BlogPeople


2018年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« マリインスキー・バレエ来日公演のキャスト発表!Casting of Mariinsky Ballet in Japan | トップページ | デュマ・フィス 「椿姫」 Alexandre Dumas, fils La Dame aux camélias  »

2009/04/11

パリ・オペラ座 バレエ ノイマイヤー「椿姫」 NHKハイビジョン放映映像 La Dame aux camélias

La Dame aux camélias (Lady of the Camellias)

Music : Frederic Chopin
Choreography: John Neumeier

Marguerite : Agnès Letestu
Armand Duval : Stéphane Bullion
Manon : Delphine Moussin
Des Grieux : José Martinez
Gaston Rieux : Karl Paquette
Monsieur Duval : Michaël Denard
Nanine : Béatrice Martel
Le duc : Laurent Novis
Prudence : Dorothée Gilbert
Olympia : Eve Grinsztajn
Le comte de N. : Simon Valastro
Les Étoiles, les Premiers Danseurs et le Corps de Ballet

マルグリット : アニエス・ルテステュ
アルマン・デュヴァル : ステファン・ビュヨン
ムッシュー・デュヴァル : ミカエル・ドナール
マノン : デルフィーヌ・ムッサン
デ・グリュー : ジョゼ・マルティネス
プリュダンス : ドロテ・ジルベール
オリンピア : エヴ・グリンツテイン
ガストン : カール・パケット
公爵 : ローラン・ノヴィ
ナニーヌ : ベアトリス・マルテル
伯爵 : シモン・ヴァラストロ

制作: Opera National de Paris / LGM
収録: 2008年7月2,5日 パリ・オペラ座・ガルニエ宮

結局感想を書けていないのだけど、昨年6月28日にガルニエで観た、アニエス・ルテステュとロベルト・ボッレの「椿姫」は素晴らしかった。アニエスの渾身の演技、そして純粋で美しく情熱的なロベルト。

さて、この「椿姫」は本来、アニエスとエルヴェ・モロー主演でDVD化される予定だったのが、初日にエルヴェが怪我をして途中降板。急遽代役として踊ったステファン・ビュヨンが出演したところ、彼が初めて通しで踊った7月2日「椿姫」が映像化となったのだった。

改めて映像になって、テレビで放映されたものを観ると、やはり生の舞台とテレビのモニターで観るのとでは違う。家でテレビのモニター、しかもハイビジョンで大画面のテレビで観ると、何もかも見えすぎてしまうし、どうしても冷静な目で観てしまう。映像で観るという行為は、結局のところ生の舞台の代償行為にはなりえないということを実感してしまった。

さらに、この映像はクローズアップが多すぎる。「椿姫」は演劇的なバレエということになっているので、演技を見せるために表情をアップにしたくなる気持ちはわからなくはない。だけど、主役二人が舞台の上にいるのに、片方だけ映っているというのは残念だ。ノイマイヤーの作品の場合、さらに、主役以外の登場人物の動きというのにも意味が込められていることが多いので、なおさらだ。特にアニエス・ルテステュのアップが多い。アニエスはとても綺麗な人だけど、いくら美しいアニエスでも、大きな画面でアップになってしまうと演技が大仰に見えてしまうし、少し表情が強面の時がある。同じ公演を劇場で観た分には、おそらくそんなに演技を作っているようには見えないだろう、きっと。これは映像ならではの問題なのだと思う。

ロベルトとの舞台を観たときに、アニエスのマルグリットは気品と華があると共に、とても知的な女性だと感じた。しっかりとした自分の意思を持ち、自立した大人の女であろうとしたけれども、果敢に運命に対して戦いを挑み、哀れにも敗れてしまった女性だと。

ところが、このクローズアップの多い映像を観てしまうと、アニエスがあまりにも頭で考えて演技をしていて、理性が勝ちすぎている印象が強く残ってしまう。アニエスは演技はとても上手くて、特にアルマンに侮辱されてから死を迎えるまでの、蝋燭の火が燃え尽きていくような弱り方、苦しい息の中ででも毅然と生きようとする様子、今際の際に見えたアルマンの姿へと歩み寄ろうとして斃れる様、どれも演技としては一級品だ。踊りの技術も申し分ないし、少々背は高すぎるものの(とはいっても、原作のマルグリットも背が高いという設定)、素晴らしいプロポーションと美貌。言ってみれば、あまりにも完璧すぎて破綻や隙がない故、色香が感じられないのが欠点なのだと思った。高級娼婦とはいえ、マルグリットは娼婦なのだけど、アニエスのマルグリットは全然娼婦には見えない。

また、ほぼ初役のステファンを相手にしていることで、緊張感も現れてしまっている。ロベルトがパートナーの時には、もっとりラックしていて、余裕が感じられていた。

そのステファンは、ほぼ初役ということで、サポートにかなり苦労をしていた。ステファン自身、背が高いしPOBの男性の中でもマッチョなほうなのだが、何しろアニエスが長身ということもある。サポートがめちゃめちゃ上手なアレクサンドル・リアブコのアルマンを観た直後だというのも分が悪い。特に黒のPDDでは、ぐだぐだになってしまっていた。

