FIGARO JAPONの「パリ・オペラ座バレエ物語」2009 1/5号 /ベルリン国立バレエの「カラヴァッジョ」
隔号連載のフィガロジャポンの「パリオペラ座物語」は16回目。今回の特集はちょっと地味目で、前半はパリ・オペラ座の歴史について。
国立舞台衣装センター館長マルティーヌ・カアンヌさんのインタビューを交えているのですが、内容については、佐々木 涼子さんの著書「バレエの歴史―フランス・バレエ史-宮廷バレエから20世紀まで」など、バレエの歴史の本を読んでいれば判るようなことで、あまり新しい発見はありませんでした。1月11日まで、ガルニエでimage de la danseという展覧会が開かれているそうです。写真やデッサン、絵画にバレエの歴史を読み取る展覧会だそうで、ドガやジョルジュ・バルビエらの絵画などを観ることができるそうです。ガルニエの見学やチケットのボックスオフィスが移動したそうで、今までは、正面の入り口から入ってチケット売り場は右手の売店の裏あたりにあったのですが、スクリプ通り側(左のほう、ギャラリー・ラファイエットに向かう方向)からになったとのこと。
後半はというと、現芸術監督ブリジット・ルフェーヴルのインタビュー。オペラ座関係のドキュメンタリー番組などにすぐに出たがるおばさんって感じなんですが。(ドミニク・カルフーニとマチュー・ガニオのドキュメンタリーDVDでも、美しく優しげなカルフーニとは対照的に怖かったですね)珍しいバレエ学校時代や現役時代の写真が何枚か紹介されています。自分のことを中心にしたインタビューを掲載するのを条件に、この連載全体の取材許可を出したんじゃないかと穿った見方をしてしまいますが(はい、穿ちすぎですね、すみません)。
ルフェーヴル女史は、入団して12年後にはオペラ座を去って自分のカンパニー「テアトール・デュ・シランス」を作ります。オペラ座時代から、コンテンポラリーが大好きで、昇級コンクールでも、当時のレパートリーの唯一のコンテンポラリー作品を踊ったそうです。
94年にオペラ座の芸術監督に就任したルフェーヴル。「クラシック・バレエをもっと!という不満も彼女の耳に届くが」という記述に、筆者の方の思いがちょっと感じられます。オペラ座の上演するコンテンポラリー作品は、質の高いものも多いし面白い作品も多いとは思うんですが、ちょっと古典が少なすぎますよね。それから、古典とコンテンポラリーの2プログラムを同時に上演して、同じダンサーが両方に出ているというのが、怪我するダンサーを増やしている原因になっているのではないかとも思われます。最近、特に女性ダンサーの質が(ヌレエフの子供たち世代と比較して)低下しているんじゃないかという気もします。
「この仕事で大切かつ感動的な瞬間は、エトワールの任命だという。これは特別なイベント」とありますが、近々もそのような予定はあるのでしょうか?
この号は写真は少ないのですが、エルヴェ・モローが、そしてウィルフリード・ロモリがエトワールに任命された時の貴重な写真が、小さいのですがあります。また、マリアス・エイマン、ドロテ・ジルベールが受賞した時のカルボー賞の授賞式の写真も。マチュー・ガニオの「ラ・シルフィード」の終演後、ラコットやイレールらと写っている写真も載っています。ダンサーとの関係はとても密なのだそうです。
「現職には後4~5年」とルフェーヴルはコメントしていますが、そんなに長いこと芸術監督の座に残るんですね。
この号は「行かなくても楽しいパリ案内」と称して、蚤の市やアンティークのショップ、そしてカフェの特集となっています。この特集記事は、生のパリの空気が伝わってきて、とても面白いです。付録には、「アグリーベティ」など海外ドラマ6作品を収録したDVDまで付いています。映画通によるお勧めDVD(選者の一人には、首藤康之さんがいて、「リトル・ダンサー」「ホワイトナイツ」「愛と哀しみのボレロ」を推薦しています)、年末年始の映画ガイド、ファッションページも面白かったです。
******
それと最近知ったのですが、フィガロ・ジャポンの新しいサイトができたのですね。
http://madamefigaro.jp/
最新号の紹介のほか、Webのみのコンテンツ、ニュースやコラム、ブログがあってとても面白いです。RSS対応でどんどん新しい情報が更新されています。
ベルリン在住のドラッグクイーン、つよこ・フォン・ブランデンブルクさんのブログでは、ベルリン国立バレエの新作「カラヴァッジョ Caravaggio」と、ウラジーミル・マラーホフについての面白いエピソードが紹介されています。
http://blog.madamefigaro.jp/tsuyoko_von_brandenburg/
「カラヴァッジョ」については、チャコットdance cubeの針山愛美さんのコラムでも紹介されていますが、マウロ・ビゴンゼッティの振付作品なのですね。同じ時代に生きた作曲家モンテベルディの音楽を元にしてのだそうです。
http://www.chacott-jp.com/magazine/diary/72.html
天才画家カラヴァッジョの人生については、デレク・ジャーマンの映画「カラヴァッジョ」がものすごい傑作なのですが(若き日のショーン・ビーンも出ていて、それはそれは美しかったです。先日ロンドンに行った時に、HMVでDVDを買ってきました。日本盤は廃盤なのです)、マラーホフが演じたカラヴァッジョも観る機会があればいいなと思います。
追記:日々これ口実のebijiさんに教えていただきましたが、「カラヴァッジオCaravaggio」の写真を写真家Enrico Nawrath氏のサイトで見ることができます。
http://www.enonava.de/
写真家によるシーンの切り取り方がとてもドラマティックで秀逸ということもありますが、これを見ると、「カラヴァッジオCaravaggio」ますます見たくなりますね。中村祥子さんもすごく雰囲気があって素敵です。
リハーサル動画も
http://www.staatsballett-berlin-inside.de/podcast/caravaggio--impressionen.html
madame FIGARO japon (フィガロ ジャポン) 2009年 1/20号 [雑誌] 阪急コミュニケーションズ 2008-12-18 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
« パリ・オペラ座昇進コンクール男子の結果 | トップページ | <東京バレエ団創立45周年記念スペシャル・ガラ>公演概要 »
「バレエの本」カテゴリの記事
- 『トウシューズのすべて』富永明子著 発売されました。(2021.10.20)
- 「名作バレエ70鑑賞入門 物語とみどころがよくわかる」 渡辺真弓著(2020.10.05)
- 山本康介さん『英国バレエの世界』独占ロングインタビュー(2020.07.20)
- すべてのバレエ愛好家に捧ぐ 世界初の図鑑が11月発売!『バレエ大図鑑』(2019.10.12)
- 『吉田都 永遠のプリンシパル』(2019.08.04)
「バレエ(情報)」カテゴリの記事
- 彩の国さいたま芸術劇場で、ノエ・スーリエ 『The Waves』公演とさいたまダンス・ラボラトリ(2024.01.21)
- 『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』、開幕は平野亮一主演「うたかたの恋―マイヤリング―」(2022.12.06)
- 英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン、ロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」2月18日より劇場公開(2022.02.17)
- 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22が、2月18日ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』で開幕(2022.01.23)
- 「ボリショイ・バレエ inシネマ2021-2022 Season」5上映作品が12月より劇場公開(2021.10.16)
« パリ・オペラ座昇進コンクール男子の結果 | トップページ | <東京バレエ団創立45周年記念スペシャル・ガラ>公演概要 »
コメント