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2008年12月

2008/12/26

良いお年を♪

今晩から一月一日までパリに行ってきます。

ノートパソコンを持っていないのでその間更新ができません。ソフトバンクは海外パケット代高いし。

27日ベジャールプロ、28、29、30、31日がライモンダです。背のすごく高い日本人のおっさんと一緒の日本人がいたら私かもしれません(笑)。

年賀状は百枚も買ったのに一枚も書けませんでした。日本に帰ってから書きます。

では皆様良いお年を!

12/23、24 井上バレエ団「くるみ割り人形」

井上バレエ団12月公演『くるみ割人形』(全2幕)

芸術監督・振付:関直人
美術・衣装:ピーター・ファーマー

クララ:鳥海奈月(23日)、鈴木姫菜(24日)
フリッツ:加藤静流
ドロッセルマイヤー:堀 登
雪の女王:小高絵美子(23日)、西川知佳子(24日)
雪の王子:小林洋壱(東京シティ・バレエ団)
花のワルツ:西川知佳子(23日)、田中りな(24日)、中尾充宏(小林紀子バレエシアター)
王子:へスス・パストール
金平糖の精:島田衣子(23日)、宮嵜万央里(24日)

音楽監督・指揮:堤俊作
演奏:ロイヤルメトロポリタン管弦楽団
(2008年12月23・24日 文京シビックホール大ホール)

P1020227s

去年も観た井上バレエ団の「くるみ割り人形」、今年は元ABT(そしてマシュー・ボーンの「白鳥の湖」のザ・スワン/ザ・ストレンジャー)のヘスス・パストールが出演するということでまた観に行くことに。しかし、23日はマチネに新国立劇場の「シンデレラ」を観てから春日への移動のため開演に間に合わず、20分遅れで1幕のアルルカンの踊りから、24日は6時開演なので仕事を終えてからだと間に合わないので2幕からと途中から観ることになってしまって申し訳ない感じ。

井上バレエ団の「くるみ割り人形」は、ピーター・ファーマーの美術が温かみがあって、とても独特なタッチを加えている。花のワルツの衣装をターコイズブルーにするという発想はなかなか他では思いつかないのでは?ドロッセルマイヤーの堀 登さんがものすごい存在感でひきつけられる。堀さんは、27,28日は新国立劇場の「シンデレラ」のアグリーシスターズで出演と大忙しの模様。フリッツ役、去年はマッシモ・アクリの息子さんのアクリ瑠嘉くんが踊っていたけど、今年も、とても美少年で踊りも上手い加藤静流くん。

このバレエ団のダンサーはみんなとてもおっとりとした雰囲気で、群舞はものすごく揃っているわけではないけど、足音をまったくさせないのが素晴らしい。全体的に小柄なダンサーが多いけど、とても品があって、かもし出す雰囲気がとても良い。ゲストダンサーの小林洋壱さんは長身で端正だし、中尾充宏さんは小林紀子バレエシアターでは王子は踊らないのに、ここでは気品があって丁寧な踊りが王子様的だった。それから、葦笛の踊りがすごく美しくて心地良い踊りで、中でも真ん中を踊っていた田中りなさんが素敵だった。

久しぶりに観るへススは、以前よりもちょっとむっちりしてしまっていて、小林洋壱さんの日本人離れしたすらりとしたプロポーションと比較するとちょっと太くて残念な感じ。もともと白タイツ王子系のダンサーではなく、ABTではアブレラクマンやヒラリオン、レスコーなどキャラクテールがメーンだったので、くるみの王子を踊ると聞いてびっくりしたほどだった。踊りの方は、パートナーに対する気遣いが感じられていて、(本来あまり得意ではないはずの)サポートも丁寧だった。彼の魅力であるものすごい柔らかさ、しなやかさは健在。プリエがすごく効いている踊りで、上半身もとても柔らかいしつま先もきれい(でも、最近古典踊っていないでしょう、ってわかっちゃうけど)。とにかく笑顔全開で、楽しそうに踊っているのを観ると幸せな気分が伝わってくる。

23日の金平糖の精を踊った島田衣子さんが、もう~なんと言っていいのかわからないほど素晴らしかった。小柄でほっそりとしているし、顔立ちだって派手な方ではないのに、プリマオーラがすごくて、キラキラしていた。たとえば今の新国立劇場には、こういうタイプのバレリーナが不足しているのだと思う。宮内真理子さんが引退してしまったものだから。バレエ団の持ち味である鷹揚さと気品があるとともに、音楽性も素晴らしい。さらに、コーダのフェッテの正確ですばやい回転(トリプルも入っていたと思う)には驚かされた。24日の宮嵜万央里さんは去年も金平糖の精で観たのだけど、やはりおっとりとして上品なタイプ。ただ、ヴァリエーションでの細かい足捌きが苦手そうなのと、コーダの後半では疲れが見えてしまったのがちょっと残念なところ。でも、伸び代を感じさせるダンサーではある。

そして恒例の嬉しいサービスとして、終演後、オーケストラがクリスマスキャロルのメドレーを奏で、出演ダンサーたちほぼ全員が蝋燭を手に踊ってくれる上、王子がソロを見せてくれるという趣向がある。クリスマスだ、という幸せな気分をもらって帰ることができる心温まる公演だった。

それと、パンフレットの裏表紙に来年の公演の案内が。

2009年7月19日、20日文京シビックホール ピーター・ファーマー美術、関直人振付の「シンデレラ」(プロコフィエフ)
ゲストとして、パリ・オペラ座のエマニュエル・ティボーが出演するとあります。
今年の7月公演でもティボーくんはゲスト出演しているし、昨年ティアゴ・ソアレスの代役で「眠れる森の美女」に出演して以来、すっかり彼は井上バレエ団に気に入られたようですね。

2008/12/25

英ガーディアン紙による、今年のダンス公演の写真総括

英ガーディアン紙が、今年の英国におけるダンス公演を写真で振り返る特集をしています。解説をするのも野暮なので、まずは見てみて下さいね。

http://www.guardian.co.uk/stage/gallery/2008/dec/24/ballet-dance-bausch-binoche-in-pictures?picture=341020803

ピナ・バウシュとヴッタパール舞踊団の「春の祭典」、NYCBの「ウェストサイドストーリー組曲」、アクラム・カーンとジュリエット・ビノシュによる「In-i」(来年来日公演がありますね)、クラウド・ゲイト・シアター(こちらも来日します)、ニューアドベンチャーズの「ドリアン・グレイ」、グルジア国立バレエの「ジゼル(もちろん、ニーナ・アナニアシヴィリのジゼル)」、クリストファー・ウィールダンのMorphoses、バットシェバ舞踊団、マリインスキー・バレエ(ゼレンスキーの「アポロ」)、そして最後を締めくくるのはロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」。バラエティに富んでいますね。

どれも、瞬間を美しく切り取った、素敵な写真ばかりです。

マラーホフの「眠り」メッセージ/パリ・オペラ座「ライモンダ」またちょっとキャスト変更

NBSのサイトに、1月の東京バレエ団「眠れる森の美女」マラーホフ版に出演のウラジーミル・マラーホフのコメントが載っていました。彼が演出し、今回出演もするカラボスという役についても語っています。色っぽいマラーホフのカラボスの写真付です。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/2008/12/post-87.html

「眠れる森の美女」マラーホフ版は観に行きたいんですが、なんかばたばたしているうちに未だにチケットを買っていないんですよね。

今日はクリスマスですね。皆様、素敵な一日を過ごされていますか?昨日、今日と井上バレエ団の「くるみ割り人形」に行ってきました。終わったあとにも、クリスマスキャロルの演奏という素敵な演出があって楽しかったです。久しぶりにヘスス・パストールの元気な姿を観られたのも良かったです。ちょっとムッチリしちゃっていましたが。島田衣子さんのプリマオーラがとっても素敵でした。感想を書こうと思ったのですが、バタバタしちゃってとりあえず今日は書けませんでした。また後ほど!(そして、明日はクリスマスだというのに、会社の忘年会なんですよね。ひどいなあ)

(と、新国立劇場のホワイエのクリスマスツリーでごまかします)
P1020225s

そのバタバタの原因なのですが、金曜日の夜出発でパリに行ってくるのです。しかしあさって出発というのにまったく準備ができておらず、クリスマスイヴというのに(サンフランシスコ・バレエの「くるみ」のDVDをかけながら)必死に荷物を詰めていました。今回は、昨年末に引き続き、バレエを普段は全然観ない家人を連れて行くのです。飽きさせないように、別プログラムを観て貰うことにしました。(「ライモンダ」4連発は初心者には気の毒なので) 私は行けないバスティーユでの30日のヌーヴェル・アン公演に行かせます(笑)

というわけで、そのオペラ座の「ライモンダ」ですが、24日現在でまたキャスト変更が出ています。ベランジェにキャスティングされていたシモン・ヴァラストロが怪我をしてしまったようで、代役はジョシュア・オファルトです。シモンくん好きなので残念です。大きな怪我ではありませんように。カール・パケットはインフルエンザに罹ってしまったけど、なんとか復活したようですね(ダンソマニ情報)。

カール・パケットは「ライモンダ」のジャン・ド・ブリエンヌとアブデラム、「ベジャールへのオマージュ」の「火の鳥」での火の鳥とフェニックス、さらに「ボレロ」のリズムと大活躍です。カールくんなしでは、多分オペラ座は成り立たないでしょうね。

http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Distribution.asp?IdS=549

27 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Dorothée Gilbert
JEAN DE BRIENNE Christophe Duquenne
ABDERAM Jérémie Bélingard
HENRIETTE Mélanie Hurel
CLEMENCE Muriel Zusperreguy
BERANGER Emmanuel Thibault
BERNARD Fabien Révillion
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Charline Giezendanner, Marc Moreau
ESPAGNOLS Sarah Kora Dayanova, Gil Isoart
LE ROI Emmanuel Hoff


28 décembre 2008 à 14h30
RAYMONDA Maria Alexandrova
JEAN DE BRIENNE Alexander Volchkov
ABDERAM Stéphane Bullion
HENRIETTE Aurélia Bellet
CLEMENCE Eve Grinsztajn
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Florian Magnenet
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Charline Giezendanner, Marc Moreau
ESPAGNOLS Laura Hecquet, Christophe Duquenne
LE ROI Emmanuel Hoff


29 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Emilie Cozette
JEAN DE BRIENNE Karl Paquette
ABDERAM Yann Bridard
HENRIETTE Myriam Ould Braham
CLEMENCE Mathilde Froustey
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Gil Isoart
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Ghyslaine Reichert, Marc Moreau
ESPAGNOLS Sarah Kora Dayanova, Julien Meyzindi
LE ROI Richard Wilk


30 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Maria Alexandrova
JEAN DE BRIENNE Alexander Volchkov
ABDERAM Stéphane Bullion
HENRIETTE Aurélia Bellet
CLEMENCE Eve Grinsztajn
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Florian Magnenet
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Charline Giezendanner, Marc Moreau
ESPAGNOLS Laura Hecquet, Christophe Duquenne
LE ROI Emmanuel Hoff

2008/12/24

12/23マチネ 新国立劇場「シンデレラ」Frederick Ashton's Cinderella

そういうわけで、何だかんだ言って「シンデレラ」3回目に行って来ました。というか、マイレン・トレウバエフのファンの私にとってはこれが最重要公演だったわけなのですが。マイレンが主演の公演は、今シーズンこれしかないわけですし。(初日もアクシデントにより2幕後半からは主役を踊りましたけどね)

「シンデレラ」ってやっぱりとてもいい作品だと思うし、新国立劇場のカラーにもとても合っているし、全体的に言ってもとても良い公演だと思いました。日ごろからよく新国立劇場について苦言を言っていたり書いている私ですが、やはり、期待しているからこその苦言となるわけです。本当にもういや、と思ったらチケットを持っていたとしても売ってしまうなりして観に行かなくなるわけだし。

さいとうさんは、昨日に引き続いての主演。さすがに後半の方ではちょっと疲れが見えて、やや踊りが小さくなってしまった印象はあったけれども、ミスもほとんどなくて、とても安定していました。ソワレを観た友達の話でも、好調だったということなので、本当に良かったです。こういう大変な経験が、大きな糧になりそうですね。可愛らしくて健気なシンデレラ。ポアントの軌跡もきれいだったし、アシュトンのパをうまく軽やかにこなしていました。難しそうなことを、そんなに難しくないように踊れているところがたいしたものです。

そしてマイレン!なんて素敵な王子様なのでしょう。といっても、随所にマイレンらしいちょっと皮肉さが出てくるところがまたたまらないわけなのですが。包容力があって、紳士的で、とても頼りがいがある大人の高貴なプリンスです。踊りの方は絶好調!柔らかい跳躍、足音はしないし、着地はきれいな五番だし、指先に至るまで動きが美しい。(でも、王子役を踊るときには結婚指環は外しましょう)よく観るとけっこうユーモラスなところがあって、3幕でアグリーシスターズにガラスの靴を履かせるよう靴屋に命令するところや、姉の方への態度など、ちょっとエラそうでした。サポートも非常に安定感がありました。マイレンは初主役の「くるみ割り人形」の時から、新国立での主演はほとんど観ているのですが、前からこんなに安定していたっけ?と思うほど。もう惚れ惚れです。今回は急な代役でもいい踊りを見せたし、ぜひ来シーズンはもっと主役にキャスティングして欲しいです。唯一の男性ファーストソリストですし。

この回は、ほとんどセカンドキャストだったので、それを観るのも楽しかったです。四季の精はファーストキャストの方が良いと思いましたが、冬の精の厚木さん、夏の精の湯川さんはとてもよかったと思います。特に夏の精は、夏の気だるい感じがドラマティックに表現できていました。仙女の本島さんはペケでした。パについていくのがやっとで、たとえばヴァリエーションでも、音に遅れてしまうので全然パンシェできていないし、猫背になるし、何しろ複雑なパが踊れていないので顔にも"必死”って書いてあるように表情が硬く、仙女が持つべき暖かさ、優しさ、包容力が感じられなかったです。川村さんの美しさ、音楽性やキラキラ感が懐かしく思われました。

アグリーシスターズの保坂アントン慶さんは、マッシモ・アクリさんほどのアクはありませんが、アクリさんより美人な姉だけに、ちょっと色っぽくてカマっぽくて(女の役ですが)違った面白さがありました。高木さんも、たぶん初役だと思いますが、ちょっともじもじして内気な妹をかわいく演じていたと思います。ファーストキャストの井口さん含め、新国立のアグリーシスターズは演技が上手くていいですね。カーテンコールでのアントンさんも、とっても面白かった!

道化のバリノフくんも、やわらかくて滞空時間の長い跳躍が好調だったし、キャラクターが道化にとても向いている感じです。前より体重も絞り込んだ感じで少し細くなったと思います。

コール・ドの星の精たちがとても揃っていて綺麗でした。多分このシーンでのコール・ドのリーダーは大和雅美さんだと思うのですが、彼女が一番バッターで勢いよく入っていくところから、統率がとてもよく取れています。また、星のキラキラをイメージした振付が可愛いんですよね。

新国立劇場バレエ団の美点がとてもよく出ている作品なので、版権の問題もあるかと思いますが、大事なレパートリーとして大切にしてほしいと思いました。

2幕では、シンデレラに惹かれた王子が、人気のない舞踏会場でシンデレラの姿を追い求めます。そこへ、パ・ドブレをしながらシンデレラが姿を現します。嬉しさを隠せない王子と、表情を輝かせるシンデレラ。このふたりきりのアダージオというシチュエーションと少し寂寥感がありながらもドラマティックな音楽が、深い感動を呼びます。やっと求めていた人に出会えたね、という。それが、ラストでの後姿の二人に昇華していて、きらきら光る星屑とともに感動が頂点に達します。御伽噺と馬鹿にできない、素晴らしい作品だと思います、アシュトンの「シンデレラ」は。また近いうちに観たいです。

【シンデレラ】
 さいとう美帆

【王子】
 マイレン・トレウバエフ

【義理の姉たち】
 保坂アントン慶 高木裕次

【仙女】
 本島美和

【父親】
 澤田展生

【春の精】
 丸尾孝子

【夏の精】
 湯川麻美子

【秋の精】
 高橋有里

【冬の精】
 厚木三杏

【道化】
 グリゴリー・バリノフ

【ナポレオン】
 八幡顕光

【ウェリントン】
 市川 透

【王子の友人】
 陳 秀介 冨川祐樹 江本 拓 中村 誠

【振 付】フレデリック・アシュトン
【作 曲】セルゲイ・プロコフィエフ
【監修・演出】ウエンディ・エリス・サムス
【指 揮】デヴィッド・ガルフォース

2008/12/23

ミラノ・スカラ座の「ラ・バヤデール」La Bayadere of Teatro alla Scala

12月11日のボリショイ・バレエの「ドン・キホーテ」を足の甲の怪我でキャンセルしたスヴェトラーナ・ザハロワ。心配されていましたが、12月17日が初日だった、ミラノ・スカラ座の「ラ・バヤデール」には無事出演したようです。

http://www.teatroallascala.org/en/stagioni/2008_2009/opera-e-balletto/la_bayadere.html

ソロル役にロベルト・ボッレ、ガムザッティには、ロイヤルのマリアネラ・ヌニェスという超豪華版のキャスト。3回分の公演チケットはインターネットでは2分で売り切れたようです。

12月28日、30日、31日にはポリーナ・セミオノワとデニス・マトヴィエンコが客演して上演されます。スカラ座の「ラ・バヤデール」はマカロワ版です。

ballet.co.ukのフォーラムには公演のレポート、Flikrにカーテンコールの写真などが載っています。ロベルトは珍しくひげを生やしていますね。

なお、ロベルト・ボッレの新しい写真集ですが、彼のオフィシャルサイトから購入することができます。今なら直筆サインも入っているそうです。日本へも発送してくれるとのことです。

http://www.robertobolle.com/eng/book.php

*******

「ラ・バヤデール」つながりの話です。カルロス・アコスタのオフィシャルサイトによると、ロイヤル・バレエでカルロス・アコスタがソロル、タマラ・ロホがニキヤ、そしてマリアネラ・ヌニェスがガムザッティを踊った映像が2009年1月13日、15日、19日に収録され、DECCAからDVD化されるとのことです。
http://www.carlosacosta.com/

さらに、タマラ・ロホとアコスタの「ロミオとジュリエット」(これはテレビで放映されたのを見ましたが素晴らしかったです)が2009年春にDVDが発売、そして同じペアによる「マノン」(10月24日と11月1日の公演)も収録され、DVD化の予定とのこと。

12/22 新国立劇場「シンデレラ」

今日は本当は行く予定ではなかった「シンデレラ」の2回目を観に行きました。急にいけなくなった友達のピンチヒッターで。でもひどく疲れているようで、観ている間は楽しかったのですが、休憩時間は死んだように寝ていました。バレエを観に行くとたいてい誰が知り合いに会うんですが、今日のように、誰にもこの公演を観に行くって言わないで、誰にも会わないで観られるのはいいな、って思いました。その方が感動を自分の中にとっておける気がするんです。こんな風に思うのって、やっぱり自分が疲れているんだと思います。人に会いたくない、しゃべりたくないという心境なんです。もうあと数日で今年も終わりなのに、旅行の準備すらまったくできていないし。

ヨハン・コボーとさいとう美帆さんという、レジュニナの降板に伴う急ごしらえの主役ペアだったのですが、パートナーシップがとてもよく合っていたと思います。身長のバランスもちょうど良かったです。コボーって改めて、サポートが上手な上、ジェントルマンでパートナーを立てるのがうまいと思いました。プロポーションはどちらかといえば難ありの部類なのですが、さいとうさんが小柄ということもあり、ノーブルな王子様に見えました。脚捌きは例によってとてもきれいだし、気品もあるし、テクニックがとても正確で着地が毎回確実にきれいな5番に入ります。初日、今日とコボー株が私の中でぐっと上がりました。さいとうさんは、今日も愛らしく、楚々として気立ての優しいシンデレラを好演してました。シンデレラ役は本当に彼女の持ち味に合っていると思います。

川村真樹さんの仙女がダイアモンドのようにキラキラとしていて美しかったのは言うまでもありません。また、四季の精の小野絢子さんがよかったです。アシュトンの難しいパを軽々とこなし、音楽性がとても豊かでした。四季の精のほかの3人はベテランの上手な人をそろえているのですが、その中で新人の部類に入る小野さんが際立って良く見えて、この人は才能がある、と思わせてくれました。小野さんも小柄で愛らしいので、シンデレラ役が似合いそうです。

王子の4人の友人の中では、やっぱり中村誠さんが断然しなやかで踊りがきれいです。あとは着地が5番にきれいに決まるようになれば、文句なしですね。

アシュトンの「シンデレラ」は、ラストシーンがとても好きです。妖精たちが掲げる灯りが闇を照らし、そして星空に佇むシンデレラと王子の後姿に、キラキラ光るダイアモンドダストのような紙吹雪が降っているところが、余韻があってとても素敵。二人の物語はここで終わるのではなくて、これから始まるということを感じさせてくれます。それから、アグリーシスターズが実際のところ、あまり意地悪ではなくて、本当はシンデレラのことを愛しているというのがわかるのが良いです。ガラスの靴がシンデレラの足に合って、シンデレラが王子と結ばれることになった時に、姉妹はシンデレラの幸せを喜んで、彼女と抱き合って祝福するところが、ジーンとします。誰も不幸にならない、ただ一番気立ての良いシンデレラが幸せになるというところが、素敵です。クライマックスの、広がりがあって雄大なプロコフィエフの音楽も本当に素晴らしいです。とてもいいプロダクションなので、新国立劇場で上演し続けて欲しいです。

P1030443s

明日もまたさいとうさん&マイレン・トレウバエフのペアを観ます。さいとうさん、連投ですごく大変だと思いますが、この調子で乗り切って欲しいです。

2008/12/22

ベルリン国立バレエの「カラヴァッジョCaravaggio」評と関連いろいろ

別エントリでベルリン国立バレエの「カラヴァッジョCaravaggio」関連情報をアップしていたのですが、オペラ座のフィガロの記事と一緒くたになっていたので、独立したエントリに書き直します。

dance view times で作品評が載っていました。
http://www.danceviewtimes.com/2008/12/where-genius-and-crime-meet.html

現地では、やや酷評の方が多いようなのですが、この記事を書いた人は、美術も振付も非常に美しく、ダンサーも素晴らしいけど全幕作品としてはあいまいな部分も多くてゆるい、としています。また、振付家マウロ・ビゴンゼッティの才能の素晴らしさ、優れた音楽性は疑いようがないとのこと。

ビゴンゼッティは最近、大活躍していますね。エトワール・ガラで踊られた「カンツオーニ」や「カジミールの色」をはじめ、ミラノ・スカラ座で上演され、最近DVD化された「Medeiterranea」(マッシモ・ムッル主演)などがあります。

「Medeiterranea」のDVD
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=2819794

以下に、これまでの記事をまとめておきます。

「カラヴァッジョ」については、チャコットdance cubeの針山愛美さんのコラムでも紹介されています。カラヴァッジョと同じ時代に生きた作曲家モンテベルディの音楽を元にしてのだそうです。12月7日が初演だったとのこと。
http://www.chacott-jp.com/magazine/diary/72.html

ウラジーミル・マラーホフがカラバッジョ役にぴたっとはまっています。今の彼なら、古典の王子もいいのですが、エイフマンの「チャイコフスキー」やカラバッジョなど、こういった芸術家の役で観たい気がします。
コンテンポラリー作品での来日公演は難しそうですが、実現してほしいですよね。

来年は韓国にエイフマン・バレエが来るのですが)、(3月27日~29日の4回公演、「アンナ・カレーニナ」(振付:ボリス・エイフマン、音楽:チャイコフスキー)、来日の予定はないようです。
http://www.lgart.com/EngHome/booking/bookdetail.aspx?seq=1686

ベルリン国立バレエのサイト
http://www.staatsballett-berlin.de/spielplan/spielplan_detailansicht.php?id_event_date=189722&id_event_cluster=66835&id_language=2

天才画家カラヴァッジョの人生については、デレク・ジャーマンの映画「カラヴァッジョ」がものすごい傑作なのですが(若き日のショーン・ビーンも出ていて、それはそれは美しかったです。先日ロンドンに行った時に、HMVでDVDを買ってきました。日本盤は廃盤なのです)、マラーホフが演じたカラヴァッジョも観る機会があればいいなと思います。

「カラヴァッジョ」のアメリカ盤DVD(リージョン1)

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Tilda Swinton, Sean Bean, Nigel Terry, Michael Gough, Derek Jarman

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実は、「カラヴァッジョ」は他にも何人かの振付家がバレエ化に挑戦しているとのこと。作曲家や振付家の生涯などは、今までも上記エイフマンの「チャイコフスキー」やノイマイヤーの「ニジンスキー」などで描かれてきましたが、画家の生涯をバレエ化したものは、カラヴァッジョくらいしかいないようです。やはり、上記デレク・ジャーマンの映画の影響が大きいようです。

日々これ口実のebijiさんに教えていただきましたが、(いつもありがとうございます)「カラヴァッジオ」の写真を写真家Enrico Nawrath氏のサイトで見ることができます。
http://www.enonava.de/
写真家によるシーンの切り取り方がとてもドラマティックで秀逸ということもありますが、これを見ると、「ますます見たくなりますね。中村祥子さんもすごく雰囲気があって素敵です。

ビゴンゼッティ、マラーホフ、セミオノワ、中村さんらのリハーサル動画もあります。(ポッドキャスト)
http://www.staatsballett-berlin-inside.de/podcast/caravaggio--impressionen.html

それから、写真はまだここにもありました。
http://www.picturesberlin.de/staatsballett_caravaggio/index.html

France 3のパリ・オペラ座「ライモンダ」特設サイトの動画

France 3のパリ・オペラ座「ライモンダ」特設サイト
http://culturebox.france3.fr/ballet_de_noel#/ballet_de_noel/に、続々と動画がアップされています。

エリザベット・モーランがドロテ・ジルベールに「ライモンダ」をリハーサルしている動画があるのですが、モーランが現役時代とあまり変わらない姿をしているのがちょっと嬉しかったです。
http://culturebox.france3.fr/ballet_de_noel#/ballet_de_noel/6076/Les_coulisses_du_Palais_Garnier_%3A_R%E9p%E9tition_de_Doroth%E9e_Gilbert

友達が、かつてモーランのライモンダ、ルグリのジャン・ド・ブリエンヌ、そしてイレールのアブデラムが出演した「ライモンダ」を観たそうですが、それはそれは伝説に残るような荘厳で、絵巻物のような歴史的な舞台、これぞ芸術というものだったとのこと。
残念ながらドロテのライモンダは観られないと思いますが(でも、ベジャールプロ終了後にガルニエに移動すれば3幕は観られるかしら?チケットは持っているんですよね)、大晦日のイレールのアブデラムは無事観られますように。

あと、クリストフ・デュケンヌとイザベル・シアラヴォラがサラセンの踊りをリハーサルしている動画もありました。ところが、今キャストを見直していたら、シアラヴォラの名前が一切消えているんですね。怪我でもしてしまったようでしょうか。
http://culturebox.france3.fr/ballet_de_noel#/ballet_de_noel/6067/Les_coulisses_du_Palais_Garnier_%3A_R%E9p%E9tition_d%27Isabelle_Ciaravola_et_Christophe_Duquenne

もう一つ気がついたのですが、

http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Distribution.asp?IdS=549
(12月19日現在のキャスト)

14 décembre 2008 à 14h30
RAYMONDA Dorothée Gilbert
JEAN DE BRIENNE Christophe Duquenne
ABDERAM Jérémie Bélingard
SARRAZINS Ghyslaine Reichert, Hervé Moreau
ESPAGNOLS Mathilde Froustey, Gil Isoart

16 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Agnès Letestu
JEAN DE BRIENNE Stéphane Bullion
ABDERAM Karl Paquette
SARRAZINS Ghyslaine Reichert, Hervé Moreau
ESPAGNOLS Mathilde Froustey, Alessio Carbone


14日と16日のサラセンのところにエルヴェ・モローの名前があるんですが、これは何かの間違いなのでしょうか??復帰のための足慣らし?

