「犠牲の先に夢がある ~ロシア国立ペルミバレエ学校~」と再放送(11/21 BS1)
さきほどまで、NHKのBS1のドキュメンタリー「犠牲の先に夢がある ~ロシア国立ペルミバレエ学校~」を観ていました。監督によりYouTubeにも一部映像がアップされていたので、大体の内容はわかっていたのですが、改めて見るとかなりへヴィな内容です。ロシアで、どれだけプロのバレリーナになる道が大変なのかがよくわかります。
主人公のオクサナ・スコリクはマリインスキー・バレエに入団し、今年4月のNY公演にも出演していたので、来年のマリインスキーの来日公演に来る可能性も高そうですね。このドキュメンタリーの最後に、卒業を控えた2年後の彼女のインタビューがありましたが、2年間の間にすっかり大人びて美しくなっていました。びっくりするほど脚が長くてきれいなのですよね。ワガノワではなく、ペルミからマリインスキーに入団できるのですから、半端じゃないほど優秀だったということでしょう。
オクサナの日記形式のモノローグでつづられるバレエ学校の日常。寒々とした宿舎や稽古場。周囲の生徒たちになじめずに孤立し、一人だけ、苗字でしか呼んでくれない先生には嫌われていると思い込み、考えることは食べ物と痩せなくちゃいけない、ということばかり。そして遠い故郷にいる母のことを恋しく思う。拒食症になり、本当につらそうな毎日でした。生きていても何の意味もないと思ってしまうほどに。それを乗り越えて、今の彼女がいるわけですよね。大部分の生徒はプロにもなれないというのが、バレエの厳しいところです。オクサナは、本当に脚がまっすぐで長くて美しくて、その素晴らしい脚ゆえ、同級生たちにも嫉妬されているようでしたし、彼女もそのことを自覚したようでした。
それにしても、撮影されていた時の、15歳の時のオクサナの身長が165センチで体重38キロというのはさすがに痩せすぎですよね。それでも自分が太っていると思い込んでいるほど、精神的に追い込まれていたんですね。胸が痛みます。彼女だけでなくて、多くのバレリーナ志望の少女が、まだ幼いのにそういう風に思っているかと思うと。
「バレエはマゾ的傾向のある人に向いていると思います。」とペルミ・バレエのバレリーナ&教師のナタリア・モイセーエワが言っていました。バレリーナは過酷な性格になり、自分に対する要求が厳しいゆえ、他人に対する要求も厳しくなる、と。その言葉の次に、鬼のように厳しい教師ウラーノワ先生が出てくるという編集が絶妙でした。「ただのごくつぶし」「せめて死ぬまでにはその曲がった脚を直してきなさい」なんて言うんですから。
見逃した方には、再放送もあります。
<シリーズ 現代社会と子供たち>
犠牲の先に夢がある ~ロシア国立ペルミバレエ学校~(再)
BS1 11月21日 (金) 午後9:10~10:00
’A Beautiful Tragedy’
http://www.davidkinsella.com/v1/index.php?option=com_content&task=view&id=32
監督のデヴィッド・キンセラのサイトで一部見ることができます。彼のほかのドキュメンタリーも、どれもとても面白そうです。
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テレビの情報ということで、つけ足しです。
10月26日(日)
フジテレビ AM7時~7時30分
「ボクらの時代」
首藤康之さんがギタリストの村冶佳織さんと、小説家の平野啓一郎さんと対談するそうです。
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コメント
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こんにちは、はじめましてです。
もしかして、naomiさんは、以前ウチのブログにコメント下さった方でしょうか?(違っていたらごめんなさい)
私の知人の娘さんがペルミ経由で今ワガノワに編入しています。
ペルミからワガノワへ行って、一番の違いは「乱暴な言葉遣いの先生が(あんまり)いない」ことだそうで。(苦笑)
彼女はペルミでかなり言葉の暴力で鍛えられたそうです。
ま、その先生はかなりきつかったらしいです。
ユーリ・ペトゥホフに「コレコレこういう先生に教えてもらっている」と言ったらニヤニヤ笑って「頑張れよー」と言ってましたからねえ。
教え方が厳しいのと、言葉遣いがどうこうと、教え方が上手なのと、その教師が人格者なのとは、必ずしも同列にはならないと思うのですが、(もちろん教師としても人間としても完璧であればいいですけどね)、ここで思い出すのは中央公論での小森陽一さんと故米原万里さんとの対談です。(2002年)
プラハでのソビエト学校時代のエピソードで語られていましたが、
「先生は授業さえ面白ければ人格的にどんなダメな輩でもいい」「教師に道徳は求めない」「非常に面白く授業を教えてくれれば、社会のお手本でなくても構わない」、、、ようなお話をしていました。
本人がきちんとしていて、ほかに人間関係でフォローをしてくれる先生やスタッフがいて、心も身体も強くなって、、、、そこからなんですよね。
心に傷を負わない人生はありえないのですが、その心が癒されるよう願ってやみません。
投稿: おロシア人 | 2008/10/21 10:15
こんにちは♪
再放送情報ありがとうございます。昨日途中からしか録画できなかったので(゚ー゚;
いつもたすかります。
わたしも「ごくつぶし」はびっくりしました。
むかーし習っていた先生も口が悪かったけどそこまでは。。。
成長期なのにネズミのえさほどの食事でしかもつらいレッスン。
すごいこと。
バレエリーなってほんとにごくごく希少な人しかなれないんですね。
ますます尊敬の念が強まりました。
投稿: ずず | 2008/10/21 15:08
おロシア人さん、こんにちは。
はい、以前お邪魔した者です^^フィギュアスケートも実は好きなのですがそこまで手が回らなくて。よくサイトにお邪魔させていただいています!
ペルミ・バレエは日本人の留学生の方もいらっしゃいますよね。Kバレエの樋口ゆりさんもペルミ・バレエだったし、このドキュメンタリーにも、国籍不明ながら東洋人の方が何人かいましたね。それにしても、あの先生のキツいこと!「せめて死ぬまでにはできるように」とか、凄いですよね。ワガノワはもっと優しいんですね。もう一人の若いナタリア先生は、フォローしてあげていましたね。
その米原万里さんの対談は読んでいませんが、米原さんの「オリガ・モリソヴナの反語法」のオリガを思わせるような言葉遣いでしたね~!米原さんの本は本当にどれも面白かったので、早く亡くなられたことが惜しまれてなりません。
そういうところがソヴィエトになったからこそ、バレエにしろ何にしろ、凄い人物が登場し続けたということなのでしょうね。
投稿: naomi | 2008/10/21 23:59
ずずさん、こんばんは。
お風邪のお加減はいかがでしょうか?私はようやく少しよくなってきたところです。
私は録画はセットしていたんですが、始まって5分後くらいに気がついてテレビをつけたんですよね。ホント、バレエって過酷な芸術です。ごくつぶしって、そんなに耳にすることのない表現ですね~。国立のバレエ学校だからそう言われるのかしら?
私のバレエの先生は、ああいうストレートな表現はしないのですが、じわじわとしたイヤミが得意でしたね~。
なんか太らないためには数日絶食とか平気でできてしまうのに、身長はぐんぐん伸びて、あんなに回れたりするから、プロになる人は人間が違うんですね、って思ってしまいました。あんなに儚げな女の子が、2年後にはなんだか吹っ切れていて自信にあふれているから、人間の努力って凄いなって。
投稿: naomi | 2008/10/22 00:04