5/22 新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」
マイレンのパ・ド・トロワとスペインを見るために、ソリストのキャストが発表されてからチケットを購入。2階ドアサイドという席を初めて買ったので、果たしてちゃんと見える席なのが不安に感じていたけど、なぜか周りにあまり人がいなかったので、下手奥がちょっと切れる以外は問題なく舞台が見えた。
厚木さんは、長身で手脚が長くて華奢で、顔が小さくプロポーションは抜群。うなじから背中にかけてのラインがとても美しい。腕などはちょっと細すぎる感じもするのだけど、ポール・ド・ブラも上半身の動きもきれいだった。厚木さんが残念なのは、骨格的な問題だと思うのだけど、膝が出ていて、しかも完全にアンドゥオールしていないということ。それがどうしても気になってしまって。アンドゥオールしていないダンサーのオデットは厳しい…。ロマンティック・チュチュのジゼルだったらきっと素晴らしいのだろうと思う。
1幕2場の湖畔のシーンでは、ちょっと緊張していたのか、最初のうちはちょっと演技が硬かったと思う。(身体の方は決して硬くなくて、腕は本当に綺麗だった)厚木さんは彫りの深い顔立ちなので、実際以上に深刻な顔をしているように見えてしまって。厚木さんの容姿の美しさがあいまって、哀しげなんだけど、誇り高い白鳥の女王だった。
オディールの時には、いい具合に力が抜けていて、邪悪さをあまり感じさせず自然体で演じていた。ただ、こちらでは逆にメイクが抑え目すぎて、あまりオデットとの違いが感じられなかった。踊りそのものは、例のアンデゥオールしきれていないというところ以外は良かったと思う。グランフェッテも、ダブルを2回入れてきて、かなり速い演奏だったにもかかわらず、上手く合わせており、余裕で踊っていた。厚木さんはテクニックが強いんだと思った。3幕の演技はとてもよかったし、白鳥の羽ばたきそのものの腕使いは綺麗だった。でも、この牧版の演出だと、オデットと王子の悲劇性と愛、ドラマティックさが感じられないので、今ひとつラストに感動が無いのだ。王子とオデットが力強く立ち向かうとロットバルトが勝手に自滅するっていう演出っていかがなものだろうか。
逸見さんの王子は実に端正だった。厚木さんと実生活でも夫婦ということもあり、息は合っているし、演技にも愛がある。彼はテクニックを云々するようなダンサーではないのだけど(着地がかなりダメだった)、王子として申し分のないルックスで、サポートがちゃんとできているから問題なし。
初日のパ・ド・トロワでは今ひとつだった芳賀さんだったけど、今日のロットバルトはダイナミックな踊りで良かった。彼は王子キャラというよりは、ロットバルトやランケデムのようなあくの強いキャラクター役の方がずっと向いていると思う。
今回の「白鳥の湖」も4回目の舞台だったためか、初日よりずいぶんとコール・ドが揃ってきており、上階から見て群舞が美しく見えた。4羽の小さな白鳥も、花嫁候補も、ずっと改善されていた。でも花嫁候補たちは、まだお姫様という風には見えない。もう少し立ち居振る舞いを考えて欲しいと思った。
2羽の白鳥の川村さんと大湊さんは今日も素敵だった。川村さんは儚さのある美しいダンサーだと改めて実感し、彼女のオデット/オディールが観たいって切に思った。来シーズンの予定を見ても、オデット/オディールの出演予定になっていない。小野絢子さんもさいとう美帆さんも良いダンサーだけど、彼女たちは小柄であまり白鳥タイプではないように思える。小野さんの白鳥は観たいけど、小野さんと研修所で同期の大湊さんも、いずれは白鳥を踊ることになるといいなと思う。
その小野さんとさいとうさんが、今日はナポリで登場。別キャストによる初日のナポリがぐだぐだだったのに対し、今回は3人ともとても良い踊りを見せてくれた。なかでも、小野さんの音楽によく乗ったきれいな動きは観ていて気持ちいい。ハンガリー(チャルダッシュ)の古川さんは、こういう役はお手の物で、粘りとアクセントのある動きが様になっている。古川さんは、道化でも観たいなあ。
本日のお目当てのマイレンだけど、パ・ド・トロワもスペインも、もう最高!今日のチケット代はすべてマイレンで元が取れたといっていい。パ・ド・トロワでは、正確なポジショニング、気持ちよくきれいに開いた股関節、つま先の美しさ、惚れ惚れしてしまう。日本人ではないけど、日本をメーンに踊っているダンサーの中では、間違いなくテクニックの美しさでは一番だろう。対して、スペインでの濃さ、超ハイテンションの怪しさといったら!魔人マイレンという感じで、怪しい口髭を描いていて目力も強く、濃ゆいビームを発射しながらも、一つ一つのパの美しさ、ポール・ド・ブラの流麗さ、キメキメの見得の切り方に惹き付けられ、もうひと組のペアにまったく目が行かなくなってしまった。20日に発売された新国立劇場「白鳥の湖」のDVDが手元に届き、そこでもマイレンのスペインが観られるというのに、まだ観ていない。早く観なくっちゃ!マイレンのスペインをDVDに残してくれて、新国立劇場に感謝しなくては。
というわけで、マイレン目当てに劇場に駆けつけて、本当に良かったと思えた今夜の公演だった。
オデット/オディール: 厚木三杏
ジークフリート王子: 逸見智彦
ロットバルト: 芳賀 望
王妃: 坂西麻美
道化: グリゴリー・バリノフ
王子の友人(パ・ド・トロワ): 遠藤睦子 西山裕子、マイレン・トレウバエフ
小さい4羽の白鳥:さいとう美帆、本島美和、寺島まゆみ、小野絢子
大きい4羽の白鳥:川村真樹、丸尾孝子、堀口 純、小村美沙
ルースカヤ: 本島美和
スペインの踊り:湯川麻美子、西川貴子、マイレン・トレウバエフ、貝川鐵夫
ナポリの踊り: さいとう美帆、小野絢子、八幡顕光
ハンガリーの踊り: 遠藤睦子、古川和則
2羽の白鳥:川村真樹、大湊由美
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というわけで楽日、由美ちゃん目当てに駆けつけることになりました!!
