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« パリ・オペラ座デルフィーヌ・ムッサンのドキュメンタリー「Ma Soeur L'Etoile」 | トップページ | 12/28 パリ・オペラ座「ライモンダ」3幕 POB Raymonda Act3 »

2009/01/18

12/28 パリ・オペラ座「ライモンダ」2幕

すっかり間が開いてしまいました。1幕の感想はこちら

RAYMONDA Maria Alexandrova
JEAN DE BRIENNE Alexander Volchkov
ABDERAM Stéphane Bullion
HENRIETTE Aurélia Bellet
CLEMENCE Eve Grinsztajn
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Florian Magnenet
SARRAZINS Charline Giezendanner, Marc Moreau
ESPAGNOLS Laura Hecquet,Julien Meyzindi
LE ROI Emmanuel Hoff

2幕は、まずライモンダと友人4人、おつきの人々がステージに登場すると、そこはアブデラムのテント。アブデラムが登場し、後ろにはサラセン人たちが控えている。そして後方に金色の天幕がドレープしながら広がる。このテントがゆっくりと広がっていく視覚効果のドラマティックなこと!天幕そのものが、細密な刺繍が施されているエキゾチックな美の極致で、うっとりするほどの美しさ。

「ライモンダ」という作品は2幕がクライマックスだと思う。特にアブデラムという役柄を強調したヌレエフ版はそうだ。タタール人というヌレエフの出自も関係していると思うが、殊更にヌレエフはこの役柄に思い入れを持って演出している。アブデラムの最初のソロは約1分間の間に、高度なテクニックが凝縮されている。間にアクセントを入れたポーズのあるフェッテを2回、高さのあるパ・ド・シャ、アティチュードでのアンドゥオール、続いてアン・デダンのピルエット、シソンヌ。アティチュードでのアン・レール…その間、アブデラムはずっと一点、ライモンダだけを見ている。背中を向けて横たわるセクシーなポーズも。アブデラムはここで自分の男性的な魅力をライモンダにアピールするのだ。ステファンの動きはキレがあって、強い目力もあり大変魅惑的。ライモンダは、クレマンスとアンリエット、ベルナールとベランジェを従えて舞台を横切る。アダージオとなり、ライモンダとクレマンス+アンリエットがパ・ドブレして交錯する。ベルナールとベランジェが加わって、ライモンダをアブデラムから護ろうとするが、時にはアブデラムの放つ色香に惹きつけられそうになるライモンダ。たった一人のアブレラム対ライモンダ&4人。この6人の隊形が様々に変化をして踊るアダージオは見ごたえがたっぷりある。アブデラムと向かい合うライモンダを中央にしてクレマンスとアンリエットの3人がポアントで立ち、両端をベルナールとベランジェがそれぞれサポートしている間に、女性3人が同時にドゥヴァンからパッセを通過してアティチュード・デリエールへと脚を動かすという大変難しい振付があったけど、もちろんこのシーンで一番完璧だったのはマーシャだ。エヴは一回軸じゃないほうの脚を下にポアント状態ではあるけど下ろしてしまっていた。

ライモンダはベルナールとベランジェに高々とリフトされ、そこからダイヴするようにアブデラムの腕の中に。さらに6人の踊りは変幻自在に形を変えていくが、やがてライモンダはなすがままにアブデラムに抱きかかえられ、友人たちの抵抗もむなしく、サポートつきのピルエットからフィッシュダイヴのような形で二人がポーズをしてアダージオが終了。ライモンダがアブデラムにからめ取られていくように、どうしようもなく惹かれていくのが表現されている。その中でも、あくまでも堂々とした気品を保っているのがマーシャだ。

P1020490s

アンリエットとクレマンスのヴァリエーション。この日の二人は決して悪くないのだけど、どうも印象が薄い。もちろん上手なことは上手なのだけど。その後のマーシャのライモンダが凄すぎてすっかり霞んでしまう。ライモンダのヴァリエーションもつま先をたくさん使った難しいものなのに、本当に余裕を持って軽々と。

アブデラムの2幕での2番目のヴァリエーションは、軽快な音楽に乗って、パドシャやフェッテアラベスクなどの跳躍をいれながら、ちょっとモダンダンス系の動きも入れて、さらにマチズモ的な魅力を訴える。正面を向いて見得を切り、両腕を広げてどうだ、こんなに権力を持っていていい男なのだとアピール。最後の着地での決めポーズがとてもカッコいい。ステファンは恵まれた体格、容姿でテクニックもあるのにちょっと損をしているのは、全体的に踊りが硬いこと。だけど、このヴァリエーションでは非常に軽やかで音楽とよく同化しており、十分柔軟性も発揮していた。大晦日の公演では、ここのキメでちょっとふらついてしまったのがつくづく惜しい。

