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2008年8月

2008/08/31

8/30 新潟県中越沖地震チャリティーバレエガラコンサート 桶川公演

初めて行く桶川、とにかく遠かった!行きは比較的電車の乗継が良くて、1時間半でいけたのだけど、帰りは2時間かかってしまった。しかも帰りは例によって凄い雨。

公開ゲネプロが12時と芳賀バレエアカデミーから連絡があったので、11時半くらいに到着したら遅れて1時からになったとのこと。バーレッスンとセンターを少々見ることができた。さすがにみんな動きがきれい。3階席からの見学で、オペラグラスを忘れてきてしまったので細かいところまでチェックできなかったけど、一番真面目に取り組んでいたのはシリル・ピエールだった。センターでもピルエットは毎回7,8回は回っているし、トゥールザンレールの着地も美しい。イリヤ・クズネツォフも身体が大きいのに柔らかいし、つま先がめっちゃきれい。寺島ひろみさんや長澤美絵さんも美しいので目を引いた。柔軟性が凄かったのはエレーナ・コレスニチェンコ。あと、この人の動きはなんてきれいなんだろう、と思ったらそれは、ユリア・マハリナだった。参加していなかったのは、メルクリエフ、大嶋さん&松崎さん、イェブラ。イェブラは客席で弁当を食べていた(笑)

芳賀バレエアカデミーでキャスト表を作って配布してくれたのは良かったのだけど、けっこう間違いが多くて。薔薇の精でイリヤ・クズネツォフって書いてあったのにはちょっとひっくり返りそうになってしまった。それと、ゲネプロ中に高橋晃子さんが怪我をしてしまって、今日は降板。桶川市民ホールは新しくてきれい、とても見やすかったのだけど、床がとても硬そうだ。

物販で売っていたDVDは、インペリアル・ロシア・バレエ団の「白鳥の湖」と「ドン・キホーテ」。両方とも、主演がアリヤ・タニクパエワ。「ドン・キホーテ」はキリル・ラデフがバジルだった。PALフォーマット。「ドン・キホーテ」を買って観たのだけど、アリヤのキトリはとても良い!

ところで、奈良から帰ってきてから、右腕がずっとひどくしびれていて、パソコンで字を打つのがとてもキツイ。腕がちゃんと動いてくれない。通っているバレエ教室の発表会が昨日あって(観に行ったけど、出演はしていない)、8月の平日の大人クラスがお休みになってしまったことで、1ヶ月ほどバレエをお休みしていた。運動不足というのもあるかもしれない。というわけで、いつも以上に遅筆です。

第一部

海賊(2幕)アリヤ・タニクパエワ、ミハイル・マルティニュク

アリヤのメドーラは、フューシャ・ピンクのハーレム・パンツ型。気品と愛らしさを備えた、素敵なメドーラだった。ちょっと安藤美姫似?後ろからアリにサポートされてポーズしている姿がきれい。ヴァリエーションは、フィリピエワのときと違っていて、ABTの「海賊」で使っていたのと同じもの。フェッテはゆっくりだけどとても丁寧。
ミーシャのアリ、普通に上手いんだけど、YouTubeでの映像の彼の方が良かったかな。ちょっとお疲れ気味だったかもしれない。彼は、ポーズのきめ方はすごくカッコいいというかツボを押さえている。

ライモンダ ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ

またまた長いマントで登場のメルクリエフ。奈良の時から髪を少し切ったみたいで、麗しさアップ。しかしマントがとても長いので、引っかかるんじゃないかと時々ひやっとしちゃった。全幕の場合にはすぐに外しちゃうみたいなんだけど、ずっとつけたまま踊るのはちょっと大変そう。それでも、そのマントをはためかせて走る姿は美しい~。今回、彼は相当日本でファンを増やしたんじゃないかと思う。ステパネンコのライモンダも、姫らしい気品がたっぷりで、場を支配する力がすごい。そのステパネンコに負けない存在感があるから、メルクリエフも貫禄が出てきたってことかしら。

薔薇の精=さいとう 美帆、アントン・コルサコフ

さいとうさんはとても丁寧に可愛らしく踊っていたけど、最初の登場のところでちょっと躓いたのが惜しい。アントンは、奈良で見たときより丸くなっていて、調子もちょっと悪そう。いっぱいいっぱいな感じだった。それでも、彼の薔薇の精って雰囲気はとっても素敵なのだ。白い肌に赤い頬とくちびる、つぶらな瞳、髪に飾ってある薔薇の花も似合っていて、ギリシャ神話を描いた絵画に出てきそうな、美少年顔。

白鳥の湖(2幕)シリル・ピエール、ダリヤ・スホルコワ

この二人の「白鳥の湖」はやっぱり素敵。シリルはサポートに専念しているけど、非常にサポートは上手いし、愛があるんだな、この二人には。軍服チックな衣装もよく似合う。そしてスホルコワの脚と甲!これだけ美しい脚を持っているバレリーナってそうそういないのでは?痩せすぎてもいなくて、適度に女らしい体型、小さな顔。そして、大人な感じの、悲劇性漂う白鳥で、儚く美しかった。全幕を見られる機会があるといいな。マリインスキーも、良いバレリーナを手放しちゃったんだなって思った。

赤の肖像=オクサーナ・クチュルク

女性一人が踊るコンテンポラリーのソロ作品としては、すごく見ごたえがあって面白い演目。激しく美しく、情熱とほんの少しの狂気がほとばしる。腕をもう一方の手でパシっと叩いたり、クラシックバレエのテクニックがベースだけどマッツ・エックみたいなところもあり。クチュルクもボルドーに移籍して、成熟してさらに魅力的なバレリーナになったと思う。

Rain=松崎 えり、大嶋 正樹

松崎えりさんの振付は、オリジナルな才能を感じさせてくれる。二人とも、決して向き合わないで、同じ方向を向いたり背中合わせになったり。その辺で微妙なすれ違いを表現しているのかと。Rainというタイトルも、雨粒を感じているかのような松崎さんの演技で伝わってきた。大嶋さんの上半身のしなやかな動きがきれい。これからも彼の踊りを観る機会がもっとあるといいな。

眠れる森の美女=寺島 ひろみ、アンドレイ・メルクリエフ

今日は嬉しいことに、ヴァリエーションまでしっかりあった!ひろみさんのキラキラのオーロラは初々しくて愛らしい。それに、腕の動きの微妙なニュアンスもとても丁寧で、柔らかで。音楽性も豊かで、音符を奏でているかのよう。そしてもちろん、アンドレイのデジレも、絵に描いたような王子様。サポートは、一箇所メルクリエフが方向を間違えたみたいだけど、あとは問題なし。ぜひ、新国立劇場でアンドレイをゲストに、ひろみさんの「眠れる森の美女」を上演して欲しいなと思った。

白鳥XXI=イーゴリ・イェブラ

イーゴリ・イェブラというダンサーの魅力を余すところなく伝えているこの作品。彼のアラベスクの、なんて伸びやかでしなやかで美しい曲線を描いていること。力強く、雄雄しく羽ばたき、力強く飛翔しつつも、限りある命の儚さを伝えている動き。こういう作品は、これくらい美しい人じゃないと、様にならないなとも感じた。

マノン(第一幕エレジー)=ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ

「マノン」のエレジーって、そんなに派手な場面ではなく、ガラなどで上演されることも少ないと思う。だけどこうやって改めて観てみると、リフトがものすごく多く、またリフトされたマノンが体勢を左に右に変えていくので、非常に難しい作品であることがわかる。そこをいかに滑らかに躍らせるかということで、デ・グリューの実力がわかるというもの。イリヤは本調子ではないようだったけど、熱い視線、若々しい恋情、素敵なデ・グリューだった。マハリナも、ドラマティック・バレリーナの本領を発揮していて美しい。彼ら二人の「マノン」を全幕で観る機会はもうないだろうなと思うと、寂しい。

第二部

海賊(1幕 ランケデムとギュリナーラのグランパドドゥ)=寺島 まゆみ、芳賀 望

このペアでこの演目を何回も踊りこんでいるためか、非常に安定感があるし、息もぴったり。まゆみさんもひろみさん同様、指先の動きで細かなニュアンスを出せる人。華奢な身体のどこにこんなパワーがあるのか、跳躍が高くてきれいだし、たおやかでありながら、テクニックもある。芳賀さんのランケデムははまり役。地元公演ということもあって、張り切って技を決めていた。あとはフィニッシュで流れるところがなくなれば。新国立劇場で、ぜひ「海賊」全幕を上演して欲しいと思う。マイレンはガラや発表会でよくアリを踊っているし、あの美しいコール・ドでの花園のシーンもきっと素敵だろう。


新作Ⅱ=松崎 えり、大嶋 正樹

松崎えりさんによるほやほやの新作。赤いプリントの上着の大嶋さんと、ベージュのビスチェの松崎さん、二人とも同じようなだぼっとしたパンツ。松崎さんの振付は、やっぱりヨーロッパ的なコンテンポラリーを感じさせるもの。今回は音楽は歌入り。二人ともなめらかな動きが美しい。大嶋さんの怪我からの回復は順調なようで、とても雄弁に身体で語ってくれた。本当に踊りたくてたまらなかったんだろうな、って思った。二人のダンサーが、決して交わらなくて距離があるところが、いろいろなことを考えさせてくれる。


シェヘラザード=イリヤ・クズネツォフ、エレーナ・コレスニチェンコ

エレーナ・コレスニチェンコのゾベイダが下手で杯を持って横たわっているところから始まる。このエレーナ・コレスニチェンコが、細いのに凹凸はしっかりあるという素晴らしいプロポーションで、非常に色っぽいし美人。やっぱりこの役は、これくらいグラマーな人のほうが似合う。身体をくねらせる時の曲線はやばいくらいの妖艶さ。イリヤの黄金の奴隷。跳躍などを見る限りはやっぱりちょっと不調そうで、奈良のときのほうが出来が良かった気がするけど(ちょっと太った?)、演技のほうはとにかく濃厚で、セクシーで、獰猛でありながら従順さも見せ、ふるいつきたくなるくたいセクシーだった。床の状態があまりよくないようだったけど、足音は全然させないところはさすが。とにかく二人のビンビンの気合とめくるめく官能の世界は十分伝わってきた。絶好調の時のイリヤのシェヘラザード全編が観たい!


アダージョ=アンドレイ・メルクリエフ

急遽追加になったこの演目。振付は誰なのかしら?(「アダージョ」振付:アレックス・ミロシュンチェンコ 、音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ、とのこと。)ブルーの衣装で、髪を下ろしたメルクリエフも、またとっても美しい。彼の美しい動きに酔ったひと時。彼はいつからこんなに素晴らしいダンサーになったのかしら。去年のボリショイ・マリインスキー合同ガラの時にイは、まだまだだったのに。


アゴン=シリル・ピエール、ダリヤ・スホルコワ

スホルコワの美しい脚を堪能。ストラヴィンスキーの難解なスコアにも音がぴったり合っている。二人のコンビネーションも大変良くて、見ごたえたっぷりの演目だった。ダリヤの美しい肢体を、最もきれいに見せる場所にシリルが導いているのが判る。

Ne me quittes pas=アンナ・パシコワ

青いホルターネック、背中の大きく開いたロングドレスのパシコワ、美しい~。ジャック・ブレルの曲。作品としては先ほどのクチュルクのほうがインパクトがあったし、ちょっと印象的に似通った部分もあるけど、二人のバレリーナの持っている性質の違いはよく感じられた。「ドン・キホーテ組曲」でも見せた女っぷりのよさが、ここでも存分に発揮。

くるみ割り人形(パ・ド・ドゥ)=アリヤ・タニクパエワ、ミハイル・マルティニュク

アリヤは、奈良ではチュチュだったと思うんだけどここではオレンジピンクのふんわりとした膝丈のドレスに、ちょこんとティアラを乗せていた。ミーシャは、奈良で失敗したリフトを若干変更し、今回はミスなく乗り切った。彼のくるみ、奈良の時よりずっと良い。特にヴァリエーションの時のはつらつとしたシソンヌや、正確なピルエットが観ていて気持ちよい。とにかく可愛く好感度の高いカップル。

ロミオとジュリエット(バルコニー)=オクサナ・クチュルク、イーゴリ・イェブラ

息が止まりそうになるくらい美しい二人。イェブラの高く柔らかな跳躍には、恋の高ぶりでどこまでも上昇しそうな気持ちが込められているし、初々しくちょっとはにかんだクチュルクのジュリエットは可愛らしい。とても爽やかで、恋に落ちたばかりのどきどきする思いが、とどまるところを知らずにあふれ出ている。こんなにまっすぐに愛し合って幸福感でいっぱいの二人に、悲劇が待っているんだと思うだけで、胸が張り裂けそうになるくらい。この二人が主演してのボルドーの「ロミオとジュリエット」、来日公演熱望!

瀕死の白鳥=ユリヤ・マハリナ

マハリナの瀕死の白鳥は、生きようともがいたり戦ったりすることもなければ、諦念もなく、美しく誇り高い生き物が静かに、しかし絶望し苦しみながら死んでいく様子を、ドラマティックに演じていた。こんな瀕死の白鳥を踊れるのは、彼女だけだと思う。こうやって、彼女の舞踊人生を物語るかのような4分間のドラマを見られる幸せ。

♪フィナーレ: ドン・キホーテ(組曲)ガリーナ・ステパネンコ、アントン・コルサコフ、アンドレイ・メルクリエフ、エレーナ・コレスニチェンコ、アンナ・パシコワ、日本人ダンサー2名他、全員

奈良公演では、アントン・コルサコフがバジルの踊りを全部踊ったというのに、新潟では様々なダンサーが入れ替わり立ち代り彼のパートを踊ったという。今回はどうなるかな、と思ったら入れ替わりヴァージョンだった!

酒場のあんちゃん二人、大島さんとミーシャ。今回はミーシャはバンダナなしでバジルっぽい衣装。背格好も同じくらいだし(ミーシャの方が若干大きい)、悪がき二人って風情。イェブラとクチュルクはロミジュリの衣装のまま(着替える時間がなかったかな?)、シリルとダリアはバジルとキトリ風の衣装にお着替え。シリルは背が高いのでこういう格好は似合う。ウェイターはイリヤとイェブラなんだけど、イリヤもバジルっぽい衣装で、イェブラはロミオの衣装のまま、腕まくりをしてお酒を配っているので、なんだかとても笑える。イェブラはあんなにハンサムなのに、テーブルの上に飛び乗ってジャンプしたり、とてもノリがいい。

パシコワとコレニスチェンコの美人姐さんたちの、エスパーダをめぐっての戦いは今日もカッコよかった。パシコワが赤系の衣装で、コレニスチェンコは大きなストールを巻いている。二人ともテーブルの上に乗って、華やかにメルセデスのソロを踊る。フラメンコのような対決、片方がエスパーダのマントを拾って振り回すが、落とすと今度はイリヤがそれを拾って、エスパーダよろしく素晴らしいマント捌きを披露。その間、ミーシャが隙あればとコレニスチェンコを口説こうとするところがまた面白い。

ガリーナ姐さんのものすごい勢いの飛び込みを受け止めたのは、腕まくりロミオのイェブラ。もうすぐで腕が地面につきそうなスレスレのところでの見事なキャッチ。

メルクリエフのエスパーダのキメキメぶりは今日もカッコよかった!ものすごく高くバットマンしてアッサンブレで着地してから後ろ足を後ろに移動させての決めポーズ、しびれるほどクール。そして同じ踊りをしようとしたアントンは、イリヤに受け止められちゃった。今回は、みんなのアントンいじりが炸裂していて、ある意味アントンはみんなのアイドルなのかな、なんて思ったりして。

黄色いチュチュから、赤と黒のチュチュに着替えたステパネンコ姐さん。アダージオでは、途中でパートナーがメルクリエフに交代。そしてゆっくりとした音楽の時にシリルにバトンタッチし、見事なリフト~フィッシュダイブを見せた。それからまた、隙あれば取って代わろうとする悪ガキのミーシャに交代すると見せかけて、またイェブラが姐さんの手を取る。そしてフィニッシュはイリヤ。そういうわけで、バジルっぽい衣装の男性ダンサーがいっぱいいた意味がよくわかったというわけ。ここでのレヴェランスは、ガリーナ姐さんを真ん中に、シリル、メルクリエフ、ミーシャ、イェブラ、そしてイリヤ、それにアントンという6人の男性が姐さんを奪い合うというものだった。お祭りじゃないと決して見られない豪華版!そして、こんなに途中でパートナーが代わっても、まったく平気で涼しい顔で踊ってしまうガリーナ姐さんって本当にすごい人なんだわ。

ヴァリエーションは今度こそはしっかりアントンが踊ってくれた。やっぱり本調子ではない模様で、スタミナも切れていたようだったけど、精一杯、一生懸命に踊っているのはよく伝わってくる。ガリーナ姐さんのキトリヴァリエーションは完璧。この人は、まず扇捌きが見事にカッコよく決まっていて、一番美しくダイナミックに見える角度を計算して踊っているとしか思えない。突き刺さるポアントといい、これほどのキトリは他にはいないだろう。

そしてグランフェッテも見事なものだった。前半はダブルが3回にトリプル一回。後半はシングルになったけど、フィニッシュではまたトリプル!コーダのピケも速い速い!姐さんには、衰えという言葉はまったく無縁だといえるだろう。

カーテンコールでは、ちびっこたちがダンサーに花を贈呈。すると、ダンサーたちは花を客席に投げ込んでくれた。今日も最高の公演だった!ラストの新宿公演が楽しみ♪こんなすごいガラを見逃す手はないと思う。体験しないと損だと自信を持ってお勧めできる。桶川は7割くらいの入りだったと思うけど、空席があるのが残念でならない。新宿はもっと客席をいっぱいにして、日本のバレエファンの心意気も見せたいと思った

2008/08/29

東京バレエ団 マラーホフ版「眠れる森の美女」上演決定

マラーホフ版「眠れる森の美女」上演決定!