私は26日夜に出発の予定ですが、まだまったく準備というものができていません。しかも前日の25日は職場の忘年会なんですよね…。

2008/12/21

新国立劇場『シンデレラ』12月22日、23日7:00の回のキャスト変更

新国立劇場『シンデレラ』12月22日、23日7:00の回のキャスト変更が発表されました。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000610.html

12月22日、23日(ソワレ公演)シンデレラ役のラリーサ・レジニナが、20日公演中の怪我のため出演できなくなりました。代わって、両公演ともさいとう美帆が出演いたします。(王子役のヨハン・コボーは変更ありません。)

変更後のキャストは以下の通りです。

[シンデレラ]   [王子]
21日    酒井はな   / 山本隆之
22日    さいとう美帆 / ヨハン・コボー
23日(マチネ) さいとう美帆 / マイレン・トレウバエフ
23日(ソワレ) さいとう美帆 / ヨハン・コボー
24日    酒井はな   / 山本隆之
26日    寺島まゆみ  / 貝川鐵夫
27日    西山裕子   / 中村誠

レジニナは、20日初日の第1幕のソロの踊りの最中、ジャンプで足をひねり、第2幕の途中で激しい痛みに耐えることが出来ず降板となりました。
本人自身、今回の出演を楽しみにしておりましたが、現在も状態は思わしくなく、残念ながら、出演を予定しておりました22日、23日夜公演も降板することとなりました。

さいとう美帆さんがフル回転ですね。昨日の代役は本当に素晴らしかったと思いますが、22日、23日のマチネとソワレの連続出演はかなりハードですよね。怪我をされませんことを祈ります。

(おまけ)

新宿のサザンテラスのイルミネーションの写真です。JR東日本の本社前には、ペンギンくんたちがいます。

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新国立劇場「しらゆき姫」追加公演とシンデレラに関する告知

「シンデレラ」主役交代の動揺で書き忘れていたのですが、子供向け優先発売でソールドアウトとなっていた「しらゆき姫」の追加公演が決定して、チラシも配布されていました。新国立劇場のサイトにも掲載されています。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000608.html

日程:2009年4月4日(土)午後5時開演の部

配役:しらゆき姫  さいとう美帆
    王子レックス 江本拓
チケット発売日:2009年1月26日(月)10:00~

アトレ会員先行発売、こども優先発売はありません。上記日時より、どなたもご購入いただけます。

とのことです。公演概要は、
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000179_ballet.html

それから、12月20日の「シンデレラ」公演の降板劇についての説明がアップされていました。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000609.html

本日の公演におきましては、シンデレラ役のラリーサ・レジニナが上演中に負傷し、第2幕の途中からさいとう美帆、マイレン・トレウバエフに交代して上演することとなりましたが、おかげさまをもちまして無事終演することができました。 (中略) なおラリーサ・レジニナの今後の出演予定日(22日(月)2:00、23日(火・祝)7:00)の出演につきましては、明日以降、決定次第すみやかに、ホームページにてお知らせいたします。

ということなので、サイトの方を頻繁にチェックしなくては、ですね。今回は新国立劇場はかなり迅速な対応をしているようです。

2008/12/20

新国立劇場「シンデレラ」12/20レジュニナ途中降板

今日の新国立劇場「シンデレラ」初日で、二幕のシンデレラと王子の最初のパドドゥの後に、ヴァリエーションを踊ろうとしたヨハン・コボーと指揮者とのやり取りがあって少し間が開き、コボーのヴァリエーション、アグリーシスターズのオレンジを持った踊りの後に急に幕が下りて上演が中断し、舞台監督による「主役が怪我をしましたので中断の後代役によって続けます」というアナウンスがありました。

ラリーサ・レジュニナが怪我をしたようで、再び幕が開く前に、代役のアナウンス。代役としてはさいとう美帆さんとマイレン・トレバエフが2幕のパドドゥから踊りました。(シンデレラのヴァリエーションが一つ省略されました)

レジュニナの怪我がどの程度かは不明なので、後2回の出演もどうなるか、これを書いている時点ではまだわかりません。コボーについても。

久しぶりに観るレジュニナは、昔のかわいらしさそのままで、可憐さがシンデレラにぴったりでした。足の甲も美しく、優雅な上半身で丁寧に踊っていました。姫に変身した時も愛らしかったので、本当に残念です。二幕の登場シーンでとても緊張していたのと、パドドゥの時にサポートピルエットで一回ポワントが落ちて一瞬真顔になってはいたのですが、舞台をはけるまではちゃんと踊っていました。

コボーも調子が良さそうで、カブリオールの脚捌きが華麗で、すごくノーブルで素敵でした。マエストロとのやり取りのときの声もクールでカッコよかったので、途中までしか観られなかったのは残念です。(シンデレラのヴァリエーションを飛ばして王子のヴァリエーションに飛んだので、指揮者が楽譜をめくるのが追いつかなかったようです)

とにかくレジュニナの怪我が大きなものではないことを祈ります。観ている時に怪我をしたと聞くと、ちょっとショックで、未だ動揺しています。久々の日本での出演が怪我ということになって、本人の胸中を思うとこちらもつらいです。

代役の二人は、いきなり二幕のパドドゥからという登場で大変だったと思いますが、立派に役割を果たしました。マイレンの持ち前の包容力と安定感は、こういうアクシデントの時には大きなプラスです。アクシデントのショックで動揺しながらも、マイレンに関しては安心して見ていられました。大好きなマイレンが、ますます大好きになりました。さいとうさんも、笑顔全開でかわいらしく、また技術も表現も落ち着いていて、健気さが感じられ、とても良かったです。シンデレラ役は清らかなイメージのさいとうさんには、当たり役というかはまり役ですよね。

ダンサーに怪我はつきものですが、できるだけ怪我をする人が出ませんよう、祈るしかないですね。

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舞台の話に戻ると、仙女役の川村真樹さんがもう美しくて気品にあふれていて、素晴らしかったです。23日マチネでもう一度「シンデレラ」を観るのですが、このときの仙女が川村さんでなくて、とても残念。四季の精では、やはり春の精の小野絢子さんが、愛らしくて素敵でしたね。冬の精の寺島ひろみさんは緊張はしていたようですが、四肢の動きがとても美しく柔らかで、冬の厳かさがよく出ていました。道化の八幡さんもいうまでもなく、軽やかに跳んでいて演技も細かくて良かったです。

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「シンデレラ」を観ると、プロコフィエフの音楽の素晴らしさを毎回実感します。今回の演奏も本当に素敵で、涙が出てきそうになりました。特にこのようなことがあったので、ますます、乗り切れて良かったねと泣けてきました。カーテンコールでも、代役として舞台を救った二人を中心に、暖かい拍手があって胸が熱くなりました。新国立劇場の観客は、バレエ団自体を愛しているという気持ちが伝わってきました。カーテンコールで控えめに立っていたヨハン・コボーも、とても素敵でした。

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【シンデレラ】
 ラリーサ・レジニナ→さいとう美帆

【王子】
 ヨハン・コボー→マイレン・トレウバエフ

【義理の姉たち】
 マシモ・アクリ
 井口裕之

【仙女】
 川村真樹

【父親】
 石井四郎

【春の精】
 小野絢子
【夏の精】
 西川貴子

【秋の精】
 遠藤睦子

【冬の精】
 寺島ひろみ

【道化】
 八幡顕光

【ナポレオン】
 伊藤隆仁

【ウェリントン】
 貝川鐵夫

【王子の友人】
 陳 秀介 冨川祐樹 江本 拓 中村 誠

パリ・オペラ座昇進コンクール・女子の結果

パリ・オペラ座昇進コンクール・女子の結果が出ました(ダンソマニより)

Coryphées : スジェに昇進

1. Charline Giezendanner : promue 昇進
2. Caroline Robert
3. Eléonore Guérineau
4. Séverine Westermann
5. Lucie Clément
6. Alexandra Cardinale


Quadrilles : コリフェに昇進

1. Pauline Verdusen : promue 昇進
2. Amandine Albisson : promue 昇進
3. Héloïse Bourdon: promue 昇進
4. Marine Ganio

というわけで、「ルグリと輝ける仲間たち」でも活躍したシャルリーヌ・ジザンダネがスジェ昇進です。おめでとうございます。彼女は最近活躍目覚しいという感じで、去年の「くるみ割り人形」でも、雪の精のソリストを踊っていたと思ったらクララの妹役としても出ていたりしていました。
マチューの妹のマリーヌはあと一歩で残念でしたね。正式入団したばかりだと思うので、まだまだチャンスはありそうです。


オペラ座といえば、「ライモンダ」のキャスト変更があります。12月28日、30日に出演するマリーヤ・アレクサンドロワのパートナー(ジャン・ド・ブリエンヌ)が、ルスラン・スクワルツォフから、同じくボリショイのアレクサンドル・ヴォルチコフに変わりました。
それから、クレマンス役にマチルド・フルステーがキャスティングされました。26日、29日に出ます。みんな苦手だというマチルドですが、私は彼女の勝気で目立ちたがり屋なところが結構好きなんです。

http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Distribution.asp?IdS=549

28 décembre 2008 à 14h30
RAYMONDA Maria Alexandrova
JEAN DE BRIENNE Alexander Volchkov
ABDERAM Stéphane Bullion
HENRIETTE Aurélia Bellet
CLEMENCE Eve Grinsztajn
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Florian Magnenet
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Géraldine Wiart, Simon Valastro
ESPAGNOLS Laura Hecquet, Christophe Duquenne
LE ROI Emmanuel Hoff


29 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Emilie Cozette
JEAN DE BRIENNE Karl Paquette
ABDERAM Yann Bridard
HENRIETTE Myriam Ould Braham
CLEMENCE Mathilde Froustey
BERANGER Simon Valastro
BERNARD Gil Isoart
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Ghyslaine Reichert, Marc Moreau
ESPAGNOLS Sarah Kora Dayanova, Julien Meyzindi
LE ROI Richard Wilk


30 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Maria Alexandrova
JEAN DE BRIENNE Alexander Volchkov
ABDERAM Stéphane Bullion
HENRIETTE Aurélia Bellet
CLEMENCE Eve Grinsztajn
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Florian Magnenet
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Géraldine Wiart, Simon Valastro
ESPAGNOLS Laura Hecquet, Christophe Duquenne
LE ROI Emmanuel Hoff

小林紀子バレエ・シアター、2008年度文化庁芸術祭賞大賞を受賞

文化庁は19日、今年度の芸術祭賞受賞者を発表しました。舞踊部門では、大賞を小林紀子バレエ・シアター=「第91回小林紀子バレエ・シアター公演「ザ・レイクス・プログレス」など」が受賞したとのことです。これは快挙ですね!とても意欲的で面白い公演でしたから。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20081219-OYT1T00659.htm

文化庁の発表資料はこちらです。(PDF)
http://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/geijutsusai/pdf/20_jyusyo_kouen.pdf

小林紀子バレエ・シアターは、英国作品を中心とした独自性の高いプログラムを上演していて興味深いので、できるだけ観ることにしています。今回はそういった活動が認められたようでとても嬉しいです。おめでとうございます。

<東京バレエ団創立45周年記念スペシャル・ガラ>公演概要

東京バレエ団創立45周年記念スペシャル・ガラ公演の概要が、東京バレエ団のオフィシャルにアップされていました。

http://www.thetokyoballet.com/news/

東京バレエ団創立45周年記念公演IV
<東京バレエ団創立45周年記念スペシャル・プロ>
「エチュード」「月に寄せる七つの俳句」「タムタム」

◆公演日
2009年4月18日(土)3:00p.m.
2009年4月19日(日)3:00p.m.

◆会場:東京文化会館

◆予定される主な配役

「エチュード」ハラルド・ランダー振付
上野水香(4/18)/吉岡美佳(4/19)
フリーデマン・フォーゲル、レオニード・サラファーノフ(4/18,19)

「月に寄せる七つの俳句」ジョン・ノイマイヤー振付
月:木村和夫(4/18)/長瀬直義(4/19)
月を見る人:斎藤友佳理-高岸直樹(4/18)/上野水香-後藤晴雄(4/19)

「タムタム」フェリックス・ブラスカ振付
ソロ:松下裕次(4/18)、木村和夫(4/19)
パ・ド・ドゥ:西村真由美-横内国弘(4/18)/渡辺理恵-宮本祐宜(4/19)

◆入場料(税込)
S¥12,000 A¥10,000 B¥8,000 C¥6,000 D¥4,000 E¥3,000
エコノミー券¥2,000 学生券¥1,500
S席ペア券¥23,000 A席ペア券¥19,000  B席ペア券¥15,000

◆前売開始日:2009年2月14日(土) 10:00a.m.

◆お問い合わせ:NBSチケットセンター 03-3791-8888

「エチュード」にはフリーデマン・フォーゲルとレオニード・サラファーノフが出演するんですね。サラファーノフは以前はよく新国立劇場に出ていましたが、スカラ座来日公演で上野水香さんと共演してからは、NBSの方に出るようになったのかしら?(やっぱりあの気の毒な「コッペリア」事件のせい?)フォーゲルくんはすっかりNBSが売り出しに成功した感があります。「エチュード」は東京バレエ団創立40周年記念ガラでも観たけど、その時にはゲストなしだったのですよね。記念公演にゲストが出るのはちょっと意外です。

4月から5月にかけてはバレエ公演が多いですよね。「エスプリ~ローラン・プティの世界」、パリ・オペラ座学校来日公演、小林紀子バレエシアターの「眠れる森の美女」、そして「ザハーロワのすべて」。全部行っていたらとてもじゃないけどお財布がもちませんので、取捨選択をしなくちゃと思うこのごろです。

****

今日はInternational Dance Schoolの『くるみ割り人形』を観に行ってきました。元K-Balletの柴田有紀さん、NBAバレエ団のヤロスラフ・サレンコが主演です。サレンコは、20日のNBAバレエ団の「くるみ割り人形」、さらに年明けには法村友井バレエ団の「アンナ・カレーニナ」にもゲスト出演と本当に大忙しのようですね。しかし、さすがに柔らかく正確で美しい踊りで、引っ張りだこだけのことはあります。妹さんのヤナ・サレンコも出産して早速ベルリン国立バレエの「ラ・シルフィード」で復帰したんですね(チャコットのdance cubeの針山愛美さん日記による)。

柴田有紀さんはK-Balletを退団されてからはフリーで活動していたようですが、とても気品があってキラキラと素敵な金平糖の精でした。あと、なぜか現K-Balletのビャンバ・バットポルト、ニコライ・ヴィユウジャーニン、そして元K-Balletのドゥー・ハイとアレクサンドル・ブーベルも花のワルツに出演していました。(ブーベルくんはスペインにも)。っていうか、ブーベルくんがK-Balletを退団していたことを知りませんでした。「海賊」のアリなどを踊って活躍していたのに。ボリショイ・バレエの「ドン・キホーテ」のワシーリエフ主演の回で、ブーベルくんを客席で見かけたので、ベラルーシつながりで来ているのね、とは思ったんですが。K-Balletもけっこう団員の入れ替わりが激しいようです。

International Dance Schoolの『くるみ割り人形』は、金平糖のPDDがちょっとだけ眠りのローズアダージオに趣向が似ていて、4人のキャバリエが金平糖の精をサポートしたり高くリフトしたりします。ということで、4人のK-Ballet関係のゲストが大活躍していたのでした。


そういえば、今日は「たけしの誰でもピカソ」でK-Balletの「小学生から分かるバレエ入門」の第3弾『くるみ割り人形』特集が放送されていました。無事に録画できていたようなので、後で観てみます。

2008/12/19

FIGARO JAPONの「パリ・オペラ座バレエ物語」2009 1/5号 /ベルリン国立バレエの「カラヴァッジョ」

隔号連載のフィガロジャポンの「パリオペラ座物語」は16回目。今回の特集はちょっと地味目で、前半はパリ・オペラ座の歴史について。

国立舞台衣装センター館長マルティーヌ・カアンヌさんのインタビューを交えているのですが、内容については、佐々木 涼子さんの著書「バレエの歴史―フランス・バレエ史-宮廷バレエから20世紀まで」など、バレエの歴史の本を読んでいれば判るようなことで、あまり新しい発見はありませんでした。1月11日まで、ガルニエでimage de la danseという展覧会が開かれているそうです。写真やデッサン、絵画にバレエの歴史を読み取る展覧会だそうで、ドガやジョルジュ・バルビエらの絵画などを観ることができるそうです。ガルニエの見学やチケットのボックスオフィスが移動したそうで、今までは、正面の入り口から入ってチケット売り場は右手の売店の裏あたりにあったのですが、スクリプ通り側(左のほう、ギャラリー・ラファイエットに向かう方向)からになったとのこと。

後半はというと、現芸術監督ブリジット・ルフェーヴルのインタビュー。オペラ座関係のドキュメンタリー番組などにすぐに出たがるおばさんって感じなんですが。(ドミニク・カルフーニとマチュー・ガニオのドキュメンタリーDVDでも、美しく優しげなカルフーニとは対照的に怖かったですね)珍しいバレエ学校時代や現役時代の写真が何枚か紹介されています。自分のことを中心にしたインタビューを掲載するのを条件に、この連載全体の取材許可を出したんじゃないかと穿った見方をしてしまいますが(はい、穿ちすぎですね、すみません)。
ルフェーヴル女史は、入団して12年後にはオペラ座を去って自分のカンパニー「テアトール・デュ・シランス」を作ります。オペラ座時代から、コンテンポラリーが大好きで、昇級コンクールでも、当時のレパートリーの唯一のコンテンポラリー作品を踊ったそうです。

94年にオペラ座の芸術監督に就任したルフェーヴル。「クラシック・バレエをもっと!という不満も彼女の耳に届くが」という記述に、筆者の方の思いがちょっと感じられます。オペラ座の上演するコンテンポラリー作品は、質の高いものも多いし面白い作品も多いとは思うんですが、ちょっと古典が少なすぎますよね。それから、古典とコンテンポラリーの2プログラムを同時に上演して、同じダンサーが両方に出ているというのが、怪我するダンサーを増やしている原因になっているのではないかとも思われます。最近、特に女性ダンサーの質が(ヌレエフの子供たち世代と比較して)低下しているんじゃないかという気もします。

「この仕事で大切かつ感動的な瞬間は、エトワールの任命だという。これは特別なイベント」とありますが、近々もそのような予定はあるのでしょうか?

この号は写真は少ないのですが、エルヴェ・モローが、そしてウィルフリード・ロモリがエトワールに任命された時の貴重な写真が、小さいのですがあります。また、マリアス・エイマン、ドロテ・ジルベールが受賞した時のカルボー賞の授賞式の写真も。マチュー・ガニオの「ラ・シルフィード」の終演後、ラコットやイレールらと写っている写真も載っています。ダンサーとの関係はとても密なのだそうです。

「現職には後4~5年」とルフェーヴルはコメントしていますが、そんなに長いこと芸術監督の座に残るんですね。


この号は「行かなくても楽しいパリ案内」と称して、蚤の市やアンティークのショップ、そしてカフェの特集となっています。この特集記事は、生のパリの空気が伝わってきて、とても面白いです。付録には、「アグリーベティ」など海外ドラマ6作品を収録したDVDまで付いています。映画通によるお勧めDVD(選者の一人には、首藤康之さんがいて、「リトル・ダンサー」「ホワイトナイツ」「愛と哀しみのボレロ」を推薦しています)、年末年始の映画ガイド、ファッションページも面白かったです。

******

それと最近知ったのですが、フィガロ・ジャポンの新しいサイトができたのですね。
http://madamefigaro.jp/

最新号の紹介のほか、Webのみのコンテンツ、ニュースやコラム、ブログがあってとても面白いです。RSS対応でどんどん新しい情報が更新されています。

ベルリン在住のドラッグクイーン、つよこ・フォン・ブランデンブルクさんのブログでは、ベルリン国立バレエの新作「カラヴァッジョ Caravaggio」と、ウラジーミル・マラーホフについての面白いエピソードが紹介されています。
http://blog.madamefigaro.jp/tsuyoko_von_brandenburg/

「カラヴァッジョ」については、チャコットdance cubeの針山愛美さんのコラムでも紹介されていますが、マウロ・ビゴンゼッティの振付作品なのですね。同じ時代に生きた作曲家モンテベルディの音楽を元にしてのだそうです。
http://www.chacott-jp.com/magazine/diary/72.html

ベルリン国立バレエのサイト
http://www.staatsballett-berlin.de/spielplan/spielplan_detailansicht.php?id_event_date=189722&id_event_cluster=66835&id_language=2

天才画家カラヴァッジョの人生については、デレク・ジャーマンの映画「カラヴァッジョ」がものすごい傑作なのですが(若き日のショーン・ビーンも出ていて、それはそれは美しかったです。先日ロンドンに行った時に、HMVでDVDを買ってきました。日本盤は廃盤なのです)、マラーホフが演じたカラヴァッジョも観る機会があればいいなと思います。

追記:日々これ口実のebijiさんに教えていただきましたが、「カラヴァッジオCaravaggio」の写真を写真家Enrico Nawrath氏のサイトで見ることができます。
http://www.enonava.de/
写真家によるシーンの切り取り方がとてもドラマティックで秀逸ということもありますが、これを見ると、「カラヴァッジオCaravaggio」ますます見たくなりますね。中村祥子さんもすごく雰囲気があって素敵です。

リハーサル動画も
http://www.staatsballett-berlin-inside.de/podcast/caravaggio--impressionen.html

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2008/12/18

パリ・オペラ座昇進コンクール男子の結果

12月恒例のパリ・オペラ座昇進コンクールですが、ダンソマニに結果が出ていました。今年は、スジェが男女各1、女性コリフェが3名、男性コリフェが4名と枠が極めて少ない中での試験でした。

男子の試験が17日に先に行われて結果が出ています。

Coryphées : (スジェに昇進)
1. Alexis Renaud アレクシス・ルノー : promu 昇進
2. Fabien Révillon
3. Allister Madin
4. Daniel Stokes
5. Sébastien Bertaud
6. Grégory Dominiak

Quadrilles : (コリフェに昇進)
1. Florimond Lorieux フロリモント・ロリユー: promu 昇進
2. Marc Moreau マルク・モロー : promu 昇進
3. Yannick Bittencourt ヤニック・ビッテンクール : promu 昇進
4. Yvon Demol イヴォン・ドゥモル: promu 昇進
5. Yann Chailloux
6. Alexandre Gasse

