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2008年9月

2008/09/30

ロンドン旅行記その一

いつもはマイレージの関係で一緒に行く友達とは別の飛行機のことが多いんだけど、今回は友達が付き合ってくれて一緒にエールフランスの夜便を利用。二人掛けシートだったので気を使わなくて済んで、気楽だった。シャンパンを飲んで映画Sex & The Cityを見ていたけど結局寝ちゃって気がついたらパリに着いていた。

朝4時過ぎにド・ゴール空港で乗り換えようとしたら声をかけられる。ミラノにスカラ座のプティ・プロを見に行く途中のお友達だった。ロベルトも観たかったわ。

ターミナルDまで移動してバレエ雑誌を買おうとキオスクのレジに行くと、そのロベルト・ボッレが表紙の雑誌が置いてある!L'OFFICIEL HOMMESというファッション雑誌で、ロベルトの美しい写真が20ページ以上!もちろん買い求めたけど電話帳のように分厚くて重い。

ヒースローに到着。今回からエールフランスはシルバー会員になったので荷物は早く出て来た。東京よりはちょっと寒い。地下鉄の中の人々は、タンクトップ一枚からウールのコートまで様々。

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ラッセルスクエア駅で降りてホテルまで歩き、荷物を預かって貰う。玄関に花が飾ってあって、こじんまりと可愛いホテル。部屋もなかなか広さがあって良い感じ。


まずは地下鉄に乗って、ヴィクトリア&アルバート博物館へ。イギリスの美術館や博物館の多くは入場料が無料なのが嬉しい。

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パリでも装飾美術館に行ったように、装飾美術や工芸を見るのが好きなのだ。ここはファッション関係も充実していて、各年代の素敵なオートクチュールのドレスもたくさん展示してある。靴もディオールやヴィヴィアン・ウェストウッドなどゴージャスなものや繊細なものまで揃ってる。テキスタイルで有名なのだけど、そこまで見る時間がなかった。

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シュープリームズのステージ衣装の特別展もやっていたけど時間がなくて行けなかった。凄いのが銀器のコレクション。そして女性なら絶対に見逃せない宝飾品のコレクション。古代からアール・ヌーヴォー、アール・デコ、そして現代に至るまで、あらゆる種類のジュエリー、ヴァン・クリーフ&アーペル、カルティエ、ブシェロン、ラリック、シャネルなどの有名なメゾン、世界中から集められた宝物。圧巻だったのは、ダイヤモンドから始まってあらゆる貴石や半貴石を渦状に並べた展示。ダイヤモンド一つ取っても少しずつ色のグラデーションがあるものが順番に弧を描くように並べられているのだ。ため息が出てしまう。

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ここまでで2時間。でも時間はいくらあっても足りないくらい。夜の予定もあるので、ミュージアムショップへ。これがまた素晴らしくて、オリジナルのアクセサリーも素敵だしスカーフやグリーティングカードなどなど…。私はグリーティングカードの他、シルバーの革製のコサージュと、友達とお揃いでウィリアム・モリスのテキスタイル柄の小型魔法瓶を買った。

ハロッズの前まで歩いて、リシューという紅茶の店でクリームティー。これは、アフタヌーンティーからサンドイッチやケーキを抜きにしたものと言うべきか。とにかく焼きたてのスコーンがふわふわと柔らかくて絶品だった。バスに乗ってホテルで一休みした後、コベント・ガーデンまで歩く。道を間違えちゃって遠回りしてしまったら、雨が降り出した。

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まだバレエのシーズンは始まっていなくて、オペラのシーズンが始まったばかり。上演中のドン・ジョバンニはキーリンサイド主演でソールドアウトのため、当日券発売を待つ長い列ができていた。オペラハウスのショップは充実。バレエ雑誌やポストカード、カレンダー、そしてタッチキン・バレエの白鳥の湖のDVDを買う。キャストを見ると、ミハイロフスキー劇場に移籍したヤパーロワとヤフニークがパドトロワを踊っているみたい。大急ぎでホテルに戻り、サドラーズ・ウェルズ劇場へ。ロンドンの地下鉄は時間通りに動かないので相当余裕を持たないといけない。

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そうだ、サドラーズの隠れた名物がアイスクリーム。特製のものらしく、カップのデザインもダンスをモチーフにしていて可愛い。しかも味の種類も6種類くらいあって、どれも美味しい。毎回のように違う味を試してみたけど、ストロベリーが一番かな。休憩時間には席にまで売りに来るので、席で食べても文句は言われない。ロビーやホワイエでも、このアイスクリームを食べている人の多いこと。お酒を飲んでいる人より多いのは間違いない。だって美味しいんだもん。

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ダンスマガジン11月号

急に寒くなったもので、体調を崩し気味です。蕁麻疹とか睡眠障害、腕の痺れなどなど…今後どれくらい定期的に更新できるかわかりませんができるだけ頑張ります。

ちょっと遅くなりましたが、ダンスマガジン11月号が出ました。表紙のマチュー・ガニオのロミオは相変わらず麗しく、脚がとっても長いですね。つま先もとてもきれいです。

ノイマイヤーとハンブルク・バレエ特集がとっても充実していて、21ページもあります。ニジンスキー・ガラのカーテンコールが見開きになっているのがいいですよね。端っこにはルグリの姿もあります。草野洋介さんは、このメンバーの中でも背が高いのがわかります。

三浦雅士編集長の渾身のノイマイヤー論、気合が入っています。ディアギレフのバレエ・リュス、その源流であるプティパのクラシック・バレエ。そしてバレエ・リュスからチューダーの心理的バレエ、そしてシュツットガルト・コネクションというべき、マクミラン、クランコといった物語バレエの流れを引くノイマイヤーという流れが理解できます。(それがまたマイヨーやドゥアトへとつながっていくわけで)

「人魚姫」という作品についても細かく語られています。アンデルセンという人物の隠された秘密、その悲しい恋愛が人魚姫の悲劇へと昇華されていったわけです。そこから、ノイマイヤーが、「人魚姫」のみならず、「幻想・白鳥の湖のように」「椿姫」「ニジンスキー」「冬の旅」「かもめ」「ヴェニスに死す」と、彼の作品の多くは、主人公がノイマイヤー自身の分身となっているというのが、彼の芸術世界を創り上げる大きな要素となっていると三浦氏は読み取っています。だからこそ、彼の振付そのものが、主人公の思想と感情を完璧に表現するものとなっていると。

また、主要なダンサーたちの紹介や、主な作品の紹介があるところも嬉しいところです。「時節の色」は正直言って彼の作品の中では駄作の部類に入ると思いますが…。

締めくくりは、三浦氏の思い入れたっぷりの、ノイマイヤーとの対談。ノイマイヤーが衣装や照明の重要性について語っているのがとても面白いです。特に人魚姫の尾ひれを表現するために、日本の袴を使ったという発想がすごいですね。

「熱望。何かそれ以上のものでありたい、そのためにさらに苦しみ、さらに与える、それが愛なのです」

「人魚姫」が楽しみになってきました。

************
「エトワール・ガラ」の記事も充実していました。写真もたくさん掲載されています。「マーラー交響曲第5番」のシルヴィア・アッツオーニの夢見るような視線が美しいです。「カノン」のマチューのいるような視線も。

また、インタビューもそれぞれ面白かったです。マリ=アニエス・ジロによると、ラコットは彼女をドラマティックなダンサーと見ているとのことで、マクベス夫人や「トスカ」を演じて欲しいと。ぜひ見てみたいですよね。今回は古典からコンテンポラリーまで披露したわけですが、スタイルの違う踊りを毎日踊るのはとてもハードで、普段はこんな危険なことはできないそうです。そして、「エトワール・ガラ」はまた開催される予定であることを知ることができたのは嬉しいことですね。

今回のプロデューサーのバンジャマン・ペッシュは、ベジャール・プロで「火の鳥」「春の祭典」を、そして「アルルの女」などを踊る予定なのだそうですが、「オネーギン」ではレンスキー役の予定なのだそうです(本人はオネーギン約を希望しているそうですが)。バンジャマンこそ、オネーギンにぴったりなダンサーだと思うんで、希望がかないますように!エールフランスのマイレージで、GWのパリ便は確保済みなんです。

イリ・ブベニチェクによると、今回大好評だった「カノン」はロベルト・ボッレも踊ったことがあるのだそうですね。さらに、今回の公演を観たルグリも踊りたいと言ってくれたとか。今回の作品の中でも一番私も好きだった演目でした。イリは、大バレエ団に全幕バレエを振付けるのが夢なのだそうです。今は「椿姫」や「マノン」のような物語バレエを振付ける人はほとんどいないけれども、その困難に挑戦したいというのは頼もしい言葉です。さすが、ノイマイヤーの元にいたダンサーですね。ドレスデン・バレエの来日予定がなくなってしまったのは本当に残念ですが。

マチアス・エイマンは現在178cmで、20歳の今も身長は伸びているそうです。彼は「オネーギン」でレンスキー約を踊るんですね。これも楽しみ!

ところで、マチアスと「ジゼル」、マチューと「白鳥の湖」そしてルグリと「マノン」を踊ったスヴェトラーナ・ルンキナは、ballet.co.ukに載っていたボリショイの香港公演での記者会見 (ロンドン発バレエブログ様経由)によると、おめでたなのだそうですね。マタニティ・リーヴに入るそうなので、年末のボリショイ公演はキャスト変更がありそうです。

*********

このほかにも、K-Balletのスクールで教えていたヴィヴィアナ・デュランテ、小林紀子バレエシアターの「ラ・シルフィード」の振付で来日していたヨハン・コボー、そして「The Hopes and Proud of Japan Gala」で来日していたクリスチャン・シュプック(「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」の振付家)らのインタビューも面白かったです。
コボーも、ロイヤルのために50分の物語バレエを振付けるんですね。さらにイーサン・スティーフェルとのプロジェクトもあるそうだし、キエフでは「Kings of the Dance」公演がまた行われるんですよね。

ミハイロフスキー劇場の「スパルタクス」「ジゼル」ほかのロンドン公演評、そしてアイスショー「眠れる森の美女」のレポートも、期待を抱かせるものでした。「スパルタクス」は絶対に日本公演を実現させて欲しいもののひとつです。

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2008/09/29

NHK BS1の「世界のドキュメンタリー」でペルミバレエ学校ドキュメンタリー「A Beautiful Tragedy」放送

NHK BS1の「世界のドキュメンタリー」で
http://www.nhk.or.jp/wdoc/yotei/index.html
<シリーズ 現代社会と子供たち>
犠牲の先に夢がある 〜ロシア国立ペルミバレエ学校〜
10月20日 月曜深夜[火曜午前] 0:10〜1:00
「ロシアの2大バレエ団の一つ「マリインスキー・バレエ(旧キーロフ・バレエ)」の若きバレリーナ・オクサーナ・スコリク。
番組では、オクサーナが入団前、ロシアの名門バレエスクール、「ペルミ・バレエ学校」で、バレリーナを目指す他の少女たちとともに厳しい練習に明け暮れた日々を追う。」

これは以前、当ブログでご紹介したドキュメンタリー映画「A Beautiful Tragedy」のようです。日本のテレビで見られるなんて、すごく嬉しいです。

http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2008/05/post_c142.htmlペルミ・バレエ学校のドキュメンタリー映画
イギリスのガーディアン紙のブログとBallet Talkのフォーラムで知ったのですが、ロシアのペルミ・バレエ学校の生徒の1年間を追ったドキュメンタリー映画「A Beautiful Tragedy」のDVDが発売になりました。以下のサイトで購入可能です。このDVDはPALなのですが、アメリカで観ることができるNTSC盤を発売する計画があるとのこと。今年の2月にノルウェイのテレビで放映されたそうです。

ウクライナ出身の15歳の女の子Oksana Skorikが、母親のバレリーナになりたかった夢を引き継いで、厳しい訓練に明け暮れる毎日を中心に描いています。現在19歳のオクサーナは、2006年にバレエ学校を卒業してマリインスキーに入団し、先日のマリインスキー・バレエのNY公演のプレイビルにも名前が掲載されていました。

’A Beautiful Tragedy’
http://www.davidkinsella.com/v1/index.php?option=com_content&task=view&id=32
監督のデヴィッド・キンセラのサイトで一部見ることができます。

2008/09/28

「イントゥ・ザ・ワイルド」Into The Wild

Into The Wild
http://intothewild.jp/top.html
監督・脚本:ショーン・ペン
原作:ジョン・クラカワー『荒野へ』
出演:
クリス・マッカンドレス:エミール・ハーシュ
ビリー・マッカンドレス:マーシャ・ゲイ・ハーデン
ウォルト・マッカンドレス :ウィリアム・ハート
カリーン・マッカンドレス:ジェナ・マローン
ロン・フランツ:ハル・ホルブルック
ウェイン:ヴィンス・ヴォーン
レイニー:ブライアン・ダーカー
ジャン:キャスリーン・キーナー
トレイシー:クリステン・スチュワート
http://www.imdb.com/title/tt0758758/

1990年、裕福な家庭に育ち、大学を優秀な成績で卒業した一人の青年が、家族にも行き先を告げず、旅に出た。大学院入学のために貯めていた全財産を慈善団体に寄付し、電話も身分証明書も持たず、財布にあった現金も焼き捨て、車を途中で乗り捨て、そして名前まで捨てて。2年間もの間、アメリカ各地を転々としながら、その先に見ていたのはアラスカの大地。彼はいったい何を考え、旅先でどんな人と交流をしたのだろうか…。

1992年、この青年クリス・マッカンドレスがアラスカに到達してから4ヵ月後、彼の死体が打ち捨てられたバスの中で発見された。その実話をノンフィクションにしたベストセラー「荒野へ」を原作にショーン・ペンが映画化。映画化権を獲得するのに10年もかかったという。

若者が”自分探しの旅”に出かけるというのは、今も昔もあることで、中にはそのような行動に出る青年を批判する言質も聞かれる。実際、クリスの遺体が発見され、「荒野へ」がベストセラーとなった後も、ずいぶんと彼の行動は非難されたようだ。でも、彼は自分探しに出かけて行ったのではない。

クリスはすべてを捨てて一人荒野へと旅立ち、植物図鑑をめくっては食べられる植物を探したり狩をしての自給自足の生活を送る。ヒッチハイクをしては様々な人々と出会っては別れる。そしてあまりにも無謀な、軽装備でたった一人でのアラスカの荒野への旅立ち。彼の言葉の中には、物質的な文明を否定するものがたくさん出てくるし、お金も、モノも、愛もいらない、欲しいのは絶対的な自由だけ、とある。その自由と純粋な孤独を手に入れた果てに、彼は北の荒野で餓死し、朽ち果てた。それは壮大な”自分探しの旅”の結末だったのか?いや、そうではなかった。彼は、ただアラスカという未知の厳しい自然の中の土地に行ってみて、自分ひとりで生活して、純粋な孤独の高みに達してみたかっただけなのではなかったのだろう。

クリスは無一文で、一人で旅を続けるものの、それは生きることのかけがえの無さと幸福、厳しく雄大な大自然、そして自由という光が満ちあふれ、美しさに満たされたものであり、途中までは死の匂いとは無縁だ。そして、様々な人々との出会い。サウスダコタ州の農場主ウェインの元で働き、そしてヒッピーのカップルであるレイニーとジャン、美しい少女トレイシー、そして家族に先立たれ孤独な老人ロン・フランツ。少し社会からはみ出した人々だからこそ持っている、温かさに触れる。それでも、誰も彼の無謀なアラスカ行きをとめることはできなかった。

特に、偏屈な老人ロンとの出会いと別れは痛切で、涙なしには見られない。クリスは、ロンに人生の楽しみは人間関係だけじゃない、という話をするのに、死の前に、本に「幸せが現実となるのは誰かと分かち合った時だ」と書き残しているのが切ない。文学を愛するクリスは、「友達なんかより、小説の中に出てくる人物を友として生活してきた」と語る。そして様々な文学作品からの引用が、文中に登場する。最後になって人とのつながりの大切さを感じた彼だったけど、ラストシーンで彼の脳裏に去来する両親との笑顔と見上げた空を見ながら、やっぱり彼は幸福で、人生を思い通りに駆け抜けたんだろうな、死んでしまったことだけが唯一の誤算だったんだって思った。

水の苦手な彼が、川の増水によって向こう岸に帰れなくなる。そしてベルトの穴がどんどん増えていってやせ細っていく。ようやく狩ったエゾシカにすぐにウジがたかってしまう。居ついたバスの中に半ば引きこもり状態になる。植物図鑑を頼りに食べた植物の毒にあたる。どんどん衰弱していく。自然の猛威が牙を剥く。それでも、最後に登場する、カメラに残され死後現像されたクリス本人の写真を見るにつれて、彼は大切な何かを手に入れて、そして幸せな人生を送ったのだと確信できた。

148分という長尺を感じさせない演出も見事で、光、冷え冷えとした空気、動物の血の生臭い匂い、激流といったアメリカ大陸の大自然の呼吸を体験することができた。カメラワークの緩急の差のつけ方、3つの時制(「奇跡のバス」の中、順を追った時の流れ、そしてクリスの死後)の使い分けかたもすごい。文学作品の引用や、台詞の中に含まれた意味を租借するためにも、また映画館で観たいと思った、心に残る作品だった。特に、人生をこれからどうやって生きていこうかと悩んでいる人にとっては、鮮烈な一本になることだろう。

クリスと親しかった妹カリーンによるナレーションや、兄との思い出、家族の秘密の響きがとても痛切に耳に残る。あんなに親しくて、痛みや苦しみ、そして喜びを分け合った妹にも、一度も連絡をしなかったのは、なぜだろうか?それはクリスにとって、自由がどんなものよりも眩しい光を放っていたものだったからなのだろうか。

原作を早速帰宅途中に購入。一時期品切れだったようだけど、増刷されたようだ。今から読むのが楽しみ。(マーケットプレイスで高値で出ているけど、大きめの書店だったら今は手に入る)

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東京文化会館バックステージツアー

「ちょこっと劇場へ行ってきます」のmiyaさんのエントリで、東京文化会館のバックステージがとても楽しいらしいということがわかり、ちょうど9月27日には珍しく土曜日のツアーが組まれているらしいということで、友達二人&友達の彼の合計4人で参加。知る人ぞ知るというバックステージツアーだけど、発売日にはほぼソールドアウトになると言う。

http://www.t-bunka.jp/sponsership/spo_c_6.html

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ツアーの参加者は総勢50人で、3つの班に分かれる。まずは、コンサート形式に組まれた舞台の上で、係員の全体的な説明を聞く。東京文化会館は1961年に開館するので、まもなく50歳になろうというところ。それまでは、東京でクラシック音楽の演奏会が開かれるのは日比谷公会堂くらいしかなかったそうだ。天井から見ると、6角形の形になっているとのこと。空席時の残響時間は2.0秒という理想的なものだそうで、床は、硬すぎず柔らかすぎない檜でできている。

