき国に移して翻案。混沌として、まるで芝居小屋の中で繰り広げられているかのような猥雑な雰囲気に包まれた舞台には、斜めに十字架が突き刺さっている。出演する俳優たち自らが楽隊として音楽を演奏し、さながらフェリーニの映画のよう。

高僧清玄は、ここでは大きな十字架を担ぎながら布教し、貧しき者に分け与えて"聖人"と称されるセルゲイ神父。だが、一方でその十字架を担ぐ姿は一種のパフォーマンスであり、名声欲しさにやっていることと批判を受けている。彼は、16年前に心中を図り一人先に逝った少年ジョゼ(白菊丸)を忘れられない。そんな時に、生まれた時から一度も左の掌を開けなかった16歳の少女マリアが、セルゲイの祈りにより奇跡的に回復。彼女の掌の中には青い珠が。それは心中を図った時にジョゼが手にしていたのと同じもの。セルゲイはマリアをジョゼの生まれ変わりだと信じる。大金持ちで教会に大口の寄付をしているイルモに嫁ぐ予定のマリアにセルゲイは同行する。ところが、彼女の寝室に、悪党ゴンザレスが忍び込む。実は一年前もゴンザレスはマリアのところに侵入し、彼女の処女を奪ったのだが、マリアは初めての男を忘れられず、人知れず子供まで産んでいた。マリアの寝室に何者かが侵入したとイルモが駆けつけると、マリアは侵入者はセルゲイで、赤ん坊もセルゲイの子供だと嘘をつき、二人はイルモの追っ手を逃れて別々に逃亡する。セルゲイは、これは自分に課せられた宿命だと十字架を捨て、赤ん坊を抱えて放浪し、この世の果て、狂気と貧困が渦巻く汚濁の地、崖下に流れ着く。いとしいジョゼ=マリアの姿を追い求めながら。一方ゴンザレスと一緒になったマリアは、娼婦として生計を立てるようになった…。

舞台装置と美術がすごく面白い。舞台脇の席が移動する意味はあまりなかったと思うけど、床にぽこっと穴が開いてそこから人がモグラのように出てきたり、小道具を(時には赤ん坊まで)落としたり、シンプルなセットだけど工夫が凝らされている。電車の車両を表現させるのに、車輪のついた荷台を人力で動かしてみたり、遊園地の列車のようなおもちゃっぽい列車に乗って登場したり。マリアが客を取っているのは、軽トラ(バイクだったかな?)の荷台で、キム・ギドク監督の「悪い男」のラストシーンみたいだった。

しかしひときわ鮮烈だったのは、セルゲイが背負っている十字架で、彼の身長よりも高くて重そうなのだ。この十字架に象徴性を持たせようと演出家と脚本家は考えたのだと思う。この十字架を背負っている時のセルゲイは、一種のトリックスターみたいな感じで、聖人ぶっていて、実際に善行は行ってはいたけれど、あまりの十字架の重さに行動範囲を自ら狭めてしまい、もっとも貧困が渦巻いている崖下には足を踏み入れなかった。マリアの嘘によって追放の身となり、十字架を捨てたセルゲイは、聖職者であることを忘れ、貧しき者たちのことより自分の妄執に取り憑かれて狂気じみた存在となる。彼は元の側近だったココーシオと女中イヴァによって毒殺されそうになるが、埋められた土の中から這い出て、生きているのかいないのかわからないような姿に成り果てても、執念でジョゼの姿を求める。のっぺらぼうの人形をジョゼだと思い込んで話し掛ける彼の姿は哀れで滑稽だ。ジョゼに再び会って、今度は一緒に死にたい、その一念だけが、生と死の間でおぼろげになった彼を動かしている。セルゲイ役の白井晃さんは、よく通るいい声をしており、聖と俗の間で揺れて苦悩する受難の聖職者を好演していた。

マリアのキャラクターは、本当に何を考えているのか全然わからない。この「桜姫」という原作の不条理の原因はすべて彼女が作っている。16歳の少女役が違和感なく演じられてしまう、大竹しのぶのとらえどころがなく、超越した存在感はすごい。しかも、大竹しのぶは、冒頭に登場する「墓守」という狂言回し的な役まで演じているし、太鼓を抱えて楽団の一員にも変身する。突然劇中でマリアが老婆のようになったりと年齢も変幻自在。清純な姫が自分の欲望に素直に生きる女へと変貌していく姿を、鶴屋南北が江戸時代に描いていたというのもすごい。

もう一人の主人公は、悪党ゴンザレス。欲望のままに生きてきて、邪魔者はすべて殺してきた、悪の匂いと生命力に満ち満ちた男。だが、そんな彼も、マリアと生活するようになってから急に色あせたように魅力を失っていく。セルゲイが悪の根源を彼の中に見出し、彼を道連れにマリアと3人で死のうとした時に、ゴンザレスは一人、みっともないほどの生への執着を見せる。そこで、聖を代表するセルゲイと、悪の権化であるゴンザレスが表裏一体の存在であることが示される結末へと至るのだが、この終わり方がどうもすっきりしない。聖と俗、善と悪が実のところはさほどかけ離れたものではないというのはわかるのだが、そこへ至るまでに説得力のあるダイアローグが抜け落ちているのだ。そして中村勘三郎はアクの強い役作りはお手の物なのだが、台詞が聞き取りづらいところがかなりあって、発声の優れた白井さんと演じるには不利な面があったと思う。長髪に浅黒いメイクでいかにも悪人的な姿はいかしていたのだが。

原作では、桜姫は姫の誇りを取り戻して権助、さらにはわが子をも手にかけて御家再興を果たすというのが結末だ。こちらの「桜姫」では、マリアがそこまでの強いキャラクターを持たされていないために、まったく違った終わり方にしたのだろう。だけど、原作の設定をもう少し保っていたほうが、作品全体を覆う混沌とした生命力や諧謔性が生かされたのではないだろうか。

ココーシオの古田新太、イヴァの秋山菜津子はそれぞれ見せ場がたっぷりあって、芸達者振りを見せてくれた。特に秋山さんが見世物小屋のマングース女を演じる様子は妖しくユーモアたっぷりで、最高だった!見世物小屋家業に移ってからぶくぶくと太ったココーシオの、肉襦袢を着用しての古田さんの怪演ぶりも可笑しくて哀しい。彼ら二人は、どちらかといえば普通の人間だったからこそ、最も悲劇的な終わりを迎えなければならなかったのだろう。

狂言回しの墓守をはじめ、ひとり8役も演じた笹野高史をはじめ、本当にうまい俳優を集めており、時代も国籍も超越した怪しさたっぷりの雰囲気はすごく魅力的だった。だけど、それだけにラストをうまく纏め上げられなかったのが惜しい作品だった。この猥雑で聖と俗が代わる代わる顔を覗かせる設定、数奇な運命の大河ドラマ、そして不条理さ。ガルシア=マルケスやマヌエル・プイグ的だなと思ったら、脚本の長塚圭史はやはり、めちゃめちゃガルシア=マルケスを意識していたのだとプログラムに書いてあった。

そして、この現代版「桜姫」を観た人だったら、誰だって歌舞伎の「桜姫」を観たいと思うだろう。江戸時代の歌舞伎の世界を、国を移して現代版にするという試みそのものはとても面白く、多少失敗したところがあったとしても果敢に挑戦して新しいものを作ろうとした心意気は賞賛されるべきである。

歌舞伎の「桜姫」は、この現代版の上演が終了した7月よりシアター・コクーンで上演されるのだが、チケットは現時点ではすべてソールドアウト。うーん。

2009/06/20

7/25 「Esprit~ローラン・プティの世界」舞台放映

草刈民代さんを周防正行監督が撮影した番組の放映予定は決まっていましたが、舞台の本編放映についても、発表されました。

http://www.nhk.or.jp/bs/hvstage/

ハイビジョンステージ 草刈民代 ファイナル公演「Esprit ~エスプリ~ローラン・プティの世界」

BShi 7月25日(土) 午前9:00~11:30

●25日(土) 草刈民代 ファイナル公演       
「Esprit ~エスプリ~ローラン・プティの世界」

(2009年4月/オーチャードホール)
【振付】ローラン・プティ
【企画・プロデュース】草刈民代
【出演】草刈民代、タマラ・ロホ、ルイジ・ボニーノ、マッシモ・ムッル、
リエンツ・チャン、イーゴリ・コルプ
【演目】ビゼー:「アルルの女」より
チャイコフスキー:「白鳥の湖」1幕2場より
フォーレ:「プルースト~失われた時を求めて~」より  ほか


放映時間が2時間半なのですが、全編放映してくれるのかしら?それがちょっと気がかりです。「プルースト~失われた時を求めて」は「ヴァントイユの小楽節」なのか、「モレルとサン・ルーのパ・ド・ドゥ」なのか、どちらなのでしょうか?両方やってくれるのが一番ですが。(←教えていただき、解決しました。フォーレなので「モレルとサン=ルー」です)

あと最近NHKでは、ハイビジョンでの放映が多いようですが、地上波でも放送して欲しいですよね。

草刈さんのドキュメンタリーの方はこちら

BShi  7月26日(日) 午後10:00~11:30
http://www.nhk.or.jp/bs/hvsp/#housouyotei

■ハイビジョン特集 ワンダーワンダー
最後のシャル・ウィ・ダンス 夫が見つめたバレリーナ草刈民代の挑戦

圧倒的な存在感と美しさで観客を魅了するバレリーナ・草刈民代さんが、今年4月バレエ界を引退した。惜しむ声が多い中、草刈さんが引退を決めた理由は、身体が思うように動かず、納得いく踊りができなくなったことが原因だった。しかし、自らがプロデューサーも務めた引退公演では、これまで一度も踊ったことがない作品を取り入れるなど、草刈さんは最後まで妥協することなくバレエの世界と対峙していく。そんな草刈さんの姿を一番身近で見つめてきたのが、夫で映画監督の周防正行さん。妻の踊る姿を何よりも美しいと感じる周防さんは、世界中で公演や稽古を行う草刈さんに同行し、その姿をビデオカメラに収めてきた。そこには、夫だからこそ撮れた妻・草刈民代の貴重な素顔や本音が記録されていた。テレビ初公開の周防さんの秘蔵映像を織り交ぜながら、日本屈指のバレリーナ・草刈民代の引退までの日々を追ったドキュメンタリー。

ジェイソン・レイリーのシュツットガルト最後の公演/シュツットガルト・バレエ アニュアル Jason Reilly says good-bye to Stuttgart

シュツットガルト・バレエのオフィシャルに、ジェイソン・レイリーのシュツットガルト・バレエでの最後の出演がアナウンスされていました(涙)。

「じゃじゃ馬ならし」のペトルッチオ役、7月25日が最終の出演となるようです。パートナーは、マリア・アイシュヴァルト。 6月19日、28日、7月21日と25日、あと4回の出演です。

ジェイソン・レイリーの移籍のお知らせ
http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/start/news_detail.php?id=103

ジェイソン・レイリーは、シュツットガルト・バレエに12年間在籍し、2003/2004シーズンにプリンシパルに昇進しました。国際的なスターであるジェイソンが、家族のそばで暮らしたいという希望をかなえるため、このたび出身地であるカナダ、トロントのナショナル・バレエ・オブ・カナダに迎えられることになったのです。地元出身のスターが帰ってくるというニュースは、カナダのメディアの熱狂を呼びました。

1997年に入団した彼の代表的な役柄としては、「オネーギン」「ロミオとジュリエット」(ジョン・クランコ)、オテロ(ジョン・ノイマイヤー)のタイトルロール、「白鳥の湖」のジークフリート王子、「じゃじゃ馬ならし」のペトルッチオ、「カルメン」の闘牛士(すべてクランコ版)、「ジゼル」のアルブレヒト、「眠れる森の美女」(マリシア・ハイデ)のデジレ王子とカラボス、ノイマイヤー振付の「椿姫」のガストンとデ・グリュー、「欲望という名の電車」のスタンリー・コワルスキーがあります。

また、多くの振付家が彼のために作品を創りました。2008年には、ケヴィン・オデイが「ハムレット」のタイトルロールを、そしてマウロ・ビゴンゼッティが「若者のすべて」のシモン役を彼に振付けました。

さらに主要な役としては、「シンフォニー・インC」の第三楽章、「四つの気質」(以上バランシン)、「ゲテ・パリジェンヌ」(モーリス・ベジャール)、「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング」(ジェローム・ロビンス)のマジェンダとブラウン、「春の祭典」(グレン・テトリー)の生贄などがあります。バランシンの「セレナーデ」と「ストラヴィンスキー・ヴァイオリン・コンチェルト」、ビゴンゼッティの「カジミールの色」、ロビンスの「牧神の午後」、イリ・キリアンの「NO More Play」なども踊りました。

ジェイソンは、海外ツアーやゲスト出演でアレッサンドラ・フェリ、イヴリン・ハート、グレタ・ホジキンソンなどのスターのパートナーとして踊りました。2004年1月には、ジョン・ノイマイヤーの「欲望という名の電車」のカンパニー初演で、アレッサンドラ・フェリと共演しています。イヴリン・ハートは2004年の舞台生活30周年記念の「ロミオとジュリエット」のパートナーとして彼をカナダへ招聘し、2006年に彼女が引退した時のパートナーにも彼を指名しました。2006年10月には、英国ロイヤル・バレエでの「ヴォランタリーズ」(グレン・テトリー振付)にゲスト出演し、2007年にはナショナル・バレエ・オブ・カナダの「じゃじゃ馬ならし」に客演しました。

ジェイソンは、2006年にはドイツダンス賞「未来」賞を受賞しました。

*****
ジェイソン・レイリーがシュツットガルト・バレエを去りカナダに戻るというニュースは、ずいぶん前に発表されていましたが、改めてこのお知らせを見ると実感が伴い、寂しさが募ります。3年に一回のペースで来日公演を行っているシュツットガルト・バレエと違い、ナショナル・バレエ・オブ・カナダは来日しませんし、「オネーギン」や「ロミオとジュリエット」といったクランコ作品での彼が素晴らしかっただけに、シュツットガルト・バレエで観られなくなるのが悲しいですね。しかし、彼自身の希望ということなので、新しい門出を祝福しなければなりません。また、ゲストやガラなどで日本で観られる機会が在ればよいのですが。

*****
もう一つ、シュツットガルト・バレエ関連のニュースで、STUTTGARTER BALLETT ANNUAL 30/31(イヤーブック)が発売されます。2006/2007および2007/2008シーズンの写真が収められているもので、248ページ、250枚ものカラー写真が掲載されたものとなるそうです。多くの写真が、このイヤーブックで初公開されるものだそうで。お値段は39ユーロです。

7月3日の18時(「じゃじゃ馬ならし」の開演前)に、シュツットガルト州立劇場にて、芸術監督リード・アンダーソンとダンサーたちが出席した発表会があるようです。

http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/start/news_detail.php?id=102

イヤーブックのごく一部のプレビューが
http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/start/annual-1.htm
で見られます。

2005/2006シーズンのイヤーブックは持っているんですが、とても豪華で美しい本なのですよね。

2009/06/19

今夜NHK-BSでバレエリュス特集番組

友達に教えてもらったのですが、今日のNHK-BS1「きょうの世界」という番組の夜11時台でバレエリュスの特集を放送するそうです。

「よみがえる伝説のバレエ団」というタイトルで、百周年記念イベントなどをNHKベルリン支局長がレポートするそうです。

今知ったので録画予約していないや…。

追記:
ある方のご好意で無事観ることができました。また感想は後日書きますが、概要を。ハンブルク・バレエの「ニジンスキー」(アレクサンドル・リアブコ、ジョエル・ブーローニュ他出演)の映像の一部、ハンブルクでのニジンスキーの絵画展(ノイマイヤーのコレクション)、ノイマイヤーのインタビュー、首藤康之さん出演の東京バレエ団「牧神の午後」、NBAバレエ団のバレエ・リュスの夕べより「ダッタン人の踊り」、兵庫での薄井憲二さんコレクションと芳賀直子さんのコメントなどが登場しました。10分ちょっとですが、充実した内容でした。

2009/06/18

ENBのバレエ・リュス・プログラムと「アポロ」の衣装 ENB Ballet Russes Tribute

またまたバレエ・リュス100周年関連のエントリとなりますが、イングリッシュ・ナショナル・バレエがサドラーズ・ウェルズでバレエ・リュスプログラムを上演中です。
http://www.ballet.org.uk/ballets-russes/ballets-russes.html

早速ballet.coに、舞台写真がアップされています。噂のカール・ラガーフェルドデザインによる「瀕死の白鳥」も。この「瀕死の白鳥」の衣装、襟があったりして観た人の評判はあまりよくないようですが。

プログラム1(「アポロ」「薔薇の精」「瀕死の白鳥」「牧神の午後」(ドーソン振付)「シェヘラザード」)
http://www.ballet.co.uk/gallery/jr_enb_ballets_russes_swt_0609

プログラム2 (「レ・シルフィード」「薔薇の精」「瀕死の白鳥」マクミラン振付「春の祭典」)
http://www.ballet.co.uk/gallery/jr_enb_ballets_russes_2_swt_0609
(こちらの「瀕死の白鳥」は違った衣装です。「春の祭典」、高橋絵里奈さんが選ばれし乙女を踊っていますね。)

