ダンスマガジン11月号
急に寒くなったもので、体調を崩し気味です。蕁麻疹とか睡眠障害、腕の痺れなどなど…今後どれくらい定期的に更新できるかわかりませんができるだけ頑張ります。
ちょっと遅くなりましたが、ダンスマガジン11月号が出ました。表紙のマチュー・ガニオのロミオは相変わらず麗しく、脚がとっても長いですね。つま先もとてもきれいです。
ノイマイヤーとハンブルク・バレエ特集がとっても充実していて、21ページもあります。ニジンスキー・ガラのカーテンコールが見開きになっているのがいいですよね。端っこにはルグリの姿もあります。草野洋介さんは、このメンバーの中でも背が高いのがわかります。
三浦雅士編集長の渾身のノイマイヤー論、気合が入っています。ディアギレフのバレエ・リュス、その源流であるプティパのクラシック・バレエ。そしてバレエ・リュスからチューダーの心理的バレエ、そしてシュツットガルト・コネクションというべき、マクミラン、クランコといった物語バレエの流れを引くノイマイヤーという流れが理解できます。(それがまたマイヨーやドゥアトへとつながっていくわけで)
「人魚姫」という作品についても細かく語られています。アンデルセンという人物の隠された秘密、その悲しい恋愛が人魚姫の悲劇へと昇華されていったわけです。そこから、ノイマイヤーが、「人魚姫」のみならず、「幻想・白鳥の湖のように」「椿姫」「ニジンスキー」「冬の旅」「かもめ」「ヴェニスに死す」と、彼の作品の多くは、主人公がノイマイヤー自身の分身となっているというのが、彼の芸術世界を創り上げる大きな要素となっていると三浦氏は読み取っています。だからこそ、彼の振付そのものが、主人公の思想と感情を完璧に表現するものとなっていると。
また、主要なダンサーたちの紹介や、主な作品の紹介があるところも嬉しいところです。「時節の色」は正直言って彼の作品の中では駄作の部類に入ると思いますが…。
締めくくりは、三浦氏の思い入れたっぷりの、ノイマイヤーとの対談。ノイマイヤーが衣装や照明の重要性について語っているのがとても面白いです。特に人魚姫の尾ひれを表現するために、日本の袴を使ったという発想がすごいですね。
「熱望。何かそれ以上のものでありたい、そのためにさらに苦しみ、さらに与える、それが愛なのです」
「人魚姫」が楽しみになってきました。
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「エトワール・ガラ」の記事も充実していました。写真もたくさん掲載されています。「マーラー交響曲第5番」のシルヴィア・アッツオーニの夢見るような視線が美しいです。「カノン」のマチューのいるような視線も。
また、インタビューもそれぞれ面白かったです。マリ=アニエス・ジロによると、ラコットは彼女をドラマティックなダンサーと見ているとのことで、マクベス夫人や「トスカ」を演じて欲しいと。ぜひ見てみたいですよね。今回は古典からコンテンポラリーまで披露したわけですが、スタイルの違う踊りを毎日踊るのはとてもハードで、普段はこんな危険なことはできないそうです。そして、「エトワール・ガラ」はまた開催される予定であることを知ることができたのは嬉しいことですね。
今回のプロデューサーのバンジャマン・ペッシュは、ベジャール・プロで「火の鳥」「春の祭典」を、そして「アルルの女」などを踊る予定なのだそうですが、「オネーギン」ではレンスキー役の予定なのだそうです(本人はオネーギン約を希望しているそうですが)。バンジャマンこそ、オネーギンにぴったりなダンサーだと思うんで、希望がかないますように!エールフランスのマイレージで、GWのパリ便は確保済みなんです。
イリ・ブベニチェクによると、今回大好評だった「カノン」はロベルト・ボッレも踊ったことがあるのだそうですね。さらに、今回の公演を観たルグリも踊りたいと言ってくれたとか。今回の作品の中でも一番私も好きだった演目でした。イリは、大バレエ団に全幕バレエを振付けるのが夢なのだそうです。今は「椿姫」や「マノン」のような物語バレエを振付ける人はほとんどいないけれども、その困難に挑戦したいというのは頼もしい言葉です。さすが、ノイマイヤーの元にいたダンサーですね。ドレスデン・バレエの来日予定がなくなってしまったのは本当に残念ですが。
マチアス・エイマンは現在178cmで、20歳の今も身長は伸びているそうです。彼は「オネーギン」でレンスキー約を踊るんですね。これも楽しみ!
ところで、マチアスと「ジゼル」、マチューと「白鳥の湖」そしてルグリと「マノン」を踊ったスヴェトラーナ・ルンキナは、ballet.co.ukに載っていたボリショイの香港公演での記者会見 (ロンドン発バレエブログ様経由)によると、おめでたなのだそうですね。マタニティ・リーヴに入るそうなので、年末のボリショイ公演はキャスト変更がありそうです。
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このほかにも、K-Balletのスクールで教えていたヴィヴィアナ・デュランテ、小林紀子バレエシアターの「ラ・シルフィード」の振付で来日していたヨハン・コボー、そして「The Hopes and Proud of Japan Gala」で来日していたクリスチャン・シュプック(「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」の振付家)らのインタビューも面白かったです。
コボーも、ロイヤルのために50分の物語バレエを振付けるんですね。さらにイーサン・スティーフェルとのプロジェクトもあるそうだし、キエフでは「Kings of the Dance」公演がまた行われるんですよね。
ミハイロフスキー劇場の「スパルタクス」「ジゼル」ほかのロンドン公演評、そしてアイスショー「眠れる森の美女」のレポートも、期待を抱かせるものでした。「スパルタクス」は絶対に日本公演を実現させて欲しいもののひとつです。
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