元が取れるように願ってます(笑)
投稿: F | 2009/05/23 06:06
Fさん、こんばんは。
残念ながら日曜日は新国立に行けないのですが、2回観た大湊由美ちゃんの2羽の白鳥は本当に伸びやかできれいでしたよ。楽しみにしてくださいね!ザハロワにも負けていない感じです。いつか、オデットを踊る日が来るといいナって思いました。日本人で背がつりあいそうな人がいないので、ここはまたウヴァーロフでもゲストに呼んで!
投稿: naomi | 2009/05/24 03:14
naomiさま
はじめて書き込みをします。
九州在住のKと申します(大阪のABT公演で一度お会いしました)。
これからよろしくお願いします。
初カキコは、5/23に新国立の白鳥をみたからなのですが、
マイレン・トレウバエフさんがnaomiさんが書いてらっしゃるように
とても素敵だったからです!!
新国立バレエの各国の踊りがそつなく無難な(面白くない)なか、
マイレンさんが一人気を吐いてました。
音楽に乗っている楽しんでいるというか、表現している(うまくいえませんが)、
堂々としていて、ククッと頭を振るそぶりが素敵でした!!
また、彼の踊りが見たいです。
では、失礼します。
投稿: K | 2009/05/24 17:13
土曜の公演を見てきました。新国立の白鳥は初めてだったのですが、コンパクトにまとめているんですねえ。コールドはほんとうにきれいだと思うんだけれど、悲壮感はまったく感じませんでした。なんかみんなで楽しくお遊戯しているような印象で。あと、ルースカヤって、必要なんでしょうか?花嫁選びの場で、関係ない女性がひとりで長々と踊るのって、場違いじゃないかと。
マイレンの王子様が見たいなあ。
投稿: 24601 | 2009/05/24 20:17
naomiさん、今晩は。
私も今回初めて新国の白鳥を見たのですが、ホント、ルースカヤには驚きました。
プログラムによると、元々「黒鳥のソロとして追加作曲された曲ですから、今回も主役級のダンサーがソロで踊るという位置づけにしました。」とのことですが、実際は振付といい衣装といいどう見てもグリコローヴィチ版のロシアの踊りのパクリですよね。しかもストーリーに何の関係も無いし。。。
また、「第1幕と第2幕を続け、休憩を1回にして第3幕、4幕も続けて上演」するのであれば、1幕と2幕、3幕と4幕の間のミョ~な空白の時間はどうにかして欲しいです。ここは幕を降ろさずに場面転換を行い、音楽を続けるべきではないでしょうか?あとスペインの衣装が暑苦しいのも気になりました。
新国の公演の満足度がいまひとつ低いのは、やはり演出・振付に問題があるからなんでしょうかね?(シンデレラは良かったので。)
投稿: pelu | 2009/05/24 23:36
Kさん、こんにちは!
