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2009年5月

2009/05/31

パリ・オペラ座のドキュメンタリー映画La Danse -La Ballet de l'Opéra de Paris、今秋公開

The Arts Roomsのフォーラムで教えていただいた情報です。

Bunkamura20周年記念企画ラインナップとして、以前も話題にした、フレデリック・ワイズマン監督作品のパリ・オペラ座バレエ団についてのドキュメンタリーが、今年の秋、ル・シネマにて公開されます。

http://www.bunkamura.co.jp/shosai/topics_ci_090421s.html

La Danse -La Ballet de l'Opéra de Paris-
(原題)

今秋公開予定

監督:フレデリック・ワイズマン Frederick Wiseman
出演:マチュー・ガニオ マリ=アニエス・ジロ ニコラ・ル・リッシュほかエトワール総出演!
配給:ショウゲート
2009年/フランス/158分

創立以来、300年以上にわたりバレエ界のトップに君臨し続けるパリ・オペラ座バレエ団。その内部をパリ・オペラ座全面協力のもと、巨匠ワイズマン監督が密着撮影により赤裸々に描きだす。エトワールらトップダンサー達の練習風景・リハーサル・公演はもちろん、経営陣の会議や広報活動、資金集め、また、あまり知られていないパリ・オペラ座自体の秘密にも迫る、豪華かつ驚きに満ちた158分。バレエの殿堂の謎が今、明かされる―。

(以前の記事はこちら
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2008/10/post-dbc7.html
「映像全体の約4分の3は「ロメオとジュリエット」「くるみ割り人形」「ベルナルダの家」などの演目のリハや本番などバレエの映像。残りは、管理経営についての映像が中心となりそうだ」(朝日新聞の記事より)

ワイズマン監督のインタビュー
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY200810230227.html

製作会社のオフィシャルサイト
http://www.ideale-audience.com/site/new_films_by_wiseman_and_monsaingeon_coming_from_i.563.0.html

DANZA第22号

DANZA最新号は5月28日配布開始なので、すでに手にした方も多いかと思いますが、やっとチャコットに行って入手してきました。

21号から、レビューを除く誌面がネット上で閲覧ソフトを使って読むことができるようになりました。いち早く記事を読みたいときにはとても便利ですね。

http://www.mde.co.jp/danza/book/022/

【インタビュー】マニュエル・ルグリ、下村由理恵、イヴァン・プトロフ、上野水香
【特集】谷桃子バレエ団創立60周年記念、第12回世界バレエフェスティバル
【未来のエトワール】浅田良和

今まで表紙が白背景だったのが、今回の表紙はグリーンの背景になりました。カルヴァン・クライン・ジーンズのTシャツを着たマニュエル・ルグリが表紙です。目次のページにある「表紙の人」の欄に、アデュー公演の紹介記事がちょっとだけですが載っていて、紙媒体なのにずいぶん早く載ったものだと思いました。

なぜルグリはこれほど長くダンサー生命を燃やし続けることができるのか?という問いに、「いついかなる時も情熱を持ってレッスンしてきました」と答えているのが印象的でした。「ダンサーを作り上げるのはレッスンで、レッスンすれば怪我はしません」という言葉を読んで、だからルグリは怪我が少ない人なのだと合点が行きました。

下村由理恵さんのインタビューでは、スコティッシュ・バレエに在籍していた時に、演じることの面白さに目覚めたという話が面白かったです。そこでは、踊りながら台詞なども言っていたそうで、これは演技メソッドとして興味深いアプローチだと思いました。

上野水香さんのインタビューによると、世界バレエフェスティバルのパートナーは、マチュー・ガニオとデヴィッド・マッカテリだそうです。「椿姫」を踊りたい、とかノイマイヤーに自分のための作品を作って欲しいとか、ちょっと…な発言もありますね。

イヴァン・プトロフのインタビューでは、ロイヤル・バレエのレパートリーで重要な位置を占めているアシュトンとマクミラン作品について語っているのが面白かったです。牧阿佐美バレエ団の「リーズの結婚(ラ・フィユ・マル・ガルデ)」のゲスト出演のために来日していたのですが、ダンスマガジンには彼のインタビューは載らなかったんですよね。
谷桃子バレエ団の特集では、谷桃子さんのインタビューと、「ロメオとジュリエット」のリハーサル風景が載っています。谷桃子さんは、日本のバレエ史の生き証人であり、興味深いエピソードがたくさん語られています。若い時の谷桃子さんの写真も載っていますが、美しいですね。

公演レビューでは、「ザハーロワのすべて」での、ザハロワの最高にコケティッシュなカルメンの写真が素敵です。小林紀子バレエシアターの「眠れる森の美女」では、ENBから借り受けた衣装の美しさがよくわかる写真なのが良いです。東京バレエ団の「白鳥の湖」若手ダンサー公演の写真は、木村和夫さんの王子なのがポイントが高いです。新国立劇場バレエ団の「バレエ・ザ・シック」はダンスマガジンではモノクロページでしたが、ここではカラーの写真を使っているので、ずっと雰囲気がよくわかります。井口裕之さん振付の「空間の鳥」の写真も載っているし。

海外情報では、香港バレエの「白鳥の湖」が紹介されていたのがユニークです。パリ・オペラ座の「マーラー交響曲第三番」は、エルヴェ・モローの肉体美がよくわかる写真です。

「よくばりバレエ・ガイド」は「マノン」で、上演史が載っているので、資料として役に立ちますね。写真は、ENBのトーマス・エデュアとアニエス・オークスでしょうか。ENBの公演は日本の媒体ではなかなか紹介されないので、嬉しいです。

DANZAは他のバレエ雑誌が取り上げない切り口で、バレエを紹介しているのがとても良いです。無料で、しかもほとんどの誌面がインターネットで読めるので、本当にありがたいことですね。

2009/05/30

新国立劇場バレエ団「ライモンダ」DVD 「Raymonda」DVD New National Ballet Theatre Tokyo with Zakharova

このDVDの映像本編は家に届いてからすぐ観たのですが、ボーナストラックまで観る暇がなくて、やっと今日、DVDを観終わりました。「白鳥の湖」の方はまだ1幕までしか観ていません。

この映像が収録された2009年2月14日の公演は実際に観に行っていますので、その日の詳しい感想は以下でお読みください。

http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2009/02/214-f17c.html

ザハロワの、存在しているだけで神々しいまでの美しさ!奇跡のような曲線美を描く脚と腕!3幕のヴァリエーションは輝くばかりに美しいのですがちょっと硬質で、個人的にはもう少し柔らかい方が好みです。ここでのザハロワは、1,2幕でのお姫様というより、女王様の威厳を感じるほどの貫禄がありますね。手を打ち鳴らしていたのは一番最後だけでした。

デニス・マトヴィエンコは上手いダンサーですね。この役では自己主張も抑え目で、ザハロワをうまく立てている感じですが、テクニックは確実です。森田さんのアブデラクマンがワイルドでバネのある踊りで、良いです。この牧阿佐美版では、アブデラクマンの出番が少ないのがもったいないです。

クレメンスとヘンリエットは、良くなかったです。ザハロワと一緒に踊っていると、あまりの体型や容姿の違い、テクニックの違いに気の毒になってしまうくらい。西川さんは、チャルダッシュではとても良いんですよね。丸尾さんは、この役を踊るには相応しいとは思えなかったです。あと、西山さんのヴァリエーションが音によく乗っていて、とても良いです。パ・ド・シャの跳躍がとても大きくてきれい。もちろん、マイレンのチャルダッシュは、もう最高です!歩幅の大きなステップと深いプリエ、アクセントのつけ方が絶妙だし、きれいにアンドゥオールしていて気持ちよいです。

新国立のコール・ドは改めて映像で観て、動きの揃い方といい、スタイルの統一感といい、素晴らしいと実感しました。舞台美術や衣装も本当に美しい。

惜しむらくは、もともと記録用の映像として収録されているため、画質があまり良くないこと。最近のバレエのDVDは、HDで収録するのが常識になっているし、ブルーレイ化が前提となっていることもあって、画質がきれいな映像になじんでしまっていました。まるでVHSから作られた古いDVDを観ている気になってしまいます。画面は4:3の比率だし。せっかくの舞台美術の美しさや照明の美しさが生きていません。ダンサーの顔が白飛びしてしまっておて、コール・ドともなると顔の判別も難しいです。映像の撮り方自体は、不必要なクローズアップや画面の切り替えが少なくて、正統派で良いのですが。

*******

特典映像は、リハーサルの画質が悪くて眩暈がしそうになりましたが、内容そのものはとても面白いです。ソリストの小野絢子さんが新国立劇場のバックステージを案内して回るという趣向で、まずは舞台袖から始まります。舞台袖に、小道具の置く場所が用意されていて、置く場所もきちんと決まっているんですね。決闘の時にジャンが使用する刀は、金属製のものを使っています。すぐに飲めるようにコップに注がれたミネラルウォーター、汗を拭くためのティッシュの他、急な怪我などに備えて、痛み止めのスプレーや正露丸などが用意されていました。終演後の、スタッフが舞台袖の床についた松脂を一生懸命はがしている姿を見せてくれました。

楽屋なども小野さんが案内してくれます。衣装さんが、それぞれの楽屋の前に衣装をかけたハンガーを置いておいてくれるので、ダンサーは衣装を取りに行く必要がなくて便利です。トレーナー用の部屋があって、マッサージや鍼治療が受けられるそうで、寺島まゆみさん(←訂正:ひろみさんではなくまゆみさんでした)がちょうどマッサージを受けていました。また、衣装さんの部屋もあって、公演のたびに衣装が破れたりするので、毎回こまめに修理するそうです。「ライモンダ」では特に、シルクでできている芸人の衣装が破れやすいそうです。

「ライモンダ」のチュチュなど、美しい衣装もクローズアップで見せてくれます。ドリ伯爵夫人の衣装も、グラデーションがとても美しいそうなのですが、重いそうです。衣装デザインを行ったルイザ・スピナッテリによるデザイン画から始まり、衣装を制作した大井昌子さんのインタビューがあります。ダンサーによって、身体の柔らかさなども違うため、チュチュなどはダンサー一人一人の体型に合わせて微調整をするそうです。ダンサー全員の体型の特徴を覚えているそうで、すごい、と思いました。

本番直前に、衣装を着けて袖で待機しているダンサーの姿などもちょっと見せてくれたりして、とても面白く貴重な特典映像です。

それから、バーレッスンやリハーサルの映像がちょっと流れます。ザハロワのバーレッスンやセンターレッスンもちょっと見ることができます。さすがにザハロワは、バーレッスン一つとっても、ありえないほど美しいですね。ザハロワだけでなく、新国立のバレリーナはやはりスタイルが美しい人が多いと思いました。

5分程度の、ザハロワのミニインタビューもあります。髪を下ろしてメイクがナチュラルのザハロワは、しゃべり方も含めてとても可愛らしいです。新国立劇場の美しいコール・ドを世界レベルだと絶賛していて、とても気持ちよく踊ることができると語っています。また、バレリーナを志す若い人へのアドバイスも行っていました。きちんとした先生について、先生の教えを守ること、そして何よりも基礎が大事だということを強調していました。基礎がしっかりしていれば、どんな踊りをすることもできる、と。当たり前の話かもしれませんが、ザハロワが語ると、非常に説得力があります。

DVDブックということで、美しい舞台写真が満載された本がついています。ルビつきで読みやすい物語のあらすじ、「ライモンダ」の10の見所(ヴァリエーションなど)の解説、そして衣装制作の大井昌子さんのインタビューが載っています。新国立劇場のほとんどの衣装を制作してきた大井さんは、橘バレエ学校の一期生という元バレリーナであり、それゆえダンサーのことをよくわかって衣装を制作されているのですね。

画質に不満はあるものの、ザハロワの神々しい美しさが堪能できるし、公演そのものも良い出来ですし、特典映像の企画も良いので、新国立劇場バレエ団のファン、ザハロワのファンは買って損はないと思います。そもそも、「ライモンダ」という作品自体、最近の映像はなかったわけですし。画質を改善した上で、ぜひ、第三弾以降も出して欲しいですね。

ライモンダ 全3幕 約129分 Raymonda
振付:プティパ 作曲:グラズノフ
改訂振付・演出:牧阿佐美

ライモンダ:スヴェトラーナ・ザハロワ Svetlana Zakharova
ジャン・ド・ブリエンヌ:デニス・マトヴィエンコ Denys Matviyenko
アブデラクマン:森田健太郎
ドリ伯爵夫人:楠元郁子
アンドリュー2世王: 市川 透
クレメンス:丸尾孝子
ヘンリエット:西川貴子
ベランジェ:マイレン・トレウバエフ
ベルナール:芳賀望
第一ヴァリエーション:厚木三杏
第二ヴァリエーション:寺田亜沙子
スペイン人:湯川麻美子、江本 拓
サラセン人:遠藤睦子、寺島まゆみ、千歳美香子、吉本泰久、八幡顕光、古川和則
チャルダッシュ:西川貴子、マイレン・トレウバエフ
グラン・パ ヴァリエーション:西山裕子
パ・ド・カトル 陳秀介、江本拓、芳賀望、今勇也
パ・ド・トロワ さいとう美帆、寺島まゆみ、小野絢子
新国立劇場バレエ団
指揮:オームズビー・ウィルキンス
管弦楽:東京交響楽団

2009年2月12・14日 新国立劇場収録

【特典映像】
All about 新国立劇場バレエ団 約20分
1ザハロワ特別インタビュー&リハーサル
2『ライモンダ』バックステージ・ツアーby 小野絢子
3新国立劇場バレエ団レッスン風景

【書籍の内容】
あらすじ/ライモンダ10の扉/牧阿佐美インタビュー/ザハロワの魅力/憧れのチュチュ。衣裳工房探訪 ほか

ライモンダ RYMONDA (バレエ名作物語 vol.2) 新国立劇場バレエ団オフィシャルDVD BOOKS (バレエ名作物語 Vol. 2)ライモンダ RYMONDA (バレエ名作物語 vol.2) 新国立劇場バレエ団オフィシャルDVD BOOKS (バレエ名作物語 Vol. 2)
牧 阿佐美(新国立劇場バレエ団・芸術監督)

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2009/05/29

カール・ラガーフェルドデザインの「瀕死の白鳥」が、CHANELのサイトに!

以前、カール・ラガーフェルドがENBの「瀕死の白鳥」のためにチュチュをデザインするというニュースを紹介しました。

ENBのシニア・プリンシパルElena Glurdjidzeがこの衣装あわせのためにシャネルのクチュールサロンを訪れた際、即興で「瀕死の白鳥」を踊ったところ、カール・ラガーフェルドがそれをフィルムに収めました。そのモノクロで粒子の粗い、それゆえ美しい映像を、CHANELのオフィシャルサイトで観ることができます。

http://www.chanel.com/fashion/13#13-fashion-trends-a-ballet-for-karl-lagerfeld-0,96

製作途中の過程も見せてくれる、美しい写真のスライドショーが紹介されている記事もあります。羽飾りの繊細でゴージャスなこと!
http://www.wwd.com/lifestyle-news/eye/famed-ballerina-dances-for-lagerfeld-2146848?gnewsid=8cf572e5fcbc1103d869d229e691e5f8

チュールで作られたこの衣装には、2500枚もの羽が縫い付けられ、シャネルの縫製担当が3人がかりで、100時間もかけて縫ったそうです。そして、サドラーズ・ウェルズで上演されるバレエ・リュスプログラムの「瀕死の白鳥」にこの衣装がお目見えすることになります。また、ENBのスペインのツアーでも「瀕死の白鳥」は上演されます。

今年は、シャネルの伝記映画が2本公開されます。シャネルはバレエ・リュスと縁が深く、「青汽車」と「アポロ」の衣装をデザインしただけでなく、第一次世界大戦後にバレエ公演を再開するように、ディアギレフに進言したのも彼女なのです。

片方の映画では、ココ・シャネルと、イーゴリ・ストラヴィンスキーの恋愛を扱った作品「COCO CHANEL & IGOR STRAVINSKY(原題)」で、先週のカンヌ映画祭のクロージング作品として上演されました。監督はヤン・クーネンで、シャネル役は、実際にシャネルのモデルを務めていたアンナ・ムラグリスです。

もう一つの映画“Coco Avant Chanel”では、ココ・シャネル役は「アメリ」のオドレイ・トトウが演じます。監督は「ドライ・クリーニング」(超・好きな映画なんですよね)のアンヌ・フォンティーヌで、こちらの衣装もカール・ラガーフェルドがデザインしています。

ABTオープニング・ガラのギャラリー/Tour De Forceのギャラリー

ABTのオフィシャルサイトに、シーズンのオープニング・ガラのパーティ写真が34点アップされています。

http://www.abt.org/gallery/detail.asp?Gallery_ID=41

ファースト・レディのミシェル・オバマをはじめ、レニー・ゼルウィガー、イマン、クレア・デーンズなどのセレブレティ。そしてもちろん、ニーナ・アナニアシヴィリやイーサン・スティーフェル、ジリアン・マーフィ、デヴィッド・ホールバーグ、パロマ・ヘレーラらダンサーたちもドレスアップして登場しています。ダンサーたちの中に混じっても、ミシェル・オバマってすごく背が高いんですね(一説によると、身長が180センチくらいあるようです)
そして、ニーナ・アナニアシヴィリの、40台半ばにしてこの可愛らしさは驚愕です。ダンサーたちもみなゴージャスなドレスを着ていて、みんな美しいですね。

****
写真つながりでもう一つ紹介。
Gene Schiavoneさんのギャラリーがアップデートされて、先日オレンジ・カウンティで開催されたガラ「Tour de Force」の舞台写真が追加されています。
http://www.geneschiavone.com/gallery/v/Principal-Dancers/ert_001/

ニコライ・ツィスカリーゼの新作「Fallen Angel」、デニス&アナスタシア・マトヴィエンコの「グラン・パ・クラシック」と「Radio and Juliet」、ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフの「パリの炎」、マリーヤ・アレクサンドロワとギョーム・コテの「白鳥の湖」黒鳥PDD、ベルニス・コピエテルスとクリス・ローラントの「ラ・ベル」、オシポワとサラファーノフの「ドン・キホーテ」などなど。

中でも注目は、ウラジーミル・マラーホフとディアナ・ヴィシニョーワの「カジミールの色」と「ル・パルク」ですね。まだ世界バレエフェスティバルで、この二人が何を踊るのかは発表されていないのですが、この2作品になる可能性が高いという噂です。写真を見ると、この二人の作り出す雰囲気は特別だと感じさせてくれますね。

「Fallen Angel」でのニコライ・ツィスカリーゼの、空中での姿勢がめちゃめちゃ美しいです。本当にしなやかな肉体の持ち主なんですね。彼もなかなか日本では観られないダンサーの一人になってしまいました。

2009/05/28

カルティエ・クリエイション~めぐり逢う美の記憶 「Story of …」展 Cartier Creation

日曜日にデンマーク・ロイヤル・バレエの「ロミオとジュリエット」を観た帰りに、東京国立博物館 表慶館にカルティエ・コレクション「Story of …」展を観に行きました。前の週は同じ東京国立博物館の「阿修羅展」に行ってきたのですが(もちろん、こちらも素晴らしかった!)、阿修羅展は日曜の夕方6時というのにかなり並んでいました。「Story of …」展の方は、幸い空いていて、ゆっくり観ることができました。一緒にバレエを観に行った友達と観て、すごく盛り上がって楽しかったです。

http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6299
http://www.storyof.jp.msn.com/

この展覧会を観に行った人から、これは凄いって聞いていたのですが、実際に行ってみると想像を超えた素晴らしさと面白さでした。カルティエというのは、単なるハイ・ジュエリーや時計のブランドではなく、時代を切り拓くような斬新なデザイン力、モダンな創造力を持っていたということを実感。276点も展示されています。たっぷり2時間かかりました。

「ミステリークロック」というクリスタルでできた置時計は、一体どこに時計の仕掛けがあるのか、まったくわからない不思議さがあって、まさに謎めいているとはこのこと。ライトアップも幻想的で、時計の持つ永遠の時間の流れを感じさせてくれます。

この展覧会が「Story of ...」というタイトルになっているのは、ここで展示されているジュエリーの一つ一つに物語が隠されているということを意味しています。それらの物語が、デジタルサイネージを使って、一つ一つ詳細にスクリーンに映し出されて解説されています。それは、19世紀から20世紀にかけての西欧の歴史を代弁するものでもあります。カルティエは、プラチナのジュエリーが特徴的なのですが、戦争になるとプラチナが使えなくなって、ゴールドがデザインの中心になったこともありました。また、バレエ・リュスも登場し、バクストが「シェヘラザード」のデザインで使った青と緑を使ったネックレスもありました。

ジャン・コクトーがアカデミー会員となった際に贈られたというサーベルは、持ち手にオルフェウスの横顔が使われていたり、竪琴のモチーフがあったり、とてもユニークでアーティスティック、コクトーらしい逸品。英首相ウィンストン・チャーチルが息子に贈ったシガレットケースには、名前と住所が彫ってあって、紛失した時に届けられるようになっていました。切手が貼ってあって宛名を彫ったシガレットケースや、名刺代わりに使った金のカードなど、面白いアイテムもあります。月面着陸船モデルの精巧なレプリカや、カンヌ映画祭を記念したパルムまで金で作られているし。さらに、ビリケン像!をあしらったお茶目なミステリークロックまであるのです。ヴァニティケースなんか、一見、イマドキの携帯電話みたい、と思ってしまうような形のものもありました。

インドのマハラジャのためにカルティエの三男ジャックが用意したネックレスの、圧倒的なボリュームとまばゆい輝きは、これぞ富と権力の象徴で、後ずさりしてしまうほど。マハラジャたちは、おびただしい宝石で自分たちの身を飾り立てたわけですが、インド的なデザインは、カルティエに大きな影響を与えていたそうです。

コレクションの中でも、やはり人一倍目を惹くのは、ティアラ。英国王室御用達だったカルティエは、王族たちのためにたくさんのティアラを作りました。カルティエの特徴は、大きなダイヤモンドでも立て爪が小さくて目立たないため、宝石本来の形を楽しむことができること。植物のような有機的なモチーフを使った曲線美にはうっとりとさせられます。モナコ王室から貸し出された、王妃グレース・ケリーの愛用の品から、ロシア貴族たちのティアラ、そして王位を賭けた恋ということでシンプソン夫人にエドワード8世が贈ったたくさんのジュエリーも、逸品ぞろい。ネックレスやストマッカーも、シトリンやペリドット、アメジストといった色石を多用していた鮮やかなものもあって、目の保養になること。今まで観たことがないような、100カラット以上もあるサファイヤやルビー、エメラルドの石もあり、お値段を想像しただけで倒れそうになります。特にスターサファイヤの水色のちょっとスモーキーな輝きが、夢見心地にさせてくれました。女優グロリア・スワンソンが愛用し、アカデミー賞の授賞式につけていったブレスレットもありました。残念ながら、それをつけていった時、受賞を逃してしまったそうですが。

モチーフで特に面白いのは、トゥッティ・フルッティという果物のモチーフと、花と動物。エメラルド、ルビー、サファイアをふんだんに使ったトゥッティ・フルッティは本当にジューシーな感じでおいしそう!動物の中でも、特にパンテールというパンサーのモチーフは、カッコいい現代的な女性に似合い、女優でこれを愛用した人もたくさんいたとか。でも、パンテールの中には、猫のように可愛いのとか、ふにゃっと垂れ下がっているものもあったりして面白いです。

マリア・フェリックスというメキシコのセクシーな女優が、爬虫類モチーフが大好きで、ものすごく強烈なインパクトの、蛇やクロコダイルのゴージャスなネックレスをオーダーして愛用したそうです。うろこの一つ一つをエメラルドの石で表現していたりして。あんなに重そうでインパクトの大きいジュエリーをつけられるのは、世界広しといえども彼女しかいなかったことでしょう。イエローダイヤモンド1,023個(計60.02カラット )、エメラルド1,060個(計66.86カラット)が一つのネックレスに使われているから、驚愕としかいいようがありません。

最後には、この展覧会をプロデュースした吉岡徳仁氏による、香水瓶の展示があります。丸いクリスタルの香水瓶の中に、一つダイアモンドが浮かんでいるというもので、伝統とモダンの結合が感じられます。

普段宝石にあまり興味がない人でも、すごく楽しめること請け合いです。これだけたくさんの美しいジュエリーを目にする機会は、一生のうちでもあるかどうか、ですし。展示されている東京国立博物館の表慶館の建物そのものが、クラシックな洋館でとても美しいのです。

出品されたジュエリーの解説はPDFでダウンロードしてみることができます。現物は、ぜひ展覧会で見て欲しいのですが。(今週日曜日(5/31)まで)
http://www.tnm.go.jp/jp/exhibition/special/pdf/200903cartier_list.pdf

DANCE MAGAZINE 2009年7月号

珍しく発売日当日に定期購読のダンスマガジンが届きました。いつもは発売日の1,2日前には届くのに。

http://www.shinshokan.co.jp/dance/index_dance.html

表紙は、ロイヤル・バレエのチェ・ユフィ(崔 由姫)さん。フロリナ王女の青いチュチュが爽やかで、そしてユフィさんの表情もとても可愛らしいです。

草刈民代「エスプリ~ローラン・プティの世界」が巻頭カラーで、「切り裂きジャック」の緊迫感溢れる写真が超迫力です。「切り裂きジャック」だけで写真3ページ使っているので、イーゴリ・コルプのファンはぜひ手にとってみてください。その分、マッシモ・ムッルの写真がちょっと少ないかも。だけど、マッシモの「アルルの女」での表情がとても美しいです。やっぱり瀬戸秀美さんの写真は素晴らしいですね。

東京バレエ団 「エチュード/月に寄せる七つの俳句/タムタム」
「タムタム」の写真が1枚しかないんですよね。その分、「エチュード」の写真がやたらたくさんあるわけですが。サララーノフ、フォーゲルの写真は臨場感たっぷりでとても良いのですけど、ちょっとバランスを欠いている感じです。フォーゲルとサラファーノフのインタビューあり。マリインスキーでは「エチュード」の上演権が切れてしまったそうですね。サラファーノフは今シーズンは客演は東京バレエ団のみ、マリインスキーのロンドン公演も断って世界バレエフェスに出演するとのことです。(でも、来シーズンのミラノ・スカラ座には客演するけど) フォーゲルのインタビューでは上野水香さんの話ばかりさせられていて、なんだかとってもプロモーション臭のするインタビューです。

パリ・オペラ座 『オネーギン』速報 エルヴェ・モローのオネーギンの写真が良いです。3幕のイザベル・シアラヴォラとの写真も素敵ですね。シアラヴォラは3幕での演技がとても素晴らしかったことを、改めて思い出しました。批評と、シアラヴォラのエトワール任命についてのインタビューは翻訳です。

小林紀子バレエシアター 『眠れる森の美女』(マクミラン版) このバレエ団の公演がこんなに大きく取り上げられることは珍しいので、島添亮子さんとロバート・テューズリーの出演日のことしか書いていないのは仕方ないのかしら。写真を見ると、テューズリーの王子も観たかったと思います。スケジュール的に無理だったんですけど。

特別企画 「いま目が離せないライジング・スター」
マチアス・エイマン(パリ・オペラ座)、崔 由姫(英国ロイヤル・バレエ)、小野絢子(新国立劇場)、長瀬直義(東京バレエ団)、浅田良和(K-Ballet)、宮内浩之(牧阿佐美バレエ団) という若手ダンサーにスポットを当てた特集で、これは面白かったです。

特に面白かったのが、チェ・ユフィさんのインタビューで、「くるみ割り人形」の金平糖の精に急に追加で出演することになった時の話や、「ラ・バヤデール」のニキヤ役に抜擢されて、ナタリア・マカロワの厳しい指導を受けた話は読み応えがありました。マカロワのやるように真似すると、怒られるそうです。また、先日亡くなったフレミング・フリントの「ザ・レッスン(授業)」の話も面白かったです。毎日怒鳴られて、降板させられるのではと思ったほどだったそうですが、最後には「よくなった」と褒められたそうで。古典ではなく演劇的な要素の強いバレエでも実力を発揮できたのは良い経験だったんでしょうね。今は「レ・シルフィード」のリハーサル中だそうです。

新エトワールのマチアス・エイマンのインタビューは、翻訳記事ですが、これも面白かったです。バレエを始めたのは10歳と遅く、オペラ座のバレエ学校に入学できる年齢を過ぎていたこと。子供時代はアフリカのセネガルに住んでいて、オペラ座のことなど知らなかったそうです。新国立劇場の小野絢子さんの「アラジン」でのチャーミングな写真も素敵です。身長は162センチで、思ったより大きいんですね。他にも、ジョシュア・オファルト(オペラ座)、秋元康臣(NBAバレエ団)などの若手ダンサーについて、触れられています。

吉田都さんの「東京-ロンドン日記」では、8月から放送される「スーパーバレエレッスン」の話が出てきました。指導する生徒は、AMスチューデンツの6名だそうで、個人的にはかなりがっかり、です…。どうも牧関係は、いかにも日本のお稽古バレエって印象が強いんですよね。ただし、「ロミオとジュリエット」のお手本の収録があって、しかも相手役はロバート・テューズリーだそうですから、これは大変楽しみです。

ロイヤル・オペラハウスからも案内が来ていたのですが、6月3日のロイヤル・バレエ「オンディーヌ」は映画館で生中継されるんですよね。NHKが収録して日本で放送されるとのこと。OpusArteからも案内が来ていたので、DVD化もされるってことですよね。

それから都さんは、来年の来日公演にもぜひとも出演したいとのこと。「ロミオとジュリエット」に主演してくれたら本当に嬉しいですよね!