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まずは、コンサート形式から、オペラ/バレエ形式への舞台転換を見せてもらった。コンサート形式の時に使われている反響板で組まれた壁や天井を奈落へ沈める。これが12メートルの高さで、分速1メートルなので、13分で転換することができるそうだ。そしてホリゾントを下ろし、それからバトン(幕や装置がぶら下がっているもの)を下ろす様子を見せてもらう。バトンは分速5センチから150センチまで17段階もの速度調整を行うことができ、下手にある操作盤で操作を行う。

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5階まで階段を上り、5階の正面の席の両脇にあるピンスポットを操作する照明室まで行く。2つの部屋に、各2台のピンスポット機があり、実際に機械を触らせてもらう。ピンスポットのサイズや位置を動かすのは、まるでスナイパーになったような気分。一緒に行った友達がベジャールファンだったので、「ボレロ」の最初のシーンで手だけに照明を当てるのはどうするのかと質問をした。これは本当に真っ暗な中で小さな面積に当てなければならないので、リハーサルの時に大体の位置を把握して、ほとんど勘でやるようだ。技術修練には少なくとも3~4年は要するとのこと。「白鳥の湖」だったら登場はどちら側のどの位置、といった流れを熟知しているそうだ。狭い部屋で3000Wの機械2台があるところで働くのは相当暑いようだ。

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カーテンコール体験という面白い経験もできた。まずは、整列して舞台に向かって一礼。別の班が5階からピンスポットを照らしてくれる。拍手の音までテープで鳴らしてくれるという大サービス振り。二手に別れ、今度はカーテンの前でレベランスをし、もうひとつの班は、緞帳の縫い目を持って開ける。何人かで手分けして持つためか、意外と重たくない。ちょっとしたスター気分を味わえて楽しかった。

ついで、オーケストラピットへ。オーケストラピットの中にも実際に入れてもらう。色々な深さにできるとのことだけど、ワーグナーのように楽器の編成が多い場合には、255cmという深い位置まで下げて、普段は譜面台や椅子を収納するスペースにティンパニーなどの場所をとる打楽器が入ることで、大編成を入れることを可能にしているそうだ。舞台の上にまた上がり、プロンプターボックスを見せてもらう。オペラの時に、出だしを歌手が忘れた時に指示したりする役の人が入る隠し箱のようなもので、非常に狭い。副指揮者が入ることが多いようだ。実際に中に入ってみることもできる。

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そこからいよいよ、一番の楽しみ、バックステージへ。オーケストラピットから裏へ回ると、さっそく壁面に多くの落書きが。オーケストラピットの近くなので、書いている人たちはほとんどがオーケストラのメンバー。係りの方の話によると、上手の方が落書きが多く、理由としては、上手に配置されている楽器(打楽器とか金管?)の方が暇だからだそうだ(笑)奈落の横を通ったが、先ほど転換した反射板が置かれているのが見えた。

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それから、舞台の袖に。上手の方は古い落書きが多くて歴史を感じさせる。一番古いものは1967年のもので、チョークで書かれている。そして、バレエ団やオペラ劇場ごとに額やポスターにサインされたものが多数飾ってある。ごく最近、今年の夏のロイヤルやABTまで、様々なところのがあり、所狭しと飾ってあるのは壮観の一言。また、それぞれの劇場の個性が出ており、イラストやポスターのコラージュや、Tシャツにサインされたものなど様々。他の劇場の舞台袖は発表会等で行ったことがあるし、メトロポリタン・オペラ劇場のバックステージツアーにも行ったことがあるけれども、ここまで広々としたところは初めて。このスペースだけでも十分バーレッスンできるだろう。

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もっともっと写真を撮ったり、ゆっくり見たかったけど、時間もあるので楽屋へ。個室の楽屋が存分に用意されているのも、権威ある劇場ならでは。個室にはそれぞれシャワーも完備されている。世界のスターたちが利用しているものなのだから。フリースペースもゆったりと取ってあるし、大部屋には、洗濯機を設置できるスペースまである。長期公演ともなれば、出演者は大部分の時間をここで過ごし、ほとんど住んでいるような状態になるとの話。

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しかも、廊下にも、楽屋にも、サインや落書きがされており、コンクリート打ちっぱなしの空間があれば何かしら落書きされているって感じ。1階の楽屋口へと上る階段の脇に、ロイヤル・バレエのデヴィッド・マッカテリの大きなサインを発見。しかも、ここで公演を行うたびに、その年号を書き入れており、もう4回も来ているというのが判った。意外な自己主張!そのちょうど反対側には、ロイヤルの同僚リアン・ベンジャミンのサインも。リアン、東京公演には出演しなかったけど大阪のガラへの出演があったからサインはしっかり残したのね。

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最後には、このホールの財産である、過去出演した大スターたちのサイン帳を見せていただいた。マリア・カラス、カラヤン、バーンスタイン、リヒテル等など…。

わずか500円の参加費で、2時間もの間説明つきでこんなに楽しい体験をさせてくれるバックステージツアー、また機会があれば参加したいなと思った。しかも、どこにどの劇場やバレエ団のサインが飾ってあるかとか、照明プランがどうなっているのとかの説明書きや、出演したスターたちの写真も収めた、劇場についてのパンフレットまでついている。公演やリハーサルが入っていない日が少ないため、なかなか多くの回数は実施できないそうだから、日程が合うときがあれば本当にお勧め!この劇場がつむいできた豊かな歴史の一端に触れることができて、今後、より公演が楽しめるようになるはず。

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50年近いホールの歴史の中で、公演を行ったアーティストたちが壁に残していったサインや落書きはものすごい財産なので、これはずーっと残していておいて欲しいなって思う。万が一解体されることになったとしても、壁の落書きは保存しておいて欲しいな…。というか、解体はしないで、うまく改装して未来永劫使い続けて欲しいホールだ。

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それにしても、なんでハンブルク・バレエの来年2月の来日公演は、東京文化会館で行わないのだろう。「人魚姫」のNHKホールはだだっ広すぎて雨宿り席が多く、バレエ向きの劇場ではないし、「椿姫」を上演する神奈川県民ホールは悪いホールではないものの、東京から1時間近くかかる横浜関内にあって、平日6時半開演もしくはマチネ(2時開演)というのは社会人からすると、会社を早退しなければ観に行けない。人気のある「椿姫」の公演が東京で行われないこと自体、あまりにも観客不在の判断というか…。今回、舞台袖や楽屋に残されたハンブルク・バレエのサインの数々、特にこの劇場で観て思い出に残っている「ニジンスキー」のイラストを見て、ますます割り切れない思いがした。

2008/09/26

マチュー・ガニオ&カルフーニ~二人のエトワール

監督:マレーネ・イヨネスコ
2008年 フランス制作

出演マチュー・ガニオ / ドミニク・カルフーニ / ルドルフ・ヌレエフ / ジャン・ギゼリ / シリル・アタナソフ / オレシア・ノヴィコワ / アニエス・ルテステュ / ウラジーミル・ワシーリエフ / ミハイル・バリシニコフ / ミカエル・ドナール

かつてのオペラ座の大スター、ドミニク・カルフーニと、その息子であるオペラ座の星マチュー・ガニオ。親子とも、スジェからエトワールに飛び級で任命された二人。そして、同じようにバレエに情熱を燃やし、今もとても仲の良い母と息子の姿が微笑ましい。ドミニクが、自宅でマチューのトレーニングを指導しているシーンなども見られるけど、母親らしい優しさと厳しさがある。花のたくさん飾ってあるドミニクの家がとても素敵。そして今でもとても美しいドミニク。彼女の子供たちが幼い頃を過ごした家など、美しい南フランスの海沿いの町を巡っていくのもいい。

ヌレエフとの「薔薇の精」など、カルフーニがオペラ座に入団したころの映像を少しずつ紹介しつつ(彼女のオペラ座時代の映像はとても少ないよう)、様々な関係者のインタビューが入る。ロマンティック・バレエの役ばかりを踊って行き詰まりを感じていたドミニクは、「スパルタクス」のウラジーミル・ワシーリエフの踊りに魅せられて、ロシアで1年間研修をする。グリゴローヴィチにも気に入られ、オペラ座に戻って踊った「イワン雷帝」のアナスタシア役の映像がとても表現力豊かで流麗で儚く、美しい。ワシーリエフのインタビューがとても面白い。まず、ドミニクの素晴らしい目を絶賛。そして音楽の内包する微妙な感覚を表現するのがバレエであるけれども、それができるダンサーは少ない、ドミニク・カルフーニはそれができる貴重な一人だと。芸術とは想像であり、想像のないバレエはバレエではない、という言葉には、なるほど、と頷いた。友情は今も続いているようで、カルフーニ親子とワシーリエフが食事をする様子も映し出されている。

他にも、共演していたミハイル・バリシニコフ、ミカエル・ドナール、そしてピエール・ラコットらが、ドミニクについて語っている。ラコットの現役最後の舞台でパートナーを務めたのがドミニクだったのだ。バリシニコフは、マチューの舞台を観たことはないものの、リハーサルは何度か観たことがあるそうで、母と同様美しいダンサーだと絶賛している。

エトワールになったものの、もっと色々な作品を踊りたいと思ってオペラ座を退団し、ローラン・プティ率いるマルセイユ・バレエに移籍したドミニク。豪華だったガルニエに対し、マルセイユの劇場の小ささにはショックを受けたそうだ。「カルメン」を踊る彼女の脚の美しいこと。「マ・パブロヴァ」の写真でもお馴染みだけど、幼いマチューの可愛らしい写真や、バレエを習いたての頃の映像もちょっと出てくる。現役のダンサーとしては、マチューがエトワールに任命された時のパートナーであり、ドミニクの指導も受けていたアニエス・ルテステュのインタビューが登場。スジェの地位でバジル役に抜擢された時も、彼は全然緊張などしていなかったそうだ。「ドン・キホーテ」での共演のほか、ウェイン・マクレガーから「Genus」で共に振付指導、リハーサルを受けているところや、「Genus」本番の舞台の映像も出てくる。

マチューの妹で、今年オペラ座に合格したマリーヌの「ドリーブ組曲」の映像もちょっと観ることができる。オペラ座にて付き添うドミニクの前で、厳しくマチューにダメ出しをする芸術監督ルフェーブルが、すごく怖かったのも印象的。マチューはどんな時でも屈託なくニコニコしていて、性格の良さがにじみ出ているのに。

舞台の映像は思ったより少ないものの、貴重なものが多い。マチューの「ラ・シルフィード」のジェームズでは5番の位置の美しさにうっとり。サンクトペテルブルグでマリインスキーのオレシア・ノーヴィコワと踊った「ジゼル」は舞台袖からの映像だけど、それもちょっと視点が変わっていて面白い。若いダンサーが演じるアルブレヒトってそんなに観たことがないから、新鮮。マチューは、ドラマのある役が好きということで、お気に入りの役は「ラ・シル」のジェームズ、「ジゼル」のアルブレヒト、「椿姫」のアルマン、そして「プルースト」のサン=ルーなどとのこと。素晴らしい母から、そして周囲からもどんどん学んでいくマチューが、これからどんなダンサーに成長していくのか、とても楽しみ。

マチュー・ガニオ&カルフーニ~二人のエトワール~マチュー・ガニオ&カルフーニ~二人のエトワール~
マチュー・ガニオ Mathieu Ganio, ドミニク・カルフーニ Dominique Khalfouni

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富士ゼロックスの広告(さいとう美帆&マイレン・トレウバエフ)

今日の日本経済新聞朝刊に掲載された富士ゼロックスの全面広告、名前は書いていないですが、おそらく新国立劇場のさいとう美帆さんとマイレン・トレウバエフが登場しています。

パートナーシップとサポートをテーマにした広告なので、男性ダンサーがしっかりとバレリーナをリフトしているもの。

キラキラとした衣装は「シンデレラ」かな?ちょうど12月にこの二人が共演する「シンデレラ」があるし(もちろん、私はマイレンのファンなので、チケットは確保しています♪)

日本経済新聞以外の新聞にも掲載されている模様です。(うちで購読している毎日新聞にも載っています)

2008/09/25

パリ・オペラ座のロビンス・プロとNYCBとのガラ

パリ・オペラ座のロビンス・プロの直前にNYCBのバスティーユでの公演があったこともあり、珍しくニューヨークタイムズにPOBの公演レビューが載っています。

http://www.nytimes.com/2008/09/24/arts/dance/24prem.html?_r=1&ref=arts&oref=slogin

NYCBのベンジャミン・ミルピエがオペラ座から委嘱されて振付けた作品「トリアード」の写真は、マリ=アニエス・ジロとオドリック・ベザールです。他に、レティシア・プジョルとマルク・モローも踊ったようです。レティシア・プジョルは「エトワール・ガラ」を降板した怪我からは回復したようでよかったです。そして、カドリーユのマルク・モローを含め、4人とも大変好演したとのこと。

「イン・ザ・ナイト」は産休から復帰したオーレリー・デュポンとニコラ・ル=リッシュが共演。今まで良いダンサーと思ったことがなかったとオーレリーを評していた評者が、彼女には目を見張らされたと絶賛。素晴らしい舞台だったようです。

なお、ニューヨークタイムズの9月19日付の記事には、「嵐が丘」のニコラ・ル=リッシュの素晴らしい写真が掲載されています。この記事での芸術監督ルフェーブルへの高い評価には賛同できない人が多いと思いますが…。定年なのだから、古典も現代作品も同等に上演してくれる、新しい芸術監督を待ち望みたいところです。
http://www.nytimes.com/2008/09/21/arts/dance/21sulc.html?fta=y


また、ガルニエで行われたNYCBとの合同ガラを取り上げた記事の、「アポロ」の写真もとても素敵です。POBのアニエス・ルテステュとNYCBのセバスチャン・マルコヴィッチが共演しているなんて豪華ですよね。
http://www.nytimes.com/2008/09/20/arts/dance/20ball.html?ref=dance

「ソナチネ」はクレールマリ・オスタとバンジャマン・ペッシュの出演、「ダンス組曲」はニコラ・ル=リッシュが怪我で降板したため(24日には復帰しているので、たいした怪我ではなかったと思います)、ベンジャミン・ミルピエが踊りました。

そしてトリを飾ったのは、"完璧”とまで言われる完成度だったという「シンフォニー・イン・C」。コール・ドはNYCBのダンサーが踊り、ドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオが1st、2ndムーヴメントはウェンディ・ウェーランとフィリップ・ニールのNYCB組、3ndムーヴメントはマチアス・エイマンとNYCBのスターリング・ヒルティンという、これまた新旧取り混ぜた素敵なキャストでした。中でもマチューの神々しいまでの美しさは、目を惹いたようです。評者はオペラ座のエレガンスにいたく感銘を受けたとのこと。このような共演が、二つのカンパニーによい刺激となったのは間違いないようですね。

「シンフォニー・インC」って、2003年の新国立劇場のガラ「THE CHIC」で上演されたのですが、それ以来、日本で観る機会がありませんよね。とても良い上演だったので、また新国立ででも上演して欲しいです。パリ・オペラ座の2010年の来日公演は、「グランド・バレエ」なんだそうだし。あ、来年のNYCBの来日公演もあったから、そこでかかる可能性はあるのかしら?


氷の上の「 眠れる森の美女」/「ひとりでも行けるオペラ極楽ツアー」

アイスショー「氷の上の眠れる森の美女」って、トリノオリンピックのフィギュアスケート・ロシア代表、イリヤ・クリムキンがカタラビュット役で出演するんですね。しかも初演の時の振付はタチアナ・タラソワだったとは。

チケットスペースのオフィシャルサイトを見ていたら、赤坂サカスで、クリムキンはじめ、オーロラ役エレーナ・ヤヴァノヴィッチ、デジレ役ウラディスラフ・ジョヴニルスキが来日してパフォーマンスを行うそうです。誰でも無料で見られるそうで、うわ~見たい!