ステファンは演技、そして一人で踊っているときは健闘している。彼は白い肌に薔薇色の頬、黒い巻き毛に長身、美貌なのだけどダークな印象が強くしかも男性的なダンサーだ。その思いつめたような暗さが、アルマン役に良く合っている。しかも、基本的には無表情で不器用そうなのがいい。身体が決して柔らかくない、どちらかといえば硬いことでさえも、その青く一途な、狂気すれすれの情熱を表現するのに適しているようだった。無表情で寡黙、生硬な彼が、ごくまれに感情を爆発させるかのように苦悶の表情を浮かべたり、逆に幸福感に震えていると、この人は今本当にこんな風に感じているんだな、と演技が実感がこもっているように感じられてくる。彼独特の純粋な暗さが、いかにもマルグリットを侮辱して傷つけてしまう残酷さに説得力を持たせている。彫りの深い顔に影を落としながら、マルグリットの遺した日記を吸い込まれるように一心不乱に読むアルマンは、深い悔恨に沈み込んでいる。それでもマルグリットが息を引き取る寸前に彼の幻影を見たのでは、というところで安堵を見せて、ほんの少しの救いを結末に加えている。

デルフィーヌ・ムッサンのマノンは、素晴らしかった。彼女のマルグリットもとても素敵だったけどマノン役は、格別。マノンの持つ強い生命の輝きと、思わず引き込まれそうになる底なし沼のような吸引力、堕ちていけば堕ちていくほど、逆に崇高なまでの美しさが立ち上って透明になっていくさまが感じられた。デ・グリューのジョゼ・マルティネスはその点、ノーブルで踊りは綺麗なのだけど、妖しさ、そしてマノンの死で見せる極限での愛の表現が弱い。ガルニエで観た時のクリストフ・デュケンヌの方が個人的には良かったと思う。ノイマイヤーの「椿姫」では、実は主役二人よりも、マノンとデ・グリューの物語の方に胸を締め付けられてしまう。だからこの役は、本当に大切だと思う。

プリュダンスのドロテ・ジルベールは若いのに演技がとても達者だ。プリュダンスは年増でお金に汚く手癖の悪い女性という設定なのだけど、本当に手癖は悪いし、親切そうに見えて実は狡猾なところがとてもよく出ていた。一方、オランピアのエヴ・グランツステインは美人なのに化粧が非常に濃くて老けて見えるし、演技が過剰というかわざとらしかった。オランピア役は、可愛い顔をしてとても意地悪なミリアム・ウルド=ブラムが良かった。

ガストンのカール・パケットはキラキラの美形ぶりで、ものすごく目の保養になる。夏の光のようなカールの輝きと、笑顔の中にも暗い影を漂わせるステファンは、対極のような存在。カールに限らず、マノンの崇拝者3人や、2幕に出てくる若者たちの容姿が美しいのは良い。N伯爵のシモン・ヴァラストロ、報われなくても一途にマルグリットを愛し続ける彼の演技はとても心を打つ。ハンブルク・バレエのヨハン・ステグリの真面目そうな演技もとてもよかったけれども、シモンのは彼と解釈が違っていて、可愛いいだけに余計に哀れだった。

アルマンの父役のミカエル・ドナールは残念ながら良くなかった。威厳も気品もなく、マルグリットに見せる態度の変容にも説得力がない。そこらへんのおじさんのようで。クルベリ・バレエから客演してきていたアンドレイ・クレムのほうがずっと良かった。もちろんハンブルク・バレエのカーステン・ユングも素敵だったのだけど。伯爵役のローラン・ノヴィは上品で、魅力的だった。

いろいろと書いたけど、オペラ座ならではの華やかさもあるし、上演そのもののクオリティは高かったと思う。ただ、いろいろとアクシデントもあったのでやむにやまれぬところがあったとしても、主役ペアの一回目の共演ではなく、もう少し合わせた後で収録した方が良かったのではないかと思われるところが、勿体無い。

本家ハンブルク・バレエでの上演(もちろん、アレクサンドル・リアブコとジョエル・ブーローニュの共演)と、おそらく収録されているはずのアレッサンドラ・フェリ&ロベルト・ボッレの共演も、DVD化して欲しいと思う。

Opus Arteのサイト(DVD) 黒のPDDの動画が少し見られます。Opus Arteからは5月1日に発売。
http://www.opusarte.com/pages/product.asp?ProductID=285
Chopin - La Dame aux camélias (Paris Opera Ballet)
RELEASED: 01/05/2009

« マリインスキー・バレエ来日公演のキャスト発表!Casting of Mariinsky Ballet in Japan | トップページ | デュマ・フィス 「椿姫」 Alexandre Dumas, fils La Dame aux camélias  »

