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« 2/15マチネ「人魚姫」Die kleine Meerjungfrau(まだ途中) | トップページ | ハンブルク・バレエblogの「ダンスマガジン」撮影風景 »

2009/02/17

ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「人魚姫」

アンデルセンの「人魚姫」

ハンブルク・バレエの「人魚姫」の15日のマチネの続き、ソワレの感想の続きを書こうと思っていたのですが、今日の夕方からまた寒くなり、そして土日で3本バレエを観た疲れ、さらに今日は仕事でバタバタしてしまってその疲れもあって、治りかけていた風邪がまたちょっと悪化してしまいました。水、木の「椿姫」、日曜日の愛知での「人魚姫」もあったりするので、ここで治すために一時中断します。

よく考えてみたら、アンデルセンの「人魚姫」って子供のときに読んで以来、ちゃんと読んでいなくてあらすじしか覚えていなかったので、もう一度読んでみようと思いました。
「人魚姫」の1955(昭和30)年7月20日初版の翻訳(楠山 正雄訳)は、青空文庫にあるため、全文をネットで読むことができます。この翻訳のタイトルは「人魚のひいさま」となっており、独特の言葉遣いになっていますが、それがまた一層味わい深く、物語を気品があるものにしています。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000019/card42383.html

そして、金曜日に行われたノイマイヤーのトークショー(私は行くことができなかったので、内容については、Shevaさんのサイトでの詳しいレポートで教えていただきました)でも、ノイマイヤーが語ったことなのですが、「人魚姫」の結末は、今回原作を読んで初めて知ったのです。もしかして子供のときに読んでいたのかもしれませんが、すっかり忘れていました。人魚姫は、海の泡になって消えてしまうわけではないのです。

人魚は300年の命がある代わりに、その命が終わった時には海の泡になって消えてしまうことになっています。「死なないたましいというものがない。またの世に生まれ変わるかわるということがない。人間にはたましいというものがあって、それがいつまででも生きている、からだが土にかえってしまったあとでも、たましいは生きている」(「人魚のひいさま」より)

ところが、人魚姫は、自分が海の泡になって消えたと思った瞬間、"気息(いき)のなかま"の声を聴くことになります。

「あたしたちは、あつい国へいきますが、そこは人間なら、むんむとする熱病の毒気で死ぬような所です。そこへすずしい風をあたしたちはもっていきます。空のなかに花のにおいをふりまいて、ものをさわやかにまたすこやかにする力をはこびます。こうして、三百年のあいだつとめて、あたしたちの力のおよぶかぎりのいい行いをしつくしたあと、死なないたましいをさずかり、人間のながい幸福をわけてもらうことになるのです」(「人魚のひいさま」より)

人魚姫の肉体は消えますが、空気となり、そして「死なない魂」を手に入れるためにおつとめをする、つまり愛はかなえられなかったけれども、その魂はずっと残ることになるということに、この物語の救いがあるということです。ノイマイヤーの「人魚姫」では、アンデルセンの創った「人魚姫」という物語に、詩人と人魚姫の不滅の魂が受け継がれ、そして物語を通じて永久の命を得るということになります。

実は3回も「人魚姫」を観たのに、三回目にじわ~と少しだけ涙が滲んだだけで、この舞台を観て泣きませんでした。ところが、この原作を読んでみると、その語り口もあって涙が溢れてきて困りました。同時に、これは子供向けの話ではなく、大人向けの物語なのだと思いました。

ノイマイヤーの作り上げた「人魚姫」は、哀しく切なく感動的な物語では済まされず、善良さと裏腹にある残酷さ、美しさと醜さということ、そして同性愛者であった詩人の想いを人魚姫に反映された部分といった複雑な要素や人間の暗黒面、さらにはダークな諧謔性があります。性的な暗喩もあるように感じられます。だから、脊髄反射的に感動させないところがあるのです。だからこそ、彼の作品は深いともいえますが、好き嫌いは出てくると思うし、好きになれない人がいても当然だと思いました。

実は、ノイマイヤーの「人魚姫」を観たときに、私はラース・フォン・トリアーの映画を連想しました。特に「奇跡の海」と「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の2本です。「奇跡の海」は大好きな作品ですが、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は大嫌いな映画です。この2本の映画では、いずれも、ヒロインが筆舌しがたい苦難の上に死を迎えます。
ラース・フォン・トリアーは、デンマーク出身の映画監督です。