あと、「アポロ」の衣装も、カール・ラガーフェルドがデザインし、こちらのほうはモダンでとても素敵です。

「アポロ」の衣装はもともとラガーフェルドが1997年にモンテカルロ・バレエのためにデザインしたのですが、今回少し改訂を加えたとのこと。この「アポロ」の衣装を着用したアグネス・オークスとトマス・エデュアを撮影するラガーフェルドの写真が載っている記事がありました。この二人は、シーズン終了後に引退します。

Karl Lagerfield: Designs for ballet
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/theatre-dance/features/karl-lagerfield-designs-for-ballet-1705927.html

プログラム1では、ドレスデン・バレエの専任振付家デヴィッド・ドーソンの振付による新作「牧神の午後」が、ドレスデン・バレエからゲストを迎えて上演されたそうで、舞台の上にピアノを据え付けて演奏されたそうです。スカートを穿いた両性具有的な男性二人による踊りは、ナルシスとその鏡像を思わせるもので、非常に評価が高い作品となったようです。

ガーディアン紙の批評
http://www.guardian.co.uk/stage/2009/jun/18/ballet-dance-russes-review


ガーディアン紙では、フォトスライドショーも掲載されています。こちらの写真も本当に美しいですね~。
http://www.guardian.co.uk/stage/gallery/2009/jun/18/russes-english-national-ballet?picture=349042536

CHANELとハンブルク・バレエのバレエ・リュスコラボレーション Chanel and Hamburg Ballet Fashion Shooting

今年はバレエ・リュス100周年、ということで、バレエ・リュスと縁が深いCHANELは、ENBの「瀕死の白鳥」の衣装に続き、今度はハンブルク・バレエとコラボレーションしました。

ドイツのファッション誌Brigitteで、カール・ラガーフェルドがデザインしたシャネルのモードを、ハンブルク・バレエのエレーヌ・ブシェとシルヴィア・アッツオーニが着用し、フォトセッションの様子が雑誌のサイトで紹介されています。カール・ラガーフェルドのコレクション“Paris Moscow” は、シャネルのロシアの伝統を受け継いだものです。

http://www.brigitte.de/luxus/mode/chanel-mode-ballett-1023853/

ここではグラビアの撮影風景と、エレーヌ・ブシェ、シルヴィア・アッツオーニのインタビューの動画を見ることができます。撮影風景の写真スライドショーも。エレーヌとシルヴィアは英語でインタビューに答えています。エレーヌの髪に挿した飾りは、シャネルの代表的なモチーフ、カメリアです。毛皮の帽子やビーズの刺繍などのロシア風モチーフが素敵ですね。エレーヌがスライドショーの中で着用しているドレスの刺繍には130時間も要しており、手袋にまで金糸の華麗な刺繍が施されています。

このサイトの記事によれば、ココ・シャネルとロシアの縁は、一人のロシア人Dimitri Pawlowitschとの恋愛から始まったとのこと。この人は、ニコライ2世の従兄弟で、ロシア革命を逃れてフランスへと渡った貴族の一人だったそうです。シャネルがロシア風の上着や毛皮にインスピレーションを得たコレクションは、大成功を収めました。「私はロシア人に魅せられていました」と後年彼女は述懐しています。

そして、作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーとのロマンスもありました。ココ・シャネルは、ストラヴィンスキーが奢ったウォッカを飲み干して失神したことから、始まったそうです。ストラヴィンスキーは、彼女の別荘でいくつもの夏を過ごし、そしてバレエ・リュスとの縁もここから始まりました。シャネルは、ディアギレフのバレエ・リュスに多額の寄付をしただけでなく、1924年の「青列車」の衣装デザインも行いました。

バレエ・リュスが、バレエにとどまらずファッション、音楽、美術も超一流の人々が参加していたムーヴメントであったことをうかがい知ることができます。日本ではバレエ・リュス100周年なんてまるでなかったかのような扱いですよね…。

ハンブルク・バレエのブログの方にも、撮影の様子がアップされています。
http://www.hamburgballett-blog.de/hamburg_ballett/2009/04/karl-lagerfeld-und-der-geist-der-ballets-russes.html

2009/06/16

DVD「マラーホフのプレミアム・レッスン2『白鳥の湖』 Malakhov's Premium Lesson Swan Lake

この間東京バレエ団の「ジゼル」を観に行ったときに、ついつい買ってしまったDVD。「ジゼル」を観に行ったのに、シリーズ最初の「ジゼル」じゃなくて、なんで「白鳥の湖」を買ったのかは、自分でもよくわからない(笑)。

ウラジーミル・マラーホフが東京バレエ団の佐伯知香さんと長瀬直義さんに「白鳥の湖」の2幕のアダージオを教えるという趣向。レッスンごとに、2002年の「マラーホフの贈り物」での、マラーホフとジュリー・ケントが共演した「白鳥の湖」の映像が、模範演技として紹介される。この映像が思いのほかたくさんあって、得した気分。

マラーホフの指導は非常に丁寧で、優しくダンサーに語りかけている。基本的には英語で指導を行い、通訳の方が訳しているのだけど、時々「左!」とか「前に」とか「難しいね」と達者な日本語も飛び出す。マラーホフ自ら手本を見せてくれていることも多いのが、嬉しい。

生徒役の佐伯さんは非常に呑み込みが早いし、基礎がきちんとできているのがわかる。みるみるうちに上達していっているのが見える。彼女がオデットを踊る日も、そう遠くはないだろう。やや小柄だけどプロポーションに恵まれているし、愛らしい容姿の上、テクニックもある。

Lesson1 オデットの登場(第2幕より)
2幕でオデットが登場して、自分の身の上物語をマイムで王子に切々と語る場面。毎回、生徒の二人が演じて見せるたびに、その動きを台詞でマラーホフが説明してくれる。リハーサルの時には、心情を表現するためにその場面の台詞を口に出しながら演じてみるのも良いというアドバイスをした。「私は白鳥の女王です」と王冠を示すマイムは、観客から見てもしっかり見えるように大きくして、など、なぜそうなのかを教えてくれる。有名なマイムの場面だけでなく、オデットの一つ一つの動きがどういう意味なのかも説明してくれるので、とてもわかりやすいし、バレエを踊る側ではなく観る側である私たちにとっても、面白い。

Lesson2 グラン・アダージオ(第2幕より)
このシーンは、パートナーリングが重要なところ。マラーホフは、ここで王子の役割の重要性を強調していた。2幕はオデットが中心となって観客の視線を集めているので、王子はいかにオデットを美しく見せるか、オデットを踊りやすくさせるかを第一に考えてサポートしなくてはならない。普段私たちが「白鳥の湖」を観てもなかなか気がつかないけど、王子がどうすればオデットが踊りやすいかというのが判って面白い。「動きが止まらないからアダージオなのだから、ずっと動き続けるように」なるほど!
このアダージオは、テクニックよりもずっとパートナーシップの方が大事だとマラーホフは言う。ピルエットを一回失敗しても観客は忘れてしまうけど、素晴らしいパートナーシップによってドラマティックな舞台を演じることができたら、観客はずっと覚えていてくれる、と。

Lesson3 オデットのヴァリエーション(第2幕より)
ここは、マラーホフが「どんなバレリーナもこのシーンを踊る前は緊張する」という難しいパート。今までのどのパートナーも、ここを踊り終えた後はホッとしているのがわかるそう。そして、ここでマラーホフの美しいお手本がたくさん見られるのだ。白鳥の翼の動きをマラーホフが見せてくれるなんて、ファンにとってはたまらないことだろう。そして、本当にその腕の動きが柔らかく美しいのだ。佐伯さんが踊って見せるのを見て、「もっと柔らかく!」「そんなに脚を高く上げなくていいから、バランスを大事に」とアドバイスする。

映像特典のインタビューも、「白鳥の湖」という作品に対してのマラーホフの考え方がよくわかってとても面白い。彼にとってやはりこの作品で一番重要なのは2幕であるし、オデットの方がずっと重要とのこと。レッスンを通しても、このインタビューを通しても、マラーホフはバレエはドラマだと考え、台詞がない分、腕などの動きでどうやって物語を伝えるのかということを大切に思っているのが伝わってくる。オデットを踊ってみたいと思ったことはありますか?と聞かれて残念ながらそういう機会はない、と真面目に答えていた。クランコ版の「白鳥の湖」は、オディールが通常王子のソロの曲で踊るとのことだが、オデットの曲で王子が踊るという作品はないそうだ。

彼は今まで数え切れない「白鳥の湖」のヴァージョンを踊ってきたけど、中でもお気に入りは、エリック・ブルーン版、そしてヌレエフ版とパトリス・バール版だそうだ。他にも、クランコ版、セルゲイエフ版の4幕のヴァリエーションなど、お気に入りを一つに絞るのは難しいとのこと。悲劇で終わるのが好きだそうだ。一口に「白鳥の湖」といっても、数限りなくヴァージョンはある。でも、2幕の湖畔のシーンだけは、ほとんどの振付がプティパ/イワーノフの原振付に忠実である。それだけ、あのシーンは完成度が高いし、作品の中でも最も重要な部分だということなのだろう。

バレエを学んでいる人だけでなく、観るだけの人にとっても「白鳥の湖」という作品を理解するのにとても勉強になるDVD。Part1の「ジゼル」も観たくなった。

http://www.fairynet.co.jp/SHOP/4560219321830.html

DVD,カラー、本編86分+特典映像11分、2009年

内容
Lesson1 オデットの登場(第2幕より)
Lesson2 グラン・アダージオ(第2幕より)
Lesson3 オデットのヴァリエーション(第2幕より)
※ジュリー・ケント&ウラジーミル・マラーホフによる舞台映像から、それぞれのレッスンの該当シーンをあわせて収録しています。

出演
ウラジーミル・マラーホフ(ベルリン国立バレエ芸術監督/プリンシパル)
佐伯知香&長瀬直義(東京バレエ団ソリスト)

特典映像
インタビュー:マラーホフ、『白鳥の湖』を語る


2009/06/15

5/3 パリ・オペラ座「オネーギン」ONEGUINE Paris Opera Ballet Part2

さて、エルヴェ・モローというダンサーは、貴公子タイプであり、甘い美貌の持ち主である。オネーギン役を演じるには少し若い印象がある。したがって、彼がどんなオネーギンを演じるのか、期待とともに不安があった。エルヴェは、容姿は美しいがその美しさの中には常に、深い沼のような暗い影がある。ヌレエフ版「白鳥の湖」の王子然り、「ラ・バヤデール」のソロル然り。そのほの暗い個性を生かした役作りで、期待以上にオネーギン役を演じていた。他の誰にも似ていない、彼ならではのオネーギンだ。

P1030741s

エルヴェのオネーギンは、鏡の中に彼の姿を認めたタチアーナが一瞬で恋に落ちてしまうような、洗練された都会の紳士そのものである。しかし田舎の退屈な日々に倦み、ナルシスティックで自己中心的な彼の、鼻持ちならない傲慢さがその美しい顔の中に現れている。その自己愛の強さと高慢さゆえに、ますます魅力的に見えてしまうという困った存在だ。最初のソロでの彼のゆるやかな動きは流れるようにエレガントで、指先のすみずみまで意識が届いていて、惚れ惚れするほど美しい。と同時に、それだけ彼は自意識が強いのに、傲慢さを隠せていない。周りを小ばかにしたような態度は、実のところは、自分の中に秘めている弱さや中身の薄っぺらさを隠蔽するための虚勢であるのが、わかる人にはわかってしまう。そういう弱さがあるからこそ、彼は悪人にはなりきれないのだが。だけど、まだ恋を知らない少女タチアーナには、そんなところまで見抜くことができるはずもない。

オネーギンは、ここの屋敷の人々を、田舎者め、と小ばかにしているのだが、一応友人のレンスキーがいる手前、最低限の礼儀はもって、儀礼的につきあっている。タチアーナが目をキラキラさせて、ちょっとはにかみながら近寄って来る時も、小娘め、めんどくさいなと思いつつも一応相手にしてあげている。よく見れば綺麗な娘だし、と。だけど彼の持つスノビズムは、彼女が読んでいる恋愛小説をめくった時に思わず顔をのぞかせてしまう。ついつい、ふん、そうか、やっぱり田舎娘だし仕方ないな、とちょっとだけどバカにした態度となって現れてしまうのだ。

タチアーナの目には、都会からやってきた美青年オネーギンは、今までの生活とはまったく違う世界に住む素敵な男性として映る。ちょっと鼻持ちならない雰囲気がまた素敵、と。彼女の夢の中、鏡のシーンに出てくるオネーギンは、現実のオネーギンから弱さや傲慢さを取り除いて、甘くて優しくて少しだけ危険な香りが漂う理想の男性として登場する。鏡のパ・ド・ドゥでは、鏡の中から出てくるオネーギンが大きく腕を振るところがとても印象的なのだが、エルヴェは腕がとても長いので、この登場のシーン(そして去っていくシーン)がとても映える。

背が高いエルヴェは、手脚は長いけど華奢なイザベルを軽々とリフトし、腕の中で自在に、まるで魔術師のように操る。二人の息はとても合っており、二人ともプロポーションが良く容姿が美しいので、このシーンの華麗なこと!イザベラの長くしなやかな脚が、エルヴェに振り回されて大きなアン・デダンの回転をすると時の、クラリと眩暈がするような陶酔感。現実の世界ではお堅く晩生な娘のはずなのに、自然とタチアーナは花びらが開いていくかのように目覚め、瞳を輝かせ、官能的な微笑を浮かべる。タチアーナってこんなに匂い立つような色っぽい少女だったっけ、と思うほどに。そう、オネーギンはここでタチアーナに魔法をかけたのだった。

エルヴェは美しいつま先で軽やかにあざやかに舞い、タチアーナの舞い上がるような気持ちに火をつけるように、彼女を高々とリフトする。ふんわりとしたジュッテ・アントルラッセは、そのままタチアーナの夢見心地を象徴しているかのようだ。大きな黒い瞳で、現実には決して見せることのなかった、優しいまなざしを向けたかと思うと、くるりと後ろを向いて一瞬の嵐のように走り去ってしまう。あんなふうに見つめられたら、タチアーナじゃなくてもとろけてしまうに違いない。タチアーナは上気した頬のままで、一気に手紙を書ききるのだった。

スティーヴン・マックレーがロイヤル・バレエのプリンシパルに昇進 Steven McRae Promoted Principal

ロイヤル・バレエのオフィシャルサイトにはアップされていないのですが、故国オーストラリアの新聞に、スティーヴン・マックレーのプリンシパル昇進の記事が出ていました。

'Tap puppy' now top dog at Royal Ballet
http://www.theaustralian.news.com.au/story/0,25197,25636483-16947,00.html

At just 23, McRae has been promoted to principal dancer, only the third Australian man to be so honoured. Robert Helpmann was the first.

まだ彼は23歳なんですね。若いですね~。ちょうど今年はアリーナ・コジョカルと東京バレエ団の「くるみ割り人形」に客演するので、いいタイミングですね。去年の来日公演では怪我で出演がキャンセルになってしまったので、今年の冬の来日が楽しみです。比較的小柄な彼なので、チェ・ユフィ(崔由姫)さんと組んで踊ることも多いんですよね。

Ballet.coに、マックレーの昇進ほか、人事が書いてありましたが、オフィシャルにはなかなか発表されないんですよね。ロイヤル・バレエのオフィシャルサイトはとても見づらいし。

DVD「ドン・キホーテ」マリインスキー・バレエ The Mariinsky Ballet Don Quixote

ミンクス:バレエ『ドン・キホーテ』
マリインスキー劇場バレエ団 The Mariinsky Ballet Don Quixote

オレシア・ノーヴィコワ(キトリ) Olesia Novikova
レオニード・サラファーノフ(バジル)Leonid Sarafanov

ウディーミル・ポノマレフ(ドン・キホーテ)Vladimir Ponomarev
アントン・ルコーフキン(サンチョ)Anton Lukovkin
イゴール・ペトロフ(ロレンツォ)Igor Petrov

ヴラディーミル・レペーエフ(ガマーシュ)Vladimir Lepeev
アンドレイ・メルクーリエフ(エスパーダ)Andrei Merkuriev
エカテリーナ・コンダウローワ(街の踊り子)Yekaterina Kondaurova
ヤナ・セーリナ、ヤナ・セレブリャコーワ(花売り娘)Yana Selina, Yana Serebriakova
ガリーナ・ラフマーノワ(メルセデス)Galina Rakhmanova

アリーナ・ソーモワ(ドリアードの女王)Alina Somova
エフゲーニャ・オブサスツォーワ(キューピッド)Yevgenia Obraztsova

ポリーナ・ラッサーディナ、ニコライ・ズブコフスキー(ジプシー・ダンス)Polina Rassadina, Nikolai Zubkovsky

リュウ・ジ・ヨン(オリエンタル・ダンス)Ti Yon Riu
エレーナ・バジェーノワ、カレン・イワンニシャン(ファンダンゴ)Elena Bazhenova, Karen Ioannisyan
オルガ・エシナ(ヴァリエーション)Olga Esina