バレエのDVD・ビデオ」カテゴリの記事

パリ・オペラ座バレエ」カテゴリの記事

コメント

naomiさま
私は映像はまだ見ていないのですが、当日バルコンの後方から見ていても、アニエスの演技は、分析して計算して作り上げられているのがひしひした伝わってきました。それは彼女のこの役に対する気概なんだろうけれど、初役のステファンとのパートナーシップの中では、彼女の計算をカバーするような感情の発露の余裕もなかったのでしょうね。ダンスマガジンの後日のインタビューで、二人はこの舞台の後ノイマイヤーのもとに指導を受けにいったとアニエスは語っていましたが、その後の舞台はどう変わったのでしょうね?それにしてもDVD録画って、その日が最上の舞台かどうかに関係なく、予め決められていた日程で決行するんですね〜。ちょっとビックリです。
私もリアブコやフェリの舞台をDVDにしてほしいです!
お仕事順調にはかどって、GWはパリに行けますよう、応援していま〜す。

naomi様
いつも拝見しております。
映像を楽しみにしていたエルヴェ・モローの降板にショックを受けてキャストをよくチェックしていた当時、ジョゼ・マルティネズも軽い故障でデ・グリューを何度か降りており2日はデュケーヌが躍ったという記事を見かけたような・・・放映では収録日が2日と5日になっていましたので、クロード様のおっしゃる「直々の指導」を受けた後の5日分も使われている?と思ってしまいました。記憶違いでしたらすみません。せっかくの指導が少しでも反映されてほしいという願いも込めつつ。
GWは無事パリへ行かれると良いですね。

クロードさん、こんばんは。
2日の公演は、クロードさんはご覧になっていますものね!私も28日のルテステュ&ロベルト・ボッレの日は席がバルコン後方でした。そのときもアニエスはとても知的なマルグリットで、演技を緻密に組み立てているとは思ったのですが、テレビで細部が観られるとますますそのように思えますよね。
友達がちょうどその直後にハンブルクに行って、劇場でアニエスとステファンを見かけたとのことです。
今回の収録は、ノイマイヤーがアニエスとエルヴェ・モローで、と指定をしていたようなのですが、エルヴェの降板に伴い、アニエスのパートナーとして踊れる人ということで背の高いステファンになったようですね。ただ、その他のPOBの舞台収録では、あらかじめ収録日が決まっていて、キャスト変更により予定キャストが代わってしまうということもあるようです。DVD化されていませんが、ヌレエフ版の「くるみ割り人形」(ミリアム・ウルド=ブラムとジェレミー・ベランガール主演)などはそうですね。
ロベルト・ボッレはゲストだったので、アニエスのパートナーといえども映像には残してもらえなかったのですね。

masakoさん、はじめまして!

たしかに7月2日だけではなく、5日の分も収録されているはずですよね。2幕で、一瞬ステファンが血を流してしまったところがあって、次のシーンでは消えていたりしたもので。私は、昨年のPOBでの「椿姫」は28日から1日まで4回観たのですが、ジョゼ・マルティネスがそのうち2回登場する予定が、結局その間一度も出なくて、代役はクリストフ・デュケンヌとマチアス・エイマンでした。2日もデュケンヌだったのかしら。確かに、デ・グリューの場面は差し替えようと思えばできますものね。
ノイマイヤーの指導はきっと反映されているはずだと思います!そう思いたいですね。どのような組み合わせで収録されたのかは、ちょっと観ただけではわかりませんが。ビジュアル的には、若干年が離れている感じですが、とても良く合う二人ですよね。

naomi様
気付いていませんでしたが、確かに二幕のパドドゥで血のようなものが映りますね。驚きました(自分も何を見ていたのだか)。それでも出来が良かったんでしょうね。私は入りがハイデ×リスカの映像でしたので、年上のマルグリットと若いアルマンのほうが自然に感じます。という意味ではオペラ座のペアも良かったです。初役のビュヨンがとても情熱的でした。評判の高かったモローが残らなかったことは非常に残念ですけれども・・・
この作品はぜひ現地で観てみたいです。ハンブルグ、スカラ座もせめてDVDが出てくれないかしらと思います。

masakoさん、こんばんは。

ステファンの流血は良く見ていないと気がつかないくらいのものだったので。(ルジマトフの昔の「白鳥の湖」のように、途中で髪の長さが違うなんて映像もありますが(笑))

確かに、ノイマイヤー版の「椿姫」は、かなり年上の女性というイメージがありますよね。私も最初に観たのはハイデとリスカの映像なので。ジョエル・ブーローニュも、落ち着きがある感じでしたし、デルフィーヌ・ムッサンもそうでした。ノイマイヤーとしては、やはりエルヴェ・モローがPOBでは一番アルマンに相応しいと考えてキャストしたのだと思います。

来日公演の神奈川県民ホールは、この作品を上演するには舞台の横幅が広すぎるという感じでしたね。その点、ガルニエのサイズはちょうど良い感じでした。バルコンの一番後ろでも、それほど距離は感じなかったし、同時進行する舞台が見られたので。シュツットガルト州立劇場にしても、ハンブルク州立劇場にしても、それほど大きな劇場ではないし。

POBのDVDは比較的たくさん発売してくれてそれはそれで嬉しいのですが、他のバレエ団のDVDも出して欲しいですよね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« マリインスキー・バレエ来日公演のキャスト発表!Casting of Mariinsky Ballet in Japan | トップページ | デュマ・フィス 「椿姫」 Alexandre Dumas, fils La Dame aux camélias  »