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« 新国立劇場 来シーズンメンバー発表(古川さん加入)/エイフマン・バレエNY公演 | トップページ | ロイヤル・バレエのキャスト変更 »

2008/09/20

ニュー・アドベンチャーズ「ドリアン・グレイ」Dorian Gray その1

9月12日より14日まで、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で、マシュー・ボーン振付のニュー・アドベンチャーズ「ドリアン・グレイ」を観て来ました。完全にシングルキャストで、回数ごとの感想もほとんど同じ(席の位置などは日によってちょっと変わったけど)なので、まとめて感想を書きます。

実はサドラーズ・ウェルズに行くのは初めて。エンジェルという地下鉄ノーザンラインの駅から歩いて5分程度の、緑もあって落ち着いた街にある。伝統ある劇場だけど、今の建物はガラス張りで、明るくモダンな印象。3階席まであるのだけど、それほど大きくない劇場なので、後ろの方でも観やすそう。今回はオーケストラ・ピットをつぶして座席にしており、舞台装置が回転するためにかさ上げをしているので、前の方の席だと観づらく、その分チケット代が安くなっている。

Dorian Gray
Director and Choreographer Matthew Bourne
Set and Costume Designer Lez Brotherston
Composer Terry Davies
Lighting Designer Paule Constable

Dorian Gray Richard Winsor
Basil Hallward Aaron Sillis
Lady H Michela Meazza
Cyril Vane Chris Marney
Edward Black Ashley Bain
Doppelganger Jared Hageman
Ensemble Chloe Wilkinson Drew McOnie Ebony Molina Joe Walkling Shaun Walters

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オスカー・ワイルドの有名な小説「ドリアン・グレイの肖像」を下敷きにした作品。原作をきちんと読んだわけではないのだけど、同行した友達がちょうど原作を読み終わったところで、おおよその設定は教えてもらった。また、以前ABTでロバート・ヒルが振付けた「ドリアン」という1時間の小品を観たことがあった。

原作との違いとしては、設定が現代となっており、ドリアンは美貌を見出されてモデルになったウェイター。彼を見出したバジルは、原作では画家だけどここではファッション・カメラマン。快楽主義の権化ヘンリ・ウォットン卿は、ファッション界の大物、レディHという女性に替わっている。そしてドリアンが弄んで捨てた女優シビルは、この舞台化では、男性バレエダンサーのシリルとなっている。原作では、不老不死で美貌を保ち続けるドリアンに対し、彼の肖像画が醜くなっていく。この舞台では、ドリアンをモデルにバジルが撮影した香水の広告ポスターが破れて血を流すとともに、ドリアンの暗黒面を象徴するドッペルゲンガーが登場するという設定になっている。

マシュー・ボーンと、彼の右腕としてずっとプロダクションデザインを行ってきたレズ・ブラザーストーンのマジックは健在。白い壁の舞台の上手には、グランドピアノがあり、時には5人のミュージシャンが演奏を行う。そして舞台の中央には、回転する壁。片側は白くてスタイリッシュ、シンプルな印象。もう片側は、錆びたような色の、工場のような壁である。場面転換のときに、この壁が回転して、時には撮影スタジオ、時にはレディHの寝室、時にはクラブ、オフィス、劇場と変身する。非常に巧みである一方、場面転換があまりにも多いので、めまぐるしく忙しすぎる印象があるかもしれない。衣装も、モノトーンを基調としており、ドリアンは白、バジルやレディHは黒でグラマラスな印象。特に、ミケーラ・メアッツァは、長身、細いウェストに長く美しい脚、ショートヘアに似合う大人のミニマムなドレスをまとい、洗練された美しさを強調していた。男性ダンサーの多くは、白いブリーフ一丁というシーンも多かったけど。

ところで、一見スタイリッシュを装っていながら、実のところマシュー・ボーンは悪趣味すれすれの、キッチュなカリカチュアや黒く皮肉な笑いが得意である。冒頭に登場するモデルたちの撮影風景やセックス&ドラッグの風景、クラブでのダンスシーンやセレブレティのライフスタイル、テレビ番組などの風刺的で意地の悪い描写に、そのへんがよく出ている。非常に空虚で、しかも打ち込み系ロックの音楽とあいまって、かえってダサい印象すらある。自らの若さや美への執着ではなく、貪欲なファッション業界と消費社会の犠牲になってドリアンが破滅していったという印象を与えられる。

マシューの過去の作品、特に「白鳥の湖」からの引用も随所に見られる。若くはないけども、色香はたっぷり、強くしたたかなレディHは、「白鳥の湖」の女王のよう。その右腕であるエドワードは執事。劇場で「ロミオとジュリエット」を観るシーンは、ロイヤル・ボックスのシーンに似ているし、白衣に手袋の人物たちが、ドリアンをスーパーモデルへと変身させるところは、「白鳥」の4幕のロボトミーシーンを思わせる。

