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« 12/6昼 ボリショイ・バレエ「白鳥の湖」簡単な感想 | トップページ | シュツットガルト・バレエブログ最終回 »

2008/12/08

12/7夜 ボリショイ・バレエ「白鳥の湖」簡単な感想

本当は12月6日の夜も観ているのですが、それは後回しにして、日曜日の夜公演の感想を先に。

こんなにも素晴らしい舞台を、ボリショイの「白鳥の湖」で観られるとは!チケットを取る時はどうしようかと躊躇していたけど、観に行って本当に良かった!

グリゴローヴィチ版(2001年悲劇版)の「白鳥の湖」は、ロットバルト=悪の天才が存在感がないと締まらないというか、悪の天才こそがこの作品の最重要人物であるということを、改めて認識した。

ベロゴロフツェフは、「ドン・キホーテ」の初日では本調子ではなかったのでちょっと心配をしていた。しかし、さすが「白鳥の湖」のロットバルトを踊るために来日していただけのことはある。長身、大きな表現、大胆さ、切れ味鋭い跳躍、悪魔的なカリスマ性…素敵。こんな悪魔が目の前にいたら、喜んで魂を差し出してしまいそう。王子役のウヴァーロフと並び、1幕2場の冒頭、長身の二人がシンクロするように同じ動きをするのを観ると、ぞくぞくした。王子がロットバルトに操られ、弱みに付け込まれ、幻想の世界へと落ちていく過程が手に取るように判る。

2幕1場でのソロも鼻血が出そうなくらいカッコ良かった!グリゴローヴィチ版(正義は勝つヴァージョン)の「白鳥の湖」DVDでの、アレクサンドル・ヴェトロフの伝説的な演技には及ばないまでも、それに肉薄するような強烈なプレゼンス。

とともに、こんな解釈ができることに気がついた。

1幕2場の湖畔の白鳥たちの世界は、悪の天才が王子に見せた幻影。もちろんオデットもそう。そして、オデットそのものも、悪の天才が作り上げたものであり、ロットバルト=悪の天才の分身なのではないかと。オデットとオディールは、一人の女性の別の側面を見せているからこそ、王子はあんなにもオディールにも魅せられてしまうと考えられないだろうか。オデット自身に悪意はなくても、彼女は実在しない存在であり、この上なく美しい幻影なのだ。

そう考えるに至ったのは、オデットのザハロワがあまりにも神々しく、非現実的なまでに美しかったから。

ザハロワの白鳥は新国立劇場などで今までもさんざん観てきていて、彼女の白鳥が非常に美しいのはよくわかっていた。だけど、何か物足りない。どうしてもお姫様的な演技から抜け切れていなくて、完璧な造形美、しなる脚、とてつもなく美しい曲線を描く甲と、美しいことこの上ない。だけども、それだけ、という印象だった。ボリショイ・バレエで、この悲劇版の白鳥の湖を踊るからこそ、彼女の白鳥は本来の魅力を発揮しているのだと思う。もちろん、ザハロワ自身の演技力も進化していると思うだが。

1幕2場のザハロワは、徹底的に悲劇的な存在として描かれている。ただ単に、眉間に皺を寄せて哀しそうな表情をしているのではない。オデットの悲しみを、全身で奏でている。彼女の表現は、実は賛否両論を呼んでいるようだ。脚を高く上げすぎる。動きがあまりにも曲線的でクリアさに欠けている、と。たしかに、ポアントでデヴロッペから5時55分のポーズを取ったり、アラベスクの脚をびっくりするくらい上げたりするのは少々やりすぎだとは思う。が、音をめいいっぱい使っての腕の動きには、過剰なところや無駄なものは感じられず、ただただオデットの心の震えや悲しみを歌い上げる美しいメロディを奏でるために必要不可欠な、シンプルな表現だと感じられた。十分クリアで、無駄なものなど何もない、純粋な美と哀しみの体現。