マリインスキー劇場管弦楽団
指揮:パヴェル・ブベリニコフ
振付:マリウス・プティパ

収録:2006年、サンクトペテルブルク、マリインスキー劇場
映像監督:ブライアン・ラージ

画面:カラー、16:9
NTSC Region All  Decca

3年前に収録された作品が、ようやくDVD化された。3年前のサラファーノフって、今よりも明らかに若い。可愛い。髪型も、今の短髪ではなくてちょっと長め。テクニックは本当にものすごいのだけど、サポートがあまり上手ではないのと、テクニックに走りすぎてちょっと踊りが荒いところが見受けられた。とはいっても、本当にこの頃の荒削りなサラファーノフの技術はすごい!プレパレーションなしでトゥールザンレールを何回も連続で飛んで見せたり、斜め向きのままきりもみ状態で空中回転したり。3幕のグラン・パ・ド・ドゥのマネージュでは、アチチュードのまま空中で方向転換しているし、本当に一体何者?って感じだ。ただ、今の彼の方がサポートは丁寧になっているし、踊りもずっとエレガントになってきたのではないかと思う。この映像では、片手リフトもあまり高く上がっていないし、とにかくサポートが最大の弱点というのが判ってしまう。

キトリのオレシア・ノーヴィコワは白い肌に黒髪、大きな瞳でとても愛らしい容姿、やや小柄でどちらかといえば姫向けの外見だ。現在彼女は産休中なのだけど、2002年入団ということなので、収録時は本当に若いはず。身体は柔らかいし、ワガノワ仕込みの美しいポール・ド・ブラ、跳躍する時のきれいに開いた脚、身体能力やテクニックは申し分ない。ただ、サポートつきピルエットで軸がずれまくるのと、音楽性があまりないという欠点が見受けられる。特に、夢のシーンでのドルシネア役は、キューピッドのオブラスツォーワの音楽性が非常に優れているだけに、少々音痴なのがわかってしまって。3幕のグラン・パ・ド・ドゥのフェッテは後半もダブルを入れてきて、軸もしっかりとしてとても上手に踊っているし、技術はしっかりとしたものをもっているはずなのだけど。この映像収録後も彼女は大きな役はたくさん踊っているし、「オブラスツォーワとノーヴィコワのヴァリエーションレッスン」のDVDでは、非常に真面目な性格が見受けられるので、きっと今はもう少し完成されているのではないかしら。

若いサラファーノフのスーパーテクニックの次に魅力的なポイントとして、マリインスキー在籍時のメルクーリエフのエスパーダが挙げられると思う。去年の新潟県中越沖地震チャリティ・ガラでの彼のエスパーダも素敵だったけど、もう少し若くて青い感じのエスパーダをここではじっくり堪能できる。ちょっとメイクは濃いけれども、容姿は美しくセクシーだし、鮮やかなマント捌き、柔らかい背中、アッサンブレを跳んでいるときの足先のきれいさ、惚れ惚れするほどカッコいい。眼福。私のベスト3・エスパーダはマルセロ・ゴメスとデヴィッド・ホールバーグ、そしてこのメルクーリエフの3人だ。

街の踊り子役のエカテリーナ・コンダウローワは、長身と華やかな美貌で、迫力いっぱいの姉御を踊ってくれた。1幕だけの出番なのがもったいないくらい。あまりの迫力に、メルクーリエフのエスパーダもちょっと気圧されていた感じ?でも、森の女王を彼女で見たかった気がする。

夢のシーンでは、キューピッドがエフゲーニャ・オブラスツォーワ、そして森の女王がアリーナ・ソーモワ。こうやってキャストを並べてみると、まさに今マリインスキーが売り出している若手女性ダンサーが勢ぞろいしている映像だと言える。ジェーニャのキューピッドは、可愛いこと、可愛いこと。しかも、前述のように音楽性がとびきり優れていて、見ていて小気味良い。夢のシーンで一番上手なのがキューピッドというのもどうかという気がしなくもないけれど、キューピッドはハマリ役。でも、以前NBAバレエ団のゲストとして出演したジェーニャのキトリを観て、本当に素晴らしかったので、今後はもう彼女のキューピッドは観られなくなるだろう。

で、問題のソーモワについては、以下省略、と行きたいところだけど…。彼女は、ノーヴィコワに輪をかけて音感がない。長くて甲が出ていて素晴らしいアーチをした美脚をしているのだけど、イタリアン・フェッテで耳の横まで脚を上げてしまうものだから、音からずれまくるのだ。ここまで脚を上げていると、もはやマニエリスムであり、シュールレアリズムだ。本当に、誰か彼女に注意すればいいのに。せっかく美人でプロポーションも抜群なのだから、これではもったいない。

マリインスキーの女性コール・ドは、そもそも衣装の色が派手で、さらに3幕のアントレの衣装の色がバラバラだったりするものだから、揃っているかどうかも判別できない。みんな上半身はきれいだし、グラン・ジュッテするときにみんながみんな、ものすごい角度まで開脚していて高く跳んでいるのは流石だと思うのだけど。3幕ヴァリエーションのオルガ・エシナも、ちょっとソーモワ入っていて、脚をぶんと高くあげ、あごを突き出しているクセが気になってしまう。

と、ここまで若干辛口入ってしまった。でも、この映像は楽しい。その楽しさの源は、芸達者なキャラクター・ダンサーたちが作ってくれている。ドン・キホーテ役は大ベテランのウディーミル・ポノマレフ。多分60歳過ぎているけど、味わい深く可笑しくてちょっと哀しいドン・キホーテを見事に演じている。それから、メルセデスのガリーナ・ラフマーノワ、ジプシー・ダンスのポリーナ・ラッサーディナ、ファンダンゴのエレーナ・バジェーノワという、マリインスキーが誇る美しきキャラクテールの姐さんたちが本当にセクシーでカッコよくて。女に生まれたからには、こう生きたいね!と思わせてくれる。他の「ドン・キホーテ」にはないオリエンタル・ダンスがあって、ここでは、リュ・ジ・ヨンがこれまた妖しく踊ってくれる。これだけ多くの、美しくも芸達者なキャラクターダンサーを揃えているバレエ団は世界中探しても他にはないだろう。

全体的なレベルは言うまでもなく、めちゃめちゃ高い。若手中心とはいえ、これだけ多彩な役者をそろえた「ドン・キホーテ」の映像は貴重だ。若いサラファーノフ、メルクーリエフ、そしてオブラスツォーワの3人を観るだけでも買い、だと思う。

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2009/06/14

6/14 服部有吉&辻本知彦&群青&TATSUO「身体展示」世田谷美術館 Yukichi Hattori Body Exhibition/「プレミアの巣窟」で放映

世田谷美術館で行われている展覧会「日本の自画像 写真が描く戦後1945-1964」展の関連イベント「身体展示」。服部有吉さんが演出し、服部さんと辻本知彦さん、群青さん、そしてTATSUOさんの4人のダンサーが、展示空間の中に不意に現れ、ダンスパフォーマンスを行うという企画。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/event/list.html

この企画を行うにあたっての、企画や準備の様子が、ブログ「「身体展示」 稽古作業場
http://blogari.zaq.ne.jp/hattori/
にて行われていて、それを読んでいても、とても楽しそう。

「日本の自画像 写真が描く戦後1945-1964」展は、1945年の太平洋戦争の終結から1964年の東京オリンピック大会開催までの20年の間、日本の敗戦から復興までを石元泰博、川田喜久治、木村伊兵衛、田沼武能、東松照明、土門拳、長野重一、奈良原一高、濱谷浩、林忠彦、細江英公という写真家たちの作品で振り返るというもの。広島や長崎の原爆の爪あと、特攻隊員が残した遺書、焼け野原の東京、闇市から、たくましく働く農民、当時の風俗の最先端の若い女性、サラリーマンや踊り子などの、ほとんど無名の人々の生活を切り取ったもので、とても面白かった。が、一番インパクトがあったのは、細江英公が三島由紀夫を撮った「薔薇刑」からの作品。三島のみならず、細江英公の作品の倒錯的で耽美な雰囲気は、モノクロームなのに鮮烈で妖しくて取り憑かれそう。

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それらの写真を眺めていると、いつの間にか人だかりができていて、その真ん中には、一人の小柄な青年。服部有吉さんだった。白い長袖のTシャツに普通のスラックス、裸足。動きはほとんど即興という感じで、最初のうちはあまり大きな動きを見せないで、腕を動かすことが中心だったけど、ロン・デ・ジャンブから、グランバットマンやアントルシャなどを見せて、そしていつのまにかパフォーマンスを終え、すたすたと歩き去っていった。

服部さんが去っていった先、隣の展示室を見ると、そこには長身でドレッドヘアの辻本さんが。「ラプソディ・イン・ブルー」以来見る辻本さんの動きはとてもシャープだ。さらに群青さん、TATSUOさんも加わり、デッキからちょっとアフリカンな音楽が流れてくる。辻本さんと小柄で敏捷なTASUOさんが、絶妙の間で、一瞬映画のカンフーのシーンみたいに向かい合って踊る。服部さんがまたすたすたと歩いてきて、着ていた白いTシャツを脱ぎ捨ててまた歩き去っていく。すると、辻本さんがそのシャツを拾って頭にバンダナのように巻きつける。群青さんは、ブレイクダンスを見せてくれた。この展示室には、戦後から20年の日本人を写した写真がたくさん展示されている。ヒップホップやブレイクダンスはアメリカで生まれたダンスだけれども、侍の刀を振る動きをステップの中に取り入れたと言って、鋭くてとってもカッコいい動きを取り入れて見せた。

このパフォーマンスが面白いのは、予告なしに突然こういったパフォーマンスが始まるということと、4人のダンサーがいるので、4人同時に動いていることもあれば、一人だったり二人だったり、メンバーが入れ替わったりすること。そして、写真展を開催中の展示室で行われているということなので、ダンスを見る観客と、ダンサーが、通常では考えられないような近い距離にいるということ。バレエ、コンテンポラリー、ストリートダンスといったジャンルの枠も取っ払い、決まった振付もないし、ダンサーが自分の言葉で観客に語りかけていたりする。言葉じゃなくても、ダンサーが観客の目を見て動いていたりして、コミュニケートしようとしている。辻本さんのトークが面白い。新しい変わった動きを考え付いて、「これを500年やり続けたら歴史に残るよ」と言ってみたり。服部さんがバレエ的な引きあがった美しいポーズをとると、「それは西洋の動き。ここは日本だから」と言ってみたり。そしてダンサーが館内を移動すると、観客もぞろぞろと一緒に移動したりするのが、ちょっとストーカーっぽいんだけど、なんだか可笑しい。さらに、このイベントがあることを知らないで普通に展覧会を見に来た人が、ダンサーの前を横切りながら不思議な顔をしているのも、可笑しい。

そして彼らは美術館の外の、芝生へと飛び出して、芝生の上でのびのびと飛び回った。外を歩いている子供に話し掛けたり、TATSUOさんなどは木登りまでしたり。私たち観客は、美術館の大きな窓から、この芝生の上を見ていて、窓がまるで額縁のような役割をしていたのが面白かった。群青さんがいつのまにかいなくなったと思ったら、館内での、勅使川原宏監督のドキュメンタリー映画を観に行ってしまったらしい(笑)

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この「身体展示」は昨日も行われていたということで、1日8時間、合計16時間、4人は場所を変え、時には身体をストレッチしたり、展示してある写真をぶらぶらと見ながらも身体を動かしていたりして、踊りっぱなしということで、トイレ休憩すらなかったそうだ。私は14日日曜日の3時過ぎから閉館の6時までいたので、このイベントの最後の方を見ていた、ってことになる。それでも、最後の方はもはや彼らも疲れを超越してハイになっていたみたいで。辻本さんと服部さんが社交ダンスを踊って見せたりしたのが、すんごく面白かった。服部さんって、やっぱり動きがものすごく美しい人だ。裸足なのできれいなつま先の動きもすごくよく見えるし、しなやかで身体がよく引きあがっているのが見える。辻本さんの友人のストリートダンサーの人が飛び入りしたりして、ダンサーたちが一人一人ブレイクダンスのように腰を床につけてくるくる回って見せたのだけど、服部さんは、くるくる回りながら、アントルシャの足先をしてみせて、足先の動きがすごくよく見えた。

最後は脚がつってしまったそうで、横になっていた服部さん。でも、そこで身体を反らせて横たわっている彼の姿がすごくきれいだよ、観てごらん、って辻本さんが呼びかけて、観客がぞろぞろと服部さんの回りを取り囲む。こんなに近いところで服部さんが見られるなんて!

もう少し観客参加型のことをやるのかな、と思っていたけど、それはなし。日本人はシャイだからそういうのはちょっと難しいのかな?

16時間も動きっぱなし、踊りっぱなしのダンサーの皆様、本当にお疲れ様でした!観るほうも結構疲れたけど、すごく楽しかった!

*****
今回のメンバーのうち、服部さん、辻本さん、群青さん、そして「ラプソディ・イン・ブルー」にも参加したジャズピアニストの松永貴志さんで、「3D」という公演が7月31日~8月1日、池袋のあうるすぽっとで開催されます。

http://www.owlspot.jp/performance/090731.html

7月31日(金)~8月2日(日) 4回公演
CANプロデュース公演
『3D』
○演出:服部有吉、辻本知彦
○出演:dance:服部有吉 辻本知彦 群青
music:松永貴志

○主催:(株)CAN
○共催:(財)としま未来文化財団
一般 前売 6,000円/当日 6,500円
一般発売 6月19日(金)

今回の「身体展示」を観ると、この公演がとても楽しみになってきました。

また、フジテレビ「プレミアの巣窟」で「3D」公演が紹介されます。
*稽古映像、出演者コメント、チケット先行あり
放映日: 6.16(火) 深夜 26:08~26:33 (= 17(水)2:08~2:33)

6/13 東京バレエ団&フリーデマン・フォーゲル「ジゼル」The Tokyo Ballet "Giselle"with Friedemann Vogel

東京バレエ団「ジゼル」 

◆主な配役◆

ジゼル:吉岡美佳 Mika Yoshioka
アルブレヒト:フリーデマン・フォーゲル Friedemann Vogel
ヒラリオン:木村和夫 Kazuo Kimura

【第1幕】
バチルド姫:坂井直子
公爵:後藤晴雄
ウィルフリード:野辺誠治
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):
高村順子-宮本祐宜、乾友子-長瀬直義
佐伯知香-松下裕次、吉川留衣-横内国弘

ジゼルの友人(パ・ド・シス):
西村真由美、高木綾、奈良春夏、田中結子、矢島まい、渡辺理恵

【第2幕】
ミルタ:田中結子
ドゥ・ウィリ:西村真由美、吉川留衣

指揮:井田勝大
演奏:東京ニューシティ管弦楽団

一昨年だったか、マラーホフの代役としてアルブレヒトを踊ったフリーデマン・フォーゲルが良かったのと、その時にもジゼルを踊った吉岡美佳さんの儚げな透明感が素敵だった。そして、今回もちろん楽しみだったのが、名人芸ともいえる木村さんのヒラリオン。金欠で悩ましいところだったけど、やっぱりこのキャストは魅力的で誘惑に勝てなかった。

フリーデマンは今回のゲスト出演のために10日前から来日してリハーサルに臨んでいたとのことで、ゲストで、しかも身長が非常に高いにもかかわらず、カンパニーに自然に溶け込んでいた。吉岡さんとの息もぴったりで愛が感じられ、良いパートナーシップが築けていたと思う。

彼のアルブレヒトは、とても甘く優しく、育ちの良さを感じさせた。体の弱いジゼルを気にかけていて、いたわるように接している。この優しすぎたことが仇となり、彼の罪となってしまったというわけだ。フリーデマンのアルブレヒトは、バチルドという婚約者がいるのに、ジゼルに恋愛感情を持っているということに後ろめたさの欠片もなく、無邪気に、だけど真摯に恋愛を楽しんでいるように見えた。花占いで落ち込んだジゼルに、ほらほら、ちゃんと愛しているになっているよって花を見せると、勢いよくその花を投げ捨てちゃって、元気いっぱいに踊る。このアルブレヒトの甘く優しく育ちの良い部分は、フリーデマン・フォーゲル本人が生まれ持った気質そのままのようにも思えた。すごくピュアで自然な演技だったのだ。

ヒラリオンの鳴らした角笛の音でバチルド一行がやってきた時の、実はかくかくしかじかこういう理由でこんな姿をしていて、というアルブレヒトの言い訳するの空々しさ、ひざまづいて恭しくバチルドの手にキスをするところの、気持ちのこもっていない加減。アルブレヒトは、親が決めた婚約者だから仕方なく結婚するのであって、本当に好きなのはジゼルなんだよ、それのどこが悪い、と本気で思っているようだった。だから、ジゼルがショックを受けて狂ってしまっても、何が起きたのか理解できなくておろおろするばかり。自分の何がいけなかったのかもわかっていないようだった。ジゼルが死んでしまってようやく、自分が犯した罪の重さに気がついて彼女の亡骸にすがりつく。いや、この時点でも、まだ自分の罪を十分認識していなかったのかもしれない。ただただ、突然愛する人を失ってしまったことに混乱していたかのようだった。

そんな風に、無邪気さの罪によってジゼルを死に追いやってしまったアルブレヒトは、2幕では悲しみに沈み、重々しい足取りでジゼルの墓まで歩み寄る。罪悪感を感じてはいるのだろうけれども、それよりも、ジゼルがこの世にはもういないということに打ちのめされている様子だ。ジゼルのお墓を、まるでジゼル本人であるかのように大切に扱っている。そこへ、ウィリとなったジゼルがふっと通り過ぎる気配。アルブレヒトは、なかなかジゼルの実体が見えていないようだった。それが少しずつ、少しずつ彼女を感じ始める。やがて、二人の想いは生死を超えてハーモニーを奏で始めて、2幕のパ・ド・ドゥとなる。

