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« 世界を変える100人の日本人 竹島由美子さん YUMIKO TAKESHIMA | トップページ | 毎日新聞「時代を駆ける」に吉田都さん Miyako Yoshida Interview »

2009/05/10

5/10 新国立劇場 ムツェンスク郡のマクベス夫人 Shostakovich:Lady Macbeth of Mtsensk

2008/2009 Season Opera
[New Production]
Shostakovich:LADY MACBETH OF MTSENSK
ショスタコーヴィチ/全4幕

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000059_opera.html

【作 曲】ドミトリー・ショスタコーヴィチ
【台 本】アレクサンデル・プレイス

【指 揮】ミハイル・シンケヴィチ
【演 出】リチャード・ジョーンズ
【美 術】ジョン・マクファーレン
【衣 裳】ニッキー・ギリブランド
【照 明】ミミ・ジョーダン・シェリン

【芸術監督】若杉 弘

キャスト
【ボリス・チモフェーヴィチ・イズマイロフ】ワレリー・アレクセイエフ
【ジノーヴィー・ボリゾヴィチ・イズマイロフ】内山 信吾
【カテリーナ・リヴォーヴナ・イズマイロヴァ】ステファニー・フリーデ
【セルゲイ】ヴィクトール・ルトシュク
【アクシーニャ】出来田 三智子
【ボロ服の男】高橋 淳
【イズマイロフ家の番頭】山下 浩司
【イズマイロフ家の屋敷番】今尾 滋
【司祭】妻屋 秀和
【警察署長】初鹿野 剛
【警官】大久保 光哉
【酔っ払った客】二階谷 洋介
【軍曹】小林 由樹
【ソニェートカ】森山 京子
【年老いた囚人】ワレリー・アレクセイエフ
【ボリスの亡霊】ワレリー・アレクセイエフ

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

1934年の初演は大好評だったものの、1936年にスターリンがこの作品を鑑賞して激怒し上演禁止となり、ショスタコーヴィチの作曲家生命すら危ぶまれるという事態になったいわくつきの作品。今回の上演は、2004年にロイヤル・オペラのために演出されたプロダクション。ローレンス・オリヴィエ賞の最優秀オペラ賞を受賞しているとのこと。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とマリス・ヤンソンス指揮のプロダクションをDVDで観ていたものの(そちらは、今年の一月にパリ・オペラ座でも上演されていた)、このオペラを実演で観るのは初めて。実に面白かった!セックス&ヴァイオレンス描写はコンセルトヘボウの方が過激だけど、英国的な抑え目の演出と黒いユーモアが良くマッチしていたと思う。

なんといっても、ショスタコーヴィチの音楽がもう最高にいい!性描写の時の、扇情的な打楽器による盛り上げ方、間奏、舞台上で起きていることは悲惨なのに笑えてしまうパロディ的な音楽の使い方。ショスタコーヴィチなんて暗くて難解で、と思っている人でも楽しめるわかりやすいメロディ。金管が特に前面に出されていて、15人という大きな編成のバンダが、2階L1列(バルコニー席)に登場したり、合唱の中に混じって舞台上に登場したり、殺されたジノーヴィの死体を発見した酔っ払った客が警察に駆けつける間の間奏で幕の前に登場して演奏するという活躍ぶり。演奏もとてもよかったと思う。大音量で鳴らしていて大変な迫力があった。私はクラシック音楽に詳しくないので、若杉弘氏の代役として登場した、マリインスキー劇場のミハイル・シンケヴィチの指揮が良かったかどうかはわからないけど、よく響いていたし、ショスタコーヴィチならではの諧謔性も表現できていて、とても楽しめたことは間違いない。