ノイマイヤーの視線の方がずっと優しいのは言うまでもありません。

******
さて、アンデルセンの「人魚姫」を絵本で読みたいと思う方もいると思います。本屋さんで探して、とても素敵な1冊に出会いました。

金原瑞人が翻訳し、清川あさみの挿画による「人魚姫」の絵本です。布とビーズやスパンコール、刺繍で「人魚姫」の世界を表現しています。人魚姫の姿を手で刺繍し、海などは幾重にも重ねられた布やレースで繊細に描き、海に反射するきらきらした光の乱反射や人魚たちのうろこはビーズやスパンコール。海の深い青のグラデーションも美しいのですが、人魚姫が人間に変身し、踊る時の彼女の王子への恋心を表す淡い赤やピンクには香りたつような幸福感が現れています。魔女の森の不気味さの中のゴシックで妖しい美しさや、光るナイフはちょっと衝撃的。そして、空気の精となった時の薔薇色の雲と夕日のような光の色には、胸を締め付けられます。一つ一つの挿画(画というよりは、まるで舞台衣装を写真に撮ったようなイメージ)が一級の芸術品で、原画というかテキスタイルと刺繍の実物をいつか見られたらいいな、と思いました。
金原瑞人さんの翻訳も、人魚姫やその姉妹たちの海での生活を生き生きと描写しています。そして人魚姫の切ない、息苦しく胸が焦がすような想いや絶望が伝わってきて、とてもロマンティックだけど胸を締め付けられます。これを読むと、やはり「人魚姫」は大人向けに書かれた、繊細な心理描写の光る小説であることがとてもよくわかります。

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コメント

子どもの頃、とても美しい挿絵の人魚姫の本を持っていて、何度も何度も読み返しては、王子様のそばにいれても歩く度に足が針にさされるように痛いって、どんな気持ちなんだろうと想像したりしていました。ノイマイヤーの「人魚姫」によって、このお話がアンデルセンの報われない想いから生まれた事を知り、その痛みがそのまま踊りや音楽になったような舞台を見て、身体を歪めながら不器用に歩くアッツォーニの人魚姫は私の中で永遠のヒロインの一人となりました。でも、私が読んでいた本では人魚姫は泡になるところで終わっていたので、魂のことにまで触れてあるなんて知りませんでした。舞台も原作も底深いのですね。清川 あさみさんの挿絵も本当に美しいですよね。私もまたいろいろな人魚姫を手に取ってみたくなりました。ありがとうございます。
残りの日程も楽しまれますよう。

クロードさん、こんばんは。

15日の夜は「人魚姫」だったんですね~。
私も子供の頃に「人魚姫」の本は読んだはずでしたが、最後は海の泡になっていたと思います。声が出せないということと、脚がとても痛いということが印象的で、子供心にもあまりにも悲しいお話だと思っていたのですが。だから、今回改めて読んでみて、その後の話まであるということを初めて知ったんですよね。この絵本を読んでみても、最後は薔薇色の雲の絵で終わっていて、とても暖かい気持ちになりました。ノイマイヤーの人魚姫は、心の中で整理するのにちょっと時間がかかりましたが、シルヴィア・アッツオーニは本当に凄いですよね!「人魚姫」はいろいろな訳文で出ているみたいなので、読み比べると面白いかもしれませんね。

hello!
ご紹介いただき感謝ですう~
はああ~もうきょう椿姫です。昨日あたりからからヤバいです。生舞台の椿姫はお初なので、興奮しすぎに注意しないと…

Shevaさん、こんにちは。
ハンブルク祭り最中でお返事が遅れてしまってすみません。Shevaさまの「人魚姫」への感想は、共感するところがたくさんありました。心の中で咀嚼し整理するのに凄く時間がかかるんですよね。そして、しばらく人と口を利きたくなくなるほどの感情が起きてきます。
そしてノイマイヤーさんのトーク収録、本当にありがとうございました!当日行けなかったので、内容を教えていただけてすごく助かりました。
しばらく頭の中が麻痺しているような感覚です。いや、サーシャってあまりにも凄過ぎますよね。

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