東京バレエ団のサイトより。

2006年の東京バレエ団初演では、バラの香り溢れる軽やかで美しい舞台が大きな話題となった、ウラジーミル・マラーホフ振付・演出「眠れる森の美女」。このたび待望の再演が決定しました。

今回、マラーホフと組んでオーロラ姫を演じるのは、ベルリン国立バレエ団での初演に主演したディアナ・ヴィシニョーワ。
また、東京バレエ団プリンシパルの小出領子と後藤晴雄も今回初めてマラーホフ版「眠れる森の美女」に主演します。
小出&後藤主演の公演で、カラボスを演じるのは何とマラーホフ!新年を飾る華やかな舞台にご注目ください。

ウラジーミル・マラーホフ振付・演出
「眠れる森の美女」

◆公演日
2008年1月8日(木)6:30p.m.(オーロラ姫:ディアナ・ヴィシニョーワ、デジレ王子:ウラジーミル・マラーホフ)
2008年1月10日(土)3:00p.m.(オーロラ姫:ディアナ・ヴィシニョーワ、デジレ王子:ウラジーミル・マラーホフ)
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2008年1月9(金)6:30p.m.(オーロラ姫:小出領子、デジレ王子:後藤晴雄)

◆会場:東京文化会館

◆入場料(税込)
【1/8,10】
S¥14,000 A¥12,000 B¥10,000 C¥8,000 D¥6,000 E¥4,000
エコノミー券¥3,000 学生券¥2,000
Sペア券¥27,000 Aペア券¥23,000

【1/9】
S¥11,000 A¥9,000 B¥7,000 C¥5,000 D¥4,000 E¥3,000
エコノミー券¥2,000 学生券¥1,000
Sペア券¥21,000 Aペア券¥17,000

◆前売開始日:2008年9月20日(土) 10:00a.m.

◆お問い合わせ:NBSチケットセンター 03-3791-8888


マラーホフ版の眠り、久しぶりですね!前回は電車の事故遅延で一幕が観られなかったんですよね。マラーホフ独特の美意識と色彩感覚に彩られた衣装が素敵でした!

今回はオーロラにヴィシニョーワ。日本で観るのは久しぶりですよね。きっと華やかなことでしょう。

それと小出さんのオーロラの日はマラーホフがカラボス役をやるのも面白そうです。

しかし小出さんの日本人パートナーってなんでいつも後藤さんなんでしょう。ご夫婦だからといって、別の人ともたまには踊ればいいのに、なんて思います。小出さんは小柄だから中島周さんなんか合いそう。中島さんの古典王子様、そろそろ登場させて欲しいです。

新潟県中越沖地震チャリティーバレエガラ関連いろいろ

今仕事が忙しくて、今日も残業で最終退出者になっちゃいました。したがって、手抜きエントリですみません!

新潟県中越沖地震チャリティーバレエガラコンサートですが、新潟公演では、県庁をガリーナ・ステパネンコ、ゲディミナス・タランダ、さいとう美帆さんらが訪問して新潟県副知事に会ったとのことです。新潟日報に記事が載っていました。

http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=2&newsNo=112912

それから、高橋晃子さんのブログが、とっても楽しいです。新潟では、ダンサーたちはスーパー銭湯に行ったんですね。楽屋裏の和気藹々とした様子や、面白いポーズを取っているイェブラやピエール、マルティニュクらのオフの様子など、お茶目なダンサーたちの姿をたくさん見ることができます。タランダさん、ホントに恰幅がよくなってしまいましたが、元気そうですね。

http://suiren1011.exblog.jp

そう、アーツ企画のブログでは、奈良の東大寺で通り抜けられれば幸せになれるという柱の穴に、頭を突っ込んでいるタランダの写真が載っています(笑)
http://ameblo.jp/arts-planning/entry-10132017605.html

それから、寺島ひろみ・まゆみ姉妹のサイトでも、奈良や新潟公演の舞台裏やオフの写真がいっぱい載っています。
http://www.t-twins.net/diary/index.html

メルクリエフってホント、かわいいですね。彼とひろみさんのチャイコフスキー・パ・ド・ドゥ、観たかったです。それと、新潟公演での「ドン・キホーテ組曲」は、アントンが疲れちゃったので5人のダンサーが交代してアダージオ以外のバジルのパートを踊ったんですね。それはまた圧巻だったんでしょうね!交代する時のコントのようなやりとりは必見だったそうです(笑)

こうやっていろいろな舞台裏がリアルタイムでインターネットで見られる楽しい時代になりましたね。

2008/08/26

8/24 新潟県中越沖地震チャリティーバレエガラコンサート 奈良公演(完結)

奈良に行くのは中学の修学旅行以来。奈良は遠かった!公開ゲネプロが朝10時からというのだけど、10時に奈良到着はとても無理。朝7時前に家を出て、到着したのは11時前。奈良駅では、噂のせんとくんがお迎え(笑)

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なら百年会館は奈良駅からすごく近いんだけど、周りにホテルが一軒あるだけで、ほとんど何もないし。磯崎新が設計したというモダンなホールで、完成してから8年というまだ新しい建物。卵型のような不思議な形をしていて、2階席というよりバルコニーがせり出している感じ。私は1階後方のセンターに座ったのだけど、それほど大きくないためか、非常に見やすい。

第一幕
くるみ割り人形よりグラン・パ・ド・ドゥ(振付:ワシリー・ワイノーネン) アリーヤ・タニクバエワ、ミハイル・マルテニュク

アリーヤは多分初見だと思う。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートに何回か出演していたみたいだけど。もともとはインペリアル・ロシア・バレエのダンサーで、カザフスタン出身。ちょっと見日本人か、と思うような容姿でやや小柄な方。で、ミーシャはというとこの間のInternational Ballet Companyの公演で観たばかりだけど、その時に踊ったのがブロンズ・アイドルとか白鳥の道化とか騎兵隊の休日、それにバジルだったので、王子役を踊るのか、とちょっとびっくり。そもそもくるみ割り人形の王子自体、初役だったみたい。彼も22歳とすごく若いし、どちらかといえば小さめだし、アリーヤ同様黒髪なので、本当に可愛らしい二人。どっちかといえばくるみ割り人形役の方が似合うかな?そういうわけで、ミーシャのちょっとしたリフトのミスがあったりと息が合わない部分もあったけど、彼のヴァリエーションはまたピルエットもシソンヌもテクニック炸裂、一方アリーヤは丁寧でたおやかな踊り。好感度は大。

シェヘラザード(振付:ミハイル・フォーキン) 高橋晃子、イリヤ・クズネツォフ

イリヤの黄金の奴隷、鼻血モノのセクシーさだった!黄金の奴隷はぜったいブルーアイじゃないとダメ、と思っているけど彼はホント、その見上げつつ見つめるブルーアイがキレイ。大柄なのにジュッテは大きく着地は柔らかくてライオンのようにしなやかで音がしない。彼のシェヘラザード全編が観たい。。。今まで見た中でも一、二を争うくらい素敵な黄金の奴隷だよ。
そして高橋晃子さんは、表現力があるバレリーナで、ロシアでトレーニングを受けているのがすごくよくわかる。上半身が実にきれいで、ほっそりと華奢で、妖艶さはあまりないけど、挑発的な表情にどきりとさせられる。ロパートキナ&コズロフのようなものすごくエロい世界は作っていなかったけど、ゾベイダがエキゾチックな東洋人というのはいかにもシェヘラザードの世界で似合っている。良い舞台だった。


ライモンダよりアダージオ(振付:マリウス・プティパ) ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ

アダージオだけだったのが少々もったいなかったけど、アンドレイの長い白いマント姿は、もう完全に反則というか似合いすぎというか、麗しいことこの上ない。それだけでもう降参という感じ。そしてガリーナ姐さんのライモンダの圧倒的な華と風格。アダージオだけで華やかで古典的な中世の騎士物語の世界を舞台空間に持ってきてしまえるのはやっぱり、本物の凄さであり、スターのきらめきなんだろうな。

Lady in Red(振付:ユーリー・ペトゥホフ) オクサーナ・クチュルク

暗い照明の中、椅子に丸まったように腰掛ける赤くて長いドレスのクチュルクが、脚をパッと広げて、それから腕を大きく動かす。音楽は、ヴィヴァルディの「四季」の夏から。なんとなく、フィギュアスケートのジェフリー・バトルが使っている曲という印象が強いのだけど、この音楽の持つ激しさ、情熱と激情を感じさせる動きがよく似合っている。腕を激しく動かすところは、ものすごい集中力でダンスに没頭している感じで、こういう表現ができるのが真の芸術家、と思わせてくれた。

薔薇の精(振付:ミハイル・フォーキン さいとう美帆、アントン・コルサコフ

コルサコフの薔薇の精は4月にマリインスキーのNY公演で観て、とても印象が良かった。彼のベビーフェイス(ちょっとだけディカプリオ似)と白い肌に薔薇のついた赤い衣装がよく似合うし、あまり男性的ではなく少年っぽいところも、両性具有的な薔薇の精のキャラクターに合っている。それから、やっぱり腕の動きがすごく柔らかくてきれいで、薔薇の花が花開く様子を思い浮かべることができた。そして5回もきれいなトゥールザンレールを入れていた。さいとうさんの少女はいうまでもなく愛らしい。

白鳥の湖 第二幕アダージオ(振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ) ダリヤ・スホルコワ、シリル・ピエール

シリル・ピエールはグリーン・グレーの軍服のようなグレーの詰襟衣装。ミュンヘン・バレエの白鳥王子はこれがデフォルトなのかしら?と思ってバレエ団のサイトを見たらやはりそのよう。このサイトでは動画まで見ることができる。白鳥の衣装がすごく美しくて、ついでにロットバルトがちょっと白塗り系だけど吸血鬼のような耽美的な雰囲気。
ダリヤ・スホルコワは、さすがワガノワ~マリインスキー出身だけあって、プロポーションが素晴らしい。ほっそりとしていて背が高く、弓形にしなっていて長く美しい脚。甲がよく出ている。上半身も柔らかく、腕の使い方も繊細、叙情的な表現。そんな彼女も、2006年のマリインスキーの来日ではまだコリフェで、パ・ド・トロワなどを踊っていたのだから、やはりマリインスキーというのは層が厚いんだな、と思った。アダージオなので派手な見せ場はないけれども、ピエールはサポートに愛があって、着実できれいにリフトをしていた。身長の釣り合いもちょうどいい感じ。しっとりとして大人の雰囲気を作り上げていた。

眠れる森の美女 三幕より(振付:マリウス・プティパ) 寺島ひろみ、アンドレイ・メルクリエフ

著作権の承認が間に合わなくて、「チャイコフスキ・パ・ド・ドゥ」から「眠り」に変更。演目が多いからだと思うけどアダージオのみ。二人とも、王子と姫がよく似合うキラキラした雰囲気を持っている。フィッシュダイブ3連発ではなく、ひろみさんがサポートつきのピルエットをするのだけど、8回くらいぶれずにくるくるときれいに回っていて、やっぱりきっちりとしたテクニックがあるなあ、と思った。雰囲気のマッチしている美しいペアだから、いつかメルクリエフが新国立劇場に客演してひろみさんと共演ってことがあればいいな。ヴァリエーションを踊ってくれたらもっと良かったんだけど。

カルメン エレーナ・フィリピエワ、セルゲイ・シドルスキー

直近に決まった演目のようで、プログラムに記載がないため、振付家が誰なのかは不明。コンテンポラリー作品で、フィリピエワは大きく背中が開いた黒いホルターネックのロングドレス、シドルスキーは上半身裸で袴のような長いスカートを着用。背中を向けている振付が多いのだけど、この二人の背中の筋肉のつき方が絶品といっていいほど美しく、雄弁。腕を多用したユニゾンの動きで、なんと表現していいのか判らないけど、とにかく本物の芸術を観た、というか芸術家の心意気を感じさせて、しびれた。彼らが出演するのが奈良と新潟だけというのが惜しまれる。だけども、この二人が奈良に出演するからこそ、奈良にまで出かけて行ったんだし、交通費と時間をかけて奈良まで行って本当に良かったと思った。

白鳥XXI(振付:イーゴリ・イェブラ) イーゴリ・イェブラ

2005年のスペインGALAで観た作品を再見。パンツ一枚のイェブラが丸まった姿で登場し、無音の中踊り始める。大きく開いたジュッテと柔らかい着地。白鳥なんだけど、男性的な部分が強く、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」をクラシックバレエ的な踊りにした印象もある。美しい肉体、しなやかな動き、加えて美貌。無音なので息遣いが伝わってきて、舞台に強く惹きつけられる。途中から、「瀕死の白鳥」の音楽が流れていく。上半身を大きく反らせて、崩れ落ちての死。「カルメン」と併せ、今回観られて特に良かった演目のひとつ。イェブラって本当に素敵なダンサー!

マノンより1幕エレジー(振付:ケネス・マクミラン) ユリア・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ

「マノン」の1幕で、出会ったばかりのマノンとデ・グリューが繰り広げるパ・ド・ドゥ。ちょっとイリヤ・クズネツォフが調子が悪かったように見えた。「シェヘラザード」ではあんなに素敵だったのに。サポートはしっかりしていた。マハリナは天然のファム・ファタルという雰囲気がぴったりだったし、イリヤとのパートナーシップも良かったと思う。イリヤが次回公演では復調してくれますように!

第二幕
白鳥の湖よりルースカヤ(振付:ガリーナ・シュリャーピナ) 高橋晃子

ダンチェンコではキャラクターソリストを務めていただけあって、高橋晃子さんはポール・ド・ブラが美しく、適度な押し出しもあって華やかでロシアらしさ漂うルースカヤを披露。新国立劇場の牧版「白鳥の湖」のルースカヤは、まるでお仕置きのように踊らされているって感じなんだけど、これくらい人を引き寄せるパワーがないと、この踊りは難しいと思う。

海賊よりランケデムとギュリナーラのパ・ド・ドゥ(振付:マリウス・プティパ) 寺島まゆみ、芳賀望

先日のHopes and Prouds of Japan Galaでもこの二人でこの演目を観たけど、踊る回数を重ねているだけあって、よりスムーズになっていたと思う。芳賀さんのランケデムは小芝居も面白いし、深く沈みこむプリエの入ったヴァリエーションもなかなか。寺島まゆみさんのギュリナーラはとても可憐で、白いヴェールをぐるぐる巻かれていたのを外されているのは「あ~れ~」って感じなんだけど、きれいな動き。アダージオでのシソンヌでの脚の開き方がダイナミックだし、ジュッテも非常に高い。これだけたおやかな雰囲気があってほっそりと儚げなのに、テクニックも備わっているまゆみさん、本当にいいバレリーナ。

le Pleut(振付:エレーナ・ボグダノヴィチ) アンナ・パシコワ

タランダのインペリアル・ロシア・バレエのアンナ・パシコワ、長身でプロポーションが美しく、非常に美人。 音楽は、ジャック・ブレルのシャンソン"Ne me quittes pas"。コンテンポラリーのソロ。1回観ただけではちょっと印象に残りにくかったかな。でも、表現力のある素敵なダンサーだと思う。

アゴン(振付:ジョージ・バランシン) ダリヤ・スホルコワ、シリル・ピエール

以前、「マラーホフの贈り物」でピエールとルシア・ラカッラのペアでこの演目を観た。その時は、ラカッラの柔軟性があまりにもすごくて妖怪タコ人間のようだと思った。さすがにスホルコワはそんなことはなかった(笑)。でも、この演目を踊るに相応しい身体能力や柔軟性はあるし、何しろ脚のラインが(ラカッラとは別種類の)美しさがあるので、見ごたえがあった。ピエールはここでもサポートの上手さを発揮。奈良で、この作品を、このレベルの高さで観ることができるっていうのはすごく贅沢だと思う。

海賊 第2幕パドトロワ(振付:マリウス・プティパ) エレーナ・フィリピエワ、セルゲイ・シドルスキー、イリヤ・クズネツォフ

コンラッドにイリヤ、メドーラにフィリピエワ、そしてアリがシドルスキーというパ・ド・トロワ。メドーラのヴァリエーションは、「ラ・バヤデール」のガムザッティのヴァリエーションと同じ。先ほどの「カルメン」でのきりりとした姿とは打って変わって、ヘソだしにスリットの入ったふわりとしたスカートも華やかなフィリピエワのメドーラは、安心して観ていられて、落ち着いたキラキラ感がある。セルゲイにも言えることで、派手なテクニックで押すわけではないけれども、抜群の安定感、正統派のクラシックのテクニックを披露。そしてコンラッドのイリヤは、先ほどの不安定感よりはだいぶ復活していた。長身なので、フィリピエワを高々とリフトするとすごく迫力がある。それなのに、つま先はすごくきれい。この3人の顔ぶれでの「海賊」パ・ド・トロワは滅多にないだろうし、豪華!