課題曲は
カドリーユ女子:  白の組曲 シガレットのヴァリーエーション
カドリーユ男子:  ジゼル第一幕ペザントの第一ヴァリエーション
コリフェ女子: 眠れる森の美女 幻想の場のヴァリエーション
コリフェ男子: ライモンダ 第三幕ジャン・ド・ブリエンヌのヴァリエーション

アレクシス・ルノーは、6月の「椿姫」でN伯爵を踊っていました。とても甘いハンサムで、同じ役を踊っていたシモン・ヴァラストロに比べると演技力ではさすがに落ちるなとは思いましたが、期待できそうな感じでした。来日公演の「ル・パルク」では、キスされてしまう男性の役でしたね。

カドリーユとなると私は全然詳しくないのですが、マルク・モローはルグリのガラや「スーパーバレエ・レッスン」でお馴染みで、けっこう活躍していたので、まだカドリーユだったの、って感じです。ロビンス・プロなどでも抜擢されていたし、若いのでこれからの活躍も楽しみですね。

女子の試験は19日です。マチュー・ガニオの妹マリーヌや、藤井美帆さんも受けるようです。女子コリフェ対象の試験は、顔ぶれを見るとけっこう実力者が多いので、一つの枠を誰が取るのか、全然予想もつきません。

2008/12/17

デンマーク・ロイヤル・バレエRoyal Danish Ballet来日公演ちょっと詳細

NBSのバレエの祭典会員向けに、鑑賞日のお伺いの案内が来ました。

デンマーク・ロイヤル・バレエ団 2009年日本公演

オーギュスト・ブルノンヴィル振付『ナポリ』全3幕 

5月15日(金)18:30 テイナ・ホイルンド、トマス・ルンド
5月16日(土)15:00 ディアナ・クニ、ティム・マティアキス
5月17日(日)15:00 テイナ・ホイルンド、トマス・ルンド

ジョン・ノイマイヤー振付『ロミオとジュリエット』全3幕

5月22日(金)18:30 クリスティーナ・ミシャネック、セバスチャン・クロボー
5月23日(土)15:00 フェムケ・メルバッハ・スロット、ウルリック・ビヤケァー
5月24日(日)15:00 クリスティーナ・ミシャネック、セバスチャン・クロボー

会場:東京文化会館
S席 16000円、A席 14000円、B席 12000円、C席 10000円、D席 7000円 E席 5000円

1月31日より一斉発売開始

えーと、今配布されている速報チラシには、
<来日予定プリンシパル>
シリア・シャンドルフ、ギッテ・リンストロム、グドゥルン・ボィェセン、エイミー・ワトソン、ヤオ・ウェイ、ジャン・リュシアン・マソ、マス・ブランストルップ、トマス・ルンド

とあるのですが、この来日予定プリンシパルと主役の名前がかぶっているのがトマス・ルンドだけなのが謎です。今回、チラシは同封されておらず、追って送ってくるとのことです。
上記2作品に出演予定で、知っているのもトマス・ルンドとセバスチャン・クロボーだけなんですよね。7月の井上バレエ団の公演で観ました。デンマーク・ロイヤルの人気プリンシパル、クリストファー・サクライもキャストに入っていないんですね。残念。


なお、気をつけなければならないのは、「ロミオとジュリエット」は3日間とも、新国立劇場の「白鳥の湖」と重なっていることです。といっても、新国立劇場の「白鳥の湖」は5月19日から全6回公演なのですが。

12/19追記:NBSのオフィシャルサイトができていました。

http://www.nbs.or.jp/stages/0905_danish/index.html

来日予定のダンサーの写真を見ると、本当に美男美女ぞろいですね。

それと最新情報サイト(ブログ)もできていたので、シュツットガルトのときのように期待してしまいます。
http://www.nbs.or.jp/blog/0905_danish/

キャストの紹介もしてくれているので、どの日を見るべきか、ヒントになります。セバスチャン・クロボーは、コール・ドながらノイマイヤーによってロミオに抜擢されているんですね。井上バレエ団で観たときには、両親、前芸術監督フランク・アナセンとバレエ・ミストレスのエヴァ・クロボーもついていました、正直まだあまり上手ではないと思ったのです。でも、ロミオ役は若いダンサーがお似合いなので、きっと良いでしょうね。

パリ・オペラ座ベジャールプロ「春の祭典」動画/「ボレロ」動画

パリ・オペラ座では、オペラ・バスティーユにて、「ベジャールへのオマージュ」を上演中です。オフィシャルサイトに、「春の祭典」の動画がアップされていました。

http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Bonus.asp?Id=775&IdS=538


生贄役、ジェレミー・ベランガールと、クレールマリ・オスタのソロが中心です。やっぱり東京バレエ団のとはずいぶんと雰囲気が違いますね。

ベジャール・プロのキャストも、微妙に変わっています。27日と29日のキャストが入れ替わったとのことです。

27 décembre 2008 à 19h30
SERAIT-CE LA MORT ?
Mathieu Ganio
Ludmila Pagliero
Nolwenn Daniel
Eleonora Abbagnato
Myriam Ould Braham

L'OISEAU DE FEU
Benjamin Pech
Karl Paquette

LE SACRE DU PRINTEMPS
Stéphanie Romberg
Audric Bezard


29 décembre 2008 à 19h30
SERAIT-CE LA MORT ?
Nicolas Le Riche
Delphine Moussin
Clairemarie Osta
Emilie Cozette
Dorothée Gilbert

L'OISEAU DE FEU
Mathieu Ganio
Vincent Chaillet

LE SACRE DU PRINTEMPS
Clairemarie Osta
Jérémie Bélingard

追記:ヌーヴェル・アン公演に上演される「ボレロ」の動画もアップされていました。ニコラ・ル=リッシュがメロディを踊っています。

http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Bonus.asp?Id=773&IdS=614

それから、France3の「ライモンダ」特設サイトは、放映日の25日まで少しずつ動画などが追加されているようです。
http://culturebox.france3.fr/ballet_de_noel#/ballet_de_noel/


「プロフェッショナル 仕事の流儀」バレエダンサー 岩田守弘 Morihiro Iwata

http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/081209/index.html

本放送がボリショイの「明るい小川」の公演の日だったので見逃してしまったけど、再放送で観ることができました。ボリショイの舞台裏や、ダンサーの日常もうかがい知ることができて、とっても面白く観ることができました。

岩田さんがまれに見るほどの素晴らしいダンサーであることは、先日の「明るい小川」のアコーディオン弾きや「白鳥の湖」の道化(本当にプロフェッショナルの道化、という感じで、心を込めて演じているのが伝わってきました)、さらには前回の来日公演での「ラ・バヤデール」のブロンズ・アイドルを観ていて十分わかっていたつもりでした。そして、先日発売された本「ボリショイ・バレエ その伝統と日本人ソリスト岩田守弘」で、彼の人となりや今までたどってきた道、さらにはバレエへの思いいれも伝わってきていました。でも、番組を見て、実際に話したり、リハーサルに臨んだり、舞台に上がっている岩田さんを見て、改めてこの人は本当にすごい人だと実感しました。

スタジオで実際に岩田さんは、アントルラッセやジュッテ、トゥール・ザン・レール、さらにはピルエット・ア・ラ・スゴンドを披露しますが、とにかく正確なテクニックで、着地はぴたっと五番に入るし、プリエがとてもよく効いています。茂木健一郎さんが、岩田さんの上半身の美しさに感心していましたが、その上半身に着目するところ、茂木さんも只者ではないと思いました。上半身の動きがとても基本に忠実だから、バロンが効いていて、高く、上へ上へと跳べるんですね。その上でロシアバレエ的な美を表現しています。写真で、岩田さんが大きく開脚ジャンプをしている「くるみ割り人形」の中国の踊りが紹介されますが、このような大きなジャンプは岩田さんに言わせると、「難しくない」のだそうです。大事なのは小さなジャンプなのだと。アントルシャ・カトル、シス、さらにはアントルシャ・ユイットまで見せてくれました。すごい~。いちいち着地がお手本のようにきれいな5番なのが気持ちよいです。

ボリショイのスタジオでのバーレッスンの様子が少し流れますが、長身のウヴァーロフと並ぶと、本当に岩田さんが小柄なのがよくわかります。

そんな岩田さんですが、やっとボリショイに入団してもまったく役が与えられず、やっと与えられたのが「ファラオの娘」の着ぐるみの猿の役。バレエ学校の生徒に与えるような役なのだそうで、ソリストの岩田さんが踊るような役ではなかったのです。そういえば、前回の来日の「ファラオの娘」でも岩田さんの猿を観ました。登場時間は1分少々ですが、すごく印象的だったのです。そう、そんな小さな役でも、岩田さんは新聞の批評でも絶賛されるほどの演技を見せ、評価につながったのです。どんな小さな役でも、一生懸命踊りきること、それが大事なんですね。

「人間って、いい時は結果が出るけど成長しない。悪い時に、成長していると思う。そういうのをへてきた人が、本当に感動させられる踊りをする人。自分もそう生きたい」 「のぼせあがるな」という言葉に重みがあります。これって、バレエに限らず、他の仕事にも当てはまる話だと思います。実は私も今仕事ですごい重圧があって、なかなかうまくいかなくて苦しい時期だったりするのですが、この岩田さんの言葉を聞くと、勇気が出ます。

舞台の上では何を考えていますか、と聞かれ、何も考えていないようじゃないと踊れないと岩田さんは言いましたが、でも実際には「神様、助けて!」と思うこともあるようです。ボリショイはただの劇場ではなくて、生き物、特別な場所なのです。ボリショイの舞台に立って13年。今でも舞台に立つことは不安で怖いそうです。それは、舞台ではその人のすべてが見え、丸裸になるから。

番組の中で、岩田さんが急遽代役として、長い距離をバスに乗って、トワイラ・サープの「イン・ジ・アッパー・ルーム」を踊るところが登場します。この作品、私はABTで観たことがあるのですが、1時間ほどの長さで、ずっとハイテンションで踊りっぱなし、ダンサーのはあはあする息が聞こえてくるようなダンスなのです。舞台袖の様子なども出てきますが、実際に踊るのがすごく大変なようで、岩田さんも舞台袖で倒れこんでしまうほどです。若い女性ダンサーが、脚が痙攣して泣き出すようなシーンもありました。やっぱり過酷な仕事なのですね。

ボリショイの中での競争も激しくて、一つの役を10人以上で奪い合うことも。毎月、その月のどの作品に誰が出演するかが掲示され、それを見て喜ぶ人もいるわけです(このシーンに、アルテム・シュプレフスキーがちょっと映っていました)

岩田さんは、ラトマンスキー芸術監督に呼ばれて、新しい役がついたことを知らされます。「明るい小川」のアコーディオン弾きです。どうやって役作りをしていくかを追っていって、その様子が興味深いです。ちょっとワルで、だけどコミカルで、演技の要素も強い役。普段のレッスンが終わっても居残って、役作りに取り掛かります。その成果もあり、いよいよラトマンスキーに踊って見せたところ、少し技術的なことを言われただけで、彼の役作りは評価されました。実際の舞台での岩田さんのアコーディオン弾きの演技も、ちょっぴりセクシーでユーモラスで、すごく面白かったです。

38歳と一般的には肉体の衰えが始まる年齢でも、岩田さんはそれを乗り越え、人間性、表現を熟させることで、本物のバレエと呼べるものにしていこうとしています。とはいっても、彼の踊りからはまだ全然衰えというものが見えないのがすごいところなのですが。こんなにもすごい人が、「のぼせあがるな」とあくまでも謙虚に、プロフェッショナルとして人一倍努力を続けて、ロシアで頑張っていると思うと胸が熱くなります。

2008/12/16

アレクセイ・ラトマンスキーの講演会その2 Alexei Ratmansky's lecture

「明るい小川」という作品について

Q. 1930年ごろの新聞の見出しや、政治的なスローガンが「明るい小川」の幕に使われていますね。このデザイン、ボリス・メッセレールのデザインには、あなたのアイディアは含まれていますか?

A.彼は初演の時の関係者なので、思い入れがあるのですよね。1935,6年はロシアで最も恐ろしい時代でした。そのため、その時代を再現するには慎重にならないといけないと思いました。舞台芸術化としては、その恐ろしい時代を反映しなければならないという想いがありました。クラシック・バレエの中でも、フランスバレエのリブレットを基にしていた作品だったので、それに忠実に作りました(注釈:リブレット=台本は残されていた)。一方で、ショスタコーヴィチがこの作品を作るうえで何を考えたのか、私も考えなければなりませんでした。

ショスタコーヴィチはバレエ作品を3作品つくり、2作目の「ボルト」は上演することもできませんでした。3作目である「明るい小川」は政治的な批判はある作品だけど、ショスタコーヴィチが上演をしたいと思って作った作品であり、音楽は平易に、ということで観に来る感客が、作品の世界に浸ることが出来る音楽を目指して作りました。プロットについては変更してはならない、すべてプロットを反映しなくてはならないと思いました。ショスタコーヴィチは最高ランクの芸術家だと思います。狭い範疇のものを作る人には批判されるかもしれませんが、芸術として質の高いものを作らなくてはならないと考えていました。ソ連時代は形式的なものが要求されていました。ショスタコーヴィチは、芸術は表現するのに形式的なものに則ったものであっても、質を落としてはならないと考えていました。

ショスタコーヴィチのバレエ音楽として3番目の作品であった「明るい小川」は1935年にレニングラードで初演された時には大絶賛され、大成功のうちに終わりました。しかし、ロシアバレエの中でも大変残酷な歴史なのですが、1935年にスターリンが劇場を訪れてこのバレエを観たときに事件が起こりました。ちょうど、この前にショスタコーヴィチのオペラ「ムツェンツク郡のマクベス夫人」が上演禁止されたのと同じ理由で、この作品は何回もリハーサルが行われたというのに再演が許されませんでした。ショスタコーヴィチは圧力もあったので、バレエ作品については筆を折りました。

このように、この作品にはもちろん哀しい歴史があるのですが、それは括弧に入れておくとします。こういった、現代的なテーマを扱ったバレエは現在は存在しないのではないかと思います。最高の芸術を表現していく素晴らしい機会であったと思います。コーカサス地方のコルホーズが舞台となっていて、ここではあえて台本の時代性を変えていません。初演の時のロブホープの振付は残っていません。当時の映像はありませんが、写真、批評、追想録があります。この時代の特徴的な興奮状態の様式があり、これを舞台の上で生かしてみたいと思いました。演じた人たちの自然な感情を見せることにも注意しました。

ショスタコーヴィチは、「二人のシルフィーダ(=シルフィード)」というタイトルで上演したいと思っていました。モスクワでは男性が女装するというのはできなかったけれども、レニングラードではこういう形で上演できたのです。「ボルト」が上演禁止されたので、「ボルト」のために用意された2曲を所々で使いました。アコーディオン奏者の踊る曲は、「ボルト」の曲を使っています。「ボルト」については、ショスタコーヴィチはもう2度と上演されないと思っていました。スターリン時代が終わるとは、当時誰も思っていなかったのです。

Q.あなたがレオニード・マシーンの作品を復元するという話を聞いていましたが、いかがでしょうか?

A.マシーンは世界最大の振付家の一人でしたが、今はポピュラーではありません。現在レパートリーとしては消失してしまっています。ボリショイで芸術監督の任についてから、いつかは復元したいという思いがあります。ショスタコーヴィチがバレエの世界いた頃、ちょうどマシーンは若手振付家でした。1920年代には、フォーキンなどが新機軸として評価されてきました。バレエの歴史というのは豊かな水脈であり、なぜか忘れられた作曲家もいます。私もバレエを再び学びなおして、振付家としてきちんと再評価しなければならないと思っています。

Q.振付家としてのあなたを触発するダンサーは誰ですか?

A.モチベーションの源となったダンサー、私が小さな頃はマイヤ・プリセツカヤでした。そして今年8月に、ミハイル・バリシニコフと働くことになりました。彼は高齢になっても、言葉を使わなくてもハーモニーや清純さを作ることができます。色々なバレエ団と仕事することによって、私は様々な新しい動きや様式にチャレンジすることができます。また、スヴェトラーナ・ザハロワに出会えたことが大きいです。彼女には深い感受性があり、才能がこれからも出てくる人だと思います。

Q.モスクワのバレエ学校で振付の授業はありましたか?

A.残念ながらありませんでした。ロシアバレエの特徴として、振付そのものについての意識が、ヨーロッパと比べて薄いというのがあります。私は、モスクワで、振り付けについて志のある人が集まる場所を作って行きたいと思っています。パリ・オペラ座が素晴らしいのは、ジョゼ・マルティネスなど、新しい作品について、斬新なものを作るダンサーがいることです。ロシアにはなかなかそういう人はいません。それぞれのダンサーが身体に刻み付けられているものを使っているというのが現状です。モダンバレエは新しい実験ができるし、新機軸を打ち出すことができます。古典だけをやっている人は、振り付けについての意識が暗くなってしまっています。「明るい小川」という作品を通して、ロシアのクラシックバレエの取り組みが変わっていくのではないかと私は思います。

(了)

2008/12/15

『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』Tropic Thunder

Tropic Thunder
http://www.shijosaitei.jp/

落ち目のアクションスター、演技派であるあまり黒人に整形手術した役者バカ、そしてお下劣コメディにばかり出ているコメディアン。この3人を中心にした俳優たちが、ベトナム戦争映画を撮影するために、東南アジアのジャングルへと送り込まれた。ところが、彼らが到着したロケ地では、麻薬をめぐる内戦が起こっており、役者であるはずの彼らが米国の麻薬捜査官と間違えられ、銃弾飛び交う中とんでもない目に遭う…無事に映画は撮影されるのだろうか?

IMDB
http://www.imdb.com/title/tt0942385/

観た人から面白いって聞いていたけど、よもやここまで面白いとは!
まず、最初に流れる4本の偽予告編が傑作。特に、ロバート・ダウニーJrとトビー・マグワイアが禁断の愛に走る修道士を演じた"Satan's Alley"、超観たいです。

そして、カメオ出演にしては存在感の大きすぎる、あの大スター、すごすぎ。これから観る人もいると思うのですが、あれはやっぱり一応彼だと知っておいた方が面白いと思います。メタボでハゲで性格が超最悪の過激な映画プロデューサーを演じた彼は、この映画の狂った演技で、カメオ出演なのにゴールデングローブ賞の助演俳優賞にノミネートされてしまいました。ロバート・ダウニーJrとともに。それから、落ち目アクションスターのベン・スティラーのエージェント役を演じている某二枚目俳優さん(ボンゴ事件で有名なあの方)も素晴らしいコメディ演技振り。この映画のエンディングタイトルが、妙なダンスを延々と腰を振り振り踊るあのトップスターなのが最高です。

しかも単なるおバカ映画ではなく、ハリウッドに対する強烈な風刺になっているのが面白いです。そもそも、フェイク予告編が見事なパロディになっているし。アクションスターとして落ち目になってきたベン・スティラーが、演技派に転向して、知的障がいの少年を演じた「シンプル・ジャック」でアカデミー賞を狙うというのも、もちろん風刺の一つ。だけど、このネタが、風刺だけではなく、後半における大きな伏線になっているのが実にお見事。また、役者魂のあまり黒人に変身してしまったロバート・ダウニーJrが聞かせる演技論には、なかなか深いものがあります。

基本的には「地獄の黙示録」をベースに、「プライベート・ライアン」などの戦争映画のパロディが随所に盛り込まれているわけですが、元ネタを知らなくても笑えると思います。ジャングルの中で夜中に、ベン・スティラーを襲うある動物については、もう死ぬほど笑っちゃいました。それに対してのエージェントのアドバイスも。前半は、少々戦争に絡んだグロ描写があるので、それに引く人はいると思いますが、それさえ我慢できれば大丈夫。個人的には、オジー・オズボーンのようにコウモリに噛み付くジャック・ブラックにも大笑いしました。

それからニック・ノルティとか、ジョン・ボイトとか、いろいろな大物スターがカメオ出演で出てきます。タイラ・バンクス姐さんも。

しかしコメディ映画なのに、絵作りが非常に凝っていて、ジャングルの危ない雰囲気、「闇の奥」的な禍々しさも感じられて完成度が高い撮影だと思ったら、友達に教えてもらったのですが、「シン・レッド・ライン」のジョン・トールが撮影監督なのだそうです。ヘリコプターに乗りながら、ローリングストーンズの「Sympathy for the Devil(悪魔を憐れむ歌)」が流れるシーンにはしびれます。

万人にお勧めできるかどうかは難しいところだけど、私は、映画館であのトムちんの怪演ぶりとクネクネダンスを観ただけでも、おつりがもらえるんじゃないかと思うくらいでした。それは別にしても、すっごく面白かったです。

Pure Dance: Photographs of the Stuttegart Ballet

昨年の夏、ハンブルク・バレエを観にハンブルクに行ったときのこと。割と大き目の本屋さんに行ったら、バレエ関係の書籍もそこそこありました。でもドイツ語読めないし。写真がちょっと面白かったピナ・バウシュの本だけ買っていきました。ちなみにハンブルク州立劇場のすぐ横には、ハンブルク・バレエの古い資料なども売っていたり、ウィンドーにたくさんお宝を飾ってある小さな本屋さんもあります。話は戻って、その本屋さんのアートコーナーにはシュツットガルト・バレエのカレンダーと、この写真集「Pure Dance: Photographs of the Stuttgart Ballet」も売っていました。というか平積みになっていました。ちょっとパラパラめくってみたのですが、いきなり裸、裸のオンパレードで、周りに人も多かったのでびびってしまって、慌てて本を置いてしまいました。それに、立ち読みされた形跡があって傷んでいたし、お値段も高いし重いから持って帰るのも大変そうだし。

この間の来日公演で色々と調べ物をしていたら、この写真集を撮影した人は、シュツットガルト・バレエのカレンダーを撮影しているDieter Blum氏(オフィシャルサイトでも、少し写真を見ることができます)であることがわかりました。アマゾンのサイトからは、なか身検索で、少しだけ中を見ることができます。ちょうど通貨の関係もあったので、amazon.comで注文してみました。意外と早く届いたので見てみました。

この写真集は2004年に発売されたものですが、表紙はイリ・イェリネクです。すごくワイルドで、今とずいぶん印象が違います。それから、ウラジーミル・マラーホフがいっぱい出ています。マラーホフがアリシア・アマトリアンをアクロバティックな形でリフトしている写真が何枚かありますが、やっぱりマラーホフはとてもきれいな身体をしているな、と思いました。女性ダンサーは、アリシアのほか、オイハネ・ヘレーロやブリジット・ブライナーらが出ています。ダンサーの割りに、みなさん胸が大きくて、非常に均整の取れた、モデルのような体型で美しいです。女性バレエダンサーってもっと痩せているというイメージがあったので。男性ダンサーは、ジェイソン・レイリーやアレクサンドル・ザイツェフ、イヴァン・ジル・オルテガ、ミハエル・カニスキン、ダグラス・リー、マリイン・ラドメーカー、エヴァン・マッキーなどが出ています。フィリップ・バランキエヴィッチは一枚だけで、後姿なので顔がよくわかりません。フリーデマン・フォーゲルは出ていません。マリイン・ラドメーカーはこの頃髪が短くて、別人のように子供っぽくて笑顔がかわいいです。

基本的にみなさんオールヌードで登場しているのですが(したがって、日本ではここまで写せない、というものまで写っていますが)これだけあけっぴろげにしていると、淫靡さとはまるで無縁で、とっても健康的な感じです。最初のページなど、着衣のリード・アンダーソンと写真家を、オールヌードのダンサーたちが囲んでいるので若干間抜けです。とはいっても、ドイツのカメラマンなので、かのファッション・フォトグラファー、(私の大好きな)ヘルムート・ニュートンのデカタントな影響もちょっと感じられます。4人のハイヒールを履いた女性ダンサーが並んだ写真なんかは特にそう。躍動感の出し方、光と影の使い方は非常に巧みです。ダンサーの裸体なので、筋肉のつき方がわかって面白いです。ちょっと解剖学の本を引っ張り出したくなるくらい。そして、さすがに、みんなつま先がすごくきれいです。被写体として魅力的なのは、やっぱり本人のアーティスティックさが伝わってくるイリ・イェリネク(この人実はいっぱいタトゥーを入れているんですね)と、フォトジェニックなマラーホフでしょうか。

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2008/12/14

シュツットガルト・バレエ「オネーギン」Stuttgart Ballet's Onegin覚書その2 -イノセンスの死

11月28日の初日の感想も全然語り足りないのですが、どんどん忘れていってしまうので、また備忘録代わりに書いていこうと思います。


11/29
Onegin (Gastspiel Tokyo, Japan)
オネーギン:ジェイソン・レイリー
レンスキー:マリイン・ラドメイカー
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:スー・ジン・カン
オリガ:アンナ・オサチェンコ
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ダミアーノ・ペテネッラ

Onegin Jason Reilly
Lenski Marijn Rademaker
Tatjana Sue Jin Kang
Olga Anna Osadcenko
Gremin Damiano Pettenella

