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2008/09/11

「ダークナイト」The Dark Knight

IMDBのユーザーレイティングで歴代第3 位という高評価、そしてもちろん、故ヒース・レジャーの遺作ということで期待たっぷりで観た本作品、見ごたえがあった。映画というものを映画館で観ること自体すごく久しぶりだったということもあるけど。やっぱり映画館で映画を観るっていいなあと思わせてくれた作品。

監督 クリストファー・ノーラン
脚本 ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
撮影監督 ウォリー・フィスター

ブルース・ウェイン/バットマン クリスチャン・ベール
ジョーカー ヒース・レジャー
ハービー・デント アーロン・エッカート
アルフレード:マイケル・ケイン
レイチェル マギー・ギレンホール
ゴードン ゲイリー・オールドマン
ルーシャス・フォックス モーガン・フリーマン

「バットマン」シリーズは今まで3作しか観ていないのだけど、一番大切なのは何かというと、世界観と撮影のルックだと思っている。1作目のティム・バートンによる、陽の射さない暗くてゴシックなゴッサム・シティがどのように表現されているかということ。この点に関しても、素晴らしい。作品のテーマのひとつでもある、光と影が見事な対照を成して、光が明るければ闇は一層暗く表現されていて、美しくも禍々しい。また、ジョーカーの衣装やメイクなどの色彩感覚も実に禍々しく狂気を感じさせて見事である。

常人には理解不能な、絶対的な悪、テロリストとしてのジョーカー。そのジョーカーがもたらす恐怖が支配するゴッサム・シティに存在する唯一の光であった、正義感の強い若き地方検事ハービー・デント。光と影、この二つのキャラクター造形、特にハービーのキャラクター作り、そして彼が使う、とある小道具の設定が実に秀逸。清廉潔白で志の高い人物であればあるほど、ふとした大きな怒りや憎しみ、そして復讐心でたやすく天秤が傾き、コインの裏と表のように正邪が逆転しやすいということ、そして自分の選択に自信が持てなくなって運命を天に任せたくなるということを象徴させている。

「運命を、そして善悪を自ら選択する」というテーマは、終盤にあるフェリーでのエピソードでも象徴的に登場する。その時に人々が選び取った選択肢こそが、この残酷で混沌とした世界の中に射す、一筋の希望の光であり、人間性に対する信頼を示すものとして燦然と存在するものだ。しかし、その選択は容易に導き出されたものではないし、多数決で得られた答えは、必ずしも正しいものではないということも示している。

ジョーカーが病院を爆破していく、黙示録のようなテロのシーンは、まさしく9.11の世界貿易センターが崩壊していく様子と重ね合わせることができるだろう。

絶対的な悪としてのジョーカー。正義の使者でありながらも同時に糾弾される存在でもあるダークヒーローたるバットマン。悪と戦うために自ら悪の汚名を着るバットマン。我こそがバットマンであると名乗り出たハービー。これらのキャラクターは、お互いに自分たちの大義名分たる倫理、正義のために戦争を起こす米国、テロを起こすイスラム原理主義者、そのどちらともに重ね合わせることができるというのが、この映画の凄いところである。

ジョーカーが持っている根源的な憎しみの源である裂けた口、なぜそんな顔になってしまったのかを説明するエピソードが毎回違っているというのがまた恐怖を倍加させる。何者かに取り憑かれているかのようなヒース・レジャーの怪演ぶりが凄まじい。彼は完全なメソッド・アクターであり、身体の歪ませ方から声の出し方、震わせ方まで狂気が最初から最後までみなぎっている。禍の神として君臨するジョーカー、それを演じたことがヒース・レジャーの早すぎる死のきっかけのひとつになったかと思うと、痛ましい限り。

マイケル・ケインやモーガン・フリーマンといった名優(冒頭の銀行のシーンで登場するウィリアム・フィチトナーも印象的)を脇で使っている贅沢さもさることながら、ジョルジオ・アルマーニが手作りしたというクリスチャン・ベールのスーツ、そしてゼニアによるアーロン・エッカートのスーツのスタイリッシュさも見事なもので、映像のルックの美しさに貢献している。かくのごとく細部まで気を配って作られたこの作品は、隅々まで緊張感が持続し、2時間40分という長尺さも感じさせない。ブルース・ウェインの恋人レイチェル役がマギー・ギレンホールという渋いキャスティングが、ノーランが男女の関係ではなく男同士の関係に強い関心を持っていることを示しているんだな、とちょっと深読みできるところも面白い。

追記:エディソン・チェンが出ているのは気がつかなかった。残念!