Rain(振付:松崎えり) 松崎えり、大嶋正樹

7月のアサヒアートスクエアでの公演、松崎さんの作品にちょっと共通するモチーフがある新作。紫色の膝丈のドレスの松崎さんに、グレーのパンツ、モスクリーンのカットソーの大嶋さん。松崎さんの振付作品は、オリジナリティがあって、ヨーロッパ的で面白いし、スポットライトが明滅するなどの照明の使い方も効果的。男女の深層心理を描いた風。大嶋さんの動きはやっぱりきれいだし、跳躍やピルエットも見せてくれたりと、怪我から回復した様子で嬉しかった。


ロミオとジュリエット(振付:ウラージミル・ワシリエフ) オクサーナ・クチュルク、イーゴリ・イェブラ

バルコニーも何もないシーンだけど、甘く美しいパ・ド・ドゥだった。イェブラもクチュルクも、ロミオとジュリエットに相応しいロマンティックな雰囲気のある、ひっじょーに美しいダンサー。優美で愛らしいクチュルクと、端正で情熱的、しなやかなロミオ。いや~素敵!

カルメン(振付:ゲディミナス・タランダ) 高橋晃子、イリヤ・クズネツォフ

鮮やかなオレンジ色のシャツに黒いパンツのイリヤと、赤い花を髪に挿した高橋さん。とっても情熱的な二人だった。椅子がいくつも置いてあったから使うのかな、と思ったら意外と有効には使われていなかったりして。

瀕死の白鳥(振付:ミハイル・フォーキン) ユリヤ・マハリナ

前にもマハリナの「瀕死の白鳥」は「ルジマトフのすべて」で観たことがあったんだけど、その時の印象はあまり残っていない。でも、今回の「瀕死」はかなり印象的だった。「瀕死」といえば、大体のバレリーナは後ろ向きでアームスを白鳥の翼のように広げてくねらせながらパ・ドブレしてくるのだけど、マハリナは正面を向いていて、両腕を前でクロスさせながら入ってきた。とても艶やかで、凛としていて、強く生命感がある白鳥。最後に斃れる時も、背中を大きく反らせながら、後ろへと倒れて行った。生きる希望を最後まで捨てない、美しい白鳥の死だった。

フィナーレ ドン・キホーテ組曲(振付:マリウス・プティパ) 
キトリ:ガリーナ・ステパネンコ
バジル:アントン・コルサコフ
エスパーダ:アンドレイ・メルクリエフ
メルセデス:エレーナ・コレスニチェンコ、アンナ・パシコーワ
酒場のウエイター:イリヤ・クズネツォフ、セルゲイ・シドルスキー
客:大嶋正樹、ミハイル・マルテニュク
カップル:オクサーナ・クチュルク&イーゴリ・イェブラ、ダイヤ・スホルコワ&シリル・ピエール
女性客:高橋 晃子、アリヤ・タニクパエワ
ヴァリエーション:長澤美絵

今回のメーンイベント。いや~楽しかった!

2幕の酒場のシーンからスタート。2組カップルたちが入場してきて、そして日本人の女の子たちによるアントレ、頭にバンダナを巻いた大嶋さんとミーシャ、ロシア美女二人のメルセデス、酒場のウェイターのイリヤとセルゲイ(イリヤはカルメンの時と同じ衣装)、そしてキメキメのエスパーダのメルクリエフ。いや~メルクリエフはエスパーダの衣装が似合って素敵。ミーシャはプルエット・ア・ラ・スゴンドでぐるぐる回っている。それから黄色いチュチュ姿のガリーナ姐さんと、アントンが入場。アントン、なんだか超緊張の面持ち。コレスニチェンコ、パシコーワの華やかな美女二人は、エスパーダをめぐってマントを持って激しく争う。色っぽくて剥き出しの激しさがカッコいい~!彼女たち二人が自分たちで振付けたんだって。女たちが投げ捨てたマントを振り回して応援するのは、ウエイターのあんちゃん二人。イリヤ、マントの振り方が堂に入っている。さっきまでの元気のなさが嘘みたいパシコーワによるメルセデスのソロは柔らかい背中を存分に見せ付けれくれて、それからテーブルの上で踊りまくり。でも回りもいろいろと楽しい小芝居を繰り広げているから、いったいどこを観ていいのかわからなくなるほど。なんて贅沢なこと!ベンチに腰掛けているダンサーたちも、楽しげにセンターを見たり、加勢したり。

エスパーダのソロは、メルクリエフがアッサンブレでぴたっとポーズを美しくキメてくれて、ひゅーひゅー。ラヴェンダー色の衣装が彼の瞳の色とマッチしていて、額にはらりと落ちる前髪も素敵で、超・超・超美しい~。紫色の薔薇の花を背負ってしまいそうな勢い。それと同じ踊りを繰り返すアントン。あれれ~。なんでだろ~。さすがにアン奴隷のようにかっこよくは決まらないけど、それはまたそれで、可愛いから許せる。それから、ガリーナお姉さまのボリショイならではの勢いのフィッシュダイブをう受け止める。これはなんとか上手くいってホっとした。あ、アントン、ヴァリエーションは良かったです。最後のキメの時に、ハーッツってものすごい声がしたのでちょっと笑っちゃった。バジルのヴァリエーションを真剣な面持ちで観ているミーシャが可愛かった。もしかしたら、僕の方が上手いよ、って思っているのかもしれないんだけど。第一ヴァリエーションの長澤美絵さん、小柄だけど柔らかくて、鷹揚でのびやか、本当にきれいな踊り。そしてめちゃめちゃ可愛いらしいの。

ガリーナ姐さんのヴァリエーションは超カッコいい!床に突き刺さるがごとくのポアントワーク。華麗な扇使い。バランス技などは入れないで、正統派の直球な踊り。そしてグランフェッテが素晴らしかった!前半にダブルが4回入って、びくともしない軸、きれいな回転。2003年の世界バレエフェスティバルでの全幕プロで観た時からまったく衰えが見えないどころか、さらにパワーアップしているんじゃないかと思うほど。キトリのグランフェッテでこんなに素晴らしいのを観たのは久しぶり。コーダのピケも見事なもの。ガリーナ姐さん、あと10年くらいはいけそう。

そしてフィナーレ。子役たちの踊りなどもちょっと観られた。最後のカーテンコールにタランダ、出て欲しかったな。でも、本当にこの「ドン・キホーテ組曲」は最高に楽しかった~!東京公演ではどんなことになってしまうんだろう、すっごく楽しみ♪いや、ホントこれは観なきゃ損!

TOSHIのライヴは、所用があって聴けなかったのが残念。でも、モニターを通して彼の美しい歌声は聞こえてきたし、ダンサーたちも喜んでいたみたい。もしかして、新宿公演ではサプライズもあるかも、ってことみたい。

2008/08/25

奈良より新潟県中越沖地震チャリティガラ初日

新潟県中越沖地震チャリティガラ初日が終わりました。

一時はどうなるかと思ったガラですが驚くべきパフォーマンスのクオリティの高さ!よくこれだけのダンサーを揃えたものだと思います。いささか詰め込みすぎでとても長い公演でしたが、最後のドン・キホーテ組曲の贅沢さと言ったら鼻血ものです。メルクリエフのエスパーダかっこ良すぎ!そしてステパネンコ姉さんのフェッテも凄かった!ダブルをビシバシ入れていつまでも回れる感じ。ピエールやイェブラ、大嶋さん、マルテニュク、クズネツォフまで登場して盛り上がること!いやはや、こんな楽しくて贅沢な公演、バレエファンなら見逃せません。新宿の9月1日の公演は必見でしょう。

明日は朝4時に起きて東京に戻り仕事です。頑張ります。

2008/08/24

8/23 小林紀子バレエシアター「マクミラン・ダイヴァーツ」「ラ・シルフィード」

明日早朝に奈良に向けて出発するので、簡単な感想を。そう、新潟県中越沖地震チャリティバレエガラの奈良公演に行ってくるんです。奈良なんて中学の修学旅行以来です。

「マクミラン・ダイヴァーツ」
振付 ケネス・マクミラン
ステイジド・バイ ジュリー・リンコン
指揮 ポール・ストバート

「ロメオとジュリエット」 バルコニーのシーン
小野絢子・中村誠

マクミラン版のロミオとジュリエットは日本ではなかなか見られないので貴重。一応バルコニーも設置されていたけど、バルコニーの高さが低いので、ロミオとジュリエットが手を伸ばすと届いちゃう。
新国立劇場での「アラジン」で主演デビューも控えている小野絢子さんの可憐なことといったら!彼女なら十分14歳のジュリエットに見える。ジュリエットが実在していたらこんな姿をしているんじゃないかと思うほど。踊りの方も柔らかくしなやかで、見ていて思わず胸がきゅんとしてしまう。中村誠さんのロミオも、持ち前の柔らかさを発揮していた。彼も女性顔負けのしなやかな肢体と優雅な動きで、ロマンティックで切ない雰囲気を作り上げるのに成功していたと思う。演技もとても初々しくて甘く、これでサポートがうまくなれば言うことなし。


「エリート・シンコペーション」 Bethena A Concert Waltz
萱嶋みゆき・中尾充宏

パ・ド・ドゥだけなので、楽団ではなくピアニストだけが舞台に上がっての上演。サポートのうまい中尾さんによって、スムーズで洒脱さ、色っぽさがよく出ていた。短いシーンだったのがちょっともったいない。去年全幕が上演されてとても楽しかったので、ぜひ再演して欲しいなって思う。

「マイヤリング」 ステファニーのパ・ド・ドゥ
高橋怜子・冨川祐樹

ステファニー皇女役の高橋さんがソロを踊った後、銃と髑髏を持ったルドルフ役の冨川祐樹さんが駆け込んできて脅し、そして銃を威嚇射撃するといういささかドラマティックなシーンから始まる。冨川さんは、なかなか髭が似合っていて、ダークなキャラクターにハマっていたのではないかと思う。


「ラ・シルフィード」(全幕) 新制版初演
演出・振付 ヨハン・コボー(英国ロイヤルバレエ団・プリンシパル)
リハーサル・ディレクター ジュリー・リンコン

ブレノンヴィル版をベースに、ヨハン・コボーが再振付し、ロイヤル・バレエとボリショイ・バレエで上演された作品の日本初演。2幕の有名なパ・ド・ドゥの振付を少し変えている。また、エフィのソロは、コボーが新たに作ったり、パ・ド・シスが入ったりするところが違うようだ。また、マイムも変えたり、増やしたりして、ストーリーとして筋が通るようにしている。パンフレットにヨハン・コボーと小林紀子、山野博大氏の対談が載っているのだけど、これがなかなか面白い。

デヴィッド・ホールバーグのジェームズは、なんといっても足先が美しい!甲がよく出ているし、アントルシャ・シスやブリゼするときのつま先の美しさも絶品。もちろん脚のラインも美しいし、キルトから覗く膝小僧もきれいだし、脚捌きもばっちりだった。以前小林紀子バレエシアターに出演した時はまだプリンシパルに昇格したてで、足音も大きかったし技術的にも不安定な部分があったが、今回は足音もさせず、アントルラッセなどの跳躍も大きく、素晴らしい出来だった。ジェームズ役は脚の美しい彼によく似合うので、ABTでも踊る機会があるといいな。デヴィッドのThe Wingerでのエントリによると、3日間しかリハーサル期間がなかったとのことだが、それでここまで踊れるのはすごい。
http://thewinger.com/words/2008/travels-thus-far-2

島添さんのシルフは、まさに空気の精のように柔らかく軽やかで、いたずらっぽいところがありつつも、儚くて素敵だった。登場した時のピルエットがやや失敗気味だったけど、それ以降はミスもなく、アラベスクやアティチュードも美しい。とても繊細な役作り。ジゼルといい、ふわふわした妖精ものがよく似合う現実離れしたキャラクター。

エフィはジュリエットに続き小野さん。このエフィがまた本当に可愛くてけなげで、1幕の結婚式でジェームズに逃げられて悲しみ、ヴェールを外すところは本当に胸を締め付けられそう。

グァーンは中村誠さん。中村さんの演技がすごく濃くて、エフィへの熱い想いを隠そうとしないで積極的にアプローチしている。最初のうちは見向きもしないエフィも、ついに彼の熱情にほだされてプロポーズを受け入れてしまう。ジェームズがシルフィードを暖炉のそばの椅子にタータンチェックの布で隠したところを見ていて、グァーンが、そこを見ろ!と言って探させるけどシルフは消えていた、というときの演技もユーモラスでよかった。

それからマッジの楠元さんも、大きなマイムでノリノリで楽しそうに演じていて、とてもいい演技をしていた。ああいう役を演じるのはやりがいがあるだろうな。ラスト、斃れたジェームズを前にマッジが悔し涙を流していた。それは、マッジとジェームズは縁戚関係にあり(同じタータンチェックの柄の服を着用)、彼をここまで追い詰める意図はなかったと言うことなのだそう。

1幕の結婚式での民族舞踊的な群舞も非常によく踊れていて、見ごたえがあった。アカデミーの子役たちも、グァーンと踊った少女役の子をはじめ、とても達者。これから何回も再演されるといいな、と思わせてくれる、とても良い出来の舞台だった。デヴィッドくんもまたゲストで呼んでね。

Act1 
シルフ 島添亮子
ジェームス デヴィッド・ホールバーグ(ABT)
エフィ 小野絢子
ガーン 中村誠
マッジ 楠元郁子
アン(ジェームスの母) 斎木眞耶子
パ・ド・シス 高畑きずな・大和雅美・難波美保・冨川直樹・中尾充宏・佐々木淳史
2人の男性(友人) アンダーシュ・ハンマル、澤田展生
祖父  塩月照美
ミュージシャン 冨川祐樹
少女 菅さくら

Act2 
シルフ 島添亮子
ジェームス デヴィッド・ホールバーグ(ABT)
エフィ 小野絢子
ガーン 中村誠
マッジ 楠本郁子
アン(ジェームスの母) 斎木眞耶子
マッジの召使 アンダーシュ・ハンマル、佐々木淳史・澤田展生・冨川直樹
1st シルフ 大森結城
サイドシルフ 高橋怜子・駒形祥子
シルフ達  楠本郁子・難波美保・中村麻弥・高畑きずな・宮澤芽実・斎木麻耶子・小野朝子・松居聖子・萱嶋みゆき・志村美江子・荒木恵理・藤田奏子・倉持志保里・真野琴絵・秦信世・喜入依里・瀬戸桃子・大門彩美・林詠美

2008/08/22

フェラガモのカタログにロベルト・ボッレ

サルヴァトーレ・フェラガモの秋冬のイメージモデルにロベルト・ボッレが起用されていることは皆様ご存知かと思いますが、現在、フェラガモのショップで入手できる秋冬カタログに、ロベルト・ボッレが登場しています。

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全部で6カット。ナポリのサンカルロ劇場にて撮影されたもので、劇場の楽屋に、ロベルトのファンのクラウディア・シファーが訪ねてきたという設定のようです。(最近は、往年のスーパーモデルを起用するのが流行っているようで、クラウディアはじめ、リンダ・エヴァンジェリスタなど懐かしい姿をあちこちで見ます)

ロベルトは白タイツの王子衣装のもあれば、「エクセシオール」の露出度の高い奴隷ルックから「アポロ」の衣装、そしてタキシードを着用しているカットもあるわけですが、個人的には、タキシードを着ている彼が一番素敵だと思ったりして。

「アポロ」と「エクセシオール」の衣装着用のもの以外のパターンは、フェラガモのオフィシャルサイトで見ることができます。

http://www.salvatoreferragamo.it/jp/

カタログはショップに行けばもらえますので、ロベルト・ファンの方はショップへと急ぎましょう!さすがハイクラスブランドだけあって、カタログのクオリティも非常に上等です。

