1/16 レニングラード国立バレエ −ミハイロフスキー劇場−『海賊』Le Coisaire Mikhailovsky Ballet
2009年1月16日 Bunkamura オーチャードホール
http://www.koransha.com/
[音楽]アドルフ・アダン、チェザーレ・ブーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、パーヴェル・オリデンブルグスキー
[台本]アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ、ジョゼフ・マジリエ
[改訂台本]ユーリー・スロニムスキー [振付・演出]マリウス・プティパ
[演出]ピョートル・グーゼフ [美術]シモン・ヴィルサラーゼ
[指揮]ミハイル・パブージン [管弦楽]レニングラード国立歌劇場管弦楽団
<キャスト>
コンラッド(海賊の首領) アルチョム・プハチョフ
メドーラ オクサーナ・シェスタコワ
アリ(海賊) イーゴリ・コルプ(ゲスト・ソリスト)
ギュリナーラ タチアナ・ミリツェワ
ランゲデム(奴隷商人) デニス・モロゾフ
セイード・パシャ(トルコの総督) アンドレイ・ブレクバーゼ
ビルバンド(海賊) アレクサンドル・オマール
フォルバン エレーナ・モストヴァーヤ、アンナ・ノヴォショーロワ、オリガ・セミョーノワ、ニコライ・アルジャエフ、ロマン・ペトゥホフ
アルジェリアの踊り エレーナ・モストヴァーヤ
パレスチナの踊り オリガ・セミョーノワ
クラシック・トリオ イリーナ・コシェレワ、ダリア・エリマコワ、ヴィクトリア・クテポワ
年初からの体調不良から今ひと回復していなくて、テンション低めで臨む羽目に。しかも、残念なことにチケットが売れていないようで会場は空いている。休憩時間もロビーに人は少ないしお手洗いは並ばないし。もったいない…。
良い公演だったと思う。「海賊」だと、指揮や演奏のクオリティに足を引っ張られることもないし。だから、返す返す客入りが悪いのが残念だった。客席が埋まっていないと、公演が良くても拍手の数が少ない気がしてしまって盛り上がらないところがあるのだ。
シェスタコワは今日も調子が良かったと思う。いつもながら派手さはやっぱりないんだけど、たおやかでラインが伸びやかで綺麗だった。2幕のパ・ド・トロワでのフェッテでは絶好調で、ダブルを織り交ぜていたし、後半からは90度ずつスポッティングする位置を変えていて(つまり顔を向ける位置を90度ずつずらしていく)回転にしていた。場所の移動も軸のぶれもなく、ぴたりと音楽にあわせて回りきった。ここのバレエ団の「海賊」の1幕の衣装はちょっと微妙で、メドーラはピンクのふんわりしたドレスになぜか紺色のボレロがついていていまひとつセンスが良くない。それだけに、3幕の花園シーンでのクラシックチュチュ姿に気品があり、素敵に見えるという効用があるのだけど。花園のシーンでのシェスタスコワのメドーラは本当に夢のようにきれいで、思わずこちらまで夢に誘われてしまいそう。まさにお手本のような端正さ。
ギュリナーラ役のミリツェワも、「ジゼル」でのいまいちぶりをすっかり帳消しにする好調ぶりで、とてもキラキラしていて美しかった。可愛くてちょっと色っぽくて妹キャラっぽいギュリナーラを好演。メドーラ役とギュリナーラ役が良いと満足度は結構高い。
コンラッドはプハチョフ。頭の薄さを、バンダナで上手く隠していて、プロポーションと脚のラインの美しさが際立っていたし、正確で安定したサポートで作品の要となっていた。でもコンラッドってサポートが多いから主人公なのに今ひとつ目立たない役なのよね。
もったいないのが、この「海賊」ではランケデムの見せ場が今ひとつ少ないこと。モロゾフも頑張っていて、ヴァリエーションでは高いパ・ド・シャをたくさん見せてくれたし、ファイブフォーティだって入れていたのに、キャラクター設定が今ひとつ濃くないというか目立たないのだ。演技が薄いのか愛嬌が足りないのか、演出の問題なのか…。その分、ビルバントのオマールのほうがずっと存在感があった。彼はなぜか人を惹き付ける華があるのだ。「ジゼル」のヒラリオンも良かったし。ここでも悪役ではあるんだけど、なぜか憎めない魅力があった。特に終盤のコンラッドとビルバントの対決シーンがすごく迫力があるのにびっくり。二人とも剣を持っているのに、派手に飛び回ったりして、思わぬ見せ場が見られてちょっと得した気分。
さて、もちろんこの公演は、コールプのアリを観たいがためにチケットを取ったのだ。コールプの全幕でのアリを観るのは初めてで。全幕ということもあるので、思った以上に控えめで気品があるアリだったと思う。コールプだから、もっとオレ様で偉そうなアリかと思いきや。でも、赤いハーレムパンツ、ゴージャスな髪飾りや腕輪できらびやかに飾り立てていて、なんで奴隷なのにこんなに派手なの?もしかして彼は本当は王様でこれは世を忍ぶ仮の姿かしら?なんて思わせてくる。パ・ド・トロワが終わった後で、妖しくクネっと身をくねらせてセクシー横すわりしているお姿にはちょっとウケた。なんでわざわざこんなポーズを取るのかって突っ込みを入れたくなっちゃう。そう、こういう彼を期待していたのよねって。このアリだったら、あの目の周り黒いメイクも全然ありというか、これくらいやってくれないとって思う。恭順な奴隷のはずだしそういう演技をしているんだけど、やけに存在感が強烈で不穏な感じの、摩訶不思議な生き物がいるな~というのが印象。
いかん、肝心のコールプの踊りについて書くのを忘れそうになった。ちょっと抑え目かな、と思わないこともなかったけど、やはりこの人の踊りは突出して美しい。アリのヴァリエーションで最初にとるアティチュードのポーズ、その完璧なまでの美しさ。足先が高く上がる。アラベスクでも、ラインがとても長い。マネージュの時のきれいに伸びた股関節と脚。しなやかな着地。伸びやかなグラン・テカールとトゥール・ザン・レールの連続。コーダのピルエット・ア・ラ・スコンドでは、ア・ラ・スゴンドに上げた脚がとても高い位置でぴたっと決まっているので、すごく端正で華麗に見える。しなりすぎ、と思えるほどしなやかなところが、かえってクセがあるように見えるのがポイント。ちょっと面白いけど素敵なアリで、それだけに、この役の出番の少なさが物足りなくなってしまう。
クラシック・トリオ(オダリスク)はやっぱりコシェレワの鷹揚でこれぞ古典バレエ、という美しさが際立っていた。金髪でちょっとミリツェワに似ているのがダリア・エリマコワなのね。花園のコール・ドもとても優雅できれいだったと思う。
コールプのアリとオマールのビルバント以外の男性陣が薄味なのがやや物足りない気もするけど、本当に質の高い公演だった。それだけに、会場が空いていたのが残念。やっぱり平日6時半公演ってなかなか行きづらいってところなのかな。それも観づらく音が良くないオーチャードホールだったというのが。
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コメント
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海賊はあらすじが今一つまとまりのない作品だから、人気がないのかしら?
