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2008/11/16

11/15新国立劇場バレエ団「アラジン」初日

世界初演作品の初日なので、これからご覧になる方も多いと思うし、細かい点は今日は割愛します。

一言で言えば、「楽しく華やかでエンターテインメント性ある反面、尻すぼみの印象が強いのが惜しい」、ということでしょうか。
しかし、新国立劇場バレエ団の持つ人材の豊富さは改めて実感させられたし、エンターテインメントとして盛り上げつつも少し毒を含んでいるビントレーの方向性は支持したいと思います。まだその毒を十分発揮し切れていませんが。

(舞台装置、音楽)

舞台の上の人も多いし、1幕はめまぐるしいところがあって、どこを見ていいのかわからなくなってしまうほどでした。細かいところまで見られていませんし。日曜日にもう一度観るので、もう少しちゃんと見てみます。

1幕の洞窟での舞台装置と衣装、照明のゴージャスぶりには目を見張りました。ものすごく美しくて凝っているし、「美女と野獣」でも見られたビントレー・マジックというべき舞台転換の妙もありました。ただし、1幕に予算を使いすぎて2幕、3幕はちょっとしりすぼみな印象が否めず。魔法の絨毯は飛びますが、その前の人形が空を飛ぶシーンといい、あまりのしょぼさに笑いそうになりました。

洞窟のシーンでの宝石のディベルティスマンの衣装の豪華な美しさたるや、うっとりしてしまいました。宝石らしい上品さの中に少しキッチュさが入っているところが良いです。マグレブ人の衣装の紫の使い方も素晴らしい。懸念されていたランプの精の青塗りも違和感がありませんでした。

もともと、イギリスでは「アラジン」は中国の話ということになっているので、アラブと中国の折衷型になっているのはご愛嬌。音楽も中国っぽいところがあるし、獅子舞(可愛い)や蛇ダンスがあったりして。東洋だったら中国もアラブも一緒!みたいなのも、笑って許せる感じです。

その音楽は、やはり映画音楽的で、ものすごく印象的なメロディがあるわけではないのですが、振付にはとてもよく合っているし、オーケストレーションも見事なもので良かったと思います。指揮者もバーミンガムロイヤルから呼び寄せていますね。

(ダンサー)

1幕が一番長くて、1時間近く。3場の洞窟のシーンでの宝石のディベルティスマンのゴージャスさは見事なもので、新国立劇場の誇るソリストたちの素晴らしい踊りを堪能できました。中でも、持ち前のしなやかさを生かした中村誠さんと寺島ひろみ・まゆみ姉妹によるエメラルドの踊りの妖しさや、確固とした存在感の湯川さんのサファイア、ルビーの厚木さんと陳さんは素敵でしたね。西山さんのダイアモンドやシルバーの川村さん含め、このあたりの主役をもっと観たい気がします、本当に。

それから、とにかく運動量が半端じゃないランプの精ジーン、吉本さん!立派に役割を果たしていました。小柄な彼だけど存在感は十分。青塗りの姿もよく似合っているし、空中浮遊などもサマになっていました。明日はしなやかでセクシーな中村誠さんがジーンなので、また全然違った感じになりそうで楽しみです。

あとはマイレンのマグレブ人!技術的には新国立でトップの彼に踊らせないというのはもったいない気もしますが、あの濃い顔立ちにさらに濃いメイク、濃い演技でいいスパイスになっていました。大げさでありながらもすみずみまで神経の行き届いた美しい動き、演劇性の豊かさ、観ていて飽きないです。彼のマグレブ人を見るためだけにもう一回観てもいいかも、と思うほど。

キャラクテールという意味では、アラジンの母役の難波美保さんが新境地。ユーモラスな演技が堂に入っていて、とてもいい味を出していました。

群舞に関しては、ランプの精の手下など、男性が踊るところが多いのが楽しかったです。こういった作品をたくさんこなすことで、定評のある女性コール・ドと比較して弱いといわれている男性のコール・ドの力がつくのではないかと思います。ビントレーが芸術監督に就任した時のことが楽しみです。だけど、この男性群舞大活躍シーンが1幕だけなのですよね。ホント、1幕が終わった時点では、この作品、すごくいいなと思ったのに。

新国立劇場バレエ団には、色々な才能がいるな、これだけの人材が揃っているのはさすがだと思いました。

やはり主役二人が好みに合わなかったのが残念です。山本さんは頑張っていたと思うけど、やんちゃなアラジンのキャラクターには少々ノーブルすぎるのと、パートナーリングが上手く行っていないところがありました。パートナーリングに関しては、もちろん本島さんの責任の部分もあると思います。本島さんは、そつなく踊っていたと思いますが、プリンセスという役柄がそもそもあまり内面のない役ということもあって、すごく空虚な感じをさせていて、二人の間に通い合うものを何も感じられませんでした。そういう意味では、ビントレーイチ押しの湯川さんのプリンセスを見てみたい気がします。アラジンのキャラクターは、小柄で敏捷な八幡さんが一番合っていそうです。

(ビントレーカラーと新国立劇場カラー)

一度観ただけでは判断しかねるところです。とても楽しくゴージャスでエンターテインメント性ある反面、尻すぼみの印象が強いのがもったいないのです。1幕のにぎやかで猥雑な市場と対比しての、3幕のエンディングのデザインが地味なのです。終幕が、新国立劇場が得意とする抑え目のパステルカラーの色合いで、本来あるべきエキゾチックさが薄められてしまいました。振付が基本的にクラシックバレエということも、その印象を強めています。ビントレーが本来作りたかったものを、従来の新国立=牧芸術監督カラーで薄味にしてしまったのではないかと邪推したくなります。

結論付けるなら、早く牧カラーを払拭して欲しい、という一言に尽きるでしょうか。改訂して、もっとビントレーらしい怪しさ、ブラックなユーモアを入れて行って欲しいというのが私の勝手な希望です。エンターテインメントとしては優れているので、早いうちの再演と改訂を望みます。

【振付】デヴィッド・ビントレー

【作曲】カール・デイヴィス
【指 揮】ポール・マーフィー
【舞台装置】ディック・バード
【衣 装】スー・ブレイン

【アラジン】
山本隆之

【プリンセス】
本島美和

【魔術師マグリブ人】
マイレン・トレウバエフ

【ランプの精ジーン】
吉本泰久

【アラジンの母】
難波美保

【サルタン(プリンセスの父)】
イルギス・ガリムーリン

【オニキスとパール】
高橋有里 さいとう美帆 遠藤睦子
江本 拓 グリゴリー・バリノフ 佐々木淳史

【ゴールドとシルバー】
川村真樹 西川貴子
貝川鐵夫 市川 透

【サファイア】
湯川麻美子

【ルビー】
厚木三杏 陳 秀介

【エメラルド】
寺島ひろみ 寺島まゆみ 中村 誠

【ダイアモンド】
西山裕子

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