2008/08/21

パリ旅行記四日目 モンマルトル墓地

楽しかったパリ旅行も四日目で実質最終日。

火曜日は今度はルーブルが休館日なのだけど、隣にある装飾美術館、モード美術館、広告博物館が面白いと聞いたので、行ってみる。三館共通の入場券なのでお得。

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まずは、モード美術館の特別展、ヴァレンチノ展を見る。実はファッションの展覧会を見るのが好きで、お正月にはミラノの王宮で見たヴィヴィアン・ウェストウッド展もめっちゃ楽しかったし、メトロポリタン美術館もシャネルやマックイーン、ヴィヴィアンなどモード系特別展をよくやる。
ヴァレンチノはオートクチュールの作品が多く、奇抜なものはないけど、立体的で複雑な裁断、センスの良い色彩感覚、シンプルだけどお洒落でゴージャス。楽しい。

また、ジュエリーの展覧会があって、ラリック、ヴァン・クリーフ&アーペル、ディオールやシャネルなどのジュエリーやアクセサリーのゴージャスで洗練されたアンティークがたくさん展示されていて眼福だった。
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装飾美術館は、主に18世紀以降の装飾美術が中心。ナポレオンの特別展があって彼が愛用した家具や装飾品が展示されていた。それから、クルティザンヌ(高級娼婦)の寝室の再現なども。20世紀以降は一つのフロアで十年毎に区切っていて、家具や装飾、デザインのトレンドを見て取ることができる。時間がなくてゆっくり見ることができなくて残念。面白かったのでまた行ってみたい。
広告博物館はフィンランドの広告ポスターの特別展だった。北欧らしい洗練されたデザインと、旧ソ連のアバンギャルドさがミックスされていて興味深い。特にアムネスティや麻薬防止、AIDS啓蒙などの社会的メッセージのある広告に大胆な表現があった。

ギャラリーラファイエットの前で同行の友人と待ち合わせる。すると、前髪をくるっとカールさせ、後ろで髪を束ねた東洋人の女性が歩いて来た。バレエダンサー特有の、外股で大きな歩幅で歩いている。斎藤友佳理さんだった。

メトロに乗ってモンマルトルヘ。クリッシー駅のそばのビストロでランチ。店の名前は忘れてしまったけど、仔牛肉など非常に美味しくて大満足。

猛暑の中を歩き、モンマルトル墓地へ。ガイドブックにも中の地図が載っているほどの観光名所。さすがに墓地なので静かだけど、観光客もチラホラ。どのお墓も大きくて立派だ。緑が豊かで、さんさんと降り注ぐ陽射しを和らげてくれる。

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ベルリオーズ通りを歩くとすぐにベルリオーズのひときわ立派なお墓が。次に、デュマ・フィスのお墓。「椿姫」を連日観ているのでタイムリー。そしてペトルーシュカの像が載っているニジンスキーのお墓に。たくさんのお花が供えられ、蝋燭も。さらにポアントまで供えられていた。ペトルーシュカ像はニジンスキーには似ていないと不評らしいけど確かに似ていない。良いバレエがたくさん観られますように、とお祈りする。すぐ近くにはポアントがたくさん供えられているお墓があった。マリー・タリオーニの墓だった。きっと、バレエを学んでいる女の子たちが彼女にあやかってお墓参りをしたのだろう。こうした有名人の間に、普通の人々のお墓もたくさんある。写真がはめ込まれているお墓があり、若い男性の写真だった。30歳ちょっとで最近亡くなったようで、こういうのを見ると胸が痛む。

他にギュスターヴ・モローや映画監督フランソワ・トリュフォーのお墓にお参りした。

墓地を出て、モンマルトルの象徴であるサクレクール寺院まで歩く。正面からだと人が多く治安も良くないというので裏から行く。曲がりくねった坂道とかわいい建物たちはいかにもヨーロッパ的。途中に、ゴッホが住んでいたというアパートがあったけど、番地で確認しなければ気がつかないような、なんてことのない建物。

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サクレクールまでの坂はかなり急で、猛暑だったので息が切れた。しかも肩に日焼け止めを塗り忘れて、焼けて痛いし。そびえ立つ白亜のサクレクールは、大きくて美しくどこかエキゾチックな風情。観光客でごった返しているので、中を見学した後は、有料のケーブルカーで降りてホテルに帰還。オペラ座の近くのロクシタンがバーゲンをやっていたけど、もうバーゲン品は残り少なかったのでヘアコンディショナーだけ買う。定価の商品はユーロ高の影響で、日本で買うより高い!

この日の「椿姫」はマチュー・ガニオとクレールマリ・オスタ主演。しかもアルマンの父を演じるのがローラン・イレール!マチュー人気を反映してか、日本人の観客がすごく多い。知り合いの方にも何人かお会いする。バルコン席の一番前に、カデル・ベラルビが娘さんと来ているのを見かけた。

しかしオスタのマルグリットにはまったく共感できず、険のある表情、品や優雅さのかけらもない動き、短い手足、目を逸らしたくなるほどな惨状。マチューが甘く若く美しく情熱的なだけに、なんで彼がこんな美しくもなければ優しさも知性もない女に惚れるのか理解できない。

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マノン役がイザベル・シアラヴォラ、デ・グリューがジョゼの予定がマチアス・エイマンに変更。ちょっと嬉しい。しかしシアラヴォラが長く美しい脚の持ち主なだけに、マノンとマルグリットがユニゾンで踊る時にオスタの短い手足が目立ってみっともないこと。一人で死んで行くところも、まったく独りよがりな演技だった。マチューの熱演が素晴らしかっただけに、残念だった。

イレールのアルマン父は老けメイクをしていて、期待していた、息子よりも美しいパパではなかったのも残念。厳めしい父という感じで、ミカエル・ドナールの優しさも感じさせる父のほうが好みだった。

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幕あいに、エルヴェ・モローの怪我の回復が遅れて降板、収録はアニエスとステファン・ビュヨンで行われ、明日もこの二人が主演と聞く。アニエスのマルグリットは素晴らしかったし、ステファンのアルマンも観たかったから、パリを離れるのがあと一日遅かったらよかったのにと思う。やはり、良い公演の余韻を持って帰国したかったな。ロベルト&アニエスや、ルグリ&ムッサン、エレオノーラ&バンジャマンでも良かった。さようなら、オペラ座。また来年観にいけたらいいな。

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FIGARO JAPONの「パリ・オペラ座バレエ物語」は「天井桟敷の人々」特集

隔号連載のフィガロ・ジャポン「パリ・オペラ座バレエ物語」、20日発売号は現在制作中の新作「天井桟敷の人々」の特集。

振付のジョゼ・マルティネス、そしてガランス役のファースト・キャスト、イザベル・シアラヴォラのインタビューが掲載されています。もちろん、この作品は、映画史に名を残す、マルセル・カルネの不朽の名画をベースにしたもの。

ジョゼのインタビューを読むと、彼は根っからの舞台人であることがよくわかります。舞台のシーンと実生活の二つの世界からなっているとのことですが、舞台のシーン=非現実をカラー、現実をモノクロで創ることにしたそう。
「劇場のステージ上で演じる部分は夢。その魅力を色で見せたいんです。僕は劇場の世界が大好きで、バレエ学校用に創った「スカラムーシュ」にも、コメディア・デル・アルテの世界やパントマイムを盛り込みました」

楽しみなのが、幕間にも見世物を用意するということ。幕が下りたら、観客席側が「犯罪大通り」になるとイメージしてください。大階段も使いますよ」とのこと。観客も自分が参加している気分になりそうで、きっと楽しいでしょうね。

ガランス役のシアラヴォラの写真は、銀幕の女優のようなクラシックな雰囲気があってとても素敵。「椿姫」でステファン・ビュヨンと踊った時の写真も載っています。一方、もう一人の主人公、バティストのファーストキャストは、マチュー・ガニオ。白塗りで眉を細く描いた彼は、ピエロメークをしていても美しく、そして優しくイノセントな雰囲気。ちなみに、バティストに予定されている他の二人は、ステファン・ビュヨンとマチアス・エイマン。うわ~いいキャストですね。ガランスは、エレオノーラ・アッバニャート、エヴ・グリンツテイン。

それから、アニエス・ルテステュがデザインした衣装のデッサンも載っていて、クラシックな中にモダンなタッチが加わっておしゃれな感じ。モノクロのシーンの中でも、ガランスだけが赤いドレスを着ているのだそうです。

日本でこのような作品を観る機会はまずないだろうから、観られる方は本当に羨ましいです。


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8/17 Tokyo Internationl Ballet Company「白鳥の湖」

「夏休み親子劇場」の2日目は、「白鳥の湖」の全幕。ベラルーシ国立バレエからミハイロフスキー劇場(レニングラード国立バレエ)に移籍したばかりの、エカテリーナ・ボルチェンコとピョートル・ボルチェンコの双子を主演に迎えたもの。演出は、マリインスキーで採用されているセルゲイエフ版そのもの。監修がマリインスキー劇場のバレエマスタであるのをはじめ、ここの教師がワガノワやマリインスキー・バレエの講師だからか。

ちなみに、このペアによる2幕アダージオの動画(2007年上演より)を、Tokyo Internationl Ballet Companyのサイトで見ることができる。
http://www.tokyointernationalballetcompany.com/movie/07_gala04.html

オデット/オディール エカテリーナ・ボルチェンコ(ミハイロフスキー劇場)
王子 ピョートル・ボルチェンコ(ミハイロフスキー劇場)
ロットバルト:イワン・シートニコフ(マリインスキー劇場)
王妃 ガリーナ・シュリヤーピナ
道化 ミハイル・マルテニュク(クレムリン・バレエ)
パ・ド・トロワ 中村優 長澤美絵(ドネツク劇場) シェエ・ジョンソン(メトロポリタン・クラシカル・バレエ)
2羽の白鳥 菅野茉里奈(ベルリン国立バレエ) 玉井るい(ウィーン国立バレエ)

カーチャ(エカテリーナ)の白鳥、美しかった!小さく美しい顔に長い首と長くて絶妙な曲線を描く脚や腕の理想的な白鳥体型。神経が指先まで行き届いたしなやかで磨かれた腕の動き。パンシェをするときにアラベスクの脚がものすごく開いたり、バットマンのときの脚もすごく上がるのだけど、それでも気品を失わないのがいい。アラベスクで静止した時の背中から脚にかけてのフォルムの美しさと言ったら!あまり感情表現をしないで、比較的クールに踊っている女王然としてプライドの高そうなオデットだけど、王子役が双子の弟(兄?どっちなのかしら)なので、あまり情感を込められて踊っても変だし、というところがあったりして。とにかくカーチャは素晴らしかった。来年一月のミハイロフスキーの公演でも観てみたいなと思った。

そしてオディールのほうは、妖艶さはそれほどないのだけど、これまた、まさに高嶺の花といった感じのプライドの高そうな、艶やかで高貴さを漂わせたオディール。前日のガムザッティ役が似合っていたので、オディールはいいだろうなと思ったけど実際はまり役だった。テクニックにモノを言わせるのではなく、場を支配する魔力が強いイメージ。とはいっても、テクニックも正確で見せ所をきっちり心得ている。フェッテは全部シングルだけど、正確で、軸のブレも場所の移動もなく完璧。騙された王子を嘲笑する表情の邪悪さが素敵。それまでの仮面を脱ぎ捨てて悪女の本懐を見せてくれた。

4幕では打って変わって、儚く悲しげなオデットで情感豊かに踊っていたけど、ラストではロットバルトに立ち向かう強さも見せてくれて圧巻。ミハイロフスキーに入ったことから、これから日本で観る機会も増えそうで嬉しい。

ピョートル・ボルチェンコは、やっぱり人間としてありえないようなプロポーションに驚愕。身長が190cmあるダンサーと並んでいるのを見たことがあるけど、そのダンサーより5センチは高かったと思う。顔はとても小さくて、カーチャにけっこう似ているのだけど若干長くて、髪形が垢抜けない。でも、何しろ脚も長くてラインがきれいだし、きちんとアンドォールしていてつま先もきれいなので、容姿は申し分ない。踊りの方はカーチャの方が上。脚が長いのでジュッテは高く跳べるし、3幕のヴァリエーションの山なりジュッテも美しかったのだけど、回転が弱いみたいで、ピルエットがスタミナ切れなのかちょっとふらついていた。さすが兄弟だけあって、サポートの息はぴったり。キャラクター的にも、情けない王子がぴったり。なぜこんな彼がロットバルトに勝てたのかが謎なのだけど、それはきっとオデットが強かったからでしょう。

ロットバルトのシートニコフはマリインスキーのコール・ドのダンサー。彼もピョートルと同じくらいの身長と非常に長身で、細身。前の日に観たときは、金髪でなかなか美形だと思ったのだけど、原形をとどめないほどのすごいメイクを施している。ジュッテはすごく高いんだけど、膝が下がってしまっているのが残念。

道化のミハイル・マルテニュクは、すごく良いパフォーマンスを見せてくれた。ピルエットが何しろ上手い。軸がぶれずに12回くらい回って、ぴたっと止まってきれいな5番でフィニッシュ。それと愛嬌があり、演技が細かくて達者。パ・ド・トロワで女の子たちにちょっかいを出してみて振られたり、家庭教師や王子とのやり取りも面白くてついつい目をやってしまう。それから、3幕の最後で女王が失神したときにはずっと一生懸命にパタパタ仰いであげたりしていて。こういうテクニシャン系のダンサーにありがちなことだけど、やや小柄なので役柄が限定されそう。

群舞は、発表会だということを考えれば健闘していたと思う。プロポーションも全体的に良い人が多いし、2幕などはかなり揃っている。4幕の2羽の白鳥を踊った二人は、海外のバレエ団に所属しているだけあって、きっちりと見せてくれた。中でも、菅野茉里奈さんは、身体のラインもきれいだし、アラベスクで静止するポーズが柔らかくて美しかった。男性がゲストと子供一人しかいないので、キャラクターダンスのインパクトが弱いのは仕方ないか。

パ・ド・トロワとナポリを踊った長澤美絵さんが、小柄だけど、とても可愛らしく軽やかな踊りを見せてくれて素敵だった。全体的にダンサーの踊りがロシアン系で古典的、優雅な雰囲気の公演。何しろカーチャが素晴らしかったので、満足できた。

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レニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)の「白鳥の湖」のカーチャ主演の日は、
<1/10(土)13:30>エカテリーナ・ボルチェンコ/ピョートル・ボルチェンコ 東京国際フォーラムAです。
会場がちょっとアレなんですが、観に行きたいです。
一般発売は今週末からです。
http://eplus.jp/sys/main.jsp?prm=U=82:P6=001:P1=0375:P2=015179:P5=0001:P7=1:P0=GGWC01:P3=0139

2008/08/20

コジョカル主演ロイヤル・バレエ「ジゼル」DVD発売

イギリスのAmazon.ukにようやく、アリーナ・コジョカル主演のロイヤル・バレエ「ジゼル」DVDの予約ページが載りました。
 
 
イギリス発売が9月1日の予定となっています。
 
また、Opus Arteのサイトで、詳しいキャストと映像の一部がご覧になれます。
 
Giselle: Alina Cojocaru
Count Albrecht: Johan Kobborg
Myrtha (Queen of the Wilis): Marianela Nuez
Hilarion (a forester): Martin Harvey
The Royal Ballet
The Orchestra of the Royal Opera House
Choreographer: Marius Petipa
Conductor: Boris Gruzin
 
Recorded live at the Royal Opera House, Covent Garden, London in January 2006.   
なお、実は日本のAmazonのサイトにも、注文ページができており、9月1日発売となっているのですが、「現在注文いただけません」という表記になっています。
Opus Arteから発売されるDVDは、日本のアマゾンで買うと発売予定日より大幅に待たされるのが常なのですよね。
 
で、私はこの映像はBBCで放映されたものを観ているのですが、ロイヤル・バレエの演劇的な側面がよく活かされた1幕が素晴らしいです。特にサンドラ・コンリーのベルタがいいですね。
また、ヒラリオンのマーティン・ハーヴェイの濃い演技、来日公演の愛らしい印象とは打って変わったマリアネラ・ヌニェスの恐ろしさの中に秘めた悲しみの表現なども印象的でした。
もちろん、アリーナのコジョカルは可憐このうえなく、イノセントでありながら強い意志を持ったジゼルとして鮮烈な印象を残します。お勧めの映像です。
ピーター・ライト版の演出なので、独特の並び方や動きをするウィリ軍団がすごく怖いです。
Giselle - AdamGiselle - Adam
Royal Ballet

Opus Arte 2008-09-01
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2008/08/19

パリ・オペラ座ヌレエフ版「シンデレラ」DVD発売

Opus Arte のサイトで、 POBのヌレエフ版「シンデレラ」のDVD発売予定が発表されました。イギリスでは10月1日に発売されます。


http://www.opusarte.com/pages/product.asp?ProductID=259

キャスト
Cinderella: Agnes Letestu
Film Star: Jose Martinez
Stepmother: Stephane Phavorin
Stepsisters: Laetitia Pujol & Stephanie Romberg
Producer: Wilfried Romoli
Director: Richard Wilk
His Assistant: Fabien Roques
The Prisoner: Mathias Heymann
Spring: Melanie Hurel
Summer: Dorothee Gilbert
Autumn: Nolwenn Daniel
Winter: Emilie Cozette
当初はエルヴェ・モローとオーレリー・デュポン主演で収録される予定が、エルヴェの怪我でアニエスとジョゼに変更されました。やっぱり当初のキャストで見たかったですね。
マチアスの市販映像デビューかな?

