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2008/08/03

新国立劇場「ラ・バヤデール」NHK芸術劇場(まだ途中)

8月1日 NHK教育 芸術劇場

ニキヤ:スヴェトラーナ・ザハロワ
ソロル:デニス・マトヴィエンコ
ガムザッティ:湯川麻美子
大僧正:ゲンナーディ・イリイン
王:逸見智彦
アイヤー:神部ゆみ子
マクダヴェヤ:吉本泰久
壷の踊り:真忠久美子
黄金の神像:八幡顕光
影の王国ソリスト:
厚木三杏、川村真樹、丸尾孝子

新国立劇場の「ラ・バヤデール」は別キャストで2回観たけど、ザハロワの主演の日のチケットは譲ってしまったので、こうやってテレビで見られるのはありがたい。バレエ慣れしているNHKのスタッフなので、おおむね観やすい撮影になっていたけど、最前列付近からあおり気味に撮影している時に、指揮者の腕が映り込んでしまったのは残念。それから、7月よりアナログ放送だと「アナログ」というテロップが表示されているのが邪魔だった。ハイビジョンで観るときれいなんだけど、録画するとコピーワンスになっちゃうし、悩ましいところ。

「ラ・バヤデール」という照明の暗い場面の多い作品の性質もあるのだけど、画面が暗くなっていて観づらいところが多かった。1幕の苦行僧たちが踊るところからソロルの登場、それから影の王国のシーン。市販のDVDでもたいていここは暗いのだけど、ハイビジョンの時代になっても、舞台をテレビの画面に再現するのが難しいということだろうか。

新国立劇場のプロダクションは、インドを再現しているということで美術は非常に手がかかっていて美しいのだけど、中間色が中心なので、きらびやかさはあまりなく、良く言えばシックで悪く言えば地味。婚約式のシーンはもう少し派手でもよかったのではないだろうか。婚約式の入場のシーンも、ボリショイやミハイロフスキーでは、ガムザッティは輿に乗り、ソロルは象に乗って登場するのに、ここでは自分で歩いて入場するし。

ニキヤ役のザハロワは、造形がこの世のものと思えないくらい美しい。(亡霊だからこの世のものでもないか)。生の舞台を観る時は顔の表情よりも、脚や腕の動きを観ているわけだけど、テレビで観る場合には細かい表情まで観られる。改めて、ザハロワって顔も本当に美人だな~って思う。その上、長くてよくしなる、カーヴィな脚と美しい甲。背中が柔らかく、長いおみ足がヒョイっと高く上がって5時55分を指している。ニキヤという役が、こんなに脚を高く上げていていいのだろかと思わないこともないし、2幕までは元気が良すぎるのではないかとちょっと思った。でもまあ、ニキヤは舞姫なので、踊りが上手くなくてはいけないからいいのかな。踊りが派手で、完全にボリショイ風になっていたと思う。

演技の方も成熟していた感じで、1幕でのソロルの逢瀬の時の表情は非常に色っぽく、恋する歓びを表現していたと思う。あのシーンでのパ・ド・ドゥは、身も蓋もないことを言っちゃえば、二人が愛をかわしているのを表現していると思うのだけど、以前のザハロワでは考えられなかった、情熱的で官能的な表現が見られたのが良かった。が、相変わらず誰よりもエラそうな気位の高そうなニキヤなのがちょっと笑えた。身分の卑しい舞姫というよりは、お姫様か、神に近く、位の高い巫女という風情。大僧正がその美しさにくらっと来て愛を告白しても、「このあたくしに求愛するなんて100年早いわ」もしくは、「このセクハラ親父、私に話しかけるなんて汚らわしいわ」とでも言わんばかりに、はねつけている。ザハロワ、いつかガムザッティを踊るのを見てみたいと思う。

本物のお姫様であるはずのガムザッティと対決する時も、人の良さそうなガムザッティよりも数倍えらそうな感じで、終始攻勢。ガムザッティに歯向かっていく様子も迫力があって、すっかりガムザッティは気圧されていた。蛇に噛まれた後ですらも、ガムザッティに「あなたがやったんでしょ!言ってご覧!」って怖い顔をしていて、ガムザッティが怯えて逃げちゃうほど。