前日(28日)のフリーデマン・フォーゲルが演じたレンスキーについて、まだ何も書いていませんでした。印象としては、フリーデマンの踊りが非常に安定していて、とてもしっかりしたものになっていること。踊りから受ける印象もあり、フリーデマンによるレンスキーは、地方都市に暮らす詩人ではあっても、朴訥ではなく、どこか世慣れています。都会生活を経験したことがあるのかもしれません。そして非常にプライドが高い。だからオネーギンがオリガにちょっかいを出すのも許せないし、彼女が一瞬でもぐらっとオネーギンに傾いたことも許せない。決闘を申し込むシーンで、一番あからさまに怒りを爆発させ、手袋でオネーギンを激しくぶっていたのが彼のレンスキーでした。と同時に、とても自己愛が強いレンスキーなのです。同じく自己愛が強いオネーギンと激しくぶつかってしまうのも、避けられないことだったのです。決闘を前にしてのソロは、とても美しく技術的にも高度だったのですが、同時にナルシズムを感じさせました。成り行きで自分の婚約者にちょっかいを出した男と決闘をしなくてはならなくなった自分はかわいそうという自己憐憫があふれており、同時に、このように死地に赴いていなければならない自分は、なんてロマンティックな存在なのかという詩人としてのナルシズムです。これくらいの、一歩間違えたら鼻持ちならないまでのプライドを持ったレンスキーというのも、青臭くてそれらしい感じです。

一方、29日のマリイン・ラドメーカーは、理想主義に生きる若い詩人としてのレンスキーです。非常に潔癖で、ピュアで頑固、気高い魂の持ち主です。彼の死は、理想主義の敗北であると共に、イノセンスの死です。レンスキーを殺すことによって、オネーギンは自分の中にも存在していた純真さをも殺すことになってしまい、その後の人生は坂道を転げ落ちるかのように薄汚れてしまったものに成り果てるのです。ジェイソン・ライリーのオネーギンの3幕での老け方は、彼のその後の人生が苦しみに満たされたものであったことを体現していました。

マリイン・ラドメーカーは、1幕では穏やかな微笑を浮かべて、一点の曇りもないような幸福な恋人として登場します。金髪を輝かせた彼は、どこまでも真っ白で、暖かく、陽の光を浴びて輝いているかのようです。だからこそ、オリガの裏切り(というほどのものではないのですが)が許せなかったし、オリガの姉である理知的なタチヤーナが傷つけられたことも許せなかった。こんなことは彼の人生の中にあってはならないのです。そしてその瞬間から死に至るまで、急速に彼の人生は苦悩に満ちたものになります。オネーギン、そしてオリガに向けた怒りが、青い炎となって立ち上っていることを見ることができました。穏やかに見えたレンスキーの中には、彼自身も気がつかなかった激しさが存在していたのです。彼は自分の理想を貫くために、オネーギンと戦うことを選びます。

鼻持ちならない世間ずれした都会の男と、汚れを一切知らなかった詩人との決闘。その前にマリインが見せるソロは、急に今までの完璧な人生が崩れ、自分の中の世界が崩壊していく様を感じ取って心乱れていく様子が現れています。青い炎はますます燃え上がります。そして心の乱れを落ち着かせ、一切の迷いを捨て去って、強い意志を持って彼は決闘に臨みます。その理想主義に彼は殉じるのです。すがり寄るオリガを冷たいほどまでに彼は強く振りほどく一方、タチヤーナには今まで世話になった恩義と、敬意を込めて優しく手にキスをします。タチヤーナのような、やはり純真で夢見がちな少女というのは、彼にとって理想的な存在だったのかもしれません。だからこそ、オネーギンへの激しい怒りを感じたのです。彼は、自分の死をもって、オネーギンに自身の愚かさを思い知らしめるという思いがあったように見えました。

レンスキーを倒したオネーギンを演じたジェイソン・レイリーは、取り返しのつかないことをしてしまった、すなわち自分の中の純真さをあやめてしまうと共に、タチヤーナとオリガの姉妹を深く傷つけてしまったことに気がつき、激しくうろたえます。ジェイソン・レイリーは3人のオネーギンの中で、オネーギンという人物を一番生身の人間らしく、共感できる人物として演じていました。

(続く、かもしれません)

ハンブルク・バレエの「ラ・シルフィード」Hamburg Ballet's La Sylphide動画

ハンブルク・バレエのオフィシャルサイトのトップページでポップアップするウィンドウから、新制作の「ラ・シルフィード」(ラコット版)の動画を見ることができます。
http://www.hamburgballett.de/

動画への直接のリンクはこちら
http://www.hamburgballett.de/video/sylphide.html
ジェームズがティアゴ・ボーディン、シルフィードがエレーヌ・ブーシェ、マッジがセバスチャン・ティル、そしてエフィがカロリーナ・アゲイロです。

ハンブルク・バレエのジャーナル(PDF)も、「ラ・シルフィード」の特集ですね。
http://www.hamburgballett.de/form/journal_2_0809.pdf

セカンド・キャストが、アレクサンドル・リアブコとシルヴィア・アッツオーニのようです。このラコット版の「ラ・シルフィード」はマニュエル・ルグリとエリザベット・プラテルが指導をしているのですよね。

********

ebi-jiroさんの「日々これ口実」によると、同じ「ラ・シルフィード」の動画を以下のサイトでも見ることができます。

http://www.theater-tv.com/index.php5?link=hamburgische_staatsoper

ついでに、ドレスデン・バレエの「ラ・バヤデール」も。イリ・ブベニチェクのソロルは似合っていますね。

http://www.theater-tv.com/index.php5?link=semperoper_dresden

ebi-jiro様いつもありがとうございます!

2008/12/13

マラーホフとメルクリエフのインタビュー&動画@ミッケリ

Classic Live Calanderのサイトで、
http://www.tapahtuma.tv/ClassicLive/index.php

ウラージミル・マラーホフがミッケリのバレエ・フェスティバルで踊った、ボリス・エイフマンの「チャイコフスキー」について語るインタビュー動画を観ることができます。
http://www.tapahtuma.tv/ClassicLive/index.php?tuote_ID=30055
この動画が素晴らしいのは、このエイフマンの「チャイコフスキー」で踊るマラーホフの映像がかなり挿入されていること。全編観る機会がいつかありますように。

同じく、ミッケリのバレエ・フェスティバルのザハロワ・ガラに出演したアンドレイ・メルクリエフのインタビューもあります。英語字幕付。メルクリエフが踊る「アダージオ」の映像も観られます。こうしてみると、メルクリエフってやっぱりすごく美しい人ですね。
http://www.tapahtuma.tv/ClassicLive/index.php?tuote_ID=30036

ミッケリでオフィシャルカメラマンを務めた、バレエ・フォトグラファーのGene Schiavoneさんが、バレエ撮影という仕事について語る動画もなかなか面白いです。
http://www.tapahtuma.tv/ClassicLive/index.php?tuote_ID=30062

France3のサイトでルドルフ・ヌレエフと「ライモンダ」の特集

ルドルフ・ヌレエフ財団からのお知らせメールが来て、France3でのヌレエフ版「ライモンダ」の特設サイトについて教えてもらいました。

12月25日15時45分より、フランスのテレビ局France3で、パリ・オペラ座、ルドルフ・ヌレエフ振付の「ライモンダ」が放映されます。その放映を記念して、12月19日23時15分より、ルドルフ・ヌレエフのドキュメンタリーが放映されます。

http://culturebox.france3.fr/noureev#/noureev/

ドキュメンタリーの一部と思われる動画には、ヌレエフの踊りをはじめ、シャルル・ジュド、エリザベット・プラテル、そしてドロテ・ジルベールのインタビューもありました。さらに、Webのみのコンテンツとして、マリ=アニエス・ジロとジョゼ・マルティネスのリハーサル映像や、ソリストを入れたシーンのリハーサル(エミリー・コゼットやジョシュア・オファルトらがいます)、ワルツのリハーサル(マチルド・フルステーら)、豪華な衣装アトリエ、舞台装置の設営の様子などの素晴らしい映像があります。また、「白鳥の湖」の王子役やパドトロワについて語るローラン・イレールのインタビューも。

映像のサイズも大きくてきれいだし、すごく嬉しい映像です。ただしフランス語なので、何を言っているかは全然判りません。

2008/12/12

12/11「ドン・キホーテ」でボリショイ祭り終了

そういうわけで、先週の火曜日から始まったボリショイ祭りも今日で終了です。数えたら8回も観に行っていました。今週は火・水・木と平日3日間連続だったのでさすがに観る方も疲れました。でも踊っている方は、ずっと大変だったことでしょう。特にザハロワの怪我による降板で急に出演することになったオシポワとワシリエフ、彼らは昨日の「明るい小川」でも踊っているから、すごい。

私もさすがに疲れたので、感想はちゃんとは書けません。さすがにオーシポワ・ワシーリエフのコンビは、先週水曜日ほどアクセル全開ではなかったと思います。まだ彼らは大阪でも「ドン・キホーテ」を踊るんですよね。ワシーリエフはリフトなどでちょっと不安定でした。(でも、例の片手でキトリをリフト→ルルベ→アラベスクはちゃんとやっていました)

グラン・パ・ド・ドゥは、安堵したのか、オーシポワはまた前半ダブル、曲調が変わるところでトリプルを一回入れて後半はシングル2回にダブルを入れていくパターンで回っていました。また、ワシーリエフも、水曜日には息切れしていたように見えたヴァリエーションでの超絶技巧、斜めに身体を傾けての空中回転、後方カブリオールからさらに脚を閉じて開脚するといったすごい技を見せていました。トゥール・ザン・レールから着地すると、そのままつま先をドゥミにして(まるで、かかとをつけないで着地したのではないかと錯覚するほど)そのままピルエットなんて、観たこともないような技まで見せちゃったからびっくり。

急遽のザハロワ降板で、ほとんどの観客はキャスト交代を知らないで会場に着いたと思います。ザハロワのキトリを観たいから(ウヴァーロフを観たいからという方も)という人が多かったと思うので、最初の方は、客席も盛り下がっていて、主演の二人がすごい技を見せても、あまり反応がよくなくてブラーヴォも飛んでいませんでした。でも、だんだん客席が暖まってきて、3幕では最高潮に。良かった、良かった。

オーシポワはやっぱりどうしても肩から指先までのラインがきれいではないので、損をしているんですよね。しかもほとんどのお客さんはザハロワを期待していたわけだし。彼女の情熱的な表情も、人によっては品が良くないと思うかもしれません。ワシーリエフにしても、あのものすごい身体能力を支えるために、太ももが非常に太く、バレエダンサーにあるまじきほどです。そういうわけで、技術はすごいけど、芸術的にはどうなのよ、という疑問はやっぱり出てくると思うんです。だけど、若い二人が、連日このようなハードな舞台で、他のダンサーを楽しみにしてきている満杯の観客を前にして、精一杯お客さんを楽しませようと奮闘している姿は、ちょっと(かなり)感動的でした。

それから、やっぱりボリショイは、キャラクターダンサーやソリストもいいですね~。2幕に出てくる色っぽいお姐さんたち、みんな素敵でした。ジプシーの アンナ・アントロポーワは、「明るい小川」の搾乳女だし、脚がなが~くて、美人なキューピッドのアナスタシア・スタシケーヴィチは、「明るい小川」のキュートな女学生。メルセデスのマリーヤ・イスプラトフスカヤなんか、「白鳥の湖」の美しい女王なんですよね。キトリのママ役アナスタシア・ヴィノクールは「若作りの妻」ですし、ドン・キホーテのアレクセイ・ロパレーヴィチは初老の宿屋の主人。こうやって何公演もみていると、出演者を覚えてきて、親しみを感じてくるので、終わってしまったのが寂しいです。デニス・サーヴィンくんのガマーシュもやっぱり動きが変な人入っていて、笑えましたし、ドン・キホーテとサンチョも、ほーんとに芸達者!

キトリの二人の友人、アナスタシア・メシコーワとヴィクトリア・オーシポワ、二人ともめちゃめちゃ美人だし上手ですね。役に合わせてちょっと肌を濃い目に塗っていたのかしら。アナスタシア・メシコーワはルンキナとニーナを足して2で割ったような超美人。そして3幕のヴァリエーションの二人、「明るい小川」のジーナも可愛くて素晴らしかったエカテリーナ・クリサノワ。アンナ・ニクーリナのヴァリエーションは、足首の柔らかさにほれぼれと見とれてしまいました。それからトレアドールの若手男性たちがやっぱりすごくみんなカッコいいんですよね。ブログでも紹介されていた、「白鳥の湖」のワルツでも目立っていたカリム・アブドゥーリン、改めて脚がすごく長くてきれいなダンサーです。2幕の居酒屋シーンでテーブルに座ってお酒を飲んでいた4人のトレアドールはみんなかっこいいですね。忘れてはいけない、アンドレイ・メルクリエフ。(4階席から観ていたのに)視線の使い方が初日よりもセクシーでした。彼はやっぱり異彩を放つというか、独特の美しい存在感がありますよね。マント捌きも上手いし、つま先もきれい。

連日素晴らしい舞台をありがとう!そして関西公演も怪我人なく乗り切れますように。

ボリショイは再び黄金時代を迎えているのではないかと思いました。ラトマンスキーの功績も大きかったのでしょうね。

キトリ/ドゥルシネア : ナターリヤ・オーシポワ
バジル (床屋) : イワン・ワシーリエフ
ドン・キホーテ (さすらいの騎士) : アレクセイ・ロパレーヴィチ
サンチョ・パンサ (ドン・キホーテの剣持ち) : アレクサンドル・ペトゥホーフ
ガマーシュ (金持ちの貴族) : デニス・サーヴィン
フアニータ (キトリの友人) : ヴィクトリア・オーシポワ
ピッキリア (キトリの友人) : オリガ・ステブレツォーワ
エスパーダ (闘牛士) : アンドレイ・メルクーリエフ
ルチア (街の踊り子) : アナスタシア・メシコーワ
メルセデス (踊り子) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
ロレンソ (キトリの父) : イーゴリ・シマチェフ
ロレンソの妻 (キトリの母) : アナスタシア・ヴィノクール
公爵 : アレクサンドル・ファジェーチェフ
公爵夫人 : エカテリーナ・バリーキナ
居酒屋の主人 : イワン・プラーズニコフ
森の精の女王 : エカテリーナ・シプーリナ
3人の森の精 : ユーリヤ・グレベンシチコワ,ネッリ・コバヒーゼ
          オリガ・マルチェンコワ
4人の森の精 : アレーシャ・ボイコ,スヴェトラーナ・パヴロワ
           チナラ・アリザデ,スヴェトラーナ・グネードワ
キューピッド : アナスタシア・スタシケーヴィチ
スペインの踊り : クリスチーナ・カラショーワ
アンナ・バルコワ,エカテリーナ・バルィキナ
ジプシーの踊り : アンナ・アントロポーワ
ボレロ : アンナ・バルコワ,エフゲニー・ゴローヴィン
グラン・パの第1ヴァリエーション : エカテリーナ・クリサノワ
グラン・パの第2ヴァリエーション : アンナ・ニクーリナ

ひとりごとです。
オーシポワもワシーリエフも私的にはオッケーですし、とても満足した舞台でした。でも、ボリショイの中で踊るザハロワが観たかったです。日曜日の「白鳥の湖」が素晴らしかったので。はっきり言って、今まで何回も新国立劇場でザハロワを観ていますが、そこでの彼女は美しいだけで、特に感銘は残しませんでした。ボリショイでの彼女は、完全に別次元でした。セメニャーカが教師として同伴していたということもあると思います。

で、思ったのは、もう新国立劇場でザハロワを観るのはいいや、と。セット券を買っているので「ライモンダ」と「白鳥の湖」は多分観ますが、売っちゃうかもしれません。というか、最近、すっかり新国立劇場のやり方に嫌気が差しています。「アラジン」は良かったので、ビントレーが来たらまた変わるかもしれないし、彼が芸術監督になったらまた観るかもしれません。が、今の新国立劇場のバレエを、ボリショイやシュツットガルトの素晴らしい公演を観た後では、観たいとは思いません。公演の内容もそうですし、何よりも運営が最近ますますおかしくなっています。来シーズンはもうセット券は買わないし、今もっているチケットだって全部売りたいくらいです。

門 行人さんの「観劇記」の文章をリンクしておきます。ここに書いてあることに、100%同意です。今の東京バレエ団の公演クオリティも決して高くないと思います。でも、(たまに疑問に思うことがなくはないけれど)観客やファンのことを考えてやっていると思います。私設の団体でできることが、なんで国立の劇場、国民の税金を使ってやっている劇場でできないんでしょうかね。しつこいようですが、「コッペリア」のセット券については、本当にあのままでやるつもりなんでしょうかね。本島さんの踊りなんてセット券買ってまで見たくないです、本当に。

http://kado.seesaa.net/article/111066588.html

2008/12/11

ザハロワとウヴァーロフ本日の「ドン・キホーテ」降板

ジャパンアーツのボリショイバレエblogより。
http://bolshoi-ballet.seesaa.net/article/111061965.html

以下引用です。

スヴェトラーナ・ザハーロワ は、昨日のリハーサル中に痛めた左足甲の怪我の回復が思わしくないため、本日の公演に出演できなくなりました。 同時に アンドレイ・ウヴァーロフ も、パートナーの関係から本日は出演いたしません。 二人の代役は、ナターリヤ・オーシポワ と イワン・ワシ−リエフ が務めます。 皆様には、心よりお詫び申し上げますとともに、なにとぞご理解をいただきますよう、謹んでお願い申し上げます。

ザハロワからのコメントも掲載されています。

ザハロワのキトリを楽しみにしている人が多かったでしょうし、残念ですね。来週ザハロワはミラノ・スカラ座での「ラ・バヤデール」も控えているから、大事を取ったのかもしれません。大きな怪我ではありませんように。

今日はソールドアウト公演なんですよね。私も行く予定。二日連続出場となる、代役の若い二人には頑張ってほしいです!

12/10 ボリショイ・バレエ「明るい小川」The Bright Stream まだ途中

今日も楽しかったです~。割引チケットが出ていたようで売れ行きが心配だったのですが、昨日の舞台の評判が良かったためか、当日券等で入った人も多かったみたいで、席はかなり埋まっていたのではないかと思います。私は発売日に予算の都合上3階L列を買ったのです(だってABTと同時発売で、ABTはほぼ全公演買っちゃったんで)。白鳥は上階で観るのが好きなんですけど、こういう小芝居が効いた作品は舞台から近いところで観たほうがいいかも、と思いました。失敗しちゃいました。オペラグラスを使っちゃうと、肝心なところを見逃しちゃうし。

まだ昨日の感想も書き終えていないので、簡単に。後日書き直します。

ジーナがアナスタシア・ゴリャーチェワ、ピョートルがイワン・ワシーリエフ、そしてバレリーナがナターリヤ・オーシポワという若手が中心。そこをフィーリンが怪演ぶりでサポートするって訳で。ワシーリエフはこの日が初役だったようで、1幕のソロなどは例によって人間ヘリコプターぶりを発揮。540を入れた高いクペ・ジュッテ・アン・トゥールナンや、ピルエット・アンドゥオールの途中で空中に浮き上がるように跳躍しながら回転したり。胸のすくような技術はすごかったけど、演技のほうはまだまだ。やっぱりメルクリーエフって演技が上手いんだなあ、って思ってしまった。でも、若くて、憎めないやんちゃな浮気者というキャラクターにはハマっていたけど、若干チンピラっぽいかな。

ゴリャーチェワは「白鳥の湖」でパ・ド・トロワを踊っていた一人。小柄ですごく可愛らしかった。前の日のクリサノワがあまりにも素晴らしかったのでちょっと見劣りしたけど、でも、すごく難易度の難しい振付で、これだけ音が買うにピッタリと合わせて正確に踊れれば十分だと思う。つれない浮気者の夫に耐える健気な若妻という役はあっていたと思う。

ナタリヤ・オーシポワのバレリーナには、もちろんマーシャの超絶男前さはないけど、男装すると男の子みたいで、演技も含めてめちゃめちゃ可愛い。テクニックはもちろんすごくて、コサックたちの踊りの中に飛び出していって、グリッサードなしのすんごい連続グランジュッテを繰り広げるところは仰天するほどだった。マーシャもここはすごかったけど、オーシポワも身体の中に強力なバネがあるみたいで、空中に止まっているかのようだ。「明るい小川」でのレトロなAラインワンピースのような衣装や男装だと、腕の力の入り方も気にならないし、すごい身体能力を感じさせた。

フィーリンのバレエ・ダンサーは今日ももちろん最高だった。後ろ方向へのパドブレ、シソンヌ、アントルラッセ、極めつけはポアントでのランベルセ。どれも一級品なのに、すごく可笑しい。腕の動きもすごくきれいだし、バットマンも柔らかいし、でもデフォルメやカリカチュアを入れておふざけしているのが本当に楽しい。

岩田守弘さんのアコーディオン奏者は、前日のデニス・サーヴィンのやさぐれでちょっときざな色男とはまるで違っていた。もう少し人が良さそうでちょっと可愛いんだけど、やっぱりちょっと胡散臭い。そして踊りの方はというと、サーヴィンもキレキレのすごいテクニックを披露していたけど、岩田さんはもう少し上品。が、それでもノンストップで次から次へと跳躍や回転などの様々なテクニックを万華鏡のように繰り広げていて、すばやい音楽にピッタリあわせていて、本当にこの人38歳なんだろうか、と思うほど若々しい。

若手中心のキャストだったからか、スターそろいで豪華な前日と違って、なんかほんわかとしたムードに包まれていた。でもオーケストラの演奏は今日のほうがノリが良かったかな?ジーナとピョートルのPDDでのチェロのソロの豊潤で美しいこと。思わず聞き惚れてしまった。(実際かなりのショスタコーヴィチファンの方がこられていたようだし、指揮者の井上道義氏も、2日連続で来ていた)ソロでの木琴の爆演も良かったわあ。

フィーナーレは舞台中央に集合写真風に出演者が集まって、みんなで手を振ってくれるというもの。思わず振り返したくなっちゃった。

カーテンコールもなんともいえないあったかい雰囲気。ボリショイでフィーリンが踊るのは最後になるかもしれないのに、特に湿っぽいムードもセレモニーもなかった。その中で、すごいコサックダンス風ウォークを披露してくれた品質検査官のイーゴリ・シマチョフがイカす。彼の品質検査官は、途中で死神になった人かな?あの死神ダンスもすごかった。そして、フィーリンがワシーリエフと手をつなぎ、肩を組んで二人並んでいた時には、フィーリンが、今度は彼がボリショイを引っ張っていくからよろしく、と観客に言っているかのように思えて、ジーンとしてしまった。

「明るい小川」は群舞もノリノリで楽しいし、衣装もとても素敵だし(ジーナや女の子たちの花柄ワンピースが超可愛い)、笑えるし、セットもロシアっぽさ全開でいいし、ショスタコーヴィチの音楽もいいし、そしてボリショイの個性を生かした振付と、本当に最高だった!また日本で全幕を観る機会があればいいなあ。願わくばフィーリンがバレエ・ダンサーを踊り、マーシャがジーナを踊ったこの作品の映像も出して欲しいんだけどね。

音楽 : ドミトリー・ショスタコーヴィチ
 台本 : アドリアン・ピオトロフスキー  フョードル・ロプホーフ
 振付 アレクセイ・ラトマンスキー
 美術 : ボリス・メッセレル
 音楽監督 : パーヴェル・ソローキン
 照明 : アレクサンドル・ルプツォフ
 振付助手 : アレクサンドル・ペトゥホーフ
 指揮 : パーヴェル・クリニチェフ
 管弦楽 : ボリショイ劇場管弦楽団


 ジーナ (ピョートルの妻) : アナスタシア・ゴリャーチェワ
 ピョートル (農業技師) : イワン・ワシーリエフ
 バレリーナ : ナターリヤ・オーシポワ
 バレエ・ダンサー (バレリーナのパートナー) : セルゲイ・フィーリン
 アコーディオン奏者 : 岩田守弘
 初老の別荘住人 : アレクセイ・ロパレーヴィチ
 その若作りの妻 : アナスタシア・ヴィノクール
 ガヴリールィチ (品質検査官) イーゴリ・シマチェフ
 ガーリャ (女学生) : クセーニヤ・プチョールキナ
 搾乳婦 : アンナ・アントロポーワ
 トラクター運転手 : イワン・プラーズニコフ
 高地の住人 : アントン・サーヴィチェフ
 クバンの作業員 : バトゥール・アナドゥルジエフ
 高地の住人たち :アントン・クズネツォーフ セルゲイ・ゼレンコ ロマン・シマチェフ ロマン・ツェリシツェフ
 クバンの作業員たち :ユーリー・バラーノフ ワシーリー・ジドコフ セルゲイ・ミナコフ アンドレイ・ルィバコフ
 ジーナの友人たち : アナスタシア・メシコーワ クセーニヤ・ソローキナ ヴィクトリア・オーシポワ アンナ・ニクーリナ アンナ・オークネワ チナラ・アリザデ


2008/12/10

パリ・オペラ座の「ライモンダ」POB's Raymonda映像/キャスト変更追記

パリ・オペラ座のオフィシャルサイトにて、「ライモンダ」の舞台映像を少し観ることができます。ライモンダがマリ=アニエス・ジロ、ジャン・ド・ブリエンヌがジョゼ・マルティネスです。この二人のアダージオですね。しかしポアントで立つと、マリ=アニエスがジョゼとあまり身長が違わないのに驚きます。マリ=アニエス、映像で観てもテクニックは素晴らしいのですが、やっぱりデカイ感じ。

http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Bonus.asp?Id=768&IdS=549

なお、ライモンダのトップ画像は、エミリー・コゼットのライモンダ。エミリーは背が高くすらりとしていて、金髪なのでライモンダの衣装がよく似合いますね。予定通りで行けば、カール&エミリーの金髪コンビでの「ライモンダ」も観られる予定です。

そのカール・パケットですが、ジェレミー・ベランガールが怪我により12/3のアブデラムを降板したため、アブデラム役の代役として出演しました。12月7日も、ジェレミーの代わりにカールが踊ったようです。カールは、怪我人が出たときには本当に代役として活躍していてえらいですよね。

ちょっと前の記事ですが、ニューヨークタイムズに初日のレビューが載っています。マリ=アニエス、ジョゼのペアとドロテ・ジルベールの写真付。
http://www.nytimes.com/2008/12/03/arts/dance/03raym.html?_r=1

その記事ではマリ=アニエスのことはあまりほめていなくて、ドロテとニコラ・ル=リッシュを絶賛しています。たしかに、マリ=アニエスは、ロシアバレエの「ライモンダ」を見慣れた人には、上半身の使い方が違う、と思えてしまうのかもしれませんね。

というわけで、年末のパリ行きは、今回のボリショイ公演もあり、マーシャことマリーヤ・アレクサンドロワのライモンダが一番楽しみになりました。27日はバスティーユのチケットを持っているのですが、同日のガルニエのチケットもあり、最後までどっちに行くのか悩みそうです。

追記;
と思ったら大変なことが!
マチアスが全降板、キャストの出演日がすごく変わって、大晦日はアニエス&ステファン、アブデラムはなんとローラン・イレールです!