アルブレヒトがウィリたちに無理やり踊らされるところでは、フリーデマンはブリゼでの斜め移動を2回行っていた。トゥール・ザン・レールの着地が毎回きれいな5番だし、高々と跳んでいるジュッテ・アントルラッセの時の脚の開きかたも美しい。背中を大きく反らしてのヴァリエーションでは、ちょっとだけマラーホフを思い出させた。2幕でのアルブレヒトも真摯で誠実で、最後までジゼルを壊れ物のように大切に扱っていた。サポートもふんわりと柔らかく、優しかった。ジゼルがお墓へと消えていくところ、アルブレヒトは墓の上に身を横たえてジゼルの指へと手を伸ばしていたけれども、気がついたときにはジゼルの姿はなくなっていた。百合の花束を抱えたアルブレヒト、まるでジゼルの命が少しずつ消えていくかのように花々は落ちていく。最後に残った花を、ジゼルそのものと思って大事に抱えていたかと思うと、土へと還ったジゼルを抱きしめるかのように彼は地面に身を横たえた。少しだけ微笑み、再び立ち上がるであろうことを感じさせながら。フリーデマンは、純粋でありながらドラマティックで、パートナーリングも良い、優れたダンサーになった。

吉岡さんのジゼルは繊細で、1幕の時から透けて見えそうなほどの透明感があった。折れそうなほどの華奢な身体は見るからに病弱そうで、実年齢を忘れさせるほどの少女的なキャラクター造形。母親に踊ることを止められても、私は踊るのが好きなの!とヴァリエーションを踊る。本当に純真で、アルブレヒトの愛を信じて疑っていない。だから、ジゼルが彼の正体を知ってしまい、彼の背信を知った時に、ガラスで作られていた彼女の繊細な世界は崩れ去ってしまって、正気を失ってしまう。それも、ジゼルの信じていた世界が少しずつひび割れて、ゆっくりと静かに、最後は一気に壊れていくようであった。途中から、もうジゼルには何も見えなくなっていて、ウィリたちが彼方から呼んでいるのだけが見えていたようだった。ジゼルの命はあまりにも儚く、あっけなく散ってしまった。

1幕でもそこまでの透明感があった吉岡さんのジゼルだから、2幕の、この世のものではないかのようなふわふわとした浮遊感は驚異的だった。とはいっても、ウィリになりきっていなくて、人間らしい温もりは残っている。死してなお、アルブレヒトへと向けられた想いが、彼女を他のウィリとは違う存在にしている。だからこそ、彼女の存在はアルブレヒトには感じられるし、彼にその姿が見えてくる。1幕の無邪気な少女っぽさとは打って変わって、ここでのジゼルは、なんとしてでも彼を守り抜くのだという強い意志が見えて、その意志の力が、姿は変われども、魂だけの存在になっても、彼女をアルブレヒトからは見える存在にしているのだ。吉岡さんの目には強い光が宿っていて、甘いお坊ちゃまであるアルブレヒトと好対照をなしており、二人の演技は絶妙なケミストリーとなっていた。ヴァリエーションの時に、吉岡さんのポアントがちょっと弱いかな、と思ったけど、ドラマを作るうえではそれは大きな瑕にはなっていなかった。

さらにドラマを盛り上げたのが、火傷しそうなほど熱い演技を見せた木村さんのヒラリオン。ヒラリオンがジゼルに捧げる報われない愛、アルブレヒトなんかよりずっと真剣にジゼルを愛していたヒラリオンがウィリたちにいたぶられ、とり殺されてしまうという理不尽さ。この理不尽さが、「ジゼル」という作品に厚みを加えているのだと思う。ヒラリオンは、貴族の正体を隠してジゼルと付き合うアルブレヒトが許せなくて、アルブレヒトの正体を示す剣を持って二人の間に割って入る時にも、迷いの欠片もなく自分こそが正義だと思っている。ジゼルが死んだ時には、アルブレヒトなんかよりずっと激しく嘆き悲しみ、そして死に追いやる一因を作ってしまった自分を責める。大きく後ろへと反らして慟哭する彼の姿に心を打たれない観客はいないはず。このシーンでは、木村さんは主役二人以上の視線を集めていたのではないだろうか。
ミルタに命乞いをするときの必死さもすごくて、あんなに迫力のある表情で迫られたら、ミルタだって、こいつを許してやろうかと一瞬思ったんじゃないかと思うほど。あれだけ髪を振り乱して必死なのに、ウィリたちに小突き回されながら跳躍する時の木村さんの脚が美しくて。木村さんの情熱的で愛に溢れたヒラリオンは、世界一だと思うし、これからもずっと踊り続けて欲しい!

ドゥ・ウィリは西村さんと吉川さん。吉川さんはウィリ姿になっても美しい~。今までは彼女はその美しさばかりが目だって踊りは少し頼りないところがあったけれども、しっかりと迫力が出てきて、怖いほど美しいウィリになっていた。西村さんは、柔らかくおおらかな踊り、美しいポール・ド・ブラとしっかりした上半身、完璧なアラベスクで、惚れ惚れしてしまう。本当に遠くない将来、彼女の主役が観たいものだ。田中さんのミルタも健闘していたと思う。ちょっと怖さが足りないところがあったとは思うけど、場数を踏めばきっと迫力は増していくだろう。コール・ドについても、以前のものすごい足音が小さくなってきたし、よく揃っていた。

パ・ド・ユイットは長瀬さんの王子様な雰囲気と端正な踊りが目を惹いた。女性では、安定している高村さんと、可憐で小気味よい佐伯さんが良かった。ひところちょっと弱体化していた東京バレエ団だったけれども、この日の「ジゼル」を観る限りでは、立派な上演ができていて、若手も育ちつつあるのではないかと思えた。本当に良い公演だったと思う。観客の反応も良くて、カーテンコールは何回もあったし、主役二人も本当に満足げだった。

写真は、ロビーで飾られていたマカロワ版「ラ・バヤデール」の衣装。クリックすると拡大します。ソロルのマネキンの面差しが、ロベルト・ボッレに似ていると思うのは気のせい?

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2009/06/13

カールスルーエのガラ(ルグリ&プジョル、ラドメイカー、ヤンヤン・タン他出演)BALLETTGALA Karlsruher

今年の2月に怪我をしてからずっと舞台に立っていなかったマリイン・ラドメーカーが、6月20日にドイツのカールスルーエで開かれるガラで復帰します。

このガラですが、マニュエル・ルグリとレティシア・プジョル(レティシアもずっと怪我で舞台を離れていたけど大丈夫なのかな)が「シルヴィア」、マリイン・ラドメーカーとスージン・カンが「椿姫」、ヤンヤン・タンとダミアン・スミス(サンフランシスコ・バレエ)が「DISTANT CRIES」(エドワード・リヤン振付)、他にドレスデン・バレエからMarina Antonova とGuy Albouyが出演するとのこと。

http://www.staatstheater.karlsruhe.de/programm08_09/?id_titel=855

演目を見ていて気がついたのは、

EIN FREMDER KLANG
Musik: Gilberto Gil, Caetano Veloso
Choreografie: Thiago Bordin

これって、ハンブルク・バレエのチャゴ・ボアディンの振付作品ですよね。音楽がジルベルト・ジルとカエターノ・ヴェローソと、チャゴの出身地であるブラジルのスターの曲を使っているし。

カールスルーエは、Badischen Staatstheaters Karlsruhe という劇場です。バーデン=ヴュルテンベルク州に属していて、シュツットガルトから60キロくらい離れたところにあり、温泉で知られるバーデンバーデンに比較的近いところですね。


マリインはこの後、チリのサンチアゴで、マリシア・ハイデ率いるサンチアゴ・バレエにゲスト出演します。ebijiさんの「日々これ口実」のエントリで紹介されていましたが、サンチアゴ・バレエ50周年記念ガラだそうです。ロイヤル・フランダース・バレエから斉藤亜紀さんも出演するんですね。

6月31日、7月1日、4日、5日
http://www.balletdesantiago.com/temporada2009.html

その後、シュツットガルトで「じゃじゃ馬ならし」に出演するそうです。

2009/06/12

ハンブルク・バレエの「ニジンスキー・ガラ」 Nijinsky Gala XXXV The Hamburg Ballet

ハンブルク・バレエの第35回「ニジンスキー・ガラ」概要が発表されました。

今年は、「バレエリュスの魔法」がテーマで、まさに垂涎モノのプログラムとなっています。

世界バレエフェスティバルのガラ公演と同じくらい、それ以上にチケット入手が困難な公演です。


http://www.hamburgballett.de/e/gala.htm

Nijinsky Gala XXXV
Magic of the Ballets Russes

<ゲスト>
Isabelle Ciaravola, Emilie Cozette, Marie-Agnes Gillot, Mathias Heymann, Herve Moreau, Myriam Ould Braham, Latitia Pujol, Stephanie Romberg
Ballet de l'Opera de Paris パリ・オペラ座バレエ
Tigran Mikayelyan, Daria Sukhorukova
Martina Balabanova, Giuliana Bottino, Petra Conti, Mia Cooper, Leonor de Tvora, Ilana Werner
Bayerisches Staatsballett, Munich ミュンヘン・バレエ
Xianghui Zeng, Lorena Sabena, Takayuki Shiraishi, Aoi Nakamura, Nigel Campbell, Paul Girard, Meritxell Aumedes, Molinero, Alfredo Garca Gonzalez
Donlon Dabce Company, Saarlndisches Staatstheater, Saarbrucken
Vladimir Malakhov 
Staatsballett Berlin ベルリン国立バレエ
Leanne Benjamin, Jonathan Cope
The Royal Ballet, London ロイヤル・バレエ
and The Hamburg Ballet ハンブルク・バレエ

Conductor: Simon Hewett
Sunday, July 12, 2009

Overture
FIREWORKS
Music: Igor Stravinsky
Philharmonic State Orchestra

Part I
Fokine Nijinsky

VASLAV 「ヴァスラフ」
after a plan of Vaslaw Nijinsky which was never realized, with some music pieces choose by himself
Music: Johann Sebastian Bach
Choreography: John Neumeier
Piano: Michal Bialk

Soloist: Riabko
First Pas de deux (Sarabande): Anna Laudere, Dario Franconi
Second Pas de deux (Menuet): Leslie Heylmann, Arsen Megrabian
Third Pas de deux (Gavotte): Catherine Dumont, Peter Dingle
Solo (Allemande): Patricia Tichy
Pas de trois (Sarabande en rondeau): Alexandre Riabko,
Anna Polikarpova, Edvin Revazov

PETRUSHKA 「ペトルーシュカ」
Music: Igor Stravinsky
Choreography: Michail Fokine
Costumes after Alexandre Benois

Lloyd Riggins

FIREBIRD 「火の鳥」
Music: Igor Strawinsky
Choreography: Michail Fokine
Costumes: Natalia Gontcharova

Leanne Benjamin, Jonathan Cope
The Royal Ballet, London

LE PAVILLON D'ARMIDE 「アルミードの館」(ノイマイヤー振付)
Music: Nikolai N. Tcherepnin
Choreography: John Neumeier

Danse siamoise: Thiago Bordin
Danse des bouffons: Anton Alexandrov, Vladimir Hayryan, Yaroslav Ivanenko,
Lennart Radtke, Alexandr Trusch, Konstantin Tselikov, Kiran West

LE SPECTRE DE LA ROSE 「薔薇の精」
Music: Carl Maria von Weber, "Invitation to the Dance" Orchestration by Hector Berlioz
Choreography: Michail Fokine
Costumes after Lon Bakst

The Spectre: Mathias Heymann
The Girl: Latitia Pujol
Ballet de l'Opera de Paris

L'APRS-MIDI D'UN FAUNE 「牧神の午後」
Music: Claude Debussy
Choreography: Vaslaw Nijinsky
Reconstruction of the choreography after Nijinsky's dance notations and setting: Ann Hutchinson-Guest, Claudia Jeschke
Set and Costumes: Lon Bakst

The Faun: Tigran Mikayelyan
The Nymphs: Daria Sukhorukova
Martina Balabanova, Giuliana Bottino, Petra Conti, Mia Cooper, Leonor de Tvora, Ilana Werner
Bayerisches Staatsballett, Munchen


Part II
Massine Nijinska Balanchine

PARADE 「パラード」
Music: Erik Satie
Choreography: Lonide Massine
Set and Costumes: Pablo Picasso
Scenario: Jean Cocteau

Le prstidigitateur chinois: Xianghui Zeng
Les acrobates: Lorena Sabena, Takayuki Shiraishi
La petite fille amricaine: Aoi Nakamura
Le manager en frac: Nigel Campbell
Le manager de New-York: Paul Girard
Le cheval: Meritxell Aumedes, Molinero, Alfredo Garca Gonzalez
Donlon Dabce Company, Saarlndisches Staatstheater, Saarbrcken

LE TRAIN BLEU Solo des Beau gosse 「青列車」
Music: Darius Milhaud
Choreography: Bronislawa Nijinska
Reconstruction of the choreography: Anton Dolin
Costume: Coco Chanel

Alexandr Trusch

APOLLON MUSAGTE 「アポロ」
Music: Igor Strawinsky
Choreography: George Balanchine

Apollo: Herve Moreau
Calliope: Emilie Cozette
Polyhymnia: Stephanie Romberg
Terpsichore: Marie-Agnes Gillot
Ballet de l'Opera de Paris

Part III
Classics Creations Interpretations 

AFTERNOON OF A FAUN 「牧神の午後」(ロビンス振付)
Music: Claude Debussy
Choreography: Jerome Robbins
Set and Light: Jean Rosenthal
Costumes: Irene Sharaff

Silvia Azzoni, Vladimir Malakhov
The Hamburg Ballet and Staatsballett Berlin

PETRUSHKA (two scene) 「ペトルーシュカ」(ノイマイヤー振付)
Music: Igor Stravinsky
Choreography and Costumes: John Neumeier
Stage prospect after a drawing by Vaslav Nijinsky

Yohan Stegli, Carolina Aguero, Amilcar Moret-Gonzalez

GISELLE 「ジゼル」
Music: Adolphe Adam
Choreography after Jean Coralli and Jules Perrot

Isabelle Ciaravola, Herve Moreau
Ballet de l'Opera de Paris

BLUE BIRD 「眠れる森の美女より 青い鳥」
Music: Peter I. Tschaikowsky
Choreography after Marius Petipa

Myriam Ould Braham, Mathias Heymann
Ballet de l'Opera de Paris

ILLUSIONS LIKE "SWAN LAKE" 「幻想 白鳥の湖のように」
Music: Peter I. Tchaikovsky, "Meditation"
Choreography: John Neumeier
Costumes: Jurgen Rose

Joelle Boulogne, Otto Bubencek, Carsten Jung
Solo Violin: Anton Barachovsky

ANDANTE (creation) 「アンダンテ」(新作、ノイマイヤー振付)
Music: Igor Markevitch, "Piano Concerto"
Choreography: John Neumeier

Hlne Bouchet, Thiago Bordin

DEATH IN VENICE 「ヴェニスに死す」
Music: Richard Wagner
Choreography: John Neumeier

Ivan Urban, Alexandre Riabko 

FINAL "LITTLE RUSSIAN" (creation) 「LITTLE RUSSIAN」(新作、ノイマイヤー振付)
Music: Peter I. Tchaikovsky, 2nd Symphony, 4th Movement
Choreography: John Neumeier

Anna Polikarpova, Carsten Jung
and all dancer

ウラジーミル・マラーホフ、エルヴェ・モロー、イザベル・シアラヴォラ、レティシア・プジョル、エミリー・コゼット、マチアス・エイマン、マリ=アニエス・ジロ、ミリアム・ウルド=ブラム、ステファニー・ロンベール、リアン・ベンジャミン、ジョナサン・コープ、そしてミュンヘン・バレエのダリア・スホルコワらをゲストに迎えての豪華な公演です。バレエ・リュス100周年を飾るに相応しいプログラムですね。

そして、産休に入っていたアンナ・ポリカルポヴァが復帰します。嬉しいですね。

5/3 パリ・オペラ座「オネーギン」ONEGUINE Paris Opera Ballet Part1

舞台を観てから1ヶ月以上経過してしまって、忘れてしまった部分もあるのだけど、エルヴェ・モロー&イザベル・シアラヴォラ主演の「オネーギン」を観て、自分が感じたことを振り返ってみたいと思った。dance cubeの批評を読んで思ったのだ。人が舞台をどう感じるかは人それぞれだと思うけど、それに誰にだって嗜好の違いはあると思うけど、あまりにも感じ取ったものが違う、から。

別キャストで複数の舞台を観ると、ついついキャストごとの違いを比べてしまいたくなるのは判る。でも、単純な優劣として書きたくはないと思った。

3 mai 2009 à 19h30
EUGENE ONEGUINE Hervé Moreau
TATJANA Isabelle Ciaravola
LENSKI Florian Magnenet
OLGA Muriel Zusperreguy
PRINCE GREMINE Nicolas Paul

タチアーナ役でエトワールに任命されたイザベル・シアラヴォラ。オペラ座随一の美脚で知られ、銀幕を飾る女優のようなクラシックで洗練された彼女が、地味で夢見がちな少女タチアーナを演じることができるのか。そして甘い美青年であるエルヴェ・モローが、スノッブな高等遊民(そう、私のオネーギンのイメージって、夏目漱石の小説に出てきそうな高等遊民なのだ)たるオネーギンを演じられるのか。この二人がファーストキャストに選ばれたということで、すごく興味を惹かれた公演だった。しかも、エルヴェ・モローは怪我が続いたので、観るのが久しぶりだったし。