●9月30日(火)19:30~
●10月1日(水)11:45~ /15:00~ /18:30~

ってわけで公演のチケットを取ってしまいました。11月15日(土)~11月23日(日)って公演時期は、新国立劇場の「アラジン」や、シュツットガルト・バレエの「眠れる森の美女」、スペイン国立ダンスカンパニーの「ロミオとジュリエット」などと重なってしまっているせいか、結構良い席が残っていました。フィギュアに関するブログはたくさんあるので、あまりフィギュアネタは書かないんですが、観るのは好きなんです。

*********
昼休みに書店に行ったら、「ひとりでも行けるオペラ極楽ツアー」という新刊書が出ていました。「オペラ・ギャラリー50」の著者の一人である石戸谷 結子さんの本です。

イタリア、ドイツを中心とした世界のメジャーなオペラハウスの紹介と、オペラ&旅に関するエッセイ、ちょっとした観光案内の本なのですが、カルロス・クライバーの写真集を撮影している木之下 晃さんによる劇場の写真がとても美しく、有名なオペラ劇場を写真で見比べることもできるので、見ているだけで楽しい本です。オペラ劇場といっても、ほとんどのオペラ劇場ではバレエも上演されているので、バレエファンにとっても、とても役に立ちます。マリインスキーやボリショイなどのロシアの劇場が紹介されていないのがちょっと残念ですが、オペラ中心となるとどうしてもイタリアとドイツになりますからね。

紹介されている劇場の数は非常に多いですし、それぞれの劇場の特色についても、ツボを押さえた判りやすい解説なので、私のような初心者には勉強になります。

イタリア
ミラノ・スカラ座(ミラノ)、トリノ王立歌劇場(トリノ)、カルロ・フェリーチェ劇場(ジェノヴァ)、ボローニャ歌劇場(ボローニャ)、フェニーチェ歌劇場(ヴェネツィア)、ヴェルディ歌劇場(トリエステ)、テアトロ・オリンピコ(ヴィチェンツァ)、フィレンツェ歌劇場(フィレンツェ)、ローマ歌劇場(ローマ)、サン・カルロ劇場(ナポリ)、マッシモ劇場(シチリア・パレルモ)他

オーストリア
ウィーン歌劇場、ウィーン・フォルクスオーパー他(ウィーン)、祝祭大劇場(ザルツブルグ)

チェコ・ハンガリー
プラハ国民劇場、プラハ国立歌劇場ほか(プラハ)、ハンガリー国立歌劇場、ブダペスト・オペレッタ劇場ほか(ブダペスト)

ドイツ
ベルリン国立劇場、コーミッシェ・オーパー、ベルリン・ドイツオペラほか(ベルリン)、ライプツィヒ歌劇場(ライプツィヒ)、ドレスデン国立歌劇場(ドレスデン)、ハンブルク国立劇場(ハンブルク)、バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)

パリ、ロンドンほか
パリ・オペラ座、シャトレ座(パリ)、チューリッヒ歌劇場(チューリッヒ)、ロイヤルオペラハウス、イングリッシュナショナルオペラ(ロンドン)、メトロポリタン歌劇場(ニューヨーク)


ここで取り上げられている劇場で、私が行ったことがあるのがすごく少なくて、まだまだだわ~と思った次第です。そもそも、海外でオペラって、ミラノ・スカラ座と、ここでは取り上げられていないバルセロナのリセウ劇場にしか行ったことがないわけですが。(オペラ自体、まだ10回くらいしか劇場で観たことがないド素人ですし)

バレエを入れても、行ったことがあるのはミラノ・スカラ座、ハンブルク国立劇場、パリ・オペラ座、ロイヤルオペラハウス、メトロポリタン歌劇場だけですし。でも、様々な劇場の美しい内観の写真を見るにつけて、いつかは行ってみたいなって夢が膨らみます。もしかしたら老後(!)の楽しみになっちゃうかもしれませんが。

また、この本がお役立ちなのは、それぞれの劇場を利用するコツ(服装など)やチケットの買い方、周辺の地図があることです。さらに一般的な観光情報のほか、パリ編だったらモンマルトル墓地のオペラ関係の有名人のお墓、ミラノだったらヴェルディやトスカニーニのお墓への行き方、ミュンヘンだったらルートヴィヒ2世のゆかりの城の写真などの紹介もあったりと、音楽に関連した旅を豊かにしてくれる情報があるのも嬉しいですね。

パリ編で面白かったのが、シャトレ座の最近の試みとして、デビッド・クローネンバーグ監督の映画「ザ・フライ」をクローネンバーグ自身の手でオペラ化し、プラシド・ドミンゴが指揮をして上演したという話。びっくりです。

オペラファンだったらあこがれる、ヴェローナやバイロイト、グラインドボーンなどの音楽祭の行き方の話もあります。おひとりさまのオペラの楽しみ方のヒントは、バレエファンにも役に立つのではないかと思います。

とにかく、オペラマニアの視点で作られたガイドってことで、オペラファンのみならず、バレエファンにも役に立つ一冊なんじゃないかと思います。海外観劇に行きたい!って思わせてくれますね。

ひとりでも行けるオペラ極楽ツアーひとりでも行けるオペラ極楽ツアー
石戸谷 結子

朝日新聞出版 2008-09-19
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2008/09/24

新国立劇場ニューイヤーガラ

アトレの会報にも出ていましたが、オフィシャルサイトにもキャストが出ていたとお友達に教えていただきました。

新国立劇場ニューイヤーオペラパレスガラが来年も行われます。

2009/1/5 (月) 18:30〜
2009/1/6 (火) 18:30〜
S席:12,600 A席:10,500 B席:7,350 C席:4,200 D席:3,150

プログラム 第1部: バレエ 『ドン・キホーテ』より第3幕
第2部: オペラ 
ヴェルディ『ナブッコ』より序章
ヴェルディ『イル・ロヴァトーレ』より『静かな夜』
ヴェルディ『オテロ』より『喜びの炎よ』『すでに夜も更けた』『無慈悲な神の命ずるままに』
レオンカヴァッロ『道化師』より『衣装をつけろ』
マスカーニ『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲
プッチーニ『トスカ』より『妙なる調和』『テ・デウム』
『歌に生き、恋に生き』『星は光りぬ』

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000146_2_ballet.html#cast

バレエ
寺島ひろみ(5日)
山本隆之(5日)
本島美和(6日)
芳賀 望(6日)

新国立劇場バレエ団

オペラ
セレーナ・ファルノッキア(ソプラノ)
木下美穂子(ソプラノ)
ジュゼッペ・ジャコミーニ(テノール)
市原多朗(テノール)
直野 資(バリトン)

新国立劇場合唱団


まだ新国立劇場でドン・キホーテを踊ったことのない本島さんと(←すみません、間違いです。本島さんは2005年のシーズンでの、全幕主役デビューがキトリでした)芳賀さんの抜擢にちょっとびっくりです。JJBの発表会で本島さんとマイレンがドン・キホーテ三幕を踊ったのは観ましたが。なんで契約ではなく登録ソリストに新春ガラの主役で踊らせるのかなあ。芳賀さんはいいダンサーだと思いますけどね。

2008/09/23

「デトロイト・メタル・シティ」

「デトロイト・メタル・シティ」

http://www.go-to-dmc.jp/movie

監督 李 闘士男
脚本 大森美香
原作 若杉公徳
出演:
根岸崇一(松山ケンイチ)
相川由利(加藤ローサ)
カミュ(秋山竜次)
ジャギ(細田よしひこ)
社長(松雪泰子)
アサトヒデタカ(鈴木一真)
佐治くん(高橋一生)
母(宮崎美子)
ファン(大倉孝二 、岡田義徳)
ニナ(美波)
ジャック・イル・ダーク(ジーン・シモンズ)


原作のファンでもちろん全巻(といってもまだ6巻までしか出ていないけど)持っている私は、パブリシティで見た松山ケンイチのハマリぶりにちょっと期待しつつも、なるべく情報をシャットアウトして観ることにした。ローソンで売っていたDVDつき前売り券を予約までして買ったんだけどそのDVDすら観ないで。

原作を読んでいなければ、万人ウケするような、すごく良くできた、面白い映画だと思う。テンポが良くてダレることもほとんどなく、滑るようなギャグもなく、おまけにハートウォーミングで感動的な部分もありつつも、不条理な幕切れになっている。役者の演技も良い。インストア・イベントと相川さんの待つカフェを往復する根岸の滑稽なことと言ったら、もう!

しかし、なんで"資本主義の豚"が出てこないんだ~!!!

これが最大の不満点。資本主義の豚は温水洋一に演じて欲しかったのに。

友達の台詞を借りると、社長風に言えば
「ファーック!!あたしゃこんな映画じゃ濡れねーんだよ!」
ってとこかな。

松山ケンイチの根岸&クラウザーさんは素晴らしく良い。憑依型とかカメレオン系役者と言われるのもよくわかる。根岸のナヨナヨクネクネしてちょっと気色悪い動きや、内股で両手と腰が反対方向に左右にゆれるさまが凄くって、こんな奴絶対にいないし、いたら相当キモいと思いつつも嫌いになれないキャラクターを好演。
松雪泰子の社長は、ものすごいハマりっぷりで最高。舌でタバコを消したり、高笑いしたりキックを浴びせたり、根岸の部屋を強引にデスメタル部屋に改造したり、ノリノリで演じているので観ていて気持ちよい。
大倉孝二 、岡田義徳らのDMCファンたちが、めちゃめちゃいい味を出しているし、彼らをモデルにしてキャラクターを作ったんじゃないかなって思うほど。狂言廻しとしてもうまく機能している。ジャギとカミュが原作そっくりで良かったのに、出番が少なすぎたのは残念。

鈴木一真のアサトは、寒い、寒すぎるのだけど、これもうまいキャスティング。全体的にキャスティングはとても良い線を行っている。加藤ローサの相川さんは、ちょっとイメージが違うというか、相川さんはもっと天然ボケなのでは、と思う。でも悪くはない。九州出身の宮崎美子が母親役っていうのもいいし。ただ、クラウザーさんを囲んでのシュールな朝食風景の切り取り方は、もっとやりようがあった気がした。そのへんの見せ方が、監督や撮影監督の腕の見せ所だと思うんだけど。

音楽については、カジヒデキが作曲をしているオシャレポップス(笑)は素晴らしい出来。オシャレポップスをかなり笑いものにしている作品なのに、こんなにちゃんとした音楽を作ってくれたカジヒデキは偉い。「甘い恋人」も原作のイメージにぴったりすぎて凄い。

デスメタルについては、一家言ある私からすると残念ながら全然デスメタルじゃないんだけど、全国公開東宝配給の商業映画だから、仕方ないのかな。一応バックバンドにマーティ・フリードマンが入っているんだけど、メガデス自体デスメタルじゃないし。ジーン・シモンズを引っ張り出してきたのは凄い。ジャック・イル・ダークとの対決シーンはちょっと物足りないところもあるけど、ジーン・シモンズならではの圧倒的な存在感があったのは良かった。

新幹線の運転席にいたり、他に乗客もいる電車に乗っているクラウザーさんの姿ってすごくシュールで可笑しくていい。このシュールさを、もっと映画の中で出して欲しかった気がする。

最大の問題は、原作ではなんだかんだ言っても、根岸=クラウザーさんはデスメタルへの愛があったというか、「ぼくがやりたかったのはこんな音楽じゃない!」と言いつつもデスメタルからは決して逃れられないというか、その魅惑にズブズブにはまって抜けられないでいるのに、この映画ではそれが感じられなかったことだろうか。

原作にあった過激さが足りないのは、全国公開東宝配給の商業映画だから仕方ないのだろう。あの笑えるほどの過激さ、エログロさがあってこそのDMCだと思うけど。

社長の手下の「ぐりとぐら」が犬なのでは、可笑しさ半減どころか限りなくゼロにしちゃった感じで残念。こんな設定に変えた奴はSATSUGAI。

(以下ネタばれ全開でいきます)


最後の最後でクラウザーさん=根岸というのが相川さんにはバレてしまったというのが根本的な間違い。いつ相川さんにバレてしまうのか、ドキドキしながら見守るというのが、原作の楽しみであったのに、これでは原作レイプといわれても仕方ない。それどころか、母親にまでもバレているっぽいし。

いくらなんでも「No Music, No Dream」には萎えた。DMCってそんな話ではないはずなのでは?そんな言葉をあの社長が根岸に送るとは到底思えないというかあり得ない。あたしゃそんな言葉じゃ濡れないんだよって言われるのがオチでしょう。オシャレポップスを愛する一方、意に沿わないデスメタルで生計を立てている、それどころか人気者になっちゃったという矛盾というか不条理がこの原作の肝なので、その不条理を解消して、葛藤も終わりにして終わりというのでは、やっぱり原作レイプだろうな。


やっぱり資本主義の豚がいないのがつまんない!


続編があったら絶対に観に行くと思う。が、まずは脚本家を替えて欲しい。どうやら、感動パートは脚本家が担当したようだったから…。

デトロイト・メタル・シティ 6 (6) (ジェッツコミックス)デトロイト・メタル・シティ 6 (6) (ジェッツコミックス)
若杉 公徳

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フィガロジャポン10/5号 「パリオペラ座物語013」

フィガロジャポンの「パリオペラ座物語」は13回目。こんなに長く続く連載になるとは!書籍化も期待できるかしら?

この号、ロンドン特集なんですよね。ロンドンから帰ってきたばかりの時に発売されちゃうとは、ちょっと不運な私。とはいっても、3日間しかいなかったので、私が行ったのは劇場のほかはヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ナショナル・ギャラリー、そしてテート・ギャラリーでのフランシス・ベーコン展だけ。あとは、TOPSHOPとH&M、ロイヤル・オペラハウスとHMVで買い物をしたくらいですが…。銀座店がオープンして大騒ぎになっているH&Mですが、私の服の3分の1くらいはここで買っています(笑)。

話を戻して、今回の特集は「ライモンダ」とヌレエフの振付について。「ライモンダ」が上演されるのは実に8年ぶりなんですね。1986年にライモンダ役を踊った元エトワールのクロード・ドゥ・ヴェルビアンのインタビューから始まります。ヴァリエーションが7つもあるんですね。しかもヌレエフによる難しいパが満載だという。ライモンダ役のダンサーに求められる資質としては、ある種の貴族性、エレガンス、フェミニティ、官能性、威厳という答えが即座に返ってきたとのこと。しかし、生まれながらに持ち合わせなくても、練習によってそれは獲得できるという一言も添えられていたそうです。キャストはまだ発表されていませんが、誰が踊るのでしょうか。ミックス・プロでは、デルフィーヌ・ムッサン、エミリー・コゼット、イザベル・シアラヴォラ、エヴ・グリンツテインが踊っているんですけど、このキャストはなんだか地味ですよね。1983年のヌレエフによる上演では、同じ舞台上に男女ともにエトワールだけを踊らせようという彼のアイディアを実現したので、クロード・ドゥ・ヴェルビアンはアンリエット役でした。

写真はちょっと小さいんですが、セットの美しさはよくわかります。この「ライモンダ」は「ダンサーズ・ドリーム」シリーズは出ているものの、全幕の映像は出ていないんですよね。観に行けたらもちろん行きたいのですが、今年は夏に散財しすぎたし、家人が2年続けては寒いところに付き合ってくれないので、無理です。

ヌレエフについては、彼の伝記「Noureev L'Insoumis」を昨年書いたアリアンヌ・ドリュフュス氏がインタビューで詳しく語っています。「技術的に不得手があることを常に意識し、たとえば回転した後、完璧なる第五ポジションで着地するというように、自分のパーフェクトなイメージを観客の目に焼き付ける方法を心得ていたんです」
「ヌレエフがオペラ座のダンサーたちのモダンダンスに対する窓を開けた、と言えます。彼はクラシックの技術の難しさも彼らに与えましたが、同時にあらゆるタイプの振付にダンサーたちの目を開かせたのです」

最後には、ヌレエフ版の「ドン・キホーテ」でバジルを踊り、スジェから一気にエトワールに任命されたマチュー・ガニオのインタビュー。彼は、バレエ学校時代に教師の資格を取るために、小論文「男性ダンサーの役割の変化」を提出し、ヌレエフについて触れたそうです。マチューの麗しい写真がたくさん載っていますね~。

年末に彼がジャン・ド・ブリエンヌを踊るかどうかはまだ判りませんが、その可能性は大きそうですね。しかし、多くのエトワールたちは、ジャンよりもアブデラクマンを踊りたがっているようです。「ドラマティックなパーソナリティで、ダンサーとして語りがいがある」役ですし。こちらの配役ももちろん楽しみです。

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フィガロ・ジャポンといえば、この前の9/20号の現代美術特集号が、凄く面白かったです。感想を書こうと思ったら次の号が出ちゃって。私のように現代美術にはあまり詳しくない者にとって、とっても勉強になった号でした。また、裏表紙が、ロベルト・ボッレをフィーチャーしたフェラガモの広告なのもちょっと美味しいです。

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ニュー・アドベンチャーズ「ドリアン・グレイ」Matthew Bourne's Dorian Grayその3

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2幕。

Celebrity!
1幕と同様、ドリアンの寝室で「眠れる森の美女」のローズ・アダージオのメロディが目覚まし時計から鳴り響く。目覚まし時計を叩き消すドリアン。彼の片側には、女性が、もう片側には少年(ドリュー)が寝ており、一人ずつベッドから出て行く。ドリューはサービスカットとして、可愛いお尻まで見せてくれる。今度は、ベッドの中からバジルが、そして最後にはレディHまで這い出てくる。このベッドには、5人もの人たちが入っていたのだ!場内大爆笑。さすが、ベッドの使い方には定評のあるマシュー。

すっかりセレブとなったドリアンだが、撮影現場では終始不機嫌、ちょっと他のモデルの身体が触れただけでキレる。しまいには、怒って撮影現場から出て行ってしまう。彼をなだめようと追いかけるバジル。別の日には、テレビのトークショーに出演。ドリアンのフィギュアまで売り出されているほどの人気で、ショーン、ドリュー、ジョーそしてクリス扮する歌うコメディアンたちは、ドリアンTシャツを着用(これは、イギリスの有名な番組のパロディらしい。ショーンのお茶目な表情が最高)。その場ではなんとか機嫌を保っているものの、テレビ局を出るとまた不機嫌になるドリアンは、バジルとのいさかいが絶えない。成功したことで、ドリアンはかえって不幸になっているようだ。

Evil Twin
クラブに踊りに行くドリアン。髑髏の形のミラーボールが回転しているスタイリッシュなクラブ。激しい音楽にあわせ、ショーンが女装していたり、タトゥーをした人々が踊り狂っている。踊っている人物の一人に、ドリアンと瓜二つで、同じ服まで着ている青年がいる。ドッペルゲンガーだ。ドリアンはドッペルゲンガーの存在についに気がつく。ドッペルゲンガーはドリアンの隣に座るが、明らかに薬でハイになっている様子。立ち上がって再び踊り狂う。ドッペルゲンガー役のジャレドは、切れ味の鋭い、リズミカルでちょっとヒップホップ系の踊り。喧騒の中、バジルはドリアンに声をかけようとするが、それはドリアンではなくドッペルゲンガーだった。

Dorian and Lady H
混乱したドリアンは、レディHの部屋を訪れる。彼女に甘えようとするが、レディHは冷たく突き放す。逆上したドリアンは、今度は力づくでレディHを犯そうとするが、激しく抵抗され、平手打ちを食らう。ドリアンは彼女の手からポートフォリオのファイルを奪い取り、自分の写真を抜き取ると破り捨てる。

On The Prowl
壁面の大きな二つの鏡は割れている。その部屋に、ドッペルゲンガーが現れ、ドリアンを嘲笑うかのように「ここだよ」と出てくる。ドリアンとドッペルゲンガー、同じ姿をした二人が、シンクロして同じ動きで踊り続ける。ドリアンはドッペルゲンガーに追い掛け回される。終わりのない悪夢のように。サイレンの音が鳴り響き、あたりはカオスのような状態に。半裸の男女が舞台の上を駆け回っている。

Back Room
音楽がゆっくりとしたトランス系になったかと思うと、薄暗い照明の中、今度は一組、一組と男女が入ってくる。男と男、男と女。男と男と女。まるで乱交パーティのように、相手を取り替え、入り乱れては行為に及んでいる。しかしながら、なぜかあまりエロティックさは感じない。健康的なダンサーの肉体って半裸であってもというか半裸であるからこそ、猥雑さが感じられないのだ。やがてダンサーたちが立ち上がり、つながっているかのように一列に並ぶと、ドリアンが入ってくる。ドリアンは、彼らに高々とリフトされるが、そこからゆっくりと、十字架から下ろされる殉教者のように落ちていく。1幕でスーパーモデルとして完成され、高く掲げられたシーンと呼応するように。なすすべもなく、その様子を見守るバジル。