編集長対談は、現在ミハイロフスキー劇場のバレエミストレスを務めている、往年のスター、アラ・オシペンコが登場。ヌレエフの亡命の話から、ボリス・エイフマン、そして草刈民代さんの話まで出てきて、ロシア・バレエの生き証人という感じで、すごく面白い話です。

Art Expressでは、シュツットガルト・バレエのリード・アンダーソン60歳記念ガラや、ボリショイ・バレエの復元版『コッペリア』が取り上げられています。

なぜか新国立劇場の「Ballet the chic」の記事が1ページモノクロで、ちょっといくらかんでもこの小さな記事はないんじゃないかって思いました。「これほど面白いプログラムなのに、なぜ初日にあれほど空席ができてしまうのか」って書いていますが、ダンスマガジンがこんな形でしか取り上げないから、というのもあると思います。この雑誌は露骨にNBSの宣伝カラーが強いですからね。

でも、「ライジングスター」の記事やオシペンコの対談など、面白い記事はたくさんあったので、全体的にはとても充実した号だったと思います。

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2009/05/27

シュツットガルト・バレエの2009/2010シーズン オフィシャルサイトに Stuttgarter Ballett Season Update

シュツットガルト・バレエの2009/2010シーズンの演目はプレス発表されていますが、オフィシャルサイトにはアップされておらず、詳しい予定はわからなかったのです。

が、いつの間にか、地味に2009/2010シーズンのスケジュールがオフィシャルサイトにアップされていました。

http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/spielplan/
このページのSpielzeit 2009/10のところをクリックしてみてください。

ここのカンパニーは、いろいろな演目をジグソーパズルのようにランダムに上演しているので、予定が立てにくいですね。おまけに直前にならないとキャストが出ないし。今までそれで2回もお目当てを逃しているのです。

また、シュツットガルト・バレエの中国ツアーも発表されています。
http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/spielplan/page.php?aktiv=tourneen

Peking / China 北京
National Grand Theatre 国家大劇院
9., 10. und 11. Oktober 2009
Der Widerspenstigen Zhamung 「じゃじゃ馬ならし」
Ballettgala 「ガラ」

Suzhou / China 蘇州
Science and Cultural Arts Center
16. und 17. Oktober 2009
Der Widerspenstigen Zhamung

Suzhou / China
Science and Cultural Arts Center
19. Oktober 2009
Ballettgala


それと、カンパニーメンバーの写真が一新されています。移籍・引退予定の人まで含めて…。昇進などはまだ反映されていません。

今までのプロフィール写真は、モノクロのポートレート風の人が多く、バラバラだったのですが、今回は、全員を同じカメラマンがカラーで撮影しているようで統一感があります。

http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/compagnie/compagnie.php


余談ですが、一部では「毒卵」なるあだ名がついている(笑)超モダンな北京の国家大劇院のサイトを見ていたら、意外なことに気がつきました。
北京では、6月にはミュンヘン・バレエの「ライモンダ」ほかの公演があるのと、8月には中国国立バレエの「オネーギン」の公演があるんですね。

http://www.chncpa.org/n457779/index.html

Ballet: Raymonda
The Bayerische Staatsballet, Munich
June 24 - 26, 2009 19:30

Ballet: Variations of Dream Collected Programmes
The Bayerische Staatsballet, Munich
June 27, 2009 19:30

Ballet: Onegin (NBC 50th Anniversary)
National Ballet of China
August 19 - 22, 2009 19:30

ミラノ・スカラ座2009/2010シーズン 「オネーギン」2010年10月上演 Teatro Alla Scala 2009/2010 Season

ミラノ・スカラ座の2009/2010シーズンが発表されました。

注目はなんといっても、2010年10月に「オネーギン」を上演することです。ロベルト・ボッレとマッシモ・ムッルがオネーギン役を踊ります。

http://www.teatroallascala.org/en/stagioni/2009_2010/opera-e-balletto/index.html

ベジャールの夕べ Serata Béjart 2009年12月16日初日、2010年1月5日まで
http://www.teatroallascala.org/en/stagioni/2009_2010/opera-e-balletto/Serata_Bejart.html
「春の祭典」「火の鳥」「さすらう若者の歌」
Étoiles Roberto Bolle (16, 17, 19, 29s, 30 dicembre 2009 - 2, 5 gennaio 2010) Massimo Murru (16, 17, 19, 29s, 30 dicembre 2009 - 2, 5 gennaio 2010)

ドン・キホーテ Don Chisciotte 2010年2月13日初日
Guest Artists Natalia Osipova (13, 16, 18, 19 febbraio) Leonid Sarafanov (13, 16, 18, 19 febbraio)

Trittico Novecento 2010年5月27日初日
「放蕩息子」「バレエ・インペリアル」、ショスタコーヴィチ作曲Francesco Ventriglia振付の新作
Étoiles Svetlana Zakharova (20, 27 maggio - 5, 7, 8 giugno) Massimo Murru (20, 27 maggio - 5, 7, 8 giugno)

ロミオとジュリエット Romeo e Giulietta (マクミラン振付) 2010年6月25日初日
Guest Artist Friedemann Vogel (25, 28 giugno - 1 luglio) 新プロダクション

フォーサイスの夕べ Serata Forsythe 2010年9月6日初日
「アーティファクト・スイート」「ヘルマン・シュメルマン」「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」
Étoiles Svetlana Zakharova (6, 7, 8, 9, 10, 14 settembre) Roberto Bolle (6, 8, 9, 13, 15, 21, 23 settembre)

オネーギン Onegin ジョン・クランコ振付 2010年10月9日初日
Étoiles Roberto Bolle (9, 12s, 15, 30 ottobre)Massimo Murru (3s, 5 novembre)

Francesco Ventrigliaは、ザハロワが「ザハーロワのすべて」で踊った「Black」や、「Zakharova Supergame」の振付家ですね。ショスタコーヴィチの曲を使うということで、ちょっと興味があります。

パリ・オペラ座での「オネーギン」の2回目以降の感想がなかなか書けないでいるのです。「オネーギン」はもちろん主役二人も重要なのですが、レンスキーやオルガ役もとても大きな役割を果たしていたということを改めて実感しました。残念ながら、私が観た日にこの役を踊ったダンサーたちは相当物足りなかったので、オネーギンやタチアーナ役がいくら良くても、全体的な満足度が低くなってしまったのです。マチュー・ガニオやバンジャマン・ペッシュが怪我で出られなかったことが大きいと思うんですが。残念なことに、マチアス・エイマンがレンスキーを踊った日を見ることができなくて。

スカラ座での上演では、そういうことがないように願っているところです。

2009/05/26

パリ・オペラ座バレエ「プルースト」のキャストと、NHKカルチャーラジオ「マルセル・プルースト『失われた時を求めて』を読む」Proust ou les Intermittences du coeur by Roland Petit

パリ・オペラ座では「オネーギン」の公演も終了し、5月27日からはローラン・プティ振付の「プルースト」が始まります。かなりぎりぎりになりましたが日毎のキャストも出ていて、ここでもエルヴェ・モローとイザベル・シアラヴォラが大活躍。そして、アデュー公演を終えたばかりのマニュエル・ルグリもシャルリュス役でゲスト出演しています。

DVDのサン=ルー伯爵役で鮮烈な印象を残したマチュー・ガニオが今回出演していないのが、とても気になります。

http://www.operadeparis.fr/cns11/live/onp/site/saison/contenus/index.php?lang=fr&CNSACTION=SELECT_CONTENT&event_id=88&content_id=715

初日キャストのみ転載しますので、残りの日のキャストはオペラ座のサイトでご確認ください。

27 mai 2009 à 19h30
ALBERTINE Isabelle Ciaravola
PROUST JEUNE Hervé Moreau
MOREL Stéphane Bullion
Mr CHARLUS Manuel Legris
SAINT LOUP Florian Magnenet
Mme VERDURIN Stéphanie Romberg
ODETTE Eve Grinsztajn
SWANN Alexis Renaud
ANDREE Caroline Bance

Dernière mise à jour le 25 mai 2009 à 16h50, distribution susceptible d'être modifiée.

さて、プルーストの「失われた時を求めて」は途中で読むのを挫折した人の割合がすごく高い長編小説として知られています。そういう私も、全部は読んでいないわけで。

ちょうどオペラ座で上演中の今、NHKラジオの「カルチャーラジオ 文学の世界」で、「マルセル・プルースト『失われた時を求めて』を読む」が毎週木曜日20:30~NHK第二ラジオで放送中です。講師は、翻訳を手がけた仏文学者の第一人者・鈴木道彦さん。

http://www.nhk.or.jp/r2bunka/ch04/index.html

この時間に家には帰れないので、ラジオは聴いていないのですが、この番組のテキストが発売されています。そして、このテキスト、格好の「失われた時を求めて」入門として、非常にわかりやすく作品について解説しています。これを読むと、ローラン・プティの「プルースト」についても、全体像を把握しやすいんじゃないかと思います。登場人物の説明や、時系列についてのわかりやすい図も載っています。

鈴木道彦さん曰く、

「プルーストを読んだら、読む前と違う人間になる」 
「世の中には 2種類の人間がいる。読んだ者と 読まない者」 

ということなのだそうですが、なるほど、このテキストを読んだだけでも、「失われた時を求めて」が「文学の発見」という大きなテーマを扱っているすごい作品であるということがよくわかります。そして、ローラン・プティ振付の「プルースト」が、「失われた時を求めて」のエッセンスを非常に巧みにバレエ化しているということも。

特に、土地や人の名前というものが喚起する想像力とか、人間を花や植物にたとえてみせるところ、悪徳、スノビズム、記憶といったモチーフの使い方についての話がとても面白くて、これを読んだあとだと、そういったモチーフについて以前よりも注意を払ってみたり、想像力を働かせるようになります。そういう意味で、この本を読んだら、それまでと違った人間になるというのがわかる気がします。

「失われた時を求めて」もちゃんと読まなくちゃ、と改めて思ったのでした。

第一回 プルーストの生涯と小説史における位置
第二回 「コンブレー」に始まる文学発見の物語
第三回 スワンの恋とスノビズム
第四回「土地の名」または想像と知覚
第五回「花咲く乙女たち」とエルスチール
第六回 「ゲルマントの方」と空しい才気
第七回 祖母の死と「ある親殺しの感情」
第八回 同性愛の文学表現と倒錯者の孤立
第九回 ユダヤ人の肖像
第十回 「囚われの女」と「逃げ去る女」
第十一回 ヴァントゥユの「七重奏曲」と精神の現実(レアリテ)
第十二回 大戦下のシャルリュス男爵とゲルマント大公夫人の午後の 集い(マチネー)
第十三回 文学の素材としての生涯
プルースト『失われた時を求めて』を読む (NHKシリーズ NHKカルチャーラジオ・文学の世界)プルースト『失われた時を求めて』を読む (NHKシリーズ NHKカルチャーラジオ・文学の世界)
鈴木 道彦

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5/23 デンマーク・ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」(その2)

The Royal Danish Ballet "Romeo and Juliet"

Choreographed by John Neumeier (1971)
Music: Sergei Prokofiev
Set design: Jürgen Rose

23 May 2009 Tokyo

Juliet: Christina Michanek
Romeo: Ulrik Birkkjær
Mercutio: Tim Matiakis
Benvolio: Charles Andersen
Tybalt: Julien Ringdahl
Paris:Gregory Dean
Father Lawrence: Christian Hammeken
Lady Capulet: Gudrun Bojesen
Rosaline: Yao Wei

Artistic Director: Nikolaj Hübbe
http://www.kglteater.dk/OmKunstarterne/Ballet.aspx

「ロミオとジュリエット」は、出会ってから死までの数日間を二人が駆け抜けていった物語。そのわずか数日の間に、ジュリエットは少女から愛と悲しみを知る一人の女性へと変化していく、その過程が見られる作品だと思っていた。少なくとも、今まで何回も観ていて、大好きなマクミラン版の「ロミオとジュリエット」はそうだと理解していた。でも、ノイマイヤー版の「ロミオとジュリエット」では、ジュリエットは成長はしているものの、最後まで無垢で純真な少女のままだったように思えた。作品の中で描かれるジュリエット像は少女のままだけど、演じるバレリーナの内面的な深さ、表現は、幕を追うごとに深みを増して行く。

にぎやかで混沌とした、熱病に罹ったかのような疾走感で二人の若い恋の輝きを熱く伝えた1幕、2幕に胸は高鳴った。でも、この作品の真骨頂は3幕にあるといえる。寝室のパ・ド・ドゥでの心を切り裂かれるような痛切な別れ。パリスとの結婚を嫌悪して暴れたジュリエットが一人になり、ロミオのことを想うシーンの痛ましさと美しさ。黄昏時を思わせる、深い青から遠い地平線の砂色へのグラデーションの背景。旅芸人たちの馬車のシルエットが影絵のように浮かび上がる。追放され、旅芸人たちと旅をするロミオ。遠景のような場所に佇むロミオと、前景にいるジュリエットは、遠い遠い場所にいるように見える。だけど、離れていてもお互いのことを想い合う気持ちは一つ。ジュリエットの踊りとロミオの踊りはシンクロする。舞踏会で出会って恋に落ちたばかりのときに、ジュリエットの動きを模倣するかのように、ロミオが「いつ気づいてくれるかな?」と彼女の後ろに影のように寄り添っていた動きをリピートするという演出。

ジュリエットは決意を胸に、ローレンス神父のもとへと走る。この何度も舞台を横切って走るシーン、2月のハンブルク・バレエの「椿姫」を観た人だったら既視感があることだろう。そう、アルマンがマルグリットからの別れの手紙を読んで、パリまで延々と走るシーンと同じなのだ。アルマンはマルグリットの玄関口で、別の男に抱かれる彼女の姿を見て卒倒する。ジュリエットは、ただただ走り疲れてローレンス神父のところにたどり着いたところでバッタリと倒れこむ。

マクミラン版では、ここの音楽が使われているシーンはまったく違ったものになっている。ジュリエットが、ロミオと結ばれるためにはどんなことでもするという覚悟を決めていくまでの心の旅路を、ベッドにじっと座って思案し、最後に立ち上がって走り去っていく彼女の佇まいだけで表現するシーンだ。ジュリエットを演じるバレリーナの演技力が試されるシーンでもあり、それゆえジュリエット役が、女優バレリーナのための役だとされているのだと思う。大好きなシーンなのだけど、ノイマイヤー版ではジュリエットはひたすら走る!こんなところにも、ジュリエットの一途な若さが表現されているのだ。

(その1)で既に書いた、旅芸人たちがローレンスの作戦を演じて見せた場面。実際には実現しなかったロミオとジュリエットのハッピーエンドの物語を見せることで、悲劇的な結末との対比を際立たせている。二人の幸せな旅立ちの未来予想図を見せられて、ジュリエットの不安げな表情が明るく変わるのが痛ましい。

ジュリエットが、意を決して毒薬を飲むところ、そして最後に死を選ぶところには、躊躇いが微塵もない彼女の強い意志が感じられた。朦朧とした意識の中で、胸と掌から血を流しているティボルトの姿が現れても、その思いは変わらない。仮死状態から目覚めたジュリエットは、まずは墓所から出ようと扉のところまで行って、必死に扉を開けようとするけど開かない。ジュリエットは、ロミオの死を確かなものと認識するまでは、生きようという思いが強かったのだ。ロミオが倒れているのを見つけても、本当に彼が死んでいるのか、何度も確かめる。彼の死を確信してから、ためらうことなく胸を一突きして死んでいくのだった。彼の手を握り締めながら。この作品の中でのジュリエットは、最後まで、熱い想いをたぎらせる生命そのものだった。

********
キャピュレット夫人の強烈な存在感は、多くの人の印象に残ったに違いない。演じるダンサーもプリンシパルのグルロン・ボイエセンで、激しく踊るシーンがふんだんに盛り込まれている。1幕から、ジュリエットに踊りを教えて、彼女がうまく踊れないことにイライラするくらいなのだから。ジュリエットには冷淡で厳しい一方で、ティボルトとの愛人関係はあからさまに描かれており、夫の目の前で、ティボルトと手をつないでどこかへ消えていくという大胆な女だ。面白いのがパ・ド・トロワの使い方で、夫キャピュレットと愛人ティボルトに挟まれた彼女の踊りは、鋭角的なグラン・バットマンを何回も繰り返すという攻撃的なもの。クラシック・バレエの決まりごとを無視したような、オフバランスになるくらいの極端に高く脚を振り上げる振付だ。ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオの三馬鹿大将の能天気な踊りとは対照的。その激しくエキセントリックな踊りは、ティボルトの死のシーンで増幅されて再登場する。ティボルトの死に対してキャピュレット夫人が慟哭するというのはどこの版でも登場するのだけど、ここまで狂女のように激しく鋭角的に、全身を使って周囲を蹴散らすように踊るキャピュレット夫人は初めて観た。情熱を秘めているジュリエットの素質は、母親から受け継いだものがあるんだなって思った。

*********
この作品の疾走感は、モブシーンの演出の上手さが作り上げているところも大きい。ティボルトがマキューシオと剣を交えることになった経緯も、祭りの高揚感の中で酔っ払ったティボルトが、剣を振り上げたところから始まる。はやし立てたり、噂話で盛り上がる人々。旅芸人や娼婦たち。激しいチャンバラの間を潜り抜けていく人々。マキューシオの一世一代の名演技に喝采を送る人々。マキューシオが斃れた後、本当に彼が死んでいるのかその死体を突付きに行く人々。ティボルトの死の後も、一人、また一人が、自分たちが目にしたことの真実を確かめようと駆け寄る。大勢の登場人物の一人一人に役名があり、無名の群衆ではなくそれぞれに人生を生きている生身の人間として息づいているからこそ、このライブ感が生まれるのだと思う。さらに剣戟の本気加減がすごい迫力で、ティボルトがバルコニーから落ちて死に至るところの恐ろしさも強烈。

**********
23日の主役の二人、クリスティーナ・ミシャネクとウルリック・ビヤケァーは、実際の年齢も若いし、特にクリスティーナは実年齢の25歳よりもずっと若く、10代の女の子にしか見えない。彼女はとても背が高くて、細いから余計若く見えて、無邪気で幼さを残したジュリエット役にぴったりだった。ジュリエットの強さという面では、24日のスザンネ・グリンデルの方が出ていたと思うけど、ジュリエットらしい若さという点では、クリスティーナのほうが、より説得力があったように思えた。ウルリック・ビヤケァーも背が高くてとてもハンサム。ダンスの技術、特にサポートについてはウルリックは24日のセバスチャン・クロボーより上だったと思う。ウルリックは、セバスチャンよりもしっかりとしていて、とても情熱的だけど、少年というよりは若者というイメージ。二人ともソリストということで発展途上の所はあったと思うけど、この役柄にとてもマッチしていて、本当に魅力的だった。マキューシオ役のティム・マティキアスは踊りも演技も素晴らしい。陽気で、元気いっぱいでいたずらっ子のマキューシオにぴったりだったし、そんな底抜けに明るい彼だからこそ、実際には断末魔の苦しみを味わっているというのに演技に見せかけている哀しさが伝わってきたと思う。ロザラインのヤオ・ウェイの美しさといったら。なんでロミオは彼女を振ってしまうの、と思うくらい。キャピュレット夫人のグルロン・ボイエセンも若く美しくてエキセントリックで怖くて、高い踊りの技術と成熟が感じられた。パリス役のグレゴリー・ディーンの美貌は、まさに貴公子そのもの。キャラクターダンサーが大勢出演していて、その他大勢だというのに、それぞれの人生を感じさせるような演技の味わい深いことといったら。

デンマーク・ロイヤル・バレエは、演劇性に優れている素晴らしいカンパニーだと思った。次の来日も、そう遠くない将来に実現して欲しいものだと思う。

2009/05/25

NBSがYouTubeにオフィシャルチャンネルを開設/SemperOperの「幻想 白鳥の湖のように」

今日もロイヤル・デンマーク・バレエの「ロミオとジュリエット」を観て来ました。2回目になると色々と新しい発見があって、とても面白かったです。舞台に上がっている一人一人が自然な演技をしていて、とても生き生きとしていて素晴らしい公演になりました。主演の若い二人のフレッシュさが眩しかったです。このカンパニーはすごく好みだなって思いました。また時間を空けずに来て欲しいなって切に願います。

終演後に友達と東京国立博物館でカルティエ展を観に行って(これも、とっても面白かったです!先週は「ナポリ」の後に阿修羅展に行ったのです)、その後話が尽きることがなく帰宅が遅くなってしまったので、感想はしばらくお待ちください。

さて、いつのまにかNBSがYouTubeにオフィシャルチャンネルを開設していました。

http://www.youtube.com/user/2009NBS

今までNBSは、EyeVioというソニーの動画サービスで動画を提供していたのですが、Eyevioがサービス終了してしまったのでどうするのかな、と思っていたのです。YouTubeでオフィシャル動画を配信すれば、世界中のバレエファンが観ることができて良いことですよね。

デンマーク・ロイヤル・バレエの「ロミオとジュリエットRomeo and Juliet」(2本)、「ナポリNapoli」、東京バレエ団の「ジゼルGiselle」(上野水香と高岸直樹、吉岡美佳とフリーデマン・フォーゲル)、「タムタムTamtam」、「月に寄せる七つの俳句Haiku」、「エチュードEtudes」、「ボレロBolero」と動画を見ることができます。

*******
YouTubeのカンパニーオフィシャルチャンネルの話つながりで。竹島由美子さんやイリ・ブベニチェクが所属しているドレスデン・バレエ(ゼンパーオーパー)もYouTubeにオフィシャルチャンネルを持っています。

http://www.youtube.com/user/SemperOperBallett

このオフィシャルチャンネルに、最近、ジョン・ノイマイヤー振付の「幻想 白鳥の湖のように Illusions Like Swan Lake」からの動画がアップされています。ナタリア姫は竹島由美子さんが踊っています。この動画がとても素敵なんです。

「幻想 白鳥の湖のように」は、ドレスデン・バレエでは2009/2010シーズンの上演予定がないのですが、来年の5月に、久しぶりにハンブルク・バレエで上演されるんですよね。まだ生で全幕を観たことがないので、すごく観たいです。
http://www.hamburgballett.de/e/rep/schwanensee.htm

2009/05/23

5/23 デンマーク・ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」(その1)Royal Danish Ballet 「Romeo and Juliet」

感想を書く前に、デンマーク・ロイヤル・バレエの写真を撮影しているDavid Amzallagさんからtwitterでメッセージを頂き、「ロミオとジュリエット」の舞台写真を載せたサイトを教えていただきました。NBSで使っているオフィシャルの写真も撮られているようです。

http://www.blueballet.net/Gallery/Romeo_and_Juliet_09B/index.html

美しい写真をたくさん見ることができます。他のデンマーク・ロイヤル・バレエの舞台写真もたくさんあります。

http://www.blueballet.net/

ストーリーを説明していくと長大になってしまうので、端折りつつ。(明日も観るし)

ノイマイヤー版の「ロミオとジュリエット」は、彼がまだフランクフルト・バレエに所属していた時に創られたもの。1971年の作品というから、ノイマイヤー当時29歳と若く、確かに若書きだなと思わせるところがある。ロミオとジュリエットを中心とした登場人物たちが若々しくて、特にジュリエットは等身大の16歳の女の子として描かれているし、最近のノイマイヤーのシンプルで洗練された舞台づくりとは違って、カオス的な面が出ていて楽しい。

「ロミオとジュリエット」という作品が大好きなのは、この作品、特にプロコフィエフの音楽に現れている疾走感、生き急いだ二人の一瞬燃え上がって散る時の輝きが眩しいから。マクミラン版、クランコ版の二つのヴァージョンにも、疾走する熱い恋が描かれていて、大好きなのだけど、ノイマイヤー版にもそんな情熱的な側面が顕著に出ていて、とても素敵だった。しかも、ロミオとジュリエットを演じる二人のダンサーが、若い。若さゆえの未熟さですら、かえって魅力的に見せることができているのが良かった。

ただ、ノイマイヤー独特の、登場人物一人一人が細かく演技をしているのを同時多発的に見せている演出手法が使われているため、一度観ただけでは、見落としてしまったり、気がつかなかったりするところがある。同時多発的な演出は、「ロミオとジュリエット」ならではの、生き生きとした疾走感を出すには効果的ではあるのだけど。

1幕の最初に出てくる人物がローレンス神父で、これがロミオとそれほど年が変わらない若者が演じているというのが新鮮だ。まったく予習をしないで観たから、最初彼がローレンス神父なのかということもわからなかったくらい。若い身ながら神に身を捧げたストイックで生真面目な青年だけど、同時に、ロミオに対しては兄貴のような存在でもある。(パンフレットには親友って書いてあるけど、それはちょっと違う感じ)ローレンス神父が若くて、それゆえ考えが浅いところがある、ということで悲劇がおきてしまった面があって、効果的な設定だった。

若さが弾けている、という面ではなんといってもジュリエット。登場シーンではお風呂から上がりたてて、バスタオル一枚!なのにセクシーって感じではなく、友達と元気いっぱいにふざけているのだから。ジュリエットっていうのは、演じるダンサーによっては幼すぎたり、分別がありすぎたりすることもあるんだけど、ここでは、本当に普通のちょっとお転婆な女の子なんだな、って思わせてくれる。母親キャピュレット夫人が教えるメヌエットの振付が全然覚えられなかったり、舞踏会に足を踏み入れる時に階段で転んだり。3幕でロミオが去って行った後、パリスに会わされた時に手足までばたつかせて嫌がっているところも、ロミオとの出会いで少し大人になったとはいえ、まだまだ16歳の女の子に過ぎないことを思い起こさせてくれた。

ジュリエットとロミオのパ・ド・ドゥのシーンは、ほかの版とはかなり違っている。二人の若くて熱い恋、疾走する情熱をライブ感たっぷりに描いている。バルコニーのシーンでは、ロミオがジュリエットのそばに行きたいあまり、バルコニーの上まで駆け上がってきて、二人でバルコニーを降りていく。一生で最初で最後の恋に出会い、どう
やって燃える想いをぶつけていいのかもわからず、ただ歓びに震えて求め合うストレートな、ちょっと幼い熱情。少し不器用に見えるほうが、本物の感情そのままを伝えているように思えてくる。別れ際でも、一度バルコニーの階段を上っていったジュリエットが、やっぱり離れがたくて、階段を下りて行き、もう一度抱き合って手をつないだまま階段を上って繋いだ手をなかなか離さない。マクミラン版の「ロミオとジュリエット」では、二人の高揚する気持ちを、ジュリエットを高々とリフトすることによって象徴させていた。上下の動きがとても印象的な振り付けだ。ノイマイヤー版の「ロミオとジュリエット」のバルコニーのシーンは、やはりリフトのシーンがとても多いのだけど、マクミラン版と比較すると高い位置へのリフトが少なく(高いリフトでないだけ、難易度は高いと思われるが)、高揚感というよりは、スピードと疾走感を重視しているようだ。ロミオは、ジュリエットを抱えたまま走ってばかりいるのだから!