そうそう、上記OpusArteで、映像がほんのちょっとですが観られますよ~。

ギエムとジュドの出演した古い「シンデレラ」映像もDVD化してほしいですね。イザベル・ゲランの義理の姉が最高なんです。ヌレエフ本人も出ているし、ジュドはキラキラの王子様だったし。


追記:Side B-alletのゆうさんに教えていただきましたが、Opus Arteからは、

ロイヤル・バレエの「ピーターラビットと仲間たち」(2007年12月録画)
http://www.opusarte.com/pages/product.asp?ProductID=261

Mrs Tittlemouse: Victoria Hewitt
Johnny Town-Mouse: Ricardo Cervera
Mrs Tiggy-Winkle: Jonathan Howells
Jemima Puddle-Duck: Gemma Sykes
The Fox: Gary Avis
Pigling Bland: Bennet Gartside
Pig-Wig: Laura Morera
Aunt Pettitoes: David Pickering
Mr Jeremy Fisher: Zachary Faruque
Tom Thumb: Giacomo Ciriaci
Hunca Munca: Iohna Loots
Peter Rabbit: Joshua Tuifua
Squirrel Nutkin: Steven McRae

The Royal Ballet
Royal Ballet Sinfonia
Choreographer: Frederick Ashton
Conductor: Paul Murphy


コヴェントガーデンで1993年に開催された「チャイコフスキー・ガラ・コンサート」を収録した「Opera & Ballet Favourites」
http://www.opusarte.com/pages/product.asp?ProductID=262

の2タイトルも10月に発売されるとのことです。

「ピーターラビットと仲間たち」は、リカルド・セルヴェラ、ギャリー・エイヴィス、ラウラ・モレーラ、スティーヴン・マックレーなど魅力的なキャストですね。かぶりもの着用なので顔は見えないと思いますが。

8/8,9 エトワール・ガラBプロ

すっかり時間が経ってしまって今更って感じなのですが、最近記憶力も怪しくなってきたので、少しでも覚えているうちに書いておこうと思います。2日分まとめて。

眠れる森の美女より「青い鳥」(振付:R. ヌレエフ)
メラニー・ユレル/アレクサンドル・リアブコ

2006年のハンブルク・バレエの来日公演で観た「眠れる森の美女」でのサーシャ(リアブコ)の青い鳥が、未だに鮮烈な印象がある。こんなに高く、鳥のように跳ぶ青い鳥を見たことがない、どこまでも飛んでいきそうな感じだった。だから、このガラでサーシャの参加が決まり、「青い鳥」を踊ってくれると聞いて本当に嬉しかった!一演目目だったので、絶対に遅刻しちゃいけないと思ったし。

で、やっぱりサーシャの青い鳥は素晴らしかった!高いブリゼ・ヴォレやアントルシャ・シスにはテクニックだけでなくエレガンスも備わっている。そして腕の動きはまさに鳥そのもの!自由で伸びやかでしなやか、まさに翼が生えているかのよう。ヌレエフ特有の細かく詰め込んだ振付なのにそれを感じさせず、指先や足先まで気配りが行き届いていて、軽やかなこと。2日目は、ちょっと疲れが出たのか、着地で手をついてしまったり、やや不調気味だったようだけど、初日はほとんど完璧。メラニー・ユレルも二日目は調子が悪かったようで、サポートつきピルエットが2回ほどぐらついてしまったけど、チュチュがよく似合っていて、典雅な感じではあった。


「モーメンツ・シェアード」(振付:R.V. ダンツィヒ)
エレオノーラ・アバニャート/マニュエル・ルグリ   ピアノ:上田晴子

ちょっと短くて強い印象が残らないで終わった演目だけど、流れるように美しい。ちょっと茄子紺のような色の衣装も素敵。そしてエレはやっぱりコンテンポラリーだと素敵。リフトされている姿がきれいにきまっているし、大人っぽいクールな表情も、猫系の顔によく合っている。ルグリのいつもながらによどみない、ロールスロイスの用途形容されるサポートにもブラボー。

「白鳥の湖」第2幕より
スヴェトラーナ・ルンキナ/マチュー・ガニオ

ルンキナの白鳥は、も~ロシアの白鳥!!!って感じ。身長が高いわけではないのに、小さな愛らしい顔、華奢で長い腕と脚、柔らかい上半身。今回出演のどの女性ダンサーよりも、クラシックな身体の持ち主で飛びぬけて美しい。観客までもが凍てついた湖畔に連れて行かれるような、冷たいマイナスイオンの空気で会場が満たされる。ルンキナの白鳥はとても悲しく儚い白鳥。一方の王子は、これまた美しい、絵に描いたような王子のマチュー・ガニオ。王子は一生懸命白鳥に愛を伝えようとするのだけど、ついぞ白鳥は、王子に心を開いてくれませんでした。アダージオの間、二人の距離は縮まらなかった。王子に白鳥は癒されなかったのだ。


「ロミオとジュリエット」第3幕より“寝室のパ・ド・ドゥ”(振付:J.ノイマイヤー)
シルヴィア・アッツォーニ/バンジャマン・ペッシュ

いきなり寝乱れたベッドから始まるというちょっとアダルトなシーン。とても可憐で少女そのもの、妖精のようなシルヴィアと、ちょい悪系のバンジャマンなので、悪い男が何も知らない少女をたぶらかしたかのよう。金髪を垂らして眠っているジュリエットの頬にキスをするバンジャマン、うーんセクシー。悪い男なんだけどけっこう純情で、情熱的で…ってそれはロミオと違うじゃん、というのは置いておいて、バンジーは役者だと思う。目覚めたジュリエットに背中から抱きつかれ、マントを前方に飛ばす。初夜が明けて、永遠の別れが待っているというのに、シルヴィアのジュリエットはどこまでもピュア。ロミオと無邪気に手を合わせて戯れる。ジュリエットはまだ14歳なんだなって、でもこれからの数時間で、何年分も成長しちゃうんだなって。そんなジュリエットを置いてきぼりにするように、ロミオは走り去ってしまう。そしてプロコフィエフのドラマティックな音楽が鳴り響き、ジュリエットをわが身に重ねながら、恋人たちを待っている運命に思いをめぐらせ、切なさに胸が切り裂かれそうになる。来年デンマーク・ロイヤル・バレエの来日公演で、このノイマイヤー版を見られるのが楽しみ!


「カノン」(振付:イリ・ブベニチェク)
マチュー・ガニオ/アレクサンドル・リアブコ/イリ・ブベニチェク

昨年の「融」公演でパッヘルベルのカノンに乗せて、ドレスデン・バレエのダンサーによって全編が踊られた作品が、また観られるので嬉しかった。イリ・ブベニチェクが振付けた「カノン」は、音楽的この上なく、至福の時間。3人のダンサーがユニゾンで動いている時の美しさと言ったら!サーシャもマチューも魅力的だったけど、初日マチューが他の二人と並んでしまうと、音に遅れるところがあった。二日目は慣れたのか、遅れなくなった。ダンサーとしてのイリの存在感がすごくて、驚異的な柔らかさと強靭さ、マスキュリンさ、音楽性…。底知れぬ才能を持った人だと改めて実感。生きている、生身の人間がいる!と思わせてくれた。3人のダンサーが背中を向けて舞台の奥へと歩いていくところから始まり、一旦暗転。最初にサーシャ、次にイリ、そしてマチューがまさにカノンのように、一人ずつ踊り、そしてユニゾンのパートへ。マチューの動きが一番クラシカルだし、身体のラインは本当にきれい。サーシャは、踊ることが幸せで仕方ないという風に、のびのびと踊っているし腕がきれい!いつまでも観ていたい、終わって欲しくない、そんな素敵な作品だった。今回のガラで上演された作品の中でも、一番好き!


「瀕死の白鳥」(振付:フォーキン)
マリ=アニエス・ジロ   ピアノ:上田晴子

羽のたくさんついた、とてもボリュームのあるチュチュを着たマリ=アニエスがパ・ド・ブレで滑るように滑らかに入ってくる。腕の動きは細かくて、腕そのものが意思を持って動いているかのよう。瀕死の白鳥とはいっても、しに直面した印象は受けない強さ、凛々しさがある。そして彼女の背中の強靭そうな筋肉の蠢き。こんなに強く戦う意思を持った白鳥でも、死んでしまうのかと思うと、生命の無常を感じる。音楽もピアノの演奏だし、一般的に考えられる儚い「瀕死の白鳥」ではまったくないのだけど、自身がそういった瀕死の白鳥が似合わないことを判っていて、あえて自分なりの独自のアプローチでこの作品を踊ったマリ=アニエスの心意気は感じた。


「マーラー交響曲第5番 アダージェット」(振付:ノイマイヤー)
シルヴィア・アッツォーニ/バンジャマン・ペッシュ

シルヴィアとバンジャマンが並ぶと、身長のバランスがちょうど良いのがよくわかる。そして、ちょっと「アポロ」の衣装に似た白い衣装が、彼によく似合っていて、つるりとした彼のストイックな筋肉とあいまって、意外なことに彫刻のような美しさと神聖さを感じた。そしてシルヴィア!物語のない、シンフォニック・バレエ、しかも「アダージェット」を使っているのだけど、この曲に特段の思い入れのない私にとって、シルヴィアはとても純化された、月日を経て磨かれた宝石のような美の化身になっていて、なんともいえない情緒や普遍性を感じさせてくれた。


「ドリーブ組曲」(振付:ジョゼ・マルティネス)
エレオノーラ・アバニャート/マチアス・エイマン

マチアス!!!彼を観ると、なんでこんなにも頬が緩んでしまうんだろう。彼の未だ見えざる、無限の可能性をかいま観る気がした。去年のルグリガラから1年でこんなに成長するとは。まだ荒削りの部分もあるけれども、どこまでも高い、胸のすくような跳躍の中にもあるエレガンス、そして独特の甘さが魅力的で、目が離せない。彼は観客に愛されるダンサーのようで、全体のカーテンコールの時も、ルグリの次くらいに多く拍手をもらっていたと思う。あの逆回転マネージュも難なくクリア。エレオノーラは、アニエス・ルテステュデザインの紺色の衣装が金髪によく映えて美しい。彼女がこのようなクラシック寄りの演目を踊るのは珍しく、飛ぶ鳥を落とす勢いのマチアスと並ぶと、若干古典技術の弱さが見えてきちゃう。軸足を変えてのピルエットなど難しいテクニックが山盛りになっている作品で大変そうだったけど、ノーミスでちゃんと踊れてはいた。

 
「トリオ」(振付:S.L. シェルカウイ)
マリ=アニエス・ジロ/イリ・ブベニチェク/アレクサンドル・リアブコ

プログラムには「デュオ」となっていたけど、結局サーシャが加わって「トリオ」になった。音楽は「ファド」という民族音楽ジャンルの、哀感ある女性ヴォーカル。まずはサーシャのソロ、続いて、長い赤いドレスをまとったマリ=アニエスとイリの踊り。マリ=アニエスのスカートを頭にかぶせるところが面白い。この二人のパ・ド・ドゥには二人の間の信頼関係みたいなのか感じられて、じーんとした。その次は、スポットライトを真ん中にして、片側にイリ、片側にサーシャが左右対称な感じで踊る。そしてモスグリーンのやはり長いドレスを着たマリ=アニエスのソロ。またスカートを頭にかぶって斃れこむ。最後は、男性二人が加わり、まずマリ=アニエスがゴロゴロと転がり、ついでサーシャ、最後にイリが一緒に、ほとんど横一直線にゴロゴロと前へと転がっていく。この転がり方がスムーズなのに感心した。最初はすごく面白いな~と思っていたけど、途中からちょっと長いかも、と感じるように。が、最後の3人ゴロゴロはちょっとシュールで笑っちゃうほどだけど、独創的。力のある3人のダンサーがこういう作品を踊るのは興味深い。


「マノン」第1幕第2場より“パ・ド・ドゥ”(振付:マクミラン)
スヴェトラーナ・ルンキナ/マニュエル・ルグリ

ルンキナが演じるマノンの、無邪気さの中に小悪魔性を秘めた美しさ。そう、本物の悪魔は、悪魔の姿をしているんじゃなくて、こんな風に黒い巻き毛を白い肌に垂らした純情可憐な美少女の中に住んでいるものなのだってことがよくわかる。手紙なんか書くのやめちゃいなさいよっと、マノンがデ・グリューから羽ペンを奪って放り投げるところなんか、矢印のついた尻尾が覗いちゃって。でもそんなことをされちゃって、デ・グリューは嬉しくて嬉しくて仕方ない。目をキラキラさせちゃってハートにしちゃって。ルンキナを軽々と、ボールを転がすようにリフトするルグリ!しかもこの人は、演技で20歳は若返ることができるから、びっくり。恋する青年そのもの。手をつなぎながら回転したり、お互いに引っ張り合ってバランスを取ったアラベスクするところも軽やかで、もう。最後にマノンをぎゅっと抱きしめる時のルグリ先生の熱さといったら。うっとり。ガラの中でのシーンとしては、十分満足できた。「マノン」の全幕観たいな~。

カーテンコールでは、ルンキナがルグリの腕の中に飛び込んでお姫様抱っこ状態になるというサービスまで見せてくれた!本当にルンキナは天使の姿をした悪魔だわ。


こんな豪華な公演が、こんなお値段で観られていいの、と思うほどの充実振り。素晴らしかった!功労者バンジャマンに大感謝。しかし、プロデューサーなのにその他大勢で普通にカーテンコールされるバンジーって、控え目な性格なのね。事情を知らない人は、彼がそういう立場だって気がつかないだろうに。というわけで、実はここしばらく、バンジャマン・ペッシュ株が私の中で急上昇中なのだ。

単なるパ・ド・ドゥ集ではなく、組み合わせを変えてのペア、男3人で踊る作品、ソロ、男女トリオという変則的な作品の数々。ガラで良く上演されるシーンだけではなく、「ロミオとジュリエット」の3幕PDDやマドリガル、「ラ・バヤデール」1幕から切り取ってみたり、「椿姫」も黒ではなく青のPDDだったり、工夫がふんだんに凝らされているのも良かった。また世界初演作品や日本初演作品もあったし、意欲的なプログラムぞろいだったと思う。

次回も絶対にこの企画は開催して欲しい。その時には、出演者の降板で実現しなかったプレルジョカージュの「Trait d’union(アン トレドュニオン)」 や「受胎告知」を上演して欲しいな、というのが主催者(Bunkamura様様)とバンジーへのお願い。そして今回出られなかった3人も出られるといいな。特にエルヴェとレティシア。(あ、誰か忘れている?)

