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2008/09/18

9/16 東京バレエ団「ジゼル」

東京バレエ団「ジゼル」
(全2幕)
2008年9月16日(火) 19時開演  会場/ゆうぽうとホール

ロンドンから帰国して空港から職場へと直行、それからゆうぽうとまで行ったのでちょっと大変だったけど、なんとか寝ないで見ることができた。

1幕

小出領子さんは、小柄で可愛らしい容姿から、きっとジゼルが合っているだろうなと思っていたけど、期待通りやはり適役だったと思う。ジゼル・デビューが遅すぎたくらい。まさに純情可憐な村娘という風情で、純粋に一途にアルブレヒトのことを恋しているのがわかる。冒頭の踊りの方は、ちょっと硬さが見られて、小出さんだったらもっと軽やかに踊れるのに、と思う部分もなかったわけではない。しかし、腕の使い方の柔らかさは周囲から際立って美しいし、足音もさせないで、楚々として控えめな愛らしさを保っている。

一方、ルグリのアルブレヒト。最初に登場した時から立ち居振る舞いが優雅で、腕の動きが雄弁、エレガントで美しいこと。村人の扮装をしていても出自は隠せない。ウィルフリードに対する態度もやや尊大。が、そんな彼も、可愛いジゼルを前にすると一人の恋する男のようで、盛大に音を立てながら投げキッスを送り、そして優しくジゼルを抱きしめる。椅子取りゲームの時にも、大げさなほど熱く駆け寄ってロマンティックさを見せる。ちょっと遊び慣れている貴族然としたルグリと、いかにもおぼこな村娘の小出さんの組み合わせからして、この二人の恋は実らないのだろうな、という悲劇の予感がする。踊りましょう、と言われても心臓が悪いから踊れないの、と悲しそうに表情を曇らせるジゼル。小出さんの演技は、非常に自然で、わざとらしさが微塵もない。
一方、ルグリはロマンティックでエレガントなのだけど、高慢な部分を隠すことはしていなくて、ジゼルの母ベルタに向ける視線には、明らかに見下した態度が見受けられる。

友達の指摘で気がついたのだけど、東京バレエ団の「ジゼル」のセットは非常に手が込んでいて、良くできている。ジゼルの家の煙突からは、煙が出ているほどだ。遠景には、白い美しい城。

東京バレエ団の「ジゼル」には絶対に欠かせないのが、木村さんのヒラリオン。今回は後藤晴雄さんもヒラリオン役だったはずなのだけど残念ながら見られなくて。木村さんはある意味、世界最強のヒラリオンだと思う。ジゼルのことを一途に愛していて、彼女のことを少しでも傷つけそうな男は許せない。まっすぐで熱い、男らしい男。実は木村さんって、ルグリよりも背が高いし、脚もラインが美しい。ルグリと並んでも見劣りしないし、脚捌きもきれいだし。

パ・ド・ユイットはこの日はセカンド・キャストということもあって、残念ながら見劣りした。大嶋さん、古川さん、長谷川さんが抜けた穴は大きいことを改めて思い知らされる。このメンバーの中では、西村さんが圧倒的にラインが美しくて落ち着いた中にも華があって素敵。一番小柄な小笠原さんも、小さい分大きく跳んでいるし、クラシックのテクニックもしっかりしているので、着地に一回失敗したのが残念だけど光るものがあるなって思った。

ジゼルの狂乱のシーンは、ジゼルとアルブレヒトの間にものすごい勢いでヒラリオンが割って入るところから始まる。木村さん、熱い!恭しく、井脇さんが演じる美しいバチルド姫の手にキスしてつくリ笑いを浮かべるアルブレヒト。いや~狩に出かけていたんだよ、ってマイムが、いかにも誤魔化している様子。バチルドの目線がとても怖い。小出さんのジゼルは、最初は何が起こったのかわからなくて呆然としている。そして、どうやら彼に裏切られていたことに気づき、あまりの悲しみに、静かに、ゆっくりと壊れていく。花占いをしながら、少しずつ、正気を失っていく。ジゼルが狂っていくプロセスは本当にゆっくりとしているし、大げさな表現はまったくない、それだけに、いまだ少女にしか見えないジゼルが哀れに見えてしまって、涙を誘う。やがて髪を振り乱して笑い出すけれども、静から動への移行がとても自然で、いつのまにか壊れてしまっており、愛するアルブレヒトの姿ももう見えなくなっている。そしてウィリたちの招きに反応するジゼル。小出さん、もう完全にジゼルそのものを生きている。