1幕でのイザベル・シアラヴォラのタチアーナは、眉毛が細すぎて、10代にしては外見が大人びていることを除けば初々しく、繊細で大人しく知的で優等生的な少女になりきっていた。自分の美しさに気がついていないかのような、まだ固い蕾のような存在。その生硬な美しさは、周囲からは浮き上がって見えるほどである。恋愛なんて、物語の中にしか存在しないと思っていたのに、鏡の中に、夢に描いていたような美しい大人の男が現れたから、はっとしてしまう。イザベルのタチアーナは、はにかみ屋で、彼の姿を最初に鏡に見たときも、大きくは驚かない。オネーギンに恋はしたものの、ここでその感情をあからさまに出したら嫌われてしまうかしら、とちょっと控えめにしていて、オネーギンの手を取る時も、おずおずとしている。でもやっぱり恋する気持ちは隠せない。初めて恋にときめく晩生な少女の揺らめく感情を、イザベルはとても繊細に表現していた。

そんな控えめで夢見る少女だったタチアーナの思いは、鏡のパ・ド・ドゥのシーンで解き放たれる。手紙を書いている最中にうたた寝したタチアーナの夢の中、鏡の中から、颯爽としたオネーギンが現れる。オネーギンが登場する鏡は、鏡ではあるけれども、同時に扉の役割を果たしている。自分の殻の中に閉じこもって、恋に恋していたタチアーナの心の扉がオネーギンの手によって開かれる。

夢の中でのオネーギンは甘くパッショネイトな中にも苦味が走っており、少女の妄想の中でさらに美化され、仄かに悪の香りが漂う。強引なほどにタチアーナを振り回し、彼女をお手玉のように転がす。自分の殻を破り感情の奔流に身を任せたタチアーナは、しなやかな肉体、長く細く美しい脚のラインからはっとさせられるほどの生硬な色香を霧のようにまとい、甘美な快楽に高揚して陶酔の表情を浮かべる。まるで蛹が美しい蝶に変身するところを見ているかのようだ。パ・ド・ドゥの終わりの方で、オネーギンが、立ったままのタチアナを高々とリフトするシーンが好き。鏡の中から寝室に入ってきて、まずは心の扉を開けたオネーギンが、彼女に、この広い世界を見せてあげているように思えるから。君はもう子供じゃないんだよ、君を様々なことが待っているんだ、それを僕が見せてあげよう、ってオネーギンは夢の中で彼女に囁いているのだ。

夢は夢であるがゆえ、いつまでも続くわけにはいかない。オネーギンは来た時と同様、颯爽と去っていってしまう。でも、自身の妄想を夢の中で炸裂させたタチアーナは、今までの晩生な少女ではない。高鳴る胸、上気した頬、余韻のまま情熱的なラブレターを書き上げるのだった。そう、このセクシャルな夢と、夢の中でのオネーギンの導きによって、タチアーナの扉はもう開かれてしまったのだ。

「オネーギン」という作品のタチアーナ役には、私はつい感情移入を行ってしまう。10代の頃、実際の恋愛には非常に晩生で、同年代の男の子にはあまり関心が持てず、小説の中で描かれる恋愛のほうがずっと素敵と、空想の世界の中で生きていた。そんなところへ、突然、ちょっと年上で、ちょい悪で素敵な感じの男性に出会って、それまで感じたことがない一方的な恋愛感情を知ることになる。向こうにしてみれば、こんな子供っぽい女の子は後輩として可愛がったり、からかったりするのはいい。でも、恋愛対象だなんて全然考えられない。かくして、ちょっと遊ばれただけで幼い恋愛はジ・エンド。そんな経験に思い当たる節がある女性は、すごくたくさんいると思うのだ。そして、その夢見がちで現実をまだ見られない少女の妄想を、見事なパ・ド・ドゥに仕上げてしまうのだから、クランコという振付家は偉大だったといえる。その少女の感情の変化を、きめ細やかに表現していたイザベルも、素晴らしかった。

(つづく)

2009/06/11

レニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)冬公演 The Mikhailovsky Ballet Japan Tour

光藍社さんからのDMが来ていて、今年12月~1月にかけてのレニングラード国立バレエ引越し公演のお知らせが載っていました。

なんといっても、目玉は、ファルフ・ルジマトフ主演の「バヤデルカ」!古典作品はもう踊らないと思っていたので、嬉しい驚きですね。「バヤデルカ」全幕を踊るのは今回が最後になるとのことです。最後と聞くと寂しいですが、いつかはそのような日が来てしまうということで、最後に日本のファンの前に雄姿を見せてくださるのは嬉しいことです。

そして、今回でレニングラード国立バレエは20回目の引越し公演となるそうです。

2009年12月19日(土) 12:30 くるみ割り人形 ロマチェンコワ/プローム 東京国際フォーラムホールA
2009年12月19日(土) 16:30 くるみ割り人形 シェスタコワ/シヴァコフ 東京国際フォーラムホールA
2009年12月20日(日) 12:30 くるみ割り人形 ヤパーロワ/ヤフニューク 東京国際フォーラムホールA
2009年12月23日(水・祝) 11:00 くるみ割り人形 ロマチェンコワ/プローム 東京国際フォーラムホールA
2009年12月25日(金) 15:00 くるみ割り人形 ヤパーロワ/ヤフニューク オーチャードホール
2010年1月2日(土) 15:00 新春特別バレエ  ロマチェンコワ/ペレン/ヤパーロワ/プローム/コリパエフ/ヤフニューク 東京国際フォーラムホールA
2010年1月3日(日) 12:00 白鳥の湖 コシェレワ/コリパエフ 東京国際フォーラムホールA
2010年1月3日(日) 16:30 白鳥の湖 シェスタコワ/プハチョフ 東京国際フォーラムホールA
2010年1月4日(月) 12:00 白鳥の湖 ペレン/ヤフニューク 東京国際フォーラムホールA
2010年1月6日(水) 18:30 バヤデルカ ペレン/ルジマトフ オーチャードホール
2010年1月8日(金) 18:30 バヤデルカ ペレン/ルジマトフ オーチャードホール
2010年1月10日(日) 17:00 スペシャル・ガラ  オーチャードホール
2010年1月16日(土) 17:00 眠りの森の美女  ペレン/コリパエフ オーチャードホール
2010年1月17日(日) 13:00 眠りの森の美女 シェスタコワ/ヤフニューク オーチャードホール

年末の予定が開いているのは、地方公演か近郊での公演が入るって事なのかしら?

予定ソリストは、ファルフ・ルジマトフ、オクサーナ・シェスタコワ、イリーナ・ペレン、エカテリーナ・ボルチェンコ、イリーナ・コシェレワ、アナスタシア・ロマチェンコワ、サビーナ・ヤパーロワ、アルチョム・プハチョフ、ミハイル・シヴァコフ、アンドレイ・ヤフニューク、ニコライ・コリパエフ、アントン・プローム、マラト・シュミウノフ、他となっています。
今回は、イーゴリ・コールプの客演はないようですね。

「レニングラード国立バレエ スペシャル・ガラ」の内容は、
「パキータ」、「騎兵隊の休息」、「アルビノーニのアダージオ」(ルジマトフ出演)、「海賊」、「トンボ」(新作、ドリゴ作曲、ゴルスキー振付)、「チッポリーノ」より(新作、ハチャトゥリアン作曲、マイヨーロフ振付)、「スパルタクス」より、「春の水」。


今回のDMでは、セット券のみの売り出しということで、

A 「全6作品スペシャルセット」
B 「とことん!ルジマトフセット」(バヤデルカ2回+スペシャル・ガラ」
C 「みんなでルジマトフ・セット」(バヤデルカとスペシャル・ガラのペア券)
D 「バヤデルカ・セット」(バヤデルカのペア券)
E 「チャイコフスキー・セット」(チャイコフスキー3大バレエを1回ずつ観られる)

が先行発売されます。相変わらずネーミングセンスが抜群ですね。

以上、6月1日現在の情報とのことです。まだ光藍社さんのサイトには記載はありません。
6/11追記
スケジュールが光藍社のサイトにも載りました。

http://www.koransha.com/ballet/leningrad_ballet2009-10/index.html

シェスタコワの出番が少ないかな?あとタチアナ・ミリツェワ、エレーナ・コチュビラの名前がないのが気になるところです。「バヤデルカ」のガムザッティは、シェスタコワになるのかしら?色々と気になりますね。

*********
この来日公演にも出演予定のニコライ・コリパエフは、ブログを始められたようですね。6月12日に「ロミオとジュリエット」で共演する、サンフランシスコ・バレエのマリア・コチェトコワのブログから紹介がありました。

http://www.korypaev.blogspot.com/

2009/06/10

DVD「ザハーロワ/ロパートキナ」~ロシア・バレエの新たな伝説~Zakharova and Lopatkina

ザハーロワ(約27分) Svetlana Zakharova Tsarine de la Danse
■出演:スヴェトラーナ・ザハーロワ
■収録作品(抜粋)および共演ダンサー
「白鳥の湖」 A.ウヴァーロフ
「眠れる森の美女」 A.ウヴァーロフ
「シェエラザード」 F.ルジマートフ
「ミドル・デュエット」 A.メルクーリエフ
「ジゼル」「ドン・キホーテ」
「ラ・バヤデール」「瀕死の白鳥」

ロパートキナ(約27分) Ulyana Lopatkina L'Ame de la Danse
■出演:ウリヤーナ・ロパートキナ
■収録作品(抜粋)および共演ダンサー
「白鳥の湖」
J.マルティネズ/D.コルスンツェフ/E.イワンチェンコ
「病める薔薇」 I.クズネツォフ
「三つのグノシエンヌ」 I.クズネツォフ
「ラ・ヴァルス」 S.クラエフ
「愛の伝説」「ダイヤモンド」

Les films de Laurent Gentot

ザハーロワ/ロパートキナ~ロシア・バレエの新たな伝説~
発売日: 2009年4月22日
仕様: DVD/COLOR/ ドルビーデジタル・モノラル /片面1層/4:3/オリジナル言語(露)・日本語字幕付
時間: 約54分
価格: 4,410円

現在のロシア・バレエを象徴するふたりのバレリーナを追ったドキュメンタリー。フランスのmezzo制作の2本のドキュメンタリーを一つのDVDに収録。

ザハーロワ編は、彼女の「瀕死の白鳥」から始まります。ロパートキナはガラなどでよく「瀕死の白鳥」を踊るけれども、ザハロワがこれを踊ったのを観るのは初めて。彼女には、あまりこの作品を踊るというイメージがなかったけど、こうして観てみると、さすがに腕の動かし方も繊細でとても美しい。そのうち舞台で観る機会があるかしら。

そして、ニコライ・ツィスカリーゼのコメント。小さな町出身である彼女を、昔から知っているという話をしていたのがちょっと意外でした。

ザハロワは、まさに今咲き誇る華という感じで、彼女が登場するだけで舞台も稽古場も、大輪の花が咲いたように華やかになります。久しく観ていないザハロワのオーロラは本当に可愛らしくて、また観る機会があればいいなって思いました。ボリショイに移籍してからの彼女の師は、かつての名プリマ、リュドミラ・セメニャカ。師弟は非常に強い絆で結ばれている。ザハロワがとても彼女を頼りにしているのがよく伝わってきます。「ポーズを取った時にしか、自分の姿は鏡で確認できない。それ以外のときは、教師に見てもらうしかないの」

ザハロワの言葉で印象的だったのは、バレエは愛だけでなく、その裏の憎しみという負の感情も描いているものであるということ。そして、オデットの神秘性に対して、オディールの強さがあり、今の自分はオディール=強いキャラクターを演じたい、と語っていること。

ほとんどがボリショイ時代の映像なのですが、唯一、ルジマトフと共演した「シェヘラザード」の映像がありました。DVD「Kirov Dances Nijinsky」の時よりもう少し成熟した彼女の姿が観られます。

*****
ロパートキナ編は、とても知的で内省的な彼女の言葉が印象的です。「人は誰でも、人生が辛ければ辛いほど、芸術を必要とするものだと思う。観客は実生活にもつながる強い感情を求めている。それを芸術に見出すことで、人生はより豊かになるわ」 今のように不景気で閉塞感がある時代だからこそ、芸術がより一層輝ける、かけがえのない存在なんだなって私も思います。

リハーサルシーンでは、イワンチェンコのコメントがあったのがちょっと嬉しい驚きでした。

ロパートキナは、舞台が終わった後、眠りに着く前もその日の舞台を、パのひとつひとつに至るまで振り返って、魂を解放して、もう一人の自分と対話するとのこと。芸術家肌で完ぺき主義者的なところが見受けられます。挿入される映像-「病める薔薇」や「愛の伝説」「三つのグノシェンヌ」「ダイヤモンド」とも、一つ一つの動きが磨き抜かれている「動く芸術」で、ザハロワとはまた違った究極の美を感じさせます。
(そして、「病める薔薇」「三つのグノシェンヌ」のイリヤ・クズネツォフが素敵♪イワン・コズロフくんはどこに行ってしまったのでしょうか)

そんな中、ワガノワバレエ学校の卒業公演での「ラ・ヴァルス」の映像では、まだうら若い彼女の可愛い姿も観ることができます。

「白鳥の湖」は、ダニーラ・コルスンツェフ、ジョゼ・マルティネス(!)そしてエフゲニー・イワンチェンコをパートナーにしている3つのパターンで観られます。ロットバルトはもちろん、イリヤ・クズネツォフ。ダニーラの愛情あふれるサポートが素敵です。

新しい映像作品であるため、映像はとてもきれいなのですが、惜しむらくは、一つ一つの舞台映像が抜粋になっているため短いのです。せっかく映像があるんなら、もっともっと見せて欲しいという欲求不満に陥ってしまいます。2本合わせて54分だからちょっと短いのです。でも、今が盛りのトップバレリーナの、色々なパートナーと組んだ様々な作品の映像、そして素顔や肉声が聞けるのは貴重だし、面白く見ることができました。この二人のダンサーのファンなら必見です。


ザハーロワ&ロパートキナ [DVD]ザハーロワ&ロパートキナ [DVD]
スヴェトラーナ・ザハロワ, ウリヤーナ・ロパートキナ, アンドレイ・ウヴァーロフ, ニコライ・ツィスカリーゼ

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2009/06/09

トニー賞は「ビリー・エリオット」が10部門受賞!63rd Tony Awards

米演劇界で最高の栄誉とされる第63回トニー賞の授賞式が7日行われ、「ビリー・エリオット」がミュージカル作品賞など最多10部門で受賞しました。

「ビリー・エリオット」は、映画「リトル・ダンサー」のミュージカル化で、音楽はエルトン・ジョンが担当。ビリー役の少年は、トリプルキャストなのですが、この3人がミュージカル主演男優賞を同時受賞しました。また、映画で監督も務めたスティーブン・ダルドリー(アカデミー賞主演女優賞を受賞した映画「愛を読むひと」も監督)がミュージカル演出賞に輝きました。

作品賞、主演男優賞、助演男優賞、演出賞、振付賞、編曲賞(ベスト・オーケストレーションズ)
舞台デザイン賞、照明デザイン賞、音響デザイン賞も受賞、となります。

この3人の男の子たち、David Alvarez、Kiril Kulish そしてTrent Kowalikは、いずれもバレエを学ぶ少年なんですよね。現在14歳のKiril Kulishは、12歳だった2006年のYAGPでジュニア部門グランプリを受賞しています。David Alvarezは、ABT付属のジャクリーン・ケネディ・オナシス校で学んでいました。Trent Kowalikは、アイリッシュ・ダンスのチャンピオンだったそうです。

ロサンゼルス・タイムズのブログで、3人が飛び上がって喜びを表している写真が、とても可愛いです。
http://latimesblogs.latimes.com/culturemonster/2009/06/billy-elliot-actors-arent-the-first-to-win-a-joint-tony-award.html

この作品、すごく評判がいいのですが、まだ観る機会に恵まれていません。ビリー役は少年が演じることになっており、日本では法律の制限があって、この年代の子供が夜遅くに終了する舞台には出演できません。したがって、上演が難しいそうです。ブロードウェイかウェストエンド、もしくはメルボルンまで行かなくちゃ観られないですね、きっと。

私は実はミュージカルは一部の例外はあるけれども、あまり得意な分野ではないのです。が、「リトル・ダンサー」は大好きな映画なので、この「ビリー・エリオット」は観てみたいです。

インターナショナル・バレエ・カンパニー「夏休み親子芸術劇場」ジゼルほか

8月14日、16日にめぐろパーシモンで開催されるインターナショナル・バレエ・カンパニーの「夏休み親子劇場」。今年の公演は、今年4月に亡くなったエヴァ・エフドキモワの追悼公演となります。エヴァ・エフドキモワは同バレエスクールの講習会に、講師としてたびたび来日していたのですよね。

8月16日の公演は、「ナポリ」の第3幕よりパ・ド・シス、そして「ジゼル」全2幕が上演されます。
「ジゼル」全幕にベルリン国立バレエのライナー・クレンシュテッターがアルブレヒト役で出演!ベルリン国立バレエのダンサーはなかなか観られないので、これは楽しみですね。

http://www.internationaldance.com/kouen

8月16日(日)16:00開演
夏休み親子芸術劇場
ガラコンサート  ジゼル全2幕
ライナー・クレンシュテッター(ベルリン国立バレエソリスト)
菅野茉里奈(ベルリン国立バレエ)
柴田有紀
玉井るい(ウィーン国立バレエ)
中村優(ウクライナ・ハリコフバレエ劇場)
長澤美絵(ウクライナ・ドネツクバレエ団)
ヤロスラフ・サレンコ(NBAバレエ団)
アレクサンドル・ブーベル
ほか