1幕2場のコーダの後、再び王子の前に姿を現し、パドブレしながら去っていく時、オデットは二度も王子にまなざしを向ける。2度目は、再び白鳥の姿に戻ってから。これがザハロワの白鳥の演技における大きなポイントだと感じた。

オディールは、悪女っぽさを前面に出さず、常に微笑を浮かべ、その愛らしい笑顔や目、そしてクールで魅惑的な動きで王子を殺していると思わせた。王子が騙されていたことを知った時にも、必要以上には高笑いもしないで、それゆえ余計に王子をダメージを与えるような艶やかな笑みを向けている。その笑みは、1幕2場でオデットが最後に向けた微笑に似ていた。オデット=オディールという解釈ができる余地が、ここに隠されていると思うのは深読みしすぎだろうか。

ウヴァーロフの王子もとても良かった。前日夜のアルテム・シュプレフスキーの王子が、どうしようもなかったこともあり、ウヴァーロフってやっぱりボリショイのトップスターなんだと改めて思った。ウヴァーロフは、ちょっとアンドゥオールが弱くて時々内脚になってしまうという欠点が今日も出てしまった。が、全体的な彼の踊りや演技を観れば、そんな欠点は些細なことのように思えてくる。佇まいが、本当に王子そのもので気品がある。その気品の中に、悪の天才に付け込まれてしまうような繊細さや弱さが見えている。彼の演技が秀逸だったからこそ、悪の天才に操られていたということが判る。ベロゴロフツェフとの踊りのシンクロ具合も見事だった。異界で異形の姫に魅せられて、幻想の中に迷い込んでしまうイノセントさ、優しさをよく表現していた。踊りも軽やかでエレガントで、目を吸い寄せるものがある。

2幕2場、ロットバルトに高々と持ち上げられて息絶えたオデットだが、その姿が目に入らない王子。彼女の姿を、半ば狂気が入り混じりながら追い求め、そして膝をついて慟哭しながらあちらの世界へと見果てぬ夢を追い続けるように旅立ってしまう遠い表情もまた魅力的なウヴァーロフだった。ラストの演技は、グダーノフのが一番気に入ったけど、ウヴァーロフも素晴らしい。

主役3人が絶好調で、超一流の仕事を見せてもらったという思いで大満足。

脇に目を転じると、やっと見られた岩田守弘さんの道化。さすが、彼の代表的な役柄だけあってすんごく良かった。とてもチャーミングな中に、すごく気品があって、宮廷で働いているプロフェッショナルの道化という感じ。動きが柔らかく、跳躍や回転といったきらびやかな面だけで勝負しているわけではない、ちゃんと"道化”とはどういう存在なのか考え抜かれた演技を魅せているのが素晴らしい。といっても、テクニックが劣るという意味ではなく、技術はもちろん超一流。プリエがとても効いていて、バネのある跳躍はとても高くて特に2幕1場の最初の方の跳躍はすごかった。回転も正確で、1幕1場の見せ場でのピルエット・ア・ラ・スゴンドはいつまでも回転できそうなくらいで、音楽を実際よりも長くつなげていたくらい。ボリショイの至宝とも言える、素晴らしい存在感だ。

2幕1場の各国の姫たちの踊りや付随する民族舞踊も、最初はいまいちと思っていたけど、見慣れていくうちに面白くなってきた。姫たちの顔ぶれがとても豪華で、中でもやはりエカテリーナ・シプリナの強気な存在感と魅惑にはひきつけられた。ロシアの王女、オリガ・ステブレツォーワがとても美人。

白鳥の群舞も上の席から観ていたので見事なものだったし、4羽の小さな白鳥での、エシャッペと5番への着地の正確さ、揃い方が本当にすごかった。

やはりボリショイとマリインスキーは世界で1,2を争う2大バレエ団だと感じた次第。観られて良かった!