ロミオがティボルトを殺してしまった後の、別れの朝のパ・ド・ドゥの哀切さも鮮烈だった。離れたくない、でもどうしても離れなくてはならない、二人の切り裂かれるような気持ちが、直線的で鋭さのあるリフトを多用した振り付けから伝わってくる。強く抱きしめあった次の瞬間には、ロミオがジュリエットを突き放そうとする。離れがたいジュリエットが、ロミオをベッドへと誘おうとするけど、ロミオは苦しげな表情で拒絶する。本当はもう一度だけでもジュリエットを抱きたいのに。そしてジュリエットを突き飛ばすかのように突き放し、手を伸ばしたジュリエットを置いて振り向きもせずに走り去る。一人取り残されたジュリエットが哀れを誘う。その余韻も終わらないうちに、乳母に服を着せられた上、ジュリエットの両親とパリスが寝室に入ってくるのだから、なんという残酷な運命!
その事実に耐えられなくなって、パリスの手を触るのも汚らわしいって全身でジュリエットが嫌がるのも無理はない。手がつけられないような駄々っ子に戻ったジュリエットは、やっぱりまだ16歳、恋を知ったばかりの女の子。
*******

主人公二人以外の踊りからも、生身の人間が確かに舞台上に存在しているというライブ感、疾走感が感じられるのはなぜだろう。

一つには、場面転換のスムーズさがある。ノイマイヤーの作品は、近年の「ニジンスキー」などもそうだけど、舞台装置が大変よくできている。上手には張り出した回廊と階段。下手には、扉のついた階段。この二つの装置が左右に移動することによって、あるときには回廊はバルコニーシーンに使われ、そしてあるときには、回廊の下部が開いて、キャピュレット家の浴場になる。左側の装置も、キャピュレット家のボールルームの入り口になったかと思えば、墓所の重い扉にもなる。変幻自在なこれらの装置は、室内にも、室外にも変身する。場面転換のために時間をかけることなく、よどみなくストーリーが進んでいくのだ。

また、マイムを極力排し、踊りそのものでストーリーテリングを行っているのが、この作品を生き生きとしたものにしている。どうしても説明が必要な時に活躍するのが、この作品で非常に重要な役割を果たしている旅芸人の一座だ。

旅芸人の一座が街を訪れることによって生まれる祭りの高揚感、混乱、祝祭空間。その興奮の中で、悲劇は加速する。

主人公たちの行く末を占うように、旅芸人の一座は暗示的な芝居を繰り広げる。2幕の最初で、彼らはロミオとジュリエットの物語の結末を演じてみせる。ジュリエットはその芝居の中で死んでしまうのだ。最もドラマティックなのが、マキューシオの死。マキューシオはもともとこの旅芸人の一員で、死の仮面をつけ、死の舞踏を見せて登場する。ティボルトと剣を交え、致命傷を負ったとき、彼は芝居の舞台の中に入り込み、役者として一世一代、渾身の名演技を見せる。刺されてしまったのは芝居というフィクションの中であるように見せて、死に至るまでのもがき苦しむ様子ですら、虚構であるように演じて、群集の喝采を浴びる。彼の様子がおかしいと感じているのはロミオ一人。でも、マキューシオの死はフィクションではなかった。
マキューシオは自分の死が真実の出来事ではなかったと見せることによって、ロミオがティボルトに復讐することを阻止したかったのではないだろうか。だけど、その願いは通じなかった…。

ティボルトを殺してしまったことで追放されてしまったロミオは、友人たちの手によって芸人のマスクを付けられ、旅芸人の一座に加わる。どうしてもロミオに会いたいジュリエットは、ローレンス神父を訪れ、ローレンスはジュリエットに毒薬を渡す。毒薬を飲んで仮死状態となったジュリエットを、ロミオが迎えに行き、めでたく二人は結ばれる、というこの作戦を旅芸人たちが演じることによって巧みに説明する。毒薬を渡されても不安におびえていたジュリエットだが、計画の内容を知ることによって徐々に笑顔になっていく。しかし、作戦はあくまでも作戦であるし、芝居はあくまでもフィクション。

このバレエの演出が画期的なのは、フィクションと真実の関係を、旅芸人(時にはマキューシオ)の演じる舞台によって浮かび上がらせているからだ。
人間の、世界がこうあってほしい、こんな風に生きてみたいという願望を映し出すのが、芝居であり、フィクションだ。だが、実際に起こることは、願望どおりには進まない。現実はずっと厳しく、光もずっと少ない。それでも、私たちは、フィクション=物語を愛する。なぜならば、フィクションは現実には起こりえないことを、真実味を持って伝えてくれることにより、私たちに喜びや希望を与えてくれるからだ。

芝居、フィクション、ストーリーテリング。文学作品、そしてバレエそのものが存在する意味の重要性を、この作品は伝えてくれている。「ロミオとジュリエット」は、ノイマイヤーの作劇上の鮮やかな手腕に驚かされると共に、私たちがなぜ、文学や舞台を愛するのかということを再認識させてくれる。


(長くなったので一旦切ります)

P1000215s

(去年の1月に訪れたイタリア、ヴェローナでのジュリエットの像)

デンマーク・ロイヤル・バレエ団「ロミオとジュリエット」

2009年5月23日(土) 15:00開演   会場:東京文化会館

キャピュレット家
キャピュレット夫人:グルロン・ボイエセン
キャピュレット公: フェルナンド・モラ
ジュリエット:クリスティーナ・ミシャネック
ロザライン:ヤオ・ウェイ
ヘレナ:ルイーズ・エステルゴール
エミーリア:ジェイミー・クランダール
ティボルト:ジュリアン・リングダール
乳母:メテ=イダ・キャク
ピーター:イェンス・ヨアキム・パレセン

モンタギュー家
モンタギュー夫人:マリア・ベルンホルト
モンタギュー公:エルリング・エリアソン
ロミオ:ウルリック・ビヤケァー
ベンヴォーリオ:チャールズ・アナセン
バルタザール:オリヴィエ・スタロポフ

キャピュレット家の使用人
サンプソン:アルバン・レンドルフ
グレゴリー:ジョナサン・ケメレンスキー
ポットパン:バイロン・マイルドウォーター
ルチェッタ:エレン・グリーン
グラティアーナ:ブリジット・ローレンス
カミーラ:ヒラリー・ガスウィラー
ウルスラ:ホリー・ジーン・ドジャー
ネル:マティルデ・ソーエ
スーザン:エリザベット・ダム

モンタギュー家の使用人
アブラハム:ジェイムズ・クラーク
アンジェロ:ブライアン・スティーンストラ
マルコ:ジュリアン・ロマン
シルヴィア:ラウル・ドゥーイ
フランシス:レベッカ・ラッベ
マルガレータ:サラ・デュプイ
ポーリーナ:レナ=マリア・グルベール
リヴィア:アマリー・アドリアン
マリア:ジュリー・ヴァランタン

ほか、ロザラインの召使い、キャピュレット家の護衛、キャピュレット家の舞踏会の客、モンタギュー家の護衛

僧ローレンス:クリスティアン・ハメケン
エスカラス(ヴェローナ大公):ポール=エリック・へセルキル
マキューシオ:ティム・マティアキス
パリス伯爵:グレゴリー・ディーン

ほか、ヴェローナの市民、花娘、元老議員、商人、守衛、会葬者、司祭、修道士、修道女

デンマーク・ロイヤル・バレエ学校の生徒   協力:東京バレエ学校

指揮:グラハム・ボンド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

5/22 新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」

マイレンのパ・ド・トロワとスペインを見るために、ソリストのキャストが発表されてからチケットを購入。2階ドアサイドという席を初めて買ったので、果たしてちゃんと見える席なのが不安に感じていたけど、なぜか周りにあまり人がいなかったので、下手奥がちょっと切れる以外は問題なく舞台が見えた。

厚木さんは、長身で手脚が長くて華奢で、顔が小さくプロポーションは抜群。うなじから背中にかけてのラインがとても美しい。腕などはちょっと細すぎる感じもするのだけど、ポール・ド・ブラも上半身の動きもきれいだった。厚木さんが残念なのは、骨格的な問題だと思うのだけど、膝が出ていて、しかも完全にアンドゥオールしていないということ。それがどうしても気になってしまって。アンドゥオールしていないダンサーのオデットは厳しい…。ロマンティック・チュチュのジゼルだったらきっと素晴らしいのだろうと思う。

1幕2場の湖畔のシーンでは、ちょっと緊張していたのか、最初のうちはちょっと演技が硬かったと思う。(身体の方は決して硬くなくて、腕は本当に綺麗だった)厚木さんは彫りの深い顔立ちなので、実際以上に深刻な顔をしているように見えてしまって。厚木さんの容姿の美しさがあいまって、哀しげなんだけど、誇り高い白鳥の女王だった。

オディールの時には、いい具合に力が抜けていて、邪悪さをあまり感じさせず自然体で演じていた。ただ、こちらでは逆にメイクが抑え目すぎて、あまりオデットとの違いが感じられなかった。踊りそのものは、例のアンデゥオールしきれていないというところ以外は良かったと思う。グランフェッテも、ダブルを2回入れてきて、かなり速い演奏だったにもかかわらず、上手く合わせており、余裕で踊っていた。厚木さんはテクニックが強いんだと思った。3幕の演技はとてもよかったし、白鳥の羽ばたきそのものの腕使いは綺麗だった。でも、この牧版の演出だと、オデットと王子の悲劇性と愛、ドラマティックさが感じられないので、今ひとつラストに感動が無いのだ。王子とオデットが力強く立ち向かうとロットバルトが勝手に自滅するっていう演出っていかがなものだろうか。

逸見さんの王子は実に端正だった。厚木さんと実生活でも夫婦ということもあり、息は合っているし、演技にも愛がある。彼はテクニックを云々するようなダンサーではないのだけど(着地がかなりダメだった)、王子として申し分のないルックスで、サポートがちゃんとできているから問題なし。

初日のパ・ド・トロワでは今ひとつだった芳賀さんだったけど、今日のロットバルトはダイナミックな踊りで良かった。彼は王子キャラというよりは、ロットバルトやランケデムのようなあくの強いキャラクター役の方がずっと向いていると思う。

今回の「白鳥の湖」も4回目の舞台だったためか、初日よりずいぶんとコール・ドが揃ってきており、上階から見て群舞が美しく見えた。4羽の小さな白鳥も、花嫁候補も、ずっと改善されていた。でも花嫁候補たちは、まだお姫様という風には見えない。もう少し立ち居振る舞いを考えて欲しいと思った。

2羽の白鳥の川村さんと大湊さんは今日も素敵だった。川村さんは儚さのある美しいダンサーだと改めて実感し、彼女のオデット/オディールが観たいって切に思った。来シーズンの予定を見ても、オデット/オディールの出演予定になっていない。小野絢子さんもさいとう美帆さんも良いダンサーだけど、彼女たちは小柄であまり白鳥タイプではないように思える。小野さんの白鳥は観たいけど、小野さんと研修所で同期の大湊さんも、いずれは白鳥を踊ることになるといいなと思う。

その小野さんとさいとうさんが、今日はナポリで登場。別キャストによる初日のナポリがぐだぐだだったのに対し、今回は3人ともとても良い踊りを見せてくれた。なかでも、小野さんの音楽によく乗ったきれいな動きは観ていて気持ちいい。ハンガリー(チャルダッシュ)の古川さんは、こういう役はお手の物で、粘りとアクセントのある動きが様になっている。古川さんは、道化でも観たいなあ。

本日のお目当てのマイレンだけど、パ・ド・トロワもスペインも、もう最高!今日のチケット代はすべてマイレンで元が取れたといっていい。パ・ド・トロワでは、正確なポジショニング、気持ちよくきれいに開いた股関節、つま先の美しさ、惚れ惚れしてしまう。日本人ではないけど、日本をメーンに踊っているダンサーの中では、間違いなくテクニックの美しさでは一番だろう。対して、スペインでの濃さ、超ハイテンションの怪しさといったら!魔人マイレンという感じで、怪しい口髭を描いていて目力も強く、濃ゆいビームを発射しながらも、一つ一つのパの美しさ、ポール・ド・ブラの流麗さ、キメキメの見得の切り方に惹き付けられ、もうひと組のペアにまったく目が行かなくなってしまった。20日に発売された新国立劇場「白鳥の湖」のDVDが手元に届き、そこでもマイレンのスペインが観られるというのに、まだ観ていない。早く観なくっちゃ!マイレンのスペインをDVDに残してくれて、新国立劇場に感謝しなくては。

というわけで、マイレン目当てに劇場に駆けつけて、本当に良かったと思えた今夜の公演だった。

オデット/オディール: 厚木三杏
ジークフリート王子: 逸見智彦 
ロットバルト: 芳賀 望
王妃: 坂西麻美
道化: グリゴリー・バリノフ
王子の友人(パ・ド・トロワ): 遠藤睦子 西山裕子、マイレン・トレウバエフ
小さい4羽の白鳥:さいとう美帆、本島美和、寺島まゆみ、小野絢子
大きい4羽の白鳥:川村真樹、丸尾孝子、堀口 純、小村美沙
ルースカヤ: 本島美和  
スペインの踊り:湯川麻美子、西川貴子、マイレン・トレウバエフ、貝川鐵夫
ナポリの踊り: さいとう美帆、小野絢子、八幡顕光
ハンガリーの踊り:  遠藤睦子、古川和則
2羽の白鳥:川村真樹、大湊由美

ABTのラトマンスキー振付新作「On the Dnieper」特設サイト

今年からABTの常任振付家に就任するアレクセイ・ラトマンスキーの新作「On the Dnieper(ドニェプルの岸辺で)」(6月1日から6日までのプロコフィエフ・プロにて「放蕩息子」、ジェームズ・クデルカ振付の「Desir」とともに上演)の特設サイトができていました。
http://www.abt.org/dnieper/home.html

「ドニェプルの岸辺で」はプロコフィエフ作曲のバレエ音楽(約40分)で、1932年にバレエ・リュスのために作られ、バレエはセルジュ・リファールが振付けたのですが、失敗作に終わり、以降上演されずにいました。ウクライナを舞台に、若い兵士セルゲイ、婚約者のナタリア、そしてセルゲイが恋におちる村娘オルガの3人の物語を描いています。

この作品のイメージ写真を、アレッサンドラ・フェリの夫君ファブリツィオ・フェリが撮影しています。マルセロ・ゴメス、パロマ・ヘレーラ、そして新プリンシパルのヴェロニカ・パルトの3人がドラマティックに配置されていて、とても美しい写真となっています。

リハーサルの動画やリハーサル風景、セットや衣装の写真やスケッチもアップされていて、並々ならぬ意欲が伝わってきます。とても惹かれるのですが、そう簡単にNYに飛ぶわけにもいかないもので。

ヴェロニカ・パルトはプロフィールの写真も新しいものに変更されていて、これがちょっと可愛くて、美しいのですよね。
http://www.abt.org/dancers/detail.asp?Dancer_ID=43

プロコフィエフ・プロのサイトでの、イーサン・スティーフェルやアンヘル・コレーラの「放蕩息子」の写真も超カッコいいです。
http://www.abt.org/dnieper/all_prokofiev_celebration.html

2009/05/22

ワガノワ・バレエ学校のスライドショー Vaganova Ballet Academy Interactive

こういう美しい映像には、もはや言葉は要りませんね。

http://www.nytimes.com/interactive/2009/05/04/arts/20090504-vaganova/index.html

300年もの歴史を誇るワガノワ・バレエ学校。教師が40人もいて、レッスンピアニストだけで30人もいるというのがすごいです。すべてのリハーサルルームの床がマリインスキー劇場と同じ角度をしているとのこと。これだけ美しい生徒たちのうち、毎年3分の1しか最終学年に進めない、というのが、踊ることを仕事にすることの厳しさを物語っています。

オレンジ・カウンティのガラ「Tour De Force」/ABTのオープニング・ガラのスライドショー

以前ご紹介したエイフマン・バレエの「オネーギン」公演に先立ち、カリフォルニア州のOCPAC(Orange County Performing Arts Center)で、Tour De Force という豪華な出演者によるガラが5月21日(今日)行われます。

http://www.ardani.com/projects-tdforce.php

Nikolay Tsiskaridze Maria Alexandrova Natalia Osipova Ivan Vasiliev
(Bolshoi Ballet)

Diana Vishneva Leonid Sarafanov Denis Matvienko Anastassia Matvienko
(Mariinsky Ballet)

Bernice Coppieters Chris Roelandt (Ballet Monte Carlo)

Gennady Saveliev (American Ballet Theatre)

Desmond Richardson (Complexions)

Vladimir Malakhov (Berlin Staatsballet)

Guillaume Cote (National Ballet of Canada)

Soloists and Corps-de-Ballet of the Eifman Ballet of St. Petersburg

プログラムはここからダウンロードできます(PDF)
http://www.ocpac.org/home/Media/program%20assets/TourdeForce-p.pdf

クリストファー・ウィールドン振付による「For 4」を、デニス・マトヴィエンコ、レオニード・サラファーノフ、イワン・ワシーリエフ、そしてギョーム・コテというここでしかありえないメンバーで上演するんですね。また、ビゴンゼッティの「カジミールの色」をウラジーミル・マラーホフとディアナ・ヴィシニョーワが踊ります。

http://www.latimes.com/entertainment/news/arts/la-et-gala20-2009may20,0,548522.story

上記記事によると、このガラは、OCPACの資金集めのために、パトロンを大勢招いたものとなっており、終演後ダンサーも参加するディナーを含めたチケット代は$280というものになっています。(日本人の感覚からすると、それほど高くはないですよね) ちなみに、1月に行われたサンフランシスコ・バレエのオープニング・ガラのチケット代は、 $375 から最高 $3,500という凄い金額になっており、サンフランシスコ・バレエは一晩で100万ドルの売り上げを計上したそうです。先日のABTのオープニングガラは、値段はサンフランシスコと同じくらいだと思いますが、さらに売り上げは大きいものと考えられます。

OCPACによると、このガラは、単に資金を集めるというよりは、OCPACのダンス界における存在感を示すために開くものなのだそうです。たとえば、モンテカルロ・バレエのベルニス・コピエテルスとクリス・ローラントは今回初めてOCPACでの公演に出演することになります。ガラの共催者であるArdaniは、今後経済が安定したら、モンテカルロ・バレエの米国ツアーを招聘したいとのことで、そのためにカンパニーの二人のスターに出演してもらうことにしたとのこと。また、ボリス・エイフマンがこのガラのために、「Fallen Angel」という新作をニコライ・ツィスカリーゼに振付けたそうです。Ardaniは今までに、「Kings of the Dance」や、ディアナ・ヴィシニョーワの「Beauty in Motion」を成功させています。

ダンサーたちも楽しみにしているとのことで、現在ミラノ・スカラ座に客演中の、ナチョナル・バレエ・オブ・カナダのギョーム・コテは、単なるパ・ド・ドゥを見せるためのガラではなく、5日間の予定で滞在して、振付指導をきちんと受けて出演する特別な機会であり、とても楽しみにしていると語っています。

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おまけ

ABTのオープニング・ガラのスライドショーが、New York Timesで見ることができます。
http://www.nytimes.com/slideshow/2009/05/19/arts/20090519_ABTGALA_SLIDESHOW_index.html

ラトマンスキー振付の「仮面舞踏会」の写真、真っ赤なドレスで艶やかなニーナ・アナニアシヴィリに、コミカルに求愛するメンバーがあまりにも豪華で笑っちゃいます。マキシム・ベロツェルコフスキー、ホセ・カレーニョ、アンヘル・コレーラ、そしてマルセロ・ゴメス。

バランシン・プログラムのスライドショーも。
http://www.nytimes.com/slideshow/2009/05/20/arts/20090520_BALANCHINE_SLIDESHOW_index.html

こちらは、ABTオープニング・ガラに集まった豪華なセレブレティの美しいドレスがいっぱい見られます。ミシェル・オバマをはじめ、レニー・ゼルウィガー、クレア・デーンズ、デヴィッド・ボウイ夫人のイマン、スーパーモデルのココ・ロシャなど。

http://www.afpbb.com/article/entertainment/fashion/2604030/4165096

******
5/23追記:OCPACのブログで、このTour de Forceのガラパーティの写真を見ることができます。ニコライ・ツィスカリーゼ、ウラジーミル・マラーホフ、ディアナ・ヴィシニョーワらのリラックスした姿が見られます。

http://centerscene.blogspot.com/2009/05/dancers-descend-on-orange-county.html

2009/05/21

シュツットガルト・バレエのオフィシャルサイトのクランコ診断/スペイン公演の記事

シュツットガルト・バレエのネタの連投で恐縮ですが、オフィシャルサイトのトップに、自分がジョン・クランコ作品のどのキャラクターに当てはまるか、という診断クイズができています。一応英語版もあります。

Crankocast
http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/crankocast/spiel.html

なかなか楽しくてお洒落なサイト、新プリンシパルのエヴァン・マッキーが怪我をしている間にプロデュースしたそうです。ちなみに、私は「カルタ遊び」のジョーカーでした(笑)

なかなか来シーズンのラインアップがオフィシャルの方に載らないですね…。

*****

ついでなので、シュツットガルト・バレエのスペイン公演の記事を紹介します。もちろんスペイン語なのですが、スペインはアリシア・アマトリアンの母国なので、かなり取り上げられていますね。写真入りの紹介やインタビュー記事もかなりあります。

http://www.publico.es/agencias/efe/224287/real/recibe/perfeccion/romeo/julieta/ballet/stuttgart

http://www.abc.es/20090510/espectaculos-teatro/romeo-julieta-revive-real-20090510.html

こちらの記事は、アリシアがイーゴリ・イェブラと写っています。これもスペインつながりですね。
http://www.elmundo.es/elmundo/2009/05/10/cultura/1241959396.html

ジェイソン・レイリーとの「ロミオとジュリエット」の写真 (ジェイソンのロミオ、観たかった…もうシュツットガルトでは見られなくなると思うと悲しい)
http://enpositivo.com/200905081997/cultura/el-ballet-de-stuttgart-protagonizara-romeo-y-julieta-en-el-teatro-real-de-madrid

2009/05/20

シュツットガルト・バレエ2009/2010シーズン続報 エヴァン・マッキーがプリンシパルに昇進 Stuttgarter Ballett 2009/2010、Evan McKie Promoted Principal

シュツットガルトの2009/2010シーズンですが、
まだオフィシャルには出ていませんが、もう少し詳しい情報がドイツのフォーラムに出ました。
http://www.tanznetz.de/en/forum.phtml?page=showthread&aid=90&tid=14803


Spielzeit 2009/2010 2009/2010シーズン

9月26日~ Giselle「ジゼル」
9月30日~ Brouillards / Jeu de Cartes und verschiedene Pas de deux/Soli (中劇場)「カード遊び」ほか
11月13日~ Onegin「オネーギン」
11月27日~  Kenneth MacMillan: Lieder von Leben und Tod: Das Lied von der Erde, Requiem マクミラン「大地の歌」「レクイエム」
12月22日~ Orphe et Euridice 「オルフェオとエウリディーチェ」

