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2009/01/31

1/30 レニングラード国立バレエ「ライモンダ」The Mikhailovsky Theatre Raymonda

レニングラード国立バレエ ―ムソルグスキー記念/ミハイロフスキー劇場― The Mikhailovsky Theatre
「ライモンダ」Raymonda
全3幕4場
2009年1月30日(金)18:30開演 Bunkamuraオーチャードホール
音楽:A.グラズノフ
振付:M.プティパ/K.セルゲーエフ/F.ロプホフ
ライモンダ: オクサーナ・シェスタコワ
騎士ジャン・ド・ブリエンヌ: マラト・シェミウノフ
アブデラフマン: アレクサンドル・オマール
伯爵夫人シビラ・ド・ドリス: アンナ・ノヴォショーロワ
ハンガリー王アンドレイ二世: アンドレイ・ブレクバーゼ
侍従: パーヴェル・シャルシャコフ 
ライモンダの友人:
クレメンス: タチアナ・ミリツェワ
ヘンリエット: イリーナ・コシェレワ
ベランジェ: デニス・モロゾフ
ベルナール: アンドレイ・マスロボエフ
夢の場面ヴァリエーション:マリア・ドミトリエンコ、オリガ・グローモア→ヴァレリア・ジュラヴリョーワ
サラセンの踊り: ナタリア・クズメンコ、アレクセイ・クズネツォフ
パナデロス: エレーナ・モストヴァーヤ、アンドレイ・カシャネンコ
ハンガリーの踊り: エレーナ・フィールソワ、ロマン・ペトゥホフ
3幕ヴァリエーション: ユリア・チーカ
管弦楽:レニングラード国立歌劇場管弦楽団
指揮:ミハイル・パブージン

2006年にマールイのレパートリーに登場したという「ライモンダ」。白の貴婦人が出てこないのと、ジャン・ド・ブリエンヌの出征シーンがない(ヌレエフ版もないけど)以外は、非常にオーソドックス。1幕が45分で、70分のヌレエフ版と比べるとコンパクト。どこが少ないのかな、と考えたところすぐにわかった。ジャン・ド・ブリエンヌのヴァリエーションが3幕にしかないのだ。しかもアブデラフマンのヴァリエーションはなし!(アブデラフマンはヴァリエーション以外ではそこそこ踊るところはある)

新制作ということで、書割ではあるけれども舞台装置はとても美しく、衣装も一部を除けばセンスが良くてお金がかかっているようだった。3幕のライモンダは、マリインスキーでの「ライモンダ」のように羽のついたベレー帽みたいなのをかぶっているのだけど、あの帽子は、マリインスキー版でもいつもそう思うのだけど頂けない。2幕の夢のシーンでは、コール・ドが「シルヴィア」のニンフたちのような両側に羽のついた頭飾りをつけており、また男性コール・ドの頭飾りはちょっとパリ・オペラ座ヌレエフ版のに似ている、白い獅子舞系のもの。

ジャンもアブデラフマンも踊らなくて、誰が踊るのかといったらそれはもう、ライモンダしかいない。そういうわけで、ライモンダ役のシェスタコワが1幕から3幕までとにかく踊りまくる。プリマが上手かどうかで、舞台の出来が決まるといっても過言ではなく、また、大変な体力が必要そうだ。

しかもこのヴァージョンは、3幕の女性ヴァリエーションはアンリエットが踊るのではなく別のダンサーが踊る。というわけで、残念ながらアンリエットとクレマンスは3幕に登場しない。ベランジェとベルナールも役としては登場しないけど、モロゾフとマスロボエフは舞台上にはいた。さらに、アンリエットとクレマンスは、1幕の最初では踊りはあるものの、赤いロングドレスでポアント着用ではないので、すごく踊るって訳ではない。ミリツェワとコシェレワがチュチュではなくてロングドレスなのが珍しいので、新鮮ではあったけど。

シェスタコワのライモンダは、ちょっと大人しい感じはあるものの、気品にあふれて優雅、貞淑なお姫様。ジャンはタペストリーや肖像画ではなく、舞台装置の背景に描かれている(ちょっと観ただけでは判りにくい)。一度も姿を見せていないジャンに対する想い-j彼が出征し不在であることに対する不安と一途な恋心を表現することについては、シェスタコワはとても巧みで、思わず感情移入したくなってしまうほど。シェスタコワは派手さがない分、幸薄そうなところを表現するのが上手い。幸薄そうであっても、地位の高い者の持つべき優雅さと抑制があるから、演歌にはならない。アブデラクマンが迫ってくる時にも、あからさまな拒絶は見せずに、分別ある大人の対応を取っていた。ジャンが帰還した時には頬を上気させて本当に嬉しそうだったし、アブデラクマンが決闘で倒れたときには困惑するとともに、悲しんでいるようにも見えた。

