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« 『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』Tropic Thunder | トップページ | 「プロフェッショナル 仕事の流儀」バレエダンサー 岩田守弘 Morihiro Iwata »

2008/12/16

アレクセイ・ラトマンスキーの講演会その2 Alexei Ratmansky's lecture

「明るい小川」という作品について

Q. 1930年ごろの新聞の見出しや、政治的なスローガンが「明るい小川」の幕に使われていますね。このデザイン、ボリス・メッセレールのデザインには、あなたのアイディアは含まれていますか?

A.彼は初演の時の関係者なので、思い入れがあるのですよね。1935,6年はロシアで最も恐ろしい時代でした。そのため、その時代を再現するには慎重にならないといけないと思いました。舞台芸術化としては、その恐ろしい時代を反映しなければならないという想いがありました。クラシック・バレエの中でも、フランスバレエのリブレットを基にしていた作品だったので、それに忠実に作りました(注釈:リブレット=台本は残されていた)。一方で、ショスタコーヴィチがこの作品を作るうえで何を考えたのか、私も考えなければなりませんでした。

ショスタコーヴィチはバレエ作品を3作品つくり、2作目の「ボルト」は上演することもできませんでした。3作目である「明るい小川」は政治的な批判はある作品だけど、ショスタコーヴィチが上演をしたいと思って作った作品であり、音楽は平易に、ということで観に来る感客が、作品の世界に浸ることが出来る音楽を目指して作りました。プロットについては変更してはならない、すべてプロットを反映しなくてはならないと思いました。ショスタコーヴィチは最高ランクの芸術家だと思います。狭い範疇のものを作る人には批判されるかもしれませんが、芸術として質の高いものを作らなくてはならないと考えていました。ソ連時代は形式的なものが要求されていました。ショスタコーヴィチは、芸術は表現するのに形式的なものに則ったものであっても、質を落としてはならないと考えていました。

ショスタコーヴィチのバレエ音楽として3番目の作品であった「明るい小川」は1935年にレニングラードで初演された時には大絶賛され、大成功のうちに終わりました。しかし、ロシアバレエの中でも大変残酷な歴史なのですが、1935年にスターリンが劇場を訪れてこのバレエを観たときに事件が起こりました。ちょうど、この前にショスタコーヴィチのオペラ「ムツェンツク郡のマクベス夫人」が上演禁止されたのと同じ理由で、この作品は何回もリハーサルが行われたというのに再演が許されませんでした。ショスタコーヴィチは圧力もあったので、バレエ作品については筆を折りました。

このように、この作品にはもちろん哀しい歴史があるのですが、それは括弧に入れておくとします。こういった、現代的なテーマを扱ったバレエは現在は存在しないのではないかと思います。最高の芸術を表現していく素晴らしい機会であったと思います。コーカサス地方のコルホーズが舞台となっていて、ここではあえて台本の時代性を変えていません。初演の時のロブホープの振付は残っていません。当時の映像はありませんが、写真、批評、追想録があります。この時代の特徴的な興奮状態の様式があり、これを舞台の上で生かしてみたいと思いました。演じた人たちの自然な感情を見せることにも注意しました。

ショスタコーヴィチは、「二人のシルフィーダ(=シルフィード)」というタイトルで上演したいと思っていました。モスクワでは男性が女装するというのはできなかったけれども、レニングラードではこういう形で上演できたのです。「ボルト」が上演禁止されたので、「ボルト」のために用意された2曲を所々で使いました。アコーディオン奏者の踊る曲は、「ボルト」の曲を使っています。「ボルト」については、ショスタコーヴィチはもう2度と上演されないと思っていました。スターリン時代が終わるとは、当時誰も思っていなかったのです。

Q.あなたがレオニード・マシーンの作品を復元するという話を聞いていましたが、いかがでしょうか?

A.マシーンは世界最大の振付家の一人でしたが、今はポピュラーではありません。現在レパートリーとしては消失してしまっています。ボリショイで芸術監督の任についてから、いつかは復元したいという思いがあります。ショスタコーヴィチがバレエの世界いた頃、ちょうどマシーンは若手振付家でした。1920年代には、フォーキンなどが新機軸として評価されてきました。バレエの歴史というのは豊かな水脈であり、なぜか忘れられた作曲家もいます。私もバレエを再び学びなおして、振付家としてきちんと再評価しなければならないと思っています。

Q.振付家としてのあなたを触発するダンサーは誰ですか?

A.モチベーションの源となったダンサー、私が小さな頃はマイヤ・プリセツカヤでした。そして今年8月に、ミハイル・バリシニコフと働くことになりました。彼は高齢になっても、言葉を使わなくてもハーモニーや清純さを作ることができます。色々なバレエ団と仕事することによって、私は様々な新しい動きや様式にチャレンジすることができます。また、スヴェトラーナ・ザハロワに出会えたことが大きいです。彼女には深い感受性があり、才能がこれからも出てくる人だと思います。

Q.モスクワのバレエ学校で振付の授業はありましたか?