2008/08/18

キューバ国立バレエ「ドン・キホーテ」DVD、アマゾンjpで取り扱い

先日の2008 International Gala Hikasa Ballet 国際交流公演でも、観客を大いに沸かせたキューバ国立バレエ、ヴィエングゼイ・ヴァルデスとロメル・フロメタが主演した「ドン・キホーテ」のDVDですが、日本のアマゾンでも取り扱うようです。発売予定日は2008年8月25日だそうです。

私のレビューはこちらです。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2008/06/dvd_1251.html

セットがほとんどなくて、演奏もテープですが、主演二人のパフォーマンスは言うまでもなく凄いです。さらに、彼らだけでなく、エスパーダ役のMiguel Angel Blanco、ジプシー役のTaras Domitroのテクニックも素晴らしいです。Taras Domitroは、先日米国への亡命を果たし、いきなりサンフランシスコ・バレエにプリンシパルとして入団したという逸材です。また、特に男性陣の群舞のテクニック全般が本当に凄いことになっています。いかにもラテン的な、明るく熱い「ドン・キホーテ」で楽しめると思います。

主演の二人は、全幕ということで、ガラで見せるほどのアクロバティックさは影を潜めていますが、これほどの高度な技術を全幕でやってしまうのは本当に信じられないほど、です。フェッテでは、4回転も入っています。ロメル・フロメタはテクニックも凄いけど、本来気品のあるダンサーであるのもわかります。アリシア・アロンソ、ヴィエングゼイ・ヴァルデスとロメル・フロメタのインタビュー、リハーサルシーンやアリシア・アロンソとアザーリ・プリセツキーが踊った「ジゼル」の映像、アロンソがウラジミール・ワシリエフと踊った「ドン・キホーテ」の一部の特典映像(合計30分程度)もあります。

世界最高峰のテクニックを観てみたい方、バレエフェスやInternational Gala Hikasa Ballet で彼らが気に入った方には、ぜひお勧めです。リージョンフリー。

Don Quixote (Ws Ac3 Dol Dts)Don Quixote (Ws Ac3 Dol Dts)
Ballet Nacional De Cuba

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2008/08/17

8/16 東京インターナショナルバレエカンパニー「夏休み親子芸術劇場」

第一部 ガラコンサート

  ダイアナとアクティオン    安部麻依子  シェエ・ジョンソン (メトロポリタン・クラシカル・バレエ)
  騎兵隊の休日         長澤美絵(ドネツク劇場) ミハエル・マルテニュク(クレムリン・バレエ)
  スターズ&ストライプス    中村優 イワン・シートニコフ(マリインスキー劇場)
  チャイコフスキー・パドドゥ   菅野茉莉奈(ベルリン国立バレエ) シェエ・ジョンソン
  海賊               桜堂 詩乃 イワン・シートニコフ
  ドン・キホーテ          玉井るい(ウィーン国立バレエ) ミハエル・マルテニュク 他


第二部「バヤデルカ」結婚の場

ガムザッティ  エカテリーナ・ボルチェンコ(ミハイロフキー劇場) 
ソロル ピョートル・ボルチェンコ(ミハイロフキー劇場)
ニキヤ  菅野茉莉奈
ブロンズ・アイドル  ミハエル・マルテニュク 

あるご縁から見せていただいた公演。基本的には発表会なのだけど、ミハイロフスキーに揃って入団したボルチェンコ姉弟(双子の姉エカテリーナはNHKがワガノワを取材したドキュメンタリー「地球に好奇心」のカーチャとして有名になった)が出演したり、海外からのゲスト、さらに出身者で海外のバレエ団で活躍している人も出演するということで面白そうだなと思っていた。

コンクール入賞者のちっちゃい子たちのソロなども入っているけれども、小学生の女の子が踊っていた「ドン・キホーテ」のキトリのヴァリエーションなどはなかなか堂に入っていて良かった。ボリショイやマリインスキー関係など、ロシアの教師が指導しているので、上半身がロシアンできれいな人が多い。

ディアナとアクティオンは、シェエ・ジョンソンがアメリカンな感じの、なかなか力強いアクティオンを踊っていた。テキサスのメトロポリタン・クラシカル・バレエは、元ボリショイのスター、アレクサンドル・ヴェトロフが芸術監督を務めているところ。なかなか良かったと思う。「スターズ&ストライプス」はちょっとダメだったかな。イワン・シートニコフはマリインスキーに2006年に入団したコール・ドのダンサーで、背が高く金髪でハンサムなのだけど、あまりにも細すぎる感じ。母親がワガノワの著名な教師イリーナ・シートコワとのこと。そしてパートナーの方は、それに対してちょっと太すぎて、ピルエットをしていてもちゃんと止まれなかったり、ミスが目立った。

「騎兵隊の休日」は、ウクライナのドネツク劇場のソリスト長澤美絵と、クレムリン・バレエのプリンシパルで、新潟県中越沖地震チャリティガラにも出演するミハエル・マルテニュク。マルテニュクは初役だという。長澤美絵さんはとても可愛らしいダンサーで、村娘の衣装がよく似合っていて丁寧で柔らかい踊り。ミハイルのほうは、テクニックがあるのがよくわかった。ピルエットの軸がぶれないで、10回くらい軽くきれいに回っている。ちょっとアジア系の風貌。

「チャイコフスキー・パドドゥ」を踊った菅野茉莉奈さんは、ベルリン国立バレエに入団したばかりで、プロポーションがよく華やかな雰囲気。このチャイコフスキー・パ・ド・ドゥはなかなか良かった。欲を言えば、コーダでのフィッシュダイブはもっと大胆にやって欲しいなって思うけど。

前半トリの「ドン・キホーテ」の前に、急遽、ボルチェンコ姉弟によるコンテンポラリー作品が入った(タイトルは失念)。ピョートルが一人で座っていると見せかけて、その後ろにエカテリーナもいて、まるで千手観音のように腕を動かしていくところから始まる。二人が立ち上がると、ピョートルの背の高さにびっくり。エカテリーナはたぶんロシアのバレリーナとしては平均的な身長で、バランスの取れた美しいプロポーションなのだけど、二人が並ぶと、エカテリーナはピョートルの顎のところくらいまでしか背がないのだ。おそらく彼の方は190㎝以上あるのではないかと思われる。顔が小さく、また細身なので、ちょっと人間離れした縮尺という感じ。そのプロポーションに驚いて、肝心の作品をちゃんと観られていないのだけど、エカテリーナが、人をひきつける魅力を持ったバレリーナであるのはよくわかった。

「ドン・キホーテ」のGPDDは、ヴァリエーションつき。こっちはとにかく、ミハイル・マルテニュクのバジルが良かった。ピルエットがすごくて、全然ぶれずに12回くらい平気で回っちゃうけど、テクニックバリバリというよりは、気品もあって正確。ピルエット・ア・ラ・スゴンドのほうもすごくて、会場は大いに沸いていた。それから、マネージュの時の脚の開き方や、つま先の美しさ、そしてスピード感も申し分なし。ちゃんとバジルらしい見得の切り方も心得ていてとても良かったと思う。若干背が低めなのかな。(178cmと聞いていたけど、ロシアのダンサーにしては小さいよね)キトリの玉井るいさん、ヴァリエーションは扇子なし。でもテクニックはしっかりしていて、フェッテも、スピードはゆっくり目できっちり32回回っていた。


第2部の「バヤデルカ」結婚の場は、一応壷の踊りや太鼓の踊りまでしっかりある、2幕ほぼ完全版。ただし大僧正やラジャが出てこない。エカテリーナのガムザッティは華やかで、お嬢様っぽい高慢さ、貫禄と優雅さを備えていて申し分なし。イタリアン・フェッテは、軽々と決め、グラン・フェッテはすべてシングルだけどきれいに回った。来年1月にこの二人はミハイロフスキー劇場の「白鳥の湖」で東京国際フォーラムAで主演するのだけど、エカテリーナの白鳥/黒鳥は期待できると思った。ピョートルの方は、姉に比べるとちょっとへたれかもしれない。非常に背が高いので、ジュッテはとても高く軽やかに上がるし、カブリオールも高くてきれいなのだけど、回転系は苦手そう。ヴァリエーションも最後にちょっと着地を失敗してしまって、決めポーズの位置も後ろ向きになってしまった。が、これだけ背が高くてほっそりしていて顔も小さく、ハンサムなダンサーはミハイロフスキー劇場にはいないので、貴重な戦力になりそう。(シェミウノフは背はすごく高いけど王子キャラではないから)

パ・ダクシオンが、あまり揃ってはいないものの、キラキラ感はあってよかったと思う。それから、太鼓の踊り。これはロシア系でないとやらないのでなかなか貴重。ソリストの中村優さんが頑張っていて、パワフルに仕上げていた。壷の踊りも可愛らしかった。ブロンズ・アイドルは第一部でも大活躍していたミハイル・マルテニュク。顔と髪は金色に塗られていたけど、体の方は塗りが足りなかったようだ。ブロンズ・アイドルは初役ということだったけど、こちらのほうも良かった。やっぱりピルエットが見事。パ・ド・シャも高さがあったし。後はもう少し仏像らしさを身につければばっちりだろう。

ニキヤは菅野茉莉奈さん。ウェストがとてもくびれていてプロポーションが良い。踊りの方もとても柔らかさがあって美しい。テクニックは正確だし申し分がないのだけど、花篭を渡されて微笑んだ後、かなり嬉しそうに笑顔を浮かべて踊っていた。嬉しい感情の方が大きく勝ってしまっていて、婚約者に裏切られる苦しみや哀しみ、その中でも自分を思ってくれているソロルへの愛、そういった複雑な感情を込めて踊るのはちょっと難しかったのかもしれない。しかし容姿やスタイルに恵まれているし、テクニックもあるので、ベルリンでの活躍も大いに期待できそう。ピョートルのソロルはとってもへたれで、とてもニキヤを正視できずにうつむいている様子。エカテリーナがもともと気の強そうな顔立ちだから、ますますソロルが弱弱しそうに見えてしまう。ニキヤが毒蛇に噛まれてしまった後も、ガムザッティの手をとってうつむいたまま。こんな情けない男に絶望して、ニキヤは死を選んだんだな、と思ってしまった。一方、エカテリーナのガムザッティはとことん強気で、ニキヤにあなたがやったのね、と指を指されても表情一つ変えずに平然として傲慢な表情を崩さない。堂々としていてはまり役だった。今年のミハイロフスキーの冬ツアーでは「バヤデルカ」をやらないのが残念。エフセーエワがマリインスキーに移籍した後、彼女がガムザッティをやればいいんじゃないかなと思った。

というわけで、なかなか楽しめた公演だった。明日は、このエカテリーナ&ピョートル主演の「白鳥の湖」全幕があるので、こちらも見に行く予定。

2008/08/16

8/15 The 1st Prouds and Hopes of Japan Dance Gala 2008

開演が6時で、仕事帰りでは開演時間に間に合わないから、行くのを躊躇していたのだけど、諸般の事情があって観に行くことにした。なかなか楽しい公演だったと思う。パンフレットが高くて買わなかったけど…。

お盆とはいえ平日6時開演で都立大学のめぐろパーシモンにはやっぱり間に合わない。最初の3演目には間に合わず。3演目目の加治屋さんの白鳥は観たかったんだけど、ロビーにあるモニターで観た。このモニターの映りが悪くて、何が映っているのかよくわからないほどで残念。客席は、関係者がすごく多かったようで、シニヨンに髪をまとめたバレエ少女たちがいっぱい。特定のダンサーへのブラボーとか。海外で活躍するダンサーと、発表会のような作品が混ざっているところがちょっと微妙だったのだけど、さすがに海外組はみんな見ごたえがあったし、演目も面白かった。


第一部
『ファランドール』(振付:金田和洋、金田あゆ子)
 金田こうのバレエアカデミー
『眠れる森の美女』パ・ド・ドゥ
 門沙也香(ニュルンベルグ・バレエ)/厚地康雄(バーミンガム・ロヤル・バレエ)
『白鳥の湖』2幕グランアダージョ
 加治屋百合子/ジャレッド・マシューズ(ABT)

『オーバー・ザ・レインボウ』(振付:ミシェル・ヤマモト、デニス・ウンティラ)
 ミシェル・ヤマモト/デニス・ウンティラ(Aalto-Ballett-Theater Essen)
席に着いたばかりで落ち着かない状態で観たのだけど、カラフルでポップな衣装で、可愛いダンスだった。「オーバー・ザ・レインボー」の曲の世界をダンスに見事に移し変えていた。アールト・シアターって、劇場を設計した著名建築家、アルヴァ・アールトの名前から取っているのね。劇場のサイトを観たら、素晴らしいデザインで、見に行きたくなってしまった。

『アルカンジェロ』(振付:ナチョ・ドゥアト)
 秋山珠子/ディモ・キリロフ・ミレフ(スペイン国立ダンスカンパニー)
いかにもナチョの作品です~というスタイリッシュな感じなんだけど、本家スペイン国立ダンスカンパニーのダンサーが踊ると、一味違う。不思議なあたたかさと、ほのかな官能が漂ってきて素敵な空気を作り上げていた。ただ、短い作品であっという間に終わってしまった気がした。


『カフェ・エモーションズ』(アレンジ:レイモンド・レベック)
 信太美奈(mina)、Studio HANA、大巻雄矢、金田あゆ子、青柳朋子/中村俊彦、高橋裕哉
客席が明るくなったかと思ったら、客席の通路から、華やかにドレスアップした歌手の信太美奈さんが登場。お客さんとちょっと会話を交わした後、舞台へあがると、そこはカフェというかアメリカ映画に出てきそうなバーのよう。ジュークボックスが置いてあって、下手後方の扉から、ダンサーが出入りする。ライブハウスのように、ドラムス、ピアノ、ギターの奏者もいて、信太美奈さんの歌を一曲聴かせてもらう。信太美奈さんは、レコード会社のヴォイストレーナーもやっている方で、声量が大きくて豊かな声を持ってる。その後は、2組X2のヒップホップダンサーの女の子たちが登場。ヒップホップのStudio HANAは、WORLD HIPHOP CHAMPIONSHIPで優勝もしているというトップの実力の持ち主と言うことで、なるほどリズム感も、揃い方も抜群。でも、よく見るとすごく若くてかわいい女の子たち。さらに7人のヒップホップダンス、ソロのヒップホップダンサー。そしてバレエのソロを踊った大巻雄矢さんは、国内コンクールで数々の賞に輝いている男の子。正確で美しい技術の持ち主。バレエでは、もう一人ジュニアのコンクールの常連、高橋裕哉さん。ラテンダンスの青柳朋子さんと中村俊彦さんがルンバを踊る。これは、すごくアダルトでセクシーでかっこよかった。カフェのギャルソンに扮したレイモンド・レベックもソロを踊って、派手さはないんだけど、大人の渋い雰囲気が素敵。背が高くてすごくハンサム。それから赤いドレスの金田あゆ子さんが、最初はポアントで、途中で髪を解いてポアントを脱ぎ捨てて、情熱的な踊りを見せた。カフェに集うお客さんたちが、一組ずつ、感情、想いをダンスで表現しているということなんだろう。そしてまた信太美奈さんが「Mr. Bojungles」を歌い上げる。様々な形のダンスを見ることができて面白い試みだったと思う。


第二部
『モルダヴィアン・ダンス』
 木村公香アトリエ・ドゥ・バレエ
斎藤友佳理さんのお母様が運営する教室の子供たちによる、モイセーエフのレパートリーだという民族舞踊。発表会等でも、こういうキャラクターダンスものって珍しいのでなかなか可愛くて面白かった。

『アメニモ』(振付:小池ミモザ)
 小池ミモザ(モンテカルロ・バレエ)
小池さん自身による振付作品で、宮沢賢治の「アメニモマケズ」の朗読に合わせて踊るというもの。長身で手脚が長く、でもしっかりと筋肉がきれいについている小池さんは、外国人ダンサーのような存在感がある。その恵まれた肢体を生かした、伸びやかで静と動のコントラストがはっきりとした作品。アラベスクなどで静止している時に、朗読が流れ、静かになると身体を動かすという振付で、オリジナリティがあって面白い。

『ブラックバード』(振付:イリ・キリアン)
 中村恩恵
この間のアサヒアートスクエアで観た時も、中村恩恵さんは素晴らしいと思ったけど、ホント、キリアンを踊らせると彼女はすごい。特にこの作品は、彼女のために振付けられたというのがよくわかる。彼女は中性的な身体の持ち主なのだけど、滑らかで力強い動き、魂を震わす何かを持っていて、わけもなく感動を覚える。大地に根ざしたような、しっかりとした普遍性、確かで変わらずにそこにいるものがある。

『オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト』(振付:デヴィッド・ドーソン)
 竹島由美子/ラファエル・クメス・マルケ(ドレスデン・バレエ)
秋山さんも小池さんも中村さんも素晴らしいけど、竹島さんも本当にすごい表現力を持ったダンサーだと思う。確かな技術の上に表現力があって、しなやかで、よどみがなくて、表現力が豊か。涼やかなのだけど、血が通っている。軸のぶれないピルエット、柔らかい股関節、パートナーが長身なのに対して小柄なのに、大きく見える。ドーソンの作品は立体感があって、変幻自在で面白い。ラファエル・クメス・マルケはすごく背が高くて、なかなか素敵な人。くるくると変わるポジションの変化への対応やサポートがとてもうまい。

『海賊』1幕よりランケデムとグルナーラの踊り
 寺島まゆみ/芳賀望(新国立劇場)
コンテンポラリー作品が続いた後に古典があると、ちょっと変化がついて良い。寺島まゆみさんのギュリナーラは、儚げでヴェールを巻いた姿がとても美しい。いやいやをするところも、被虐的でかわいそうな感じ。でも技術の方はダイナミックで、大きくてのびのびしているし、すごく軽やかで愛らしい。芳賀さんは、髭を描いた胡散臭いランケデムがよく似合っていて、演技の方もなかなか堂々としたもの。深く沈みこむプリエで着地するジャンプも決まっていた。さらに芝居がかって悪乗りしてくれれば、もっと楽しくなるかも。

『グラン・パ・ド・ドゥ』(振付:クリスチャン・シュプック)
 酒井はな(新国立劇場)/ジェイソン・レイリー(シュツットガルト・バレエ)
おなじみのコミカルな演目。黒ぶちメガネにチュチュ、ピンクのハンドバッグを持った酒井はなさんは客席から登場し、お客さんと握手なんかしちゃったりして、最初からノッている。キュートなコメディエンヌぶりがとっても達者で、照れなど微塵も見せず、表情をくるくる変えながら、可愛らしくはじけてくれた。この役に要求される高度な技術もばっちりで、ハンドバッグを口にくわえたままのバットマンやフェッテは正確で美しい。ジェイソン・レイリーにぐるぐる振り回されて、落とされて、舞台袖まで這って行く姿も笑えた。ジェイソン・レイリーは「21世紀に輝くエトワールたち」のDVDでもこの作品を踊っているので、間違いなく良いだろうと思ったけど、生で見ると彼の魅力が良く伝わってくる。脚のラインがきれいで、ノーブルプラスちょっとワイルド系。表情が豊かで、演技の達者振りがよくわかる。彼のオネーギン、今からとっても楽しみ!