2010年
2月5日~ Cranko / Kylian / Scholz: Opus 1 von John Cranko, Vergessenes Land von Jiri Kylian und Siebte Sinfonie“ von Uwe Scholz 「クランコ・キリアン・ショルツ」
3月31日~ Breiner / Volpi / N.N. Urauffhrungen von Bridget Breiner und Demis Volpi (中劇場) 「ブライナー/ヴォルピ/未定」
6月2日~ Orlando Urauffhrung von Marco Goecke nach Virginia Woolf, Musik: u.a. Michael Tippett. Opernhaus 「オルランド」Marco Goecke 振付、ヴァージニア・ウルフ原作
7月7日~ McGregor / Elo / N.N. Urauffhrungen von Wayne McGregor und Jorma Elo (中劇場). Eine der Urauffhrungen am 31.3. oder 7.7. wird von Douglas Lee sein 「マクレガー/エロ/未定」 (ダグラス・リーの作品が、3月31日からのプログラムか、7月7日からのプログラムのどちらかに入る)
7月17日~ Romeo und Julia 「ロミオとジュリエット」

<人事>
退団
Jason Reilly geht zum National Ballet of Canada ジェイソン・レイリー(カナダ・ナショナル・バレエに移籍)
Elena Tentschikowa beendet ihre Karriere und erffnet ein Pilatesstudio in Mnchen エレーナ・テンチコワ(引退、ミュンヘンにピラティスのスタジオを開設)
Alexis Oliveira geht zu Les Ballets de Monte-Carlo アレクシス・オリヴェイラ(モンテカルロ・バレエに移籍)
Stefan Stewart will choreografisch arbeiten und zeitgenssisch tanzen ステファン・スチュワート(振付家とコンテンポラリーダンスに転向)
Charles Berry beendet seine Karriere und kehrt als Steuerberater nach Ottawa zurck (引退してオタワに移転)
Heather Chin und Peter Piterka sind schon whrend der laufenden Spielzeit ausgeschieden (シーズン途中で退団)

入団
die Eleven Annabel Fawcett, Daisy Long, zkan Ayik und Ludovico Pace werden in die Kompanie bernommen (ジュニアカンパニーから4名入団)
Daniel Camargo kommt von der John-Cranko-Schule ジョン・クランコ・スクールよりダニエル・カマルゴが入団
Roman Novitzk kommt vom Ballett des Slowakischen Staatstheaters Bratislava
スロヴァキア国立バレエからロマン・ノヴィツキーが入団

Als Eleven kommen aus der John-Cranko-Schule: Mariya Batmann, Valeria Busdraghi, Heather MacIsaac, Ami Morita und Lea Zoe Weidner. Von der Tanzakademie Zrich kommt Doruk Demirdek, von der Royal Ballet School kommt Elisa Badenes Vazquez

昇進
Evan McKie wird Erster Solist エヴァン・マッキーがプリンシパルに昇進
William Moore und Damiano Pettenella werden Solisten ウィリアム・ムーアとダミアーノ・ペテネッラがソリストに昇進
Angelina Zuccarini und Laurent Guilbaud werden Halbsolisten アンジェリーナ・ズッカリーニとローラン・グイボーがハーフ・ソリストに昇進

*****
はい、長身ノーブル王子様のエヴァン・マッキーくんが、見事プリンシパルに昇進しました。おめでとうございます!そろそろアキレス腱の怪我からの復帰も実現するはずです。

ダミアーノ・ペテネッラは、来日公演の「オネーギン」でグレーミン公爵を演じられていた方ですね。眠りの四人の王子やカラボスでも活躍していました。

吉田都 時代を駆ける最終回/都さんスーパーバレエレッスンが8月末より放映

毎日新聞朝刊の吉田都さんの連載「時代を駆ける」は、今日掲載の第6回が最終回です。
http://mainichi.jp/select/opinion/kakeru/news/20090520ddm004070172000c.html

「先輩からの恩を後輩に」という題名。先日の名古屋での公演のために、レスリー・コリアから「パキータ」を指導されたことで、自分の経験を次世代に手渡したいという願望が強くなったと語られています。

そしてこの記事で、吉田都さんが、8月末から放映予定のNHK教育テレビの「スーパーバレエレッスン」の講師を務める、とあります。

うれしい半面、今度のスーパーバレエレッスンはルグリとオペラ座じゃないし、生徒役は日本人なのか、とちょっと残念な気もします(なんて言ったら罰が当たりますが)。
八つの主要な役について都さんが指導されるとのことで、楽しみですね。


追記:家で毎日新聞の紙面を確認してみたら、番組収録で都さんが、牧阿佐美バレエ団の茂田絵美子さんを指導する写真(扇子を持っているのでキトリかしら?)が載っていました。Kバレエのダンサーを指導するのかな、と思ったのですが、必ずしもそうではないようですね。

シュツットガルト・バレエの2009/2010シーズン

プレス発表が行われたようなのですが、まだシュツットガルト・バレエのオフィシャルサイトには反映されていません。新聞での記事になっているのはとりあえず新作と、入退団情報、昇進情報です。

新作では、ヴァージニア・ウルフの原作をバレエ化した「オルランド」が楽しみですね。


エレーナ・テンチコワの引退、アレクシス・オリヴェイラの移籍は残念です。特にエレーナ・テンチコワは前回の世界バレエフェスティバルにも出演していて、日本でもおなじみのダンサーだったので、健康上の理由での引退というのは、気になります。

http://www.ez-online.de/lokal/kultur/schaufenster/Artikel426841.cfm


Ballet

<オペラハウスでの新作>
Opera house

■Kenneth MacMillan: Songs of lives and TodDas song of the earth
choreography: Kenneth MacMillan
ケネス・マクミラン「大地の歌」 音楽:マーラー
Music: Gustav Mahler

■Requiem choreography: Kenneth MacMillan
ケネス・マクミラン「レクイエム」 音楽:ガブリエル・フォーレ
Music: Gabriel Faure

Premiere: 27. November 2009
プレミア 2009年11月27日

■Cranko/Kylian/Scholz

Opus 1 choreography: John Cranko
ジョン・クランコ「オーパス1」
Music: Anton of weavers

Forgotten country choreography: Jir i Kylian
イリ・キリアン「Forgotten country」 音楽:ブリテン
Music: Benjamin Britten

Seventh symphony choreography: Uwe Scholz
ウヴェ・ショルツ「第七交響曲」 音楽:ベートーヴェン
Music: Ludwig van Beethoven

Premiere: 5. February 2010
プレミア 2010年2月5日

■Orlando from Marco Goecke after the novel of the same name of Virginia
Woolf
Choreography: Marco Goecke
Marco Goecke「オルランド」(ヴァージニア・ウルフ原作) 音楽:マイケル・ティペット

Music: Michael Tippett

Premiere: 2. June 2010
プレミア 2010年6月2日

<Theatre 小劇場での新作>

■Breiner/Volpi/N.N. New choreographies of Bridget Breiner, Demis Volpi and
a further Choreografen
ブリジット・ブライナー、Demis Volpiと未来の振付家の新作

Premiere: 31. March 2010
プレミア 2010年3月31日

■McGregor/Elo/N.N. New choreographies of Wayne McGregor, Jorma Elo and a
further Choreografen
ウェイン・マクレガー、ヨルマ・エロ、未来の振付家の新作

Premiere: 7. July 2010
プレミア 2010年7月7日

<カンパニーの退団、昇進情報>

ジェイソン・レイリーはカナダ・ナショナル・バレエに移籍
エレーナ・テンチコワは健康上の理由で引退
ソリストのアレクシス・オリヴェイラはモンテカルロ・バレエに移籍
ハーフソリストのステファン・ステュアートは振付家・コンテンポラリーダンスに転向


ダミアーノ・ペテネッラとウィリアム・ムーアがソリストに昇進
アンジェリーナ・ズッカリーニと、ジョン・クランコスクールから入団するダニエル・カマルゴがハーフソリストに昇進


こちらの記事では、「じゃじゃ馬ならし」を中国で上演すると読めるのですが、ドイツ語なのであまり自信がありません。
http://www.ad-hoc-news.de/staatsoper-stuttgart-holt-sich-bieito-und-herheim--/de/Politik/20236492

追記:別ソースで確認したところ、やはり10月に中国での「じゃじゃ馬ならし」のツアーがあるようです。


ebijiさんの「日々これ口実」では、その他のラインアップについての情報も載っていますので、興味のある方はどうぞ。もちろん来シーズンは「オネーギン」が上演されます。
http://nagaji.blog37.fc2.com/

5/19 新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」New National Theater Swan Lake with Zakharova

会場のホワイエに到着すると、いきなり長身の外国人美男美女の集まりが。デンマーク・ロイヤル・バレエのご一行様が観劇。ニコライ・ヒュッベまでいてちょっとびっくり。しかし、今日の舞台の出来からすると、日本のバレエのレベルはこんなものか、と思われてしまうかもと心配になってしまう。

ザハロワとウヴァーロフの二人は、とても調子が良かったと思う。ウヴァーロフは、怪我の後遺症でちょっと内股になってしまっていたのが完治したようで、ザハロワとの息もピッタリの的確なサポート、大きく緩やかなジャンプ、大柄な割りに音をさせない着地で、見ていて安心できた。まだまだウヴァーロフはいける!純粋で一途、スウィートな彼の王子様は、癒し系で見ていてホッとする。

ザハロワの白鳥は、圧倒的な造形美。マニエリスム一歩手前なんだけど、絶妙の角度で止まって彫刻のように美しい瞬間を保ってくれるたびに、観る側からはため息が漏れてしまう。闇の中に溶けそうなほど儚くて、悲劇を高らかに歌い上げていて、表現の完成度の高さに息を呑む。よくザハロワは美しいけど、それだけだって言われるけど、これだけ美そのもののバレリーナというのは他に存在してないと思う。それに最近のザハロワは、ただ美しいだけではなく、心を感じさせる踊り手になって来た。丁寧に心を込めて、詩情豊かに踊っているのが判る。彼女のオディールはどうかというと、悪の部分はあまり感じさせず、とても可愛くて、その可愛らしさがどこまでも罪、という存在なのだと思った。一つ一つポーズを決めたり、パを決めたりするたびに見せる微笑、その時に形作られるアーチ、それらが美しくて愛らしくて、そのためには悪魔に魂だって売ってしまうだろうと思わせるほどだった。

ゲストの主役二人があまりに素晴らしく、プロポーションも完璧なので、いくら日本ではプロポーションが一番優れているといわれている新国立劇場でも、彼らゲストは別世界の住民って感じに思えてしまう。その上、今日は、バレエ団の売り物であるはずのコール・ドの出来が良くなかった。新国立劇場でこんなに揃わないコール・ドを観たのは初めてかもしれない。小さな4羽の白鳥も良くなかった。このメンバーがずいぶん入れ替わったんだ、と後でキャスト表を見て思った。2羽の白鳥の、川村さんと大湊さんは、期待に応えてくれて、伸びやかなラインの美しい踊りを見せてくれた。大湊さんがこの役を踊るのは初めてだけども、長い手脚を使って綺麗だった。これからまだまだ伸び代があると思われるし、プロポーションの良さはザハロワにも負けていないくらいだから、成長が楽しみだ。4羽の大きな白鳥では、今度「椿姫」のマルグリットに抜擢される堀口さんが美しかった。川村さんの美しさはいうまでもない。残りの二人については、コメントは省略しておく。

一幕で、パ・ド・トロワがあまりにもお粗末なのにずっこける。新国立劇場でこんなにまずいパ・ド・トロワを見るのは初めてだった。見ていてハラハラしてしまった。3幕のキャラクターダンスでは、まず若手中心の花嫁候補がダメダメで、距離の間隔もわかっていなかったようでバラバラだった。花嫁候補ってどうでもいい役のように見えるけど、やっぱり美しく踊っていないと舞台全体が締まらないし、お姫様に見えなくなってしまう。

ベテランを配したナポリが、中心がダメだったために他の二人も引きずられ、ここでもぶつかるんじゃないかと気が気でなかった。スペインは、左側の中村誠・寺島まゆみペアが柔らかくて色っぽくて素敵だった。ペアがふたつあるとつい見比べてしまうんだけど、いつのまにか左の方しか見なくなってしまった。中村さんは1幕のワルツにいるときも、ポール・ド・ブラの美しさで、マイレンとともに目を惹く。ルースカヤの湯川さんは、表現力に定評があるだけに、ドラマティックで貫禄があって、長い曲を一人で踊っているのに飽きさせなくて素敵だった。チャルダッシュは、マイレンの独壇場。ものすごく端正で、しかもキャラクターらしい濃さがたっぷりで、素敵なんだけど素敵過ぎてちょっと笑いそうになってしまうほど。西山さんもそのマイレンの演技のさじ加減と上手くマッチしていて良かった。やっぱり、ベテランダンサーを見ていると安心する。そうだ、八幡さんの道化は実に軽やかできびきびしていて、キュートで良かった。

総じて、今回の公演は個人のダンサーが良くても、指導に問題があって、仕上がりが上手くいっていないように見受けられた。

まだ初日なので、これから良くなると信じて、金曜日、ザハロワではなく厚木さん主演の日を観に行く予定。

オデット/オディール
 スヴェトラーナ・ザハロワ Svetlana Zakharova
ジークフリード王子
 アンドレイ・ウヴァーロフ Andrei Uvarov
ルースカヤ: 湯川麻美子
ロートバルト: 貝川鐵夫
王妃: 西川貴子
道化: 八幡顕光

王子の友人(パ・ド・トロワ):
 本島美和 丸尾孝子 芳賀 望
小さい4羽の白鳥:さいとう美帆、本島美和、寺島まゆみ、小野絢子
大きい4羽の白鳥:川村真樹、丸尾孝子、堀口 純、小村美沙

スペインの踊り:
 寺島まゆみ、楠元郁子 芳賀 望、中村 誠
ナポリの踊り:
 高橋有里、大和雅美 
 吉本泰久
ハンガリーの踊り:
 西山裕子
 マイレン・トレウバエフ

2羽の白鳥:川村真樹、大湊由美


********
追記

来シーズン、「ドン・キホーテ」の出演者未定の日の出演者が決まり、また芳賀さんの出演日が変更となりました。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000746.html

10月12日(月祝)4:00開演 スヴェトラーナ・ザハロワ / アンドレイ・ウヴァーロフ
10月13日(火) 2:00開演 寺島ひろみ / 山本隆之
10月14日(水) 7:00開演 スヴェトラーナ・ザハロワ / アンドレイ・ウヴァーロフ
10月15日(木) 2:00開演 寺田亜沙子 / M.トレウバエフ
10月16日(金) 7:00開演 スヴェトラーナ・ザハロワ / アンドレイ・ウヴァーロフ
10月17日(土) 2:00開演 川村真樹 / 芳賀 望
        *芳賀は18日から17日出演に変更
10月18日(日)  2:00開演 本島美和 / 福岡雄大
         *福岡雄大は2009/2010シーズンから契約ソリスト

福岡雄大さんがソリストとして入団するのですね。ジャクソンコンクール3位などの華々しいコンクール歴を誇り、チューリッヒバレエに在籍中は、06年ハインツ・シュペルリ振付「真夏の夜の夢」で主役パックに抜擢されるなど活躍していた方です。

しかし入団してすぐに日曜日の公演の主演なのは、本島さんの相手役だからなんでしょうかね。平日昼間主演のマイレンとはえらい待遇の差だとマイレンファンの私はひがんでしまうのでした。それに、芳賀さん目当てでマイダンサーのセットをすでに買った人は、こういう時にはどうするんでしょうか。

2009/05/19

東京バレエ団「ラ・バヤデール」キャスト決定 The Tokyo Ballet "La Bayadere" by Makarova

少し前から始まっていた東京バレエ団の「ラ・バヤデール制作日記」、ナタリア・マカロワの振付助手を務めるオルガ・エヴレイノフさんを招いてのリハーサルに気合いが感じられていたのですが、いよいよキャストが発表されました。

http://www.nbs.or.jp/blog/0909_labayadere/

12日から昨日まで7日間にわたるオーディションを兼ねたリハーサルの結果、主役のニキヤ、ソロル、ガムザッティの出演予定キャストが次のとおり決定いたしました、とのことです。。

ニキヤ:斎藤友佳理、吉岡美佳、上野水香
ソロル:高岸直樹、木村和夫、後藤晴雄
ガムザッティ:高木綾、奈良春夏、田中結子

新しい抜擢もなく、相変わらずの代わり映えしないメンバーでがっかりです。水香さんは、ガムザッティ向きだと思うのです。

バレエの祭典会員の継続をやっと出したのですが、「ラ・バヤデール」はゲスト無しということなので選択しませんでした。正解でしたわ。木村さんのソロルは観たいけど、それだけでは観に行く気にはならないキャストです。代わりにNYCBのチケットを買いました。

追記:「ラ・バヤデール制作日記」で、衣装合わせの様子が紹介されていました。
http://www.nbs.or.jp/blog/0909_labayadere/contents/2009/05/post-3.html

木村さんが着用しているのが、マッシモ・ムッルが着ていた衣装だというのが、かなりツボに入りました。体型が似ているのかもしれませんね。マッシモの衣装を着た木村さん、というシチュエーションがとても素敵。水香さんが、ザハロワの衣装がオーダーメイドのようにぴったりというのは、本当かな?ニキヤ役は、やっぱり吉岡さんが一番似合いそうです。

新国立劇場「白鳥の湖」キャスト New National Theatre Swan Lake

5月19日に初日を迎える新国立劇場バレエ団の「白鳥の湖」のキャストがいつまで経っても出ないな、と思っていたらやっと昨日(日曜日)にオフィシャルサイトに出ました。

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000086_2_ballet.html#cast

初日の二日前に発表って、いくらなんでも遅すぎるのではないでしょうか。主役以外のキャストのファンの人だってたくさんいるわけですし…。自分たちの団員をアピールしようという気持ちがないから、こんなことになってしまうんだと思われてしまいます。

ルースカヤなんてどうでもいいから、パ・ド・トロワやスペイン、2羽の白鳥を誰が踊るのかが知りたかったのです。

【オデット/オディール】
 スヴェトラーナ・ザハロワ Svetlana Zakharova (19・21・23日)
 寺島ひろみ(20日)
 厚木三杏(22日)
 真忠久美子(24日)

【ジークフリード王子】
 アンドレイ・ウヴァーロフ Andrei Uvarov(19・21・23日)
 山本隆之(20日)
 逸見智彦(22日)
 冨川祐樹(24日)
【ルースカヤ】
 湯川麻美子(19・21日)
 西山裕子(20日)
 本島美和(22日)
 川村真樹(23日)
 小野絢子(24日)

ロートバルト:
 貝川鐵夫(19日,21日,23日)
 芳賀 望(20日,22日,24日)
王妃:
 西川貴子(19日,21日,23日)
 坂西麻美(20日,22日,24日)
道化:
 八幡顕光(19日,21日,23日)
 グリゴリー・バリノフ(20日,22日)
 吉本泰久(24日)
王子の友人(パ・ド・トロワ):
 本島美和 丸尾孝子(19日,21日)
 遠藤睦子 西山裕子(20日,22日)
 さいとう美帆 小野絢子(23日,24日)
 芳賀 望(19日,21日)
 マイレン・トレウバエフ(20日,22日)
 江本 拓(23日,24日)

小さい4羽の白鳥:さいとう美帆、本島美和、寺島まゆみ、小野絢子
大きい4羽の白鳥:川村真樹、丸尾孝子、堀口 純、小村美沙

スペインの踊り:
 寺島まゆみ、楠元郁子(19日,21日,23日) 
 湯川麻美子、西川貴子(20日,22日,24日)
 芳賀 望、中村 誠(19日,21日,23日)
 マイレン・トレウバエフ、貝川鐵夫(20日,22日,24日)
ナポリの踊り:
 高橋有里、大和雅美(19日,21日) 
 さいとう美帆、小野絢子(20日,22日) 
 伊東真央、井倉真未(23日,24日) 
 吉本泰久(19日,21日)
 八幡顕光(20日,22日)
 福田圭吾(23日,24日)
ハンガリーの踊り:
 西山裕子(19日,21日,23日) 
 遠藤睦子(20日,22日,24日)
 マイレン・トレウバエフ(19日,21日,23日)
 古川和則(20日,22日,24日)

2羽の白鳥:川村真樹、大湊由美

2羽の白鳥が川村さん、そして大湊さんの抜擢というのが嬉しいです。二人ともとてもラインが美しいので、本当にこのシーンはきれいでしょうね。スペインの踊りは寺島まゆみさんが役デビューですね。大きい4羽の白鳥の小村さんも抜擢ですね。芳賀さんは登録ソリストなのに、ほぼ全部の公演に出演していて、しかもロットバルト、パ・ド・ロワ、スペインとずいぶんと出番が多いです。スペインといえば中村誠さんが出るのも嬉しいです。

で、私はシーズンチケットで明日初日のチケットを持っているのですが、もちろん、このキャストを見て、22日を買い足したわけです。直前なのでろくな席が残っていませんでしたが。マイレンのパ・ド・トロワとスペインが楽しみです。

20日には、「ライモンダ」と「白鳥の湖」のDVDが発売になりますね。多分明日にはシアターショップで買える状態になっているんじゃないでしょうか。私も一応両方とも予約しました。お金が出て行く一方だ~

映画「MILK ミルク」ガス・ヴァン・サント監督 Gus Van Zant film「Milk」

MILK
監督:ガス・ヴァン・サント
製作:ダン・ジンクス、ブルース・コーエン
脚本・製作総指揮:ダスティン・ランス・ブラック
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ショーン・ペン/エミール・ハーシュ/ジョシュ・ブローリン/ジェームズ・フランコ/ディエゴ・ルナ/アリソン・ピル/他

■2008年・米/128分
http://milk-movie.jp/main.html
http://www.imdb.com/title/tt1013753/

同性愛者であることを告白した米国初めての公職者であり、1978年に暗殺されたハーヴィー・ミルクの最後の8年間を、ガス・ヴァン・サント監督が描いた作品。ショーン・ペンがアカデミー賞主演男優賞に輝いた。

暗殺される予感がしたのか、市政執行委員に当選したハーヴィーは40歳から今までの軌跡をテープに吹き込む。自分が死んだ時には、これを聞いて欲しいと。

40歳の誕生日の夜、彼はスコットという若者に出会う。40歳になるというのに、今まで何もしてこなかったと言うハーヴィーに、新しいことを始めようとスコットは言う。彼らはサンフランシスコに移り住み、カストロ通りにカメラショップを開く。やがて彼らの店はゲイ・ピープルが集まるようになり、ゲイに差別的な商工会に対抗して、新しい商工会を作る。それが、政治家ハーヴィ・ミルクの第一歩だった。幾度もの落選、スコットとの別れを乗り越えて、78年に市政執行委員に当選。その頃、同性愛者の教師を解雇できるというプロポジション(提案)6号が嵐のように全米を襲っていた…。

ハーヴィー・ミルクの政治運動が大きな流れを作ったのは、彼が同性愛者のための権利獲得のみを目的として戦っていたからではない。希望を持つことが一番大切であり、希望を持てない世界は生きていく価値が無い、という普遍的なメッセージを訴えたからだ。

同性愛者であることが親に知れてしまった少年が、自殺予告の電話をハーヴィーにかける。同性愛嗜好を矯正するために精神病院に入れられるというのだ。「君は間違っていない、すぐに家を出て都会に行くんだ」とハーヴィーは言う。だが少年は、足が不自由なので逃げることもできないのだ。このエピソードの結末は、観る者の心に小さな明かりを灯してくれる。少年は友達の手で逃げることができ、プロポジション6号否決運動に携わるようになるのだ。

同性愛という個人の嗜好のために、未来や職、人生を奪われるような世の中には、希望が無い。希望を持てるような世の中になるように、一緒に戦おう、というのが彼のメッセージだった。それは同性愛者だけでなく、有色人種、老人、障害者、女性とあらゆるマイノリティの心を打った。いうまでもなく、オバマ現大統領の当選時のスピーチと、ハーヴィーのメッセージに強い共通点があるのが感じられる。オバマが当選したのは、希望を持てる世の中にしたいという強い意志が感じられたからだ。

(ひるがえって、今の日本の社会を包む閉塞感、希望の無さを考えると、本当に絶望してしまう)

「ミスティック・リバー」での演技が印象に残っているせいか、ショーン・ペンに対してちょっとマッチョなイメージを持っていた。だがここでの彼は、温厚で寛容、時には子供っぽくなるけど、目的のためには策士となる賢く優しい男性を立体的に演じている。ハーヴィーが歴史に残る政治家となったのは、単に同性愛者の権利を訴えて凶弾に倒れたからではない、というのがよくわかる。彼は、本当に人々に愛されていたのだ。彼を追悼するために3万人もの人々が蝋燭を手に集まったラストシーンには、思わず涙がこらえきれなくなっていた。

ハーヴィーは、ルックスがいいだけで他に何もないジャンキーの若者ジャックを拾って恋人にする。そのことを元恋人スコットになじられたハーヴィは、僕のような美しくもない年寄りが、あんな可愛い子と付き合えるかい、って答える。彼のなんとも人間臭いところが現れる。

同時に、ハーヴィーは計算が働く男だった。プロポジション(提案)6号を否決させるために、同じ市政執行委員に立候補していた保守派のダン・ホワイトと取引をする。その取引が、結局彼の命取りとなるのだが…。また、市民の支持を得るためにリサーチを行い、犬の糞を片付けない者には罰金を科すという条例を推進する。犬の糞を踏んでアピールするハーヴィのキュートなこと!