マチアスのエトワール昇進が見られると思ったのにショック…。本当に気の毒です。でもステファンにとっては、昇進のまたとないチャンスですね。イレール様相手に踊れるなんてすごい!

アレッシオ・カルボーネも降板なんですね。こちらも残念です。

オフィシャルにもキャストが出ていました。
http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Distribution.asp?IdS=549

大晦日公演
http://www.operadeparis.fr/Saison-2008-2009/Distribution.asp?IdS=613


27 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Dorothée Gilbert
JEAN DE BRIENNE Christophe Duquenne
ABDERAM Jérémie Bélingard
HENRIETTE Mélanie Hurel
CLEMENCE Muriel Zusperreguy
BERANGER Emmanuel Thibault
BERNARD Gil Isoart
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Charline Giezendanner, Simon Valastro
ESPAGNOLS Sarah Kora Dayanonva, Julien Meyzindy
LE ROI Richard Wilk


28 décembre 2008 à 14h30
RAYMONDA Maria Alexandrova
JEAN DE BRIENNE Ruslan Skvortov
ABDERAM Stéphane Bullion
HENRIETTE Aurélia Bellet
CLEMENCE Eve Grinsztajn
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Florian Magnenet
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Géraldine Wiart, Simon Valastro
ESPAGNOLS Laura Hecquet, Christophe Duquenne
LE ROI Emmanuel Hoff


29 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Emilie Cozette
JEAN DE BRIENNE Karl Paquette
ABDERAM Yann Bridard
HENRIETTE Myriam Ould-Braham
CLEMENCE Nolwenn Daniel
BERANGER Simon Valastro
BERNARD Gil Isoart
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Ghyslaine Reichert, Marc Moreau
ESPAGNOLS Sarah Kora Dayanova, Julien Meyzindi
LE ROI Emmanuel Hoff


30 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Maria Alexandrova
JEAN DE BRIENNE Ruslan Skvortov
ABDERAM Stéphane Bullion
HENRIETTE Aurélia Bellet
CLEMENCE Eve Grinsztajn
BERANGER Josua Hoffalt
BERNARD Florian Magnenet
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Géraldine Wiart, Simon Valastro
ESPAGNOLS Laura Hecquet, Christophe Duquenne
LE ROI Emmanuel Hoff


31 décembre 2008 à 19h30
RAYMONDA Agnès Letestu
JEAN DE BRIENNE Stéphane Bullion
ABDERAM Laurent Hilaire
HENRIETTE Marie-Solène Boulet
CLEMENCE Laura Hecquet
BERANGER Florian Magnenet
BERNARD Josua Hoffalt
LA COMTESSE Béatrice Martel
SARRAZINS Géraldine Wiart, Simon Valastro
ESPAGNOLS Mathilde Froustey, Christophe Duquenne
LE ROI Richard Wilk

12/9 ボリショイ・バレエ「明るい小川」The Bright Stream(まだ途中)

また遅くなってしまったので、取り急ぎ簡単な感想しか書けないけど、とにかくこんなにバレエを観て大笑いしたことはなかったと断言するほど、最高に楽しい舞台でした!本当に観られて良かった!持って来てくれたボリショイ・バレエとジャパン・アーツ、ありがとう!そしてマーシャとフィーリン、ありがとう!

今日観なかったみなさん、ちょっとでも面白そうと思ったら当日券を買って明日(もう今日だけど)観に行くべし!です。フィーリンのあのシルフィード姿と演技を観ないと後悔します。

1930年代のコルホーズを舞台に繰り広げられるドタバタ恋愛コメディ。農村技師のピョートルの妻ジーナは、かつてはバレリーナだったけど、今は結婚してコルホーズで控えめに暮らしている。コルホーズにバレエ団が慰問にやってきて、ピョートルはバレリーナに一目ぼれをして、妻の目もはばからずにアタック。しかし実はバレリーナは、ジーナとバレエ学校の同級生で旧友という間柄。浮気夫をとっちめるために、バレリーナとバレエ・ダンサーが一肌を脱ぐ。ジーナはバレリーナに扮して夫を魅了、一方バレリーナは男装の麗人に変身、さらにバレリーナの同僚のバレエ・ダンサーは女装してトウシューズを履きヒラヒラ踊る。やはり浮気心を出した初老の別荘住人に女装バレエダンサーが迫り、初老の別荘住人の若作りの妻は男装したバレリーナを誘惑する。その上、アコーディオン奏者と女学生ガーリャの恋の鞘当てなど、いくつものカップルが性別や相手をとっかえたりしえt、誘惑合戦を行う。コルホーズの住民たちが、一連のドタバタなど一部始終を物陰から覗いているという趣向も面白いのです。

ギャグもとてもベタなのだけど、マーシャ、フィーリン、クリサノワ、メルクリエフというメーンキャストに加え、初老の別荘住人のアレクセイ・ロパレーヴィチ、その若作りの妻(大体搾乳婦とか役名が可笑しすぎる)アナスタシア・ヴィノクール、アコーディオン奏者のデニス・サーヴィン(ガマーシュ役に続いて大活躍!本当はハンサムでプロポーションもいいのに、なんでこういう変な役がこんなにうまいの?)、トラクター運転手&着ぐるみの犬のイワン・プラーズニコフ、みんなの芸達者ぶりにはもう大爆笑。演技が面白いだけでなくて、それぞれ踊りも超一流、さらにボリショイ管弦楽団の演奏の方も超ノリノリで最高だったので、ホントに贅沢なエンターテインメントを堪能しました。

最大の爆笑ポイントは、2幕でシルフィードに変身したフィーリンが、まるでジゼルのように、グランジュッテで、あのウィリ独特の腕のまま舞台を何回か超高速で横切るところでしょうか。もうお腹痛~いって感じでした。大体、浮気心を起こした初老の別荘住人&その若作りの妻&ピョートルをみんなでからかおうたしなめよう、と策を練っている時の、フィーリンの嬉しそうでたまらない感じがにじみ出ているシルフィードの手つきからして可笑しすぎる~。

いやはや、本当にこの演目でのフィーリンは凄かった!ポアントを履いてシルフィードのロマンチック・チュチュを着て踊っている姿は、ダイジェスト映像やYouTubeでは観ていたけど、百聞は一見にしかず!フィーリンって、男性のかっこうをしている時にはスリムに見えるのに、ロマンチックチュチュだとものすごくごつく見えてしまう。腕の使い方などもわざとコミカルにやっている部分があるのですが、確かなテクニックに裏打ちされたおふざけなので、ますます楽しいです。回転などはさすがに、基本はドゥミ・ポアントなのですが、ポアントでも美しい回転を見せてくれました。さらにすごいのは、ポアントで後方へのパ・ド・ブレを見せたこと。さすがです!腕だって、太くて逞しいけど、動きは柔らかいのです。

フィーリン演じるバレエダンサーは、浮気心を起こした初老の別荘住人をからかうため、彼を誘惑し、彼とパ・ド・ドゥを踊るのですが、いちいち見せるとぼけた小芝居が面白い。あんなに色っぽく誘惑していたくせに、なぜか初老の別荘住人のウオッカの瓶を奪って、大また開いてがぶ飲みして、それからまた酔っ払って踊るんです。なのに時々思い出したように腕を交差させて、可愛らしくしなを作ったり。面白すぎ~。「ドン・キホーテ」ではタイトルロールを演じたロパレーヴィチ(今産休中のマリア・アラシュの旦那様ですね)の初老の別荘住人も、とぼけた演技が大傑作な上、長細くひょろひょろした身体で、ごついフィーリンをプロムナードさせながらサポートしたり、リフトするものだから、たいしたものです。

それから、マーシャの男前なこと!もう~マーシャ大好き。男装すると、本当に宝塚のスターみたいで、カッコよくって美しくてしびれます。1幕の、高地の住人たちとクバンの作業員たちの勇壮な踊りに興奮して、男たちの輪の中に飛び込んで、真ん中で連続グランジュッテを踊ってくれるのですが、シャープで高くて、空中に浮いているみたいで、ものすごいエネルギーと輝きを放っていました。1幕のワンピース姿は、これまた1920年代の映画女優みたいなクラシックモダンな感じがすごく美しい。その美しさで、男性顔負けの超絶ジュッテ(グリッサードとかプレパレーションとか入れないで、連続で跳躍していて、脚はもちろん180度、きれいに地面に平行に開いています)を軽々と踊っちゃうのですもの。女性の姿をしている時に惚れ惚れするくらいだから、男装の時の素敵さといったら、もう。ベレー帽、白いシャツがとっても似合います。ラトマンスキーは、このバレリーナ役は初演キャストであるマーシャをイメージして振りつけたそうですが、よーくわかります。

数々の名共演を今まで生み出してきた、フィーリンとマーシャのパートナーシップがまた、泣けるんです。なんともいえない、言葉では表現できない絆というか、敬意が伝わってくるんですよね。コミカルなやり取りの息もバッチリで、特に1幕最後にピョートルをみんなで懲らしめる作戦を話し合っている時の掛け合いや、衣装を取り出したり、受け取ったりするタイミングの絶妙さといったら。大体、バレリーナの旧友であるジーナを助けるために、女装してトウシューズを履いて踊るという発想は、普通の人はしないと思うんですが、フィーリンのあのキャラクターだと、それが変なことのように思えないから不思議なんです。


to be continued

2008年12月9日(火) 19:00~20:50
明 る い 小 川 2 幕 4 場

音楽 : ドミトリー・ショスタコーヴィチ
台本 : アドリアン・ピオトロフスキー
     フョードル・ロプホーフ
振付 アレクセイ・ラトマンスキー
美術 : ボリス・メッセレル
音楽監督 : パーヴェル・ソローキン
照明 : アレクサンドル・ルプツォフ
振付助手 : アレクサンドル・ペトゥホーフ
指揮 : パーヴェル・クリニチェフ
管弦楽 : ボリショイ劇場管弦楽団

ジーナ (ピョートルの妻) : エカテリーナ・クリサノワ
ピョートル (農業技師) : アンドレイ・メルクーリエフ
バレリーナ : マリーヤ・アレクサンドロワ
バレエ・ダンサー (バレリーナのパートナー) : セルゲイ・フィーリン
アコーディオン奏者 : デニス・サーヴィン
初老の別荘住人 : アレクセイ・ロパレーヴィチ
その若作りの妻 : アナスタシア・ヴィノクール
ガヴリールィチ (品質検査官) アレクサンドル・ペトゥホーフ
ガーリャ (女学生) : アナスタシア・スタシケーヴィチ
搾乳婦 : アンナ・アントロポーワ
トラクター運転手 : イワン・プラーズニコフ
高地の住人 : アントン・サーヴィチェフ
クバンの作業員 : バトゥール・アナドゥルジエフ
高地の住人たち :
 アントン・クズネツォーフ
セルゲイ・ゼレンコ
ロマン・シマチェフ
ロマン・ツェリシチェフ
クバンの作業員たち :
 ユーリー・バラーノフ
ワシーリー・ジドコフ
セルゲイ・ミナコフ
アンドレイ・ルィバコフ
ジーナの友人たち :
 アナスタシア・メシコーワ
クセーニヤ・ソローキナ
ヴィクトリア・オーシポワ
アンナ・ニクーリナ
アンナ・オークネワ
チナラ・アリザデ

2008/12/09

ボリショイ岩田守弘さん「プロフェッショナル 仕事の流儀」今日放送

ボリショイ・バレエ唯一の日本人団員でファーストソリストの岩田守弘さんMorihiro Iwata(ボリショイ劇場の表記では、Morikhiro Ivata)を追った「プロフェッショナル 仕事の流儀」はいよいよ今日放送です。

NHK総合テレビ
12月9日(火)
午後10:00〜10:45
再放送
 総合 毎翌週火曜 午前1:00〜1:44
     (月曜深夜)
 BS2 毎翌週水曜 午後5:15〜5:59

私は今日はボリショイの「明るい小川」を観に行くので、リアルタイムでは見られないのですが、録画をして見ます。(でもDVDレコーダーが絶不調というか寿命なので、録画できるかとても心配)

それに関連して、「プロフェッショナル 仕事の流儀」のナビゲーター、脳科学者の茂木健一郎さんの連載記事、茂木健一郎の「超一流の仕事脳」 に岩田さんのことが書いてありました。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20081204/179212/?ST=life

「岩田さんの場合は、ロシアのバレエダンサーに比べて小柄であるために、道化などの役になることが多い。
悩んでいたときに、お父さんから「世界一の道化になればいいじゃないか」と言われて、考え方が大きく変わったという。あらゆる職業において、そういうことがある。それを受け入れるのはとても大事なことで、みんながスターになればよいというものではない。

 逆に言うと、単にスターなどという考え方がいかに雑駁なものか。ロシアでは「小さな役というものはない。小さな芸術家がいるだけだ」という言葉があると岩田さんはおっしゃっていた。

今回、あらためて再認識させられたことは「芸術は人の心を豊かにする」ということだった。心の豊かさとは何か。岩田さんは、そのいくつかの要素として、助け合うこと、人にやさしくすること、やさしくなるためには強くあることなどを挙げておられた。

自分が苦しい時、人に助けてもらうことで、やさしさの大切さを学ぶ。生活が苦しい時、物質的に貧しいときにこそ人は助け合う。心の豊かさを物質的な豊かさは無関係だとも言われるが、物質的な豊かさがないときに人は心の豊かさでそれぞれを補いあうものだ。 」

****

芸術とは何か、心の豊かさとは何か、いろいろと考えさせられる岩田さんの言葉です。先日の「白鳥の湖」の岩田さんの道化を見て、岩田さんは本当にプロフェッショナルの道化として踊っておられるんだな、と思いました。岩田さんはもちろん、素晴らしいテクニックの持ち主で、しかも技術の中に美しさや気品があります。天下のボリショイ・バレエですから、テクニックだけを取ったら、岩田さんよりも上の人はいるかもしれません。でも、道化という脇役を踊るにあたって、これだけ演技を考え抜いて、丁寧に心をこめて踊っている人はいないのではないかと思いました。そのような入魂の姿勢で踊りに取り組む岩田さんは、きっとボリショイの若いダンサーたちのよい手本になっているんだと感じさせられました。番組を見るのと、「明るい小川」でのアコーディオン弾きの役を観るのが楽しみです。


朝日新聞にも岩田さんのインタビューが載っていました。
http://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY200812050218.html
岩田さんの振付作品「魂」をいつか日本で観る機会があればと思います。

NHKの番組オフィシャルで、岩田さんの回がバックナンバーとして追加されました。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/081209/index.html

で、私はというと、DVDレコーダーがやはり故障していて予約がうまくいかず観られませんでした…。再放送があるのでそれでみるべしかな。「明るい小川」が上演された日に放映っていうのはきついです~。帰宅したらもう番組が終わっていました。

でも、プレトークで少し岩田さんのお話が聞けたのが良かったです。明日の「明るい小川」での岩田さんのアコーディオン弾きが楽しみです。デニス・サーヴィンのアコーディオン弾きもとても良かったのですが、きっと岩田さんなら違う個性を見せてくるでしょうね。

Kings of the Danceの舞台写真

Kings of the Danceの公式ブログだと思うのですが、

http://community.livejournal.com/kingsofthedance/7860.html

のサイトで、ニコライ・ツィスカリーゼ、ドミトリー・グダーノフ、ホセ・カレーニョ、デヴィッド・ホールバーグ、そしてNYCBのホアキン・デ・ラ・ルースという5人のダンサーたちの、素晴らしい舞台写真を見ることができます。

グダーノフはこのツアーに参加してから、ボリショイの日本公演に出演したんですね。彼の写真では、身体のラインの美しさがよくわかります。今回の「白鳥の湖」の繊細で心を打つ演技や端正な踊りで、グダーノフは相当株を上げたんじゃないかと思います。

ホアキン・デ・ラ・ルースってホントにハンサムですね~。以前NYCBでバランシン版「真夏の夜の夢」のオベロン役を踊るのを観たのですが、ニューヨークステートシアターの4階席後方だったので、顔がよく見えませんでした。でも踊りそのものは軽やかで大変素晴らしかった記憶があります。

そしてやはりツィスカリーゼの悪の天才が見たかったです。今回はボリショイ居残り組なんですよね。

追記:飛行機で移動中、そしてオフの5人のダンサーたちの素顔の写真が載っているエントリも追加されました。このツアーに参加したものの、その後に予定されていたボリショイの日本公演には怪我で出演できなくなったニーナ・カプツォーワも写っています。

http://community.livejournal.com/kingsofthedance/8009.html

デヴィッド・ホールバーグってあんなに美青年だったのに、最近ちょっとコワモテになりすぎてきましたね。

マライン・ラドメイカーMarijn Rademaker、 German Dance Price ‘Future’を受賞

シュツットガルト・バレエのマライン・ラドメーカーのオフィシャルサイトからのニュースです。マラインがDeutschen Tanzpreis (German Dance Price) ‘Future’(Zukunft-未来賞)を受賞されたとのこと。おめでとうございます!

シュツットガルト・バレエのサイトでも書いてありましたね。
http://www.staatstheater.stuttgart.de/ballett/start.htm

Deutschen Tanzpreis のオフシャルサイト
http://www.deutscher-tanzpreis.de/

German dance price 2009は、チューリヒ・バレエのディレクターであり振付家のHeinz Spoerliが、今までの貢献に対して受賞しました。(昨年の受賞者は、ジョン・ノイマイヤー、もちろんシュツットガルト・バレエのリード・アンダーソンも受賞したことがあります)

2009年3月21日に、エッセンのAalto Theatreで、Heinz Spoerliを讃えるガラ公演が開催され、マリイン・ラドメーカーは「ペール・ギュント」の1幕を踊るとのこと。

12月5日、7日、11日と、マラインはチューリッヒ・バレエでのHeinz Spoerli 振付「ペール・ギュント」に客演しています。
劇場のサイトにもちゃんとプロフィールが。
http://www.opernhaus.ch/e//kuenstler/kuenstler_detail.php?bioID=1042

その間を縫って、イタリアのウンディーヌでのイタリア赤十字チャリティガラにも、アリシア・アマトリアンと出演しています。
http://www.teatroudine.it/teatroudine/articolo.jsp?idArticolo=44

本当に彼は大活躍中なんですね。ニュース記事によれば、マラインはまだ24歳とのことなので、生まれ持った容姿の美しさに加えて、今後の成長が非常に楽しみです。シュツットガルト・バレエの来日公演での「眠り」の王子や「オネーギン」のレンスキーがとても美しく、そして情熱を感じさせてくれました。

下2つはドイツ語の記事です。

http://www.ad-hoc-news.de/Heinz-Spoerli-erh%C3%A4lt-Deutschen-Tanzpreis-2009--/de/Politik/19893644

http://tagblatt.de/35692982/Nachrichten/Kultur

機械翻訳(英語)
A German dance price goes to Stuttgart first soloist of the Stuttgart Balletts, 24-jährige Netherlands dancer Marijn Rademaker, " with the German dance price; Future " 2009 excellently. The German dance price 2009 goes meanwhile to Swiss Choreografen Heinz Spoerli (68) for its life's work

このGerman dance price; Futureは、一昨年はベルリン国立バレエのソリスト、マリアン・ワルター(ヤーナ・サレンコの旦那様ですね)と、同じシュツットガルト・バレエのカーチャ・ヴュンシュが受賞しています。

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余談ですが、Deutschen Tanzpreis のオフシャルサイトのダウンロードページからは、ドイツのバレエに関する情報誌Ballet Internがダウンロードできます。最新号では、ジョン・ノイマイヤーを特集し、ハンブルク・バレエのニジンスキー・ガラと思われる写真(ドイツ語なので確信はもてない)がたくさん載っています。マニュエル・ルグリとレティシア・プジョルの「シルヴィア」、ルシア・ラカッラとロベルト・ボッレの「椿姫」など。

http://www.ballett-intern.de/downloads/2_2008.pdf

2008/12/08

シュツットガルト・バレエブログ最終回

NBSのシュツットガルト・バレエ団のブログ最終回がアップされていました。
http://www.nbs.or.jp/blog/0811_stuttgart/

岩国での「眠れる森の美女」で主演したエヴァン・マッキーとカーチャ・ヴュンジュの公演後ショットがあるのが嬉しいです。平日でなければ見に行きたかったです。長身のエヴァンはさぞかし素敵な王子様だったことでしょう。シュツットガルトに帰国後はバランシンの「テーマとヴァリエーション」の真ん中を踊るそうです。

最終公演の兵庫での眠りは満席だったようですね。兵庫はホールが便利なところにあり新しく綺麗で見やすいので、素敵だったことでしょう。ボリショイがなければね〜。

大阪、広島(岩国)、兵庫と移動が多い中、移動日でも公演前日はしっかりリハーサルするんですね。

移動中の駅のホームでのショット(バランキエヴィッチとフォーゲル)などもあります。

早くまた来日してほしいです。

動画のほうはバレエ団との契約により削除されてしまいました。でも素晴らしかった舞台の記憶を留めて、まだ書いていない公演の感想を書かなくては!

12/7夜 ボリショイ・バレエ「白鳥の湖」簡単な感想

本当は12月6日の夜も観ているのですが、それは後回しにして、日曜日の夜公演の感想を先に。

こんなにも素晴らしい舞台を、ボリショイの「白鳥の湖」で観られるとは!チケットを取る時はどうしようかと躊躇していたけど、観に行って本当に良かった!