Dorian Shoots Basil
ドリアンの巨大な「IMMORTAL」の広告のポスター。しかし、このポスターは汚れて所々破れ、「IMMORTAL」の文字が欠けて「MORTAL(死すべき運命)」になっている。ドリアンの目からは、血が流れているかのようだ。そのポスターの前で、絶望したかのように悲しく踊るバジル。

ドリアンの部屋は、荒廃したドリアンの魂を代弁するかのように、死の匂いに満ち、グロテスクで禍々しいインテリアとなっている。麻薬を自らの腕に注射するドリアンのポートレート。髑髏の置物。フランシス・ベーコンの絵画3点。ウォーホールの、髑髏をモチーフとした作品。ニジンスキーの牧神の午後のフィギュア。バジルは、ここでドリアンにカメラを向ける。しかし、あれほどカメラを愛し、執着したドリアンが、撮影されるのを拒んで顔を背ける。それでも、バジルはドリアンに向かってシャッターを切る。カメラを持っている限り、バジルはドリアンに対して力を持つことができるのだから。カメラは、力の象徴なのだ。

ドリアンは、バジルをバスルームへと誘う。バスタブの中にいるドリアンは、バジルに、入って来いよといざなう。嬉しそうにバスタブに入っていくバジル。ドリアンはバジルの首からカメラを外すと、それでバジルを殴打する。何回も。バジルは息絶え、血に染まった両手を十字架のように広げたドリアンは、白いバスルームの扉に血痕を残す。

己の罪深さに気づいたドリアンは、両手を血に染めたまま、苦悩のソロを踊る。これは、「白鳥の湖」の4幕で、ハクチョウたちの幻想を見た王子が、混乱し怯えながら踊るソロによく似ている。レディHがやってきたので、ドリアンは彼女にまた甘えようとする。レディHはドリアンの血をぬぐってやるが、そのまま立ち去り、ドッペルゲンガーがまた出現しては消える。

シリルの亡霊が現れる。死んだシリルとドリアンは、「ロミオとジュリエット」の最後のパ・ド・ドゥのような踊りを踊る。次に、バジルの亡霊が出現して、また死者とのパ・ド・ドゥ。壁が回転すると、さらに荒れ果てたドリアンの部屋は、モデルたちのおびただしく惨たらしい死体の山となっている。扉の欄干にぶら下がる死体、ソファの上の死体。ドリアンのポートレート写真は目を潰されている。死んでいるはずの彼らが、ドリアンを睨み付け、再び死体に戻る。

Doppelgengar
ドリアンは怯え切って、正気をなくしかけている。そこへまたドッペルゲンガーが現れる。二人はベッドに並んで座る。瓜二つの二人なのに、クールな表情のドッペルゲンガーと、狂気、恐怖にすくんで弱りきったドリアン。ふたりは手を取り合って、並んでベッドの中に入る。ドリアンは、シーツをドッペルゲンガーにかぶせると、ドッペルゲンガーを殺す。とともに、ドリアンもついに斃れる。

Immortal
ドリアンの亡骸についた血をふき取り、ベッドからずり落ちかけた彼を動かして額に優しくキスをするレディH。セクレタリーのエドワードが目配せをする。大勢のパパラッチが、ドリアンの死体に容赦なくフラッシュを浴びせかける。ドリアンの死に顔がスクリーンに大写しになり、彼の姿は永遠に残ることになる。レディHは、クールな表情でサングラスをかけて、歩き去る。

アダム・アンド・ジ・アンツの「プリンス・チャーミング」が鳴り響く。

Bill Cooper撮影による写真
http://www.new-adventures.net/news.php?id=24

NAのダンサー、ミカ・スマイリー撮影のリハーサル風景
http://www.new-adventures.net/news.php?id=22

2008/09/21

ニュー・アドベンチャーズ「ドリアン・グレイ」Matthew Bourne's Dorian Grayその2

作品の大まかな展開とあらすじなどを詳述します。ネタバレ全開なので、ネタバレしたくない方は読まないほうがいいかもしれません。

P1010851s_2

1幕
The Sleeping Beauty
チャイコフスキーの「眠れる森の美女」の序曲が流れる。それは、眠れる森の美女ならぬ美男ドリアン・グレイの目覚まし時計のメロディで、彼はベッドから起き上がって目覚ましを止めるとともに、鏡に映る自分の顔に見入る。

Basil's World
場面は転換し、そこは今をときめくファッションカメラマン、バジル・ホールワードがモデルたちを撮影しているスタジオの中。グラマラスなモデルたちがポーズを取る中、カメラを持ったバジルは、華麗な跳躍を見せながらシャッターを切っていく。スリムで長髪、無精髭のバジルは、いかにも芸術家らしいスタイリッシュでセクシーな男性。カメラを構えながら所狭しと動き回る。

White Box Media Gallery
ホワイトボックス・メディアギャラリーというスタジオでは、ファッション界の大物であるレディHが、モデルを選んでいる最中。モデルたちは身をくねらせて彼女の気を引こうとしている。美しく、絶大な権力とカリスマ性を持つレデイH。舞台の後方で、目立たぬように立っているのは、モデルではなくオーディションでウェイターとして働いているドリアン(そしてもう一人、ドリアンにそっくりのウェイターもいる)。レディHやモデルたちが去った後で、一人後片付けをするドリアン。

Basil Shoots Dorian
そのドリアンに、ふとライトを当て、シャッターを切るバジル。バジルのカメラが捉えたドリアンの姿が、白い壁に大写しになる。最初はカメラに対して構え、緊張するドリアンだけど、次第にカメラを向けられ、シャッターを切られることに快感を覚え、どんどん挑発的な表情に変貌していく。このあたりのリチャード・ウィンザーの表情の変化が素晴らしいし、それらの表情が、撮影されたショットとして、バジルの目から見たドリアンとして、後ろのスクリーンに大写しになるのがまた効果的。カメラを構えたバジルと、被写体のドリアンの間の緊張感あるデュエットは、ドリアンの後ろにバジルの表情が写りこんだショットで終わる。やがてカメラを置いてウォッカをがぶ飲みしたバジルと、ドリアンは、激しい愛を交わす。踊りながら上着を、ベルトを、そしてパンツ(下着じゃない方の)を脱いだり脱がせたり。スピーディにポジションを動かし、お互いにリフトし合い、跳躍や逆立ちまで入ったアクロバティックな動きは、エロティックさをあまり感じさせないがスリリングで、見事な息の合わせ方。踊りという面では、この舞台最大の見せ場と言える。ドリアンのボクサーパンツはD&G、バジルはエンポリオ・アルマーニ。ファッション界におけるマーケティングを、これらのボクサーパンツに象徴させている。

(このパ・ド・ドゥのほんの一部は、BBCのサイトで見ることができる
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/newsnight/7606697.stm

Dorian
バジルが去った後、一人スタジオに残されたドリアンは、バジルが残していったカメラに興味を惹かれる。ドリアンは、自らにカメラを向けてシャッターを切ってみる。しまいには、カメラに取り憑かれたようにポーズを取り、戯れる。そこへレディHが入ってきて、ナルシスティックにカメラと戯れるこの青年に興味を惹かれ、品定めする。去り際に、名刺をドリアンに渡すレディH。ドリアンは、バジルではなく、カメラに恋をしているかのようだ。

The Science of Beauty
ドリアンは、サングラスに白衣、青い手袋をはめた人々に取り囲まれる。彼らの間で様々なポーズを取り、服をとっかえひっかえする。まるで、スーパーモデル製造機の中に入れられたかのように、工業製品として創り上げられたかのように、ドリアンはモデルへと変貌させられる。最後に香水を噴きかけられ、高々とリフトされ、スーパーモデルのドリアンが完成。不敵な笑みを浮かべた上半身裸の青年とIMMORTAL(不老不死)の文字。ドリアンの姿は、香水「IMMORTAL」のポスターに刻み付けられた。巨大なポスターの前で歓喜し、飛び跳ねるバジルのソロ。

セレブレティの仲間入りをしたドリアン。パーティと思しき会場で、華やかな男女に囲まれ、ソファの上から下から、右から横から、セレブたちの手により名刺を渡される。映画「アメリカン・サイコ」の名刺合戦を思わせるような、皮肉で笑えるシーン。ドリアンの隣に座っていたバジルは、彼とドリアンの間にレディHが入り込んだことで、傷ついたような表情を見せる。

Lady H at Home
レディHの寝室。ベッドの上にちょこんと座ったドリアン。レディHは、ドレスのホックを留めることを要求し、それから、長く美しい脚でドリアンを誘惑する。壁の向こうで、その様子をパパラッチのように覗くセレブたちと、悲しげなバジル。ドリアンはレディHと関係を持つが、それはもちろん彼女の持つ権力と寝たのであって、野心に燃える視線を客席に向ける。

Romeo, Romeo
ドリアンを待ち伏せするバジル。しかしドリアンはレディHと登場し、再び傷つくバジル。ドリアンたちは、劇場へと足を運ぶ。そこでは、プロコフィエフの音楽が流れ、バレエ「ロミオとジュリエット」が上演されている。白く長いマントをたなびかせ、白タイツ姿のロミオ役を踊るバレエダンサーのシリル。クリストファー・マーニーは、純白の汚れなき王子を演じ、つま先の綺麗に伸びたアラベスクやピルエットを見せる。ドリアンは、シリルの純粋な姿に美を見出し、いつしか彼は舞台の中に入り込んでいた。シリルとドリアンのパ・ド・ドゥは、まさしくロミオとジュリエットのようであり、シリルはあるときはロミオ、そしてあるときにはジュリエットのように踊り、舞い上がる気持ちをリフトで表現する。ジュリエットが走り去るシーンのように、ヴェールをなびかせるかのように走り去るシリル。

Stage Door
舞台が終わった後も、余韻に浸って立ち上がれないバジルは、楽屋口でシリルを待ち伏せし、名刺を渡す。名刺を一瞥し、微笑を浮かべるシリル。

Dorian's Loft
ドリアンとシリルは愛を交わす。しかし、ナルシスティックなシリルは、愛の最中にもストレッチを欠かさず、自己耽溺しているので、次第にドリアンはシリルに魅力を感じなくなってしまう。ドリアンの部屋には、美しくナルシスティックな裸体のドリアンのポートレート写真がいくつも飾っていある。ドラッグパーティの最中に現れたシリルを、ドリアンは冷たくあしらう。シリルはお菓子のように食べてしまったドラッグの過剰摂取により、ドリアンの寝室で激しい痙攣を起こす。ドリアンは救急車を呼ぼうとするが、死の間際のジュリエットのようににじり寄ってくるシリルを見て、電話をかけるのをやめる。シリルは、マクミラン振付の「ロミオとジュリエット」のラストシーン、ジュリエットの死と同じように、ベッドの上に仰向けになって、悲劇的な最期を遂げる。セットの足場にぶら下がり、そんな彼らを見下ろしながら笑うのは、ドリアンに瓜二つの青年。

IMMORTALの大きなポスターが降りてきて、幕。
(1幕終わり、2幕に続く)

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2008/09/20

Swan Magazine Vol.13

Swan Magazine Vol.13が発売されました。

安珠さんによるフォト「DANCER's DEEP MIND」は、K-Balletの宮尾俊太郎さん。改めて、彼は本当に容姿に恵まれたダンサーだと思いました。背も高いし、涼しげな目元、彫りの深い顔立ちといい、日本人ではピカイチなのではないでしょうか。"恋人"だというバイクにまたがっている姿も本当にカッコよくて、そこらへんの若手俳優なんかよりよほど素敵です。バレエを始めたのが遅かったようですが、モニク・ルディエールの元で学び、10年間で主役を張れるまで成長した彼、これからも楽しみですね。

特集は12月に来日する「ボリショイ・バレエ」と今年創立60周年を迎えた「松山バレエ団」。バレエ漫画の名作『SWAN』に登場する二つのカンパニーの魅力に迫る、とのことです。

ボリショイ・バレエの特集は、ボリショイ劇場での「白鳥の湖」と「明るい小川」の鑑賞記つき。特に「明るい小川」は、今度の来日公演が日本初演となるので、たくさんの楽しそうな写真で紹介されると期待が高まります。衣装やセットも、とても華やかで、生き生きとした雰囲気がよく伝わってきます。また、今期限りで退任するアレクセイ・ラトマンスキー芸術監督に「明るい小川」を中心にインタビューしたり、ザハロワ、ウヴァーロフ、グダーノフ、アレクサンドロワ、クリサノワ、オシポワ、ワシリエフ、シュプレフスキー、さらにはすでに退団したものの来日公演には出演するフィーリンのインタビューも載っていたりととても盛りだくさん。ボリショイ・バレエのファンにとっては必読だと思います。

ボリショイ・バレエ関連では、岩田守弘さんの、主に振付についてのインタビューも載っています。岩田さんは、日本ロシア青年交流事業のサイトにも、とても素晴らしい写真とともにインタビューが載っています。「僕はいつか、人々の記憶に永遠に残るバレエを作りたい」「ありったけの、心を込めること。大切なのは、ただそれだけ」という言葉が素敵です。こちらも必見ですね。

http://www.nichiro.jp/

松山バレエ団の特集もなかなか面白かったです。私はここの舞台は数年前に一度観ただけなのですが、松山樹子が設立してから今までの60年間を、森下洋子・清水哲太郎が語っていて、興味深いものでした。フォトアルバムで見る松山樹子さんはとても華やかで美しく、また数々のオリジナル作品を上演した時の舞台写真もインパクトがありました。

それから、パリ・オペラ座学校の土屋裕子さんが語るオペラ座入団試験の様子も読み応えがあります。今年めでたく入団が決まった注目の女性ダンサーたちの舞台写真がとても素敵です。ローラン・イレールの娘ジュリエット・イレールや、マチュー・ガニオの妹マリーヌ・ガニオなど。

後ろの方には、新国立劇場の「アラジン」のリハーサルの様子の写真も載っていて、期待が高まります。楽しそうな雰囲気が伝わってきますね。

有吉京子さんの連載「まいあ」では、なんと京極小夜子先生が登場します。「SWAN」ファンには懐かしい名前ですね。この作品の中では、日本で国立のバレエ学校が設立されて20年、ということになっていますが、現実は皆さんご存知の通りです。

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追記:K-Ballet Dancer's Blogに宮尾俊太郎さんのエントリがありますが、この号に載っているバイクは、例の盗難に遭ってしまったバイクだったのですね。本当にお気の毒に。宮尾さんのエントリには、たかの友梨のCMの裏話もちょっと書いてありますが、面白いです。
http://www.k-ballet.co.jp/blog/2008/09/post_134.html

ロイヤル・バレエのキャスト変更

ballet.co.ukのフォーラムを見ていたら、ロイヤル・バレエの10月、11月の「マノン」のキャストの変更が話題になっていました。

アリーナ・コジョカルが出演する予定だった、10月11日と11月22日の「マノン」は、リアン・ベンジャミンに変更となりました。10月13日、17日のリアン・ベンジャミンの出演予定は、マーラ・ガレアッツィに変更になっています。さらに、アリーナは10月7日と21日の「白鳥の湖」、10月29日と11月7日の「テーマとヴァリエーション」、12月6日の「オンディーヌ」なども降板しています。「くるみ割り人形」も、1月3日、10日の予定をキャンセルしているため、今の予定では、1月下旬の「ラ・バヤデール」まで、アリーナは一度も出演する予定がないことになります。代わりに、マリアネラ・ヌニェスがマチネとソワレの連続出演など、20回も金平糖の精を踊ることになったようですね。

そうなると、当然、12月の新国立劇場での「シンデレラ」に、アリーナが無事に出演できるかどうかが気になりますよね。

ロイヤルといえば、最近ロイヤル・オペラ・ハウスのサイトがリニューアルされたのですが、非常に使いにくくなった気がします。ダンサーのプロフィールがどこに載っているのか全然判りません。また、先の予定もどうやって探していいのか、一苦労させられます。

ついでにブッキングピリオド2のキャストなどを見ていたら、11月14日、20日の「ザ・レッスン」の生徒役に、チェ・ユフィさんがキャスティングされているんですね。バレエ教師役はエドワード・ワトソン。生徒を教師が絞め殺してしまうというかなりダークな演目で一度観てみたい作品なんです。

今回のロンドン行きでは、ロイヤル・オペラハウスでは何も観なかったのですが(まだバレエのシーズンが始まっていなかった)、ショップではいろいろと買い物をしてきました。ポストカードの種類などもとても多く、グッズも充実していて、楽しかったです。

******
9/25 追記
さらにキャスト変更があります。

タマラ・ロホが「白鳥の湖」の最初の二つの公演、10月6日と9日を降板。夏のイタリアでのガラ出演で怪我をしたことによるものだそうです。代役はマリアネラ・ヌニェス。

サラ・ラムが「マノン」の出演予定を全部キャンセル。これは、リハーサル中に足を骨折をしたことによるもので、代役はラウラ・モレラ。サラは3月まで出演できないとのことです。

モニカ・メイソン芸術監督によると、シーズンが始まる前にすでに18人ものダンサーが怪我をして出演できていないとのことで、バレエってかくも過酷な芸術なのですね。

もしアリーナが「シンデレラ」を降板するとしたら、代役をロイヤルから呼ぶのも難しそうな感じです。ちょうどロイヤルは「くるみ割り人形」の公演の真っ最中なので。

ニュー・アドベンチャーズ「ドリアン・グレイ」Dorian Gray その1

9月12日より14日まで、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で、マシュー・ボーン振付のニュー・アドベンチャーズ「ドリアン・グレイ」を観て来ました。完全にシングルキャストで、回数ごとの感想もほとんど同じ(席の位置などは日によってちょっと変わったけど)なので、まとめて感想を書きます。

実はサドラーズ・ウェルズに行くのは初めて。エンジェルという地下鉄ノーザンラインの駅から歩いて5分程度の、緑もあって落ち着いた街にある。伝統ある劇場だけど、今の建物はガラス張りで、明るくモダンな印象。3階席まであるのだけど、それほど大きくない劇場なので、後ろの方でも観やすそう。今回はオーケストラ・ピットをつぶして座席にしており、舞台装置が回転するためにかさ上げをしているので、前の方の席だと観づらく、その分チケット代が安くなっている。