音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー  
 台本・改訂振付・制作 : ユーリー・グリゴローヴィチ 
 原振付 : マリウス・プティパ,レフ・イワノフ,アレクサンドル・ゴールスキー
 美術 : シモン・ヴィルサラーゼ
 音楽監督・共同制作 : パーヴェル・ソローキン
 照明 : ミハイル・ソコロフ
 指揮 : パーヴェル・クリニチェフ
 管弦楽 : ボリショイ劇場管弦楽団


 オデット/オディール : スヴェトラーナ・ザハーロワ
 王妃 (王子の母) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
 ジークフリート王子 : アンドレイ・ウヴァーロフ
 ロットバルト : ドミートリー・ベロゴロフツェフ
 王子の家庭教師 : アレクセイ・ロパレーヴィチ
 道化 : 岩田守弘
 王子の友人たち : アンナ・ニクーリナ,アナスタシア・ゴリャーチェワ
 儀典長 : アレクサンドル・ファジェーチェフ
 ハンガリーの王女 : ネッリ・コバヒーゼ
 ロシアの王女 : オリガ・ステブレツォーワ
 スペインの王女 : アナスタシア・メシコーワ
 ナポリの王女 : アナスタシア・ゴリャチェーワ
 ポーランドの王女 : エカテリーナ・シプーリナ
 3羽の白鳥 : ネッリ・コバヒーゼ,ユーリヤ・グレベンシチコワ,オリガ・マルチェンコワ
 4羽の白鳥 : チナラ・アリザデ,スヴェトラーナ・グネードワ,スヴェトラーナ・パヴロワ,アナスタシア・スタシケーヴィチ
 ワルツ : オリガ・ステブレツォーワ,アナスタシア・シーロワ,アレーシヤ・ボイコ,アンナ・オークネワ,カリム・アブドゥーリン,デニス・サーヴィン,ウラジスラフ・ラントラートフ,エゴール・フロムーシン


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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

すばらしかったんですね。オネーギン、ボリショイの白鳥、行けなかったんです。
普段、けっこうなんとかなる気楽な仕事なんですが、この十一月から十二月にかけてイベントの主催者側になったら、たいへん!
まず気が休まらない。四六時中電話とメールが入る。細切れで動いていた一日がもっとこまぎれに。
今週は反省会の週で、ほっとしてますが、一ヶ月前にずれていたらとnaomi様の文を読んで深く思います。あらゆる言い訳とうそをつかって行けばよかったとダークよしのっちは後悔してます。
ザハロワさま見たかった。新国立でみてるし、ガラもいい席とれたし、ライモンダもなんとかいけるし、って、いいきかせても、涙でてきました。
明るい小川だけ、行くんです。残務整理ともろもろおいといて。
これからもいっぱい、書いてくださいね。ネットを見るときは一番に読みます。

あ〜 やはりロットバルトが物言う演目なんですよねー
私のロットバルトは問題児のあの方でしたので(;´д`)
彼のロットバルトは一生懸命踊ってるって印象で、それ以外の役の持っている大切さは伝わらなかったなー

ザハロワは美しさが際だちすぎて世間からなんか軽くみられているような気がして大好きなわたしは寂しかったの。
私にはいつも丁寧に役を踊っているように見えているのですけど、、
naomiさんが誉めてくれてほんとにうれしいわweep(感涙)


naomiさんの大好きなアレキサンドロワはどんな白鳥だったのかしら?
すばらしいバレリーナだから私も見たかったんだけど。。。
感想楽しみにしてますね♪

よしのっちさん、こんばんは。
オネーギンとボリショイ前半見られなかったのですね(涙)

12月って勤め人は基本的に忙しいですよね。私も仕事の締め切りを抱え、周りの顔を伺いながらダッシュしています。今の所は間に合ってますが最終日のドン・キホーテは6時半開演なので危険!

