2/18ハンブルク・バレエ『椿姫』Die Kameliendame
ジョン・ノイマイヤー/ハンブルク・バレエ『椿姫』Die Kameliendame
音楽:フレデリック・ショパン
演出・振付:ジョン・ノイマイヤー
舞台美術・衣装:ユルゲン・ローゼ
アルマン・デュヴァール:アレクサンドル・リアブコ
マルグリット・ゴーチェ:ジョエル・ブーローニュ
老紳士デュバール:カーステン・ユング
ナニーナ:ミヤナ・フラチャリッチ
伯爵:ヨロスラフ・イヴァネンコ
プリュダンス:レスリー・ヘイルマン
N伯爵:ヨハン・ステグリ
マノン:エレーヌ・ブシェ
デ・グリュー:ティアゴ・ソアレス
オランピア:カロリーナ・アギュエロ
ガストン:アルセン・メグラビアン
(2009年2月18日 神奈川県民ホール)
「人魚姫」の感想を書く前に「椿姫」が始まってしまいました。それにしても、やっはり神奈川県民ホールは遠いです。私は都内でも神奈川県寄りに住んでいて、単に横浜だったら40分くらいで行けるんですが、県民ホールは交通の便が悪く、帰宅が遅くなってしまいました。しかも6時半開演だと、会社を定時にあがっても間に合わなくて、結局1幕の最初の15分は観られなくて、3階席後方で1幕の残りは観ました。全然観られないよりはマシというか、少し欠けたものの観られて良かったですが。明日は午後半休を取ってマチネを観に行く予定なのですが、そのために早出はしないとならないし、終わったあとも下手したら会社に戻って仕事になりそうです。午前中に仕事をしてそのまま会場に向かってもぎりぎりの時間なんです。しつこいようですが、なんでこんな酷い日程になってしまったんでしょうか。明日早く起きなくてはならないので、感想を書いている時間などないのですが。
最初の15分は観られなかったのですが、やはり本家ハンブルク・バレエで観る「椿姫」は、オペラ座の華やかさとはまるで違っているけど、その分純粋なストーリー性、ノイマイヤーの指導が行き届いているように感じられて、心を揺さぶります。私自身なかなかその世界から抜け出すことができません。
なんといってもサーシャ(アレクサンドル・リアブコ)は天才です。今までも彼の舞台を観てきて感じてきたことですが、彼は完全に憑依型のダンサーで、完璧にその役になりきって、まったく抜けることができないのです。若くてまっすぐ、熱情がほとばしって、そしてその火傷しそうなほどの情熱とナイフのように尖った愛情で自分も傷つけてしまう、ナイーブ過ぎるアルマンが、乗り移っていて怖いほど。彼のアルマンのあまりの純粋さと熱情に、すっかり魂を吸い取られてしまいました。
3幕の黒のパ・ド・ドゥでのあまりの熱演のため、サーシャの髪が乱れっぱなしで、カーテンコールでも乱れた髪のまま登場していて役から抜けきっていないのがよくわかりました。そして目には涙が光っていました。
私が観ることができた1幕の劇中劇-マノン・レスコーのシーンから、サーシャはキレキレでものすごいテンションが高いのがわかりました。2幕の終わりでマルグリットの手紙を読んで怒りと悲しみのあまり踊るソロの切れ味の凄さ、瞬発力には驚愕。激情のほとばしりが感じられるようなテンションの高さ。踊りで感情を表現するというのはこういうことなのか、と思いました。ベッドに男といるマルグリットの姿を見て、卒倒するアルマン。その倒れ方が、もう絶品。そして、何よりも哀しかったのが、黒のパ・ド・ドゥの後の舞踏会で、アルマンが今までの情事の料金だと、マルグリットに札束を押し付け、ショックのあまりマルグリットが卒倒する場面。愛する男性に人前で侮辱されたマルグリットはもちろん深く傷ついたのだけど、それ以上に深い傷を負ってしまったのがアルマンであるのがよくわかりました。幸せな場面での笑顔が優しそうなだけに、彼の傷ついた姿を見るのがつらいのです。