Dorian Gray
Director and Choreographer Matthew Bourne
Set and Costume Designer Lez Brotherston
Composer Terry Davies
Lighting Designer Paule Constable

Dorian Gray Richard Winsor
Basil Hallward Aaron Sillis
Lady H Michela Meazza
Cyril Vane Chris Marney
Edward Black Ashley Bain
Doppelganger Jared Hageman
Ensemble Chloe Wilkinson Drew McOnie Ebony Molina Joe Walkling Shaun Walters

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オスカー・ワイルドの有名な小説「ドリアン・グレイの肖像」を下敷きにした作品。原作をきちんと読んだわけではないのだけど、同行した友達がちょうど原作を読み終わったところで、おおよその設定は教えてもらった。また、以前ABTでロバート・ヒルが振付けた「ドリアン」という1時間の小品を観たことがあった。

原作との違いとしては、設定が現代となっており、ドリアンは美貌を見出されてモデルになったウェイター。彼を見出したバジルは、原作では画家だけどここではファッション・カメラマン。快楽主義の権化ヘンリ・ウォットン卿は、ファッション界の大物、レディHという女性に替わっている。そしてドリアンが弄んで捨てた女優シビルは、この舞台化では、男性バレエダンサーのシリルとなっている。原作では、不老不死で美貌を保ち続けるドリアンに対し、彼の肖像画が醜くなっていく。この舞台では、ドリアンをモデルにバジルが撮影した香水の広告ポスターが破れて血を流すとともに、ドリアンの暗黒面を象徴するドッペルゲンガーが登場するという設定になっている。

マシュー・ボーンと、彼の右腕としてずっとプロダクションデザインを行ってきたレズ・ブラザーストーンのマジックは健在。白い壁の舞台の上手には、グランドピアノがあり、時には5人のミュージシャンが演奏を行う。そして舞台の中央には、回転する壁。片側は白くてスタイリッシュ、シンプルな印象。もう片側は、錆びたような色の、工場のような壁である。場面転換のときに、この壁が回転して、時には撮影スタジオ、時にはレディHの寝室、時にはクラブ、オフィス、劇場と変身する。非常に巧みである一方、場面転換があまりにも多いので、めまぐるしく忙しすぎる印象があるかもしれない。衣装も、モノトーンを基調としており、ドリアンは白、バジルやレディHは黒でグラマラスな印象。特に、ミケーラ・メアッツァは、長身、細いウェストに長く美しい脚、ショートヘアに似合う大人のミニマムなドレスをまとい、洗練された美しさを強調していた。男性ダンサーの多くは、白いブリーフ一丁というシーンも多かったけど。

ところで、一見スタイリッシュを装っていながら、実のところマシュー・ボーンは悪趣味すれすれの、キッチュなカリカチュアや黒く皮肉な笑いが得意である。冒頭に登場するモデルたちの撮影風景やセックス&ドラッグの風景、クラブでのダンスシーンやセレブレティのライフスタイル、テレビ番組などの風刺的で意地の悪い描写に、そのへんがよく出ている。非常に空虚で、しかも打ち込み系ロックの音楽とあいまって、かえってダサい印象すらある。自らの若さや美への執着ではなく、貪欲なファッション業界と消費社会の犠牲になってドリアンが破滅していったという印象を与えられる。

マシューの過去の作品、特に「白鳥の湖」からの引用も随所に見られる。若くはないけども、色香はたっぷり、強くしたたかなレディHは、「白鳥の湖」の女王のよう。その右腕であるエドワードは執事。劇場で「ロミオとジュリエット」を観るシーンは、ロイヤル・ボックスのシーンに似ているし、白衣に手袋の人物たちが、ドリアンをスーパーモデルへと変身させるところは、「白鳥」の4幕のロボトミーシーンを思わせる。

音楽は、録音と生演奏の併用。上記のように、基本的にはオリジナルスコアで、打ち込み系のジャズロックが基調で、ところどころテルミンを使っているのが面白い。生演奏の方は、ピアノ、ベース、パーカッション、ギター、ドラムで5人編成。舞台の裏で演奏していることもあれば、観客から見えるところで演奏していることも。1幕と2幕の冒頭で「眠れる森の美女」のオーバーチュアとローズ・アダージオ、観劇シーンではプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」の1幕の曲を使用している。そしてカーテンコールの終わりには、アダム・アンドの「プリンス・チャーミング」が使われているのだけど、この曲こそが作品の世界観に最もマッチしているんじゃないかと思った。

舞踊言語については、クラシック・バレエ的なところは少なくて、「ロミオとジュリエット」の劇中劇シーンで、ロミオを演じるシリルが白タイツ王子として踊っているところくらいか。登場人物が全部で11人と少なく、群舞というのも少なくて、よりミュージカル的なところとコンテンポラリーダンス的なダンスといえるため、クラシックバレエ好きの人にはもしかしたら楽しめないかもしれない。ダンサーたちも、男同士のパ・ド・ドゥが多いこともあって身体能力は皆優れているけど、クラシック・バレエのトレーニングを受けている人は約半数といったところだろうか。

休憩1回を入れて2時間程度と速い展開で進み、上演中はとても面白く観られる作品。と同時に、批評家ウケが必ずしもよくなかったというのも理解できる作品ではある。まず、登場人物の間に流れるエモーションの描写が希薄だ。感情を露わにするのは、ドリアンに惚れこんだバジルだけである。ドリアンがかくのごとく破滅するほどの悪徳の持ち主なのか、と訊かれるとそうは思えない。欲望に溺れ、美と若さに執着するのは、現代人の多くが持っている要素なのだから。これはひとつの現代の神話なのだ。空虚な作品であるという批判もあったが、それは、現代が空虚な時代であるということを反映しているのであって、「ドリアン・グレイの肖像」という作品の現代版を作るうえでは避けて通れないものだろう。また、独特のチープさ、キッチュさこそ、マシュー・ボーンの持ち味でもあるのだ。

Times紙のインタビューで、マシュー・ボーンはドリアンの死を、故ヒース・レジャーの悲劇的な最期に重ねていた。オーストラリアから出てきた素朴な青年がハリウッドスターになり、栄光をつかむものの、スターダムの魔力に取り付かれて孤独になり、若くして命を落とすという悲劇。

このドリアンには、悪徳は感じられず、野心に隠された傷つきやすい魂があるだけだった。そして、それゆえに彼は破滅していく。まさに、現代のコマーシャリスム、若さと美への執着がもたらした悲劇と言える。

2008/09/19

新国立劇場 来シーズンメンバー発表(古川さん加入)/エイフマン・バレエNY公演

コメント欄でも教えていただき、すでに旧聞に属する話でもありますが、新国立劇場バレエ団の来シーズンメンバーがオフィシャルサイトで発表されていました。ご自身のブログでも発表されていましたが、元東京バレエ団の古川和則さんが、契約ソリストとして入団しましたね。

http://www.nntt.jac.go.jp/nntb/artist_se.html

■シーズンスペシャルゲストダンサー
スヴェトラーナ・ザハロワ デニス・マトヴィエンコ

■シーズン契約ダンサー
【プリンシパル】
山本隆二

【ファースト・ソリスト】
川村真樹 マイレン・トレウバエフ 寺島ひろみ

【ソリスト】
湯川麻美子 厚木三杏 遠藤睦子 高橋有里 西川貴子 西山裕子 真忠久美子
さいとう美帆 本島美和 寺島まゆみ 小野絢子 丸尾孝子
吉本泰久 貝川鐵夫 陳秀介 冨川祐樹 グリゴリー・バリノフ 江本拓
八幡顕光 高木裕次 古川和則

【コールドバレエ】 は略
********

■登録ダンサー
【オノラブル・ダンサー(名誉ダンサー)】
酒井はな 小嶋直也 逸見智彦 森田健太郎

【ソリスト】
島添亮子 大森結城 前田新奈 伊藤友季子
法村圭緒 市川透 芳賀望 中村誠 奥田慎也

【コールドバレエ】
岸川章子 酒井麻子 キミホ・ハルバート 齊木眞耶子 菊地飛和 篠原美貴
柴田知世 靍畑きずな 山田歌子 吉田千智
井口裕之 伊藤隆仁 内藤博 エリク・T・クロフォード

今までソリストでひとくくりにしていたのが、プリンシパル、ファースト・ソリスト、ソリストの3階級に分かれています。大好きなマイレンがファースト・ソリストなのがちょっと嬉しいです。
ソリストに昇格したのが、丸尾孝子さんと高木裕次さん。

登録の方では、新国立劇場の草創期を支えた酒井はなさん、小嶋直也さん、逸見智彦さん、森田健太郎さんがオノラブル・ダンサー(名誉ダンサー)という地位になっているんですが、これだといかにも出番が少なそうですよね。はなさんにはもっと出演して欲しいって思うんですが。
また、中村誠さん、市川透さんが契約から登録に移行。神部ゆみ子さんと宮内真理子さんが引退。芳賀望さんが登録ソリストとして加入といったところでしょうか。

***********
話は変わって、ニューヨークのシティセンターのスケジュールを見ていたら、来年5月にエイフマン・バレエの公演があることを発見しました。5月29日から31日までの4回公演で、ボリス・エイフマン振付の新作「エフゲニー・オネーギン」です。ドラマティック・バレエに定評のあるエイフマン・バレエは、最近は日本に来なくなってしまったのですよね。
http://www.citycenter.org/tickets/productionNew.aspx?performanceNumber=3770

なお、マリインスキー・バレエ、エイフマン・バレエなどロシア・バレエの米国への招聘を行っているArdani Artistsのサイトを見たら、エイフマン・バレエは全米ツアーが行われるようです。ミネアポリス、バークレー、ボストン、そしてオレンジ・カウンティとまわって、最後がNYなのですね。
http://www.ardani.com/eifmantouring.htm

ちょうどこの時期、ABTのMETシーズンも行われていますので、ABTとエイフマン・バレエの掛け持ちも可能なので魅力を感じてしまいます。ABTのMETシーズンは、日曜日には公演が行われないので。といっても、まだABTのMETシーズンについてのアナウンスは行われていません。発表が遅いのは、ラトマンスキーの加入や、プリンシパル、ソリスト等の大きな人事異動が予想されているからなのでしょうか。

ちなみに、10月と12月に行われるマリインスキー・バレエの全米ツアーのスケジュールはここにあります。アントン・コルサコフが「ジゼル」と「ドン・キホーテ」「くるみ割り人形」に1回ずつ主演するんですよね。このツアーには、ヴィシニョーワやコルプ、ファジェーエフは参加しますが、ロパートキナやテリョーシキナは参加しないようです。
http://www.ardani.com/mariinskybtouring.htm

2008/09/18

ダニール・シムキンのプロフィールがABTのサイトに

数日前に自身のブログで米国のビザが取れたことを報告していたダニール・シムキンですが、ABTオフィシャルサイト、ソリストの項目にプロフィールが載りました。

http://www.abt.org/dancers/detail.asp?Dancer_ID=227

プロフィール写真、めちゃめちゃ可愛いです♪

9/16 東京バレエ団「ジゼル」

東京バレエ団「ジゼル」
(全2幕)
2008年9月16日(火) 19時開演  会場/ゆうぽうとホール

ロンドンから帰国して空港から職場へと直行、それからゆうぽうとまで行ったのでちょっと大変だったけど、なんとか寝ないで見ることができた。

1幕

小出領子さんは、小柄で可愛らしい容姿から、きっとジゼルが合っているだろうなと思っていたけど、期待通りやはり適役だったと思う。ジゼル・デビューが遅すぎたくらい。まさに純情可憐な村娘という風情で、純粋に一途にアルブレヒトのことを恋しているのがわかる。冒頭の踊りの方は、ちょっと硬さが見られて、小出さんだったらもっと軽やかに踊れるのに、と思う部分もなかったわけではない。しかし、腕の使い方の柔らかさは周囲から際立って美しいし、足音もさせないで、楚々として控えめな愛らしさを保っている。

一方、ルグリのアルブレヒト。最初に登場した時から立ち居振る舞いが優雅で、腕の動きが雄弁、エレガントで美しいこと。村人の扮装をしていても出自は隠せない。ウィルフリードに対する態度もやや尊大。が、そんな彼も、可愛いジゼルを前にすると一人の恋する男のようで、盛大に音を立てながら投げキッスを送り、そして優しくジゼルを抱きしめる。椅子取りゲームの時にも、大げさなほど熱く駆け寄ってロマンティックさを見せる。ちょっと遊び慣れている貴族然としたルグリと、いかにもおぼこな村娘の小出さんの組み合わせからして、この二人の恋は実らないのだろうな、という悲劇の予感がする。踊りましょう、と言われても心臓が悪いから踊れないの、と悲しそうに表情を曇らせるジゼル。小出さんの演技は、非常に自然で、わざとらしさが微塵もない。
一方、ルグリはロマンティックでエレガントなのだけど、高慢な部分を隠すことはしていなくて、ジゼルの母ベルタに向ける視線には、明らかに見下した態度が見受けられる。

友達の指摘で気がついたのだけど、東京バレエ団の「ジゼル」のセットは非常に手が込んでいて、良くできている。ジゼルの家の煙突からは、煙が出ているほどだ。遠景には、白い美しい城。

東京バレエ団の「ジゼル」には絶対に欠かせないのが、木村さんのヒラリオン。今回は後藤晴雄さんもヒラリオン役だったはずなのだけど残念ながら見られなくて。木村さんはある意味、世界最強のヒラリオンだと思う。ジゼルのことを一途に愛していて、彼女のことを少しでも傷つけそうな男は許せない。まっすぐで熱い、男らしい男。実は木村さんって、ルグリよりも背が高いし、脚もラインが美しい。ルグリと並んでも見劣りしないし、脚捌きもきれいだし。

パ・ド・ユイットはこの日はセカンド・キャストということもあって、残念ながら見劣りした。大嶋さん、古川さん、長谷川さんが抜けた穴は大きいことを改めて思い知らされる。このメンバーの中では、西村さんが圧倒的にラインが美しくて落ち着いた中にも華があって素敵。一番小柄な小笠原さんも、小さい分大きく跳んでいるし、クラシックのテクニックもしっかりしているので、着地に一回失敗したのが残念だけど光るものがあるなって思った。

ジゼルの狂乱のシーンは、ジゼルとアルブレヒトの間にものすごい勢いでヒラリオンが割って入るところから始まる。木村さん、熱い!恭しく、井脇さんが演じる美しいバチルド姫の手にキスしてつくリ笑いを浮かべるアルブレヒト。いや~狩に出かけていたんだよ、ってマイムが、いかにも誤魔化している様子。バチルドの目線がとても怖い。小出さんのジゼルは、最初は何が起こったのかわからなくて呆然としている。そして、どうやら彼に裏切られていたことに気づき、あまりの悲しみに、静かに、ゆっくりと壊れていく。花占いをしながら、少しずつ、正気を失っていく。ジゼルが狂っていくプロセスは本当にゆっくりとしているし、大げさな表現はまったくない、それだけに、いまだ少女にしか見えないジゼルが哀れに見えてしまって、涙を誘う。やがて髪を振り乱して笑い出すけれども、静から動への移行がとても自然で、いつのまにか壊れてしまっており、愛するアルブレヒトの姿ももう見えなくなっている。そしてウィリたちの招きに反応するジゼル。小出さん、もう完全にジゼルそのものを生きている。

アルブレヒトは釘付けになったかのように、その場を動けなくなっておろおろするばかり。自分を激しく責めたてて、背中を大きく反らせて泣き崩れるヒラリオン。そしてようやくアルブレヒトがジゼルに駆け寄った時、ジゼルは命を落とす。ジゼルの亡骸をきつく抱きしめるものの、ベルタに「あっちに行って」と突き飛ばされて、走り去るアルブレヒト。カーテンが再び開いても、仰け反ったままの木村さんが素敵。

2幕

東京バレエ団の「ジゼル」では、ジゼルのお墓がとても立派なつくりになっている。ヒラリオンが一生懸命建ててあげたのかな。そして人魂!怯えて走り去るヒラリオン。高木さんのミルタは、最初のアラベスク・パンシェはすごく脚が高く上がっていて、非常にきれいなのだけど、その後は足音が大きめで、動きも滑らかさが足りない。動きが滑らかにならない理由のひとつには、今回のオーケストラの演奏がすごく長く音をとっていて、踊りにくかったのではないかと思う。演奏自体もあまりほめられたものではなく、ダンサーにとっては少々気の毒だった。井脇さんのミルタが素晴らしいわけだけど、次の世代も育って欲しいものね。高木さんのミルタは、上半身の動きはきれいなのだけど怖さが足りない。ドゥ・ウィリの二人は長身でプロポーションが良いのだけど、まだまだという感じ。小出さんは今までずーっとドゥ・ウィリを踊っていたんだよね。ウィリたちのコール・ドはよく揃っているんだけど、1,2,3って感じに合わせているのがわかっちゃっていて、群舞で左右が交差するところも、ずしんずしんと行進しているかのようで、霊というよりはキョンシー軍団のように思えてしまう。その分、怖さは感じられるのだが。

ウィリとなった小出さんのジゼルは、アルブレヒトへの想いを残したまま世を去ったのがよくわかる。ひんやりとはしていなくて、体温が温かい、人間味のあるウィリ。髪型のせいもあって丸顔が強調されており、ウィリになっても可愛らしい。だけど、決して子供っぽくはないというか、大人の悲しみを知った女を感じさせた。出だしは若干回転でぐらついていたようで少し不安定。

百合の花束を抱えたルグリのアルブレヒトが、深い後悔に沈んで歩み入る。もう村人に偽装しなくていいので、貴族オーラが全開となっており、黒いマントから覗く紫色のタイツに包まれた脚もエレガント。美しい立ち姿。心から、ジゼルを傷つけ死なせてしまったことを悔やんでいて、貴族としての気品を保ちながらも、悲しみの底で魂がさまよっているのが見える。そこへジゼルがやってくる。彼女の姿は見えないけれども、気配で確実に彼女を感じている。ふわりと、体重をまったく感じさせないで浮いているかのようにジゼルを高くリフトする。そしてデュエット。小出さんは音楽性に優れているので、ある程度体温や体重は感じさせながらも、柔らかく、粘りを感じさせながら舞う。二人とも足音はまったくさせないのが見事。ミルタやドゥ・ウィリの足音は大きかったのに。