アブデラムが手を叩いて合図をすると、幕の下からサラセン人たちが出てきて、まずはサラセンの群舞。それからサラセンのソロ。サラセンのソロは4日間ずっとシャルリーヌ・ジザンダネとマルク・モローという、ルグリのガラや「スーパーバレエレッスン」で日本でもお馴染みの二人。(シモン・ヴァラストロが怪我をしてしまって抜けてしまったのが残念)大きなポンポンのついた頭飾りが可愛い衣装。シャルリーヌにしてもマルクにしても、1幕から3幕までずっと何かしらの役で踊っているというのに、ここでの踊りのキレが素晴らしくて、ブラボーだった。この二人は、12月の昇進試験で二人とも昇進したのだったけど、それも納得。前方へバットマンするときのマルクの高く上がる足先、大きく反った背中、見事な柔軟性、シャルリーヌのダイナミックさ、とてもよく印象に残った。この二人は間違いなく出世するだろう。

スペインのソロ。キャスト表ではクリストフ・デュケンヌとなっていたのが、開演前のアナウンスでジュリアン・メイザンディに変更。前日もジャンをクリストフが降板していたので、心配になった。パートナーはローラ・エケ。ジュリアンももちろん注目の若手なので、出来が悪いはずがない。華やかでスタイリッシュな踊り。ローラはわりとクラシックなダンサーという印象が強いけど、こういうキャラクター性のある踊りでも、きれいなのだけどアクセントとタメがあってとっても素敵だった。その間も、ずっとライモンダから目を離そうとしないアブデラム。上手くかわそうとするライモンダ。

P1020495s

3番目のアブデラムのヴァリエーション。これは、まず無音のところにアブデラムがつま先を揃えて、90度ずつ向きを変え、それから妖しいオリエンタルな音楽に乗せて重心を深く保ちつつ、アラベスクの姿勢で回り、上半身を大きく深く前にカンブレさせ、腕を蛇のようにくねらせ、後半はジュッテやアンレールの繰り返し。もっとも粘り気があって誘惑的、セクシャルな踊りだ。ここも「ダンサーズドリーム」で多く語られていた部分だけど、重心を低く保ちつつ腕は大きく自在に動かすというモダンダンス的な要素の強い踊り。腕が柔らかいダンサー向きなのでステファンにとってはやや不利なところもあった。だけど、彼はその分演技力でカバーをしていて大変魅惑的な、美しく若い王となっていた。途中一瞬滑ったけどすぐに体勢を立て直した。

音楽が変わり速くなると、アブデラムが愛をライモンダに懸命に訴える。あの深く誘惑的な魅惑的な目線で、じっと彼女を見つめる。跪いて彼女の手を取りキスをするが、軽く拒絶される。そのときの、それまではあまり感情を表に出さず寡黙だったステファンの、深く傷ついた表情が心に突き刺さる。走り去っていくライモンダを見つめる、傷を負いながらもあきらめきれない視線とある決意。アブデラムはおもむろに立ち上がってライモンダを抱きかかえ、連れ去ろうとしたその時、ジャン・ド・ブリエンヌがタイミングよくが登場してアブデラムの腕からライモンダを奪う。二人はしばしもみ合いになり、ジャンが手袋をアブデラムに投げつける。ハンガリー王が仲裁に入り、決闘へ。

この決闘が騎馬戦なのだ。盾を持った兵士たちに支えられて、大きな馬(もちろん生身の馬ではない)が2台登場し、馬上にはそれぞれジャンとアブデラム(観客からちょっと笑い)。長い棒を持った二人は馬上でそれを交えるが、しばし戦った後、二人は馬から下りて、今度は剣を交えることに。戦いの後、アブデラムは致命傷を負う。ライモンダに熱い、しかし哀しげな視線を送りながらアブデラムは息絶え、サラセン人たちに運び去られていく。一瞬ショックを受けたようなライモンダはアブデラムのあとを追いそうになるが、ジャンの元に駆け寄る。黄金色のアブデラムのテントは折り畳まれて消え、ふたリは歓喜のパ・ド・ドゥを踊る。

こうやって大筋をたどっていくだけでも、2幕は完全にアブデラムのために用意された場面であり、見せ場はジャンよりもずっと多いことがわかる。アブデラムを踊るダンサーは、ジャン以上に演技力、存在感が必要だ。ステファンは彼自身の持つ生真面目さが前面に出ているために、色香については抑え目だったと思う。だけど、その未成熟な青さと情熱がとても眩しい。非常に若くして大きな権力を持ったために戸惑いつつも、その立場に相応しい存在になろうと背伸びする様子がなんともいとおしい。戦い一筋に生きてきたであろう彼が、一瞬の愛にすべてを賭け、散っていくという役柄は、踊る側にとっても大変やりがいのある役だろう。その上、古典のテクニック、コンテンポラリーのテクニック、華やかさ、視線を奪う見せ方が必要とされていてとても難しい役だ。ステファンは、今回、4日連続してこの役を踊り、期待されていたエトワール昇格は果たせなかったものの、強い印象を観客の心に刻み付けたはずだ。そして将来の躍進に向けて、大きな糧を得ただろう。

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