歌手については、まず定評のある新国立劇場合唱団の実力を再認識。そしてカテリーナ役のステファニー・フリーデが最後まで美しく響く声で熱演。この作品で叙情的なメロディのほとんどは、カテリーナが歌うことになっているため、表現力が重要なことは言うまでもない。カテリーナは夫と舅を殺してしまう悪女ではあるけれども、悪い女というよりは、周りの男たちの犠牲者となった悲劇的な存在だというのがよくわかる。舅ボリスと、ボリスの亡霊や年老いた囚人役のワレリー・アレクセイエフも素晴らしかった。1幕では好色で支配的な老人のいやらしさ、4幕ではシベリアに流刑となって、終わりのない行進を続けさせられている運命への嘆きが深みを持って伝わってきた。特に4幕では圧巻。あとは、死体を発見する酔っ払った客の二階谷洋介さん、超笑えて最高の怪演。ものすごい怪しい存在感の司祭妻屋 秀和さんも良かった。また、セルゲイを誘惑する若く蓮っ葉な女ソニェートカ役の森山京子も迫力あり。

連続した二つの部屋を表現する箱を並べた舞台構成。サイド席だとかなり観づらいのではないかと思う。字幕を追いかけながら舞台も同時に観るのは大変だったし。しかし、結婚式の宴の隣の倉庫に死体が隠されていたり、嫁の様子を舅が覗き見たり、妻の情事を夫が嗅ぎつけたりといった2つの隣接した別の場所の様子を表現するにはうまいやり方だ。夫を殺したとたん、カテリーナが部屋をピンクの壁紙を実際に貼り付けさせて改装させたり、結婚式での(あほくさいまでの)熱狂の最中に殺人が露見するというシチュエーションの転換が面白い。テレビの画面も巧みに使っていて、舅の亡霊が画面に映ったり、結婚式に招かれなくてふくれている警察官たちの部屋にあるテレビに宴の様子が中継されていて、ますます「いいなあ」って彼らが思い込むというのが笑える。

カテリーナは悲劇的な存在であるとともに、悪い男に引っかかったばかりに身を破滅し、挙句の果てにその男にも捨てられ、彼の愛人ソニェートカにはおばかさんと罵られてしまう、バカな女。しかし単なる悲劇としてでなく、笑えるところをいっぱい盛り込むことによって、息の詰まるような田舎町の封建性、人間の変わり身の早さといった醜い部分がクローズアップされ、さらにカテリーナの悲劇が強調されているのが、面白い。

ただ、最後にカテリーナがソニェートカを急流に突き落とし自分も身を投げて死ぬところ、プロンプターボックスの横のせりにゆっくりと下りていくという演出が、あまり緊迫感やドラマティックさがなくて、拍子抜けしてしまったのがちょっと残念だった。

プログラムの解説がとても詳しくて、すごく勉強になった。新国立劇場のバレエのプログラムは、前回公演の使い回しとかが多くて、値段の価値はないけれど、今回のオペラのプログラムはとてもいい!

大胆で面白く、充実した上演であったことは間違いない。再演もぜひして欲しいと思う。

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追記:この作品、リブレットがとても面白いし、性暴力を描いているにも関わらず、一種の女性の自立譚となっている。セルゲイや使用人たちが、女中を集団暴行しているときに騒ぎを聞いて駆け付けたカテリーナは、「女にだって男と同様、頭はあるのよ」と言い、セルゲイと腕相撲対決までする。女性に対して抑圧的だった当時の世の中で、カテリーナがその抑圧を逃れようとあがいた結果が、この物語の結末であるのが悲しい。

舅を毒殺するときに「キノコの毒に当たって死ぬことはよくあるわ」とカテリーナが言い放つのは爽快ですらあるし、酔っ払った客の歌の歌詞は爆笑モノ!

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コメント

死体を発見したのはボロ服の男、高橋淳さんですね。酔っ払いの客は確か結婚式の場面に出ていただけのはずです。

由麻さん、こんにちは。


教えてくださってありがとうございます!オペラはホントに素人なもので、うろ覚えで書いてしまいました。また間違いなどありましたら、教えてくださいね。あの酔っ払った男も、ボロ服の男も、最高でした!

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