ハーヴィーがオペラを愛したということが、この映画にとても劇的な効果として生きている。政治に足を踏み入れた頃、彼は「トスカ」の「星は光りぬ」に聴き入って、「人のスケールを超える生」があると語る。晴れて市政執行委員に当選した彼が、庁舎の階段を上る時、まるで劇場の階段を上っていくような劇的な空間が演出され、若いスタッフクリーヴに、エレベーターではなくこの階段を使え、ぴっちりしたジーンズを穿けと言う。提案6号が否決されるという勝利を収めるものの、ジャックが自らの命を絶ってしまい、ハーヴィーは夜中にスコットに電話をかけ、昼間に観た「トスカ」の話をする。初めて二人がオペラに一緒に行ったときの思い出を。彼がダン・ホワイトの凶弾に斃れた時、最後に目にしたのは、サンフランシスコのオペラハウスの「トスカ」の看板だった。彼は「カミングアウト」=自分たちがここに存在するということを訴えるために、同性愛者たちを集めて大規模なデモ行進を行った。そうすることでマスメディアの耳目を集めさせるという、いわば「劇場型政治」(今の日本ではこの言い方はネガティブなイメージが強すぎるけど)で世界を変えた彼の、人生はオペラのようだったことを、ドラマティックに伝えている。トスカ役の音源が、ゲイに人気の高いマリア・カラスというところまで、配慮が行き届いている(劇中に登場する歌手の名前はもちろん別人だけど)。

ガス・ヴァン・サント監督が「エレファント」で見せた映像魔術、乱射事件の犯人の視線で長廻しで見せていって凶行を再現する技法は、この作品にも登場する。一つは、プロポジション6号が否決されたことが決まって部屋に戻るハーヴィが、ジャックが残した恨み言のメモを一つ一つ目で追い、最後に彼の死体を発見するまで。それから、まず市長を暗殺したダン・ホワイトが、次にハーヴィーを殺しに行く時の、市庁舎内のデスクの間や廊下を歩いていく時の、背中越しの目線。大いなる悲劇を盛り上げてくれて、伝記映画にありがちな単調さや、空々しい仰々しさとは無縁のドラマを感じさせる。加えて、アメリカン・ニューシネマを思わせるような、やや色あせて70年代的な映像のルックにもクラクラさせられた。

そのダン・ホワイトを演じたジョッシュ・ブローリンの演技も見事だった。厳格な家庭に育ち、古い価値観に抑圧を感じながらもそこから抜け切れない男の悲劇が感じられる。ハーヴィーは彼の保守的な考え方の裏には、人間の弱さが隠されており、そこをうまく突けば味方になると感じて、息子の洗礼式にまで出席した。(そして、同僚で洗礼式に出席したのは彼一人というところが泣ける) ハーヴィーは一度は彼の心を掴んだかに見えたのだけど、裏切られたと思うなり、ダンの憎しみは百倍にも膨れ上がり、そして凶行に結びついてしまった。

この映画に登場する、同性愛者の教師を解雇すべきだと訴えるキリスト教保守派の人々の物言いを見ると、それが30年もの前のこととは思えない。同じ言葉は、21世紀の今となっても、アメリカでさんざん言われていることなのだから。いみじくも、オバマ大統領の当選が決まった日に、同性愛婚を禁止する条例が可決になったのだから。この映画の中で曰く、同性愛者の教師から子供達を守らなくてはならない、同性愛者の教師に教えられた子供も同性愛者になり、子供が生まれなくなる、と。

どこぞの国での、子供を産むことは義務だとか女は子供を産む機械だとかの政治家の発言も同じ意味なのではないかと思う。ダン・ホワイトに、同性愛者だと子供ができないと言われたハーヴィーは、生まれるように努力するさ、と言う。子供を持つことは義務だという政治家や識者の発言を聞くと、彼らは同性愛者のカップルの存在なんて考えもしていないんでしょうね、って思うわけだけど。子供を持つかどうか、ということは個人の自由意志であり、国に強制されることではないのだ。そして、日本での未来に希望が持てないから、子供が生まれなくなるのだ。

難しいことを書いてしまったかもしれない。この作品は権利獲得のために戦った一人の政治家を描いている。けれども、政治的なことだけでなく、彼の一人の人間としての魅力、周りの人々の温かさ、人間の善意と希望について描いている。ハーヴィーは死んでしまった。だけども、愛すべき彼の記憶はいつまでも残るということが、エンディングでの登場人物たちの実際の姿とその後の生き方を見せていくという手法で心に刻み付けられた。そして、40歳からすべてを始めて、48歳で死ぬまでの8年間で、こんなにも大きな功績を残すことができたという、希望の光も。

それに、出てくる俳優たちの魅力的なこと!ジェームズ・フランコ、エミール・ハーシュ、ディエゴ・ルナ。70年代ルックもキュートに填まった若手俳優たち、このキャスティングの見事さに、思わずニコニコしてしまったよ。ガス・ヴァン・サントと私の男性の好みは似ているかも、と思ってしまった!

シネマライズでの上演は6月5日までなので、まだの方はぜひ!

2009/05/18

エイフマン・バレエの「オネーギン」写真、動画など Eifman Ballet's Onegin

マリンスキー・バレエやエイフマン・バレエ、ディアナ・ヴィシニョーワの「Beauty in Motion」や「Kings of the Dance」のインプレサリオとして知られるArdani Artistsのサイトがリニューアルされていました。

現在、エイフマン・バレエは全米ツアー中で、次の公演は、5月20日から24日まで、カリフォルニア州コスタ・メサのOrange County Performing Arts Center公演です。

このOCPACのサイトでは、公演プログラムの内容やボリス・エイフマンによる解説まで全部PDFで提供していて、親切ですね。

「オネーギン」の写真が、このAridani Artistsのサイトにアップされています。斬新でスタイリッシュな衣装、難易度の高そうなリフトがあったりと、凄そうな作品です。
http://www.ardani.com/photos-eifman.php

Orange County Performing Arts Centerは、YouTubeにオフィシャルチャンネルを持っているので、「オネーギン」の動画を少し見ることができます。

ebijiさんの日々これ口実でも、エイフマン・バレエの「オネーギン」関連の動画を紹介して下さっていますのでよかったらご覧になってください。
http://nagaji.blog37.fc2.com/blog-entry-1484.html

レビューも続々と上がっています。
Chicago Tribune
http://www.chicagotribune.com/features/lifestyle/chi-0516-eugene-onegin-ovnmay16,0,186588.story

*******

なお、Ardani Artistsのサイトに載っている、マリインスキー・バレエのフォトアルバムの写真も、とても美しいです。
http://www.ardani.com/photos-mariinsky.php

Kings of the Dance (ニコライ・ツィスカリーゼ、ホセ・カレーニョ、ホアキン・デ・ルース、デヴィッド・ホールバーグ、ドミトリー・グダーノフの現行メンバーのほか、第一回のヨハン・コボー(&アリーナ・コジョカル)やアンヘル・コレーラも)の写真やツアー中のスナップもたくさん載っています。
http://www.ardani.com/photos-kings.php

5/23追記:OCPAC公演のレビューがアップされています。写真のスライドショーも。

http://www.ocregister.com/articles/onegin-eifman-tatyana-2422921-ballet-black

2009/05/17

5/17 デンマーク・ロイヤル・バレエ団「ナポリ」 Royal Danish Ballet Napoli

デンマーク・ロイヤル・バレエ団「ナポリ」
2009年5月17日(日) 15:00開演   会場:東京文化会館
http://www.nbs.or.jp/stages/0905_danish/index.html

実は「ナポリ」生でも映像でも観るのが初めて。本家ブルノンヴィルなら観なくちゃってわけで、期待するというよりは、文化遺産を観るような、お勉強のつもりで観に行ったのだった。

1幕は「ドン・キホーテ」の1幕にちょっと似ていて、好き合っているカップルがいるけど、テプシーナの母親が結婚に大反対。ジェンナロの恋のライバル、マカロニ売りとレモネード売りが彼の悪口を言ってまわり、恋する二人は手に手を取って駆け落ちしようとしたところで嵐が起こって彼女が行方不明に。友達には、この1幕はマイムばかりで面白くないと言われたけど、このバレエ団の皆さんは脇役に至るまで演技が達者で、明るいラテンのノリがあったので、観ていて楽しかった。ジェンナロのトマス・ルンドはブルノンヴィル作品の振付指導を世界中で行っている、ブルノンヴィルといえばこの人、というダンサー。ちょっとおでこは広いけど、陽気でイケイケなあんちゃんで、この役柄には似合っていた。漁師という設定なので、1幕では素足にバレエシューズ。テプシーナ役ティナ・ホイルンドは、目が大きくて可愛い顔立ちだけど、ちょっと年上風のしっかり者というイメージ。舞台の上は所狭しとダンサーがいて、子役もデンマーク本国から連れて来ていた

1幕に踊りが全然ないわけではなくて、見所の一つとしてバラビルという、男女6組の群舞がある。初っ端から、このパラビルのみなさん、特に男性陣のブルノンヴィル風脚捌きを堪能。本当に脚が羽のように軽く、しかも単にバットゥリーを何回も空中で見せるだけではなくて、なんとも優雅でつながりのあるステップなのが素晴らしい。この中には、翌週の「ロミオとジュリエット」でロミオを踊る二人、セバスチャン・クロボーと、ウルリック・ビヤケァーがいた。二人とも背が高くて、写真で観るよりずっとハンサム。女性ダンサーたちも、北欧のバレエ団だけあって金髪率が高く、美人揃いで目の保養になった。

テプシーナの後を追って海に飛び込もうとしたジェンナロの前に、フラ・アンブロシオ(修道士)が現れて、守護聖人のお守りを渡してくれる。この修道士役のおじさんが、とても気品があって本物の修道士のようにしか見えない。

2幕は海の底。まるで「ファラオの娘」の海の底のような世界。海の精たちの衣装がとーっても美しいし、もちろん、12人の海の精たちも美しくプロポーションの良いバレリーナ揃い。群舞はそろっている方ではないけれども、上半身の動きはみなとても柔らかくて綺麗。背が高くてエキゾチックな海の王が登場。一人だけラテン系のハンサムな顔立ちなので目立つし、王様らしい威厳もたっぷり。海の王は、テプシーナに一目惚れして海の底に連れて行ってしまったのだ。早替わりでいつのまにか、テプシーナの衣装も海の精と同じものに変わっていた。いつ替わったのかわからないほどのタイミング。

ティナ・ホイルンドはプロポーションに恵まれているバレリーナではないけれども、音楽性が豊かで、抜きん出て踊りは上手い。きっとジゼルなどもお手の物だろうな、と思わせてくれる繊細なポール・ド・ブラ。衣装が替わるとともに、記憶までも消されてしまう。ジェンナロが海の底にたどり着き、彼女の姿を見つけても彼女は気がつかない。彼が守護聖人のお守りをテプシーナの首にかけると、ようやく彼女は記憶を取り戻し(ここでまた、街娘の衣装に早替わり)、二人は地上に戻ることに。テプシーナを愛している海の王は、彼女を帰すものかとジェンナロと戦おうとするけれども、お守りの力には抵抗できず、海の精たちから贈られた財宝を手にした二人を、なす術も無く哀しげな表情で見送る。海の王のほうがずっといい男なのだけど。

3幕は、無事戻ってきた二人を中心にした大団円で、大踊り合戦に。パ・ド・シスから始まり、主役二人を含めて7人のソロ、女の子たちの踊り、タランテラそしてフィナーレへと続く。一番最初にソロを踊った男性のテクニックが素晴らしかった。これぞ、まさに足技という感じで、つま先の美しさ、滞空時間の長さなど、惚れ惚れしてしまう。ここの男性ダンサーたちが素晴らしいのは、足先の美しさもさることながら、なんといってもアン・ドゥオールが完璧なこと。トマス・ルンドの踊りはちょっと特徴があって、動きと動きの間のつながりがきれいで、大技をやっているという感じがしなくて優雅な中に、個性もある。最近プリンシパルに昇格したヤオ・ウェイは、非常に華奢だけども、繊細な踊りは際立っていた。

この踊りまくり大会は、プティパの古典バレエのように、さあ、順番に踊りますよ~って感じでディヴェルティスマンが繰り広げられるというよりは、本当に村の中で結婚式があって、いつのまにかみんな踊りだしちゃって止まらなくなっているように見えた。形式的な踊りというよりは、物語の一部を形成していて、必然性のある踊りなのだ。その分、踊りのヴァリエーションが少ないので、やや飽きる部分はあるものの、次々と見せられる妙技に見入って、とても楽しめた。女の子たちの衣装が同じデザインで、みんな少しずつ色が違うのも可愛いし、街の人々も本当に楽しんでいる感じで、観る側も幸福感で満たされる。子役たちもしっかりと踊って演技して。音楽は特に印象に残るメロディはないものの、デンマーク・ロイヤルから来ている指揮者のヘンリク・ヴァウン・クリステンセンが、とてもよくダンサーを見て合わせているので、良い演奏となっていた。

そういうわけで、とっても楽しかった「ナポリ」。来週のノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」も楽しみ♪


◆主な配役◆
【第1幕】

ジェンナロ(若い漁師):トマス・ルンド
ヴェロニカ(未亡人):エヴァ・クロボー
テレシーナ(その娘):ティナ・ホイルンド
フラ・アンブロシオ(修道士):ポール=エリック・ヘセルキル
ジャコモ(マカロニ売り):ケン・ハーゲ
ペポ(レモネード売り):フレミング・リベア
ジョヴァニーナ:ルイーズ・ミヨール
パスカリロ(大道芸人):モーエンス・ボーセン
ドラマー:アレクサンダー・サックニック
カルリーノ(人形師):トーマス・フリント・イェッペセン

バラビル:
マリア・ベルンホルト、エリザベット・ダム、キジー・ハワード、
アルバ・ナダル、ジュリー・ヴァランタン、ルイーズ・エステルゴール
チャールズ・アナセン、ウルリック・ビヤケァー、セバスティアン・クロボー、
マルチン・クピンスキー、クリストファー・リッケル、アレクサンダー・ステーゲル

ほか漁師、ナポリの人々、旅人、浮浪者


【第2幕】

海王ゴルフォ:フェルナンド・モラ
コラーラ(海の精):セシリー・ラーセン
アルゼンチーナ(海の精):スザンネ・グリンデル

16人の海の精:
アマリー・アドリアン、マリア・ベルンホルト、ジェイミー・クランダール、エリザベット・ダム、
サラ・デュプイ、エレン・グリーン、レナ=マリア・グルベール、レベッカ・ラッベ、
ブリジット・ローレンス、ジョルジア・ミネッラ、アルバ・ナダル、
アナスタシア・パスカリ、マティルデ・ソーエ、ジュリー・ヴァランタン、
エスター・リー・ウィルキンソン、ルイーズ・エステルゴール


【第3幕】

パ・ド・シス:
キジー・ハワード、ギッテ・リンストロム、クリスティーナ・ミシャネック、ヤオ・ウェイ
ニコライ・ハンセン、ネーミア・キッシュ

ソロ:
アレクサンダー・ステーゲル、キジー・ハワード、ニコライ・ハンセン、
トマス・ルンド、ティナ・ホイルンド、ジェイミー・クランダール、ヤオ・ウェイ

スリー・レディース:
アマリー・アドリアン、エスター・リー・ウィルキンソン、ルイーズ・エステルゴール
タランテラ:ジュリー・ヴァランタン、モーテン・エガト
フィナーレ:全員

指揮:ヘンリク・ヴァウン・クリステンセン
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

グラン・ガラ ロシア・バレエのスターたち Grand Gala avec les Etoiles de Ballets Russes

[出演]
ナタリア・オシポワ(ボリショイ・バレエ)Natalia Osipova (Bolshoi Ballet)
イワン・ワシーリエフ(ボリショイ・バレエ)Ivan Vasiliev (Bolshoi Ballet)
アンドレイ・メルクーリエフ(ボリショイ・バレエ)Andrei Merkuriev (Bolshoi Ballet)
エカテリーナ・オスモールキナ(マリインスキー・バレエ)Ekaterina Osmolkina (Mariinsky Ballet)
エレーナ・エフセーセワ(マリインスキー・バレエ)Elena Evseeva (Mariinsky Ballet)
コンスタンチン・ズヴェーレフ(マリインスキー・バレエ)Konstantin Zverev (Mariinsky Ballet)
ナタリア・オシポワ(レニングラード国立バレエ)Natalia Osipova (Mikhailovsky Ballet)
キリル・ミャスニコフ(レニングラード国立バレエ)Kirill Myasnikov (Mikhailovsky Ballet)
オクサーナ・クズメンコ(モスクワ音楽劇場バレエ)Oksana Kuzmenko (Stanislavsky Ballet)
アレクセイ・リュビーモフ(モスクワ音楽劇場バレエ)Alexey Luybimov (Stanislavsky Ballet)

[内容]
●「眠れる森の美女」第3幕より グラン・パ・ド・ドゥ Sleeping Beauty
(エフセーエワ、メルクーリエフ) Elena Evseeva, Andrei Merkuriev

●「白鳥の湖」より Swan Lake
第2幕 アダージョ(オスモールキナ、ミャスニコフ) Ekaterina Osmolkina Kirill Myasnikov
第3幕 スペインの踊り (オシポワ※、ミャスニコフ)Natalia Osipova( Mikhailovsky Ballet) Kirill Myasnikov
黒鳥のパ・ド・ドゥ(クズメンコ、リュビーモフ) Oksana Kuzmenko, Alexey Luybimov

●「アダージョ」Adajo(メルクーリエフ) Andrei Merkuriev

●「パリの炎」よりFlames of Paris (オシポワ、ワシーリエフ) Natalia Osipova, Ivan Vasiliev

●「バヤデルカ」La Bayadere第1幕より アダージョ(エフセーエワ、ズヴェーレフ)Elena Evseeva、Konstantin Zverev

●「ロシアの踊り(白鳥の湖より)」Russkaya(オシポワ※) Natalia Osipova 

●「くるみ割り人形」Nutcracker 
第2幕より (オシポワ※)Natalia Osipova 
葦笛の踊り (ミャスニコフ、バレエ学校の生徒) Kirill Myasnikov

●「シンデレラ」より アダージョ Cinderella by Alexei Ratmansky (オスモールキナ、メルクーリエフ )Ekaterina Osmolkina, Andrei Merkuriev

●「海賊」より Le Coisaire
グラン・パ・ド・ドゥ(エフセーエワ、ズヴェーレフ)Elena Evseeva Konstantin Zverev
アダージョ(クズメンコ、リュビーモフ)Oksana Kuzmenko, Alexey Luybimov

●「ドン・キホーテ」より Don Quixote
エスパーダ(闘牛士)たちと街の踊り子
(オシポワ※、ミャスニコフ、メルクーリエフ、ズヴェーレフ)Natalia Osipova( Mikhailovsky Ballet) Kirill Myasnikov Andrei Merkuriev Konstantin Zverev 
男性・女性ヴァリエーション、コーダ(オシポワ、ワシーリエフ)Natalia Osipova, Ivan Vasiliev

昨年9月3日にフランスのリヨンで行われたガラ、Grand Gala avec les Etoiles de Ballets Russes の映像化。芸術監督は、レニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)の名キャラクテール、ナタリア・オシポワ(ボリショイのオシポワとは別人ですが、ボリショイのオシポワも出ています)。おそらくは地元のバレエ学校とおぼしき生徒たちがいっぱい出ています。

ベテランからフレッシュな顔ぶれまで、ロシアの代表的なカンパニーのダンサーを揃えた公演で、踊り自体の内容は良いのですが、撮影の仕方は良くないです。上から映してみたり、クローズアップで顔ばかり映したり、ブツ切りにカメラを切り替えたりするのは最近の流行なのでしょうか?踊りの全体像がわからなくて、特に足を映してくれないことが多くて、観ていてちょっとストレスがたまります。

アンドレイ・メルクーリエフが4演目も出てくれて、彼のファンにとっては必見の映像。オープニングに引き続いての「眠れる森の美女」では、ちょっと踊りが重くて荒い感じですが、美しいソロの「アダージオ」、しっとりとした麗しい王子様の「シンデレラ」と、とっても美しくてうっとりしてしまいます。ラストの「ドン・キホーテ」では、エスパーダが3人登場しますが、マント捌きのうまさや、やわらかくよく反った背中といい、カッコよさといい、ピカイチです。「アダージオ」では、アンドレイの顔が美しいのは判ったから、もっと全身を映してよ、って思ってしまいました。

「シンデレラ」で、メルクーリエフのパートナーを務めたエカテリーナ・オスモルキナ。ここでの彼女の踊りは伸びやかで柔らかく、理想的なワガノワ・ラインを描いていて、なんと綺麗なんでしょう。メルクーリエフとの並びも美しく、この「シンデレラ」の映像があるだけで、このDVDは買いです(バカンス明けのせいか、彼女の背中はこんがりと日焼けしていますが)。せっかく今年年末のマリインスキーの来日公演メンバーに入っているのに、「眠れる森の美女」での彼女の主演がないのがもったいないです。「白鳥の湖」のアダージオも良いと思うのですが、何しろ映像がぶつ切れなので、良さが伝わりにくくて残念。オスモルキナやオブラスツォーワのようなおっとりとしていて清楚、可憐なバレリーナが、今のマリインスキーではあまり待遇が良くない感じがして、残念ですね。ラトマンスキー版の「シンデレラ」、全幕を観てみたいと思いました。

「白鳥の湖」でオスモルキナのパートナーだったのが、レニングラード国立バレエのベテラン、キリル・ミャスニコフ。最近来日メンバーに入っていなかった彼ですが、実に端正な王子様です。立っているだけで王子なのです。サポートも上手だし、地味ながらも年齢を感じさせないスマートさがあります。「くるみ割り人形」の葦笛の踊りでは、バレエ学校の生徒たちに対する教師をお茶目に演じていて、また別の魅力も発揮しています。

この公演の芸術監督、ナタリア・オシポワは、これぞロシアのキャラクターダンサーって踊りをたっぷりと見せてくれます。特にルースカヤはかっこいいのですが、こちらもぶつ切り映像が残念。

元レニングラード国立バレエで、去年マリインスキーに移籍したエレーナ・エフセーエワは、冒頭の「眠れる森の美女」ではあまりのお化粧の濃さにちょっとびっくりしてしまい、ついでに脚を元気良く高く振り上げていてちょっとソーモワ入ってしまったかと残念に思いました。が、その後の「バヤデルカ」では叙情的な本領を発揮。レニングラード国立バレエの「バヤデルカ」では彼女はガムザッティ役を踊っていましたが、ニキヤ役も似合います。いつもながら、ウェストがほっそりとしていて真っ白な肌がきれいです。「海賊」では圧倒的な華も感じさせてくれました。エフセーエワもワガノワ卒業生らしい、美しく伸びやかなポール・ド・ブラの持ち主です。

マリインスキーではまだコリフェだけど、昨年のアメリカツアーの「ドン・キホーテ」でエスパーダを踊ったりと、抜擢が続いている若手のコンスタンチン・ズヴェーレフ。背が高くて、ルックスがとてもいいので、来日したら人気が出るかもしれません。「バヤデルカ」のソロルはとてもよかったのですが、「海賊」のアリを踊るにはちょっと踊りがノーブルすぎたところがあります。でも、伸び代があるのを感じさせて、今後が楽しみなダンサーのひとりとなりました。

ダンチェンコからは、アレクセイ・リュビーモフとオクサーナ・クズメンコが参加。ドラマティックなバレエを身上とするダンチェンコらしく、リュビーモフはガラであっても白鳥の王子の演技の手抜きは無くて、憂いのある表情が素敵です。彼もとてもノーブルなダンサーで、サポートが抜群に上手いです。クズメンコは一昨年のダンチェンコの来日公演に参加していましたね。この二人による、「海賊」のアダージオが素晴らしかったです。振付がドミトリー・ブリャンツェフとありますので、多分ダンチェンコで採用している版なのでしょう。音楽が、「シルヴィア」のアダージオの曲を使っていてとても美しく、踊りの方も、音楽を生かして非常に叙情的で流れるようで、ふたりの世界に連れて行ってくれて素敵でした。

最近は世界中のガラでの常連の、ボリショイのオシポワとワシーリエフ。ワシーリエフの踊りが非常に荒くて、ちょっと残念と思いました。「パリの炎」では、高くアントルラッセしながら、空中で2回脚を打ち付けるという超絶技巧を見せてくれたものの、勢いあまっていたり、着地があまりきれいじゃなかったり。年末のボリショイの公演で「ドン・キホーテ」全幕を観たときには、ここまで荒くなかったので、バカンス明けで調子が良くなかったと思うことにします。若いので、きっと美しさはこれから身につけてくれることと期待することにします。「パリの炎」は残念ながら女性ヴァリエーションが入っていなかったのですが、オシポワはいつもながらの跳躍力で、全身バネのような身体で、頭と脚がくっつきそうなほど大きく背中をそらせた跳躍を見せてくれます。最後の「ドン・キホーテ」のグラン・フェッテでは、余裕たっぷりにトリプルをいくつも入れていて、軸もぶれなくて、見事なものでした。

全体的な公演の質は高かったのですが、「白鳥の湖」の時など、バレエ学校の生徒たちが邪魔かも、と思ってしまうことがあって、出演者が一流なのに発表会チックに見えることもありました。バレエ学校の主催公演だったのでしょうか。でも、これだけロシアバレエをたっぷりと見せてくれる映像はなかなかないし、それぞれのダンサーも良いし、楽しく観ることができました。

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2009/05/16

マラーホフ主演、ビゴンゼッティ振付「カラヴァッジオ」DVD化!/Bigonzetti: Caravaggio

Ballet Talkで見つけた情報ですが、久々に嬉しいニュースです。(その前にBlu-Rayのプレイヤーを買わなくてはならないけど)

なんと、マウロ・ビゴンゼッティ振付、ウラジーミル・マラーホフ主演、ベルリン国立バレエの「カラヴァッジオ」がDVDとBlu-Ray化されます!