「ジゼル」はライナー・クレンシュテッターと菅野茉里奈さんが主演するとのことで、チラシにはベルリン国立バレエ芸術監督のウラジーミル・マラーホフのコメントも入っています。柴田有紀さん、アレクサンドル・ブーベルは元K-Ballet Companyのダンサーですね。

なお、同スクールでは、7月28日~30日にドミニク・カルフーニを講師に迎えての講習会があるそうです。
http://www.internationaldance.com/index.html

2009/06/08

The Great Masters Of Art 美の巨人たち ロバート・ハインデル Robert Heindel

昨日(6月6日)放映された「美の巨人たち」は、ロバート・ハインデルにスポットを当て、彼の作品「メシアを待ちながら」をクローズアップしました。

http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/onair/index.html

故ロバート・ハインデルが、英国ロイヤル・バレエのダンサーを中心に、吉田都さんなど多くのバレエダンサーの絵画を描いたことはよく知られています。私も、Bumkamuraのギャラリーでの展覧会や、代官山のヒルサイドテラスで行われた展覧会で何回か作品を目にして、華やかな舞台ではなく、リハーサルを行っているダンサーの心理を描きこんだような、深みのある画面に目を奪われたものです。

リハーサル・スタジオでもがき苦しみ葛藤するダンサーの姿、シルエットや影、彼らの心象風景を映しているような床に描かれたフロアマーク(ダンサーがどのタイミングでどこに動けばいいのかを確認するための印)がハインデルの作品に多くには見られます。

ところが、この「メシアを待ちながら」は、他の作品とはちょっと違った、静謐さの中にも、とても激しく息苦しいものが感じられます。天を仰ぐ男女二人のダンサー、一人はより高く舞い上がろうとするけどもう一人は、パートナーを地面につなぎとめようとしているのです。それは、進行の早いガンに侵されたロバートの息子トビーを、少しでもこの世に繋ぎ止めたいという父の、身を切り裂かれるような思いが込められていたのでした。フロアマークの中には、トビーの頭文字Tがあります。

番組では、まずハインデルと縁の深かったロイヤル・バレエを訪ね、芸術監督モニカ・メイソンにインタビュー。モニカを描いた作品がロイヤル・オペラハウスの彼女の部屋に飾られていました。顔のディテールが描かれていないのに、彼女だとすぐわかるのですよね。それから、タマラ・ロホとデヴィッド・マッカテリのリハーサルの様子が少し見られます。本当に短い間のリハーサル映像でも、ドラマ性を感じさせることができるのですね、タマラは。番組のホームページを読んだら、当初は別のダンサーが予定されていたのに怪我をしてしまったため、タマラが快く引き受けてくれたとのことです。

それから、バレエ作品「メシアを待ちながら」を観たことで、ハインデルが啓示を受けたというスコティッシュ・バレエを取材班は訪れます。この作品が描かれた時のダンサー二人、トリスタンとリンダをインタビューします。今はもうバレエの世界を離れているトリスタンさんですが、ハインデルが描いてくれたことで、ダンサーとしての自分が永遠のものになっていると語ってくれた、とのことです。そして二人は、絵と同じポーズをスタジオで取ってくれました。

ちょっとバレエ作品「メシアを待ちながら」について調べようとしたのですが、スコティッシュ・バレエの現在のレパートリーからは外されているようで、どういう作品なのかは判らなかったのですよね。

トリスタンさんが、ダンサーとしての自分が絵の中で永遠のものになっている、と語っていましたが、2005年に亡くなったハインデルの魂、そして息子トビーの魂も、ダンサーたちの姿の中で息づいているのですね。

ロバート・ハインデルの作品は、こちらでたくさん観ることができます。
http://www.art-obsession.com/artists/heindel.html

ロバート・ハインデル展
2009年6月2日(火)~14日(日)
11:00-19:00
代官山ヒルサイドフォーラム
一般¥500 大学・高校生¥300
中学生以下 無料

*******
テレビの話題といえば、明日(もう今日ですが)の「徹子の部屋」に熊川哲也さんが出演します。
6月8日(月)13:20~13:55
「徹子の部屋」(テレビ朝日)

また、NHKの「わたしが子どもだったころ」に草刈民代さんが出演します。
BShi  6月10日(水)22:00-22:44
<再放送 6月12日(金)12:00-12:44>
NHK総合 6月29日(月)0:10-0:54(日曜深夜)

マリインスキー・バレエ来日兵庫・富山公演のキャスト Cast of Mariinsky Ballet in Japan

先週、よみうりテレビのytvバレエ公演事務局から、マリインスキー・バレエの兵庫公演のチラシが届いていました。

兵庫芸術文化センター KOBELCO大ホール Hyogo
マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」
日 時 2009年12月6日(日)
開 演 16:00  (開 場 15:15)
料 金 S \19,500/A \17,000/B \14,000
C \11,000/D \8,000/E \5,000

発売日
先行 2009年6月18日(木)
一般 2009年6月21日(日)

出演者
ウリヤーナ・ロパートキナ(オデット/オディール) Uliyana Lopatkina
ダニーラ・コルスンツェフ(ジークフリート王子) Danila Korsuntsev
マリインスキー・バレエ
管弦楽 ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
指揮 ミハイル・アグレスト

http://www1.gcenter-hyogo.jp/sysfile/center/top.html

http://www.ytv.co.jp/ballet09/contents/event/event_12314.html

チラシにも明記してありますが、ロパートキナとコルスンツェフという最高のペアでの公演です。日帰り可能な時間設定だし、観たいなあ~。(お金に余裕がなくて無理だと思うけど)

もう一つ、地方公演で判明したものがあります。

富山市民文化事業団 オーバード・ホール Toyama
マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」
2009年11月25日(水)
開場 : 18:00 開演 : 18:30
会場  オーバード・ホール
料金  S席  16,000円 /A席  13,000円 /B席  10,000円 /C席  7,000円/D席  5,000円
管弦楽:東京ニューシティ管弦楽団

<予定ソリスト>
オデット姫:エスカリーナ・オスモールキナ(プリンシパル・ソリスト)Ekaterina Osmolkina
王子:エフゲニー・イワンチェンコ(プリンシパル・ソリスト) Evgeny Ivanchenko
一般発売日  2009年8月8日(土)~

http://www.aubade.or.jp/enter_detail.phtml?record_id=0aab3a94f8fdf600fdec0e28fd97b0ed

富山公演は、オスモルキナのオデットなんですね!ちょっとお値段がお得な設定になっています。

2009/06/07

世界バレエフェスティバルに出演するオーストラリア・バレエの3人のダンサーThree Dancers from The Australian Ballet in WBF/マリア・コチェトコワ

オーストラリアの新聞The Ageに、今年の夏開かれる第12回世界バレエフェスティバルに出演する、オーストラリア・バレエの3人のダンサー、ルシンダ・ダン、レイチェル・ローリンズ、ロバート・カランについての記事がありました。

Ballet trio to soar as company stays grounded
http://www.theage.com.au/national/ballet-trio-to-soar-as-company-stays-grounded-20090606-bz8e.html

日本で開催されるガラが、海外の新聞でこのように紹介されるのは珍しいですよね。バレエ団の名前が入った荷物用のボックスに3人が座っている写真が、とても素敵です。

オーストラリア・バレエの芸術監督デヴィッド・マッカリスターも、「とても大きなイベントで、あれだけの偉大なダンサーたちと一緒に踊るのはとても貴重な経験だと思う」と語っています。

今年はオーストラリア・バレエは海外ツアーを行いません。お金も費用もかかることが最大の要因だそうです。(近年の不況で多くのバレエ団が財政難に陥っているとのことで、オーストラリア・バレエも例外ではないようです)

しかし、バレエ団は来年、グレアム・マーフィの「くるみ割り人形:クララの物語」を上演する予定になっており、このガラで3人が出演することは、良いプロモーションになると期待されているとのことです。

3人のうちの一人、ルシンダ・ダンは前回2006年の世界バレエフェスティバルにも出演しており(一緒に出演したマシュー・ローレンスはバーミンガム・ロイヤル・バレエに移籍)、彼女は「世界バレエフェスティバルに出演することは、アーティストとして、ダンサーとしても特別な栄誉でした」と語っています。

ルシンダは、前回の来日公演の後出産をして、現在は10ヶ月の女の子のママであり、最近舞台に復帰したばかりだそうです。彼女は、他のバレエ団のダンサーたちと交流したり一緒にレッスンを受けることも楽しみにしているそうです。

ロバート・カランも、バレエフェスティバルで踊り、他のトップダンサーたちが踊るのを観るのを楽しみにしています。彼は、バレエが非常に人気があり、ダンサーがロックスターのように扱われている日本で踊ることが特に楽しみだそうです。また彼は、リハーサルや公演の間に、東京の観光をしたり、食事をすることも楽しみだそうで。

*****
先週末に、世界バレエフェスティバルの上演演目が記載された新しいチラシがNBSから送られてきました。追加出演が決定したレイチェル・ローリンズは、Bプロの「白鳥の湖」第3幕より、とガラの「白鳥の湖」第1幕より、にルシンダとロバートと3人で出演するので、オデット、ロットバルト伯爵夫人と王子のパ・ド・トロワなのではないかと思います。オーストラリア・バレエの前回の来日公演で、ルシンダ・ダンのロットバルト伯爵夫人が大熱演で見ごたえがありました。きっと今回も、またあの素晴らしいドラマティックな演技を見せてくれることでしょう。

*****

世界バレエフェスティバル関連でもう一つ。

サンフランシスコのマリア・コチェトコワがモスクワで「ドン・キホーテ」のキトリを踊り、そして12日にはミハイロフスキー劇場で「ロミオとジュリエット」のジュリエットを踊るというお知らせを先日載せました。その「ドン・キホーテ」の模様と、ロイヤル・オペラハウスでのキトリのリハーサルの写真が、彼女のブログに載っています。

http://www.mariakochetkova.com/2009/06/rehearsal-of-don-quixote-at-royal-opera.html

http://www.mariakochetkova.com/2009/06/don-quixote-in-moscow_07.html

ものすごい跳躍ですね!ダニール・シムキンと共演する「ドン・キホーテ」がとても楽しみになってきました。

2009/06/06

オランダ国立バレエ「ジゼル」DVD化 「GISELLE」 Dutch National Ballet

オランダ国立バレエの「ジゼル」が、2009年夏にDVD&Blu-Ray化される予定とのことです。発売元はNVC Artsです。(まだNVC Artsのサイトには記載なし)

制作会社3minuteswestのサイトに詳細が掲載されていました(ジャケット写真つき)。ロパートキナ、ラカッラ、レジュニナらが出演した「Hans Van Manen Festival」の映像を制作したところですね。

http://www.3minuteswest.com/giselle.htm

Cast:
Giselle - Anna Tyskgankova
Albrecht - Jozef Varga
Myrtha - Igone de Jongh
Hilarion - Jan Zerer

Choreography:
Marius Petipa, after Jean Coralli and Jules Perrot
Production and additional choreography:
Rachel Beaujean and Ricardo Bustamante

Recorded at Het Muziektheater, Amsterdam, February 2009
To be released on Blu-Ray / DVD summer 2009.

このDVDからの舞台映像(ジゼルの狂乱の場面、ウィリとしての登場シーン、アルブレヒトのヴァリエーションなど)と特典用インタビュー、リハーサルの一部がYouTubeに、制作会社によって投稿されています。インタビューは英語なので聞き取りやすいです。YouTubeでの映像がとても素敵で、この映像、かなり期待できそうです。

2009/06/05

白鳥の湖 SWAN LAKE 新国立劇場バレエ団オフィシャルDVD BOOKS New National Ballet Theatre

新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」 Swan Lake New National Ballet Theatre TOKYO

【DVDの内容】
白鳥の湖 全4幕 約134分
振付:プティパ/イワーノフ 作曲:チャイコフスキー
改訂振付・演出:牧 阿佐美
主演:酒井はな/山本隆之
2006年11月18日 新国立劇場収録

【特典映像】
新国立劇場バレエ団 ソリスト・セレクション 約42分 (舞台ハイライトシーンとインタビュー)
眠れる森の美女 / 川村真樹
ドン・キホーテ / 寺島ひろみ・小嶋直也
カルメン / 本島美和
オルフェオとエウリディーチェ / 酒井はな・山本隆之

【書籍の内容】
白鳥の湖
あらすじ(小学生高学年向けにルビつき)
プロダクション・ノート
DVD映像出演者一覧
『白鳥の湖』改訂振付にあたって 牧阿佐美
主演プロフィール&インタビュー 酒井はな・山本隆之
白鳥の湖 10の扉 長野由紀


オデット/オディール:酒井はな Hana Sakai
王子:山本隆之 Ryuji Yamamoto
ロットバルト 貝川鐵夫
パ・ド・トロワ 高橋有里、さいとう美帆 マイレン・トレウバエフ
道化 グレゴリー・バリノフ
小さい4羽の白鳥: 遠藤睦子、西山裕子、本島美和、大和雅美
大きい4羽の白鳥: 真忠久美子、厚木三杏、川村真樹、寺島まゆみ
スペイン 楠元郁子、厚木三杏、マイレン・トレウバウエフ、冨川祐樹
ナポリ 井倉真未、小野絢子、八幡顕光
ルースカヤ 湯川麻美子
ハンガリー 西山裕子、市川透
花嫁候補 真忠久美子、本島美和、川村真樹、寺島まゆみ、丸尾孝子、堀口純
2羽の白鳥 厚木三杏、川村真樹

やっとこのDVDを観られた!「ライモンダ」同様、ハイビジョン映像に慣れてきた身には、画質があまりよくないのがひじょうに残念なのだけど、公演の内容は非常に良かった。

先日、新国立劇場の「白鳥の湖」(ザハロワ主演)を観に行ったのだけど、2年ちょっとの間に、世代交代によってかなり主力メンバーが変わってしまったのではないか。このDVDに収録されている「白鳥の湖」のコール・ドの方が、段違いに素晴らしい。映像で観ていても、これだけ揃っていて美しいのだから、実際の公演はもっと凄かっただろう。この日の公演は観に行っていなくて、やはりザハロワ主演の日を観に行っていた。その時も、やはり群舞が素晴らしいと思っていたはずなんだけど、今回映像を観て、あの時もこんなにも惚れ惚れして感動するほど美しかったのだろうな、としみじみ考え込んでしまった。世代交代というのは必要なことなのだろうけど、現在の新国立劇場のコール・ドは、残念ながら、このレベルまでは到達していない。過去これほどまでに素晴らしかったのだから、きっともう少しすれば、またこの映像に刻まれた完璧なコール・ドが戻ってくると思うのだけど。

酒井はなさんの踊りが素晴らしくて、彼女のオデットがこうやって映像に残って良かった、と思った。はなさんのオデットは、とても丁寧に心を込めて踊っているのがよくわかる。腕の雄弁な、しかも繊細な表現力が見事。プロポーションの美しさでは外国人には勝てない日本人バレリーナが、磨きぬかれた表現力でそのハンディを見事に克服している。彼女がここまでの高みに到達するまで、どれほどの鍛錬と努力、年月を要したのだろうか、と思うほどだった。とても筋肉質なのと、メイクの印象もあって、マリーヤ・アレクサンドロワのオデットを少し思い出させたのだけど、はなさんの方が細やかだし、ドラマティックで悲劇的だと思った。彼女のオデットは儚げな感じはあまりなくて強さも感じさせるのだけど、圧倒的な悲劇性を感じさせる。だから、どうしても、とってつけたようなハッピーエンドになっている牧阿佐美版の演出には違和感がある。4幕最後のオデットの微笑みはとても可愛らしくて、ホッとさせてはくれるのだけど。

そして、はなさんのオディールは艶やかで魅力的だ。あからさまな媚も邪悪さもないけれども、圧倒的な魔力、吸引力があって、王子がその魅力に抗うことができなくなっていくのがわかる。技術的にも非の打ち所がなく、グラン・フェッテはダブルを入れて安定して回っていた。きちんと白鳥と黒鳥と演じ分けているのが感じられる。

山本さんの王子は、甘くてとてもノーブルで、雰囲気は王子様そのもの。サポートもうまい。ただ、彼は古典のテクニックは強くなく、三幕のヴァリエーションのカブリオールでは、脚が思いっきり内股だったのが残念だった。男性ダンサーの強化は新国立劇場の大きな課題だと思う。

パ・ド・トロワの3人は、最高に良かった。マイレンが素晴らしいのは言うまでもなく、完璧なアンドゥオール、きれいな着地、端正で実に美しい。そして高橋有里さん、さいとう美帆さんも、派手さはないけれども、音によく乗ってきちんと正確に踊っていた。先日の「白鳥の湖」初日での、誰とは言わないけどひどいパ・ド・トロワとは大違いだ。

バリノフくんは道化の衣装がとってもよくお似合いで、愛嬌があって魅力的。3幕の民族舞踊もみんなそれぞれすごく良いメンバーをそろえている。スペインのマイレンが笑っちゃうほど濃くて目が吸い寄せられてしまうのはもちろんだけど、楠元さんがとてもいいダンサーだなって改めて思った。最近彼女は「白鳥の湖」では王妃だったり、小林紀子バレエシアターの「眠り」ではカラボスだったり、「ラ・シルフィード」ではマッジだったりと、キャラクター役が多くて。演技が上手な方だからそれも頷けるのだけど、踊る役でももっと観たいな、って思った。それから、花嫁候補の顔ぶれが、改めて見るとかなり豪華なメンバーで、さすがにちゃんとお姫様らしい立ち居振る舞いや演技になっていて、観ていて面白かった。2羽の白鳥の厚木さんと川村さん、特に川村さんがすごくたおやかで美しくて、本物の白鳥みたい!