サーシャのサポートの上手さ!素晴らしくスムーズで、決して背の高くない彼が、細身ながらも比較的長身のジョエルをころころ転がすように軽々とリフトしていて、そういうところに愛が溢れているなと思いました。
気品があって大人の魅力溢れるジョエル・ブーローニュも素晴らしかったです。デュマ・フィスの原作によればマルグリットも本当は若い女性だったそうですが、マリシア・ハイデの映像の影響もあるのか、マルグリットは若くはない女性に演じて欲しいと思います。ジョエルは落ち着いていて分別があって、半ば人生をあきらめかけているときに若い熱情に出会って生まれ変わろうとしていた女性、というところが感じられたのが良かったです。手脚が長く顔が小さく足先がきれいで、サポートされている姿が絵になります。演技も大げさではなくほどよく抑制が効いていて、さりげなく自然に感情が滲んでいました。その中に愛情の深さ、大人の分別が感じられます。椿の花がぽとりと落ちるように静かに散っていくのが、とても余韻を残していました。演技というものを感じさせない、さらりとした演技が絶妙でしたね。彼女のマルグリットを見ると、「ライオンのような孤独」という言葉が浮かびます。一人で死ななければならなかったマルグリットは、確かに哀れだったかもしれない。だけど、本当のところは、凛としたまま最期を迎えた彼女は、だからこそ美しかったのではないかと。
それからマノン役のエレーヌがすごく良かったです。崇拝者に囲まれる艶やかな小悪魔マノンが悪夢のようにマルグリットを翻弄し、だけどやがてやつれ果て愛するデ・グリューの腕の中で死んでいく様子が胸を打ちました。その二人に手を伸ばしながらも振りほどかれ、唯一ナニーヌに見守られて寂しく死んだマルグリットとは対照的な運命。エレーヌの演技の幅広さには驚かされます。もちろん、デ・グリューのティアゴ・ボーディンも良かったです。あと、マルグリットに相手にされずかわいそうな役ながらも、病に衰えていく彼女に最後まで愛情を注ぐN伯爵のステグリは、すごく泣かせてくれます。髪をぴっちりと撫で付けてメガネをかけていて、最初彼だとわかりませんでした。今回が初役だというアルマンの父役のカーステン・ユングはすらっと背が高く、カッコよく厳しさの中に父の愛を感じさせていて素敵でした。
すごく踊りの上手いガストン役のアルセン・メグラビアンや、小悪魔的な演技の達者なカロリーナ・アギュエロ、群舞の中では小柄だけど身体能力がすごいコンスタンティン・ツェリコフ(彼は「ニジンスキー」で、服部有吉さんが演じていたニジンスキーの兄スタニスラフ役だったんですよね)など、いいダンサーがいっぱいいます。
明日のシルヴィアの「椿姫」も楽しみです。仕事が早く終わるように頑張らなくては!
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コメント
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昨日は疲れました!!(-.-;)。カーテンコールも後にし急いで東京駅へ、最終の新幹線に何とか間に合いました。
第一幕録音テープの安っぽさに不安を?。でも各幕の二人の踊りには心から心酔いたしました。
ふと思ったことは、ショパンがこの作品を観たら、きっと感銘を受け喜んだのではと。昨年末の「オネーギン」といい、この「椿姫」といいバレエを観る幸せを感じていますf^_^;
投稿: おおやま | 2009/02/19 07:33
おおやまさん、こんばんは。
「椿姫」いらしていたんですね!神奈川県民ホールは駅からもちょっと距離があるし不便ですよね。録音テープの音は本当に悪かったです。
ショパン、本当にこの作品を観たら嬉しかったのではないかと思います!音楽の使い方がまた素晴らしいのですよね。
このような良い公演を観られると、本当に幸せですよね!
投稿: naomi | 2009/02/21 03:50