出演は、マラーホフのほか、ポリーナ・セミオノワ、中村祥子、ドミトリー・セミオノフ、エリッサ・カリッリョ・カブレラ、ミハイル・カニスキン、ベアトリス・クノップほかです。本編93分、29分のボーナスがついています。

ベルリン国立バレエでの作品紹介のサイトはこちら
http://www.staatsballett-berlin.de/spielplan/spielplan_detailansicht.php?id_event_date=0&id_event_cluster=66835&id_language=2

アマゾンUKの他、日本のアマゾンにも、製品のページはできているようです。アマゾンUKでは6月1日発売予定で、ARTHAUS MUSIKからのリリース、予約も受け付けています。

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日本のアマゾンのサイトでは、DVDになっています。

5/23追記:日本のアマゾンでもDVDの輸入盤が予約できるようになりました!6月30日発売予定だそうです。お値段も結構手ごろですね♪

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2009/05/15

ABTのMETシーズンオープニングガラ(ミシェル・オバマが出席)/NYCBでイリ・ブベニチェクの新作TOCCATA上演

ABTのMETシーズンは5月18日のオープニングガラから始まります。

ABTのオフィシャルサイトにリリースが載っていましたが、今最も時の人である、ファースト・レディのミシェル・オバマがこのオープニングガラに出席する予定だそうです。オバマ大統領夫妻は、ABTのオープニングガラの名誉会長とのこと。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=266

以前リンカーンセンターのバックステージツアーに参加した時、説明員の人がクリントン大統領夫妻は大統領の頃からよく観に来ていたと言っていました。ジョージ・ブッシュは見たこともないけれども、とも。

ABTのオープニング・ガラは、ABTの最有力パトロンであるロバート・デ・ニーロ夫妻や、イザベラ・ロッセリーニ他各界のセレブレティがドレスアップして集まることで知られています。上記リリースにもあるように、ガラの後のディナーパーティは、1500ドルから2500ドルもするというお高いものですが、ミシェル・オバマを見ることができるんですね。いつもとてもお洒落な彼女の、このガラでの姿はきっと世界中で報道されることでしょう。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=265

上演される演目は以下の通りです。

Mon. Eve., May 18, 6:30 PM OPENING NIGHT GALA
MOZARTIANA (Preghiera) – Part
LA SYLPHIDE, Act II (Excerpt) – Reyes, Cornejo
TCHAIKOVSKY PAS DE DEUX – Murphy, Stiefel
PIÈCE D’OCCASION (World Premiere) - Ananiashvili
SYLVIA (Hunt Scene) – Wiles
SWAN LAKE, Act II Pas de Deux – Herrera, Beloserkosky
PROCESSION “Le Defilé” - JKO School
LE CORSAIRE Pas de Trois – Dvorovenko, Hallberg, Corella
HERBIE HANCOCK – Carreño
ROMEO AND JULIET (Balcony Scene) – Vishneva, Gomes
THEME AND VARIATIONS (Finale) – Lane, Simkin

今年のMETシーズンを最後にABTを引退するニーナ・アナニアシヴィリは、アレクセイ・ラトマンスキーが彼女のために振付けた新作を踊ります。また、ハービー・ハンコックの演奏をバックにホセ・カレーニョが踊るんですね。イーサン・スティーフェルとジリアン・マーフィの「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」、ディアナ・ヴィシニョーワとマルセロ・ゴメスの「ロミオとジュリエット」バルコニー・シーン、イリーナ・ドヴォロヴェンコ、デヴィッド・ホールバーグ、そしてアンヘル・コレーラの「海賊」パ・ド・トロワ、ダニール・シムキンとサラ・レーンの「テーマとヴァリエーション」など、魅力的なプログラムが並んでいます。

19日からはバランシンとチャイコフスキープログラムということで、「アレグロ・ブリランテ」、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」、「モーツァルティアーナ」、「テーマとヴァリエーション」が上演されます。26日からは「海賊」です。

ニーナ・アナニアシヴィリは「モーツァルティアーナ」と、「海賊」のメドーラ役で2回ずつ踊るんですね。もうニーナをABTで観られなくなってしまうと思うと寂しいです。
ニーナの2回目、5月30日ソワレの海賊のキャストの豪華なこと!
Sat. Eve., May 30, 8 P.M. LE CORSAIRE - Ananiashvili, Gomes, Riccetto, Simkin, Carreño, Lopez
きっと盛り上がることでしょう。

バランシン・プロと「海賊」のキャストを見ると、確実にABTには世代交代の波が押し寄せてきているのを感じます。今まで活躍してきたキラ星のようなスターたちが、引退したり、自分のカンパニーを持つようになって出番が減ったりで、正直新しい人たちはまだまだかな、って思います。

加治屋百合子さんが、「テーマとヴァリエーション」や「海賊」のギュリナーラ役で活躍しているのは嬉しいですね。加治屋さんはバランシンはあまり向いていないのではないか、とBallet Talkのフォーラムでは指摘されていましたが、今回はそんな評判を吹き飛ばせますように。

私は一応7月の「ロミオとジュリエット」に行く予定で、2枚だけチケット(と特典航空券)を押さえているのですが、果たして本当にその時期に行けることやら。勤め先の会社でも、新型インフルエンザの海外流行に伴い、感染地域への旅行自粛例が出ているんです。

***
一足先に、NYCBのスプリング・ガラが5月13日に開催されました。
http://www.afpbb.com/article/entertainment/fashion/2602532/4151138

「SEX & THE CITY」のサラ・ジェシカ・パーカーがスクール・オブ・アメリカン・バレエに在籍していてバレリーナを目指していたという話は有名だと思うのですが、この「SEX & THE CITY」の原作者キャンディス・ブシュネルがNYCBのプリンシパル、チャールズ・アスケガードと結婚していたとは知りませんでした。他にもヴァネッサ・ウィリアムズやエドワード・ノートンらが出席したそうです。

そしてこのNYCBのスプリング・ガラで、イリ・ブベニチェク(ドレスデン・バレエ)が振り付けた新作Toccataが上演されました。この作品、音楽はイリの双子の弟オットー・ブベニチェク(ハンブルク・バレエ)が作曲しています。7人のダンサーと、4人の演奏者(2台のピアノ、チェロとヴァイオリン)が舞台に上っている、アブストラクト作品とのことです。

早速、New York Timesで評と写真が載っていますが、抽象的な作品でありながら、動きの中にドラマを表現できていると、とても好評のようですね。音楽もとても良いようです。
http://www.nytimes.com/2009/05/15/arts/dance/15gala.html

ここのブログで写真が少しと、もう少し詳しい感想を読むことができます。この日は、ベンジャミン・ミルピエの新作も上演されたんですよね。
http://www.tonyaplank.com/swan_lake_samba_girl/2009/05/14/two-world-premieres-quasi-una-fantasia-and-toccata-at-new-york-city-ballet-gala/

もう一つブログでのレビューを紹介(この二つのブログは、アメリカでのバレエの動向を追いかけるのにとてもいいです)
http://oberon481.typepad.com/oberons_grove/2009/05/toccata-ii-firebird-debuts.html

追記:イリ・ブベニチェクは、オットーとともに「Bubeníček & Friends」というガラをプラハ国立劇場で行います。他に、シュツットガルト・バレエのブリジット・ブライナーを始め、ドレスデン・バレエ、チューリッヒ・バレエらのダンサーが参加します。
http://www.praguepost.com/night-and-day/stage/1299-seeing-double.html
この記事には、彼らの写真とインタビューが掲載されています。イリの振付活動、オットーの音楽や映画制作の活動もとても活発で、ともに多忙な日々を送っているようですね。

2009/05/14

5/13放送 TBS系「クメピポ!絶対あいたい1001人」草刈民代さん

草刈民代さんのバレリーナ引退公演「ESPRIT~ローラン・プティの世界」の映像がちょっと観られるといいな、と思って「クメピポ!絶対あいたい1001人」を録画しておきました。

結局「ESPRIT」の映像が流れたのは、最初の方でほんのちょっと。「アルルの女」でマッシモ・ムッルと、「切り裂きジャック~オットー・ディクスより」でイーゴリ・コールプと(コールプの顔はほとんど映りません)。それから「チーク・トゥ・チーク」でルイジ・ボニーノと。そして、しばらくして、「白鳥の湖」でマッシモ・ムッルと。「アルルの女」でマッシモの優しげな横顔、そして「白鳥の湖」ではマッシモの美しい背中が見えたから、よしとすべきでしょうか。NHKでも収録していたのだけど、どれくらい放送してくれるのかしら?この豪華メンバーでプティの作品を色々と踊ってくれたのだから、ぜひぜひノーカットを期待したいところです。

草刈さんの踊る場面は、他にも牧での「ドン・キホーテ」のキトリ、「ピンク・フロイド・バレエ」、レニングラード国立バレエでの「ジゼル」(村娘姿が可愛いです)、「瀕死の白鳥」などが放送されました。草刈さんのグラン・フェッテは初めて観たかも・・・。(彼女の踊りについては、ノーコメントとしておきます)。

テレビの画面に映っている草刈さんを見ると、彼女はそこら辺の芸能人も敵わないような、圧倒的な華が感じられます。トーク番組には今まで何回も出演しているということもあって、話も上手。気取りのない、さばさばとした性格がうかがえます。自分が踊るという意味でのバレエにはもう未練がないとのこと。バレエで自分がやれることはすべてやってしまったそうで。バレエ以外には、何もしてこなかったので、バレエをしていなかったらどうなっていたのかは見当もつかないという天然なところは、彼女の魅力の一つですよね。

怪我との長い戦いや、日本では職業としてのバレリーナは成り立たないという話は、以前にも彼女がテレビで話すのを見たことがあったけど、夫君の映画監督、周防正行さんと一緒にスタジオ出演しているのを見るのは初めてでした。この二人の絶妙の間が面白かったです。喧嘩はしたことがないという仲良しの二人なんですね。

一番大切な出会いとして彼女は、ローラン・プティとの出会いを挙げていました。「ESPRIT」リハーサルの様子の写真が何枚か紹介され、その中には、コールプやリエンツ・チャンとの記念写真もありました。

「ESPRIT~ローラン・プティの世界」は出演者・内容がとても充実していて面白い公演だったし、全国ツアーまで行って興行的にも大成功を収めたようです。草刈さん、プロデューサーとしての手腕は優れていると思うので、また公演プロデュースでバレエの世界に帰って来て欲しいですね。

追記:この番組の草刈さんを見るにつれて、なぜこの間の「ESPRIT」での彼女は、とても美しく魅力的だったけどお人形のようで、他のダンサーと比べて表現に深みがないかがわかったような気がしました。

草刈さんはいうまでもなく美人で頭が良く、話が面白くて、人に好かれる魅力的な性格で、日本アカデミー賞を受賞した有名人で、才能のある映画監督と結婚していて、お金も持っている。これだけ恵まれていると、葛藤はあまりないのではないかと思ってしまいます。もちろん、番組の中でも彼女が怪我に苦しみ、リハビリのために懸命に頑張る様子が出てくるし、バレエ向きではない骨格を持っているために苦労した側面はあるでしょうし、私たち凡人とは比べ物にならないくらい一生懸命だったはずです。だけど、そういった苦労もあっけらかんと話してしまえるところもあり、苦悩を芸術や表現にまで高めることができなかったのではないかと思います。人間として付き合うのだったら、草刈さんのように明るく賢く楽しい人のほうがいいと思いますが。

「ESPRIT」に出演したダンサーたち、マッシモ・ムッル、イーゴリ・コールプ、リエンツ・チャン、タマラ・ロホ、ルイジ・ボニーノ、みんなそれぞれ個性的で一筋縄ではないアーティストばかり。草刈さんは、自分に無いもの=濃い表現を求めて、彼らをキャスティングしたのではないかと思いました。そうすることにより、草刈さんは自分の引退公演であるにもかかわらず、自分自身より彼らの個性を引き出し、結果的に講演の内容も大成功を収めました。本当に彼女は賢い人だと思います。

シュツットガルト・バレエの2010年カレンダー2種/マドリッド公演 Stuttgarter Ballett Kalender

4月末にシュツットガルトに行ってきた時に、早くも来年のカレンダーが売っていました。2009年のカラー版のカレンダーはちょうど今使っています。2010年のも、カラー版(舞台写真)とモノクロ版(リハーサル写真)の2種類が出ていました。

カラー版が36ユーロ、モノクロ版が18ユーロで、カラーの方はダンボールに入っていたので、大変重い思いをしてホテルまで持って帰ったのですが、ダンボールを外したらちょうどそのままスーツケースに入ってくれたので良かった。この定価を考えると、去年の来日公演で会場で販売されていたカレンダーは、本当にお得な価格だったのですね。

これは2009年のカレンダー(カラー版)
http://www.amazon.de/Stuttgarter-Ballett-2009-Lesley-Spatt/dp/3411802138

P1030746s

アマゾン等では扱っていないのですがAmazonではAmazon.de(ドイツ)でのみ扱っているのですが、モノクロ版は大体毎年チャコットやシルヴィア等のバレエショップで売っているので、参考になるかと思って、登場していたダンサーと作品名を紹介します。

カラー版
表紙は、ノイマイヤー振付の「オテロ」、ジェイソン・レイリーとカーチャ・ヴュンシュです。このジェイソンの写真が、も~めちゃめちゃカッコいい。同じ図柄のポスターも売っていました。

こちらのサイトにあるDurchblätternという文字をクリックすると、各月の写真を見ることができます。拡大された画像の上にあるWeiterblätternをクリックしていくと、スライドショー形式で見られます。
http://www.wissenswert24.de/product_info.php?cPath=28_101_107&products_id=2900

1月 Aus Holbergs Zeiten ジョン・クランコ振付 エリザベス・メイソン
2月 くるみ割り人形 Marco Goecke振付 エレーナ・テンチコワ、ウィリアム・ムーア
3月 Presence ジョン・クランコ振付 スージン・カン、ジェイソン・レイリー、イリ・イェリネク、カンパニー
4月 Lulu クリスチャン・シュプック振付 エリザベス・メイソン、アンサンブル
5月 白鳥の湖(黒鳥のPDD) ジョン・クランコ振付 アンナ・オサチェンコ、エヴァン・マッキー
6月 Brouillards ジョン・クランコ振付 アリシア・アマトリアン、ダグラス・リー
7月 Presence ジョン・クランコ振付 スージン・カン
8月 オテロ ジョン・ノイマイヤー振付 ジェイソン・レイリー、マリイン・ラドメイカー、アレクサンダー・ジョーンズ、カンパニー
9月 ロミオとジュリエット ジョン・クランコ振付 スージン・カン、フリーデマン・フォーゲル
10月 カルメン ジョン・クランコ振付 スージン・カン、マリイン・ラドメイカー
11月 カード遊び(Jeu De Cartes) アレクサンダー・ザイツェフ
12月 白鳥の湖(黒鳥のPDD) アンナ・オサチェンコ、フィリップ・バランキエヴィッチ

写真の魅力で言えばダントツで表紙の「オテロ」のジェイソンが素敵です。でも、もう一枚の「オテロ」の写真も、美しい男性たちをそろえた不穏な感じでいいですね。あと、シュプックの「ルル」が退廃的な雰囲気で美しいです。「カルタ遊び」のザイツェフはメイクで顔はほとんどわからないのですが、空中で止まっているかのような瞬間を写していて、見事なテクニックが伺えます。こちらのカレンダーを使う2010年にはジェイソン・レイリーがいないと思うと、彼の抜けた穴が大きいだろうなと感じられてしまいます(涙)。

モノクロ版
表紙 Aus Holbergs Zeiten ジョン・クランコ振付 エリザベス・メイソン、アレクシス・オリヴェイラ
1月 テーマとヴァリエーション ジョージ・バランシン振付 エレーナ・テンチコワ、マリイン・ラドメーカー
2月 Poeme de L'Extase(法悦の詩) ジョン・クランコ振付 エリザベス・ワイゼンバーグ、ヘザー・チン、ナタリーグス、ダモエラ・ランツェッティ、デヴィッド・ムーア、ブレント・パロリン、チャールズ・ベリー
3月 テーマとヴァリエーション ジョージ・バランシン振付 マリア・アイシュヴァルト、フリーデマン・フォーゲル
4月 眠れる森の美女 マリシア・ハイデ振付 アンナ・オサチェンコ
5月 ハムレット ケヴィン・オデイ振付 アリシア・アマトリアン、ジェイソン・レイリー
6月 カード遊び ジョン・クランコ振付 ローランド・ハヴリカ、アッティラ・バコ、ダミアーノ・ペネテッラ、ローレント・ギボー、ウィリアム・ムーア
7月 じゃじゃ馬ならし スージン・カン、フィリップ・バランキエヴィッチ
8月 Aus Holbergs Zeiten ジョン・クランコ振付 エリザベス・メイソン、アレクシス・オリヴェイラ(表紙と同じ)
9月 Poeme de L'Extase(法悦の詩) ジョン・クランコ振付 ブリジット・ブライナー、イリ・イェリネク、ジェイソン・レイリー、アレクサンダー・ジョーンズ、エヴァン・マッキー、フリーデマン・フォーゲル
10月 ハムレット ケヴィン・オデイ振付 オイハネ・ヘレーロ、エヴァン・マッキー
11月 テーマとヴァリエーション ジョージ・バランシン振付 アリシア・アマトリアン、フリーデマン・フォーゲル
12月 I Fratelli(若者のすべて) マウロ・ビゴンゼッティ振付、カーチャ・ヴュンシュ、マリイン・ラドメーカー

こちらは、リハーサル写真ならではの、楽しげなムードがある写真が何点かあるのが面白いです。中でも「じゃじゃ馬ならし」の羽目を外した動きのある写真からは笑い声が聞こえてきそう。空中で止まっているかのようなスージンが可愛いです。ジェイソン・レイリーはすごくセクシーだわ、とかマリイン・ラドメーカーは横顔も美形だわ、とかいろいろと楽しめます。「ハムレット」のオイハネ・ヘレーロとエヴァン・マッキーの息詰まるやり取りが見えてくる写真もすごく素敵。

*********
追記
Side B-alletのゆうさんに教えていただきましたが、Amazon.co.jpでも発売するようです。

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今シュツットガルト・バレエはスペインはマドリッド、テアトロ・レアルにて「ロミオとジュリエット」を公演中です。けが人が多いためか?逆に豪華なキャストになっていて、なんと13日はジェイソン・レイリーがマキューシオ役デビューなんですね。また、フィリップ・バランキエヴィッチも、ロミオとマキューシオの両方を踊っているし、観られた人はラッキーなんじゃないかと思います。最終日など、プリンシパルを5人も投入しているんですよね。

バランキエヴィッチは、シュツゥトガルトに戻ってきての「ラ・フィユ・マル・ガルデ」ではシモーヌ役も踊っているんですね。芸達者な人だわ。
http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/spielplan/

5月13日
Romeo und Julia (Gastspiel in Madrid)
Ballett in drei Akten nach William Shakespeare
Besetzung
Julia Sue Jin Kang
Romeo Filip Barankiewicz
Mercutio Jason Reilly (Rollendebüt)
Benvolio Attila Bako
Tybalt Jiri Jelinek
Graf Paris Nikolay Godunov
Teatro Real, Madrid (ES)


5月14日
Romeo und Julia (Gastspiel in Madrid)
Julia Maria Eichwald
Romeo Jason Reilly
Mercutio Arman Zazyan
Benvolio Roland Havlica
Tybalt Nikolay Godunov
Graf Paris Alexander Jones


5月15日
Romeo und Julia (Gastspiel in Madrid)
Julia Sue Jin Kang
Romeo Filip Barankiewicz
Mercutio Jason Reilly
Benvolio Attila Bako
Tybalt Jiri Jelinek
Graf Paris Nikolay Godunov


5月16日(マチネ)
Romeo und Julia (Gastspiel in Madrid)
Julia Maria Eichwald
Romeo Jason Reilly
Mercutio Arman Zazyan
Benvolio Roland Havlica
Tybalt Nikolay Godunov
Graf Paris Alexander Jones


5月16日(ソワレ)
Romeo und Julia (Gastspiel in Madrid)
Julia Alicia Amatriain
Romeo Friedemann Vogel
Mercutio Filip Barankiewicz
Benvolio William Moore
Tybalt Jiri Jelinek
Graf Paris Douglas Lee

2009/05/13

シュツットガルトと州立美術館 Staatsgalerie Stuttgart

シャルル・ド・ゴール空港を経由してシュツットガルトに到着したのは朝の10時。エールフランスでは、サービスの売りであるシャンパンサービスが、GWで満席のせいか品切れになってしまって非常に残念。今まで一度もそんなことはなかったのに。代わりに(?)、開演前に劇場でシャンパンを一杯ご馳走になったので、良かったけど。

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ホテルはSバーンの駅&中心街のすぐそばで、州立劇場までも歩いていける距離にあってとても便利。シュツットガルトはホテルの値段がお手ごろなのが助かるところ。3月に来た時には、半日しかいなくて、バレエをマチネとソワレで観たので、劇場とホテルしか行けなかった。今回は、街を散策する時間があった。大きな街ではないけれども、黒い森に抱かれて緑が多く、とてもヨーロッパ的できれいな街だ。ハンブルクよりも規模はだいぶ小さい感じだけど、清潔で規模の割りにブランドショップがたくさんあるところなどは似ている。観光名所はほとんどなく、この州立美術館と、メルセデス・ベンツ博物館、ポルシェ博物館、そして郊外にあるヴァイセンホフジードルンクの住宅群くらい。ここは駅舎にベンツのロゴが輝く自動車の街で、シュツットガルト・バレエの来日公演でも毎回必ずダイムラー・ベンツの貸切公演があるくらいなのだ。今回メルセデス・ベンツ博物館には行けなかったけど、車好きじゃなくても楽しいところらしい。

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シュツットガルト州立劇場のすぐ裏にあるシュツットガルト州立美術館。素晴らしいと話には聞いていたものの、実際に行ってみて、あまりの傑作ぞろいに驚嘆したほど。しかも太っ腹なことに、入場料は無料だった(6月1日まで)。その時期は特別展が開催されていなかったこと、そしてこの美術館の売り物の一つである、ドイツ随一のピカソ・コレクションとバーン=ジョーンズコレクションの部屋が改装のために閉鎖されていたことが、無料の理由かもしれない。手元にある最新の「地球の歩き方」には入場料金が記載されていたし。いずれにしても、シュツットガルトの街はこれから何度も訪れる予定なので、今後の楽しみが増えたということで。場内は撮影禁止で、手荷物もすべて預けさせられる。
http://www.staatsgalerie.de/

中世美術からイタリア・ルネッサンス、フランドル派、印象派、象徴主義、ドイツ表現主義そして現代美術まで幅広いコレクションで、気がつけば5時間くらいこの美術館で過ごしてしまった。素晴らしい収蔵品のごく一部は、デジタルカタログで観ることができる。
http://www.staatsgalerie.de/digitalerkatalog_e/

ここはバウハウスのマイスター(教授)、オスカー・シュレンマーの作品で有名で、特に「トリアディック・バレエ」と呼ばれる奇抜な舞踊衣装(立方体、円錐、球体の3つの幾何学基本形が使われた、ロボットみたいな独特の衣装)の展示は面白かった。カタログを買ったのだけど載っていなくて、ポストカードを買って帰れば良かったとちょっと後悔(でも、どうせまた行くだろうし)。

レンブラント、マネ、ゴッホ、ゴーギャン、モネ、ルノワール、ドガ、モディリアーニ、パウル・クレー、キリコ、ダリ、ポロック、シーレ、リキテンシュタイン、マン・レイ、ウォーホル、フランシス・ベーコンなどなど、様々な時代の傑作が揃っているのだけど、ドイツにある美術館だけあって、ドイツ表現主義の作品にはインパクトがあった。ナチスドイツの台頭により「退廃芸術」と烙印を押されドイツを追われたユダヤ人画家マックス・ベックマンの作品が強烈。絵についている解説は英語もあったのだけどカタログにはドイツ語表記しかなくて邦題がわからないのだけど、真っ暗なオーケストラのボックス席にいる俯いた女性と、彼女とはまったく別方角を見ているオペラグラスの男性を配置した「Die Lodge」は映画のようなスリリングさ。また、カジノでの欲望渦巻く世界を鮮烈に表現した「Dream of Monte Carlo」や、戦争の恐怖が伝わってくる大作「Auferstehung」には圧倒された。そしてもう一人ドイツ表現主義では、オットー・ディクス。そう、先日の「ESPRIT」公演で草刈民代とイーゴリ・コールプが踊ったローラン・プティ振付「切り裂きジャック~オットー・ディクスより」で出てくる画家だ。マッチを売る傷痍軍人が強烈で諧謔的な「Streichholzhändler」を見ると、なるほど、あの作品の世界だわ、と思う。彼も、ナチスによって頽廃芸術がとされた画家の一人である。

それ以外のジャンルでは、まず、ドラクロワの「An Indian Woman Killed by a Tiger」が残虐性とエキゾチズム、そしてスピード感のある作画で、小さな作品ながら鮮烈。そしてムンクの「Madchenakt auf Rotem Tuch 赤い敷物の上の少女」燃えるような赤い髪の妖艶な裸体の少女の作品で、敷物の赤が、少女のエロスとともに、彼女が犠牲者でもあると言うことを表現しているという。現代美術では、本物そっくりで一瞬びびるお掃除のおばさんの彫刻が面白かった!また、作家名は全然覚えていないのだけど、宗教画を現代的な解釈で描いている作品を集めた部屋が面白くて、「最後の晩餐」の12人の使徒が20世紀初頭の服装をしていることで、まるでテロリストの集会に見えていたり、ヨゼフとマリアをホームレスの男女として描いてたりと、なんとも心に残る作品が集まっていた。風景画に現れたロマン主義的な表現を集めた部屋もあり、さらにココシュカやシーレなどの象徴主義的な作品も大好きなので、時間が経つのを思わず忘れてしまうほどだった。

そろそろホテルに戻って夜の準備をしようと思ったら、外は突然の大雨。傘は部屋に置いてきてしまったし。30分ほど美術館で雨宿りしたけど、止む気配がなく、一度傘なしで外出したところずぶぬれになったので、ミュージアムショップで傘を買うことに。折り畳み傘がなかったので、子供用の冗談みたいに小さな傘だけど、色鮮やかな花の絵画をあしらったものでとても可愛い。旅行中に長傘はさすがに買えなかった…。(成田を出た時点ですでにスーツケースの重さが20キロもあったのだ)

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ホテルに戻ったら、もう待ち合わせぎりぎりの時間。シャワーを浴びて着替えて、州立劇場の横にある中劇場Schauspielhausへと急ぐ。雨も止んでいた。待ち合わせ人ふたりに無事に会えて、開演前にシャンパンを飲んでしばし歓談。このSchauspielhausは600席余りの劇場で、今回のようなコンテンポラリーや、演劇などが上演されている。親密な空気がダンサーにとっても心地よいそうだ。開演時には、フリーデマン・フォーゲルの姿もチラッと見かけた。ちょっと前に日本で観たばかりなのに、ドイツで姿を見かけると不思議な感じ。初日ということもあって、芸術監督リード・アンダーソン、振付家クリスチャン・シュピック、それからダンサーらしき人たくさんがいて、華やかなホワイエ。休憩時間にはシュツットガルト・バレエの2010年カレンダーを2種類買って、大きな荷物を抱え、夜景が美しいシュツットガルトの街を駆け抜け、楽しい思い出を胸にホテルへと戻った。

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2009/05/12

5月~6月のバレエ関係のTV放送予定から

両方ともNHKのハイビジョンですが、バレエ関係では1ヶ月以内に以下の2番組の放映があります。両方とも、まだ観ていない方は必見です!