グリゴローヴィチ版(2001年悲劇版)の「白鳥の湖」は、ロットバルト=悪の天才が存在感がないと締まらないというか、悪の天才こそがこの作品の最重要人物であるということを、改めて認識した。

ベロゴロフツェフは、「ドン・キホーテ」の初日では本調子ではなかったのでちょっと心配をしていた。しかし、さすが「白鳥の湖」のロットバルトを踊るために来日していただけのことはある。長身、大きな表現、大胆さ、切れ味鋭い跳躍、悪魔的なカリスマ性…素敵。こんな悪魔が目の前にいたら、喜んで魂を差し出してしまいそう。王子役のウヴァーロフと並び、1幕2場の冒頭、長身の二人がシンクロするように同じ動きをするのを観ると、ぞくぞくした。王子がロットバルトに操られ、弱みに付け込まれ、幻想の世界へと落ちていく過程が手に取るように判る。

2幕1場でのソロも鼻血が出そうなくらいカッコ良かった!グリゴローヴィチ版(正義は勝つヴァージョン)の「白鳥の湖」DVDでの、アレクサンドル・ヴェトロフの伝説的な演技には及ばないまでも、それに肉薄するような強烈なプレゼンス。

とともに、こんな解釈ができることに気がついた。

1幕2場の湖畔の白鳥たちの世界は、悪の天才が王子に見せた幻影。もちろんオデットもそう。そして、オデットそのものも、悪の天才が作り上げたものであり、ロットバルト=悪の天才の分身なのではないかと。オデットとオディールは、一人の女性の別の側面を見せているからこそ、王子はあんなにもオディールにも魅せられてしまうと考えられないだろうか。オデット自身に悪意はなくても、彼女は実在しない存在であり、この上なく美しい幻影なのだ。

そう考えるに至ったのは、オデットのザハロワがあまりにも神々しく、非現実的なまでに美しかったから。

ザハロワの白鳥は新国立劇場などで今までもさんざん観てきていて、彼女の白鳥が非常に美しいのはよくわかっていた。だけど、何か物足りない。どうしてもお姫様的な演技から抜け切れていなくて、完璧な造形美、しなる脚、とてつもなく美しい曲線を描く甲と、美しいことこの上ない。だけども、それだけ、という印象だった。ボリショイ・バレエで、この悲劇版の白鳥の湖を踊るからこそ、彼女の白鳥は本来の魅力を発揮しているのだと思う。もちろん、ザハロワ自身の演技力も進化していると思うだが。

1幕2場のザハロワは、徹底的に悲劇的な存在として描かれている。ただ単に、眉間に皺を寄せて哀しそうな表情をしているのではない。オデットの悲しみを、全身で奏でている。彼女の表現は、実は賛否両論を呼んでいるようだ。脚を高く上げすぎる。動きがあまりにも曲線的でクリアさに欠けている、と。たしかに、ポアントでデヴロッペから5時55分のポーズを取ったり、アラベスクの脚をびっくりするくらい上げたりするのは少々やりすぎだとは思う。が、音をめいいっぱい使っての腕の動きには、過剰なところや無駄なものは感じられず、ただただオデットの心の震えや悲しみを歌い上げる美しいメロディを奏でるために必要不可欠な、シンプルな表現だと感じられた。十分クリアで、無駄なものなど何もない、純粋な美と哀しみの体現。

1幕2場のコーダの後、再び王子の前に姿を現し、パドブレしながら去っていく時、オデットは二度も王子にまなざしを向ける。2度目は、再び白鳥の姿に戻ってから。これがザハロワの白鳥の演技における大きなポイントだと感じた。

オディールは、悪女っぽさを前面に出さず、常に微笑を浮かべ、その愛らしい笑顔や目、そしてクールで魅惑的な動きで王子を殺していると思わせた。王子が騙されていたことを知った時にも、必要以上には高笑いもしないで、それゆえ余計に王子をダメージを与えるような艶やかな笑みを向けている。その笑みは、1幕2場でオデットが最後に向けた微笑に似ていた。オデット=オディールという解釈ができる余地が、ここに隠されていると思うのは深読みしすぎだろうか。

ウヴァーロフの王子もとても良かった。前日夜のアルテム・シュプレフスキーの王子が、どうしようもなかったこともあり、ウヴァーロフってやっぱりボリショイのトップスターなんだと改めて思った。ウヴァーロフは、ちょっとアンドゥオールが弱くて時々内脚になってしまうという欠点が今日も出てしまった。が、全体的な彼の踊りや演技を観れば、そんな欠点は些細なことのように思えてくる。佇まいが、本当に王子そのもので気品がある。その気品の中に、悪の天才に付け込まれてしまうような繊細さや弱さが見えている。彼の演技が秀逸だったからこそ、悪の天才に操られていたということが判る。ベロゴロフツェフとの踊りのシンクロ具合も見事だった。異界で異形の姫に魅せられて、幻想の中に迷い込んでしまうイノセントさ、優しさをよく表現していた。踊りも軽やかでエレガントで、目を吸い寄せるものがある。

2幕2場、ロットバルトに高々と持ち上げられて息絶えたオデットだが、その姿が目に入らない王子。彼女の姿を、半ば狂気が入り混じりながら追い求め、そして膝をついて慟哭しながらあちらの世界へと見果てぬ夢を追い続けるように旅立ってしまう遠い表情もまた魅力的なウヴァーロフだった。ラストの演技は、グダーノフのが一番気に入ったけど、ウヴァーロフも素晴らしい。

主役3人が絶好調で、超一流の仕事を見せてもらったという思いで大満足。

脇に目を転じると、やっと見られた岩田守弘さんの道化。さすが、彼の代表的な役柄だけあってすんごく良かった。とてもチャーミングな中に、すごく気品があって、宮廷で働いているプロフェッショナルの道化という感じ。動きが柔らかく、跳躍や回転といったきらびやかな面だけで勝負しているわけではない、ちゃんと"道化”とはどういう存在なのか考え抜かれた演技を魅せているのが素晴らしい。といっても、テクニックが劣るという意味ではなく、技術はもちろん超一流。プリエがとても効いていて、バネのある跳躍はとても高くて特に2幕1場の最初の方の跳躍はすごかった。回転も正確で、1幕1場の見せ場でのピルエット・ア・ラ・スゴンドはいつまでも回転できそうなくらいで、音楽を実際よりも長くつなげていたくらい。ボリショイの至宝とも言える、素晴らしい存在感だ。

2幕1場の各国の姫たちの踊りや付随する民族舞踊も、最初はいまいちと思っていたけど、見慣れていくうちに面白くなってきた。姫たちの顔ぶれがとても豪華で、中でもやはりエカテリーナ・シプリナの強気な存在感と魅惑にはひきつけられた。ロシアの王女、オリガ・ステブレツォーワがとても美人。

白鳥の群舞も上の席から観ていたので見事なものだったし、4羽の小さな白鳥での、エシャッペと5番への着地の正確さ、揃い方が本当にすごかった。

やはりボリショイとマリインスキーは世界で1,2を争う2大バレエ団だと感じた次第。観られて良かった!


音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー  
 台本・改訂振付・制作 : ユーリー・グリゴローヴィチ 
 原振付 : マリウス・プティパ,レフ・イワノフ,アレクサンドル・ゴールスキー
 美術 : シモン・ヴィルサラーゼ
 音楽監督・共同制作 : パーヴェル・ソローキン
 照明 : ミハイル・ソコロフ
 指揮 : パーヴェル・クリニチェフ
 管弦楽 : ボリショイ劇場管弦楽団


 オデット/オディール : スヴェトラーナ・ザハーロワ
 王妃 (王子の母) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
 ジークフリート王子 : アンドレイ・ウヴァーロフ
 ロットバルト : ドミートリー・ベロゴロフツェフ
 王子の家庭教師 : アレクセイ・ロパレーヴィチ
 道化 : 岩田守弘
 王子の友人たち : アンナ・ニクーリナ,アナスタシア・ゴリャーチェワ
 儀典長 : アレクサンドル・ファジェーチェフ
 ハンガリーの王女 : ネッリ・コバヒーゼ
 ロシアの王女 : オリガ・ステブレツォーワ
 スペインの王女 : アナスタシア・メシコーワ
 ナポリの王女 : アナスタシア・ゴリャチェーワ
 ポーランドの王女 : エカテリーナ・シプーリナ
 3羽の白鳥 : ネッリ・コバヒーゼ,ユーリヤ・グレベンシチコワ,オリガ・マルチェンコワ
 4羽の白鳥 : チナラ・アリザデ,スヴェトラーナ・グネードワ,スヴェトラーナ・パヴロワ,アナスタシア・スタシケーヴィチ
 ワルツ : オリガ・ステブレツォーワ,アナスタシア・シーロワ,アレーシヤ・ボイコ,アンナ・オークネワ,カリム・アブドゥーリン,デニス・サーヴィン,ウラジスラフ・ラントラートフ,エゴール・フロムーシン


2008/12/07

12/6昼 ボリショイ・バレエ「白鳥の湖」簡単な感想

「白鳥の湖」のマチネとソワレの掛け持ちはめっちゃ疲れます~。しかもマチネは開演が12時とかなり早くて、朝の弱い私はつらかったです。ソワレが終わったのが9時40分ですから、本当に長い一日でした。でも、マチネとソワレの間が空いていてどうしようと思ったけど、お友達と遅いランチをして、それから服なんかも買っちゃったり、さらには国立西洋美術館の前のクリスマス・イルミネーションを見ていたらあっというまにソワレの時間でした。

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December 6th 12:00
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本・改訂振付・制作:ユーリー・グリゴローヴィチ(2001年改訂版)
原振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ、アレクサンドル・ゴールスキー
指揮 : パーヴェル・クリニチェフ
管弦楽 : ボリショイ劇場管弦楽団

オデット/オディール : アンナ・アントニーチェワ
王妃 (王子の母) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
ジークフリート王子 : ドミートリー・グダーノフ
ロットバルト : ユーリー・バラーノフ
王子の家庭教師 : アレクセイ・ロパレーヴィチ
道化 : ヴァチェスラフ・ロパーティン
王子の友人たち : アンナ・ニクーリナ,アナスタシア・ゴリャチェーワ
儀典長 : アレクサンドル・ファジェーチェフ
ハンガリーの王女 : ネッリ・コバヒーゼ
ロシアの王女 : オリガ・ステブレツォーワ
スペインの王女 : アナスタシア・メシコーワ
ナポリの王女 : アナスタシア・ゴリャチェーワ
ポーランドの王女 : エカテリーナ・シプーリナ
3羽の白鳥 : ネッリ・コバヒーゼ,ユーリヤ・グレベンシチコワ
         ヴィクトリア・オーシポワ
4羽の白鳥 : チナラ・アリザデ,スヴェトラーナ・グネードワ
         スヴェトラーナ・パヴロワ,アナスタシア・スタシケーヴィチ
ワルツ : オリガ・ステブレツォーワ,ヴィクトリア・オーシポワ
      アレーシヤ・ボイコ,アンナ・オークネワ
      カリム・アブドゥーリン,デニス・サーヴィン
      ウラジスラフ・ラントラートフ,エゴール・フロムーシ

アントニーチェワの白鳥は、姿かたちが夢のように儚く、プロポーションが美しい。長い四肢、よく出た甲。そして腕使いもたおやかで、気品があります。特に指先の繊細な表現力が見事でした。派手さはないけど芯の強さを感じさせて、悲劇的なドラマの主人公として相応しい感じがしました。2幕の終わりで去っていく時に王子に向けたまなざしが強烈な印象を与えました。オディールも、余裕のある上品かつしたたか悪女ぶりで素敵でしたが、グランフェッテは32回回りきったものの、芯が通っていない感じで移動してしまい、不安定でした。グリゴローヴィチ版の「白鳥の湖」は、オディールのヴァリエーションがとても好きなのですが、アントニーチェワは自らが楽器となって奏でていく、素晴らしい音楽性を発揮していたと思います。

そして素晴らしかったのがグダーノフの王子!小柄でプロポーションには恵まれていませんが、脚のラインは美しいしピルエットの軸もしっかりとしていて確実なテクニック。きれいに5番に入るトゥール・ザン・レール、ぴたっと止まる回転、つま先もきれいに伸びている。王子としての優雅さと優しさ。その上、この悲劇版の王子としての演技が胸を打ちました。美しいながらも、徹底的に打ちのめされる悪夢によって、王子の心は容赦なく壊されます。その壊れ具合に、涙、涙。

2001年に改訂されたグリゴローヴィチの「白鳥の湖」は徹底的な悲劇、バッドエンドです。その悲劇の予兆は、2幕(1幕2場)のコーダに現れています。コーダで急速に音楽が速くなり、白鳥たちはぐるぐると円環を描くように舞うと、オデットはその中にまぎれてしまい、そしていつのまにかいなくなってしまいます。しばらく舞台の上で一人、視線をさまよわせると再びオデットは姿を現し、王子に視線を送ったかと思うと、白鳥の姿に戻り、ロットバルトに操られるように去っていきます。

ロットバルト(別名悪の天才)は、ノイマイヤーの「幻想 白鳥の湖のように」の影のような存在。ヌレエフ版の「白鳥の湖」のロットバルト像に近いところもあります。悪の天才は、王子に寄り添い、王子を操ろうとします。オデットは、この悪の天才が作り上げた幻想だと考えることができます。1幕1場と2場の間に、王子とロットバルトの二人が繰り広げられるデュオがとても印象的です。ユーリー・バラーノフのロットバルトは上手いダンサーで、技術的にはまったく問題はないのですが、王子を目くらまし、幻惑するトリックスターであり悪魔として存在するには、もう少し濃厚な存在感とカリスマ性が必要なのではないかと思いました。この役を当たり役としているニコライ・ツィスカイリーゼのように。

(微妙にネタバレ)

4幕(2幕2場)でも、王子とオデットはロットバルトの手下の黒鳥たち、そしてロットバルトに邪魔されて、引き離されます。このときの平行線を描いた群舞の隊形が秀逸です。黒鳥たちの列が、文字通り二人を阻む壁として機能するのですから。終幕では、永遠に王子とオデットは、残酷な形で引き剥がされ、王子は狂気の淵、出口のない悪夢に沈むのです。中央の透けて見える幕の向こうでは、ロットバルトが、力なく横たわったオデットを高々と掲げ、二人の姿は魔法のように消えます。グダーノフはオデットの姿を激しく求めながら、最終的に二人を引き裂いた壁に突っ伏し、そして悲嘆のあまり床に倒れこみます。救いの欠片も、カタルシスもまったくない、情け容赦のないエンディング。

(ネタバレ終わり)

岩田守弘さんの道化が見られなくて残念と思いましたが、ヴァチェスラフ・ロパーティンの道化も素晴らしかったです。鮮やかなテクニック、どこまでも高く軽やかな跳躍、だけどその中にも気品があって魅力的でした。

ワルツでの4人の男性が、みなプロポーションも容姿も美しく、テクニックもあって実に目の保養でした。その中の一人には、「ドン・キホーテ」で演技の細かいガマーシュを踊ったデニス・サーヴィンくんもいました。確信はもてないのですが、スペインの王女のバックにも、一部重複したメンバーで、同じく4人の見目麗しい男性ダンサーたちが。グリゴローヴィチ版はキャラクターダンスではなく、各国の王女たちがポアントを履いて踊るバックに群舞がいる形。キャラクターダンスが好きな私にとっては正直言ってあまり面白くなかったのですが、スペインは後ろの男性ダンサーたちばかり観てしまいました(笑)。

演奏は、もう少しドラマティックなもの、ロシア的なものを期待していましたが、バレエのオーケストラとしては十分すぎるほどのもの。「ドン・キホーテ」に続いて、真珠のようにクリアな輝きを放つハープの音色には聞き惚れました。

マチネの軽い感想だけで力尽きたので、続きはまた後で。

2009年5月「ザハーロワのすべて」演目決定

今日のボリショイ・バレエの「白鳥の湖」で、2009年5月「ザハーロワのすべて」の演目を載せた速報チラシが入っていました。

演目はジャパンアーツのサイトにも載っています。

http://www.japanarts.co.jp/html/2009/ballet/zakharova/index.htm

ヨーロッパでのザハロワ・ガラで大好評の「ブラック」や、平山素子さん振付の「Revelation」が踊られるのですね。非常に魅力的なプログラムです。

出演は、スヴェトラーナ・ザハーロワ Svetlana Zakharova
アンドレイ・ウヴァーロフ Andlei Uvarov
ニーナ・カプツォーワ Nina Kaptsova
アンドレイ・メルクーリエフ Andlei Merkuriev
アルテム・シュピレフスキー Artem Shupilevsky
イワン・ワシーリエフ Ivan Vasiliev
ネッリ・コバヒーゼ Nelli Kobakhide

メルクーリエフは「アダージョ」のソロや、ザハロワと「トリスタンとイゾルデ」を踊るんですね。本当にこのガラを観に行けそうにないのが残念です。できれば、チケットがどーんと売れて、「マラーホフの贈り物」のような恒例公演になって欲しいですよね。

Aプログラム

Part Ⅰ
≪カルメン組曲≫Carmen Suite/Alberto Alonso-Vizet-Shcheddrin
(音楽:ビゼー/シチェドリン 原振付:アロンソ 改訂演出:A&A.プリセツキー)
出演:ザハーロワ、ウヴァーロフ、シュピレフスキー、キエフ・バレエ
Carmen: Zakharova, Jose: Uvalov, Torero: Shpilevsky, Othes: Kiev Ballet

Part Ⅱ

「海賊/プティパ-ドリゴ」《Le Corsaire》Marius Petipa ? Riccardo Drigo
カプツォーワ&ワシリエフKaptsova & Vasiliev

「アダージョ/ミロシニチェンコ-バッハ」《Adagio》Miroshnichenko-Bach
メルクーリエフ Merkuriev

「Revelation/平山素子 - J.ウィリアムズ シンドラーのリスト」
《Revelaion》Motoko Hirayama-J.Williams/Schindler’s list
ザハーロワ Zakharova

「ブラック/F.ヴェンティリア-R.オーブリ」《Black》Francesco Ventiglia-Rene Aubry
ザハーロワ&メルクーリエフ Zakharova & Merkuriev

「マグリットマニア/クラサーヴィン-ポ-ソホフ-ベートーヴェン」
《Magrittomania》Yuri Krasavin -Yuri Possokhov ? Ludwig van Beethoven,
コバヒーゼ&シュピレフスキーKobakhide & Shpilevsky

「クレイジー/セルゲイ・ボンドゥール-ピアソラ」《Crazy》Sergei Bondur -Astor Piazzolla
ワシーリエフVasiliev

「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ/
ザハーロワ+ウヴァーロフ+キエフ・バレエ団女性ソリスト(2名)                   他

Bプログラム
Part Ⅰ
≪カルメン組曲≫Carmen Suite/Alberto Alonso-Vizet-Shcheddrin
(音楽:ビゼー/シチェドリン 原振付:アロンソ 改訂演出:A&A.プリセツキー)
出演:ザハーロワ、ウヴァーロフ、シュピレフスキー、キエフ・バレエ
Carmen: Zakharova, Jose: Uvalov, Torero: Shpilevsky, Othes: Kiev Ballet


Part Ⅱ
「パリの炎/ワイノーネン-アサフィエフ」《The Flame of Paris》Vasily Vainonen-Boris Asafiev
カプツォーワ&ワシリエフKaptsova & Vasiliev

「トリスタンとイゾルデ/パストール-ワーグナー」《Tristan and Isolde》Richard Wagner-Kristof Pastor
ザハーロワ&メルクーリエフ Zakharova & Merkuriev

「ブラック/F.ヴェンティリア-R.オーブリ」《Black》Francesco Ventiglia-Rene Aubry
ザハーロワ&メルクーリエフ Zakharova & Merkuriev

「ジゼル/プティパ、アダン-ペロー、コラーリ」
コバヒーゼ&シュピレフスキーKobakhide & Shpilevsky

「クレイジー/セルゲイ・ボンドゥール-ピアソラ」《Crazy》Sergei Bondur -Astor Piazzolla
ワシーリエフVasiliev

「ヴォイス/パストール-ヴェルディ」《Voice》Kristof Pastor-Giuseppe Verdi
ザハーロワ Zakharova


明日はそのザハロワ主演の「白鳥の湖」を観に行きます。マチネのクリサノワも観たいし、今日観たグダーノフの白鳥の王子も素晴らしかったのでもう一度観たいんですが、さすがに体力もお金もないし、家事だってやらないといけないので!

2008/12/06

イリ・イェリネクの「オネーギン」手紙のパドドゥ

オネーギンの備忘録を書いていたら、初日のイリで止まらなくなりました。

それにしても三幕、手紙のパドドゥでイリのオネーギンがまとうオーラの悲劇的なこと。初老に入り人生の厳しさをくぐり抜けてきてややくたびれたオネーギンだが、今なおすらりと背が高く美男子。かえってそのうらぶれ方、老い方がやさぐれた魅力を醸し出しており、再会したタチヤーナが思わず心を揺らしてしまうのも無理がない。あの時あんなにひどくタチヤーナを拒絶し、さらに決闘事件でレンスキーを死に追いやった男が、自尊心の塊だったオネーギンが、足元にすがりつかんばかりに愛を迫る。舞踏会では往時の輝きを失い、時代に取り残された男でも、タチヤーナと一対一で対峙するときは、あの時と同じ、セクシーな大人の紳士として存在している。しかもタチヤーナのことを熱烈に愛しているのだ。

イリのオネーギンは、あの時に振った小娘が美しい社交界の華になっていて、逃した魚は大きいと思って彼女に迫ったのではない。下降していく自らの人生、それに対して今が花の盛りなタチヤーナ。彼は自分の残り少ない生の中に、最後の輝きを点そうと、命懸けでタチヤーナに愛を語る。だから、その最後の人生の賭けで彼はタチヤーナの愛を手にできなくとも、タチヤーナに一度も再会できないで終わる人生だったより、結局は幸せだったのだと思う。何もない人生よりは、不幸な人生の方がいいという人生哲学だ。

パドドゥの中盤から、オネーギンは往時の輝きを取り戻したかのような、切り裂かんばかりの鮮やかで痛切なアントルラッセを見せる。背後からタチヤーナを包み込み、愛おしみ、求めて止まなかった人生ただ一つの宝物を手に入れようとする。包み込みその指先からも、痛ましいまでの想いが零れ落ちている。しかも、前半では、タチヤーナの身体を胸で受け止めて、手では触れていないというのだから、あまりにも痛切だ。

アマトリアンのタチヤーナはまだ年齢的には若い。優しい夫にも愛されていることを感じて日々を暮らしている。だが、その若さに似合わず、心が先に年老いてしまったようだ。何かを封じ込めて生きている、そんな頑なさがある。オネーギンへの恋を葬り去って生きて来た彼女には、表面上の幸せさの間から漏れ出るかすかな不幸が見える。

そしてその頑なさが、オネーギンの出現、彼の手紙、そして彼による求愛で少しずつ溶けてゆく。

だが、タチヤーナはオネーギンによって心が熔かされて行くことに怖れを抱く。鏡のパドドゥのときの動きにも似た、夢の中の奔放な少女が顔を出したことに。そして、タチヤーナはオネーギンへの想いを永遠に葬り去ることを選ぶ。自分の感情に蓋をするように、涙を流しながらも厳しい身振りによる激しい拒絶。かつてのことを繰り返すように、タチヤーナは彼の顔をみないようにして、手紙をびりびりに破って顔を背け、紙くずとなった手紙を彼に押し付ける。あんなにもクールで澄ました伊達男だったオネーギンは、プライドをかなぐり捨てて、全てを投げ出すように彼女の足元にすがる。が、受け入れられないことが解ると、すばやく走り去る。彼の去ったあと、その軌跡を追うように部屋をふらふらさ迷った揚句、激情をぶつけるように激しく慟哭するタチヤーナ。だが、アマトリアンの悲しみ、苦しみの表情があまりにもストレートに出過ぎていたように思えた。若いダンサーだからだろうか。タチヤーナの苦悩はそんなに簡単に顔の表情に出せるものではないと思うのだ。演技しすぎてはいけない、役になりきろうとしてはならない、役そのものを生きなければならないのが、「オネーギン」の難しいところ。

その点、真の意味で"役を生きていた”のがイリだと感じられた。顔の表情ではなく、一挙一頭足で、オネーギンの自己憐憫、鼻持ちならなさ、慄き、熱情、後悔、絶望が手に取るように感じられる。バレエでそれを感じられることはなかなかない。


NBSのサイトでこの動画が観られるのも後わずかか~。
http://www.nbs.or.jp/blog/0811_stuttgart/cat54/

Newsweek日本版にボリショイ・バレエの舞台裏写真

ジャパン・アーツのボリショイ・バレエ2008ブログにも案内がありましたが、現在発売中のNewsweek日本版(12月10日号)に、写真家Peter Blakelyさんによるボリショイ・バレエの美しいステージ裏写真が4ページに渡って掲載されています。

「ボリショイ・バレエ 舞台裏の白鳥たち」と題されたこの写真特集、写真の多くは2006年の来日公演のときに撮影されたものです。が、「白鳥の湖」の舞台袖で出番を待つスヴェトラーナ・ザハロワの後姿、やはり出番を待つコール・ドのダンサーがストレッチをしている写真は、2008年11月と最近のものです。

「ラ・バヤデール」のナデジダ・グラチョーワや、「ファラオの娘」のセルゲイ・フィーリンの貴重な写真も。

去年の12月、新宿のコニカプラザでPeter Blakelyさんのボリショイ・バレエ写真展が開催されたのですが、まだサイトが残っているので数枚写真を見ることができます。この写真展は、本当に素晴らしいもので、何時間でもその世界に浸っていたいと思いました。自分が舞台袖にいるような感覚に襲われました。Peter Blakelyさんは、もともと報道カメラマンなので、だからこそこんなに臨場感のある写真が撮れるのだと思います。

http://konicaminolta.jp/plaza/schedule/2007december/gallery_c_071220.html

Peter Blakelyさんのオフィシャルサイト
http://www.peterblakely.com/main.php

余談ですが、カバーストーリーの「オランダ人の子供は世界一幸せ」を読んでちょっとにやにやしちゃいました。

今日はボリショイ祭りは小休止で仕事に励みましたが、明日はマチソワ、日曜日はソワレの「白鳥の湖」に行ってきます。

*****

以下雑談なので読み飛ばしてください。

話はずれますが、毎日新聞の12月3日の夕刊に、三浦雅士氏による2008年のバレエ総括がありました。ここで三浦氏は新国立劇場の「アラジン」をボロクソにけなしています。基本的に芸術ではなくて娯楽だと。とりわけ音楽の質が低いのだそうです。たしかに娯楽作品ではあったし、感情を揺さぶられるような作品ではないと思います。が、音楽は決して悪くないと言うか作品によくマッチしていたと思うし、「新国立劇場が宝塚や劇団四季の観客までバレエに取り込もうと張り切るのは結構だが、それがいいかどうかは議論の余地がある」という物言いはどうなんでしょう~。(私は国産ミュージカルは一度観て懲りたからもう二度と観ません。宝塚はあまり観ていませんが、面白いと思います)少なくとも、牧阿佐美氏による最悪な「椿姫」や古典の改訂よりずっと「アラジン」は良いと思います。
ちなみに、使われている写真は「マラーホフの贈り物」のマラーホフとセミオノワのロビンス版「牧神の午後」。ロビンスが蘇るのを感じたって、もちろん良かったのですが、そこまで絶賛するほど良かったでしょうか。シュツットガルトの「オネーギン」でクランコが蘇ったというのは納得ですが、それと比較できる次元とは思えません。

まあ毎日新聞なんて新聞を読んでいる人も少ないとは思いますけど、基本的にバレエの記事は滅多に載らず(朝日や読売の方が多い)、たまに載った時には三浦氏によるNBS提灯記事なんですよね。以前載った、上野水香のキトリの方がポリーナ・セミオノワより良かったというのにはちょっと絶句しました。

2008/12/05

12/4 ボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」

昨日とは同じバレエ団の舞台なのが信じられないくらいの、いい意味でも、悪い意味でもとんでもない公演。楽しかったからいいけど!

