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2008/12/14

シュツットガルト・バレエ「オネーギン」Stuttgart Ballet's Onegin覚書その2 -イノセンスの死

11月28日の初日の感想も全然語り足りないのですが、どんどん忘れていってしまうので、また備忘録代わりに書いていこうと思います。


11/29
Onegin (Gastspiel Tokyo, Japan)
オネーギン:ジェイソン・レイリー
レンスキー:マリイン・ラドメイカー
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:スー・ジン・カン
オリガ:アンナ・オサチェンコ
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ダミアーノ・ペテネッラ

Onegin Jason Reilly
Lenski Marijn Rademaker
Tatjana Sue Jin Kang
Olga Anna Osadcenko
Gremin Damiano Pettenella

前日(28日)のフリーデマン・フォーゲルが演じたレンスキーについて、まだ何も書いていませんでした。印象としては、フリーデマンの踊りが非常に安定していて、とてもしっかりしたものになっていること。踊りから受ける印象もあり、フリーデマンによるレンスキーは、地方都市に暮らす詩人ではあっても、朴訥ではなく、どこか世慣れています。都会生活を経験したことがあるのかもしれません。そして非常にプライドが高い。だからオネーギンがオリガにちょっかいを出すのも許せないし、彼女が一瞬でもぐらっとオネーギンに傾いたことも許せない。決闘を申し込むシーンで、一番あからさまに怒りを爆発させ、手袋でオネーギンを激しくぶっていたのが彼のレンスキーでした。と同時に、とても自己愛が強いレンスキーなのです。同じく自己愛が強いオネーギンと激しくぶつかってしまうのも、避けられないことだったのです。決闘を前にしてのソロは、とても美しく技術的にも高度だったのですが、同時にナルシズムを感じさせました。成り行きで自分の婚約者にちょっかいを出した男と決闘をしなくてはならなくなった自分はかわいそうという自己憐憫があふれており、同時に、このように死地に赴いていなければならない自分は、なんてロマンティックな存在なのかという詩人としてのナルシズムです。これくらいの、一歩間違えたら鼻持ちならないまでのプライドを持ったレンスキーというのも、青臭くてそれらしい感じです。

一方、29日のマリイン・ラドメーカーは、理想主義に生きる若い詩人としてのレンスキーです。非常に潔癖で、ピュアで頑固、気高い魂の持ち主です。彼の死は、理想主義の敗北であると共に、イノセンスの死です。レンスキーを殺すことによって、オネーギンは自分の中にも存在していた純真さをも殺すことになってしまい、その後の人生は坂道を転げ落ちるかのように薄汚れてしまったものに成り果てるのです。ジェイソン・ライリーのオネーギンの3幕での老け方は、彼のその後の人生が苦しみに満たされたものであったことを体現していました。

マリイン・ラドメーカーは、1幕では穏やかな微笑を浮かべて、一点の曇りもないような幸福な恋人として登場します。金髪を輝かせた彼は、どこまでも真っ白で、暖かく、陽の光を浴びて輝いているかのようです。だからこそ、オリガの裏切り(というほどのものではないのですが)が許せなかったし、オリガの姉である理知的なタチヤーナが傷つけられたことも許せなかった。こんなことは彼の人生の中にあってはならないのです。そしてその瞬間から死に至るまで、急速に彼の人生は苦悩に満ちたものになります。オネーギン、そしてオリガに向けた怒りが、青い炎となって立ち上っていることを見ることができました。穏やかに見えたレンスキーの中には、彼自身も気がつかなかった激しさが存在していたのです。彼は自分の理想を貫くために、オネーギンと戦うことを選びます。

鼻持ちならない世間ずれした都会の男と、汚れを一切知らなかった詩人との決闘。その前にマリインが見せるソロは、急に今までの完璧な人生が崩れ、自分の中の世界が崩壊していく様を感じ取って心乱れていく様子が現れています。青い炎はますます燃え上がります。そして心の乱れを落ち着かせ、一切の迷いを捨て去って、強い意志を持って彼は決闘に臨みます。その理想主義に彼は殉じるのです。すがり寄るオリガを冷たいほどまでに彼は強く振りほどく一方、タチヤーナには今まで世話になった恩義と、敬意を込めて優しく手にキスをします。タチヤーナのような、やはり純真で夢見がちな少女というのは、彼にとって理想的な存在だったのかもしれません。だからこそ、オネーギンへの激しい怒りを感じたのです。彼は、自分の死をもって、オネーギンに自身の愚かさを思い知らしめるという思いがあったように見えました。

レンスキーを倒したオネーギンを演じたジェイソン・レイリーは、取り返しのつかないことをしてしまった、すなわち自分の中の純真さをあやめてしまうと共に、タチヤーナとオリガの姉妹を深く傷つけてしまったことに気がつき、激しくうろたえます。ジェイソン・レイリーは3人のオネーギンの中で、オネーギンという人物を一番生身の人間らしく、共感できる人物として演じていました。

(続く、かもしれません)

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