2009年 5月31日(日) 06:00 ~ 07:54 BS HiVision  
サンクトペテルブルク建都300年ガラ
BS シンフォニー アワー
http://www.nhk.or.jp/nkyouhour/nso/index.html
指揮: ワレリー・ゲルギエフ
バレエ : マリインスキー劇場バレエ
合 唱 : マリインスキー劇場合唱団
管弦楽 : マリインスキー劇場管弦楽団

5. バレエ「ラ・バヤデール」 第3幕 から ( ミンクス作曲 )
7. 歌劇「イーゴリ公」 から “ダッタン人の踊りと合唱” ( ボロディン作曲 )
9. バレエ「瀕死の白鳥」 ( サン・サーンス作曲 )
10. 歌劇「スペードの女王」第3幕 第3場 から ( チャイコフスキー作曲 )
11. バレエ「海賊」 から “グラン・パ・ド・ドゥ” ( アダン作曲 )
ディアナ・ヴィシニョーワ、ウリアナ・ロパトゥキナ、スヴェトラーナ・ザハロワ、
ウラディーミル・ポノマリョフ、レオニード・サラファーノフ、イーゴリ・ゼレンスキー

2009年6月13日(土)(23:00~翌3:00までの3番組の3番目)
ハイビジョン ウイークエンド シアター
http://www.nhk.or.jp/bsclassic/hvwth/hvwth-2009-06.html
「ストリクトリー・ボリショイ」
もっとも重要なバレエ・カンパニーのひとつであり、バレエの原点と密接な関係をもつボリショイ・バレエ。 モスクワでの創作的工程の詳細にわたる映像やバレエ界の著名な人物のインタビューをおりまぜながら、 「バレエ・ボーイズ」のマイケル・ナンと ウィリアム・トレビット(かつてのロイヤル・バレエのスター) により制作されたこの映像は、 世界でもっとも名高い芸術の確立のために、 創作における試行錯誤や試練を視聴者に臨場感あふれる模様で伝えている。
2008年国際エミー賞受賞作品
ダンサー
ダーシー・バッセル 、ニコライ・ツィスカリーゼ 、マリーヤ・アレクサンドロワ ほか
音楽 : アルヴォ・ペルト
振付 : クリストファー・ウィールドン
プロデューサー : マイケル・ナン
  〃 : ウィリアム・トレビット
演 出 : オリバー・マンツィ
[ 制作: 2007年, BALLET BOYZ ]

あと、地上波では、水曜日に二つ。

5/13(水) 19:58-20:54 日本テレビ 「笑ってコラえて!」 越智久美子
http://www.ntv.co.jp/warakora/
【日本列島 ちょっと昔の旅】というコーナーに越智さんは出演するようです。

5/13(水) 22:00-22:54 TBS クメピポ!絶対あいたい1001人 草刈民代/周防正行
http://www.mbs.jp/kumepipo/
「エスプリ」の映像が少しでも流れたらいいなあ。


******
バレエではないのですが、このあたりは観てみたいなという番組です。

ハイビジョン ウイークエンド シアター
http://www.nhk.or.jp/bsclassic/hvwth/index.html

2009年 5月23日(土) 23:00 ~ 翌 03:00
ロイヤル・オペラ・ハウス 歌劇「ヘンゼルとグレーテル」  
( フンパーディンク )


BS2 クラシック倶楽部
http://www.nhk.or.jp/bsclassic/bscc/index.html

2009年 5月25日(月) 10:55~11:50
ネマニャ・ラドゥロヴィチ バイオリン・リサイタル
1. バイオリン・ソナチネ 第1番 ニ長調 作品137 第1   ( シューベルト作曲 )
2. バイオリン・ソナチネ ト長調 作品100 ( ドボルザーク作曲 )
3. バイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 作品45 ( グリーグ作曲 )
バイオリン : ネマニャ・ラドゥロヴィチ
ピアノ : ロール・ファヴル・カーン
[ 収録: 2008年12月8日, 武蔵野市民文化会館 ]


クラシック ロイヤル シート
http://www.nhk.or.jp/bsclassic/crs/index.html

2009年 5月25日 (月)  01:00~04:00
ラン・ラン アット シェーンブルン宮殿
ピアノ : ラン・ラン
管弦楽 : ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指 揮 : ズービン・メータ
[ 収録: 2008年6月28日, シェーンブルン宮殿 (オーストリア・ウィーン) ]


ハイビジョン ウイークエンド シアター
http://www.nhk.or.jp/bsclassic/hvwth/hvwth-2009-06.html

2009年 6月13日(土) 23:00 ~ 翌 03:00 ご案内: 堀内 修 (音楽評論家)
ビリャソンが歌う ヘンデルのアリア

ドキュメンタリー 「アイドル的音楽家・ヘンデルの人生」

クラシック ドキュメンタリー
ストリクトリー・ボリショイ
気鋭振付家と伝統的バレエ団の葛藤

2009/05/11

毎日新聞「時代を駆ける」に吉田都さん Miyako Yoshida Interview

わが家では、あまりバレエの批評等が載らない毎日新聞を購読しているのですが、今日(5月11日)の朝刊「時代を駆ける」に、珍しく連載で吉田都さんのインタビューが載っていました。

記事はWebでも読むことができます。
http://mainichi.jp/select/opinion/kakeru/news/20090511ddm004070017000c.html

インタビューやテレビ出演を見ていつも思うのですが、都さんは世界の頂点と言ってもいい素晴らしいバレリーナで、スターだというのに、とても腰が低く、偉ぶることなど決してありません。彼女はいつも、飾らない人柄の良さと向上心の高さを感じさせてくれて、本当に素敵な方だと思います。

ローザンヌコンクールでの、踊る歓びに満ちた空気が17歳の都さんを解き放ち、ロイヤル・バレエ・スクールへのスカラシップにつながり、さらにピーター・ライトが彼女に目を留めたことでサドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエに入団。当時入団の打診を受けた時には、むしろショックだったというエピソードには驚きました。両親や日本の先生が都さんの背中を押してくれて、彼女がイギリスに残ることを決断してくれたことに、私たちは感謝しなくてはならないと思います。

願わくば、もっと日本で彼女が踊る舞台を観たいものです。誰もがロンドンにすぐに飛んで行けるわけではないので。来年のロイヤル・バレエの来日公演の「ロミオとジュリエット」で都さんを観られたら、こんなに嬉しいことはないですよね。(チケットは大変な争奪戦になりそうですが)

追記:第二回「欠点を見据え克服し、自信」はこちらです。
http://mainichi.jp/select/opinion/kakeru/news/20090512ddm004070168000c.html

********

※タイトルと関係ないのですが、シュツットガルト・バレエの4月29日の鑑賞記がやっと書けたので、一応お知らせしておきます。関心のある方はどうぞ~。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2009/04/429-goecke-lee-.html

2009/05/10

5/10 新国立劇場 ムツェンスク郡のマクベス夫人 Shostakovich:Lady Macbeth of Mtsensk

2008/2009 Season Opera
[New Production]
Shostakovich:LADY MACBETH OF MTSENSK
ショスタコーヴィチ/全4幕

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000059_opera.html

【作 曲】ドミトリー・ショスタコーヴィチ
【台 本】アレクサンデル・プレイス

【指 揮】ミハイル・シンケヴィチ
【演 出】リチャード・ジョーンズ
【美 術】ジョン・マクファーレン
【衣 裳】ニッキー・ギリブランド
【照 明】ミミ・ジョーダン・シェリン

【芸術監督】若杉 弘

キャスト
【ボリス・チモフェーヴィチ・イズマイロフ】ワレリー・アレクセイエフ
【ジノーヴィー・ボリゾヴィチ・イズマイロフ】内山 信吾
【カテリーナ・リヴォーヴナ・イズマイロヴァ】ステファニー・フリーデ
【セルゲイ】ヴィクトール・ルトシュク
【アクシーニャ】出来田 三智子
【ボロ服の男】高橋 淳
【イズマイロフ家の番頭】山下 浩司
【イズマイロフ家の屋敷番】今尾 滋
【司祭】妻屋 秀和
【警察署長】初鹿野 剛
【警官】大久保 光哉
【酔っ払った客】二階谷 洋介
【軍曹】小林 由樹
【ソニェートカ】森山 京子
【年老いた囚人】ワレリー・アレクセイエフ
【ボリスの亡霊】ワレリー・アレクセイエフ

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

1934年の初演は大好評だったものの、1936年にスターリンがこの作品を鑑賞して激怒し上演禁止となり、ショスタコーヴィチの作曲家生命すら危ぶまれるという事態になったいわくつきの作品。今回の上演は、2004年にロイヤル・オペラのために演出されたプロダクション。ローレンス・オリヴィエ賞の最優秀オペラ賞を受賞しているとのこと。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とマリス・ヤンソンス指揮のプロダクションをDVDで観ていたものの(そちらは、今年の一月にパリ・オペラ座でも上演されていた)、このオペラを実演で観るのは初めて。実に面白かった!セックス&ヴァイオレンス描写はコンセルトヘボウの方が過激だけど、英国的な抑え目の演出と黒いユーモアが良くマッチしていたと思う。

なんといっても、ショスタコーヴィチの音楽がもう最高にいい!性描写の時の、扇情的な打楽器による盛り上げ方、間奏、舞台上で起きていることは悲惨なのに笑えてしまうパロディ的な音楽の使い方。ショスタコーヴィチなんて暗くて難解で、と思っている人でも楽しめるわかりやすいメロディ。金管が特に前面に出されていて、15人という大きな編成のバンダが、2階L1列(バルコニー席)に登場したり、合唱の中に混じって舞台上に登場したり、殺されたジノーヴィの死体を発見した酔っ払った客が警察に駆けつける間の間奏で幕の前に登場して演奏するという活躍ぶり。演奏もとてもよかったと思う。大音量で鳴らしていて大変な迫力があった。私はクラシック音楽に詳しくないので、若杉弘氏の代役として登場した、マリインスキー劇場のミハイル・シンケヴィチの指揮が良かったかどうかはわからないけど、よく響いていたし、ショスタコーヴィチならではの諧謔性も表現できていて、とても楽しめたことは間違いない。

歌手については、まず定評のある新国立劇場合唱団の実力を再認識。そしてカテリーナ役のステファニー・フリーデが最後まで美しく響く声で熱演。この作品で叙情的なメロディのほとんどは、カテリーナが歌うことになっているため、表現力が重要なことは言うまでもない。カテリーナは夫と舅を殺してしまう悪女ではあるけれども、悪い女というよりは、周りの男たちの犠牲者となった悲劇的な存在だというのがよくわかる。舅ボリスと、ボリスの亡霊や年老いた囚人役のワレリー・アレクセイエフも素晴らしかった。1幕では好色で支配的な老人のいやらしさ、4幕ではシベリアに流刑となって、終わりのない行進を続けさせられている運命への嘆きが深みを持って伝わってきた。特に4幕では圧巻。あとは、死体を発見する酔っ払った客の二階谷洋介さん、超笑えて最高の怪演。ものすごい怪しい存在感の司祭妻屋 秀和さんも良かった。また、セルゲイを誘惑する若く蓮っ葉な女ソニェートカ役の森山京子も迫力あり。

連続した二つの部屋を表現する箱を並べた舞台構成。サイド席だとかなり観づらいのではないかと思う。字幕を追いかけながら舞台も同時に観るのは大変だったし。しかし、結婚式の宴の隣の倉庫に死体が隠されていたり、嫁の様子を舅が覗き見たり、妻の情事を夫が嗅ぎつけたりといった2つの隣接した別の場所の様子を表現するにはうまいやり方だ。夫を殺したとたん、カテリーナが部屋をピンクの壁紙を実際に貼り付けさせて改装させたり、結婚式での(あほくさいまでの)熱狂の最中に殺人が露見するというシチュエーションの転換が面白い。テレビの画面も巧みに使っていて、舅の亡霊が画面に映ったり、結婚式に招かれなくてふくれている警察官たちの部屋にあるテレビに宴の様子が中継されていて、ますます「いいなあ」って彼らが思い込むというのが笑える。

カテリーナは悲劇的な存在であるとともに、悪い男に引っかかったばかりに身を破滅し、挙句の果てにその男にも捨てられ、彼の愛人ソニェートカにはおばかさんと罵られてしまう、バカな女。しかし単なる悲劇としてでなく、笑えるところをいっぱい盛り込むことによって、息の詰まるような田舎町の封建性、人間の変わり身の早さといった醜い部分がクローズアップされ、さらにカテリーナの悲劇が強調されているのが、面白い。

ただ、最後にカテリーナがソニェートカを急流に突き落とし自分も身を投げて死ぬところ、プロンプターボックスの横のせりにゆっくりと下りていくという演出が、あまり緊迫感やドラマティックさがなくて、拍子抜けしてしまったのがちょっと残念だった。

プログラムの解説がとても詳しくて、すごく勉強になった。新国立劇場のバレエのプログラムは、前回公演の使い回しとかが多くて、値段の価値はないけれど、今回のオペラのプログラムはとてもいい!

大胆で面白く、充実した上演であったことは間違いない。再演もぜひして欲しいと思う。

ショスタコーヴィチ:歌劇≪ムツェンスク郡のマクベス夫人≫全曲 [DVD]ショスタコーヴィチ:歌劇≪ムツェンスク郡のマクベス夫人≫全曲 [DVD]
ヤンソンス(マリス)

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追記:この作品、リブレットがとても面白いし、性暴力を描いているにも関わらず、一種の女性の自立譚となっている。セルゲイや使用人たちが、女中を集団暴行しているときに騒ぎを聞いて駆け付けたカテリーナは、「女にだって男と同様、頭はあるのよ」と言い、セルゲイと腕相撲対決までする。女性に対して抑圧的だった当時の世の中で、カテリーナがその抑圧を逃れようとあがいた結果が、この物語の結末であるのが悲しい。

舅を毒殺するときに「キノコの毒に当たって死ぬことはよくあるわ」とカテリーナが言い放つのは爽快ですらあるし、酔っ払った客の歌の歌詞は爆笑モノ!

世界を変える100人の日本人 竹島由美子さん YUMIKO TAKESHIMA

世界を変える100人の日本人(テレビ東京) 5/8(金)◆20:00ー20:54

世界のトップバレリーナを包む人気レオタードのデザイナー兼バレリーナ(竹島由美子)
http://www.tv-tokyo.co.jp/100japan/backnumber/index.html

世界でも有数のバレエ王国オランダやドイツなどで活動するバレリーナ(ドイツのドレスデン・ゼンパーオーパー・バレエ団所属)であるかたわら、レオタードブランド『YUMIKO』のデザイナーを務める。『YUMIKO』のレオタードは、自身がバレリーナであるがゆえに、バレリーナの心理をとことん理解して作られており、特に体のラインを美しく見せることに定評がある。その人気は、世界のトップバレリーナの大半が彼女のレオタードを着ていると言われているほど。また、その評判を聞いて、最近ではマドンナがヨーロッパツアーのために何枚も衣装の依頼をし、実際にツアーで使用した。その後も気に入って、よくオーダーがくるそう。 カスタマーメイドを行なっており、それぞれ自分の体に合うよう、特別なサイズの注文を受けている。(2007年、NYに直営店もオープンした。)

ドレスデン・バレエのプリンシパルとして活躍しながら、レオタードブランド「YUMIKO」や舞台衣装のデザイナーとしても知られている竹島由美子さんを紹介。彼女の現在の拠点、ドレスデンのゼンパーオーパーを訪ねて、リハーサル中の竹島さんをキャッチ。口コミで広まり、世界中のバレエダンサーのうち8割が一度は着用したことがあるというのにはびっくりです。マドンナがツアーで着用していたということも知りませんでした。彼女からは感謝の手紙も届いたそうです。今や年商2億円、スペインにワークショップを開設して製作しているとのこと。

竹島さんは、ダンサーとしての経験を生かして、動きやすく美しく見えるレオタードをデザインしています。たとえば腰にあるタトゥーを見せたいバレリーナのために腰のところが開いているデザインを作って、そのバレリーナの名前をつけたデザインとして発売したりしているというエピソードが面白いですよね。実際私もYUMIKOのレオタードを使っているのですが、締め付け感がなくて、とても動きやすいのです(下手なのに使っていると完全にレオタード負けしてしまいますが(笑))。色やデザインの組み合わせも自由に選べて、自分の身体にぴったりしたものをオーダーできます。

ドレスデン・バレエのセンターレッスンの模様、バレエ学校のバーレッスン、実際に着用しているダンサーの声(ミュンヘン・バレエのリサ・マリー・カラムのコメントも)、そしてニューヨークにある店舗でも取材。NYCBのプリンシパル、サラ・メアーンズも登場していました。スタジオでは、NBAバレエ団の今橋 知子さんがYUMIKOのレオタードを着用して、少しバレエを実演してくれました。

10分ほどのコーナーでしたが、海外ロケもあってかなりの豪華版のコーナー。とても面白く観ることができました。

あまりテレビを見ないので、このような番組があることも知らなかったのですが、他に紹介されていたインラインスケート世界チャンピオンの安床ブラザーズや、砂の彫刻の達人(プロサンドアーティスト)茶園勝彦さん、そして東洋のシンドラー、杉原千畝さんのエピソードと、番組そのものがとても面白かったです。

YUMIKOのショップのサイト
http://www.yumiko-online.com/jp/
着用しているダンサーの声が紹介されていて、2007年に引退したハンブルク・バレエのヘザー・ユルゲンセンのコメントを見つけてちょっと嬉しくなりました。

竹島さんは、バレリーナとしても本当に素晴らしくて、特にデヴィッド・ドーソンの作品を踊るときのカッコよさにはしびれてしまいます。インタビューからは飾らない人柄がうかがえて、また近いうちに彼女の踊りが観たいと思ったのでした。

2009/05/09

NHK教育テレビロイヤル・バレエ「マノン」Royal Ballet Manon/ENBの衣装をカール・ラガーフェルドがデザイン

今日は帰宅後NHK教育テレビで放映されていたロイヤル・バレエの「マノン」を観ていました。ハイビジョンで2回放送された時も観たのですが、「マノン」が大好きなので、今日も思わず観てしまったわけです。

タマラ・ロホのマノン役が素晴らしいのですよね。天然のファム・ファタルで、どこまでも純真で生命力に溢れていて。以前、ダンスマガジンのインタビューで、彼女は、マノンは悪女ではなく、周りの男性たちに利用された犠牲者なのだと語っていました。最後の最後まで生命の炎を燃やし続けた彼女は、確かに犠牲者だったのかもしれない。だけど彼女は強く生きたんだと思わせてくれます。しかも堕ちれば堕ちるほど、逆に清められていくように見えるのです。

カルロス・アコスタは熱演していて、特に沼地のパ・ド・ドゥでの感情のこもり方、マノンへの愛と万感の想いには胸を打つものがあるのですが、踊りはやや安全運転過ぎたような感じです。彼はとてもノーブルでいいダンサーなのですが、デ・グリューはちょっと彼のキャラクターには合わないと思いました。

ホセ・マルティンのレスコーは小悪党ぶりがよくはまっているし、酔っ払いダンスも上手くて適役です。スペイン人同士なので、容姿的にも兄妹に見えるし。そういえば、2005年のロイヤルの来日公演では、タマラ・ロホ、ロバート・テューズリー、ホセ・マルティンの組み合わせで「マノン」を観て、タマラ・ロホのゾクゾクするような演技力に舌を巻いたのでした。

ロイヤルはキャラクテールがみんな上手いので、マクミラン作品は見ごたえがあります。ムッシュGMのクリストファー・サウンダース、マダムのジェネシア・ロサートとも、台詞が聞こえてくるような演技を見せてくれます。トーマス・ホワイトヘッドの看守がものすごい変質者ぶりで、マノンを舐め回すような視線が強烈でした。彼はマッツ・エックの「カルメン」で、タマラのカルメンに対してホセを演じているんで、演技の温度が同じものを感じさせます。あまりにも変態っぽい看守なので、タマラがとても小さくて哀れな存在に見えます。まさに男たちの欲望の犠牲者となった姿なのですね。

3人の紳士が佐々木陽平、リカルド・セルヴェラ、ヴァレリー・ヒリストリフなのですが、リカルドをこの役で使うのはあまりにも勿体無いですよね。やはり2005年の来日公演、ダーシー・バッセルとロベルト・ボッレが出演した「マノン」で彼はレスコー役だったのです。ダーシーの兄にしてはちょっと可愛すぎたところもありますが、踊りは本当に上手いのに。

良い公演だと思うし、そのうちDVD化されたら買いたいと思います。その前の情報コーナーでは、タマラ・ロホのインタビューも流れました。DVDの特典として収録されていたらいいな。

「英国ロイヤル・バレエ団 『マノン』」The Royal Ballet Kenneth MacMillan's Manon
バレエ「マノン」全3幕

<出演>
マノン:タマラ・ロホ Tamara Rojo
デ・グリュー:カルロス・アコスタ Carlos Acosta
レスコー:ホセ・マルタン Jose Martin
ムッシューG.M.:クリストファー・サンダース Christopher Saunders
レスコーの愛人:ラウラ・モレラ Laura Morera
看守:トマス・ホワイトヘッド Thomas Whitehead
マダム:ジェネシア・ロサート Genesia Rosato
物乞いの頭:ポール・ケイ Paul Kay
紳士:リカルド・セルヴェラ Ricardo Cervera ヴァレリー・ヒリストフ Valeri Hristov 佐々木陽平 Yohei Sasaki
バレエ:英国ロイヤル・バレエ団 The Royal Ballet

<管弦楽>コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
<指揮>マーティン・イェーツ
<振付>ケネス・マクミラン
<収録>2008年11月 ロイヤル・オペラハウス(ロンドン) The Royal Opera House 2008.11

http://www.nhk.or.jp/art/archive/200905/02music.html

*******
「マノン」つながりで、同じくマクミランの「マノン」をレパートリーにしているのが、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)です。今年の1月にも、フリーデマン・フォーゲルをゲストに迎えてロンドンで上演したのですが、ちょうど今、イタリアのパルマとモデルナにて、「マノン」を上演しています。
http://www.ballet.org.uk/manon/manon-performance-times.html

そのENBですが、6月16日ー20日には、サドラーズ・ウェルズにてバレエ・リュスへのオマージュ公演を行います。
http://www.ballet.org.uk/ballets-russes/ballets-russes.html
「シェヘラザード」「レ・シルフィード」「瀕死の白鳥」「薔薇の精」「アポロ」「牧神の午後」そして「春の祭典」(マクミラン版)が上演されます。ENBの創設者アリシア・マルコワとアントン・ドーリンはバレエ・リュスのオリジナル・メンバーだったため、これだけのプログラムをそろえることができたといえます。

そして、シャネルのデザイナーであるカール・ラガーフェルドが今回のために、「瀕死の白鳥」などの衣装をデザインします。
http://www.telegraph.co.uk/fashion/fashionnews/5268169/Karl-Lagerfeld-designs-Chanel-outfits-for-English-National-Ballet-dancers.html

この記事に写真が載っている「瀕死の白鳥」の衣装の美しいこと!シニア・プリンシパルのElena Glurdjidzeが着用して踊るとのことです。そして、5月4日発売の「Harper's Bazaar」誌に、この衣装の特集が載っているそうです。

ココ・シャネル自身、「青列車」の衣装デザインを行うなど、バレエ・リュスと深い縁があったんですよね。

********

ロイヤル・オペラハウスでのバレエ「マノン」を収録したCDです。「マノン」という作品は、音楽も美しくドラマティックなのですよね。オペラの「マノン・レスコー」とは作曲者マスネは同じでも、異なった曲を使用しています。特に「エレジー」は印象的です。

Massenet: ManonMassenet: Manon
Jules Massenet

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2009/05/08

新国立劇場の「椿姫」ボリショイ公演に堀口純さん主演

日曜日に新国立劇場のオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を観に行くのですが、ショスタコーヴィッチ好きの家人のためにチケットを取ろうと新国立劇場のサイトにアクセスしたところ、びっくりのニュースが書いてありました。(「ムツェンスク郡のマクベス夫人」はS席以外は完売なので、チケット取りを断念しました)

ボリショイ劇場「椿姫」新国立劇場バレエ団主役、堀口純&山本隆之に決定!
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000737.html

堀口純さんは、まだコール・ドバレエ所属ながら、07年12月「くるみ割り人形」で主役デビューをしています。プロポーションに恵まれていて非常にラインが美しいダンサーで、「白鳥の湖」の3幕の2羽の白鳥での完璧なまでに美しいアラベスクが印象的で、将来が楽しみでした。もちろん、牧阿佐美版「椿姫」の初演の時には、主演していません。初役がいきなり大舞台で大変かと思いますが、大抜擢といえますね。

ボリショイ劇場公演『椿姫』出演者と出演日程
9月18日(金)19:00 スヴェトラーナ・ザハロワ/デニス・マトヴィエンコ
9月19日(土)19:00 堀口純/山本隆之
9月20日(日)19:00 スヴェトラーナ・ザハロワ/デニス・マトヴィエンコ

なお、ボリショイ劇場での「椿姫」の観劇ツアーが企画されているようです。
http://www.proco-air.co.jp/

ワシントン公演の「ライモンダ」上演の時には、ツアーに人が集まらなかったようですが、個人で行くのは難しいロシアへのツアーだったら参加者が集まりそうですね。ボリショイ劇場のバックステージツアーもあり、オプショナルツアーとして、サンクトペテルブルグでのバレエ鑑賞などもつけられるようです。

*********

もう今日になりますが、バレエ関係のテレビ放映が2つあります。

5/8(金)
◆20:00ー20:54
世界を変える100人の日本人(テレビ東京)
世界のトップバレリーナを包む人気レオタードのデザイナー兼バレリーナ(竹島由美子)

竹島由美子さんのレオタード「Yumiko」は私も愛用しています。

◆22:30ー24:45
芸術劇場 英国ロイヤルバレエ団「マノン」(NHK教育テレビ)情報コーナーも「マノン」のようですね

帰国しました/エイフマン・バレエの「オネーギン」 Eifman Ballet “Onegin.”