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映画」カテゴリの記事

コメント

私も先日観たばかりです。naomiさんの的確なレポートを読んで視界が開けた思いです。
素晴らしいエントリーをありがとうございます!

ジャックニコルソンのJOKERは、バイキンマンのようにキュートでもあったけど、ヒース・レジャー版には戦慄しきりでした。まさに身を削るような怪演(涙)。蠍座の追悼上映「candy」で観た薬中毒といい、ブロバといい、ヒースは心身に悪そうな役が多かったのでしょうか(涙)

今日で911から7年ですね。ハービーデントの転落が入っているところに、「内省するアメリカ」を感じたりしました。

ところで、IMDBに「実はnipple付きのバットマンスーツも一着だけ作った」と書いてありましたよ。IMDBのサイトの充実ぶりに感心です(笑)

チコラさん、こんにちは。

いやあ、ちょっと事実関係から間違ったことを書いちゃって友達から指摘が入りました(^-^;

正義を振りかざす人は多いけど案外脆いものなんですよね。生半可に正義を名乗ってはイカンなあと思いました。

911からもう7年なんですね。歳を取るのも早いわけです。

キャンディ、見たかったのに見逃しちゃったので、借りて来なくちゃ。最近なかなか映画館に行けないのですが、映画見なくちゃって思いましたよ。

>正義を振りかざす人は多いけど案外脆いものなんですよね。
>生半可に正義を名乗ってはイカンなあと思いました。

全くですね!!!
正義語り大好き&ヘタレな私にはアイタタ…な映画でした(笑)

キャンディ面白かったです。薬にだけは手を出すまい、と固く決意しましたよ(^-^;


naomiさん、ご無沙汰してました。

最後の「深読み」のところ、やっぱり? 私も同じようなことを感じました。

2回目見たかったんだけどなあ・・・この辺ではまったく流行ってなくって早々に夜1本だけになったから、ちょっと無理っぽいんですよ。

初めまして、こんにちは。Kemiaと申します。数ヶ月前からお邪魔しています。普段はViolinを弾く会社員です。balletは古典ばかり、しかもお察しのとおりチャイコフスキーばかりでしたが、昨年フェリさんの引退公演に行ってから考えが変わりました。今はABT初めいろいろ興味があります。映画も大好きでDark Knightも震えながら見ました。毎日更新される情報の新しさとあたたかく深いご賢察に一言お礼を申し上げたく僭越ながら書き込ませていただきました。

チコラさん、こんばんは。

いや~私もアイタタタ…でしたよ(笑)私もへたれですからね。チコラんはそれに比べたらずっとえらいです。

「キャンディ」観なくちゃ!そんなヒースが薬で命を落としたのがまた悲しいですね。このジョーカーは、本当に取り憑かれているかのようなものすごい演技でしたからね。

うるるさん、私もご無沙汰していました!お元気ですか?

マギー・ギレンホールって「ブロークバック・マウンテン」のジェイク・ギレンホールのお姉さんですよね。ヒースとは不思議な縁ですよね。とても上手な女優さんだし、「セクレタリー」などはすごく面白かったんで好きなんですけど、アメコミ映画化のヒロイン役には地味ですよね。

東京でも、あまりお客さんが入っていなくて、新宿の大きな映画館でも一日2回上映になっちゃっていたんですよ。もっと観たいからDVD待ちかな?

Kemiaさん、はじめまして!ようこそいらっしゃいました。

ヴァイオリンですか!音色がとても美しくていいですね~弾ける方はとっても素敵だと思います。私はピアノも挫折したような者ですので…。
私もどちらかといえば古典のほうが好きなのですが、コンテンポラリーの中にも面白いのはありますよね。フェリ公演のコンテ作品はみんな面白かったです!

映画は以前は仕事でもかかわっていたんですが、最近なかなか見る暇がなくて。たまに観に行くと、やっぱり映画っていいな~って思ってしまいます。
今後とも、これに懲りずにどうぞよろしくお願いいたします♪

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