ウィリたちに囲まれて、ヒラリオンが追い詰められる。ここでの木村さんの熱演振りは、毎度のことながら凄い。踊り狂わされながらも、あくまでも脚捌きは美しく、高いジュッテと伸びたつま先、きれいに5番に入るアンレール。ミルタに幾たびと命乞いをするものの、冷たく突き放される。明らかにウィリたちは彼をいたぶることに喜びを感じているのだけど、無表情なのが怖い。そしてついには、ポイっとウィリたちに湖の中に捨てられる。やっぱり木村さんは世界一のヒラリオンだ。

ガラでよく踊られるジゼルのソロ。小出さん、前半のスーブルソーは良かったのだけど、後半のアントルシャしながらホッピングするところは、ちょっと不調だったかもしれない。でもジゼルはテクニックよりも雰囲気が重要な役だから、その点においては満足できた。心血をこめて、ジゼルを演じ踊っているのがよくわかる。それも、あくまでもナチュラルに、ジゼルそのものになりきって。

ミルタたちの次なる獲物として、アルブレヒトが踊らされる。ジュッテ、アントルラッセ、トゥールザンレール、ランベルセ。とても40歳をとっくに過ぎたダンサーのものとは思えない、びっくりするほど高くて美しい跳躍。トゥールザンレールから倒れこんだ時には、嵐のような大喝采が起きて、倒れたルグリはその喝采に応えて再び倒れる。そして大きなジュッテで上手から下手へと駆け抜ける。

次にアルブレヒトは対角線上、ミルタの魔力で引き寄せられるようにブリゼを繰り返す。世界バレエフェスティバルでコジョカルとルグリが共演した時の、ルグリの素晴らしく美しいつま先が印象的だったブリゼのシーン。そこで、この日、ルグリが途中でブリゼをするのをやめてミルタのところまで歩いていって懇願をしたのだ。自分の命乞いというよりは、ジゼルをこれ以上苦しめるのはやめて欲しいという様子。2回目のブリゼはなしで途中からは、アントルシャ・シスの繰り返し。それも、全部右脚が軸になっていた。ジゼルと対になって左、右へとジュッテアラベスクするところも、片方だけしか跳ばなくて。怪我でなければ良いのだけど…。とはいっても、どこかで止まるとか痛そうにすることはなく、そのまま踊り続けてはいたけど。

最後に踊り疲れていよいよもうダメ、とアルブレヒトが昏倒したところで、朝を告げる鐘が鳴る。アルブレヒトが救われたことを知ったジゼルの安堵に満ちた表情には、母のような慈愛が感じられた。そして、一生分の愛を込めてのアルブレヒトの抱擁。手を離し、墓の向こうへと消えていくジゼル。正面を見据えたアルブレヒトは、ジゼルと今度こそ永遠の別れをしてしまったという悲しみと同時に、新しい生を得たという希望を感じさせてくれた。残念だったのが、幕が下りるのがあまりにも早かったこと。もう少し、ルグリの最後の表情を見て余韻に浸りたかった。

もしかしたら脚を怪我したかもしれないのに、幾たびものカーテンコールに笑顔で応え、小出さんの手にキスをしたルグリ、素敵だった。そして小出さんのジゼルも素晴らしかったと思う。初役であった現時点でもこれだけ優れた表現をできるのだから、これからどんな風に成長していくのか、楽しみ。またルグリさんと「ジゼル」で共演する機会があればよいのだけど。


ジゼル:   小出領子
アルブレヒト:   マニュエル・ルグリ
ヒラリオン:   木村和夫

―第1幕―
バチルド姫:   井脇幸江
公爵:   後藤晴雄
ウィルフリード:   野辺誠治
ジゼルの母:   橘静子
ベザントの踊り(パ・ド・ユイット):   西村真由美 - 横内国弘、乾友子 - 宮本祐宜、阪井麻美 - 梅澤紘貴、河合眞里 - 小笠原亮
ジゼルの友人(パ・ド・シス):   高木綾、奈良春夏、田中結子、吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵


―第2幕―
ミルタ:   高木綾
ドゥ・ウィリ: 奈良春夏、田中結子

指揮:   アレクサンドル・ソトニコフ
演奏:  東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2008/09/17

ロンドンから帰ってきました

ここ数日ブログの更新をしていなかったら、いろいろな人に心配されてしまって、入院でもしているのかとか思われていたようですが、元気です。出発前に例によって大変ばたばたしていて、出発の報告もできませんでした。ご心配をおかけしていたようですみません!また、コメントへのお返事やメールのお返事も遅れてしまっていて。

9月11日の夜から出発して、16日早朝に帰国しました。ロンドン3泊の弾丸旅行です。目的は、サドラーズ・ウェルズ劇場で上演されていたマシュー・ボーンの新作「ドリアン・グレイ」。都合5回の公演を観てくることができました。

オスカー・ワイルドの原作「ドリアン・グレイの肖像」を読んでいる人からは、いろいろな意見があったようですし、プレスの批評もどちらかと言えば酷評が多かったのですが、原作を読んでいない私は面白く観ることができました。一緒に観に行ったお友達は、原作をちょうど読み終わっていたので、いろいろと教えてもらってそれも面白かったです。私も早く原作を読まなくては。

この作品では、ドリアン・グレイは男性スーパーモデル、バジルはファッション・カメラマン、原作のヘンリー卿という男性の設定を女性に変更し、レディHというファッション業界の大立者として、ファッション業界の犠牲者となっていく青年の栄光と没落を描いています。

メディアによる酷評にもかかわらず、全公演がソールド・アウトというのは、マシューに対する期待の高さをうかがわせるものです。マシューらしい皮肉さ、ブラックさ、ダークさ、そしてキッチュさを持ちながらも、スタイリッシュでクールなこの作品、一瞬たりとも目を離せない緊張感がありました。

キャストは11人と少数、レズ・ブラザーストーンによるセットや美術がとても秀逸でした。そして、主役ドリアンを演じたリチャード・ウィンザー、バジル役のアーロン・シルズ、レディHのミケーラ・メアッツァ、シリルのクリストファー・マーニーというキャストも、みな熱演でした。ボクサーパンツ一丁のシーンが多くて、ちょっとドキドキしちゃいましたが。

ってわけで、詳しくはまた後日。

今日は東京バレエ団の「ジゼル」観てきました。ルグリさんが終盤、ブリゼを中断してしまったので、脚の具合が心配です。小出領子さんのジゼルは、狂乱のシーンから2幕がとても素晴らしかったです。

2008/09/11

アレクセイ・ラトマンスキーがABTの常任振付家に!

ニューヨークタイムズのインタビュー記事によると、ボリショイ・バレエの芸術監督を今年末に退任するアレクセイ・ラトマンスキーは、来年からABTの常任振付家に就任することになるとのことです。

向こう五年間、年に20週ABTで仕事をし、毎年少なくとも一つの作品を振付もしくは再振付することに合意したそう。

NYCBからの常任振付家のオファーを断ったラトマンスキーがABTというのは驚きですね!何度もラトマンスキー作品を上演しているNYCBと異なり、ABTはまだ一度も彼の作品を上演したことがありません。彼はニューヨークに妻とともに引っ越すそうです。

また振付だけでなくマッケンジーと芸術面で協力するとのことなので、将来の芸術監督候補という見方もできますが、マッケンジーは否定しています。

マクミラン、チューダー、サープといった振付家とのコラボレーションで知られるABTですが、一度も常任振付家を任命したことはありませんでした。

古典中心のABTのレパートリーが変わる可能性もありますし、ロシア系のダンサーのゲストや移籍も考えられますね。

いずれにしても、ABTの動向からは目が離せません。

「ダークナイト」The Dark Knight

IMDBのユーザーレイティングで歴代第3 位という高評価、そしてもちろん、故ヒース・レジャーの遺作ということで期待たっぷりで観た本作品、見ごたえがあった。映画というものを映画館で観ること自体すごく久しぶりだったということもあるけど。やっぱり映画館で映画を観るっていいなあと思わせてくれた作品。

監督 クリストファー・ノーラン
脚本 ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
撮影監督 ウォリー・フィスター

ブルース・ウェイン/バットマン クリスチャン・ベール
ジョーカー ヒース・レジャー
ハービー・デント アーロン・エッカート
アルフレード:マイケル・ケイン
レイチェル マギー・ギレンホール
ゴードン ゲイリー・オールドマン
ルーシャス・フォックス モーガン・フリーマン

「バットマン」シリーズは今まで3作しか観ていないのだけど、一番大切なのは何かというと、世界観と撮影のルックだと思っている。1作目のティム・バートンによる、陽の射さない暗くてゴシックなゴッサム・シティがどのように表現されているかということ。この点に関しても、素晴らしい。作品のテーマのひとつでもある、光と影が見事な対照を成して、光が明るければ闇は一層暗く表現されていて、美しくも禍々しい。また、ジョーカーの衣装やメイクなどの色彩感覚も実に禍々しく狂気を感じさせて見事である。

常人には理解不能な、絶対的な悪、テロリストとしてのジョーカー。そのジョーカーがもたらす恐怖が支配するゴッサム・シティに存在する唯一の光であった、正義感の強い若き地方検事ハービー・デント。光と影、この二つのキャラクター造形、特にハービーのキャラクター作り、そして彼が使う、とある小道具の設定が実に秀逸。清廉潔白で志の高い人物であればあるほど、ふとした大きな怒りや憎しみ、そして復讐心でたやすく天秤が傾き、コインの裏と表のように正邪が逆転しやすいということ、そして自分の選択に自信が持てなくなって運命を天に任せたくなるということを象徴させている。

「運命を、そして善悪を自ら選択する」というテーマは、終盤にあるフェリーでのエピソードでも象徴的に登場する。その時に人々が選び取った選択肢こそが、この残酷で混沌とした世界の中に射す、一筋の希望の光であり、人間性に対する信頼を示すものとして燦然と存在するものだ。しかし、その選択は容易に導き出されたものではないし、多数決で得られた答えは、必ずしも正しいものではないということも示している。

ジョーカーが病院を爆破していく、黙示録のようなテロのシーンは、まさしく9.11の世界貿易センターが崩壊していく様子と重ね合わせることができるだろう。

絶対的な悪としてのジョーカー。正義の使者でありながらも同時に糾弾される存在でもあるダークヒーローたるバットマン。悪と戦うために自ら悪の汚名を着るバットマン。我こそがバットマンであると名乗り出たハービー。これらのキャラクターは、お互いに自分たちの大義名分たる倫理、正義のために戦争を起こす米国、テロを起こすイスラム原理主義者、そのどちらともに重ね合わせることができるというのが、この映画の凄いところである。

ジョーカーが持っている根源的な憎しみの源である裂けた口、なぜそんな顔になってしまったのかを説明するエピソードが毎回違っているというのがまた恐怖を倍加させる。何者かに取り憑かれているかのようなヒース・レジャーの怪演ぶりが凄まじい。彼は完全なメソッド・アクターであり、身体の歪ませ方から声の出し方、震わせ方まで狂気が最初から最後までみなぎっている。禍の神として君臨するジョーカー、それを演じたことがヒース・レジャーの早すぎる死のきっかけのひとつになったかと思うと、痛ましい限り。

マイケル・ケインやモーガン・フリーマンといった名優(冒頭の銀行のシーンで登場するウィリアム・フィチトナーも印象的)を脇で使っている贅沢さもさることながら、ジョルジオ・アルマーニが手作りしたというクリスチャン・ベールのスーツ、そしてゼニアによるアーロン・エッカートのスーツのスタイリッシュさも見事なもので、映像のルックの美しさに貢献している。かくのごとく細部まで気を配って作られたこの作品は、隅々まで緊張感が持続し、2時間40分という長尺さも感じさせない。ブルース・ウェインの恋人レイチェル役がマギー・ギレンホールという渋いキャスティングが、ノーランが男女の関係ではなく男同士の関係に強い関心を持っていることを示しているんだな、とちょっと深読みできるところも面白い。

追記:エディソン・チェンが出ているのは気がつかなかった。残念!

2008/09/10

踊る男たち バレエのいまの魅惑のすべて 新藤弘子

踊る男たち バレエのいまの魅惑のすべて 新藤弘子
新書館

2003年8月から2005年7月にかけてダンスマガジンで連載された男性ダンサーたちについての記事を、一冊の本にまとめたもの。27人のスターダンサーを紹介している。連載されていた時も読んでいたけれども、こうやって一冊の本になって、巻頭に美しいグラビア写真が載っていると思わず買ってしまうのだった。

連載が始まってから5年も経ってしまうと、若干古くなってしまった記述もある。アダム・クーパーはもうバレエを踊らなくなってしまったし、ルジマトフもミハイロフスキーの芸術監督になって古典バレエは踊らなくなった。首藤康之は演劇やパントマイムへと活躍の領域を広げている。また、アンヘル・コレーラやウラジーミル・マラーホフ、イーゴリ・ゼレンスキーのように自らのバレエ団を率いるようになった人もいる。駆け出しのエトワールだったマチュー・ガニオは立派なスターになったし、すでにスターだったロベルト・ボッレはさらに押しも押されぬ大スターになった。(1回の連載で2名のダンサーを取り上げている章では、どうしても物足りなさ、通り一遍な部分があるのが残念)

一人一人のダンサーの、デビューした頃のエピソードから、連載された時点までの足跡をたどるにはよい資料となっているとともに、著者の個人的な思い入れも少々登場していることで、読み物として面白くなっていると言える。また、すでに故人となっていたジョルジュ・ドンやルドルフ・ヌレエフ、アントニオ・ガデス、そして往年のスターダンサーでありながら現在も活躍しているアンソニー・ダウエルやミハイル・バリシニコフも取り上げられているのが、リアルタイムでの活躍をそれほど知らない身にとっては、新しい発見がある。

読み応えのある一冊ではあるけど、どうせなら、巻末に出演DVDなどの資料がついていたらもっと良かったな、と贅沢な希望を最後に述べさせてもらったりして。

1 ウラジーミル・マラーホフ Vladimir Malakhov
マニュエル・ルグリ Manuel Legris
熊川哲也 Tetsuya Kumakawa
ニコラ・ル・リッシュ Nicolas Le Riche
イーゴリ・ゼレンスキー Igor Zelensky
ジョゼ・マルティネズ José Martinez
ファルフ・ルジマートフ Farukh Ruzimatov
マチュー・ガニオ Mathieu Ganio/デニス・ガニオ Denys Ganio

2 ジョルジュ・ドン Jorge Donn
ジル・ロマン Gil Roman
ジュリアン・ファヴロー Julien Favreau
小林十市 Juichi Kobayashi
アンヘル・コレーラ Angel Corella
イーサン・スティーフェル Ethan Stiefel
ホセ・カレーニョ José Manuel Carreño
アンドレイ・ウヴァーロフ Andrei Uvalov
/ニコライ・ツィスカリーゼ Nicolay Tziskarize
ロベルト・ボッレ Roberto Bolle/マッシモ・ムッル Massimo Murru

3 アダム・クーパー Adam Cooper
首藤康之 Yasuyuki Shuto
アントニオ・ガデス Antonio Gades
パトリック・デュポン Patrick Dupond
アンソニー・ダウエル Anthony Dowell
ミハイル・バリシニコフ Mikhail Baryshnikov
ルドルフ・ヌレエフ Rudolf Nureyev

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2008/09/09

「バレリーナへの道」はパリ・オペラ座「ル・パルク」特集/25ansのザハロワ

発売からだいぶ経ってしまって、ようやく読んだのですが、「バレリーナへの道」の最新号vol74はパリ・オペラ座の「ル・パルク」特集です。
この雑誌がオペラ座の特集をやること自体、かなり珍しいことだと思いますが、20ページも割いているんですよね。しかも嬉しいことに、ダンスマガジンなどの雑誌に載った共同インタビューだけでなくて、若手4人にインタビューをしていること。

その若手とは、シャルロット・ランソン、オーレリア・ベレ、ジョシュア・オファルト、シモン・ヴァラストロ、の4人なんです。特に、シモン・ヴァラストロは「椿姫」のN伯爵の切ない名演も非常に印象的なダンサーだったので、彼のインタビューがあるのは嬉しかったです。彼は以前に発表会のゲストなどでも日本で踊っているんですよね。ジョシュア・オファルトも今相当注目されている若手だと思うんですけど、彼はお好み焼きが好きなんですね。もう4回目の来日なのだそうです。というわけで、二人とも日本大好きだと言ってくれているのは嬉しいですね。

もちろん公演の写真もかなりたくさん載っていましたし、振付のアンジェラン・プレルジョカージュにスポットを当てたところでは、バレエ・プレルジョカージュに所属していた大岩淑子さんのインタビューも載っていました。読み応えのあるインタビューです。

バレリーナへの道 74 (74)バレリーナへの道 74 (74)

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25ans(ヴァンサンカン)には、スヴェトラーナ・ザハロワがプラダを着ている、非常に美しいグラビアが6ページ載っていました。彼女のプロポーションの見事さは、ファッションモデル並ですからね。もちろん、チュチュを着ている姿が、彼女の脚線美を堪能できて一番美しいのはいうまでもありませんが、髪を下ろしてこちらをきりっと見つめているクールな目線もぞくぞくするほどの美を感じさせてくれます。病院と思しき部屋のベッドに寝そべっているアンニュイな写真は意味深で妖しさを感じさせてくれます。よく見ると透けているレースのスカートなどのプラダの服がドラマティックでとっても美しいです。

この撮影では、ザハロワは「運命の女」を演じているということなのですが、彼女にとっての運命の女の役は、新国立で踊った牧阿佐美振付の「椿姫」のマルグリットだそう。ボリショイ劇場にまで持って行くほど、彼女にとってはお気に入りの作品だったんですね。

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2008/09/08

ABTのプリンシパル・リストにロベルト・ボッレ

ABTのオフィシャル・サイトを見ていたら、なんとプリンシパルの項目に、ロベルト・ボッレの写真が掲載されていました。

http://www.abt.org/dancers/detail.asp?Dancer_ID=229

ただし、プロフィールのページには、写真が掲載されているのみで、プロフィール文章はまだ何も入っていません。また、ウラジーミル・マラーホフのプロフィールは消えています。

来年のMETシーズン、ロベルト・ボッレがABTに出演するのではないかという噂はささやかれていましたが、どうやら本当に出演する可能性が高いようですね。来シーズンのツアー、7月のロサンゼルス公演で「ロミオとジュリエット」が上演されることから、METシーズンでもロミジュリは上演される可能性が高いと思われます。その時にでも出演するのでしょうか?