今朝成田着の飛行機で帰国し、そのまま会社に直行してお仕事。さすがに疲れました。

帰宅すると、マリインスキー・バレエのチケットの束とか、パリにいるときに注文しておいた「椿姫」のDVDとか(早い!)、バレエフェスティバルの追加券の入金案内、祭典会員継続の案内とバレエフェスティバルのガラの案内、そして東京バレエ団の「ラ・バヤデール」のチラシなどもろもろ届いていましたが、ゆっくり見る暇はなく。

とりあえず4月30日の「オネーギン」の感想だけは書き終わりましたので宜しければどうぞ。

昨夜帰国する前にインターネットで見ていて、見つけたのが、エイフマン・バレエの新作「オネーギン」(ボリス・エイフマン振付)のカリフォルニア公演の批評。ちょうどパリでクランコのオネーギンを見ているときに、西海岸でこんなものを上演していたんですね。

The San Francisco Chronicle
http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2009/05/05/DD5C17DA06.DTL

The Financial Times
http://www.ft.com/cms/s/2/608b16a4-398b-11de-b82d-00144feabdc0.html

時代設定を、ソ連崩壊後のロシアに置き、オネーギンは同性愛者であり、そしてレンスキーは彼の愛人であるという設定です。タチアーナの求愛を拒絶したのも、女性を愛することができないからということだそうで。最後のシーンで、盲目の大佐の妻となったタチアーナへの愛を確認することで、実はヘテロセクシャルであったということが明らかにされるのだそうです。

Financial Timesの記事には写真もありますが、かなり現代的な印象があります。音楽についても、チャイコフスキーの音楽を使用しながらも、同時にロシアのアーティストによるロックも使っています。振付は、クラシック・バレエではありえないようなスリリングなリフトや、身体を捻じ曲げて極端なまでに身体性を追求したものとのこと。非常に興味深いですよね。

オレンジ・カウンティ・パフォーミング・アーツセンター(OCPAC)のサイト
http://www.ocpac.org/home/Events/EventDetail.aspx?EventID=745
で少しですが動画を見ることができます。同会場では、5月20日から24日まで上演されるとのこと。

2009/05/05

5/4 パリ・オペラ座バレエ「オネーギン」ONEGUINE

4 mai 2009 a 19h30
EUGENE ONEGUINE Jose Martinez
TATJANA Dorothee Gilbert
LENSKI Audric Bezard
OLGA Eve Grinsztajn
PRINCE GREMINE Vincent Cordier

舞台は生ものであり、同じ舞台でも繰り返すことでどんどん役柄に対する解釈も深くなるものだと実感したこの公演だった。ジョゼのオネーギンは30日よりはずっと魅力的だったと思う。そしてドロテは今日も素晴らしかった!だけど、やっぱりオペラ座のオネーギンなんだな、と実感したのであった。

パリ・オペラ座では、2011年シーズンに「オネーギン」を再演するとのこと。

(感想は後ほど)

2009/05/04

ハンブルク・バレエ2009/2010シーズン続報(東京バレエ団)Hamburg Ballet 2009/2010 Season & The Tokyo Ballet

パリで合流した友達が、ここに来る前にハンブルクでハンブルク・バレエの「シルヴィア」を見に行っていて、早速来シーズンのパンフレットを見せてもらいました。

それを見ながら、ハンブルク・バレエの来シーズンのお知らせページを見ていたのですが、来年のバレット・ターゲ(バレエ週間)のオープニング(2010年6月13日)は、「月に寄せる七つの俳句」「時節の色」のハンブルク・バレエでのプレミアです。
http://www.hamburgballett.de/e/kalender_09_10.htm
Premiere
The Floating World
Seven Haiku of the Moon/Seasons – The Colors of Time
and a new creation

それから、もうひとつびっくりしたのが、恒例のバレエ週間でのゲスト・カンパニー。なんと東京バレエ団がゲストカンパニーとしてハンブルクで公演を行うんですね・・・。
6月22日、23日
Guest Company
The Tokyo Ballet

ノイマイヤーの新作「Orpheus」がロベルト・ボッレを主演に振付けられたものだと先日お知らせしましたが、ハンブルク・バレエの来シーズンパンフレットには、ゲスト・プリンシパルとしてロベルト・ボッレ、そしてなんとエルヴェ・モローがクレジットされています。エルヴェは何を踊るのでしょうか?パンフレットやサイトを見る限りでは、まだわかりません。

5/3 パリ・オペラ座バレエ「オネーギン」ONEGUINE Paris Opera Ballet

3 mai 2009 à 19h30
EUGENE ONEGUINE Hervé Moreau
TATJANA Isabelle Ciaravola
LENSKI Florian Magnenet
OLGA Muriel Zusperreguy
PRINCE GREMINE Nicolas Paul

超久しぶりに踊るエルヴェ・モローを観ることができた。ファーストキャストだけあって、意外なほどオネーギンのキャラクターが合っていたと思う。もう少し役を掘り下げることができるのではないかとは思うけど、公演期間の後半になれば、かなりいい感じにはなるのではないか。特に3幕での年齢を重ねた姿は哀れを誘う。プルミエ公演の写真を見ると3幕では髭をつけていたが、今日の公演では最後まで髭なしだったが、ちゃんと老けてみえていた。虚栄心がつよく、ナルシスティックなオネーギン像だった。

タチアーナのイザベルは、1幕の演技自体はこれまた意外なほど初々しかったのだけど、あの細い眉毛がわざわいして若く見えないのが難。3幕手紙のパ・ド・ドゥ、涙を流しながらの入魂の演技はとてもよかったと思うのだけど、個人的な好みからいえば、美しい貴婦人への変身振りが印象的だったドロテに軍配を上げたい。パリ一番と謳われた美脚はやはりとても美しいラインで、細く長く甲が出ていて惚れ惚れとするほど。

それからやはり超久しぶりにヤン・サイズを3幕の舞踏会の貴族役で観ることができたのが嬉しかった。

(また後で感想は書きます)

2009/05/03

5/2 パリ・オペラ座バレエ「Emanuel Gat / Nacho Duato / Angelin Preljocaj」

2 mai 2009 a 19h30

3作品とも、とても面白く観られました。オペラ座のダンサーは、コンテンポラリーのときのほうが生き生きしている気がします。

HARK !
CRÉATION MONDIALE(新作)
Musique John Dowland
Chorégraphie, costumes et lumières Emanuel Gat

MLLES Stephanie Romberg, Amelie Lamoureux

Christine Garnier, Laura Hequet, Ludmila Pagliero

Marie-Solene Boulet, Lucie Clement, Marion Barbeau
Valentine Colasante, Leila Dihac, Peggy Dousort,
Ninon Roux, Jennifer Visocchi

Danseurs du Ballet de l'Opera national de Paris

今回唯一の新作は、イスラエルの新鋭振付家エマニュエル・ガットによるもの。揃いの黒のレオタード(ボクサーショーツ型の裾なのでツーピースかも)、上部は黒のシースルーになっていて黒い薄いタイツを着用、髪はぴっちりとしたポニーテールにまとめてキリリとした、ちょっとアンドロイドのような13人の女性ダンサーたち。メーンの二人のみ裸足で、残りはポアント着用。音楽は、バロック音楽をカウンターテノールが歌うというものでなかなか素敵。舞台上の近未来的な雰囲気と良いコントラストを成していた。コンテンポラリー作品ではあるものの、動きはクラシックをベースにしていて、ポアント着用組は揃ってシェネを繰り返したり、鋭角的なアラベスクを何回も連続して見せたり。ポアント組では古典の印象が強いローラ・エケと、コンテンポラリー要員のリュドミラ・パリエロが素敵だった。メーンの素足組は、さすがにポアント組とはかなり違った雰囲気の振付で、うずくまったり、ぶつかり合ったり、自在に動く。長身のステファニー・ロンベールはこの手の役はお手のもので、カッコイイ。アメリー・ラムルーの方はステファニーに比べると小さく、どこか痛々しい。女の子だけのコンテンポラリーバレエというのは珍しく、しかも洗練されていて美しい。だけど、この後に観たのがナチョ・ドゥアトとアンジェラン・プレルジョカージュという名匠の作品だったため、印象はやや弱かった。


WHITE DARKNESS
Musique Karl Jenkins
Chorégraphie Nacho Duato
Décors Jaffar Chalabi
Costumes Lourdes Frias
Lumières Joop Caboort

MLLES Alice Renavand
MM Jeremie Belingard
Caroline Robert
Laurence Laffon
Charlotte Ranson
Eleonore Guerineau
Alessio Carbone
Josua Hoffalt
Daniel Stokes
Alexis Renaud

ナチョ・ドゥアトの作品で今回が初見。主役の1組の男女、そのほかに4組のペアが出演。ソリストの女性は赤紫色の長いドレス、男性はブルーグレイのシャツとズボン。その他の4組は、女性がビスチェとショートパンツ、男性はTシャツとショートパンツという衣装で、他のドゥアト作品同様、とても洗練されている。アリス・ルナヴァンはバランスの取れた肢体の持ち主で、コンテンポラリーが得意なのが良くわかる、研ぎ澄まされた動きが美しい。この作品、ソリスト男性がほぼ女性をサポートするのに徹しているということもあるのだけど、ジェレミー・ベランガールのプロポーションの悪さとエトワールオーラの無さには参った。同じ作品に出演しているジョシュア・オファルトやアレッシオ・カルボーネの方が明らかに踊りもパートナーリングも達者なのだから。

ホワイト・ダークネスという作品のタイトルは、麻薬の恐ろしさを暗喩しているものだ。とにかく印象的なのが、ラスト、滝のように降って来る白い粉を浴びながら佇むヒロインの絶望的なまでに美しい姿。美しくも恐ろしいシーンだ。4組のペアの使い方も巧みであり、そしてドゥアトの、いつもながらの、リフトを多用しながらも地にしっかりと足を着けた、音楽的で流麗な振付。4組がポリフォニックに連続したリフトを繰り返す時の陶酔感。彼らが白い粉と無邪気に戯れるシーンも美しいだけに怖い。エリオノール・ゲリノーなど若いダンサーの才能も観られて良かった。ベランガールだけが×だった。


MC14/22 "Ceci est mon corps"
Création sonore Tedd Zahmal
Chorégraphie Angelin Preljocaj
Costumes Daniel Jasiak
Lumières Patrick Riou

Bruno Bouche, Mallory Gaudion, Aurelien Houtte, Gil Isoart,
Young Geol Kim, Alexis Renaud, Simon Valastro, Pascal Aubin,
Matthieu Botto, Vincent Cordier, Yvon Demol et Sylvian Groud(danseur chanteur)

Danseurs du Ballet de l'Opera national de Paris


※ミニ情報
マチアス・エイマンは来年の来日公演の「ジゼル」でアルブレヒトを踊る予定だそうです。楽しみですね。

2009/05/02

4/30 パリ・オペラ座バレエ「オネーギン」Paris Opera Ballet ONEGUINE

30 avril 2009 a 19h30
EUGENE ONEGUINE Jose Martinez
TATJANA Dorothee Gilbert
LENSKI Audric Bezard
OLGA Eve Grinsztajn
PRINCE GREMINE Vincent Cordier

P1030259s


本プロダクションのデザインは、バイエルン州立劇場(ミュンヘンバレエ)のもの。

ドロテ・ジルベールのタチアーナがとても素晴らしい演技を見せてくれた公演。

パリ・オペラ座の「オネーギン」は、ユルゲン・ローゼのオリジナルのデザインから書体に、若干変更があるように思える「E.O」のイニシャル入り紗幕がかかっているところから始まる。
衣装、舞台装置とも、少しずつ変更を加えているものの、オリジナルと大きな変更はない。

(1幕)

衣装を使用人たちと縫っているオルガ、上手に寝そべって本を広げているタチアーナの姉妹。オルガ役エヴ・グリンツタインは相変わらずお化粧が濃くて、ドロテ・ジルベールのタチアーナより年上に見える感じ。ドロテは、夢見がちで晩生な本の虫であるタチアーナ役にしてはちょっと華がありすぎる感じがしなくはないものの、純情でまじめな女の子らしさが伝わってくる。

結ばれる運命の相手が鏡に現れるという遊びに興じるオルガ。背後に現れた婚約者、レンスキーの姿を認めて喜ぶオルガ。オドリック・ベザールは長身でハンサムだけど、首が前についている体型のせいか、どうしても姿勢が悪く見えてしまって、理想主義的な詩人というよりは、そこらへんのお兄ちゃんに見えてしまうのが難。タチアーナが鏡を覗き込むと、そこに映るのは、サンクトペテルブルグから来たエフゲニー・オネーギンだった。その洗練された物腰、都会育ちのスマートさにときめく気持ちを隠せないタチアーナ。ここでのドロテは、とても初々しく素直で
かわいらしい。ジョゼ・マルティネスのオネーギンは、たしかにスマートで如才なく、気品があるのだけど、残念なのは、色気が薄いこと。すらっとした二枚目で優しそうなジョゼのオネーギンは、悪の魅力には欠けていて、上品で知的なあまり、まるで大学教授のよう。まじめで頭でっかち、実は幼いタチアーナが素敵、と思うほどの魅力は、ここでは感じられなかった。

オルガと友人たちの踊り。ここでの群舞を見ると、フランス派の踊りの上半身の硬さ、ポール・ド・ブラの直線的な動きが好きになれないと改めて認識してしまう。その代表的な存在が、オルガ役エヴで、パリ・オペラ座の女性ダンサーは脚は強いしテクニックはあるものの、しなやかさに欠けていている人が多いと思ってしまう。こんな風に文句を言いながらなぜPOBを観にわざわざパリまで行くのかというと、レパートリーと、数人の気になるダンサーの存在なのだ。


さて、オネーギンに対する恋心を抑えられないタチアーナは、そんな時も本を持ち歩いている。彼女がどんな本を読んでいるのか、オネーギンはその本を奪い取るが、パラパラとめくって、なーんだ、こんな子供向けの本に夢中だなんて、つまらない小娘だと小ばかにする。ここは、オネーギンの嫌味でスノッブな性格が明らかになる重要なシーンなのだ。が、ジョゼが演じるオネーギンは、タチアーナの本をめくった時に「ふーん、そうなんだ」という反応を見せているにとどまり、オネーギンの持つ嫌味な側面をあまりださない。彼の表現ではまるで、教師が生徒の持ち物検査をしていて、「この程度の本を読んでいる子なんだね」と感じているに過ぎない。

それでもやっぱり大人で知的なオネーギンのことが好き、と彼への想いを加速させていくタチアーナ。ベッドに入ってもなかなか寝付けず、高まる想いをぶつけるように、初々しい情熱そのままに手紙を書き綴る。ここでのドロテの演技もとても良かった。大きな瞳をキラキラさせ、ときめく気持ちを綴る時の歌っているような表情が愛らしい。テーブルの上で眠りに落ちたタチアーナは、夢の中で鏡に向かう。(鏡に映るタチアーナの影を演じるのは、ローラン・イレールの娘ジュリエット・イレール)鏡の中に、颯爽としたオネーギンの姿が現れる。ジョゼのオネーギンは、
夢の中でもスマートで気品があるのだが、色気に乏しい。夢のシーンでのオネーギンは悪魔的なまでの性的な魅力と斜に構えたニヒルさが必要だと思うのだが、ジョゼにはそれらの要素も欠けている。エレガントさはあるので、素敵でないわけではない。サポートももちろんとてもうまいし、技術は安定している。長身のジョゼは、ドロテを巧みにリフトし、難しいサポートでも転がすように彼女を自在に操る。だが、いくら技術的に素晴らしくても、タチアーナの夢の中の、少女の憧れの姿をそのまま体現したような誘惑的なオネーギンはここでは見られなかった。ただひとつ、オネーギンが鏡の中に戻っていくときの一瞬の見得だけには、しびれるほどのかっこよさが見られたのだが・・・。

夢から醒めたタチアーナが瞳を輝かせ、はやる気持ちを抑えようとしながらも抑えきれず、手紙を書き終えて封をするときの、胸の鼓動が聞こえてくるようなドロテの演技は、初恋のときめきを思い出させてくれるような、朝露のような爽やかさがあって印象的だった。

(2幕)

2幕では、オネーギンに渡した手紙の反応が気になってどきどきしながら反応をうかがうタチアーナの姿が可愛らしい。そんな彼女に対する苛立ちを隠せないオネーギン。ジョゼのオネーギンは、非常に神経質そうで、宴をよそにカードで一人遊びをしているときにも、イライラしているのが伝わってくる。タチアーナのまっすぐな想いを受け止めきれず、受け流すように戯れに踊った後、タチアーナの手紙をつき返す。
タチアーナが、それはあなたに差し上げたものです、と言っても聞かない。涙を流すタチアーナの背後に立ち、手紙をびりびりに破いて彼女の手に押し付ける。このときの彼のクールな様子が、とても残酷な仕打ちをしているように見える。手紙を書いているときにはあんなに生き生きとしてだけにタチアーナが泣き崩れる姿には胸がつぶれる思いがする。特にドロテのタチアーナは知的好奇心に満ちてキラキラしていたので、そんな彼女が傷つけられる姿を見るのはつらい。

カード遊びにオルガを参加させるオネーギン。最初のうちはレンスキーも参加して和やかなムードだったのに、次第にオネーギンが若いカップルの間に割って入るような態度をとるようになる。軽薄なオルガはそのことを面白がり、フィアンセの気持ちを試すかのようにオネーギンと戯れる。エヴが演じるオルガは、すごく軽くて、それなのにタチアーナよりずっとませていて、かなり嫌な女だ。涙にくれるタチアーナを見つめているのはグレーミン伯爵。タチアーナの手をとって二人は踊るが彼女の目は、ずっとオネーギンとオルガに注がれている。グレーミン伯爵役のヴァンサン・コルディエは、長身ではあるが、グレーミン役に相応しい重厚さと貫禄に欠けているように思えた。最終的にタチアーナが選ぶ相手なのだから、もう少し重みがある人に演じてほしかった。どうも今のパリ・オペラ座は、ベテランのキャラクテールが人材不足のようだ。

キャラクテールといえば、舞踏会の来客である、田舎風の紳士婦人たちのコミカルな演技はとても可笑しい。彼らがいるからこそ、ますますオネーギンは「なんで都会人の自分がこんな田舎くさい宴に出て、小娘の故意のお相手をしなくてはならないのか」とへそを曲げることになる。

婚約者にちょっかいを出されて、レンスキーの怒りは炸裂する。オドリックのレンスキーの怒りは非常に激しく、火の玉のように燃えさかる。彼のレンスキーはあまりロマンティックな詩人には見えなくて、短絡的で喧嘩っ早い若者という感じだ。オネーギンの顔を白い手袋で叩き、投げつけて決闘を申し込む。ようやく自分の軽薄さがもたらした過ちに気がつくオルガだったけど、もう遅い。オネーギンは渋々手袋を拾い上げて決闘の申し込みを受ける。この時点では、まだオネーギンはことの重大性に気がついていないようで、クールな面持ちを保ったままだ。冷静なように見えて、ジョゼのオネーギンは実は思慮深さに欠けていて、何よりもつまらないプライドを優先させているようだった。

殺風景な冬の風景。決闘場所へと向かうオネーギンは、ようやく自分の行ったことの愚かさに気がつき、恐ろしい結末へと向かう運命の足音を畏怖しながら、小脇から銃を取り出して見つめる。ジョゼは、ここでは今までの自信満々で高慢な男から、恐れおののく一人の平凡で臆病な男へと変貌していた。紗幕の向こうには、同じくマントを羽織り、決闘へと向かうレンスキーの姿が。

レンスキーの嘆きのソロ。今までは可愛い婚約者との新しい生活が待ち受けていて、人生は光に満ちていたのに、突然の乱入者のせいで運命の歯車は狂い始めた。オリガの思わぬ軽薄さ、尻軽さを目の当たりにしたことも十分衝撃的だったのに、そればかりか、男としての矜持を保とうとしたことで、この若さで人生に終止符が打たれるかもしれないのだ。レンスキーは明らかに、自らの死を予感していた。もう後戻りをすることはできない。激昂してオネーギンに自分から手袋を投げつけたのだから、理想主義的でロマンティックな詩人としては、ここでオネーギンと戦い、死へとひた走るしか選ぶ道はないのだ。ここでのオドリックのソロは非常に情熱的で自己憐憫的で、死に赴く自分をナルシスティックなまでに美しく表現していた。大きく背中を反らせて、そのまま倒れこむ。オドリックの目には涙が光っていて、レンスキーのドラマティックで感動的なフィナーレの花火を見せてくれた。熱演。

タチアーナとオルガの姉妹が、決闘の場所に現れ、なんとかレンスキーを止めさせようとするけど、レンスキーの傷つけられたプライドは燃え盛っている。黒いマントを身に着けた、死神のようなオネーギンの姿。なんとかとりなそうとするオネーギンの頬を張って、怒りをぶつけるレンスキー。超高速の竜巻のようなピルエットを3回踊って、レンスキーの怒りに対抗するオネーギン。レンスキーは、最後にすがりついて最後のくちづけをするオルガを激しく振りほどいて地面にたたきつけ、次にタチアーナの手に敬意をこめたキスをする。舞台の奥で銃を構えた二人。銃声とともに、レンスキーが崩れ落ちる。沈痛な面持ちで姉妹のところへと歩み寄るオネーギン。軽い気持ちの戯れが恋人の死という取り返しのつかない結末を招いたことを実感したオルガは倒れこみ、問いただすような厳しい視線を、瞬きもしないで彼に注ぐタチアーナ。ようやく、オネーギンは自分がレンスキーを殺してしまったことを実感し、苦悩に顔をゆがめ両手で顔を覆って嗚咽する。ジョゼのオネーギンは、人間の負の側面を演じるのがとてもうまく、オネーギンの虚勢の裏にある弱さを見せてくれた。


(3幕)
時は流れて、グレーミン公爵宅での舞踏会。髪に白いものが目立ち、年齢を無為に重ねてしまったことを感じさせるオネーギンは、会場の片隅で所在なげに座っている。グレーミンの妻として、あのタチアーナがいることに気がつく。美しく華やかに成長したタチアーナ。ドロテ・ジルベールのあでやかな変貌振りに驚いた。社交界の華としての自信、夫に愛されている安心感で輝いており、公爵夫人としての貫禄もたっぷり。赤いドレスが似合い、一つ一つの動きに優雅さがある。二人のパ・ド・ドゥは、グレーミンの愛情深さを感じさせるものであり、彼に支えられてタチアーナは輝く。二人にオネーギンは近寄るが、彼らはみすぼらしい貧乏貴族のオネーギンに気づきもしない。ジョゼのオネーギンはめっきり老け込んだという表現がぴったりで、今まで彼を支えていた虚飾の自信は消えうせている。

この舞踏会での群舞の華やかさは、さすがのパリ・オペラ座である。ユルゲン・ローゼによるデザインのドレスも、見目麗しくプロポーションの良い美男美女が着ると華麗さがいっそう引き立つ。その中に、藤井美帆さんがいるのがちょっとうれしい。

舞踏会の照明が青く変わり、そこはオネーギンの回想シーンとなる。一人、また一人と女性がオネーギンと踊り、そして去っていく。ここに至るまでのオネーギンの数々の女性遍歴。彼女たちはすべて去っていき、オネーギンの心に残ったのはタチアーナただ一人だった。

オネーギンはようやく公爵とタチアーナに挨拶をする。若い日に恋に恋する小娘だと見下していたタチアーナの、堂々とした振る舞いに惹きつけられるオネーギン。舞踏会を彼らが立ち去った後、ある決意を胸に駆け出す。


落ち着いた色調のタチアーナの寝室。彼女の手の中には、オネーギンからの手紙があり、その文面に彼女は思わず心乱れて葛藤している。彼女に近づく人影があり、思わずどきっとするが、夫グレーミンであることがわかり安堵する。寝るために立ち去ろうとするグレーミンを今一度抱きしめるタチアーナ。グレーミンが去って一人残されたタチアーナのところへ駆け込んできたのが、ようやく彼女が生涯唯一愛した人だったと気づいたオネーギン。物語のクライマックスである「手紙のパ・ド・ドゥ」。彼女の足元に何度も倒れこみひれ伏して懇願するオネーギン。ジョゼ・マルティネスはスロースターターなのだと思う。3幕の演技、年老いて惨めな男となってからのほうが、ずっと説得力があるのだ。いうまでもなくサポートは上手く、タチアーナを背後から抱きしめては正面を向かせたり、高く
掲げたり、変幻自在のリフトを実に滑らかに行っている。思わず彼の想いに絡めとられそうになり、拒絶しようとしながらもなすがままになってしまうタチアーナ、その苦悩と、今まで秘めてきた想い。彼女にとっても、オネーギンは生涯ただ一人、激しく愛した相手だった。オネーギンの手を持ったままの、大きく背中をそらせたアントルラッセに、その身を焼き尽くすような激情をこらえようと抗う気持ちが火花となって散っているのが見えた。だが我に返ったタチアーナは、手紙を拾い上げ、若い日に彼がしたのと同じようにつき返し、びりびりに破る。彼の目を見ないよう顔を背けたまま、部屋を出て行くように命令する。茫然自失となったオネーギンはすがるような哀れな目で彼女を見るが、顔を背けたままの彼女に対しては、もはや勝ち目はないことを悟り、涙に暮れながら走り去る。思わず彼の後を途中まで追いかけたけど断念し、想いを断ち切ったタチアーナは正面を見据えて、ただひとつの愛を葬り去ったことに対する苦悶に激しく慟哭する。

このラストシーンでのドロテの表情は、彼女が本来持つ気の強さがよく出ており、賢く意志が強く理性的な女性でありながら、同時に情熱を内に秘めているタチアーナ像を等身大に表現していて、痛ましいまでの哀切さが胸に突き刺さった。

オネーギンの最後のシーン、「手紙のパ・ド・ドゥ」は、主人公であるオネーギンもさることながら、タチアーナがどれほど説得力のある深い演技ができるかにかかっている。その点においては、この上演は成功したと思う。が、ドロテの演技に引っ張られての完成度であると思うし、1幕などは、オネーギン、さらには主役以外の演技が弱くて、シュツットガルトの上演には遠く及ばない感じであった。だが、ドロテ・ジルベールの熱演によって他のキャストも底上げされていくのが感じられている。上演を重ねるごとにどんどん良くなっていくのではないかと思う。

怪我人が多くてレンスキー役の降板が相次いだこともあり、また同時にコンテンポラリーのトリプルビルを上演していることなどもあって、レンスキー、オリガ、グレーミン役のダンサーの質がいま一歩というのが、問題であると感じた。トリプル・ビルのほうに出演していたステファン・ビュヨンなどもレンスキー役が似合いそうだし、もう少し年をとってからだとオネーギン役が似合いそうだ。降板してしまったマチュー・ガニオのレンスキーも見たかったし、当初レンスキーを予定されていたバンジャマン・ペッシュはオネーギンがしっくりきそう。

オネーギンのような、脇役に至るまで演技が重要である作品を上演するときには、オペラ座バレエの2作品同時上演体制を再考したほうがいいのではないかと今回思った。

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