というわけで、このDVDに収録された公演はとても出来が良くて見ごたえたっぷり。ピーター・カザレットによる舞台衣装や装置も荘厳さと洗練を両立させていて美しい。やっぱり最大の見所はコール・ドとはなさんの白鳥だろう。この映像で、新国立劇場バレエ団の(この時点での)レベルの高さがよく判ると思う。

****
このDVD、映像特典が非常に充実している。まずは、主演の二人のインタビュー。特に酒井はなさんのインタビューは、オデットという役を々考えているのかが、よくわかって面白かった。山本さんは、舞台映像で素敵だっただけに、インタビューで声がすごくしわがれているのにちょっとびっくり。

新国立劇場バレエ団 ソリスト・コレクションでは、4つの作品のハイライトと、出演者のインタビューが収められている。「ドン・キホーテ」はグラン・パ・ド・ドゥだと思っていたら、小嶋直也さんの1幕のパ・ド・トロワと、寺島まゆみさんの3幕のヴァリエーションだった。小嶋さんのバジルの映像は貴重!川村さんのローズ・アダージオは、とてもキラキラしていて、お姫様らしい鷹揚さがあって素敵だった。

そして何より嬉しかったのが、「オルフェオとエウリディーチェ」の抜粋。これが一番長いハイライト映像。改めて観てみると、とてもクリエイティブで面白い作品だったと思った。山本さんはやっぱりコンテンポラリー作品で光る人だと思うし、はなさんの表現力の豊かさにも、目を瞠らされる。ぜひこの作品は、また酒井はなさん、山本さん主演で再演して欲しい。42分もの特典映像は、本当にありがたい。

写真満載の美しい本もついていて、この値段は本当にお買い得!映像がもう少し美しければ、言うことがなかったのだけど、企画は本当に素晴らしいので、ぜひ第三弾以降も出して欲しいと思う。

白鳥の湖 SWAN LAKE 新国立劇場バレエ団オフィシャルDVD BOOKS (バレエ名作物語 Vol. 1)白鳥の湖 SWAN LAKE 新国立劇場バレエ団オフィシャルDVD BOOKS (バレエ名作物語 Vol. 1)
牧 阿佐美(新国立劇場バレエ団・芸術監督)

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ところで、今日新国立劇場から封書が届いて、なんだろうって開けてみたら、ミニ色紙に山本隆之さんのサインと、新国立劇場特製一筆箋が入っていました。DVDの予約特典で先着100名様にサイン色紙プレゼント、とあったけど、けっこうぎりぎりになってから申し込んだもので、100人には入っていないだろうな、と思っていたので嬉しいです。一筆箋は、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」でアンケートに答えたら貰って、それからDVDにも同封されたので、これで3冊目です!

2009/06/04

ハンブルク・バレエ「バレエ・リュスへのオマージュ」ニュース映像 Hamburg Ballett"Hommage aux Ballett Russes".

6月28日に、ハンブルク・バレエで「バレエ・リュスへのオマージュ」のプレミアが行われます。

「アルミードの館」(ノイマイヤー振付)、「放蕩息子」(バランシン振付)そして「春の祭典」(ニジンスキー振付)の3作品が、ハンブルク・バレエでの初演となります。まだキャスト等は決まっていないようです。
http://www.hamburgballett.de/e/index.htm

このプレミアについてのYouTube上のニュース番組映像を、Facebookのハンブルク・バレエオフィシャルコミュニティとTwitterで紹介しているので、ここでも映像を紹介して差し支えないものとして、ご紹介します

「ニジンスキー」の舞台映像、ノイマイヤーが集めたニジンスキーによる絵画をはじめとするニジンスキー・コレクション「Vaslav Nijinsky's Eye」展示の様子、「人魚姫」のリハーサル(あの人魚姫の長い袴を着けたエレーヌ・ブシェが出演)、シルヴィア・アッツオーニのインタビュー、そしてバレエ学校のレッスンの様子が紹介されています。ドイツ語は全然わからないのですが、すごく興味深い番組です。

******
Twitterネタでもう一つ。今年の世界バレエフェスティバルで、ダニール・シムキンと「ドン・キホーテ」に主演するマリア・コチェトコワ(サンフランシスコ・バレエ)。彼女のTwitterとブログの情報によると、6月6日にモスクワで「ドン・キホーテ」、そして6月12日にはミハイロフスキー劇場(レニングラード国立バレエ)で「ロミオとジュリエット」に出演するそうです。

ジュリエット役については、今月のダンス・マガジンにも登場したアラ・オシペンコの指導を受けているとのこと。

http://www.mariakochetkova.com/2009/06/romeo-juliet-in-st-petersburg.html

ミハイロフスキー劇場のトップにも、彼女の客演についてのニュースが書いてありますね。当日のキャストはこちら
http://www.mikhailovsky.ru/en/afisha/shows.html?date=2009-06-12

ロミオ役は、ニコライ・コリパエフです。ミハイロフスキー劇場のサイトによると、マリアはジュリエットを踊るのが夢だったとありますので、この役を踊ること自体初めてのようですね。

最近はいろいろなメディアを使って、バレエ団やダンサーが情報発信をしていますね!

ABT・ラトマンスキーの新作「On the Dnieper」/ダニール・シムキンが「放蕩息子」に

ABTの常任振付家に就任したアレクセイ・ラトマンスキーの新作「On the Dnieper(ドニェプルの岸辺で)」が6月1日にプレミアを迎えました。

この作品は、ディアギレフの最後のプロデュース作品と言われており(異説あり)、プロコフィエフのスコアを用いてセルジュ・リファールが振り付け、1932年にパリ・オペラ座バレエで上演されたものの、すぐにレパートリーから外れていたものです。

ウクライナの小さな町が舞台。第一次世界大戦から戻ってきた兵士セルゲイが、婚約者ナタリアよりも、別の女性オルガのことを愛していることに気づきます。オルガにも婚約者がいて、オルガの婚約式の席上、嫉妬に駆られたセルゲイはオルガの婚約者と争いを始めます。やがて招待客はいなくなり、セルゲイ、ナタリアそしてオルガの3人だけになります。ナタリアは身を引いて恋人たちを旅立たせ、一人悲しみに暮れて残されます。

40分という上演時間のこの作品、初演キャストは、セルゲイにマルセロ・ゴメス、オルガにパロマ・ヘレーラ、ナタリアにヴェロニカ・パルト、そして婚約者にデヴィッド・ホールバーグと魅力的です。

ABTの特設サイトでこの作品のリハーサル映像を観ることができます。名ダンサーとして知られたラトマンスキーなので、振付指導の時には、自ら踊って見せてくれるんですね。
http://www.abt.org/dnieper/photos_videos.html

ブルームバーグでのインタビューでラトマンスキーは、振付の際にはダンサーに、このキャラクターが自分だったらどうするか、どうやってリフトを行って着地させるか、といった質問を投げかけたと語っています。いいステップが思い浮かばない時には、ダンサーにアイディアをもらうとのことで、マルセロ・ゴメスは多くのインスピレーションを与えてくれたとのこと。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601088&sid=ayePZgDPmll4&refer=home

ラトマンスキーの振付家としての最初の大きな作品は、1998年にニーナ・アナニアシヴィリに振付けた"Dreams of Japan”で、以降大、成功を収めた「明るい小川」はじめ、40あまりの作品を振付けてきました。古典バレエからディアギレフ時代の作品、さらにはフォーサイスなど様々な影響の産物が、現在の自分のスタイルだと彼は語っています。古典のアカデミックなステップを、現在多くは使われていなくて、スペクタクル的だからということで使うことを好んでいるそうです。「ロシアでは僕はとても西洋的だと思われていて、NYではその逆だと思われているんだ。国際的であることはすごく楽しい。わざとそのように振舞っているのかもしれないね」現在の成功の要因は?と聞かれ、「運だね」と謙虚に答えたラトマンスキー。「ロシアン・スクールで学んだことと僕の未熟さと西洋での経験の組み合わせなんだと思う」

もう一つ、ラトマンスキーのインタビュー記事があります。息子さん、かわいいですね!
http://www.nytimes.com/2009/05/31/arts/dance/31sulc.html?ref=dance

******
さて、この作品の評判ですが、現地フォーラムでは好評のようです。ただし、NYのメディアは辛口で知られており、意外と手厳しい評もあります。New York Timesのアレイスター・マコーリー氏の評とか。

http://www.nytimes.com/2009/06/03/arts/dance/03abt.html?_r=1&hpw

ラトマンスキーも語っていますが、プロコフィエフのスコアは美しいものの、ドラマティックさに欠けており、バレエ化するには困難な素材のようです。ラトマンスキーは、音楽の抽象性ゆえ、振付も抽象化したり、マイムを使ったりしたと語っていますが、難しかったようです。4人の男女を主人公にしており、特にセルゲイ、ナタリア、オルガのパ・ド・トロワがとても美しく、心理的な表現にはラトマンスキーの才能が発揮されているものの。

ちょうど同じ時期に、同じNYのシティセンターでエイフマン・バレエの「オネーギン」が上演されており、ロシア系振付家の2つの新作ということで何かと比較されていたようです。「オネーギン」の方も賛否両論を呼んでいる作品のようですが、写真を見ると斬新でカッコいいんですよね。群舞はまるでマイケル・ジャクソンの「スリラー」のゾンビダンスのよう、とか書かれていますが(笑)。
http://www.nytimes.com/2009/06/01/arts/dance/01eifm.html

*****
さて、この「On the Dnieper」は、ABTのプロコフィエフ・プロでの3作品のうちの一つです。バランシンの「放蕩息子」が同時上演なのですが、イーサン・スティーフェルの怪我により、キャストがシャッフルされ、初日はエルマン・コルネホが主演しました。エルマンの放蕩息子は素晴らしかったようです。そして、ダニール・シムキンが急遽、放蕩息子役にキャストされたんですね。イーサンの怪我は本当に心配ですが、エルマン、ダニール、そしてアンヘル・コレーラが「放蕩息子」を踊るなんて、なんて贅沢なプログラムだろうって思います。エイフマン・バレエの「オネーギン」、NYCB、そしてABTのプロコフィエフ・プロとNYでのバレエ公演はすごく充実しています。日本は今はちょうどバレエ公演の少ない時期なので、羨ましいです。

イーゴリ・ゼレンスキー出演新作「Immortal Beloved」のゲネプロ映像

台湾出身の元NYCBのソリストEdwaard Liangは、現在はクリストファー・ウィールダンのMorphosesのダンサーとして、そして振付家として活躍しています。NYCBはじめ世界中のカンパニーで彼の作品は上演されています。

彼のオフィシャルチャンネルがYouTubeにあって、そこで、彼がイーゴリ・ゼレンスキーと、ゼレンスキーが芸術監督を務めるノボシビルスク・バレエに振付けた新作「Immortal Beloved」のゲネプロ映像を観ることができます。

http://www.youtube.com/watch?v=UIUURz-RD9A

作品そのものやフィリップ・グラスによる音楽がとても美しいし、ゼレンスキーが一頃の不振を脱して、ダンサーとしても充実期を迎えているのがよくわかる映像です。

今年2月26・27日のノボシビルスク・バレエでの初演の時のプレイビルです(ロシア語)
http://www.opera-novosibirsk.ru/afisha/index.php?caf:e=4&caf:id=1191

2009/06/01

ボリショイの岩田守弘さんにロシア大統領から「友好勲章」

昨年のボリショイ・バレエの来日公演でも、「明るい小川」や「白鳥の湖」で素晴らしい演技・踊りを見せてくれた岩田守弘さんが、勲章を授与されました。ロシアのメドベージェフ大統領が、「友好勲章」を授与する大統領令を出したとのことです。

http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060101000728.html

【モスクワ1日共同】ロシアのメドベージェフ大統領は1日までに、モスクワのボリショイ劇場で第1ソリストとして活躍するバレエダンサー岩田守弘さん(38)に「友好勲章」を授与する大統領令を出した。

 横浜市出身の岩田さんは1995年に同劇場に入団。外国人で初のソリストになった。バレエダンサーとしては小柄だが、跳躍力や演技力が高く評価されている。

授与の理由については、「日ロの文化交流の発展に多大な貢献をし、ロシア芸術を広めた」としている。

岩田守弘さんのオフィシャルブログでは、いつも芸術家としての真摯な姿と、たまに見せるおちゃめなところも読めて、いつも楽しく読んでいます。

http://ibashika.exblog.jp/

岩田さんの、今後ますますのご活躍をお祈りします!

追記:ジャパン・アーツのブログにもこのニュースが載りました。
http://ja-ballet.seesaa.net/article/120680527.html

******
なお、岩田さんを講師に迎えての特別講座が、朝日カルチャーセンターで開催されます。

8月18日(火)19:00
朝日カルチャーセンター・新宿
「ボリショイ・バレエの伝統、そして現在」
バレエダンサー・振付家 岩田 守弘
舞踊評論家 守山 実花

http://www.asahiculture-shinjuku.com/LES/detail.asp?CNO=46804&userflg=0

世界バレエフェスティバル A&Bプロの演目 World Ballet Festival Program A&B

世界バレエフェスティバル A&Bプロの演目は以下の通り発表されました。

http://www.nbs.or.jp/stages/0908_wbf/program.html

雑感などは後で追記します。ローラン・プティの作品を世界バレエ・フェスティバルでやるのはちょっとびっくりでした。

Aプロ
<上演作品>
☆エレーヌ・ブシェ (ハンブルク・バレエ)&ティアゴ・ボァディン (ハンブルク・バレエ) 
 「オテロ」(ジョン・ノイマイヤー振付)

☆アリーナ・コジョカル (英国ロイヤル・バレエ団)&ヨハン・コボー (英国ロイヤル・バレエ団)
 「コッペリア」(アルテュール・サン=レオン振付)

☆エリザベット・ロス (モーリス・ベジャール・バレエ団)&ジル・ロマン (モーリス・ベジャール・バレエ団)
 「フォーヴ」(ジャン=クリストフ・マイヨー振付)

☆ルシンダ・ダン (オーストラリア・バレエ団)&ロバート・カラン (オーストラリア・バレエ団)
 「くるみ割り人形」(グレアム・マーフィ振付)

☆オレリー・デュポン (パリ・オペラ座バレエ団)&マニュエル・ルグリ (パリ・オペラ座バレエ団)
 「椿姫 第一幕のパ・ド・ドゥ」(ジョン・ノイマイヤー振付)

☆マリア・アイシュヴァルト (シュツットガルト・バレエ団)&フィリップ・バランキエヴィッチ (シュツットガルト・バレエ団)
 「ライモンダ」第三幕パ・ド・ドゥ(マリウス・プティパ振付)

☆シルヴィ・ギエム (英国ロイヤル・バレエ団)&ニコラ・ル・リッシュ (パリ・オペラ座バレエ団)
 「クリティカル・マス」(ラッセル・マリファント振付)

☆マリア・コチェトコワ (サンフランシスコ・バレエ団)&ダニール・シムキン (アメリカン・バレエ・シアター)
 「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(ジョージ・バランシン振付)

☆アニエス・ルテステュ (パリ・オペラ座バレエ団)&ジョゼ・マルティネス (パリ・オペラ座バレエ団)
 「天井桟敷の人々」(ジョゼ・マルティネス振付)

☆マリアネラ・ヌニェス (英国ロイヤル・バレエ団)&ティアゴ・ソアレス (英国ロイヤル・バレエ団)
 「海賊」(マリウス・プティパ振付)

☆ナターリヤ・オシポワ (ボリショイ・バレエ)&レオニード・サラファーノフ (マリインスキー・バレエ)
 「ドン・キホーテ」(マリウス・プティパ振付)

☆シオマラ・レイエス (アメリカン・バレエ・シアター)&ホセ・カレーニョ (アメリカン・バレエ・シアター)
 「ディアナとアクティオン」(アグリッピナ・ワガノワ振付)

☆タマラ・ロホ (英国ロイヤル・バレエ団)
 「エラ・エス・アグア〜She is Water」(ゴヨ+モンテロ振付)

☆ヤーナ・サレンコ (ベルリン国立バレエ団)&ズデネク・コンヴァリーナ (ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)
 「くるみ割り人形」(レフ・イワーノフ振付)

☆ポリーナ・セミオノワ (ベルリン国立バレエ団)&フリーデマン・フォーゲル (シュツットガルト・バレエ団)
 「マノン 寝室のパ・ド・ドゥ」(ケネス・マクミラン振付)

☆上野 水香 (東京バレエ団)&デヴィッド・マッカテリ (英国ロイヤル・バレエ団)
 「ジゼル」(コラーリ&ペロー振付)

☆ディアナ・ヴィシニョーワ (マリインスキー・バレエ)&ウラジーミル・マラーホフ (ベルリン国立バレエ団)
 「カシミールの色」(マウロ・ビゴンゼッティ振付)

☆スヴェトラーナ・ザハロワ (ボリショイ・バレエ)&アンドレイ・ウヴァーロフ (ボリショイ・バレエ)
 「白鳥の湖 黒鳥のパ・ド・ドゥ」(マリウス・プティパ振付)