花篭の踊りでは、花篭を手渡されて、とても嬉しそうな表情を見せるのが印象的。一瞬ごとに変わる、いろいろな感情をこめて踊っているのが良くわかった。新国立の、ニキヤのブルーの衣装がとてもきれい。ボリショイのは臙脂色で地味で野暮ったいけど、このブルーはザハロワの美しさを際立たせている。蛇に噛まれて苦しんだ後(このあたりの演技は、「ジゼル」の狂乱のシーンを思わせた)大僧正から解毒薬を渡され、一瞬逡巡した後、ソロルがそっぽを向いているのを見て絶望してから絶命するところも良かった。

影の王国でのザハロワの際立った美しさは、言うまでもない。ザハロワはちょっと回転系が苦手なので、ヴェールのヴァリエーションは若干もたついていたけど、それ以外は、別世界の、地上ではありえない儚い影のような美を体現していた。

マトヴィエンコは、ザハロワの圧倒的なオーラと比較すると分が悪いけど、私が持っていた印象より、バレエの中の王子的な、優柔不断で若干情けないキャラクターになっていた。踊りのほうも、思っていたよりエレガント系というか。マイムをやる時の腕の動きがすごくきれいだな、と意外な発見をした。絶好調の時のマトヴィエンコはもっと踊れるんじゃないかと思うところがあった。それでも、他キャスト日ではやっていなかった、3幕でのトゥールザンレール6連発は見事にこなしていたし、ザハロワとは何回も組んでいるということもあってか、サポートは上手。文句のつけようもないけど、ソロルは戦士なんだし、最近マトヴィエンコはスパルタクスを当たり役にしているくらいだから、もっと勇壮でもいいんじゃないかと思わないこともない。

印象的なのは、2幕のザハロワの花篭の踊りの時の彼の反応で、生きながら地獄の責め苦を味わっているのではないかという激しい苦悩の表情を浮かべており、ガムザッティとここに座っているのがイヤでイヤで仕方ないという風情。なのに、どうすることもできずに、ニキヤが死んでも駆け寄るものの、そのまま走り去ってしまう。(本編の前に、この「ラ・バヤデール」を改訂振付した牧阿佐美女史が、ソロルがニキヤを抱きしめないまま走り去ってしまうのは、うちだけと胸を張っていたが、そんなことはないと思う。牧女史に言わせると、その後結婚式までやってしまうようなソロルだから、ガムザッティの前でニキヤの亡骸を抱きしめるなんてことはできないはずだということだそうだ)

湯川さんのガムザッティは、気位は高く、気が強そうな反面、実は本当は良い人で、本当のところは気も弱いところを感じさせる。ニキヤが強く出ると、思わずごめんなさい!と言ってしまいそうな感じ。お姫様然とはあまりしていないし、このままでは婚期を逃しそうだから、お願いだからソロルを私に譲って、という悲壮感を感じてしまう。そういうガムザッティ像もありかな、と思う。もう少し華やかさやお嬢様っぽさがほしい気もするけど、女同士の対決後、ニキヤにナイフを向けられ、彼女が逃げた後で見せた「殺してやる」の表情は非常に迫力があり、いい人を怒らせたほうが本当は怖いんだということを思い知らされ、面白いキャラクター作りだと思った。イタリアン・フェッテは若干心もとないところもあったけど、フェッテのほうは難なく踊っていたと思う。この婚約式のシーンは、ABTのオールスターガラで観たばかりだけど、テクニックでも、美貌でもずっと上のはずのミシェル・ワイルズより、湯川さんのほうが印象に残るのだ。

(続く)

お勧めの「ラ・バヤデール」映像

プラテルのキラキラなお姫様ぶりと、ゲランの素晴らしい演技と、イレールのセクシーなソロルが美しい。

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ザハロワのニキヤを比べてみるのもいい。ロベルト・ボッレのソロルは耽美的で、まさにはまり役。

ミラノ・スカラ座バレエ団「ラ・バヤデール」(全3幕)ミラノ・スカラ座バレエ団「ラ・バヤデール」(全3幕)
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