オーシポワとワシーリエフがすごいというのは様々な映像や、海外で見てきた人などから聞いて織り込み済みだったけれども、実際に全幕を目にしてしまうと驚愕するばかり。

オーシポワは登場の時のジュッテから、ものすごくバネが効いた跳躍で、頭と足先がくっついてしまうほど大きく反る。ゴムマリのよう。そしてワシーリエフも、登場の時から、空中でパッと真横に180度開脚して、しかもひねりを加えたジュッテ。彼には翼が生えているんじゃないかと思うほど。二人とも、いちいち跳躍が高くて、小柄なこともあってさらに高く跳んでいるように見える。

ここでもう、観客がヒートアップ。初日に引き続いて、招待客が多かったので、招待の人がいなければもっと盛り上がったんじゃないかと思う。それに乗せられて、オーケストラもノリノリに。

1幕のキトリの友達二人とバジルのパドトロワ。ワシーリエフは、フィニッシュでは、トゥール・ザン・レールプラスアンレールのコンビネーションを2回、そしてトゥールザンレールで一旦着地したあと、フィギュアのコンビネーションのジャンプのようにプレパレーションなしで2回連続アンレール。

オシポワのカスタネットのソロも、脚をバシッと6時の位置まで上げたかと思うと、それから本当に高く跳ぶこと。のけぞること。やったわ!という喜びが感じられて、気持ちいいといえばそう。コーダのピケの時の、パッセの脚の位置も脚の付け根辺りと高い。

1幕の片手リフトをするところでは、2回目のリフトで、ワシーリエフはオーシポワを持ち上げたまま、ルルベだけでなく、アラベスクまで見せてしまうし、ふらつかず、歩かないでサポートができていた。

2幕の酒場での狂言自殺シーンは、先に二人で打ち合わせてから行う。このあたりの演技は、若い二人らしくてなかなか微笑ましかった。オーシポワの胸をモミモミしてけっこうエッチなワシーリエフ。でも二人とも童顔だから、子供二人がじゃれているみたい(実際、ワシーリエフはまだ19歳)。

ワシーリエフのここでのピルエット、アラ・スゴンドで始まって、途中でアティチュードデリエールに。彼のピルエットは、ホセ・カレーニョのように途中で惰性でくるくる回って、ゆるやかにストップする。必要以上に回転して斜めになることがないのはえらい。多くても8回転くらいにとどめている。(以前、イワンはインタビューで12,3回は当たり前に回れると言っていたような気がした)

ワシーリエフがピルエットした後、オーシポワが勢いよく飛び込むところ、映像ではもっと勢いをつけて飛び込んでいたようなのを観たと思うけど、今日も十分勢いがあって、腕が地面につきそうだった。ふらつかないでしっかりと受け止めるワシーリエフ。

夢のシーンでのドルシネアのオーシポワは、残念ながら姫には見えなかった。キトリの時にはちょっと子豚ちゃんな顔が愛嬌があって可愛いけど、お姫様にはつらい。しかも、ドリアードに長身スリム美女のネッリちゃんが入っていたり、ドリアードの女王のシプリーナもほっそりとした美人だし、コールドもみんなプロポーションが良いので、小柄で体操出身らしく太ももが太く肩もがっちりしているオーシポワは見劣りする。コーダのグランジュッテは、さすがにものすごく高く、空中で静止して見えるほどで飛距離もあるけど、その分足音がしてしまうし。それから、上半身がバレエ的でなくて力が入っているのだ。キトリのときよりは、柔らかく優雅に動こうとしているけど、やっぱりキトリの地が時々出てきてしまう。オシーポワのテクニックは申し分ないのだけど、昨日のアレクサンドロワはちゃんと姫だったし、足音なんかまったくさせていなかったと思い返す。

3幕のグラン・パ・ド・ドゥ。オーシポワのヴァリエーションは、昨日のマーシャもそうだったけどエシャッペではなくてパッセを繰り返すもの。やっぱり今日も演奏がものすごく早かったけど、音には合わせていた。でも、なんかバレエじゃない感じ。このときのハープの音が、真珠の粒を弾いているみたいで、とても美しかった。

ワシーリエフは、またここで例の惰性で回るピルエット。そして空中開脚ジャンプ。身体を斜めに倒しての2回転半のトゥールザンレールを2回。(3回目もやろうとしたけどやめて、膝で着地していた)とにかくいちいち跳躍が信じられないほど高い。マネージュは、グラン・ジュッテ・アン・トゥールナンの間に、アティチュードで空中半回転するのだけど、そのときにふわっと浮かび上がって、まるで翼が生えているかのよう。

とにかく、これだけスーパーなテクニックを持っている男性は、世界に5人くらいしかいないのではないかしら。(思い浮かぶのは、サラファーノフ、キューバ国立のロメル・フロメタ、ABTのエルマン・コルネホ、ダニール・シムキンあたり) バレエじゃない、と言われたらそうかもしれないけど、ワシーリエフはまだ10代で若いから、表現力などはこれから磨いていけそう。彼には、確かに観るものを幸せにする陽の魅力がある。公称175センチよりも背は低く見えるし、プロポーションもがっちりしていて見栄えはしないが、ルックスは愛嬌があってとても魅力的だ。

オーシポワのフェッテがすごかった。時々手を腰に当てながら、前半は全部ダブル、後半に移るときにトリプルを入れてシングル、ダブルの繰り返し、最後は4回転。音楽が速いので、フェッテも当然すごく速い。そして軸がずれたり、移動することがないのがすごい。まだまだ追加で32回くらい余裕で回れそうだった。

******

というわけで、とにかくこの二人の世界びっくり人間ショーのような技合戦を見せられた「ドン・キホーテ」で、物語性は希薄。あまり全幕バレエを観た気がしない。同じ超絶技巧でも、キューバ国立バレエの「ドン・キホーテ」のDVDの二人は、エレガンスを持ち合わせていて、ちゃんとカンパニーに溶け込んでいるのに。

別の意味ですごかったのが、シュプレフスキーのエスパーダ。前日のメルクリーエフがいかに素晴らしかったかがよくわかった。立っていると本当に美貌で長身でカッコいいのだけど、踊りに切れがなく、やや猫背気味で、背中が硬い。アンドゥオールできていないことも。致命的なのが、音楽性がなく、常に他のトレアドールよりワンテンポ遅れた動き。でも、女たちが奪い合うほどの、セクシーでいい男ではあるのだけど。

ドリアードの女王、シプリーナは、ゆったりと大きな動きで優雅で美しかった。オーシポワと並ぶと、オーシポワが引き立て役になってしまう。キューピッドは昨日と同じアナスタシア・スタシケーヴィチで、脚が長くて、ちょっと大人っぽい美人。第一ヴァリエーションが昨日と同じクリサノワで、彼女のヴァリエーションも素晴らしかった。さすがに主役を踊るだけのことはある。第2ヴァリエーションはネッリ・コバヒーゼ。腕がとても美しく、優雅で音楽的な動き。フィニッシュで若干ぐらついたけど、あの美しさの前では問題なし。

ドン・キホーテ、サンチョ・パンサ、ロレンツォ、そしてガマーシュは前日と同じキャスト。彼らは本当に演技が細かくて芸達者で面白い。特にガマーシュのデニス・サーヴィン、昨日よりもさらにクネクネと怪しい人になっている。ハンサムなのにバカ殿メイクで、ヒール靴から覗く脚がほっそりときれい。。主役が真ん中で踊っているときにもガマーシュらはしっかりと演技をしていて、どこを見ていいのか迷うほど。街の人々一人一人に至るまで、みんな演技をしているのが楽しさを倍増させている。ジプシーの群舞、トレアドール、ボレロ、ファンダンゴに至るまで、コールドは質が非常に高い。

その質の高いメンバーの中で、主役二人(そしてエスパーダ)はいささか浮いて見えた。でも、オーシポワにしても、ワシーリエフにしても、若いし技術や身体能力は人並みはずれているので、今後どのように変化していくかは楽しみ。会場であった知人が、ワシーリエフの「スパルタクス」を見たそうなのだけど、それはそれは素晴らしかったそうだ。日本でも、次回公演には「スパルタクス」を持ってきてくれないかしら。また2,3年後の来日になるでしょうから、きっとワシーリエフ、さらに才能を開花させていることだろう。

バランスが欠けているところが目に付いた公演ではあったけど、世にも珍しい凄いものが観られたということで、やっぱり楽しかった!

キトリ/ドゥルシネア : ナターリヤ・オーシポワ
バジル (床屋) : イワン・ワシーリエフ
ドン・キホーテ (さすらいの騎士) : アレクセイ・ロパレーヴィチ
サンチョ・パンサ (ドン・キホーテの剣持ち) : アレクサンドル・ペトゥホーフ
ガマーシュ (金持ちの貴族) : デニス・サーヴィン
フアニータ (キトリの友人) : ヴィクトリア・オーシポワ
ピッキリア (キトリの友人) : オリガ・ステブレツォーワ
エスパーダ (闘牛士) : アルテム・シュピレフスキー
ルチア (街の踊り子) : アナスタシア・メシコーワ
メルセデス (踊り子) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
ロレンソ (キトリの父) : イーゴリ・シマチェフ
ロレンソの妻 (キトリの母) : アナスタシア・ヴィノクール
公爵 : アレクサンドル・ファジェーチェフ
公爵夫人 : エカテリーナ・バルィキナ
居酒屋の主人 : イワン・プラーズニコフ
森の精の女王 : エカテリーナ・シプーリナ
3人の森の精 : ユーリヤ・グレベンシチコワ,ネッリ・コバヒーゼ
          オリガ・マルチェンコワ
4人の森の精 : アレーシャ・ボイコ,スヴェトラーナ・パヴロワ
          チナラ・アリザデ,スヴェトラーナ・グネードワ
キューピッド : アナスタシア・スタシケーヴィチ
スペインの踊り : クリスチーナ・カラショーワ
           アンナ・バルコワ,エカテリーナ・バルィキナ
ジプシーの踊り : アンナ・アントロポーワ
ボレロ : アンナ・バルコワ,アントン・サーヴィチェフ
グラン・パの第1ヴァリエーション : エカテリーナ・クリサノワ
グラン・パの第2ヴァリエーション : ネッリ・コバヒーゼ

2008/12/04

12/3 ボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」初日/2009年マリインスキー・バレエ来日公演

ボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」初日に行ってきました。プレトークにはナタリア・オシポワとイワン・ワシリエフが出たようなのですが、もちろん間に合う時間に来られるはずもなく。

マリーヤ・アレクサンドロワはやっぱり最高でした!明るくて華やかでお茶目で、「これぞボリショイ」という踊りを見せてくれました。本当に幸せな気持ちにさせてくれます。1幕でロレンツォに持ち上げられて足をばたばたさせるところとか、3幕のヴァリエーションの小刻みなパドブレなど。足先の細かい技がすごくきれいなのです。ジュッテがあれだけ大きくてもふわりと空中に浮いていて足音はしないし。グラン・フェッテはオーケストラのテンポがびっくりするくらい速く、それにピッタリ合わせての超高速シングルでした。とても正確で安心して観ていられます。片手リフトされる時には、両脚をパドシャのように曲げていたし、非常にバネがあるのがわかります。ドルシネア役のときには姫らしい気品があるし、勝気で可愛いキトリはハマり役でした。彼女のキトリは、もっともっと観たいです。

ドミトリー・ベロゴロツェフは代役の代役。ちょっと調子が悪そうなところもありましたが(片手リフトが決まらなかった。でも、ちゃんと足はルルベしていた)、演技はとても細かくて、マーシャと息がピッタリ。軽薄でひょうきんで楽しいバジルでした。彼ってあんなに細いダンサーでしたっけ?と思うくらいスリムで脚が長くみえてきれいな身体のライン。3幕のコーダのグラン・テカールは高くて浮力があってお見事。ロットバルト=悪の天才役も楽しみです。

3人のドリアードの中にいたネッリ・コバヒーゼの可愛くて綺麗なこと!際立って顔が小さくて美しく、プロポーションに恵まれていて腕使いが柔らかい。明日は3幕の第二ヴァリエーションの予定ですね。第一ヴァリエーションのエカテリーナ・クリサノワもジュッテが高く、甲がよく出ていて美しかったです。彼女の白鳥は取っていないのですが、観たくなりました。今日の第二ヴァリエーションのチナラ・アリザデは、ニーナ・アナニアシヴィリを思わせる黒髪美人で、彼女も素敵でした。

アンドレイ・メルクリエフのエスパーダ、美しかったです。エスパーダにしては王子寄りのキャラクター作りで、ちょっとエレガントすぎるかな、と思うところもありましたが、自然と目が吸い寄せられるような、なんともいえない華と色香がある人です。身体の線が美しくて、マントをまわしながらの大きな背中の反らせ方も絶品。こんなにも綺麗なエスパーダは初めてかもしれません。

キャラクターダンサーたちも、ドン・キホーテとサンチョ・パンサの二人を始め、演技がとても達者で面白くて、どこに目をやっていいのかわからなくなるほどでした。デニス・サーヴィンくん、美形だし、脚もきれいで、ガマーシュにしてはきれい目メイクなのに帽子を取られると禿げていることになっているから気の毒です。カマっぽいガマーシュで面白かったです。

コール・ドはやっぱりボリショイだな、マリインスキーとは違うな、と思いましたが、女の子たちはみんな美人でスタイル良し。2幕のジプシーの男性群舞も迫力がありました。アンナ・アントロポーワによるジプシーの舞は全身をフルに使った情熱的なもので、見ごたえがありました。主役だけでなくて、脇役、群舞に至るまでレベルが高いのがさすがボリショイ!あのものすごく速い演奏についてこられるというのがまず凄すぎます。

今回はオーケストラ帯同なのですが、この演奏もド迫力。音は爆音系だし、序曲からスピード感(倍速?)があっていかにもロシアオケ。カスタネットのソロではオーケストラピットからもカスタネットが鳴り響き、そしてハープの音が非常に澄んでいて美しかったです。

演出は、新国立劇場の演出と同じなのでしょうか?構成がとても似ていました(向こうもファジェーチェフ版でしたよね)。ギターの踊りが入ったり、ジプシーの踊りのパターンも同じでした。森の女王はイタリアンフェッテはしないで、パンシェアラベスクの繰り返しです。ギターの踊りって新国立で観たときには退屈で仕方なくて早く終わらないかしらと思ったところですが、やはりボリショイのダンサーで、ボリショイのオーケストラで観るとけっこう楽しめます。

いずれにしても、ボリショイの実力を思い知らされた初日。明日のオシポワ&ワシリエフも楽しみです。

 音楽 : ルートヴィヒ・ミンクス
 台本 : マリウス・プティパ
 振付 : マリウス・プティパ,アレクサンドル・ゴールスキー
 振付改訂 : アレクセイ・ファジェーチェフ
 ファジェーチェフの助手 : ミハイル・ツィヴィン
 美術 : セルゲイ・バルヒン
 衣裳復元 : タチヤーナ・アルタモノワ,エレーナ・メルクーロワ
 音楽監督 : アレクサンドル・コプィロフ
 照明 : ミハイル・ソコロフ
 美術助手 : アリョーナ・ピカロワ
 指揮 : パーヴェル・クリニチェフ
 管弦楽 : ボリショイ劇場管弦楽団


 キトリ/ドゥルシネア : マリーヤ・アレクサンドロワ
 バジル (床屋) : ドミートリー・ベロゴロフツェフ
 ドン・キホーテ (さすらいの騎士) : アレクセイ・ロパレーヴィチ
 サンチョ・パンサ (ドン・キホーテの剣持ち) : アレクサンドル・ペトゥホーフ
 ガマーシュ (金持ちの貴族) : デニス・サーヴィン
 フアニータ (キトリの友人) : ヴィクトリア・オーシポワ
 ピッキリア (キトリの友人) : オリガ・ステブレツォーワ
 エスパーダ (闘牛士) : アンドレイ・メルクーリエフ
 ルチア (街の踊り子) : アナスタシア・メシコーワ
 メルセデス (踊り子) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
 ロレンソ (キトリの父) : イーゴリ・シマチェフ
 ロレンソの妻 (キトリの母) : アナスタシア・ヴィノクール
 公爵 : アレクサンドル・ファジェーチェフ
 公爵夫人 : エカテリーナ・バルィキナ
 居酒屋の主人 : イワン・プラーズニコフ
 森の精の女王 : アンナ・ニクーリナ
 3人の森の精 : ユーリヤ・グレベンシチコワ,ネッリ・コバヒーゼ
          オリガ・マルチェンコワ
 4人の森の精 : アレーシャ・ボイコ,スヴェトラーナ・パヴロワ
          チナラ・アリザデ,スヴェトラーナ・グネードワ
 キューピッド : アナスタシア・スタシケーヴィチ
 スペインの踊り : クリスチーナ・カラショーワ
           アンナ・バルコワ,エカテリーナ・バルィキナ
 ジプシーの踊り : アンナ・アントロポーワ
 ボレロ : アンナ・バルコワ,エフゲーニー・ゴロヴィン
 グラン・パの第1ヴァリエーション : エカテリーナ・クリサノワ
 グラン・パの第2ヴァリエーション : チナラ・アリザデ

ボリショイ・バレエのパンフレットの後ろの方に、来年のマリインスキーバレエ来日公演の広告が載っていました。

2009年11月12月

<予定演目>
白鳥の湖
眠れる森の美女(原典版)
フォーキンの夕べ
ラトマンスキーの新作 他

フォーキンの夕べが入るのがとても嬉しいです。白鳥に眠り、ではワンパターンですからね。フォーキンは、おそらくは4月のNY公演と同じで、ショピニアーナ、薔薇の精、瀕死の白鳥、シェヘラザードのパターンなのではないでしょうか。「シェヘラザード」であの鮮烈な、とてもエロティックなロパートキナが観られるかしら。ちなみに今度マリインスキーでソーモワが瀕死の白鳥を踊るらしいですが、日本公演ではロパートキナかヴィシニョーワにして欲しいです(ソーモワなんて10年早い)。薔薇の精は、またアントン・コルサコフの天使のような薔薇が観られるといいわ。「眠れる森の美女」の原典版って、セルゲイ・ヴィハレフが再振付をして、3幕だけが「マリインスキー劇場のジルベスターコンサート」のDVDに入っているものでしょうか。4時間以上あるので、平日上演は無理でしょうね。

なお、マリインスキー・バレエは3月末~4月に台湾で公演を行うそうです(Lyubov様に教えていただきました)。こちらも、「白鳥の湖」と「眠れる森の美女」とのこと。演目が違えば台湾に観に行くのも良さそうですが、白鳥に眠りでは食指が動きません。

2008/12/03

ボリショイ・バレエ芸術監督 アレクセイ・ラトマンスキーAlexei Ratmansky「明るい小川」特別講演会 その1

映像も色々と観られたし、かなりぶっちゃけ話もあってとても面白かったです。

1.今までを振り返って

Q:なぜサンクトペテルブルグ出身なのに、モスクワ・バレエ学校に行くことになったのでしょうか?キエフ・バレエを選んだ理由は?

A.私の父はキエフ生まれで、母がサンクトペテルブルグ生まれなのです。ロシアの中で最高峰のバレエ学校はモスクワという母の考えで、ボリショイに行くことにしました。

キエフ・バレエを選んだのは、当時家族がキエフに住んでいたからです。本当はモスクワに残りたかったのですが、私は優等生ではなかったので残れなかったのです。しかしキエフも素晴らしいバレエ団で、そのレベルには大変満足しています。

Q.あなたはキエフ・バレエでブルノンヴィルの「ラ・シルフィード」を踊って、その後デンマーク・ロイヤル・バレエに移籍されました。ラ・シルフィードを踊ったことは、デンマークに移られたこととは関係がありますか?

A.デンマーク・ロイヤル・バレエで踊ったことは大変誇りに思っていますが、ロイヤル・ウィニペグ・バレエ、それからデンマークロイヤルに移籍したことについては、色々と理由があるので一概に総括はできません。私はキエフを発ってロイヤル・ウィニペグに移籍した時に色々なことをやってみたいと思いました。まだ振り付けについては未熟だったので、もっと学びたい、そのためにはカナダに行って学ぶのが良いと思って移籍したのです。モスクワ・バレエ学校で学んだことは最高峰の教育を受けたことですが、実際に踊っていくうちに自分のキャリアを積んでいく上でもっと学ばなければならないことがあると思いました。

Q.最初の振付作品はどのようなものでしたか?

A.モスクワ・バレエ学校に在籍していた15歳の時のもので、「魔法使いの弟子」というタイトルでした。お祭りがあって、先生方でみんなでバレエを作ろうということでしたが、実際には寮の階段や廊下で振付を行いました。10分くらいの小品です。
次の作品はキエフ時代に創りました。ウクライナのコンクールやモスクワのコンクールのために作ったもので、舞台に立ちながら振付も担当しました。その後キエフバレエのレパートリーとなるように手直しを加えました。

Q.振付家で憧れの人というのはいますか?

A.難しい質問です。私の中で、本能的に湧き出るものは、音楽によって啓蒙されるものであり、誰か振付家というより、音楽そのものから振付のイデーを頂いている。学校時代に、2時間の「音楽の歴史と理論」と言うのがあったが、それがとても楽しくて、大好きな授業だった。音楽から湧き出るものを私は楽しんでいました。

Q.あなたの作品は、ショスタコーヴィチやプロコフィエフに振付けたものが多いですが、20世紀のロシア音楽に興味があるのですか?