Bプロ
http://www.nbs.or.jp/stages/0908_wbf/program-b.html

<上演作品>
☆エレーヌ・ブシェ (ハンブルク・バレエ)&ティアゴ・ボァディン (ハンブルク・バレエ) 
 「いにしえの祭り」(ジョン・ノイマイヤー振付)

☆アリーナ・コジョカル (英国ロイヤル・バレエ団)&ヨハン・コボー (英国ロイヤル・バレエ団)
 「マノン 沼地のパ・ド・ドゥ」(ケネス・マクミラン振付)

☆ルシンダ・ダン (オーストラリア・バレエ団)&ロバート・カラン (オーストラリア・バレエ団)
 「白鳥の湖 第三幕より」(グレアム・マーフィ振付)

☆オレリー・デュポン (パリ・オペラ座バレエ団)&マニュエル・ルグリ (パリ・オペラ座バレエ団)
 「ベラ・フィギュラ」(イリ・キリアン振付)

☆マリア・アイシュヴァルト (シュツットガルト・バレエ団)&フィリップ・バランキエヴィッチ (シュツットガルト・バレエ団)
 「オネーギン」第三幕パ・ド・ドゥ(ジョン・クランコ振付)

☆シルヴィ・ギエム (英国ロイヤル・バレエ団)&ニコラ・ル・リッシュ (パリ・オペラ座バレエ団)
 「アパルトマン」(マッツ・エック振付)

☆マリア・コチェトコワ (サンフランシスコ・バレエ団)&ダニール・シムキン (アメリカン・バレエ・シアター)
 「パリの炎」(ワシリー・ワイノーネン振付)

☆アニエス・ルテステュ (パリ・オペラ座バレエ団)&ジョゼ・マルティネス (パリ・オペラ座バレエ団)
 「スリンガーランド・パ・ド・ドゥ」(ウィリアム・フォーサイス振付)

☆マリアネラ・ヌニェス (英国ロイヤル・バレエ団)&ティアゴ・ソアレス (英国ロイヤル・バレエ団)
 「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(ジョージ・バランシン振付)

☆ナターリヤ・オシポワ (ボリショイ・バレエ)&レオニード・サラファーノフ (マリインスキー・バレエ)
 「海賊」(マリウス・プティパ振付)

☆シオマラ・レイエス (アメリカン・バレエ・シアター)&ホセ・カレーニョ (アメリカン・バレエ・シアター)
 「ロミオとジュリエット バルコニーのパ・ド・ドゥ」(ケネス・マクミラ振付)

☆タマラ・ロホ (英国ロイヤル・バレエ団)&フェデリコ・ボネッリ (英国ロイヤル・バレエ団)
 「エスメラルダ」(マリウス・プティパ振付)

☆エリザベット・ロス(モーリス・ベジャール・バレエ団)&ジル・ロマン (モーリス・ベジャール・バレエ団)
 「ブレルとバルバラ」(モーリス・ベジャール振付)

☆ヤーナ・サレンコ (ベルリン国立バレエ団)&ズデネク・コンヴァリーナ (ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)
 「コッペリア」(アルテュール・サン=レオン振付)

☆ポリーナ・セミオノワ (ベルリン国立バレエ団)&フリーデマン・フォーゲル (シュツットガルト・バレエ団)
 未定

☆上野 水香 (東京バレエ団)&デヴィッド・マッカテリ (英国ロイヤル・バレエ団)
 「白鳥の湖 黒鳥のパ・ド・ドゥ」(マリウス・プティパ振付)

☆ディアナ・ヴィシニョーワ (マリインスキー・バレエ)&ウラジーミル・マラーホフ (ベルリン国立バレエ団)
 「ル・パルク」(アンジェラン・プレルジョカージュ振付)

☆スヴェトラーナ・ザハロワ (ボリショイ・バレエ)&アンドレイ・ウヴァーロフ (ボリショイ・バレエ)
 「ドン・キホーテ」(マリウス・プティパ振付)

世界バレエフェスティバルのガラ公演演目発表 The 12th World Ballet Festival Gala Programme

世界バレエフェスティバルのガラ公演とABプロの演目が発表されました。

ガラ公演の詳細はこちらをご覧になって、ご確認ください。(発売日、発売方法など)
http://www.nbs.or.jp/stages/0908_wbf/gala.html

■公演日:8月13日(木)5:00p.m.
■会場:東京文化会館
■入場料 (税込)
S ¥28,000  A ¥25,000  B ¥22,000  C ¥18,000 
D ¥14,000  E ¥10,000

オーストラリア・バレエ団のレイチェル・ローリンズがBプロとガラ公演に出演することも決定したそうです。また、フェデリコ・ボネッリ(英国ロイヤル・バレエ団)はBプロとガラ公演のみの出演となったとのこと。

<上演作品>
☆エレーヌ・ブシェ (ハンブルク・バレエ)&ティアゴ・ボァディン (ハンブルク・バレエ) Helene Bouchet & Thiago Boardin 
ジョン・ノイマイヤー振付作品(未定)John Neumeier work(TBA)

☆アリーナ・コジョカル (英国ロイヤル・バレエ団)&ヨハン・コボー (英国ロイヤル・バレエ団) Alina Cojocaru & Johan Kobborg 
「春の声」(フレデリック・アシュトン振付) Voices of Spring (Frederick Ashton)

☆ルシンダ・ダン (オーストラリア・バレエ団)&ロバート・カラン (オーストラリア・バレエ団) Lucinda Dunn & Robert Curran
 「白鳥の湖」第1幕より(グレアム・マーフィ振付)Swan Lake Act 1 (Greham Murphy)

☆オレリー・デュポン (パリ・オペラ座バレエ団)&マニュエル・ルグリ (パリ・オペラ座バレエ団) Aurelie Dupont & Manuel Legris
 「ソナチネ」(ジョージ・バランシン振付) Sonatine (George Balanchine)

☆オレリー・デュポン (パリ・オペラ座バレエ団)&ローラン・イレール (パリ・オペラ座バレエ団) Aurelie Dupont & Laurent Hilare
 「ロミオとジュリエット」(アンジェラン・プレルジョカージュ振付) Romeo and Juliet (Angelin Preljocaj)

☆マリア・アイシュヴァルト (シュツットガルト・バレエ団)&フィリップ・バランキエヴィッチ (シュツットガルト・バレエ団) Maria Eichwald & Filip Barankiewicz
 「じゃじゃ馬ならし」第一幕パ・ド・ドゥ(ジョン・クランコ振付) Der Widerspenstigen Zähmung (John Cranko)

☆シルヴィ・ギエム  Sylvie Guillem
 「TWO」(ラッセル・マリファント振付) TWO(Russel Maliphant)

☆マリア・コチェトコワ (サンフランシスコ・バレエ団)&ダニール・シムキン (アメリカン・バレエ・シアター) Maria Kochetkova & Daniil Simkin
 「海賊」(マリウス・プティパ振付) Le Coisaire (Marius Petipa)

☆アニエス・ルテステュ (パリ・オペラ座バレエ団)&ジョゼ・マルティネス (パリ・オペラ座バレエ団)Agnes Letestu & Jose Martinez
 「ジゼル」(コラーリ&ペロー振付) Giselle

☆マリアネラ・ヌニェス (英国ロイヤル・バレエ団)&ティアゴ・ソアレス (英国ロイヤル・バレエ団) Marianela Nunez & Thiago Soares 「三人姉妹」(ケネス・マクミラン振付) Winter Dreams (Kenneth MacMillan)

☆ナターリヤ・オシポワ (ボリショイ・バレエ)&レオニード・サラファーノフ (マリインスキー・バレエ) Natalia Osipova & Leonid Sarafanov
 「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(ジョージ・バランシン振付) Tchaikovsky Pas de Deux

☆シオマラ・レイエス (アメリカン・バレエ・シアター)&ホセ・カレーニョ (アメリカン・バレエ・シアター) Xiomara Reyes & Jose Manuel Carreno
 「マノン 沼地のパ・ド・ドゥ」(ケネス・マクミラン振付) Manon Swamp Pas de Deux (Kenneth MacMillan)

☆タマラ・ロホ (英国ロイヤル・バレエ団)&フェデリコ・ボネッリ (英国ロイヤル・バレエ団) Tamara Rojo & Federico Bonneli
 「カルメン」(ローラン・プティ振付) Carmen (Roland Petit)

☆エリザベット・ロス (モーリス・ベジャール・バレエ団)&ジル・ロマン (モーリス・ベジャール・バレエ団) Elisabet Ros & Gil Roman
 「カンティーク」(モーリス・ベジャール振付) Cantique (Maurice Bejart)

☆ヤーナ・サレンコ (ベルリン国立バレエ団)&ズデネク・コンヴァリーナ (ナショナル・バレエ・オブ・カナダ) Iana Salenko & Zdenek Konvalina
 「パリの炎」(ワシリー・ワイノーネン振付) Flames of Paris (Vasily Vainonen)

☆ポリーナ・セミオノワ (ベルリン国立バレエ団)&フリーデマン・フォーゲル (シュツットガルト・バレエ団) Polina Semionova & Friedemann Vogel
 未定 TBA

☆上野 水香 (東京バレエ団)&デヴィッド・マッカテリ (英国ロイヤル・バレエ団) Mizuka Ueno & David Makhateli
 「ドン・キホーテ」(マリウス・プティパ振付) Don Quixote (Marius Petipa)

☆ディアナ・ヴィシニョーワ (マリインスキー・バレエ)&ウラジーミル・マラーホフ (ベルリン国立バレエ団) Diana Vishneva & Vladimir Malakhov
 「ジュエルズより ダイヤモンド」(ジョージ・バランシン)Diamonds from Jewels (George Balanchine)

☆☆スヴェトラーナ・ザハロワ (ボリショイ・バレエ)&アンドレイ・ウヴァーロフ (ボリショイ・バレエ) Svetlana Zakharova & Andrei Uvarov
 「マクベス」(ウラジーミル・ワシーリエフ振付) Macbeth (Vladimir Vasiliev)

☆☆マニュエル・ルグリ (パリ・オペラ座バレエ団) Manuel Legirs
 「ア・ピクチャー・オブ」(パトリック・ド・バナ振付) A Picture of...(Patrick de Bana)

☆☆ニコラ・ル・リッシュ (パリ・オペラ座バレエ団) Nicolas Le Riche
 未定 TBA

****
ガラはもちろん、観に行けるかどうかは現時点ではまったくわからないもので…。

未定の演目があるので、なんともいえないところです。ザハロワとウヴァーロフの演目が、AとBが「黒鳥」「ドン・キホーテ」って、まるで新国立劇場じゃん、って感じなので、ガラで「マクベス」をやるのはちょっと楽しみです。(観たことがない作品ですが)

マラーホフとヴィシニョーワの「ダイヤモンド」って、前回のバレエフェスでも踊ったので、違うものが観たいです。A、Bが予想通り「カシミールの色」「ル・パルク」だったので、一つくらいオーソドックスなものってことなんでしょうか。コジョカルとコボーペアの「春の声」も前回ありましたね。可愛らしくて良いんですが。

ギエムの「TWO」が凄いのはわかるけど、ちょっと見飽きた感じ。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」は、3プログラム全部で別のペアが踊るんですね。バランシン財団も大儲けでしょう、きっと。サラファーノフとオシポワの「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」はきっと凄いと思います。

本当にイレールは踊るんでしょうか、何回も裏切られてきましたからね~。

最大の突っ込みポイントは、やはり「ドン・キホーテ」でしょう。いつからか、世界バレエフェスティバルのトリは「ドン・キホーテ」というお約束になりましたが、ガラの「ドン・キホーテ」が上野水香・マッカテリのペアですよ…NBSによる水香ageはすごいですねーー;

と無責任なツッコミを入れておきます。

スラムドッグ$ミリオネア Slumdog Millionaire

アカデミー賞8部門受賞
最優秀作品賞、最優秀監督賞(ダニー・ボイル)、最優秀主題歌賞
最優秀作曲賞 最優秀編集賞 最優秀録音賞 最優秀撮影賞 最優秀脚色賞
原作「ぼくと1ルピーの神様」ヴィカス・スワラップ
監督:ダニー・ボイル
音楽:A・R・ラフマーン
http://slumdog.gyao.jp/
http://www.imdb.com/title/tt1010048/

アカデミー賞8部門、主要3部門に輝いたこの作品。期待しすぎると肩透かしだと思うし、普通に楽しい映画だけど、後に残るものはあまりない感じ。逆に、そういう映画が作品賞を取ったという事実自体は、いいことだと思う。この閉塞感で息が詰まりそうな世界の中で、このように楽しくて、見る者が希望を与える作品が評価されたのだから。

ムンバイのスラム街出身でコールセンターのお茶汲みとして働く青年が、クイズ番組でどんどん勝ち抜いていく物語。ストーリーの展開は、ほぼ予想通りで進んでいく。インドを舞台にしているものの、ダニー・ボイルというイギリス人が監督し、フォックス・サーチライトというハリウッドの会社が配給していることもあり、なんとなく、西洋人から見たインドというところが感じられてしまった。

ただ、ストーリーが予測どおりに進んで行き、ハッピーエンドで終わるというのは、インドのマサラムービーの典型的なパターン。エンドテロップでは、主人公とヒロインの二人が駅のホームで踊りまくり、いつのまにか群集が現れてダンス大会になる大団円というのは、マサラ・ムービーへの大いなるリスペクトが感じられて、すごく嬉しくなってしまった。本当はもっと踊りとか歌とか入っているといいな、と思ったけど、米資本の映画だしこれ以上上映時間は長くできないから仕方ないかな。エンドテロップの踊りまくり世界には、幸福感がぎゅっと詰まっていて、このエンディングがあっただけで大抵のことは許してしまっていいや、って思ってしまうほど楽しくて素敵。

音楽を担当しているのが、昔「ムトゥ踊るマハラジャ」が日本で公開されたときに「インドの小室哲哉(!)」として紹介されたヒットメーカーのA・R・ラフマーンというのはポイントが高い。アンドリュー・ロイド・ウェーバーと組んで作ったミュージカル「ボンベイ・ドリームズ」をロンドンで観たのだけど、音楽が素晴らしかった。そのA・R・ラフマーンの音楽作りの才能は、この作品でも発揮されている。

語り口はすごくうまくて、ダニー・ボイルがブレイクした「トレインスポッティング」を思わせる、テンポの良い編集やカメラワークが巧み。あまりの快進撃に疑惑を向けられて警察で取り調べを受けた主人公ジャマールが、なぜ勝ち進むことができたのかという理由を話す時に、それが彼の数奇な半生の物語と結びついていくという語り口が、実に見事だ。

孤児だったジャマールは、兄サリムとともに身体一つで過酷な社会の中を生き抜いてきた。インチキな観光ガイドとして二人が観光客からお金を稼ぐ姿の生き生きとしたたくましさが、微笑ましい。ギャングになった兄のキャラクターがすごく魅力的で、大切なジャマルの宝物を売り飛ばしたり、いろいろとひどいことをしてきたのだけど、でもそんな兄が最後に見せる男気には、泣けた。欲を言えば、もう少しこの兄とのエピソードが見たかった気がする。

ヒンズー教徒とイスラム教徒の対立、少女売春、ギャング、そしてお金を稼がせるために歌の上手い少年を失明させるといったインドの社会状況(そして、インドが現在、英語圏のコールセンターとして機能しているということ)も出てくるのだけど、このあたりはちょっと表層的で、社会性みたいなものも盛り込んでみました、って感じで、そんなものは出さなくても良かったんじゃないかと思うほど。

個人的に一番ウケたのは、ジャマールの少年時代、粗末な掘っ立て小屋の中のトイレにこもっている時に、大人気の映画スターがやってきた時のエピソード。トイレに鍵がかかって出られなくなったジャマールが、トイレの中にダイブして、糞尿まみれの笑っちゃうほどひどい状態で、ヘリコプターから降りてきたスターにサインをもらうのだ。トイレにダイブする、というのは「トレインスポッティング」の中でも出てきた描写なので、思わずニヤリとしてしまった。このあたりの、空撮を巧みに使ったカメラワークの巧みさには、もうクラクラしてしまう!

最初にこの映画に出てくる「なぜジャマールは勝ち進むことができたのか?」という問いへの答え、それは「それが運命だったから」だった。学校にもろくに通っていない彼が、勝ち進めたのは、運が良かったからとも言えるけど、それまでの過酷な人生があったからこそ、難問に答えられたということだ。つまり、「運命」というのはそういうことなんだなって思った。そして、もう一つ「運命」は、孤児時代からの幼馴染、ラティカとの恋。幾多の困難と別れを乗り越えて、二人がめぐり合えたのも「運命」。だけど、その運を掴むことは、たやすいことじゃないんだな、ということが感じられた。この「困難を乗り越えて二人が結ばれるラブストーリー」というのも、もちろんマサラ・ムービーのお馴染みのパターンだ。ワンパターンといえばそうかもしれないけど、古今東西の映画の普遍的なテーマを、笑いあり、涙あり、サスペンスありで色彩豊かに描いていて、ワクワク感はずっと持続した。

観ている間はすごく面白いんだけど、期待しすぎない方がいいのかも。アカデミー賞をたくさん取った映画としてではなく、普通の娯楽映画としてみれば、すっごく楽しめると思う。

Slumdog MillionaireSlumdog Millionaire
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