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2008/12/17

「プロフェッショナル 仕事の流儀」バレエダンサー 岩田守弘 Morihiro Iwata

http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/081209/index.html

本放送がボリショイの「明るい小川」の公演の日だったので見逃してしまったけど、再放送で観ることができました。ボリショイの舞台裏や、ダンサーの日常もうかがい知ることができて、とっても面白く観ることができました。

岩田さんがまれに見るほどの素晴らしいダンサーであることは、先日の「明るい小川」のアコーディオン弾きや「白鳥の湖」の道化(本当にプロフェッショナルの道化、という感じで、心を込めて演じているのが伝わってきました)、さらには前回の来日公演での「ラ・バヤデール」のブロンズ・アイドルを観ていて十分わかっていたつもりでした。そして、先日発売された本「ボリショイ・バレエ その伝統と日本人ソリスト岩田守弘」で、彼の人となりや今までたどってきた道、さらにはバレエへの思いいれも伝わってきていました。でも、番組を見て、実際に話したり、リハーサルに臨んだり、舞台に上がっている岩田さんを見て、改めてこの人は本当にすごい人だと実感しました。

スタジオで実際に岩田さんは、アントルラッセやジュッテ、トゥール・ザン・レール、さらにはピルエット・ア・ラ・スゴンドを披露しますが、とにかく正確なテクニックで、着地はぴたっと五番に入るし、プリエがとてもよく効いています。茂木健一郎さんが、岩田さんの上半身の美しさに感心していましたが、その上半身に着目するところ、茂木さんも只者ではないと思いました。上半身の動きがとても基本に忠実だから、バロンが効いていて、高く、上へ上へと跳べるんですね。その上でロシアバレエ的な美を表現しています。写真で、岩田さんが大きく開脚ジャンプをしている「くるみ割り人形」の中国の踊りが紹介されますが、このような大きなジャンプは岩田さんに言わせると、「難しくない」のだそうです。大事なのは小さなジャンプなのだと。アントルシャ・カトル、シス、さらにはアントルシャ・ユイットまで見せてくれました。すごい~。いちいち着地がお手本のようにきれいな5番なのが気持ちよいです。

ボリショイのスタジオでのバーレッスンの様子が少し流れますが、長身のウヴァーロフと並ぶと、本当に岩田さんが小柄なのがよくわかります。

そんな岩田さんですが、やっとボリショイに入団してもまったく役が与えられず、やっと与えられたのが「ファラオの娘」の着ぐるみの猿の役。バレエ学校の生徒に与えるような役なのだそうで、ソリストの岩田さんが踊るような役ではなかったのです。そういえば、前回の来日の「ファラオの娘」でも岩田さんの猿を観ました。登場時間は1分少々ですが、すごく印象的だったのです。そう、そんな小さな役でも、岩田さんは新聞の批評でも絶賛されるほどの演技を見せ、評価につながったのです。どんな小さな役でも、一生懸命踊りきること、それが大事なんですね。

「人間って、いい時は結果が出るけど成長しない。悪い時に、成長していると思う。そういうのをへてきた人が、本当に感動させられる踊りをする人。自分もそう生きたい」 「のぼせあがるな」という言葉に重みがあります。これって、バレエに限らず、他の仕事にも当てはまる話だと思います。実は私も今仕事ですごい重圧があって、なかなかうまくいかなくて苦しい時期だったりするのですが、この岩田さんの言葉を聞くと、勇気が出ます。

舞台の上では何を考えていますか、と聞かれ、何も考えていないようじゃないと踊れないと岩田さんは言いましたが、でも実際には「神様、助けて!」と思うこともあるようです。ボリショイはただの劇場ではなくて、生き物、特別な場所なのです。ボリショイの舞台に立って13年。今でも舞台に立つことは不安で怖いそうです。それは、舞台ではその人のすべてが見え、丸裸になるから。

番組の中で、岩田さんが急遽代役として、長い距離をバスに乗って、トワイラ・サープの「イン・ジ・アッパー・ルーム」を踊るところが登場します。この作品、私はABTで観たことがあるのですが、1時間ほどの長さで、ずっとハイテンションで踊りっぱなし、ダンサーのはあはあする息が聞こえてくるようなダンスなのです。舞台袖の様子なども出てきますが、実際に踊るのがすごく大変なようで、岩田さんも舞台袖で倒れこんでしまうほどです。若い女性ダンサーが、脚が痙攣して泣き出すようなシーンもありました。やっぱり過酷な仕事なのですね。

ボリショイの中での競争も激しくて、一つの役を10人以上で奪い合うことも。毎月、その月のどの作品に誰が出演するかが掲示され、それを見て喜ぶ人もいるわけです(このシーンに、アルテム・シュプレフスキーがちょっと映っていました)

岩田さんは、ラトマンスキー芸術監督に呼ばれて、新しい役がついたことを知らされます。「明るい小川」のアコーディオン弾きです。どうやって役作りをしていくかを追っていって、その様子が興味深いです。ちょっとワルで、だけどコミカルで、演技の要素も強い役。普段のレッスンが終わっても居残って、役作りに取り掛かります。その成果もあり、いよいよラトマンスキーに踊って見せたところ、少し技術的なことを言われただけで、彼の役作りは評価されました。実際の舞台での岩田さんのアコーディオン弾きの演技も、ちょっぴりセクシーでユーモラスで、すごく面白かったです。

38歳と一般的には肉体の衰えが始まる年齢でも、岩田さんはそれを乗り越え、人間性、表現を熟させることで、本物のバレエと呼べるものにしていこうとしています。とはいっても、彼の踊りからはまだ全然衰えというものが見えないのがすごいところなのですが。こんなにもすごい人が、「のぼせあがるな」とあくまでも謙虚に、プロフェッショナルとして人一倍努力を続けて、ロシアで頑張っていると思うと胸が熱くなります。

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