シェスタコワの踊りは、1幕の最初の方では若干調子が悪そうだった。登場のところでの、床においてある花を拾った後でのアラベスクが決まらなくてちょっと優雅さに欠けてばたつきを感じさせたり、パドブレでポアントが一瞬ポアントが落ちて大丈夫か、と思わせたり(多分滑ったのだと思う)。特に1幕の最初の方は、オーケストラのテンポが悪くて、音に合わせるのに苦労していた様子。

ところが、シェスタコワはピチカートのヴァリエーション(素晴らしかった!)あたりから持ち直してきて、もう~3幕のヴァリエーションは絶品というか超素晴らしかった!ロシア系ライモンダの例に倣い、ほとんど手は打ち鳴らさない。上半身の動きがとにかく柔らかくて気品があって滑らかで美しい。オペラ座で観たアレクサンドロワのライモンダももちろん、唸るほど素晴らしかったけど、マーシャの場合には、ものすごく威厳があって、堂々とした姫、女王様のようなライモンダだった。シェスタコワのこのヴァリエーションは、控えめで優しげだけど、秘めた芯の強さと決意がこめられている。なかなかこのレベルの高さの踊りで、このヴァリエーションは観られないのではないかな。ブラボー!

シェミウノフのジャン・ド・ブリエンヌは長躯にマントが映える堂々とした騎士ぶりの登場が素敵。踊りはもっぱらサポート系で、ヴァリエーションは3幕のみ。ところが、このヴァリエーションの出来はよくなかった。大きなミスがあったわけではないのだけど、アティチュードの時の膝が思い切り下がっていて内脚になってしまっていた。身長がすごく高いので仕方ない面はあるけど、どうしても踊りがもっさりして重くなっている。しかも表情は硬いし。1幕の夢のシーンでシェスタコワを高くリフトして、サポートしなければならないところで少し歩いてしまっていた(他のサポートは大体大丈夫だったけど)。
ただ、シェミウノフは身長が高いことで迫力はあり、特に1,2幕でのマントはとてもよく似合っていて、男っぷりはとても良かったのではないか。やはりマント着用だと、男性ダンサーは5割増くらいに見えるものだなあ、と思った。シェミウノフくん、せっかく背が高くて見栄えも悪くないのだから、ロットバルトやドン・キホーテなどのキャラクター系だけでなくて、古典の踊る役をもっと踊って欲しいな。

アブデラクマンは、「ジゼル」でヒラリオン、「海賊」でビルバントを踊っていたオマール。演技も踊りも表現もとてもよかったと思う。特に踊りは切れ味鋭く、また情熱的にライモンダに迫るところには見入ってしまったし、ベランジェとベルナールに高く持ち上げられたライモンダを受け止めるサポートも良かった。すごい熱演だったと思うんだけど、それだけに、アブデラクマンを十分魅せるような振付、演出じゃなかったのが残念。夢のシーンにすらアブデラクマンが出てこない新国立版よりはもちろん全然良いけど。一般的なアブデラクマン像の枠に収まっていて、それ以上の魅力を感じさせようとしない演出なのだ。それに、メイクがロシア特有のやりすぎ塗りすぎ素顔全然わからない濃いメイクで、死ぬ間際に外れる頭布の下のボウズカツラがまた、つぎはぎだらけで気の毒で。オマールはすごくいいダンサーで、すごくよく踊り演じていたので、もったいない。素顔は観たことがないけど、ヒラリオンやビルバントから察するに、きっとハンサムだろうに。

クレメンスのミリツェワ、アンリエットのコシェレワは安定度抜群で、二人とも美しく、安心してみていられる鉄壁コンビ。ミリツェワの「ジゼル」ペザントでのやや不調振りが嘘のよう。ライモンダがアブデラムに迫られている時には、一生懸命彼女を護ろうとするし、輪郭のくっきりして元気の良いミリツェワ、優しさに満ちているコシェレワがかわいくて~。この二人がいると、舞台が締まる。2幕でのヴァリエーションは二人ともとても綺麗で温かみがあって良くて、オペラ座の「ライモンダ」のエヴ・グリンシュタインやオーレリア・ベレ、マリ・ソレーヌ=ブレなどに満足できない理由がすごく良くわかった。やっぱりロシア・バレエの上半身の美しさ、柔らかさは、世界一だな、と。

それから、流石ロシアと思ったのが、キャラクターダンスの素晴らしさ。特にサラセンのナタリア・クズメンコ、アレクセイ・クズネツォフ、凄い!凄すぎる!あのリズムにあんなにぴったりと合わせて自在に身体を操れるなんて、もうびっくり!こういう踊りを観られるのが、「ライモンダ」という作品のお得なところ。それに、パナデロス(スペイン)のエレーナ・モストヴァーヤ、これぞキャラクターダンスという姐さん系艶やかなカッコよさで、きゃーと思うほど素敵だった。

ここにバレエ団の男性ダンサーの実力が現れる、という点で恐ろしい、3幕グランパ・クラシックのパ・ド・カトル。4人の男性で唯一トーゥル・ザン・レールで5番に綺麗に降りられたのは左端のヤフニュークだった。ヤフニューク、こんなに上手かったんだ!ほかの3人は、トゥール・ザン・レールの着地がちょっと悲惨。特に左から2番目。でも、今回思ったのが、男性もビジュアルのレベルが上がっていること。パ・ド・カトルの4人はみななかなかイケメンであった。トゥール・ザン・レール以外はみなよく踊っていたと思う。