あの節はお世話になりました!懐かしいですね~。
そして新国立劇場の白鳥を観に、東京までお越しになったんですね。
確かにこのバレエ団は、平均点は高いのですが、その分ちょっと個性が弱いかなってところがあります。マイレンは、王子様を踊ればノーブルですが、キャラクターダンスでは弾けて大変なことになります(笑)彼はワガノワ出身で、もとレニングラード国立バレエということで正統派ロシアバレエのいいところを、新国立にもたらしてくれているんですよね。
来シーズンは、今のところ3回主役があるので、とても楽しみにしているんです。
投稿: naomi | 2009/05/25 03:17
24601さん、こんばんは。
そう、ここの白鳥の湖(牧阿佐美改訂版)は、3幕と4幕の間に休憩が入らなくて、そこに王子のソロが入るというのがちょっと変わっていますね。基本的には、牧版の前に採用していたセルゲイエフ版がベースに若干の変更を加えた感じです。牧阿佐美の振付語彙というのがどうも少ないようなので、4幕の王子とオデットの振付がよろしくなくて、勝手にロットバルトが入水自殺した感じなんですよね。
場面転換といえば、デンマークロイヤルのノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」は実にスムーズで、良くできていると思いました。ヘンな間がないので、より疾走感を感じることができるんですよね。
ルースカヤは、初演の年に観たときには、これは一種のお仕置きなんじゃないかと思ったほどです。女性ダンサーがたった一人で踊って、振付も単調なので飽きるんですよね。せめてバックに群舞をつけるとかすればいいのに。
来シーズン、マイレンの白鳥の王子が予定されていますよ♪
投稿: naomi | 2009/05/25 03:26
peluさん、こんにちは。
グリゴローヴィチ版では、ルースカヤの曲は花嫁候補が踊っていましたよね?(うろ覚え)ABTのマッケンジー版ではロットバルトが踊っていて、それはそれなりに効果的な演出だったと思います。
牧さんは、振付家としてはあまり才能がないんですよね。「ライモンダ」を観ても、きれいなんだけど、ドラマが全然ない。夢の場面でアブデラクマンが登場しないなんて、私としてはちょっと信じられないって思ってしまいます。別の魅力的な男性の登場にくらっとするライモンダ、というドラマが抜けちゃいますので。どうも牧さんは、男女関係のドロドロした部分と言うのは極力表現したくなくて、サラリと描きたいように思えるんですよね。
芸術監督が変われば、だいぶ変わるんじゃないかと期待はしているんですけどね。(「シンデレラ」は良かったですよね。アシュトンはいいですよね、ホントに)
投稿: naomi | 2009/05/25 03:31
わたしもマイレンのトロワに惹かれてDVD買いました。
ア・ラ・スゴンドの大きく拡げた、あの白く輝く内ももは絶品です
今回はライブで見られなかったので残念
投稿: ずず | 2009/05/25 12:16
ずずさん、こんにちは。
まだ「白鳥の湖」のDVDまで行き着かないんですよね。実は私大変な遅筆で、一つの舞台感想を書くのに5,6時間は平気でかかってしまうんです。でも本当に早く観たい!
私のバレエの見方はアンドゥオールにすごくこだわるので、ずずさんのおっしゃるとおり、マイレンのきれいに開いた脚は素晴らしいですよね!今回、マイレンのトロワとスペインはザハリンの日以外だったから残念ですよね…来年は「白鳥の湖」の主役があるので一緒に観に行きましょう!
投稿: naomi | 2009/05/26 00:51
はい、グリコローヴィチ版ではルースカヤの曲は他の民族舞踊と同じく花嫁候補が踊っていました。なのでちゃんとストーリーと絡んでます。それにロシアのバレエ団がロシアの民族舞踊を取り入れるのは納得です。
牧さんは演出というものを誤解されているのではないでしょうか?再度プログラムからの引用ですが、「舞台美術・衣装のデザインは・・・、あえて時代考証をしないことにしました。」とのことです。つまりその作品の時代的・社会的な背景を無視して色んなバージョンの表面だけを見て、美味しいとこ取りをしたってことなんでしょうね。作り手の熱い思いが感じられない。だから作品が薄っぺらいんだと思います。デンマークバレエのロミジュリを見たあとでは、余計そう感じます。(私の中では松山バレエ団のロミジュリもかなりポイント高いんですよ。)
投稿: pelu | 2009/05/27 01:33
peluさん、こんばんは。
ボリショイの去年の来日公演で「白鳥の湖」を3回も観たのに、すでに忘れかけているところがあって情けない限りの私です。生で観た舞台より、DVDのヴェトロフのロットバルトと、ミハルチェンコの方が印象に残っているんですよね。花嫁候補も民族舞踊もポアントで踊っていましたよね。
たしかに、牧版の「白鳥の湖」は、セルゲイエフ版の白鳥をベースに、プロローグがあるのはブルメイステル版、ルースカヤはグリゴローヴィチ版、と様々な版から少しずつ取り入れている感じですよね。このプロダクション、美術や衣装はとても美しいと思うんですけど、あの終わり方は特にいまいちなんですよね。勝手にロットバルト自滅しているし。薄っぺらいというのは、牧版のライモンダや椿姫にもいえることで、とにかく牧先生は人間関係のドロドロした部分というのが嫌いらしくて、薄味にしていますよね。ノイマイヤーの「ロミオとジュリエット」の人間臭さとは対極ですよね。
松山バレエ団のロミジュリは、10年位前に観たのですが、あまり覚えていません。森下洋子さんが本当に可愛らしくて、少女にしか見えなかったことだけはよく覚えています。
投稿: naomi | 2009/05/28 00:20