『デフィレ』振付:クリスチャン・シュプック)
 河野舞衣(ミュンヘン・バレエ)ほか、海外留学生(ロイヤル・バレエ・スクール、ジョン・クランコ・スクール、ミラノ・スカラ座スクール、ロック・スクール、サンフランシスコ・バレエ・スクール、ABT付属JKOスクール、オーストラリア・バレエスクール他)
最初に一人、花を持った半ズボン姿の男の子が登場する。この男の子が、ものすごい美少年で将来が楽しみ。それからチュチュ姿の女の子二人が入ってきて、3人で踊る。そして黒いチュチュの女の子たち、彼女たちとペアを組む男の子たちが登場しての群舞。女の子たちの中に、去年のローザンヌコンクールでスカラシップを得て、今ミュンヘン・バレエにいる河野舞衣さんがいた。ローザンヌで観客賞を受賞しただけあって、踊りの見せ方が光っている。そしてフィナーレへ。

全部を見られなかったのが残念だったけど、特に後半のコンテンポラリーが充実していて、見ごたえがたっぷりあった。ヨーロッパのバレエ団で踊っているダンサーは、よほどメジャーなカンパニーじゃないと日本で観る機会も少ないので、こういうガラはありがたい。バレエ以外のダンスや歌が入っている演目があるという試みも楽しかった。今回が第一回ということなので、第二回も期待したいところ。

21世紀に輝くエトワールたち-パ・ド・ドゥの魅力-21世紀に輝くエトワールたち-パ・ド・ドゥの魅力-
アリシア・アマトリアン, ジェイソン・レイリー, ゼナイダ・ヤノフスキー, フェデリコ・ボネッリ

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2008/08/14

ボリショイ・バレエの「スパルタクス」香港公演

ボリショイ・バレエのオフィシャルにこんなお知らせが出ていました。

http://www.bolshoi.ru/en/season/press-office/pconf/notice/index.php?id26=989

9月17日(水)の一回のみ、ボリショイ・バレエがボリショイのオーケストラを引き連れて「スパルタクス」を上演するのです。ポスターが凄くカッコいいです。

キャストは、
スパルタクス:イワン・ワシリエフ
フリーギア:ニーナ・カプツォーワ
クラッスス:アレクサンドル・ヴォロチコフ
エギナ:ガリーナ・ステパネンコ

スパルタクスが、先日スパルタクスデビューをしたばかりのワシリエフというのも注目ですが、エギナはステパネンコなんですね。非常にそそるキャスティングです。しかも、ボリショイのオーケストラつき。しかし1回のみの公演で平日だから、日本から観に行くのはなかなか難しいですよね。

前々回のボリショイ来日公演はたしかに「スパルタクス」をやったのですが、なんで今回は「白鳥の湖」なんでしょうね。ジャパン・アーツはABTといい、マリインスキーといい、本当に「白鳥」が好きですね。
新しいスパルタクスのワシリエフを日本でもぜひ披露して欲しいです。

会場はHong Kong Cultural Centreです。
http://www.lcsd.gov.hk/CE/CulturalService/HKCC/en/location/location.html

全然関係ないんですが、ここには、レオン・ライのコンサートを観に行ったことがあります。客席にチャン・ツィイーが来ていました。

新潟県中越沖地震チャリティー・バレエガラの演目発表

新潟県中越沖地震チャリティー・バレエガラコンサートの演目が発表されました。
全会場を載せると長くなるので、とりあえず東京だけ掲載します。
奈良・新潟には、エレーナ・フィリピエワとセルゲイ・シドルスキーが出演するんですが、東京には出ないのが残念ですよね。
フィナーレは、ダンサー全員が出演しての「ドン・キホーテ組曲」(2幕の酒場のシーンと3幕)ということなので、とても楽しみです。

http://niigata-gala.seesaa.net/

9月1日(月)新宿文化センター18:30開演

第一幕
1. 開会式
2.チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ=著作権の承認が間に合わなかった場合→眠れる森の美女(パ・ド・ドゥ)=寺島 ひろみ、アンドレイ・メルクリエフ
3. 薔薇の精=さいとう 美帆、アントン・コルサコフ
4. 白鳥の湖(2幕)シリル・ピエール、ダリヤ・スホルコワ
5.バランシンのソナチネ オクサーナ・クチェルク、イーゴリ・イェブラ
6. 海賊(2幕)アリーヤ・タニクパエワ、ミハイル・マルティニュク イリヤ・クズネツォフ
7. Ne me quittes pas=アンナ・パシコワ
8. ライモンダ=ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ
9. マノン(第一幕エレジー)=ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ

第二幕
2. 海賊(1幕)ランケデムとギュリナーラ 寺島 まゆみ、芳賀 望
3. コンテンポラリー作品(題名未定)=松崎 えり、大嶋 正樹
4.カルメン=アンナ・パシコワとアンドレイ・メルクリエフ
5. アゴン シリル・ピエールとダリヤ・スホルコワ
6. ロミオとジュリエット(バルコニー)オクサーナ・クチェルク、イーゴリ・イェブラ
7. シェヘラザード 高橋 晃子、イリヤ・クズネツォフ
8.ラ・シルフィード 後藤 和雄、アリーヤ・タニクパエワ
9. 瀕死の白鳥 ユリヤ・マハリナ
フィナーレ:ドン・キホーテ(組曲)ガリーナ・ステパネンコ、アントン・コルサコフ、アンドレイ・メルクリエフ、エレーナ・コレスニチェンコ、 アンナ・パシコワ 日本人ダンサー2名他、全員出演予定

なお、このガラに出演する高橋晃子さんのブログで、イリヤ・クズネツォフとリハーサルをしている様子の写真がたくさん掲載されていて、とても面白いです。プロモーションでテレビに出演した時の模様の写真もあります。

http://suiren1011.exblog.jp/

2008/08/13

吉田都さん8/20「徹子の部屋」に出演/ルグリ&小出さんインタビュー

吉田都さんが、「徹子の部屋」に出演されるとのことです。

徹子の部屋. 8/20(水) 13:20 ~ 13:55 テレビ朝日

楽しみですね~踊っている映像なんかも紹介されるといいですよね。

*********
東京バレエ団の「ジゼル」のプロモーションのために、NBSのサイトで、マニュエル・ルグリと小出領子さんのインタビュー(記事と動画メッセージ)が掲載されています。エトワール・ガラの忙しい間を縫って取られたインタビューのようですね。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/2008/08/post-55.html

「私の中ではこの演目は、若さではなく円熟味と結びついている作品だから。特にアルブレヒトという役は、30歳を越えてからようやく理解が深まってくる役柄です。告白するなら私は、最初にこの演目をボリショイ・バレエ団と共に踊ったとき、さんざんなできばえの踊りしかできず、そのあと数年間"ジゼル嫌い"になっていたほどです(笑)。本当にこのバレエが好きになれたのは、10年ほど前からですね。」とはルグリ。

ルグリ様でもそんなことがあったんですね。現在20歳のマチアス君も、きっと10年後には素敵なアルブレヒトになっているんじゃないかという気がします。

「私にとって領子は、純粋なクラシックバレエのエッセンスを持つバレリーナ。一緒に踊っていると、とても優しい気持ちになれる。」とルグリさんは、気遣いも忘れていませんね。この二人の共演は見に行くつもりなので、楽しみにしています。

ところで、このインタビューを行った岩城京子さんのサイトでは、マチュー・ガニオのインタビューが、前回ご紹介した時より大幅に追加されていますので、ぜひどうぞ。

http://kyokoiwaki.com/blog.html

「僕はどちらかというと「より新しい古典」が好き。ラ・バヤデール、ドン・キホーテ、ラ・フィユ・マルガルデなんかがだね。」

「でもいずれにしろ一番大変なのは、昨日はモダン、今日はクラシック、明日はコンテンポラリーと、身体を対応させていかなくてはならないこと。筋肉の使い方がそれぞれ違うから、これは本当に大変」

オペラ座にけが人が多い理由のひとつのような気がします。

―ブベニチェクの作品については。
明後日からリハーサルをはじめるところ。これが彼の作品への初挑戦です。数ヶ月前に作品のビデオをバンジャマンに見せられて「もしやりたいなら、僕に言って」と言われたんだけど。とても素晴らしい作品だったから「是非、僕にやらして」と即座に頼んだ。僕は日本に来るときはいつもオペラ座とは違うことをするのにいいチャンスなんです。オペラ座ではいつもわりとクラシカルな役柄を踊ることが多いから。だからこういったコンテンポラリーな作品にもたまには挑戦したい。あとは日本で王子様として見られてるところが多いだろうから…、それは別に嫌なことじゃないんだけど、普段もそういう目でスター扱いされると嫌だから。こういう男っぽい役がひとつぐらいないとね。

ぜひ、「エトワール・ガラ」というオペラ座の公演とはひとあじ違ったユニークな試みを、今後も続けて欲しいですよね。

2008 International Gala Hikasa Ballet 国際交流公演

2008 International Gala Hikasa Ballet 国際交流公演に行ってきたのですが、その後もろもろ打ち合わせや作業をして、感想を書く時間がなくなっちゃいました(現在の時刻午前3時です)。
とりあえず雑感を書いて、時間があれば残りを書きます。

パンフレットが500円の割には充実した内容でとても良心的でした。お客さんの入りも、関係者っぽい方が多かったですがよく入っていたと思います。いろいろなダンサーさんも見に来られていました。(でも、隣にもそういう方がいましたが、バレエの先生に限って上演中にいっぱいしゃべっていてうるさいのですよね)

「オクテット」(関直人振付) 安倍真由美、住友拓也、エルハン・グゼル(イスタンブール国立オペラ・バレエ劇場)、メリッヒ・メルテル(イスタンブール国立オペラ・バレエ劇場)他

「ライモンダ」よりGPDD 田中祐子、逸見智彦(牧阿佐美バレエ団)

「ヒューマン・ウィズイン」(ニキータ・セバスチャン振付) コリーヌ・ヴェルデイユ(ベルリン国立バレエ)、ティグラン・ミカイェリャン(ミュンヘン・バレエ)

「ハレキナーデ」 岩本桂(牧阿佐美バレエ団)、エルハン・グゼル

「海賊」よりGPDD 金田洋子、メリッヒ・メルテル

「モールフーン」(ドミトリー・シムキン振付) ダニール・シムキン(ABT)

「ディアナとアクティオン」 ヴィエングゼイ・ヴァルデス、ロメル・フロメタ(キューバ国立バレエ)

「ロミオとジュリエット」(篠原聖一振付) 下村由理恵、山本隆之

「ア・ビアント」(牧阿佐美、三谷恭三、ドミニク・ウォルシュ振付) 田中祐子、逸見智彦

「レ・ブルジョワ」(ベン・ファン・カゥウェンベルグ振付) ダニール・シムキン

「白鳥の湖」 3幕GPDD コリーヌ・ヴェルデイユ、ディグラン・ミカイェリャン 

「5タンゴ」(ハンス・ファン・マーネン振付) カルロス・ピニロス(ポルトガル国立バレエ)

「牧神の午後」(ティム・ラッシュトン振付) ヨハン・コボー

「ドン・キホーテ」よりGPDD ヴィエングゼイ・ヴァルデス、ロメル・フロメタ

予想通りというべきか、ダニール・シムキンとキューバ国立バレエのヴィエングゼイ・ヴァルデス&ロメル・フロメタがすべて美味しいところを持っていったガラでした。

ヨハン・コボーの「牧神の午後」はなかなか異色で、得意の脚捌きを生かした跳躍がたくさんあったり、駆け抜けていったり、彼の怪しい存在感と照明やスモーク効果をうまく使っていて、面白かったです。

正直1部は、ダニール・シムキンが登場するまではあまり盛り上がりもなく、うーんって感じだったのですが、ダニールの「モールフーン」は、YouTubeの映像で観ていたとは言え、実際に観るとやっぱりものすごく面白いし、ダニールの人並みはずれた柔軟性とちょっと子供っぽく両性具有っぽい妖精キャラクターがうまくはまっていて、大うけでした。この演目の音楽、「展覧会の絵」からなのだそうだけど、こんなパートあったっけ?

「海賊」の金田洋子さんは、パンフレットによるとグルジア国立バレエのオーディションに合格し、入団する予定がグルジア情勢の悪化で断念したとのことで、来シーズンから新国立劇場に入るそうです。しかし、いくらなんでも痩せすぎで拒食症かと思ってしまうほど。手脚が長くて細くて、アラベスクのラインはすごく美しいのだけど、あんなに細いと全幕を踊るスタミナがあるかどうかは不安だし痛々しすぎる…。パートナーのメリッヒ・メルテルはイスタンブール国立バレエ・オペラ劇場のプリンシパルだそうで、大変ルックスが良い。グラン・テカールはダイナミックに大きく決まっていてカッコいいのですが、ちょっと回転系は苦手そう。

「ライモンダ」の牧のペアは残念ながらダメでしたね。特に逸見智彦さん、こんなにへろへろなダンサーでしたっけ?ピルエットで足がすぐにアテールになってしまったり、ちょっとガラに出られるようなレベルの踊りではありませんでした。田中裕子さんも前半はちょっと不調そうで、コーダで持ち直した感じ。

「ロミオとジュリエット」は、下村由理恵さんが素晴らしかった。表現力が豊かで、恋する少女の燃え上がる心のうちを繊細に踊っていました。山本さんはそれに比べると非常に淡白で物足りませんでした。

「5タンゴ」はとてもカッコいいナンバーなのですが、とても短くて見せ場が少ないのが残念でした。「三つのグノシェンヌ」のファン・マーネンの振り付けなんですね。キャンセルしたペアに代わって急遽出演したポルトガル国立バレエのカルロス・ピニロスはタンゴのリズムによく乗っていていい感じでした。

ダニール・シムキンの「レ・ブルジョア」もプラハ・ガラのDVDなどで散々見尽くしたけど、改めて生で観るとやっぱり凄かったです。軽々ともの凄い技を決めちゃって。あの位置からああいう回転ができるか!とびっくり。カーテンコールで並んでいると、身長はヨハン・コボーと同じくらいなんですね。コボーの方が顔が大きい分、肩の位置はダニールの方が上というくらい。

でもやっぱり、世界ビックリ人間と言ったら、キューバのヴィエングゼイ・ヴァルデス、ロメル・フロメタのペア。世界バレエフェスティバルでも、二人のドン・キホーテの凄さは観ていたし、例のパリで撮影された全幕のDVDも観ていたけど。ヴィエングゼイ・ヴァルデスのバランスの長さ、ぐらつかなさは凄すぎますね~。アダージオなんか、バランスばかりでほとんど踊っていないんじゃないかと思うくらい。サポートつきピルエットも12回くらい回っているし、途中からサポートなんかいらないわ、って感じ。ロメル・フロメタはピルエットは時々軸がぶれるけど、跳躍が得意で、高く跳んでいるし、クペ・ジュテ・アン・トゥールナンでぐるぐる回っていくときには、空中に静止しているんじゃないかと思うほど浮かび上がっていました。グラン・フェッテは、前半は全部ダブルで、トリプルが2回入ったかな?とにかく軸がまったくぶれないし位置は動かないし、鉄壁のテクニックは本当に凄すぎて大盛り上がり。

世界バレエフェスティバルでも同じことをやっていたと思うんだけど、アダージオで、ヴァルデスがアラベスクで長~いバランスをした後、ポアントのままの状態で脚をそのままルティレの位置に持ってきちゃうんですよ。そこまでバランスを保てるって本当に凄い。しかも、大変そうな顔は見せないで、輝くばかりの笑顔のままやっちゃうんです。ヴィエングゼイ・ヴァルデスは、ちょっとだけディアナ・ヴィシニョーワに似ているというか、ヴィシニョーワからディーヴァっぽさを取って親しみやすくした感じで、とっても愛嬌があって可愛らしいのです。

ホント、キューバペアとダニール・シムキン(それとコボー)を観られただけで、おつりが来ました。楽しかったです。


シムキン君の「レ・ブルジョア」と、お父さんと踊った「マイ・ウェイ」が観られます。

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2008/08/12

「コッペリア」熊川哲也出演公演の中止

ちょこっとバレエに行ってきます」のmiyaさんに教えていただきましたが、K-Balletの「コッペリア」公演のうち、熊川哲也が出演する回は、熊川さんの怪我のために中止となったとのことです。K-Ballet Companyの公式サイトにお知らせが出ていました。

http://www.k-ballet.co.jp/topics/performance.html#080812

10月・11月に予定しておりました熊川哲也出演のコッペリア公演は、怪我のため中止とさせていただきます。

なお、現在振替公演を調整中です。
日程、振替・払戻方法等に関する詳細は、追って本WEB上にて発表いたします。

重ね重ねご迷惑をおかけすることを深くお詫び申し上げますとともに、何卒ご理解のほど、宜しくお願い申し上げます。

※熊川哲也の出演しない公演は予定通り開催いたします。


熊川さんは、右膝の半月板損傷ということなので、無理しないで治療に専念して欲しいなと思っていたところ、やはり公演が中止になったとのことです。熊川さんの出演しない公演は予定通り開催ということなので、吉田都さんのスワルニダは観られそうですが…。熊川さんの出演日だった日は、全12公演のうち、8公演でした。それが完全に中止になるのか、別キャストになるのか、そのうち発表があることでしょう。