ラストシーンでは、キラキラの星屑のような紙吹雪が舞って、すごく綺麗だった~。暖かい雰囲気で終わってめでたし、めでたし。

男性の踊りが少ないこと以外は、シェスタコワの素晴らしさもあり、そしてキャラクターダンスやミリツェワ、コシェレワの素敵さもあり、満足できた公演だった。やっぱり「ライモンダ」は好きだ。ただ、「ライモンダ」という作品の魅力の大きな部分を、グラズノフの素晴らしいスコアが担っているので、オーケストラはもう少しテンポなどを工夫して欲しいと思う。アニハーノフさん、カムバックして~!

これで私の今年の冬のミハイロフスキー(マールイ)祭りは終了。合計4演目プラスコールプ・ガラ。やはりミハイロフスキー・ガラは行くべきだったし、「ライモンダ」も別キャストで観たかった。次の来日が待ち遠しいけど、次は土日公演をもっと増やして欲しいと思う。平日6時半開演公演ばかりだと、本当に行けるかどうか毎日スリリングなばかりだし、平日は行けても週に一回が限度なので。

名指揮者アニハーノフさんがいなくなってオーケストラのレベルが下がってしまった、コール・ドのレベルも以前より低下したところはあった。だけど、派手さはないけど実力はピカイチのシェスタコワをはじめ、ここのソリストはいい人がそろっているし、ロシア・バレエの美しさ、そして暖かい雰囲気に親しみも感じる。お値段もリーズナブル。だからこれからも継続的に、全幕公演を持ってきて欲しいと願う。それから次回はぜひ「スパルタクス」もお願いしたい。とにかく、ダンサーの皆様、本当に素晴らしい公演をありがとう。そしてまた来てね♪

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バレエ公演感想2009」カテゴリの記事

コメント

すみません、またお邪魔します。やっぱりシェスタコワよかったんですね。。。見ればよかった。でもマーシャが踊った様子とシェスタコワが踊った様子はよくイメージできます。マールイの女の人たちって、おっとりしていて癒しをくれますよね。今回初めてヤフニュークを見たのですが(ペレンの日)、素敵なダンサーですね。すぐに目が引き寄せられました。きれいな5番で降りていたとのことで技術も確かなんでしょうか。ルックスも良いしこれからソリストで王子様を踊ってくれるなら通っちゃいます。やっぱり古典はロシアバレリーナが良いですかね。なんと言っても上半身と腕がきれいですもんね。

とても見応えのある公演でしたね。
ごちゃごちゃ付け足されてしまうよりは、すっきりしていい演出だとは思いますが、やはりもう少しジャンの踊りは欲しいです。
クズネツォフが非常に素晴らしくて、ようやく彼の個性を最大限に発揮できる役柄での彼を観られてよかったです。
本当に「ライモンダ」は音楽と振り付けを楽しめる作品なので、
出来ればこれからも日本公演に持ってきて欲しいです。

ショコラさん、こんばんは。
私は残念ながらペレンのライモンダは観られなかったけど、こちらも観たかったです。
ヤフニュークは、タッチキン・バレエ時代の「白鳥の湖」のDVD映像でパ・ド・トロワを踊っていたときにはそれほど良いと思わなかったけど、今回は良かったです!たしかにルックスもなかなか良くて、次回もきっと王子を踊ることでしょうね。
今回、直前にオペラ座を観ていたことで、ロシアバレエのよさというのも実感しました。オペラ座は別の魅力がありますけどね。

おロシア人さん、こんばんは。
今回、おロシア人さんも本当にお疲れ様でした!おロシア人さんのマールイダンサーアンケートのおかげで、よりダンサーの皆様を身近に感じることができたし、これだけマールイを愛している人がいるんだなあ、と胸が熱くなりました。(マールイ好きのみなさま、ぜひおロシア人さんのサイトへ!(リンクしちゃっていいですか?)

たしかにシンプルなライモンダですよね。多くの皆様と一緒で私はボリショイのグリゴローヴィチ版がデフォルトになっています。でも、確かに余計なものを色々とつけるよりはシンプルな方が良いですよね!(マールイの新しい「ジゼル」はいろいろ付け加えようとしてやや失敗している感じ)。ジャンの踊りが少ない以外は、基本的には不満はないです。舞台装置も綺麗だったし。
クズネツォフのサラセン、本当に素晴らしかったですね~!思い返すだけでにやにやしちゃいます。やっぱり、もう一度観たかったな~。サラセンの音楽は特に大好きだし!
そうそう、私は「ライモンダ」って、ストーリーがつまらないとかいわれて入るけど、やっぱり2幕のアブデラフマンのシーンといい、3幕の踊りまくり大会といい、素敵な踊りと音楽が味わえるから好きです。ぜひ来年も持ってきて欲しいですね~。

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