A.残念ながらありませんでした。ロシアバレエの特徴として、振付そのものについての意識が、ヨーロッパと比べて薄いというのがあります。私は、モスクワで、振り付けについて志のある人が集まる場所を作って行きたいと思っています。パリ・オペラ座が素晴らしいのは、ジョゼ・マルティネスなど、新しい作品について、斬新なものを作るダンサーがいることです。ロシアにはなかなかそういう人はいません。それぞれのダンサーが身体に刻み付けられているものを使っているというのが現状です。モダンバレエは新しい実験ができるし、新機軸を打ち出すことができます。古典だけをやっている人は、振り付けについての意識が暗くなってしまっています。「明るい小川」という作品を通して、ロシアのクラシックバレエの取り組みが変わっていくのではないかと私は思います。

(了)

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バレエ(情報)」カテゴリの記事

コメント

こんにちはnaomiさん。
詳細なレポをありがとうございます。どうしても仕事で行けなくて、ここならアップしてくださるだろうと期待してお待ちしておりました。ラトマンスキー氏の考えがよくわかりました。ありがとうございます。感謝です。ボリショイの公演レポもすごい分量でお書きになっていて素晴らしいですね。私はオシポワチームの明るい小川とドンキをみることができ、アントニーチェワの白鳥のチケットをふいにしてしまったという結果でした(笑)。

それからPure Danceの写真集なのですが、個人的にマラーホフが好きで、この間でアマトリアンのファンになったものですので、大変気になります。この二人は服を着ているのでしょうか、ヌードなのでしょうか。ダンサーのヌードって結構微妙なんですよね、私には。

ショコラさん、こんばんは。

ラトマンスキーの講演、なかなか面白かったのですが、後でボリショイのパンフレットを見たら、鈴木氏の原稿と内容が結構かぶっていました。でも、彼の現役時代の映像を見ることもできたし、とても面白かったですよ。彼は本当に賢くて、素晴らしいアーティストだと思いました。公演の前の日の平日なので、なかなか足を運ぶのは難しいですよね。開始時間も早かったし。

公演の感想も、本当はもうちょっと詳しく書きたいのですが、なかなか時間が取れずに申し訳ありません。回数だけはたくさん観ました。回数優先のために安い席が多かったのですが。オシポワもすごいバレリーナですよね。今後どうやって変わっていくかが楽しみです。

写真集ですが、マラーホフもアマトリアンもヌードです。私は篠山紀信氏によるマラーホフの写真集も持っているのですが、そっちの方が耽美的というか、Pure Danceの方はまさにタイトルの通り、ダンスをカメラに収めているというコンセプトなので、あまりエロティックではないし、自然な感じで写っているので、とても素敵だと思います。たしかに好みの問題はあると思いますが、マラーホフのファンなら持っていても損はないと思います。確かにちょっとお高いのですが。(今は円高なので、amazon.comで買った方が送料を考えてもお得だと思います)

naomiさま

オシポワはバレリーナの役ではどうしようかというくらい、可愛くてキトリのときよりスレンダーにみえたので、嬉しい驚きでした。本当に今後楽しみです。

情報をたくさんにありがとうございます。「二人のアクロバティックなリフト」は相当の誘惑です。篠山氏の写真集は一応持っています。洋服を着ているマラーホフの方が若干好きなんですが、しばらく悩むことにしますね。でもきっと買ってしまうと思います。

ショコラさん、こんにちは。

そうそう、バレリーナ役のオーシポワは男装すると本当に男の子みたいで可愛かったですね。実際には意外と小柄ではないようです。ボリショイのダンサーはみんな長身ですからね。ワシリエフも175cmはあるそうですよ。(毎日身長を測っているようですが(笑)、まだ彼は19歳なので伸びるかもしれませんね)

マラーホフはファッションのセンスもとても独特でおしゃれなので、服を着ているのももちろん素敵ですよね。
最新作の「カラヴァッジオ」は、とっても興味を惹かれます。フィガロ・ジャポンのサイトのコラムにこんな記事があって、とても面白かったです。
http://blog.madamefigaro.jp/tsuyoko_von_brandenburg/post-6.html
デレク・ジャーマンの映画「カラヴァッジオ」がとても好きなので、このマラーホフが踊る「カラヴァッジオ」も観てみたいです。
まあ、とにかくこの写真集のマラーホフはやっぱりすごく素敵ですよ。全部で彼の写真は10点くらいですので、送料コミで9000円近く払う価値、あるかなと思います。(他のシュツットガルトのダンサーの皆さんも美しいですし)
(でも東京バレエ団の「眠れる森の美女」はチケットをまだ買っていないんですよね。。。。)

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