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2008/09/28

「イントゥ・ザ・ワイルド」Into The Wild

Into The Wild
http://intothewild.jp/top.html
監督・脚本:ショーン・ペン
原作:ジョン・クラカワー『荒野へ』
出演:
クリス・マッカンドレス:エミール・ハーシュ
ビリー・マッカンドレス:マーシャ・ゲイ・ハーデン
ウォルト・マッカンドレス :ウィリアム・ハート
カリーン・マッカンドレス:ジェナ・マローン
ロン・フランツ:ハル・ホルブルック
ウェイン:ヴィンス・ヴォーン
レイニー:ブライアン・ダーカー
ジャン:キャスリーン・キーナー
トレイシー:クリステン・スチュワート
http://www.imdb.com/title/tt0758758/

1990年、裕福な家庭に育ち、大学を優秀な成績で卒業した一人の青年が、家族にも行き先を告げず、旅に出た。大学院入学のために貯めていた全財産を慈善団体に寄付し、電話も身分証明書も持たず、財布にあった現金も焼き捨て、車を途中で乗り捨て、そして名前まで捨てて。2年間もの間、アメリカ各地を転々としながら、その先に見ていたのはアラスカの大地。彼はいったい何を考え、旅先でどんな人と交流をしたのだろうか…。

1992年、この青年クリス・マッカンドレスがアラスカに到達してから4ヵ月後、彼の死体が打ち捨てられたバスの中で発見された。その実話をノンフィクションにしたベストセラー「荒野へ」を原作にショーン・ペンが映画化。映画化権を獲得するのに10年もかかったという。

若者が”自分探しの旅”に出かけるというのは、今も昔もあることで、中にはそのような行動に出る青年を批判する言質も聞かれる。実際、クリスの遺体が発見され、「荒野へ」がベストセラーとなった後も、ずいぶんと彼の行動は非難されたようだ。でも、彼は自分探しに出かけて行ったのではない。

クリスはすべてを捨てて一人荒野へと旅立ち、植物図鑑をめくっては食べられる植物を探したり狩をしての自給自足の生活を送る。ヒッチハイクをしては様々な人々と出会っては別れる。そしてあまりにも無謀な、軽装備でたった一人でのアラスカの荒野への旅立ち。彼の言葉の中には、物質的な文明を否定するものがたくさん出てくるし、お金も、モノも、愛もいらない、欲しいのは絶対的な自由だけ、とある。その自由と純粋な孤独を手に入れた果てに、彼は北の荒野で餓死し、朽ち果てた。それは壮大な”自分探しの旅”の結末だったのか?いや、そうではなかった。彼は、ただアラスカという未知の厳しい自然の中の土地に行ってみて、自分ひとりで生活して、純粋な孤独の高みに達してみたかっただけなのではなかったのだろう。

クリスは無一文で、一人で旅を続けるものの、それは生きることのかけがえの無さと幸福、厳しく雄大な大自然、そして自由という光が満ちあふれ、美しさに満たされたものであり、途中までは死の匂いとは無縁だ。そして、様々な人々との出会い。サウスダコタ州の農場主ウェインの元で働き、そしてヒッピーのカップルであるレイニーとジャン、美しい少女トレイシー、そして家族に先立たれ孤独な老人ロン・フランツ。少し社会からはみ出した人々だからこそ持っている、温かさに触れる。それでも、誰も彼の無謀なアラスカ行きをとめることはできなかった。

特に、偏屈な老人ロンとの出会いと別れは痛切で、涙なしには見られない。クリスは、ロンに人生の楽しみは人間関係だけじゃない、という話をするのに、死の前に、本に「幸せが現実となるのは誰かと分かち合った時だ」と書き残しているのが切ない。文学を愛するクリスは、「友達なんかより、小説の中に出てくる人物を友として生活してきた」と語る。そして様々な文学作品からの引用が、文中に登場する。最後になって人とのつながりの大切さを感じた彼だったけど、ラストシーンで彼の脳裏に去来する両親との笑顔と見上げた空を見ながら、やっぱり彼は幸福で、人生を思い通りに駆け抜けたんだろうな、死んでしまったことだけが唯一の誤算だったんだって思った。

水の苦手な彼が、川の増水によって向こう岸に帰れなくなる。そしてベルトの穴がどんどん増えていってやせ細っていく。ようやく狩ったエゾシカにすぐにウジがたかってしまう。居ついたバスの中に半ば引きこもり状態になる。植物図鑑を頼りに食べた植物の毒にあたる。どんどん衰弱していく。自然の猛威が牙を剥く。それでも、最後に登場する、カメラに残され死後現像されたクリス本人の写真を見るにつれて、彼は大切な何かを手に入れて、そして幸せな人生を送ったのだと確信できた。

148分という長尺を感じさせない演出も見事で、光、冷え冷えとした空気、動物の血の生臭い匂い、激流といったアメリカ大陸の大自然の呼吸を体験することができた。カメラワークの緩急の差のつけ方、3つの時制(「奇跡のバス」の中、順を追った時の流れ、そしてクリスの死後)の使い分けかたもすごい。文学作品の引用や、台詞の中に含まれた意味を租借するためにも、また映画館で観たいと思った、心に残る作品だった。特に、人生をこれからどうやって生きていこうかと悩んでいる人にとっては、鮮烈な一本になることだろう。

クリスと親しかった妹カリーンによるナレーションや、兄との思い出、家族の秘密の響きがとても痛切に耳に残る。あんなに親しくて、痛みや苦しみ、そして喜びを分け合った妹にも、一度も連絡をしなかったのは、なぜだろうか?それはクリスにとって、自由がどんなものよりも眩しい光を放っていたものだったからなのだろうか。

原作を早速帰宅途中に購入。一時期品切れだったようだけど、増刷されたようだ。今から読むのが楽しみ。(マーケットプレイスで高値で出ているけど、大きめの書店だったら今は手に入る)

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コメント

絶対に見ようと思ってた映画だわ!やはりnaomiさんも見たのね!
見終わってからもう一度読み直して後でコメント書くわ。
バレエの無い期間はやはり映画館に走ってしまうよね♪

jadeさん、こんばんは
そう、この映画は絶対に映画館で観るのが良いです!アメリカの厳しくも美しい大自然を感じて、クリスの軌跡を一緒にたどっていくのが。やっぱり映画館で映画を観るのは良いですね~。

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