でも、踊りは盛りだくさんで楽しい演目ですよね。
男性が男らしさをアピールして踊るのも、バレエ作品の中では珍しいから素敵に見えるし。シェスタコワさんはたおやかな踊りや美しいポール・ド・ブラもさることながら、力みのない手が美しくて、手ばっかりみてしまいました。
naomiさんとお話し出来たのも楽しかったです。
投稿: クロード | 2009/01/17 13:32
naomiさん
大変に失礼いたしました。最初にコメントした時に、わざわざご親切な返事を下さったのですね!たった今、知りました。いろいろ調べて下さり、本当にありがとうございました。
私し40年といっても、途中はかなり音楽の世界に傾いてましたが。
ニジンスキー・ガラはそんなに入手が難しいんですね、納得しました。でもミュンヘンでの「オネーギン」好いですね!
私、ネットがダメなので、チケットはHIS音楽鑑賞デスクなんですよ。だから、たっぷり手数料取られてます。
でも、最後と思ってるので…。
本当にありがとうございました。感謝いたします。
投稿: おおやま雅ひこ | 2009/01/17 21:45
naomiさん、
わたしが見た日のコルプさまは勢いがいまいちでマネージュも最後一回はしょってました。
存在感は見事でしたけど。
そう、「まか不思議な生き物」ですね、コルプさまは!
投稿: ずず | 2009/01/18 22:05
クロードさん、こんばんは。お返事が遅れてごめんなさい!
『海賊』は確かに、バレエでは珍しく男性ダンサーがたくさん出る作品ですよね。このバレエ団の男性群舞は迫力があって、こういうところはさすがロシア!って思います。シェスタコワは本当に表現の丁寧なバレリーナで手の使い方も綺麗ですよね~。
私もクロードさんとお話ができて嬉しかったです。次はハンブルク・バレエかしら?
投稿: naomi | 2009/01/19 21:06
おおやま雅ひこさん、こんばんは。
お返事が遅くなり申し訳ありません!
そんな~最後だなんて思わないで思いっきり海外鑑賞を楽しんでくださいね。ラカッラのタチアーナはとても良いようですよ♪
私も老後の楽しみでいろいろと観て回りたいと思いますが、ちゃんと年金や蓄えがあるかどうかが不安なこのごろです。
投稿: naomi | 2009/01/19 21:41
ずずさん、こんばんは。
シェスタコワファンのずずさんが、この日ではなく前の日に行かれたのを意外に思っていたんですよ~。
コルプは時々お疲れモードの時がありますよね。
でも、摩訶不思議な存在感って、判っていただけたかしら?明日の「奇才コルプの世界」が楽しみですね♪
投稿: naomi | 2009/01/19 21:59
naomiさん
“励まし″て下さり、ありがとうございます。
ラカッラはミュンヘンの本拠地ですか。実は、教えていただいたミュンヘンのHPに携帯(初めての体験)で見てみたのですが。7月はツアーを予定しているように思いました。少しのつたないドイツ語を頼りにして(笑い)。
皆さんのコメント、楽しく読まさせてもらってます。クラシックバレリーナは有名な方しか知らないので、あっそう!?いろいろ素晴らしいダンサーがいるんだ!と。コメントを寄せる皆さんの豊かな感性と情熱に温かいものを感じてます。
失業中でしたが、ハンブルク休暇を条件に雇ってもらう仕事を見つけました。大恐慌でもなければ、行けると思います。
投稿: おおやま雅ひこ | 2009/01/22 16:04
おおやま雅ひこさん、こんばんは。
すみません!ちゃんと観ていなかったようで、たしかにミュンヘン・バレエの「オネーギン」はスペイン方面へのツアーでした。
シュツットガルト・バレエはシュツットガルトにいます。「じゃじゃ馬ならし」「オルフェオとエウリディーチェ」などをやっています。でもシュツットガルトはハンブルクからはちょっと遠いんですよね。
http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/spielplan/uebersicht_0809.php
もう少し近いところだと、ドレスデン・バレエが7月5日、9日に「ラ・バヤデール」を上演しているようです
投稿: naomi | 2009/01/23 01:50