また、若干ですがカンパニーメンバーが更新されており、退団を表明していたサシャ・ラデツキーの他、コール・ドでは高い評価を得ていたサラワニー・タナタニット、それからアレハンドロ・ピリス・ニーノらのプロフィールが消えていました。

あと気になるのは、ソリストへの昇進発表が行われるかどうかということです。来日公演で活躍したコリー・スターンズをはじめ、ブレイン・ホーヴェンあたりが有力と思われます。まだ、ダニール・シムキンの名前も載っていません。

2008/09/07

新国立劇場「アラジン」 デビッド・ビントレートークショー

新国立劇場「アラジン」初演に先立ち、振付家で次期芸術監督のビントレーのトークショーが開催されました。ビントレーの他牧阿佐美芸術監督と、本島美和、八幡顕光、小野絢子、湯川麻美子、吉本泰久、中村誠の主演ダンサーも登場。一時間ほどトークが繰り広げられました。

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「アラジン」を全幕作品にしようと思った理由は?

ビントレー:ちょうど作曲家のカール・デイビスと「シラノ」というバレエを作っていました。数年前、彼は2000年に初演されたスコティッシュ・バレエのための作品「アラジン」を作った。作品は成功しませんでした。スコティッシュ・バレエは大変な時期であり、ダンサーの人数も足りなかった。何より振付家が作品に相応しくなかった。そして作品はスコティッシュ・バレエのレパートリーから消えました。
しかしカールは自分の曲に誇りを持っており、70歳の誕生日を記念して、自分のために、曲をオーケストラに演奏させて録音し発売しました。彼は私にCDをプレゼントしてくれたが、私はまったく関心がなく聴いていなかったのです。
ある日ツアーでマンチェスターに向かって運転している間CDを聴いてみようとかけてみました。曲を聴いているうちにどんどん興奮して運転の速度も速くなりました。マンチェスターに着いたらすぐにカールに電話しました。カールは「わかるよ」と言いました。私はこの曲と恋に落ちました。子供時代の記憶、「アラビアン・ナイト」やペルシャ、魔法などのイマジネーションが喚起されていたことが思い出されました。

世界初演で日本の新国立劇場を選んだ理由は?

ビントレー:初演作品を海外のカンパニーで上演するのは、シュツットガルト・バレエでの「エドワード2世」に続く二度目です。カールの「アラジン」のスコアをとても気に入ったので新作を作りたいと思ったけど、「シラノ」でカールと仕事をしたばかりだったので、すぐにやろうとは思わなかった。その後「カルミナ・ブラーナ」で新国立劇場と仕事をする機会があって、またここで仕事をしたいと思った。

全幕作品を作るのは本当に大変です。お金もかかりますし、時間も2~3年かかりますし、自分の国を離れて外国で作るというのは、大変なプレッシャーです。新国立劇場と「カルミナ・ブラーナ」で仕事をして、とてもよかったので、大変ではあってもなおやりたいと思いました。ダンサーも良かったですし、劇場もサポートしてくれました。今週、衣装デザイナーがここに来ていたけれども、衣装も素晴らしい衣装ができました。衣装合わせはダンサーにとっては退屈な仕事なのに、誰も文句を言いませんでした。このレベルのサポートを得られることはそうそうありません。もう2度と行きたくないと思う劇場もあります。ここでは、万全のサポートが得られると確信しました。

全3幕、休憩込み3時間弱のこの作品での見所はどこですか?

ビントレー:3時間全部が魅力的です。「アラジン」はとても有名な物語ですが、イギリスでは中国の物語として有名です。クリスマスの時に演じられるパントマイムとして有名ですから。日本では、アラビアの物語として知られていますが、「アラビアン・ナイト」の本では、一番大きな都市は中国にあるものです。しかしその中で描写されている街はアラビア的です。宮殿にいる王様は皇帝ではなくスルタンですし、お姫様の名前もアラビア風の「バードラ・アルブドゥール」という名前で、"満月の中の満月"という意味です。日本でのアラビアの印象があるので、アラビアに舞台を設けました。カールのスコアには、明らかに中国風という音があります。2つのハイライトは、中国風のライオンダンスとドラゴンダンスです。今週末までには振付を、フィナーレを残して全部終えます。フィナーレにはドラゴンが登場しますが、まだドラゴンはこちらに向かっている途中なのです。そうだ、見所としては、ランプの精のジーンが見所です。空飛ぶじゅうたんが登場し、本当に空を飛びます。

どんなイメージの衣装や舞台美術ですか?

ビントレー:デザインは、デザイン画とはだいぶ変わっています。宝石の洞窟は、もっと安上がりになっています(笑)。イスラムの建築物、トルコ風呂や、ヴィクトリア時代前後の画家の絵もたくさん観てイメージを膨らませました。

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3組のキャストの魅力を教えてください。

ビントレー:バレエを作るときは、いつも、まずダンサーを目の前に立ってもらって、一緒に創っていきます。自分の頭の中で作った役の中に押し込めるということはありません。アラジンのキャスティングをするときには、プリンセス役も一緒に決めなければなりませんでした。カップルとしてちょうど上手くいくということを見なければなりません。アラジンは出ずっぱりの役であり、技術、エネルギー、演技、特にコミカルな演技ができなければなりません。このコミカルな演技が難しいのです。また、パートナーリングが上手でなければなりません。少なくとも3つの大きなパ・ド・ドゥがあるからです。ゲストを迎えないで作品を作ることは初めてです。3組ともバレエ団の中から見つけることができたのはラッキーでした。

まったく同じような3人を選ぼうとは思いませんでした。3人の体型も違いますし、アラジンを選んだ時、すぐにプリンセスも同じようになると思いました。この2つの役を作り上げていく過程は興味深かったです。違ったルックスを持った3組を主役にしてバレエを作るのは初めてで、私もエキサイティングだったと思うので、ぜひ3組のチケットを買って欲しいと思います(笑)

ジーンは30フィートの巨人を皆は思い浮かべると思いますが、そんな大きな人は新国立劇場にはいませんし無理です。スコティッシュ・バレエではジーン役は創らなくて、特殊効果で創り上げましたが、どうしても踊るランプの精を創りたいと思いました。極端なことをやってみようと思いました。山本さんが背の高いダンサーなので、ジーンは小さなダンサーにして、吉本さんになりました。ジーンはものすごくすばやく動き回る役です。八幡さんが小さいので、彼の時には背の高い中村さんを選びました。

アラジンとプリンセスの関係は、キャストごとにまったく違います。ひとつひとつの関係を創り上げていきました。とても面白かったです。湯川さんのことは、「カルミナ・ブラーナ」で踊ってくれてよく知っているし、振付家と踊るということについての才能と経験を持っている人です。彼女の存在は、他のプリンセス役の、より経験の少ない2人にとってもとても良かったと思います。私は、ダンサーに、もっと自分を出して、内面を出すことを要求しています。他の二人がそれを学んでいけばいいと思うし、もっともっと自分を前に出すことをやって欲しいと思います。

山本さん、本島さんがパ・ド・ドゥの振付をやっているときには、小野さんと八幡さんが彼らの後ろで練習をしていました。経験の浅い二人が見て学んでいるところを見て、とても面白いと思いました。

吉本さんには、時速100マイルだ、速く、速くと言い続けていましたし、誠さんにはものすごく速いステップを与えましたが、まだそれは見ていません。

宝石の洞窟の中では、ディベルティスマンのシーンがあります。いろいろな種類の宝石がそれぞれ踊ります。プリンセス役ですが、踊るサファイヤの役をも湯川さんに与えました。サファイアのイメージは海であり、ボッティチェルリのヴィーナスのように、海から生まれるものです。彼女には、その役が相応しいと思いました。彼女の振付が一番最初にできました。中村誠さんには、エメラルドの踊りを振付け、音楽の一部をここに付け加えました。最初は女二人と男一人の踊りにするつもりでしたがそれはやめました。エメラルドはエキゾチックでインドから来たというイメージ、蛇のイメージがありました。中村さんの持つしなやかさ、エキゾチックさがぴったりと思ったのです。この作品は壮大な作品で、たくさんのダンスがあります。カンパニーの人たちと創り上げるのは楽しかったです。

権力と富、そして愛という対極にあるものというのが主軸に貫かれていますね。

はい、金持ちと貧乏な人という二つの世界の対立を描いていますが、しかし最終的にはいい人たちなので幸せになるという結末です。


ここでダンサーたちの紹介とコメントがありました。

本島美和
とても光栄なことでした。リハーサルの中でビントレーさんから何が出てくるのか楽しみにしています。彼の世界観を表現できるよう、頑張ります。

八幡顕光
世界初演で、初の主役ということで、この場にいるのがとても嬉しいです。どういう風にステージで仕上がっていくのか、ドキドキワクワクしています。一番若いペアなので、エネルギッシュな踊りを見せて行きたいです。

小野絢子
とてもピュアに、フレッシュに演じたいと思います。皆さんにお願いがあります。ビントレーマジックの舞台なので、瞬きの回数はできるだけ少なくしてくださいね。

湯川麻美子
ビントレーさんの作品にはほれ込んでいます。10代のプリンセス役というのは初めてなので、今までのイメージを打ち破って、引き出しから出して、新しい湯川麻美子を見せたいと思います。

吉本泰久
こんなにしゃべっているビントレーさんを見るのは初めてです。今回トークショーを聞いて、なぜ自分がジーン役なのかがわかりました。ビントレーさんは自分の世界観を持っていて、それに沿いながら、どうやって見せるか、自分で演じて見せる人手、すべて速い、スイッチが早い人ですが、あまりしゃべらない方なのです。舞台の夜、観客の皆さんには、アラジンとプリンセスとともに幸せな夜をすごして欲しいです。

中村誠
昔カレー屋さんでアルバイトしていたんですよね(笑)。初演なので、イメージが白紙なので、まったく新しいものを作ることができ、まったく新しい表現方法です。キャストによってまったく違う舞台を観ていただけると思います。3時間弱の舞台の中で、どれほどいろいろな人との出会い、ダンサーたちとビントレーさんの出会い、スタッフの出会い、膨大な時間を凝縮しているのか。それらを背負って舞台に立てるダンサーという仕事を誇りに思います。感動など大切なものを伝えたいと思います。

9/1新潟県中越沖地震チャリティー バレエガラコンサート (後半)まだ途中

<第二部>
アダージオ:アンドレイ・メルクリエフ
振付:アレックス・ミロシュンチェンコ 、音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ

桶川の時と衣装が替わっていて、今回は白っぽい、薄い水色の透ける衣装。アンドレイは、古典よりもコンテンポラリー作品での表現に定評があるダンサーであることも頷ける。伸びやかで滑らか、時にシャープな動きが美しく、音符を奏でているかのように楽器となっていた。金髪をサラサラに下ろしている姿も麗しい。

マタハリ(日本初演):ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ

第一次世界大戦時にパリで活躍した伝説的な女スパイ、マタ=ハリを主役に、彼女に魅せられた二人の将校との三角関係を描いた作品なのだそうで、マハリナ&イリヤ主演でサンクトペテルブルグで初演されたのも昨年12月というから、まだ新しい作品。YouTubeにマハリナの特集番組がアップされていて、その一部を見ることができる。全幕作品の抜粋なので、一部を見ても全体像はわからないけど、ここでもイリヤは翻弄される切ない男を熱演。そして女スパイらしいきりりとした部分と、匂い立つような色香を目線の使い方や指先で表現していたマハリナ。このふたりは「シェヘラザード」とはまたちょっと違った独特の秘密めいた世界を創り上げていたと思う。タンゴ風の音楽も、ドラマティックで大人の味わいを加えていた。

海賊より奴隷の踊り:寺島まゆみ、芳賀望

すっかり踊りこんで、この作品をモノにしたふたり。最初にThe Proud and Hopes of Japan Galaで観た時よりも、まゆみさんの「いやいや」度が減って、笑顔が増えた気がするけど、ガラだものね。まゆみさん、とってもチャーミングなギュリナーラだった。ヴェールを芳賀さんが外す時にちょっと引っかかってしまったような気はしたけど、あとはスムーズ。華奢な身体で、思い切りよく高くジュッテするまゆみさん、奴隷商人の演技がどんどん濃くなっていく芳賀さん。観ていて楽しいパ・ド・ドゥだった。

il Pleut:松崎えり、大嶋正樹

天から降ってくる雨を感じている松崎さんの表情が素敵。想い合っても、動きはシンクロしていても、すれ違うばかりの男女の切ない心象風景が伝わってくる、とても心がひりひりするような切実感のある作品だと思う。そして大嶋さんのしなやかで美しい動き。コンテンポラリー中心の活動をしているとはいっても、しっかりとした古典のテクニックを持つ松崎さんの表現力。女性らしい繊細さと大胆さを持ち合わせた、いい作品だと思う。

カルメン:アンナ・パシコワ、イリヤ・クズネツォフ

イリヤの翻弄される男シリーズ第三弾。今回のお相手は、また美しいアンナ・パシコワ。炎のような激しい女で、とっても強気なのが魅力的。カルメンが気が強いだけに、振り回されるイリヤの切ないこと…。どうしようもなくカルメンに参ってしまって離れようにも離れられない男の苦悩を見せてくれた。悩める男は色っぽいなあ。

ロミオとジュリエット:オクサナ・クチェルク、イーゴリ・イェブラ

今のこの瞬間だけを信じて生きる、恋人たちのみずみずしい幸福感。美しくピュアな二人に、純白の衣装が似合うこと!疾走感、胸の高鳴り、まっすぐな想い、それが直球で伝わってきた。いつまでも、この幸福の絶頂にあるふたりを見つめていたいという思いにかられる。

瀕死の白鳥:ユリヤ・マハリナ

マハリナの瀕死の白鳥は、観るたびにより胸に突き刺さるような表現に高められていく気がする。死んでいくということはどういうことなのか、という問いを突きつけられた気持ちになる。生命を失いつつあるという事実は明白であり、もはや抵抗するだけの力もない。だけども、あと少しだけ、命の輝きを放ち続けたい。そう願った白鳥が、懸命に命を燃やし続けて一瞬だけ輝き、ついに燃え尽きる姿を見せた。極限まで純化されたロパートキナの表現とは対極にあるけど、強く胸に刻まれる白鳥。

ドン・キホーテ(組曲):ガリーナ・ステパネンコ、アントン・コルサコフ、アンドレイ・メルクリエフ、エレーナ・コレスニチェンコ、アンナ・パシコワ、&ゲジミナス・タランダ、長澤美絵、小川恵瑚他

とっても楽しかったガラも、これが最後の演目かと思うと、ちょっと寂しい。でも、その寂しい気持ちを吹き飛ばしてくれるような、胸のすくような楽しい「ドン・キホーテ」組曲だった。

今回も、赤いバンダナを海賊巻きにした大嶋さんと、バジル風の衣装着用だけど、どう見ても小僧風のミーシャがまず登場。「海賊」は怪我で出られなかった彼だけど、肩の故障ということなので脚は大丈夫そう。また例によって得意のピルエットを披露している。イリヤは今日は一人で登場。今までは翻弄される男シリーズx3のセクシーなイリヤが、ここでは気のいいあんちゃん風で、とても同じ人には見えない。長澤さんに、やっと名前が判った小川さんの可愛い二人のヴァリエーション担当。そしてロミオとジュリエットの衣装のままのイェブラが、軽々とクチュルクをリフトしながら入ってくる。

この「ドン・キホーテ」の見所のひとつである、アンナ・パシコワとエレーナ・コレスニチェンコのロシア美女二人の対決。何回観ても迫力があってカッコいい。二人ともやる気満々で、思わず大きな掛け声まで登場。髪に挿した真紅の薔薇のような、激しく美しく、触ると火傷するか血を流してしまいそうな彼女たちに出会えたのも良かった。テーブルの上に飛び乗って激しく上半身を反らし足を踏み鳴らす姿も、ラテンの女~で色っぽい!