A.ショスタコーヴィチの音楽はロシア人にとって多くの意味を持っている。彼は20世紀のロシアの歴史を描いている。言葉がなくても心をつかんで離さない音楽であって、私にとってはとても大きな存在の音楽家です。心の内容を表現するのには、音楽が最も適していると思います。ショスタコーヴィチは革命を生き抜いて、20世紀を生き抜いてロシア氏を描きました。私にとっては人生の光であり、ロシア人と共にあった音楽家だと思います。

ショスタコーヴィチの音楽については、実際いろんな評価がありました。彼のシンフォニーはどれもがわかりやすいものではなく、暗いとか政治的という人もいます。彼は音楽界の革命児というよりは破壊者であり、グロテスクさや滑稽さを持ち込んでいます。「明るい小川」の中にも、ショスタコーヴィチらしさはあります。

私の振付作品は全部で40~45作品ありますが、うち8作品は大作です。全幕作品の最初の作品は「くるみ割り人形」です。クラシックバレエにしても革新的な振付をすることができるので、作り変えは面白いです。「くるみ割り人形」はヴァレリー・ゲルギエフ、そしてシェーミキンに呼ばれてマリインスキーに創りに行きました。そのときにはこのような大家に招かれて光栄に思いました。私にとってゲルギエフもシェーミキンも大スターなので、リハーサルもたくさん行ったのですが、シェーミキンが自分自身のアイディアのものを作りたいということがあり、私が本当に取り入れたいものは却下されてしまいました。自分勝手と取られてしまったので、とても難しい面がありました。「ジゼル」にしても、他の振付家から変えて欲しいと言われたり、いろいろなエピソードがあります。

デンマークロイヤルバレエでも、振付のために招聘された時に色々なドラマがありました。デンマークロイヤルに依頼された「くるみ割り人形」が完成に至らなかったのです。舞台芸術や衣装は整っていたのですが、途中で私はペテルブルクに帰ってしまい、周り中がパニックに陥りましたので、もう一度作り直すことになりました。その1ヵ月後に初演が控えていたのですが、完成した作品はそれから5年間、デンマークロイヤルでレパートリーとして上演されました。

この「くるみ割り人形」は、1915年のイメージがわくような、戦争の時代を表現するアンサンブルを用意し、破天荒なものになりました。雪娘も意地悪で、策略家で、くるみ割り人形を凍らせようとする役割にしました。

もう一つ、デンマークロイヤルでは、子供たちのための総合教育施設で、くるみを上演する機会を与えてくれました。私の中でそれはとてもよい思い出です。実際の観客が、子供たちで、彼らのおじいちゃんおばあちゃんなど家族が見てくれました。大人向けではなく、子供たち向けに作品を作ることができたので、嬉しかったです。この演目では、性格的なものを演技できる人を招聘したいと思い、アーティストたちはわずかな表情やわずかな震えを表現できる人を使いました。

このデンマークでの実験的な試みを行ったのも、「明るい小川」の作品の中に反映されています。性格描写やパントマイムについて、この経験によって学ぶことができました。もともとバレエの中にはパントマイムはあったのですが、1950年代、ソビエトの中でそれは失われてきました。しかし、マイムは復活し、私も「海賊」や「明るい小川」の中で用いました。「白鳥の湖」にはそのようなマイム表現はありませんが、現在のボリショイの「ドン・キホーテ」は87年ごろから使われている振付の中ではマイムもあります。また、私の作品の中には、ニーナ・アナニアシヴィリが上演した「夢の中の日本」という斬新なものがあって、ここにもマイムは登場します。

Q.ボリショイ・バレエの芸術監督からABTのレジデント・コリオグラファーになりますが、今後の予定について教えてください。

A。私自身が、今後どのようになっていくのか知りたいと思います。今までの自分の経歴を見ていても、場所を変えていっているというのが判ります。7,8年間同じところにいるのは楽ですが、同じところにとどまってはいけない、前進しなければならないと思います。今度の移籍はそのようなステップの一つです。

モスクワの学校で学んだ時も、そしてキエフから離れたことも、今の自分を創っています。バレエと言うのはたくさんの可能性を秘めた芸術なのだと思います。来年の予定としては、1月1日が初日で、1930年に作曲されたプロコフィエフの作品を初めて上演します。全幕なので楽な仕事ではありません。様々な音楽、インスピレーションを与える音楽から作品を作っていきたいと思います。それからショスタコーヴィチの「明るい小川」の再演があります。また、「くるみ割り人形」「シンデレラ」の再演もあります。その他の古典をベースにした作品を振付ける予定はありません。

その2に続きます。

2008/12/02

アーカイヴ:シュツットガルト・バレエ「オネーギン」2005年11月08日

パソコンの中をひっくり返していたら、3年前のシュツットガルト・バレエの来日公演、マニュエル・ルグリが客演した「オネーギン」の感想が出てきました。自分のWebサイトに掲載したものです。当時、初めてこの作品を見たときにはどんな印象を持って、今回どういう風に感じたのか、比較のために再掲しますね。読み返すとちょっと恥ずかしい気がしなくもありませんが…。

2005年11月08日

シュツットガルト・バレエ「オネーギン」
Stuttgart Ballet Onegin by John Cranko
November 8th, 2005
Tokyo

オネーギン:マニュエル・ルグリ
レンスキー:ミハイル・カニスキン
タチヤーナ:マリア・アイシュヴァルト
オリガ:エレーナ・テンチコワ
グレーミン公爵:イヴァン・ジル・オルテガ


怪我から回復したばかりのルグリがシュツットガルトに客演ということで一抹の不安を抱えながら観ることに。ルグリが舞台上に登場するまでドキドキしてしまった。すぐさま、それが杞憂であることがわかった。

ルグリが登場した時、まず、黒いタイツに包まれた脚があまりにもほっそりしているのに驚いた。相も変わらず優美な佇まい。しかし、明らかに周囲から浮いていて、エレガントでありながら黒い染みのようにも見える。

ルグリが演じているオネーギンは都会出身の貴族で、のんびりとした田舎町では浮いている。シュツットガルト・バレエの面々の中で、一人別のカンパニーに所属しているルグリが異質の存在であることと重ね合わさって、不思議な効果が上がっていた。しかし、周りと馴染んでいない、都会からきた洗練された大人の男性に、純真な少女タチアーナはのぼせ上がってしまう。

1幕のオネーギンは氷のように冷たい男だ。タチヤーナが夢中になっている恋愛小説をちらりと見ては、あからさまに馬鹿にする。ここでのルグリはこれ以上は不可能というほどまっすぐに突き刺さったような姿勢の美しさ。威厳と誇り高さがあって、エレガントなのに少々エキセントリックに見受けられるほど、ピリピリに張り詰めている。タチヤーナの妹オリガの婚約者レンスキーの友人であるという設定なのだが、友達と言うよりちょっとコワイ先輩のようにも見受けられる。オネーギンがこんな感じなので、レンスキーのチャーミングさがここでは際立っている。

この舞台を見て一番感じたのは、もちろんルグリというダンサーは指先まで優美で演技力も申し分ないが、タチアーナ役のマリア・アイシュヴァルトが完璧といっていいほど素晴らしいことである。

活発で少々軽薄に思える妹オリガや、ほかの可愛らしい娘たちとは対照的で、タチヤーナは晩生で本の虫。夢の中で暮らしているような、恋に恋するような少女。本を抱えた姿で舞台上に姿を現した瞬間に、彼女の人物像は観る者の頭にしっかりと伝わる。知識欲に目をキラキラさせている利発な女の子だけど、田舎育ちで世の中のことは何も知らないし、ましてや恋なんて。しかし、凛とした強い目力のタチヤーナ(=マリア)がすでにこの時点で、大人になれば素晴らしい女性に成長するであろうことは見て取れる。そんな彼女の潜在的な魅力に気がつかなかったオネーギンは愚かだったということだ。

一番最初のソロでのルグリは、回転がやや不安定だったのでドキッとしたが、その後はいつもの通り完璧でエレガンスあふれる踊りを見せてくれた。しかし、その感情が抜け落ちたような回転や跳躍の中には、タチアーナのことなど歯牙にもかけない、心ここにあらずといった様子がありありと伺える。

さて「オネーギン」というバレエの素晴らしさは2つのPDDに集約されていると思う。「鏡のPDD」と「手紙のPDD」だ。
レイフ・ファインズが主演した映画も、タチアーナが手紙を書くシーンの演出に力を入れている。しかし手紙を書くところをバレエで視覚的に表現をするのは非常に難しい。そこで、クランコならではの、心理状態を踊りで表現させるドラマティック・バレエの本懐が発揮されるのだ。

オネーギンに恋をしたタチヤーナは、彼に手紙をしたためる。手紙を書きながら眠りに落ちた彼女の夢。鏡を覗き込んだタチヤーナ(鏡に映った彼女の姿を表現するために、同じ姿をしたダンサーが同じ動きを見せる)の前に、鏡の中からオネーギンが現れる。タチヤーナの恋心を象徴させるかのように、タチヤーナとオネーギンは情熱的に踊るのだ。

知性のほうが勝っていて、恋愛には晩生なタチヤーナ。その彼女が、眠っていた熱情を呼び覚ましたのか、夢の中では火傷しそうなほどの熱い想いを全身で表し、彼の胸の中に飛び込んでゆく。高揚した心を表現するように、高々とオネーギンにリフトされる。オネーギンも夢の中ではタチアーナを優しく受け止める。タチアーナを振り回すかのような高速回転を伴ったリフトなど、超絶技巧を尽くしたような、幻想的で美しくしかも疾走缶のあるシーンだ。幸福感に満たされてペンを置くタチヤーナ。

しかし2幕は、残酷な展開に終始する。熱い想いをこめて書いた手紙を、オネーギンはタチヤーナの目の前で(しかも彼女の背中に回りこみ、彼女の手のひらの上で!)破り捨てるのだ。泣き崩れるタチヤーナ。ますますオネーギンは冷たく、斜に構えた嫌な男になっている。宴をよそに、一人黙々とつまらなそうにカードで遊ぶオネーギン。
ルグリが演じると、そこまで嫌な人には見えないのだが、冷たい感じはよく出ていた。反面、育ちがよく見えるため、屈折したところはあまり出ていなかったような。

自分はこんな田舎でくすぶっていて、田舎娘に恋心を寄せられるようなつまらない人間ではない、というプライドと苛立ちが見え隠れする。ついには友人レンスキーの婚約者であるオリガにちょっかいを出してしまう。ちょっと考えの足りないオリガも、嬉しそうにオネーギンと踊ってしまうから事態は悪化。レンスキーはオネーギンに決闘を申し入れる。白い手袋で顔をぴしゃぴしゃとはたかれるルグリのややオーバーなリアクションがちょっと可笑しい。

オネーギンは嫌な男だが、品格のある人間ではある。本当に悪い奴だったら、一方的に熱を上げて来ている小娘を弄ぶことだってできたわけだ。しかしあくまでも紳士である彼はそれをしないで、屈折した思いはあるものの、自分なりの行動規範に沿ってに行動しているのだから。

決闘のシーン。この作品がタチヤーナの目線で描かれているのは、この場の演出でもわかる。なんとか決闘を止めようとするタチヤーナとオリガが最初に登場するからだ。そして自己憐憫とナルシズムを表現したレンスキーのソロがあり(レンスキーという男は、オネーギンとは対照的であまりにも普通で屈折がない)、全身を黒に包んだ死神のようなオネーギンの登場だ。決闘の演出も淡々としており、舞台の後方で背景のように行われている。決闘そのものよりも、それに対するタチヤーナとオリガのリアクションを描くことを主眼としている演出。レンスキーが倒れ、深深と頭を下げたオネーギンは自分のやってしまったこと、親友を殺してしまったという取り返しのつかないことをしてしまったことにおののく。初めて、彼の人間らしさが露になった場面だ。ここでのルグリの演技には惚れ惚れとした。人間の弱さ、後悔、絶望、そういったネガティヴな要素を美しく演じられるダンサーはそうそういない。

そして、数年後(原作では2年後)−

1幕で屈託なく踊っていた若者たちも大人になり、落ち着いた色彩の衣裳に髭を蓄え、グレーミン公爵の邸宅で群舞を踊っている。タチヤーナは先ほどの素朴な少女姿とは打って変わり、成熟した大人の女性の色香を身につけている。鮮やかなピンクの衣裳が艶やかだが、あくまでも品格を湛えている。マリア・アイシュヴァルトが驚くべき変貌振りを見せている。彼女の傍らにいるのは、2幕で彼女に好意を寄せていたグレーミン公爵。若くはないが長身でハンサム、魅力的で優しそうな大人の男性である。ふたりのPDDで、彼らが落ち着いた穏やかな結婚生活を送っていることが伺える。

そこへ登場したオネーギンが、一人でソロを踊る。髪に白いものが混じり、実際の年齢以上に年取っており精彩を欠いている。彼の中で2年以上の時間が経過したことは明らかだ。タチヤーナの求愛を拒絶しさすらった日々は、彼の空虚な心を埋めることはできなかった。美しく年齢を重ねることはできなかった。そのことを佇まいだけで表現できるルグリは大した役者だ。
美しく花開いたタチアーナに目が吸い寄せられている。彼女を拒んでから今までの月日、その時間をいかに過ごしたかの違いが今の二人の姿に如実に現れている。人妻となった彼女は手の届かない存在なのだけど、でも恋心は抑えられない。

タチヤーナの寝室を訪れたオネーギンは、今まで散々固執してきたプライドを捨て彼女の足元に這いつくばり、許しを乞い、愛を乞う。今までの高慢さを捨て去り、初めて本当の愛に生きようとしている彼は、手紙をタチアーナに渡す。1幕と立場が逆転しているのだ。彼のあまりの懇願ぶりに動揺するタチアーナ。二人の心の揺らぎ、葛藤を精緻に綴るのが、ラストを飾るに相応しい「手紙のPDD」。ここでも超絶技巧を凝らしたリフトや回転で、あまりにも激しい情念を語ることに成功している。タチアーナの足元にすがりついては懇願し、拒まれ、でも再びすがりつかずにはいられないオネーギン。タチアーナの心にも隙が見える。ここまで私のことを思ってくれるなら…と身を一瞬預ける。

でも、オネーギンの変節はあまりにも遅すぎたのだ。未練を断ち切るように彼を拒むと、1幕の反復のように手紙をびりびりと破り捨て、扉を指して部屋から立ち去るようにきっぱりと命じるタチヤーナ。絶望し走り去るルグリの後ろ姿、その背中に叶えられなかった生涯の愛の亡骸が見える。彼が去ったあとのタチヤーナ(=マリア)の、あふれ出る感情を必死に抑えようとしても抑えられずに苦悩の末慟哭しすべての想いを露にした表情。この泣き崩れた表情は観た者すべてにも、過去の叶えられなかった愛の記憶を呼び覚まし、滂沱の涙を流させる忘れ難いもの。そしてこの作品が、タチアーナという女性を主人公としながらも、彼女の視点を通して「オネーギン」という複雑なキャラクターを描いたものであるということを印象付けるラストであった。

マリア・アイシュヴァルトは本当に凄い。カーテンコールでも、ルグリも、マリアも、素に戻れないまま立ち尽くしていた

12月1日は世界エイズデー/Dancers Responding to AIDS

12月1日が世界エイズデーなのは、皆様もご存知かと思います。

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2007年現在、世界でエイズ患者の人は3300万人おり、2007年に亡くなった方は200万人もいます。そんなにこの病気で亡くなっている人がいるとは、本当に驚きです。

さて、ダンサーの中でもエイズで亡くなった方というのはたくさんいます。有名なところでは、ルドルフ・ヌレエフ、ジョルジュ・ドン、アルヴィン・エイリー、ロバート・ジョフリーなどです。

米国には、Dancers Responding to AIDSという団体があります。Broadway Cares/Equity Fights AIDSという団体の基金を集めるためのものです。1991年に、ポール・テイラー・カンパニーのDenise Roberts Hurlin とHernando Cortezによって設立されました。そしていくつかのダンスフェスティバルを主催しています。

この団体に協賛しているのは、ABT、トワイラ・サープ、マーク・モリス、アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・カンパニー、マーサ・グラハム、トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団、パシフィック・ノースウェスト・バレエなど錚々たるダンスカンパニーや振付家たち。ここで集められた基金は、米国、そしてカナダ、プエルトリコ、南アフリカの500ものエイズ患者への奉仕団体へと寄付されており、また一部は、 The Actors' Fund of America.の活動資金となっています。本当に必要としている人たちへとお金が渡るようになっているプログラムなのだそうです。

スポンサーとしては、ニューヨークタイムズ、カペジオ、コンチネンタル航空などが名を連ねています。そして、ウェブサイトを通じて寄付をすることもできます。

日本では、ここでエイズについて学ぶことができ、そして寄付をすることができます。

エイズ予防情報ネット
http://api-net.jfap.or.jp/
日本エイズストップ基金
http://www.jfap.or.jp/stop/s_index.htm
・寄付金は目に見える形で役立てます
・エイズ患者・HIV感染者の方々の社会的支援事業への助成
・エイズ予防等に関する啓発普及事業への助成
・エイズ患者・HIV感染者の方々などに対する電話相談事業への助成
(これらはボランティア団体を通じて行います)

昨年8月には、「Dancing 4 Aids Orphans」というチャリティ・ガラが、元ハンブルク・バレエのリン・チャールズ主催で行われました。今回のシュツットガルト・バレエ来日公演で活躍したスージン・カンやアレクサンドル・ザイツェフ、それにABTのホセ・カレーニョやベルリン国立バレエの中村祥子さんら一流のダンサーが出演しましたね。ロイヤル・バレエのマーラ・ガレアッツィは残念ながらリハーサルで骨折して一日目しか出演できなかったのですが。そのときのスージン・カンとホセ・カレーニョの感動的な「ジゼル」は今でも強烈に記憶に残っています。

ボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」12/3、4のキャスト

シュツットガルト・バレエの東京公演が終わったと思ったら、水曜日からはボリショイ・バレエの東京公演が始まるんですよね。
ジャパンアーツのボリショイ・バレエブログに、「ドン・キホーテ」最初の二日間のキャストが出ていました。札幌公演のレポートも。なんだか気の毒になってしまうような過密なスケジュールなんですね。12月ともなれば、勤め人もとても忙しくなってしまうわけなのですが。

12月3日
http://bolshoi-ballet.seesaa.net/article/110518955.html

キトリ/ドゥルシネア : マリーヤ・アレクサンドロワ
バジル (床屋) : ドミートリー・ベロゴロフツェフ
ドン・キホーテ (さすらいの騎士) : アレクセイ・ロパレーヴィチ
サンチョ・パンサ (ドン・キホーテの剣持ち) : アレクサンドル・ペトゥホーフ
ガマーシュ (金持ちの貴族) : デニス・サーヴィン
フアニータ (キトリの友人) : アンナ・レベツカヤ
ピッキリア (キトリの友人) : オリガ・ステブレツォーワ
エスパーダ (闘牛士) : アンドレイ・メルクーリエフ
ルチア (街の踊り子) : アナスタシア・メシコーワ
メルセデス (踊り子) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
ロレンソ (キトリの父) : イーゴリ・シマチェフ
森の精の女王 : アンナ・ニクーリナ
3人の森の精 : ユーリヤ・グレベンシチコワ,ネッリ・コバヒーゼ
          ヴィクトリア・オーシポワ
4人の森の精 : アレーシャ・ボイコ,スヴェトラーナ・パヴロワ
          ユーリヤ・ルンキナ,スヴェトラーナ・グネードワ
キューピッド : アナスタシア・スタシケーヴィチ
スペインの踊り : クリスチーナ・カラショーワ
           アンナ・バルコワ,エカテリーナ・バルィキナ
ジプシーの踊り : アンナ・アントロポーワ
ボレロ : アンナ・バルコワ,エフゲーニー・ゴロヴィン
グラン・パの第1ヴァリエーション : エカテリーナ・クリサノワ
グラン・パの第2ヴァリエーション : チナラ・アリザデ

クリサノワが第一ヴァリエーションなんですね!そしてネッリ・コバヒーゼが3人の森の精の中にいます。美形のデニス・サーヴィンくんがガマーシュなのも嬉しい。


12月4日
http://bolshoi-ballet.seesaa.net/article/110519021.html

キトリ/ドゥルシネア : ナターリヤ・オーシポワ
バジル (床屋) : イワン・ワシーリエフ
ドン・キホーテ (さすらいの騎士) : アレクセイ・ロパレーヴィチ
サンチョ・パンサ (ドン・キホーテの剣持ち) : アレクサンドル・ペトゥホーフ
ガマーシュ (金持ちの貴族) : デニス・サーヴィン
フアニータ (キトリの友人) : アンナ・レベツカヤ
ピッキリア (キトリの友人) : オリガ・ステブレツォーワ
エスパーダ (闘牛士) : アルテム・シュピレフスキー
ルチア (街の踊り子) : アナスタシア・メシコーワ
メルセデス (踊り子) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
ロレンソ (キトリの父) : イーゴリ・シマチェフ
森の精の女王 : エカテリーナ・シプーリナ
3人の森の精 : ユーリヤ・グレベンシチコワ,ネッリ・コバヒーゼ
          ヴィクトリア・オーシポワ
4人の森の精 : アレーシャ・ボイコ,スヴェトラーナ・パヴロワ
          ユーリヤ・ルンキナ,スヴェトラーナ・グネードワ
キューピッド : アナスタシア・スタシケーヴィチ
スペインの踊り : クリスチーナ・カラショーワ,アンナ・バルコワ
           エカテリーナ・バルィキナ
ジプシーの踊り : アンナ・アントロポーワ
ボレロ : アンナ・バルコワ,アントン・サーヴィチェフ
グラン・パの第1ヴァリエーション : エカテリーナ・クリサノワ
グラン・パの第2ヴァリエーション : ネッリ・コバヒーゼ

こっちは、ネッリちゃんが第二ヴァリエーションにも入っています。何気にかなり豪華なキャストですね。
それから、ご丁寧に残席の状況も載っています。
http://bolshoi-ballet.seesaa.net/article/110260465.html
ザハロワの白鳥の湖最終日はソールドアウトです。ザハロワの初日もほとんど残っていませんね。なのに、「明るい小川」はこんなに残っているなんて。私はショスタコーヴィチのファンでもあるので、「明るい小川」が一番楽しみです。フィーリンのポワント姿も見られますし!やっぱりバレエと言えば「白鳥の湖」なんでしょうか…。

2008/12/01

シュツットガルト・バレエ「オネーギン」祭り終了、覚書その1(まだ全然途中)

3日間のシュツットガルト・バレエ「オネーギン」鑑賞が終了しました。前回の来日の時も、マニュエル・ルグリ主演の「オネーギン」を観ていて、あの時もとても感動したので、3日分のチケットを買っていたわけですが、今回はそれ以上に個々のダンサーの魅力、カンパニーの魅力を感じることができて良かったです。

3キャストとも、それぞれ異なった個性、魅力があったので、比較するのはもしかして正しくないかもしれないのですが、粗末な頭のせいで混乱しないように、覚書として書いてみます。個人的な感想ですので~。

Stuttgarter Ballett
Onegin (Gastspiel Tokyo, Japan)
Ballett in drei Akten von John Cranko nach Alexander Puschkin

11/28
オネーギン: イリ・イェリネク
レンスキー: フリーデマン・フォーゲル
ラーリナ夫人: メリンダ・ウィサム
タチヤーナ: アリシア・アマトリアン
オリガ: カーチャ・ヴュンシュ
乳母: ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵: ダミアーノ・ペテネッラ
Onegin (Gastspiel Tokyo, Japan)
Onegin Jiri Jelinek
Lenski Friedemann Vogel
Tatjana Alicia Amatriain
Olga Katja Wünsche
Gremin Damiano Pettenella

11/29
オネーギン:ジェイソン・レイリー
レンスキー:マリイン・ラドメイカー
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:スー・ジン・カン
オリガ:アンナ・オサチェンコ
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ダミアーノ・ペテネッラ
Onegin (Gastspiel Tokyo, Japan)
Onegin Jason Reilly
Lenski Marijn Rademaker
Tatjana Sue Jin Kang
Olga Anna Osadcenko
Gremin Damiano Pettenella

11/30
オネーギン:フィリップ・バランキエヴィッチ
レンスキー:アレクサンドル・ザイツェフ
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:マリア・アイシュヴァルト
オリガ:エリザベス・メイソン
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ジェイソン・レイリー
Onegin (Gastspiel Tokyo, Japan)
Onegin Filip Barankiewicz
Lenski Alexander Zaitsev
Tatjana Maria Eichwald
Olga Elizabeth Mason
Gremin Jason Reilly

11/28 イェリネク/アマトリアン/フォーゲル 
イリ・イェリネクのオネーギンが一番、本来のオネーギン像に近いのかな、と思いました。そして彼が一番自然に、この役そのものになっていると思いました。プライドのとても高い、都会的でスマート、少し斜に構えた男なのだけど、その裏に弱さを隠し持っており、弱さがあるがゆえに虚勢を張っているオネーギン。本来は善良な人間なのに、ついつい自分を実際よりもいい男に見せたくて、田舎の人々を小ばかにして、タチヤーナを小娘だと残酷にも退けてしまう。だから決闘事件を経て成熟した大人の女性になったタチヤーナを見て、自分の取り逃がしたものの大きさに愕然とする。ここで彼は初めて、貴婦人の彼女に恋をします。3幕でのイリは、メイクはそれほど変えていないのに、往年の輝きをすっかり失ってしまって、人生に疲れ果てた男に成り果てていました。舞踏会場でも、かつてはあんなにスマートだった男が、なぜか一人みすぼらしく時代に取り残されてしまった存在として浮いている。そんな彼が、プライドも何もかもかなぐり捨てて、タチヤーナの足元に身を投げ出して取りすがるものだから、一層憐れさが際立ってしまい、タチヤーナよりも彼に心の底からシンパシーを感じました。

イリ・イェリネクは、インタビューで、「『オネーギンこそが人生の恋人だった』と心の中で思いながら後の人生を生き抜くのは…僕の考えではタチヤーナはバカだとしか思えない。ここで過ちを犯した人間がいるとしたら、それはオネーギンではなくタチヤーナ」と語っています。その解釈がものすごくよくわかるのです。確かにラストでは、彼は輝きを失った初老の男になってしまっているけれども、ここまで深く想われたら、女としてはどのような選択を取るのが正しいのか、強く激しく拒絶してしまうのは、ある意味、最も強かった愛をあきらめてしまうということになるのではと考えてしまいます。1幕の鏡のパ・ド・ドゥでのイリは、男らしくも甘く、悪魔的なまでに魅惑的な恋人であり、去り際にタチヤーナに向けた笑顔が誘いかけるかのようで、たまらない魅力を放っていました。それは、タチヤーナの幼い幻想/妄想の中の恋人の姿ではあったけれども、同時に、虚飾を捨て去った本来のオネーギンの姿でもあったように思えたのです。

テクニックについても、イリは素晴らしかったです。今回、オネーギンを演じた3人のダンサーはみなそれぞれ、技術も表現力も非常に優れていて、甲乙つけがたかったのです。イリは跳躍がとても高くて、ふわっと舞い上がるかのようだったし、3幕の手紙のパ・ド・ドゥで見せたジュッテ・アントルラッセは突き刺さるかのように鋭くて、人生最初で最後の恋愛に賭けた彼の真摯な想いを象徴させていたかのようでした。2幕の決闘シーンの前に見せた3つ連続のピルエットはスピードも嵐のようでしたし、軸もぶれていませんでした(それは、ジェイソンもバランキエヴィッチもそうだったのですが)。イリは脚がほっそりとしていて背が高いので、オネーギンの黒い衣装の似合うこと、似合うこと。

それに対するアリシア・アマトリアンのタチヤーナ。非常にほっそりと華奢で繊細、どこか病的な印象すら与えるアリシア。タチヤーナは多分設定としては10代後半ということなのだろうけど、それよりも若く見えるくらい幼い。本ばかり読んでいて、夢見がちで引きこもっているような娘。たしかに、これでは到底、大人の色男であるオネーギンが相手にするわけはない。夢に出てきた素敵な男性が目の前に現れたから、少女の妄想は暴走する。鏡のパ・ド・ドゥでのアリシアは、その柔軟すぎるほどの肢体を奔放に動かして、夢心地の陶酔感をほとばしらせる。そんな彼女を、思う存分ワイルドに振り回すイリのオネーギンのデーモニッシュなまでの魅力。アリシアは、リフトされている時のポーズが非常に美しく、このパ・ド・ドゥは、彼女の息遣い、おののき、高揚感で満たされていて、寝室なのに、上気した頬の薔薇色に空間が染まっていくかのようでした。そして先走ったタチヤーナの想いが飛び散ると共に、終始彼女をリードし続けたオネーギンはついに彼女を置いてきぼりにして、悪魔のように魅惑的な微笑みを残して走り去っていきます。だけど、置いて行かれた方のタチヤーナは、それがゆえにさらにオネーギンの魅力に呆然としてしまうのです。


まだまだ続きます。

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