BlogPeople


2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« ドミニク・ウォルシュがマシュー・ボーンの「白鳥の湖」王子を踊る | トップページ | デンマーク・ロイヤル・バレエのセバスチャン・クロボー、ソリストに昇進&インタビュー »

2009/01/25

「幸せになっちゃ、おしまい」平 安寿子

以前「SWAN MAGAZINE」の最新号のところでもちょっと触れた、作家の平 安寿子さんのHanakoに連載されていたエッセイが、本になりました。平さんは、このエッセイを読んでみた方がいれば知っていると思いますが、バレエファンであり、特にハンブルク・バレエの大ファンで何回もハンブルクに観に行かれているほどの方です。時々このブログにもコメントを寄せてくださいます。

ちなみに、平さんのペンネームは、アメリカの作家アン・タイラーから取ったものだそうで、私も大学生の頃、市井の普通の人たちの哀歓を描いたアン・タイラーの本はすごくたくさん読んだものです。ところが、今調べてみるとアン・タイラーの邦訳はすでに絶版になっているものが多いんですね。「アクシデンタル・ツーリスト」や「ブリージング・レッスン」「ここがホ-ムシック・レストラン」など、もう一度読み返したいと思っても、図書館で探してみるしかないんですね。(これらの本は、実際図書館で借りて読んだものだったけど)「アクシデンタル・ツーリスト」は映画化されて、ジーナ・デイヴィスがアカデミー賞助演女優賞もとった作品だというのに。

Hanako連載当時から、平さんのエッセイはとても面白くて元気をもらえるものだったので、よく読んでいたものでしたが、改めて読み返すと、一冊の本になっても一貫としたテーマがあってまとまっている感じです。1953年とちょっと年上の平さんですが、人生の素敵な先輩かつ友達が書いたという感覚で読める、生きるヒントが満載です。また文章の巧みなこと!

このエッセイでも書いてあるように、雑誌で紹介されている女性というのは、たいてい、すごいキャリアがあって、家庭もあって、美しくて大成功を収めている人たちです。でも、私たちはそんな成功談を読みたいのではありません。「その他大勢だけど、いい仕事をする」という人に魅力を感じるというのはすごく納得です。平さんの小説に出てくる人たちは、不器用で、ときにはみっともないこともあるけど、夢に向かって生きている人が多い気がします。全部読んだわけではないんだけど。そしてこの本では、若い頃の平さんの失敗談もたくさん出てくるし、さまざまな、そのへんにいそうだけど素敵な人たちの話が出てきます。

もうすぐ30歳、もうすぐ40歳、というときに私たちはすごく焦るものです。この本ではそれを「三十怖い病」「四十怖い病」と呼んでいますが、こんな年になってしまったのに、今の自分はこんなにも未熟だというのは、今の自分もよく考えてしまいます。年齢に自分が追い付いていってません。だけど、実際自分が30歳になったり、40歳になったりすれば、そんなものはなくなってしまう。そして、若い頃、自分が何を目指しているのかわからないまま年を取ってしまうのではないかという不安は、年を取ってみると、解消されていくものだと教えてくれると、ちょっとホッとします。若い頃にはただつらい、と思っていたようなことも、何十年も立ってみるとそれが宝物だった、ということに気づいたりするとのこと。そう思えるようになりたいです。私たちのそんな悩みに、親身になって聞いてくれている存在、そんな本なのです。

ジュリー(沢田研二)の大ファンである女性たちが主人公の「あなたがパラダイス」という小説では、平さんは、更年期の女性心理を描いて見せましたが、この小説、そしてこの本を読むと、年齢を重ねていくことの怖さが解消されます。「イギリスのばあさんをめざせ」というエピソードにあるような、かっこよくそしてかわいいイギリスのおばあさんみたいになりたいなって思います。そして、何歳になってもガールズトークに花を咲かせる、と。ジュリーのファンも(私の母もジュリーファンでした)、バレエファンも、何か一つのものに夢中になっている人たちの話というのは、本当に尽きないし、面白いし、元気が出るものですよね。そんな女性たちへのエールになっているんです。

さて、もう一つの楽しみは、もちろん、平さんの語るバレエの話。「ジゼル」を観たことがある人なら、一度は思う、「なんでヒラリオンはあんなに一途にジゼルのことを愛しているのに、まったくその愛を理解されずに、ウィリたちに取り殺されてしまうの?」という疑問について、面白く語っています。彼の死についての解釈がまた、うまいんです。「バレエって面白いでしょ」って、今までバレエについて関心がなかった人にも、その面白さを巧みに伝えてくれています。

それから、もうすぐハンブルク・バレエの来日公演がありますが、来日公演で上演される「人魚姫」についても。王子への愛が伝わることない人魚姫と、(男性の)恋人への愛が成就しなかったアンデルセンを投影した「詩人」というキャラクターの痛み、その重ね方について、書かれています。「人を慰めるのはハッピーエンドではない」というのは、私もそう思います。ノイマイヤーの作品では、他にも「シンデレラ・ストーリー」や「眠れる森の美女」についても。この世の中には王子様もお姫様もいない、ただ愛し合う人の心があるだけだ、というノイマイヤーのメッセージ、それがあるから、彼の作品は普遍性があるのですね。目からいっぱいうろこが落ちる思いがします。

バレエファンでも、バレエに関心がない人でも、女性だったら誰でも面白いと思うエッセイ集だと思います。

そしてとびっきり素敵な台詞を一つ。頑張りすぎては、いけない。
「それでも、頑張れ、わたし」

幸せになっちゃ、おしまい幸せになっちゃ、おしまい
平 安寿子

マガジンハウス 2009-01-22
売り上げランキング : 15513

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

« ドミニク・ウォルシュがマシュー・ボーンの「白鳥の湖」王子を踊る | トップページ | デンマーク・ロイヤル・バレエのセバスチャン・クロボー、ソリストに昇進&インタビュー »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ドミニク・ウォルシュがマシュー・ボーンの「白鳥の湖」王子を踊る | トップページ | デンマーク・ロイヤル・バレエのセバスチャン・クロボー、ソリストに昇進&インタビュー »