アルブレヒトは釘付けになったかのように、その場を動けなくなっておろおろするばかり。自分を激しく責めたてて、背中を大きく反らせて泣き崩れるヒラリオン。そしてようやくアルブレヒトがジゼルに駆け寄った時、ジゼルは命を落とす。ジゼルの亡骸をきつく抱きしめるものの、ベルタに「あっちに行って」と突き飛ばされて、走り去るアルブレヒト。カーテンが再び開いても、仰け反ったままの木村さんが素敵。

2幕

東京バレエ団の「ジゼル」では、ジゼルのお墓がとても立派なつくりになっている。ヒラリオンが一生懸命建ててあげたのかな。そして人魂!怯えて走り去るヒラリオン。高木さんのミルタは、最初のアラベスク・パンシェはすごく脚が高く上がっていて、非常にきれいなのだけど、その後は足音が大きめで、動きも滑らかさが足りない。動きが滑らかにならない理由のひとつには、今回のオーケストラの演奏がすごく長く音をとっていて、踊りにくかったのではないかと思う。演奏自体もあまりほめられたものではなく、ダンサーにとっては少々気の毒だった。井脇さんのミルタが素晴らしいわけだけど、次の世代も育って欲しいものね。高木さんのミルタは、上半身の動きはきれいなのだけど怖さが足りない。ドゥ・ウィリの二人は長身でプロポーションが良いのだけど、まだまだという感じ。小出さんは今までずーっとドゥ・ウィリを踊っていたんだよね。ウィリたちのコール・ドはよく揃っているんだけど、1,2,3って感じに合わせているのがわかっちゃっていて、群舞で左右が交差するところも、ずしんずしんと行進しているかのようで、霊というよりはキョンシー軍団のように思えてしまう。その分、怖さは感じられるのだが。

ウィリとなった小出さんのジゼルは、アルブレヒトへの想いを残したまま世を去ったのがよくわかる。ひんやりとはしていなくて、体温が温かい、人間味のあるウィリ。髪型のせいもあって丸顔が強調されており、ウィリになっても可愛らしい。だけど、決して子供っぽくはないというか、大人の悲しみを知った女を感じさせた。出だしは若干回転でぐらついていたようで少し不安定。

百合の花束を抱えたルグリのアルブレヒトが、深い後悔に沈んで歩み入る。もう村人に偽装しなくていいので、貴族オーラが全開となっており、黒いマントから覗く紫色のタイツに包まれた脚もエレガント。美しい立ち姿。心から、ジゼルを傷つけ死なせてしまったことを悔やんでいて、貴族としての気品を保ちながらも、悲しみの底で魂がさまよっているのが見える。そこへジゼルがやってくる。彼女の姿は見えないけれども、気配で確実に彼女を感じている。ふわりと、体重をまったく感じさせないで浮いているかのようにジゼルを高くリフトする。そしてデュエット。小出さんは音楽性に優れているので、ある程度体温や体重は感じさせながらも、柔らかく、粘りを感じさせながら舞う。二人とも足音はまったくさせないのが見事。ミルタやドゥ・ウィリの足音は大きかったのに。

ウィリたちに囲まれて、ヒラリオンが追い詰められる。ここでの木村さんの熱演振りは、毎度のことながら凄い。踊り狂わされながらも、あくまでも脚捌きは美しく、高いジュッテと伸びたつま先、きれいに5番に入るアンレール。ミルタに幾たびと命乞いをするものの、冷たく突き放される。明らかにウィリたちは彼をいたぶることに喜びを感じているのだけど、無表情なのが怖い。そしてついには、ポイっとウィリたちに湖の中に捨てられる。やっぱり木村さんは世界一のヒラリオンだ。

ガラでよく踊られるジゼルのソロ。小出さん、前半のスーブルソーは良かったのだけど、後半のアントルシャしながらホッピングするところは、ちょっと不調だったかもしれない。でもジゼルはテクニックよりも雰囲気が重要な役だから、その点においては満足できた。心血をこめて、ジゼルを演じ踊っているのがよくわかる。それも、あくまでもナチュラルに、ジゼルそのものになりきって。

ミルタたちの次なる獲物として、アルブレヒトが踊らされる。ジュッテ、アントルラッセ、トゥールザンレール、ランベルセ。とても40歳をとっくに過ぎたダンサーのものとは思えない、びっくりするほど高くて美しい跳躍。トゥールザンレールから倒れこんだ時には、嵐のような大喝采が起きて、倒れたルグリはその喝采に応えて再び倒れる。そして大きなジュッテで上手から下手へと駆け抜ける。