シュツットガルトのオネーギンやボリショイの白鳥は多分遠くない将来に観られると思いますが、明るい小川は日本では滅多に観られないので貴重ですよ!私も頑張って会社を脱出できるよう仕事がんばります〜。

ずずさん、こんばんは。

金曜日のロットバルトも最初はベロゴロフツェフだったのに、バジルの出番が増えたのでアルチョムになっちゃったんですね。ロットバルトだとせっかくの美形も隠れちゃうし。

ザハロワが美しいのはわかっていたけど、こんなにも究極に美しいとは!しかも、美しいだけでなく演劇性と悲劇性がありましたね!

ほんと、こんなことを言うと失礼かもしれないけど見直しました♪ラトマンスキーが認めただけのことはあります。

私にとってはじめての生ザハロワだったのですが、予想を遥かに越えた美しさでびっくりしました。
舞台全般も素晴らしくて、シュツットガルトのオネーギンでも味わったバレエの「醍醐味」を、全身で堪能しました〜。
もう、バレエの虜です(それって怖い)。

こんばんわ。観るので体力いっぱいいっぱいで、コメント、今更でなんですが、、、オデット=オディール、深読みじゃないと思います!!私も似たようなこと感じたので!!王子の心の隙間に忍び寄る悪の幻影の物語、、、ロットバルトは、ウヴァーロフのような気品ある高貴な王子に取り付く悪魔でしょうか?
ザハロワ、やっぱり美しい!しなやかそうなラインの脚、実は、そうとう強靭だと思われるし、腕が踊るだけでなく、あんなに「語る」ってすごい感動です!

ogawamaさん、こんばんは。
お返事が遅れ申し訳ありません~。すっかりボリショイ祭りでへとへとでございました。
あれが初ザハロワだったのですね。あのザハロワを観てしまうと、ザハロワの白鳥が完全にデフォルトになりそうですよね。ラッキーというかアンラッキーというか(なかなかあの白鳥を超える白鳥を観るのは難しいかもしれません)。
会場でお話できたのも良かったです。本物を見ると、やっぱり虜になりますよね。そして散財の道へ(笑)。

マーキーさん、こんばんは。
そうですよね、あのオデットはロットバルトが生み出した幻であるから、ロットバルトのマントのような幕の裏から登場するのですよね。それに、ウヴァーロフの王子だから、あの物語が説得力を持つのかな、と思いました。グダーノフの王子だとまた別のドラマを感じます。
そうそう、改めてザハロワの美しさを感じましたよ~。あの腕は一体どうなっているんでしょうね。しなやかだけど、必要以上には動いていなくて、極限までそぎ落とした表現の潔さとシンプルな美しさを感じましたよ。外から見えない水面下では必死に足を掻いている白鳥なのでしょうね。

naomiさん、こんにちは。私も7日に観にいって、夢を見たような気持ちで帰ってきました。白鳥のDVDは、ザハロワとロパートキナのものをしょっちゅう観ているのでその美しさは想像していたのですが、初の生ザハロワはこの世のものとも思えないくらい美しくて悲しいものでした。素敵ですねえ。ウヴァーロフも、王子様オーラが全身に光っていましたね。ボリショイってやっぱり技術的にものすごくレベルが高いんですね。常に華やかで高度な技が繰り出され続ける舞台で、他の白鳥に比べてゆるい場面が少ないように思いました。ロパートキナの白鳥も大好きなので、来年はぜひ観たいです。日本にいると次々に素晴らしいバレエ団が来てくれて本当に幸せです。

ぶうたさん、こんばんは。
そうそう、これほどまでに美しい白鳥を観たことはなかったと思います、7日は。ロパートキナの白鳥も素晴らしかったのですが、パートナーはダニーラ・コルスンツェフで観たかったです。やっぱりパートナーの果たす役割が大きいんだなって、前日のアレクサンドロワ&シュピレフスキーの公演を観ただけに実感してしまいました。やっぱりザハロワにはウヴァーロフが一番ですよね。

今回のボリショイの公演は、手抜きなしで、主役以外もとても充実していたし、オーケストラも張り切っていたし、日本に居ながらにしてこのレベルのものが観られたのは本当に良かったです。

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