とびっきりの美女二人が取り合うのに相応しい、水も滴る美男の闘牛士、アンドレイが背中を反らせて登場。エスパーダというのは昔から長身の美男が踊るものと決まっていて、古くはパトリック・ビッセル、最近ではデヴィッド・ホールバーグによるエスパーダが素敵だったわけだけど、アンドレイ以上にキラキラと麗しくもイカしたエスパーダを見つけるのは難しいだろう。綺麗につま先の伸びた高くカブリオールからアッサンブレ、そして4番でポーズ、の一連の動きの決まっていること。鼻血モノ。

黄色いチュチュのステパネンコ姐さんとアントンが登場。アントンって、ホント笑わない子なのよね。おまけにプクプクした頬なので、ちょっとふくれっ面気味に見えていたりして。でも、彼が笑わないのは仕様らしい。この機会に、去年のボリショイ・マリインスキー合同ガラでアントンがテリョーシキナと「グラン・パ・クラシック」を踊った録画を見直してみたけど、あでやかに微笑むテリョーシキナの横で、レベランスやカーテンコールの時にも一度も笑わないアントンだったのだ。でも、今日がラストということもあって、桶川よりは気合が入っているのはわかった。奈良ではボサボサだった髪がきちんと撫で付けてあったし。

しかし、またまたステパネンコ姐さんの強烈ダイブは、腕まくりをして胸をはだけたロミオ衣装のイェブラがピルエットした後でキャッチ。それも、桶川の時よりもさらに地面スレスレ、姐さんの指先が地面につきそうなぎりぎりのタイミング。イェブラも先ほどのロマンティックでピュアなロミオから、すっかりスペイン人の陽気なお兄さんに変身している。

(続く)


フィナーレ:「ガウチョ」ゲディミナス・タランダ&イリヤ・クズネツォフ

(これはいま少しお待ちください)


<第三部>
Toshi Special Live
アンドレイ・メルクリエフ、高橋晃子、アンナ・パシコワ

2008/09/06

パリ・オペラ座2009年6月オーストラリア公演

当初メルボルンで開催される予定だった2009年のパリ・オペラ座のオーストラリア公演は、スポンサーが見つからずに中止されました。が、結局公演は6月にブリスベンで開催されることになったと、ダンソマニに出ていました。

プレスリリースはこちら
http://www.qpac.com.au/files/Paris_Opera_Ballet.pdf

2009年6月24日から29日までで、「ラ・バヤデール」とミックスプロが行われます。
会場はクイーンズランドパフォーミングアーツセンターで、チケットは来月発売されるとのこと。

http://www.news.com.au/couriermail/story/0,23739,24295790-5003423,00.html
によれば、「ラ・バヤデール」が12公演(!)そしてトリプル・ビルが1公演とのことです。

オーストラリアは時差がありませんし、日本からも行きやすいので、観に行かれる方もいそうですね。オーストラリア公演が、2008-2009シーズン唯一の海外公演だそうです。しかも「ラ・バヤデール」なのは魅力的ですね。同時期に、オペラ座のガルニエで「ラ・フィユ・マル・ガルデ」が上演されていますので、2班に分かれるということですね。

2008/09/04

「バレエ パーフェクトガイド」ダンスマガジン編

以前も新書館から出ていたバレエガイドの改訂版。何年か経ってしまうと引退するダンサーや、新しいダンサーも出てきますからね。

カラーページが増えて綺麗になったけど、ビジュアル度が向上した反面、テクニックやマイムの説明が詳しかった前の版のほうが中身は濃かったと思う。

バレエ・ダンサー70

シルヴィ・ギエム/熊川哲也/ニーナ・アナニアシヴィリ
ウラジーミル・マラーホフ/吉田 都/マニュエル・ルグリ
スヴェトラーナ・ザハーロワ/ニコラ・ル・リッシュ
アリーナ・コジョカル/ディアナ・ヴィシニョーワ
オーレリ・デュポン/マチュー・ガニオ/アニエス・ルテステュ
ロベルト・ボッレ/ポリーナ・セミオノワ
フリーデマン・フォーゲル/上野水香/アンヘル・コレーラ
ウリヤーナ・ロパートキナ/ファルフ・ルジマートフ
ジル・ロマン/森下洋子
(ここまでが、一人一ページの紹介)

青山季可/シルヴィア・アッツォーニ/マリア・アレクサンドロワ
伊藤友季子/アンドレイ・ウヴァーロフ/マチアス・エイマン
エヴゲーニャ・オブラスツォーワ/ホセ・カレーニョ
草刈民代/ジュリー・ケント/ベルニス・コピエテルス
マルセロ・ゴメス/イーゴリ・コルプ/斎藤友佳理/酒井はな
レオニード・サラファーノフ/オクサーナ・シェスタコワ
ウラジーミル・シクリャーロフ/清水健太/首藤康之
ドロテ・ジルベール/マリ=アニエス・ジロ/イーサン・スティーフェル
高岸直樹/田中祐子/ヤンヤン・タン/崔由姫
ニコライ・ツィスカリーゼ/ヴィクトリア・テリョーシキナ
イリーナ・ドヴォロヴェンコ/SHOKO/レティシア・ピュジョル
ジュリアン・ファヴロー/エレーナ・フィリピエワ/イリーナ・ペレン
デヴィッド・ホールバーグ/ジリアン・マーフィー
デニス・マトヴィエンコ/ジョゼ・マルティネズ/本島美和
エルヴェ・モロー/山本隆之/吉岡美佳/ルシア・ラカッラ
アレクサンドル・リアブコ/スヴェトラーナ・ルンキナ/タマラ・ロホ
イワン・ワシーリエフ

人選は、外国人ダンサーに関しては、若手も増やしていてほぼ順当。シクリャーロフ君だけが、なぜ載ってるのか謎だけど。日本で一度も全幕主演をしていないのに。彼を載せる代わりに、ファジェーエフかメルクリエフでしょう?フリ-デマン・フォーゲルの1ページ扱いも謎です。

日本人ダンサーの人選は、基準が謎過ぎ…。上野水香が1ページ使用を始め、本島さんとか青山さんとか吉岡さんとか草刈さんを載せるなら外国人ダンサーをもっと載せて、と思ってしまいます。外国人ダンサーと同一レベルではとても載らないような人たちばかりで。
竹島由美子さんや服部有吉さんなど海外で活躍してる日本人もあまり載ってませんね。中村祥子さん(SHOKOって表記にはすごい違和感があります)と吉田都さんは、K-Balletのゲストだし、崔由姫さんは、日本人ではないし。あと下村由理恵さんのようにフリーの方も載っていないし。ダンスマガジン編ということなので、そういう傾向になるんでしょうかね。

こういうふうに突っ込めるのも楽しみ方の一つかしら(笑)

写真は、最近の公演の瀬戸秀美さん撮影のものが多くて、どれも美しいですね。今年の夏の、ロイヤルやABTの写真までありました。

バレエ・パーフェクト・ガイドバレエ・パーフェクト・ガイド
ダンスマガジン

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NBSからのDM(東京バレエ団)/ジェイソン・レイリーのインタビュー

まだチャリティガラの感想は途中なのですが、なかなか書けないので、軽く書けるエントリから。

今日はレニングラード国立バレエの「華麗なるクラシックバレエハイライト」を観に行きました。メルクリエフの美しいマント姿と、ステパネンコ姐さんの華のある「ライモンダ」を観た直後では、シャドルーヒン&シェスタコワの「ライモンダ」はちと厳しかったです。シェスタコワは良いバレリーナですが、ニキヤやジゼルのように、姫ではない役の方が似合いますよね。そして実は草刈さんの古典を観るのは相当久しぶりだったわけですが、想像した以上に(以下自粛)でした。バレエって言うのはアンドゥオールが基本なんだな、というのを改めて認識しました。コルプがいかに素晴らしくても、パートナーが彼女では(自粛)。コルプのファンであるだけに、そして彼自身の出来も非常に良かっただけに、余計つらかったです。

家に帰ったらNBSから祭典会員向けDMが来ていました。その中に、東京バレエ団 マラーホフ版「眠れる森の美女」 のチラシが入っていました。優先予約の案内も。

東京バレエ団 マラーホフ版「眠れる森の美女」

◇ヴィシニョーワ/マラーホフ
1月8日(木)  6:30pm~
1月10日(土) 3:00pm~

◇小出/後藤 カラボス=マラーホフ
1月9日(金)  6:30pm~

ところが、日程を見ると、思いっきりそのレニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)とかぶっているんですね。ヴィシニョーワ&マラーホフの日の片方はコルプ&シェスタコワの「ジゼル」、もう一方の日はポルチェンコ姉弟の「白鳥の湖」と重なっています。今回、縁がなかったってことなのかしら?9日の方も「ジゼル」と重なっているんですが、そっちの日程のミハイロフスキー「ジゼル」のチケットは取っていないんですよね。というわけで、マラーホフのカラボスを観に行こうかしら。

「ベジャール・プロ」 (「ボレロ」「中国の不思議な役人」ほか)

◇「ボレロ」ギエム出演日
2月6日(金)7日(土)8日(日)9日(月)
上野(10日)後藤(11日・祝)

「中国の不思議な役人」首藤康之出演日
2月9日(役人)10日、11日(娘)

こちらも、いろいろと重なっています。チケットを取る時には気をつけましょう!

6(金) 19:00 東京バレエ団「ベジャール・ガラ」 ゆうぽうとホール
19:00 モンテカルロ・バレエ『La Belle』 オーチャードホール

7(土) 14:00、19:00 モンテカルロ・バレエ『La Belle』 オーチャードホール
18:30 東京バレエ団「ベジャール・ガラ」 ゆうぽうとホール

8(日) 15:00 東京バレエ団「ベジャール・ガラ」 ゆうぽうとホール
15:00 モンテカルロ・バレエ『La Belle』 オーチャードホール

9(月) 19:00 東京バレエ団「ベジャール・ガラ」 ゆうぽうとホール

10(火) 18:30 新国立劇場『ライモンダ』 新国立劇場
19:00 東京バレエ団「ベジャール・ガラ」 ゆうぽうとホール
19:00 モンテカルロ・バレエ「ミックスプロ」 オーチャードホール

11(水) 14:00 新国立劇場『ライモンダ』 新国立劇場
15:00 東京バレエ団「ベジャール・ガラ」 ゆうぽうとホール
15:00 モンテカルロ・バレエ「ミックスプロ」 オーチャードホール

12(木) 18:30 新国立劇場『ライモンダ』 新国立劇場
18:30 ハンブルク・バレエ『人魚姫』 NHKホール

13(金) 18:30 新国立劇場『ライモンダ』 新国立劇場

14(土) 14:00 新国立劇場『ライモンダ』 新国立劇場

15(日) 13:00、18:00 ハンブルク・バレエ『人魚姫』 NHKホール
14:00 新国立劇場『ライモンダ』 新国立劇場


NBSといえば、シュツットガルト・バレエのジェイソン・レイリーのインタビューが掲載されていて、とても面白い内容となっています。彼は個性的なダンサーですね。先日のHopes and Prouds of Japan Galaで来日した時に、取材されたものでしょうか?
http://www.nbs.or.jp/blog/0811_stuttgart/2008/09/post-2.html

「眠れる森の美女」のハイライト動画も。
http://www.nbs.or.jp/blog/0811_stuttgart/2008/09/part1.html

シュツットガルト・バレエの「眠り」もナチョ・ドゥアトのスペイン国立ダンス・カンパニー「ロミオとジュリエット」と重なっているのですよね。

彼は「オネーギン」についてこう語っています。
「たとえば3幕では、僕が一時期狂ったようにある女性に恋をして、だけど上手くいかなかったときの経験、その心が粉々に破壊されたときの経験を思い出して、オネーギンに入れ込むようにしてる。でも本当にこれは数あるクランコ・バレエのなかでも最も難しい役柄のひとつ。あまりにも多層的で、ひとつ演技を間違えると観客にオネーギンの心の繊細な機微が届かなくなる。だからこの役にはいつも100%の集中を持って臨むようにしてる。だからオネーギンを演じたあとは、彼の魂が自分のなかから抜けきるのに丸一日かかることもあるぐらいだよ。」

ジェイソンのカラボスは観られないのですが、「オネーギン」は観る予定なので、とっても楽しみです。

2008/09/03

9/1新潟県中越沖地震チャリティー バレエガラコンサート (前半)

<第一部>
眠れる森の美女:寺島ひろみ、アンドレイ・メルクリエフ
薔薇の精:さいとう 美帆アントン・コルサコフ
NE ME quittes pas~行かないで:アンナ・パシコワ 
白鳥の湖 2幕:ダリヤ・スホルコワ、シリル・ピエール
ジプシー:高橋晃子
ライモンダ:ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ
くるみ割り人形 金平糖の精のヴァリエーション:アリヤ・タニクパエワ
シェヘラザード:ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ

<第二部>
アダージオ:アンドレイ・メルクリエフ
マタハリ(日本初演):ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ
海賊より:寺島まゆみ、芳賀望
il Pleut:松崎えり、大嶋正樹
カルメン:アンナ・パシコワ、イリヤ・クズネツォフ
ロミオとジュリエット:オクサナ・クチェルク、イーゴリ・イェブラ
瀕死の白鳥:ユリヤ・マハリナ
ドン・キホーテ(組曲):ガリーナ・ステパネンコ、アントン・コルサコフ、
アンドレイ・メルクリエフ、エレーナ・コレスニチェンコ、アンナ・パシコワ、
&ゲジミナス・タランダ、長澤美絵、小川恵瑚他、全員出演予定

<第三部>
Toshi Special Live
アンドレイ・メルクリエフ、高橋晃子、アンナ・パシコワ

新潟県中越沖地震チャリティー バレエガラコンサートも最終日。1週間ほどお祭り状態だったけどやっと終わったという感じ。

当初発表されていた予定より、4演目も減ってしまったのは本当に残念。それも、好評だった「アゴン」「Portrait in Red~赤の肖像」「白鳥XXI」そして「ソナチネ」が観られなかったのだから(イェブラ&クチュルク、ピエール&スホルコワという今回予想をはるかに上回る出来だった二組だったし)。

Toshiのライブも、メルクリエフらが即興で踊って見せた1曲目はいいとしても、2曲、3曲目と聴くのは正直なところ苦痛だった。アンプを通した音が割れ気味で大きすぎたのと、曲の調子が同じようなものだから…。個人的な好みでいえば、私は日本語で歌われる歌は好きじゃないのだ。奈良公演では聴かないで出て行っちゃったけど、正解だったかな。ドン・キホーテ組曲の余韻と興奮が残っているうちに。1曲目が終わったところで出るべきだったかも。ただ、Toshiという人自身は、逆境の中で頑張って復活していて立派だと思うし、声そのものは魅力的だと思うんだけど。

バレエの演目を削るくらいなら、Toshiの曲の数をせめて減らせばよかったかなと思ってしまった。奈良や桶川は、休日公演だったので、早い時間からスタートしたけど、最終日である東京の公演が平日だったこともあり、長時間の公演ができなかったのだろう。

それはさておき、第一部と第二部は、めちゃめちゃ充実していて楽しい公演だった。最終日ということで、ダンサーたちも持てるすべてを出し切ってくれた。もう2回も感想を書いているので、個別の感想は書かないけど、また印象を書き加えていきたいと思う。

ブログに書いてあったので、やっと「ドン・キホーテ組曲」の第二ヴァリエーションを誰が踊っているかが判った。NBAバレエ団の小川恵瑚さん。今回主催のひとつである新潟の高野廣子バレエスタジオの出身者のようだ。

それから、ゲネプロでは元気に「海賊」のアリを踊っていたミハイル・マルテニュクが、肩を痛めたということで「海賊」が中止になってしまったのがすごく残念。「ドン・キホーテ組曲」ではイリヤと悪ガキコンビを組み、アダージオで見事なトゥールザンレールを見せてくれた。肩の負傷なので、脚は大丈夫だったみたい。せっかくのテクニックを東京の観客に披露するチャンスだったから、彼もとても残念がっていると思う。


眠れる森の美女:寺島ひろみ、アンドレイ・メルクリエフ

この演目はゲネプロも観たけど、タランダからのダメだしもほとんど入っていなかった。コーダでのひろみさんのピルエットがすごくゆっくりだったけど、キラキラ感はすごかった。メルクリエフはまさにプリンス・チャーミング!ヴァリエーションの出来も、桶川のときより良くて美しかった。二人とも指先がとてもきれい。

薔薇の精:さいとう美帆 アントン・コルサコフ

アントン、今日もちょっときつそうなところがあったんだけど、桶川よりは調子が良かったのではないかな。ちなみに、背中のテーピングは怪我ではないそう。奈良から1週間で、浮き輪もちょっと大きくなっちゃった気がするけど、相変わらず腕の動きはとても柔らかくてきれいだし、ふわっと跳んでいるし、ある種の才能のきらめきを感じさせるのだ。紅顔の美少年風で赤い衣装や髪の薔薇の花が似合うし。でもNYで観た時の方が細かった。しかし、アントン、ホントに不思議な色気があって、どこか惹かれてしまうんだな。
さいとうさんの少女は、すごく愛らしいんだけど、目を開いて笑っていることが多くて、眠っていないな~と思ってしまった。

NE ME quittes pas~行かないで アンナ・パシコワ

美しいアンナさんによるソロ。長身なのに凹凸はしっかりあるプロポーションも、柔軟性や身体能力も実に見事。青いロングドレスを翻して、カッコよく踊ってくれた姿に見とれていたら終わってしまった。

白鳥の湖 2幕:ダリヤ・スホルコワ、シリル・ピエール

派手さはないけど、愛がある二人。友達が、ダリヤは顔がちょっとギエムに似ているのでは、と言っていたけどたしかにちょっと似ているかもしれない。ピエールのサポートが毎度ながらとても丁寧。ダリヤを一番美しく見せるポジションへと導いているのが判る。ちょっとだけ先生モードが入っていたと思う。

ジプシー:高橋晃子

桶川でルースカヤを踊る予定だったのが、ゲネプロで怪我をしてしまい降板。今回は、ポアントを履かない踊りということで、「ドン・キホーテ」の2幕ジプシーの若い女の踊りを踊ってくれた。ガラで踊られるのは珍しいパート。東京バレエ団が踊っているのと同じ振付だと思う。高橋さんはキャラクターが得意ということで、非常に情熱的で火傷しそうな踊りを見せた。この役にしてはちょっと笑顔を見せすぎかな、と思ったけど2日前に怪我をしても舞台に立てたのが嬉しかったのかな。

ライモンダ:ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ

奈良ではちょっと危なっかしかったアンドレイのリフトもすっかり安定していたし、マント捌きも、気にならなくなっていた。絵から抜け出たような美しい騎士だな~としみじみ思う。マントをなびかせて駆け抜ける姿の麗しいことといったら。ステパネンコ姐さんも貫禄はあるものの、高貴な輝きを放つ姫そのもの。アダージオだけなのが惜しいけど、アダージオだけでこの世界を作り上げることができるのが、さすが。

「くるみ割り人形」 より金平糖の精の踊り:アリヤ・タニクパエワ

ミーシャとの「海賊」の予定が、くるみ割り人形の金平糖の曲が流れてきて、白いチュチュ姿のアリヤが現れた。ミーシャ、ゲネプロでは元気だったのに怪我か(涙)。アリヤの金平糖の精、桶川ではオレンジピンクの、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」で着るようなドレスだったのを、奈良のときと同じチュチュに戻していた。ヴァリエーションだけでちょっと気の毒だったけど、テクニックは見事だし、キラキラ感もあって素敵だった。東洋的な容姿も可愛らしい。

シェヘラザード ユリヤ・マハリナ&イリヤ・クズネツォフ

奈良も桶川もイリヤは違うパートナーで踊っていたけど、ついに真打マハリナ登場。ゲネプロでこの二人の踊りは少し観ていたのだけど、衣装もつけていないのにぞくぞくするほどの色っぽさだった。マハリナのゾベイダは完璧なハマリ役。あでやかで、誘惑的なのだけど可愛らしさもあって、女神様のよう。

そんなマハリナに、イリヤの奴隷は身も心も捧げている様子。エレーナ・コレスニチェンコと踊った時には挑発的で獰猛さも見せていたイリヤが、ここでは子犬のように従順な奴隷で、まっすぐで火傷しそうなほどの熱い愛をゾベイダに捧げて、せつない子犬のまなざしを向けていた。絶対に報われることのない愛を。本気で彼女を愛しぬいているんだわ~。今回、イリヤは「マタハリ」「カルメン」と悪い女に翻弄される役どころばかりなのだけど、一つ一つの演技が違うところが本当に凄い。踊りの方は絶好調とは言えなかったし、音楽も編集されていて桶川の時より短かったけど、その分、役者振りを発揮してたまらなく魅力的だった。この二人が全幕を踊る「シェヘラザード」が観たい!もちろん、シャリアール王はタランダで。

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