次にアルブレヒトは対角線上、ミルタの魔力で引き寄せられるようにブリゼを繰り返す。世界バレエフェスティバルでコジョカルとルグリが共演した時の、ルグリの素晴らしく美しいつま先が印象的だったブリゼのシーン。そこで、この日、ルグリが途中でブリゼをするのをやめてミルタのところまで歩いていって懇願をしたのだ。自分の命乞いというよりは、ジゼルをこれ以上苦しめるのはやめて欲しいという様子。2回目のブリゼはなしで途中からは、アントルシャ・シスの繰り返し。それも、全部右脚が軸になっていた。ジゼルと対になって左、右へとジュッテアラベスクするところも、片方だけしか跳ばなくて。怪我でなければ良いのだけど…。とはいっても、どこかで止まるとか痛そうにすることはなく、そのまま踊り続けてはいたけど。

最後に踊り疲れていよいよもうダメ、とアルブレヒトが昏倒したところで、朝を告げる鐘が鳴る。アルブレヒトが救われたことを知ったジゼルの安堵に満ちた表情には、母のような慈愛が感じられた。そして、一生分の愛を込めてのアルブレヒトの抱擁。手を離し、墓の向こうへと消えていくジゼル。正面を見据えたアルブレヒトは、ジゼルと今度こそ永遠の別れをしてしまったという悲しみと同時に、新しい生を得たという希望を感じさせてくれた。残念だったのが、幕が下りるのがあまりにも早かったこと。もう少し、ルグリの最後の表情を見て余韻に浸りたかった。

もしかしたら脚を怪我したかもしれないのに、幾たびものカーテンコールに笑顔で応え、小出さんの手にキスをしたルグリ、素敵だった。そして小出さんのジゼルも素晴らしかったと思う。初役であった現時点でもこれだけ優れた表現をできるのだから、これからどんな風に成長していくのか、楽しみ。またルグリさんと「ジゼル」で共演する機会があればよいのだけど。


ジゼル:   小出領子
アルブレヒト:   マニュエル・ルグリ
ヒラリオン:   木村和夫

―第1幕―
バチルド姫:   井脇幸江
公爵:   後藤晴雄
ウィルフリード:   野辺誠治
ジゼルの母:   橘静子
ベザントの踊り(パ・ド・ユイット):   西村真由美 - 横内国弘、乾友子 - 宮本祐宜、阪井麻美 - 梅澤紘貴、河合眞里 - 小笠原亮
ジゼルの友人(パ・ド・シス):   高木綾、奈良春夏、田中結子、吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵


―第2幕―
ミルタ:   高木綾
ドゥ・ウィリ: 奈良春夏、田中結子

指揮:   アレクサンドル・ソトニコフ
演奏:  東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

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コメント

当日はお久しぶりでした。今回は行けなくなった友人の代わりにマラーホフと小出さんの日と「スーパーBレッスン」も鑑賞することになりました。しかも「ジゼル」は2列目と3列目!おかげで二大ダンスール・ノーブルの演技をじっくり堪能出来ました。
ルグリ氏は小出さんとの共演をとても楽しんでいたようでしたね!前回よりも本気でジゼルを愛するアルブレヒトに見えました。2幕のブリゼやアントルシャ・シスのところはアレっと思いましたが、その後の演技には影響しないで良かった。ウィリ達が去った後、階級意識もなく一人の人間としてジゼルの魂と触れ合っているアルブレヒトを見て、ジゼルという物語の魅力を改めて知る事ができました。他人への愛や思いやり、尊敬を知ったアルブレヒトは、いい領主になったでしょうね。小出さんの丁寧な踊りと演技もとても素敵でした。特にウィリとなって最初のソロでは、あまりにフレッシュで浄らかなウィリの誕生に胸を打たれてしまいました。他の悲しいウィリ達のように人を殺めないで天国へ旅立った事でしょう。2幕のウィリ達が左右に交差する見せ場は、今回は席が前だったのもあって「大迫力」でした!以前にレッスンでアラベスクで前に進む練習を行ったとき、先生が顔をひきつらせて「皆さんのはゴジラの行進のようです!」と叫んだのを思い出しましたが、実際は難しいのでしょうね。「スーパーBレッスン」では、二言目には「音楽的には・・・」と音の取り方を説明していたルグリ先生。魅せて伝える踊りってこうやって作られているんだと垣間見る事が出来ました。こちらも楽しかったです。

クロードさん、こんばんは。
先日は会場でお会いできて嬉しかったです。その日の朝に帰国していて、時差ぼけと疲れでちゃんとお話ができなくて申し訳ありません!マラーホフ&小出さんの日、そしてレッスンも見学できて幸せな一週間でしたね♪
そうそう、ウィリたちが去って、一人の男性としてジゼルを愛しているアルブレヒトの姿が本当に素敵でしたね。小出さんの清らかなウィリも、心打たれるものがありましたよね。クロードさんの解釈、一つ一つものすごく納得してしまいます。またゆっくりとお話したいですね!

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