音楽は、録音と生演奏の併用。上記のように、基本的にはオリジナルスコアで、打ち込み系のジャズロックが基調で、ところどころテルミンを使っているのが面白い。生演奏の方は、ピアノ、ベース、パーカッション、ギター、ドラムで5人編成。舞台の裏で演奏していることもあれば、観客から見えるところで演奏していることも。1幕と2幕の冒頭で「眠れる森の美女」のオーバーチュアとローズ・アダージオ、観劇シーンではプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」の1幕の曲を使用している。そしてカーテンコールの終わりには、アダム・アンドの「プリンス・チャーミング」が使われているのだけど、この曲こそが作品の世界観に最もマッチしているんじゃないかと思った。

舞踊言語については、クラシック・バレエ的なところは少なくて、「ロミオとジュリエット」の劇中劇シーンで、ロミオを演じるシリルが白タイツ王子として踊っているところくらいか。登場人物が全部で11人と少なく、群舞というのも少なくて、よりミュージカル的なところとコンテンポラリーダンス的なダンスといえるため、クラシックバレエ好きの人にはもしかしたら楽しめないかもしれない。ダンサーたちも、男同士のパ・ド・ドゥが多いこともあって身体能力は皆優れているけど、クラシック・バレエのトレーニングを受けている人は約半数といったところだろうか。

休憩1回を入れて2時間程度と速い展開で進み、上演中はとても面白く観られる作品。と同時に、批評家ウケが必ずしもよくなかったというのも理解できる作品ではある。まず、登場人物の間に流れるエモーションの描写が希薄だ。感情を露わにするのは、ドリアンに惚れこんだバジルだけである。ドリアンがかくのごとく破滅するほどの悪徳の持ち主なのか、と訊かれるとそうは思えない。欲望に溺れ、美と若さに執着するのは、現代人の多くが持っている要素なのだから。これはひとつの現代の神話なのだ。空虚な作品であるという批判もあったが、それは、現代が空虚な時代であるということを反映しているのであって、「ドリアン・グレイの肖像」という作品の現代版を作るうえでは避けて通れないものだろう。また、独特のチープさ、キッチュさこそ、マシュー・ボーンの持ち味でもあるのだ。

Times紙のインタビューで、マシュー・ボーンはドリアンの死を、故ヒース・レジャーの悲劇的な最期に重ねていた。オーストラリアから出てきた素朴な青年がハリウッドスターになり、栄光をつかむものの、スターダムの魔力に取り付かれて孤独になり、若くして命を落とすという悲劇。

このドリアンには、悪徳は感じられず、野心に隠された傷つきやすい魂があるだけだった。そして、それゆえに彼は破滅していく。まさに、現代のコマーシャリスム、若さと美への執着がもたらした悲劇と言える。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

早速のレポ有難うございます!興味深く読ませて頂きました。
良くも悪くもマシューらしさが溢れた作品なのでしょうね。
パンツ一丁って聞いて、Spitfireを思い出してしまいました(≧∇≦)
クリスはロミオを演じたのね!白タイツ姿なんて、うう、見たいです。
いずれにせよ万人受けする作品というわけでは無さそうですが、
今マシューがやりたいことが詰まっているのでしょうね。
劇評はかんばしく無かったようですが、Sold Outという事は
観客の受けは良かったのでしょうね。
ミケーラのレディH、想像出来ますね~。普段からファッション
にこだわりのある美人さんですものね(^-^)

日本に来てくれるのでしょうか。是非来日して小さな箱で熱気
むんむんの中で上演して欲しいものです!


えりさん、こんばんは。
とりあえずざっとした感想はこんな感じで、もう少し突っ込んだものはまた改めて書きますね。
Spitfireは私は見ていないんですよ~。
クリスの白タイツは可愛かったです。そんなものが見られると思わなかったので嬉しかったです。きっとこの作品、日本では受けるんじゃないかなって思いますよ。イギリスの批評家ってめちゃめちゃ辛らつですしスワンだって初演では相当酷評されたらしいので。
ミケーラはホントに美しく、またとてもパワフルなキャラクターで魅力的でした。
小さな小屋で見たい作品ですね。日本からのプロモーターも来ていたらしいので期待したいです。

こんにちは~
早速観て来られたのですね^^
ダンスパートもさることながら、舞台転換の妙も楽しめそうな感じですね。
ミケーラというと、EDWARD SCISSORHANDSでエドワードにモーションかける女の人を思い出します。ヘンリー・ウォットン卿にあたるレディH…客席でとろける自分を想像しつつ(笑)、来日公演が実現するよう祈りたいです。スワンもこのところ飛んで来ず、寂しい…

Elieさん、こんにちは。ご無沙汰してしまってすみません!
急に思い立って観に行きました!すごくあわただしかったですが、観に行ってよかったです!
ミケーラのレディH、とてもセクシーで大人の魅力があって知的でカッコよかったですよ~。きっと客席でとろけると思います(笑)
そうですね、シザーハンズ以来NAの来日がないものですから…聞いた話によると、日本からプロモーターが何社か見に来ていて、上演の打診をしてきたそうなので、期待できると思います。あとは、やはり小さめの劇場で観たい作品なんですよね。シアターコクーンとか。

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