本当に都さんのスワニルダは観たいのですが、エトワールガラ全公演に行くということをやってしまったために大変な金欠となってしまい、チケットが買えません(涙)。ポリーナ・セミオノワとアンドレイ・ウヴァーロフが出演する東京バレエ団の「ドン・キホーテ」も売ってしまいました。

で、話を元に戻すと、熊川さんにとっても、ファンにとっても、もちろんカンパニーにとってもとてもつらい時だと思います。ダンサーの怪我は、彼らが身体ひとつを資本に生きているということを考えると、本当につらい話ですよね。熊川さんが全快して元気な姿を見せてくれる日を気長に待ちたいと思います。

2008/08/11

エトワール・ガラ終了

エトワール・ガラの全5回公演が今日終了しました。今回、なんとか全公演を観ることができましたが、さすがにとっても疲れて、いろいろな感慨もあって、感想を書く余裕がありませんので、しばらくお待ちください。それに体調があまりすぐれなくて。

公演自体は、本当にとっても楽しかったです。特に最終日の今日は、カーテンコールでダンサーの皆さんがはじけまくって、マチアス&ルグリのピルエット・ア・ラ・スゴンド合戦から、ルンキナ、そしてマリ=アニエス・ジロのフェッテ、マチアス&ユレルが手を取り合ってのダンス、マチューの跳躍から始まり、ダンサーが客席に下りていって、観客を舞台に上げてのダンス大会と、本当にノリノリで最高でした。

猛烈に暑い東京でしたが、観客も、ダンサーもみんなとても楽しめて、最高のガラ公演だったと思います。コンテンポラリーと古典のバランスもちょうど良かったと思うし、パートナーの組み合わせを変えてみたり、3人で踊る演目やソロ演目もあったりととても多彩でした。また、世界初演作品が二つありましたが、両方ともとても面白かったし、日本初演作品も楽しめました。これも、公演をプロデュースしたバンジャマン・ペッシュの功績が大きかったと思います。また、これだけ豪華なメンバーの出演だったにもかかわらず、S席が14000円とリーズナブルなお値段だったのも嬉しいです。

個人的には、ハンブルクのシルヴィアとサーシャのペア、そしてイリ・ブベニチェクが特に輝いていたと思います。特に、いろいろな作品を踊り演じられるシルヴィアは、あんなに可憐なのに凄いダンサーだと思いました。でも、今回出演してくれた人は、みなそれぞれ素敵だったと思います。マチューも美しくも立派なエトワールになっていたし、マリ=アニエスの堂々とした女っぷりも魅力的だったし、ルンキナはロシアのバレエの美を見せてくれたし、エレオノーラも、現代作品での才能が光っていました。そして次代のホープ、マチアスの輝きも!ルグリさんの若々しさ、音楽との戯れももちろん忘れてはいけません。座長のペッシュも、演目選びや交渉など忙しかっただろうに、パリで観た「椿姫」の感動をひとつのパ・ド・ドゥで再現してくれたし、メラニー・ユレルの安定した技術と、可愛いジュリエットも印象的でした。

来週はお盆期間で、仕事はありますが、それほど忙しくないと思うので(希望的な観測)、ゆっくり感想を書いていきたいと思います。

ワガノワ・バレエ・アカデミーの写真展

Times紙には、ワガノワ・バレエ・アカデミーの取材記事と、美しい写真が紹介されています。ニューヨークのClampArt Galleryで、イスラエルの女性写真家Rachel Papoのワガノワ・バレエ・アカデミーを撮影した写真展が開催されることに関連しての記事です。

http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/stage/dance/article4472630.ece

レイチェルは、5週間の間、ワガノワ・バレエ・アカデミーを取材しました。彼女自身、イスラエルで15歳までバレエを学んでバレリーナを目指した経験があるとのこと。プーチンの時代になっても、ワガノワの厳格な教育は伝統どおりに進められています。

ボリショイ・バレエの元芸術監督で、現在はボリショイで教師を務めるボリス・アキモフの話では、ペレストロイカやソ連の崩壊が起きた後も、バレエについては何も変化がなかったとのこと。しかし、ソヴィエトの習慣が廃れ、ロシアが豊かになるに連れて、生徒の質は変わって来ました。

ワガノワ・バレエ・アカデミーの校舎は、原油価格の上昇で急速に豊かになったロシア経済を反映し、1500万ポンドの予算で改装工事が行われています。およそ半分を占める寮生にはコンピュータールームが備えられ、従来は4人部屋だったのが、2人部屋となりました。

しかし、10歳児を対象とした入学試験には、従来各所で100人の受験生がいましたが、現在はわずか20人しか受けに来なくなりました。特に、男子の受験者が急速に減っているとのことです。大きな要因としては、ソリスト以外のバレエダンサーの給料が安いことを親が意識するようになったからとのこと。マリインスキー劇場のコリフェであるアンナ・ラヴィリエンコは、未だに寮生活をしており、生活できるだけの給料はもらっているものの、とても独立できないと語っています。

ワガノワの授業は、ボリショイと比較して特に技術的な側面が重視されます。ワガノワのスタイルは、ロシア、フランスそしてイタリアのバレエ学校のスタイルの要素が組み合わされたものです。アカデミーが作り上げるダンサーは、特に上半身の動きが優れているとされています。教えるメソッドは計画的であり、正確です。ボリショイ(ロシア舞踊アカデミー)でのライバルは、ペテルブルグのダンサーは、あまりにも技術的な細部に捉われていると指摘します。生徒たちは、授業で学んだステップについての作文を書かされ、筋肉がどのように使われ、身体がどのように動いているのかを記述しなければなりません。また、ミスをしたときには、なぜミスをしたかを分析した作文を書かされます。

ワガノワの350人の生徒たちのクラスは朝9時に始まり、6時まで続きます。マリインスキー劇場に出演している場合には、11時もしくはさらに遅くまで拘束されます。下級生は、クラシックバレエのレッスンが2時間と、5~6時間ののアカデミック・レッスンがあります。さらに、ヒストリカル、モダンそしてキャラクターダンスの授業もあります。1週間のうち6日間は授業があり、そして日曜日もリハーサルで埋まってしまうことがあります。「退屈で死にそうになることもある」とは18歳のアレクセイ・ポーポフの談話です。

「お前は役立たずだ」と罵るような悪名高い教師たちをはじめ、以前のような厳しい態度を取る教師はいなくなり、若く、優しい教師が雇われるようになりました。しかし、中の空気は今でも競争心があふれており、生徒たちは、マリインスキーでの役を獲得し、教師に好かれるように激しく競争しています。「アカデミーでは本当の友達はいない。舞台の上では全員ライバルだから」とアレクセイ・ポーポフは言います。

そして、生徒たちは退学させられる恐れと常に背中合わせになっています。彼らは年に2,3回、そして試験の前に体重を量られます。50キロを超えてしまった女子生徒は、男子にリフトされるには重過ぎるとされ、試験の成績を落とされ、やせることができなければ退学になります。「私のクラスの生徒の全員がダイエットをしています。まず、お菓子は食べないし、小麦製品も口にしません」と16歳のアレクサンドラは言います。しかしながら、拒食症になってしまう生徒は数年に一度しかいないとのことです。

女子生徒の脚は、少なくとも身長の半分の長さはなくてはならず、少女たちは脚を長くするために奇妙な運動をします。「彼女たちは、脚に重石をつけてバーに架けます。足ひれをつけて泳ぐことで、脚が長くなるそうです。そしてほとんどの時間、ストレッチをしています。私の授業では、生徒たちは机ではなく、床の上でストレッチをすることを許可しています」とは、アカデミーの英語教師の談話です。

50人の入学者のうち、40~80%の生徒はドロップアウトします。今年は、卒業生は30人おり、2009年の卒業生はわずか12人しかいません。アレクセイ・ポーポフが入学した学年で残っている男子は、彼一人です。

レイチェル・パポのサイトでは、ワガノワ・バレ・アカデミーの生徒たちの日常を撮った美しい写真を見ることができます。
http://www.rachelpapo.com/

エジンバラ国際フェスティバルでのグルジア国立バレエとニーナ・アナニアシヴィリ

Sunday Herald紙にて、エジンバラ国際フェスティバルに参加中のグルジア国立バレエと、芸術監督であるニーナ・アナニアシヴィリについての記事が載っていました。ニーナが踊る「ジゼル」が、フェスティバルのオープニングを飾ったとのことです。

http://www.sundayherald.com/news/heraldnews/display.var.2421916.0.2_georgian_ballet_at_edinburgh_festival_we_fear_for_our_families.php

ニーナはこのように語りました。
「私たちにとってはとてもつらい状況です。私たちの家族はみなグルジアに住んでおり、わずかな情報しかないのでとても不安です。外国にいる私たちは、いったい何が起こっているのかもわからないので、ますます不安になります。私たちは、今いるべき場所がスコットランドだと考えており、私たちのやり方で、故国を支えたいと思います。しかし、このフェスティバルでは、誰もがとても温かく、すべてを手伝ってくれるので、とても気持ちよくすごすことができています」

グルジア国立バレエは、8月7日にエジンバラに到着し、まさにその時、グルジア軍が、南オセチアへと侵攻したのです。南オセチアを支持するロシア軍と、グルジア軍との戦いで、すでに数百人の死者が出ています。

ニーナ・アナニアシヴィリは、ロシアは、グルジアがすでにソ連の一員ではないという事実を受け入れて欲しいと語りました。「私たちは独立した国家であり、彼らは、その事実を知らなければなりません。私たちの話に耳を傾け、私たちがすでにロシアの一部ではないという結論を出して欲しいと思います」

エジンバラフェスティバルの広報担当者は、故国の状況にもかかわらず、グルジア国立バレエがフェスティバルに参加して公演を行ったことを讃えました。「未だかつて、フェスティバルのプログラムがこれほどまでにタイムリーで、世界情勢にかかわったものであったことはありませんでした。私たちは、グルジア国立バレエと、異なった方法で芸術を作り上げているアーティストすべてに敬意を表しています。今年のフェスティバルのテーマは、「国境なきアーティスト」です。1947年に第一回のフェスティバルが開催されたのも、第二次世界大戦後の分断されて破壊されたヨーロッパの再建のために芸術を役立てようという考えからです」

ニーナ・アナニアシヴィリは、ロシアとグルジアの両方で国家勝利賞を受賞されているとともに、両国の人民芸術家でもあります。そして、彼女の夫は、グルジアの外務大臣に就任しています。「私にとって、今の状況はとても複雑です。私はグルジアに生まれましたが、ロシアのバレリーナであり、ロシア人の友人がたくさんいます。私はボリショイ・バレエに22年間在籍していました。私は、グルジアで、ロシア式のバレエを教え続けます。しかし政治はこれとは別の問題です。非常に悪い状況です。私は、ロシアに対してとてもよい感情を持っていたので、非常に残念ですが、若い世代の多くは、両国間の間には問題しかないと思っているようです。私は自分の人生の中で、この状況を変えたいと思っていましたが、突然この戦争が始まってしまいました。私はとても悲しく思っています」

グルジア国立バレエは、現時点では、来週グルジアに戻る予定になっています。8月12日、13日には、引き続きエジンバラ国際フェスティバルで公演を行う予定です。

*****
グルジアのオリンピック代表選手は、競技に参加せずに帰国するという話も伝わってきています。政治と芸術や文化、そしてスポーツは別物だと思いたいところですが、切っても切り離せないところもあるのでしょうね。いまはただ、平和的な解決を望むばかりです。

それにしても、2週間ほど前には大阪で、太陽のような明るい笑顔で、華やかで素敵なメドーラを踊ってくれたニーナが、こんな悲しい状況の中にいるとは、なんということでしょう。

2008/08/10

8/7 エトワール・ガラAプロ(あと少し)

平日マチネということで、客入りはそれほどよくなかったようだけど、代わりに芸能人の方や日本のバレエダンサー数人が招待客で来ていたみたい。数日前に買い足したチケットで、足が切れてしまう前方端の席。確かに足首から下は見えないので、バレエを観るにはまったく適していないけど、ダンサーの息遣いはよく聞こえてくる。それから、見切れ席なので、袖で待機しているダンサーが見えてしまったりするのが面白い。ペッシュが出ている2演目の次の出演者がマチューだったので、ペッシュの姿をニコニコしながら見ているマチューが見えて、ちょっと楽しかった。


1)「ハムレット」第2幕より パ・ド・ドゥ
(振付:J.ノイマイヤー 音楽:M.ティペット)
シルヴィア・アッツォーニ、イリ・ブベニチェク

去年のフェリのガラ「エトワールたちの花束」で、シルヴィアとリアブコが踊ったパ・ド・ドゥ。シルヴィアはいつまでたっても少女のような愛らしさを持ち続けている人だなって思う。そのあたり、まさにフェリに通じる部分があるなと。リアブコは憑依型のダンサーで、役が文字通り彼に取り憑いてしまい、役柄そのものの人に変身するのだけど、イリは独特の繊細さとあやうい狂気を持っている人だ。いつ壊れちゃうのかと見ていてどきどきしてしまう。シャツの前の部分が半分だけ出ていたり、花冠をかぶっていたり。ハムレットとオフィーリアが戯れるシーンにも、不幸の予兆が漂っている。イリはやっぱりノイマイヤー作品が似合うなあ。とにかく、イリにしてもシルヴィアにしても(そしてもちろんリアブコもだけど)、表現者としてただならぬものを持っているのがよくわかる。

2)「ジゼル」第2幕より
(振付:M.プティパ、J.コラリ、J.ペロー 音楽:A.アダン)
スヴェトラーナ・ルンキナ、マチアス・エイマン

「ジゼル」はルンキナの真骨頂。ジゼルを踊るために生まれてきたような、儚く透明でひんやりとした、浮遊する魂だけの存在のよう。ロシアのダンサーというのは、やはり上半身や腕が美しい。この中でただ一人のロシア人バレリーナだから、特にその繊細な美しさが際立っている。しばらくロシアバレエばかり観た後に、オペラ座やそのほかの国のバレエ団を見ると、やっぱりロシアバレエは特別な、純粋な美があるって思うのだ。でももちろん、オペラ座にはオペラ座の良さがあるわけで、その良さを表現しているのが、このエトワール・ガラのコンセプトなのだと思う。とにかく、ルンキナのジゼルは、もはや至芸の領域に達していて、冷たい空気を会場の中にまで満たすことができるほどの、場の支配力を持っていた。

マチアス・エイマンはアルブレヒトは全幕で踊ったことがないはずなので、演技にぎこちないところがあったし、サポートもちょっと心もとないところも。とはいっても、二日目の方がサポートは安定していた。しかし彼の良さは、テクニックが凄い人でありながらも、そしてルックスも少々エキゾチックでファニーフェイスでありながらも、甘くノーブルな雰囲気が出せるところにある。テクニックが際立っている人はどうしてもドゥミキャラクテールになってしまいがちだけど、彼だったら、貴公子もいける!それは、彼がエレガンスを持ち合わせているからだ。顔のつけ方や腕の使い方に品があり、背が高いわけではないけど、脚のラインが美しい。そして待ってました!のアルブレヒトのヴァリエーション。オーチャードホールの舞台が狭いと思ってしまうほどの高くて大きな跳躍。若干足音はするものの、あれほど高く跳んでいたら無理もないだろう。それでいて、足先がきれいなので、これ見よがしな感じもしない。最後に倒れこむときには、一度ひざまづいてポーズを取ってから、徐々に倒れていくというふうに演技をしている。オペラ座が「ジゼル」を今度いつ上演するのかはわからないけど、ぜひマチアスにはアルブレヒトを踊って、表現に磨きをかけて欲しいって思う。


3)「椿姫」第1幕より
(振付:J.ノイマイヤー 音楽:F.ショパン)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ/ピアノ:上田晴子

この二人の「椿姫」は6月末にガルニエで全幕を観て、非常に好感を持った。中でもペッシュのすべてを焼き尽くさんばかりの情熱には圧倒された。課題とされていたリフトもとてもスムーズだったし、エレオノーラの、リフトされている時のポーズもとても美しかった。今回は、「青のパ・ド・ドゥ」と呼ばれる、まだ出会ったばかりの二人のシーン。そしてペッシュのまっすぐで熱い(でもちょっと世慣れた感じ)のアルブレヒトに対峙するエレオノーラのマルグリット像が素晴らしかった。私がガルニエで観た時には、まだ今シーズン一回目ということで、必要以上に気負ったところが少し感じられたのだけど、役柄を踊りこんですっかり自分のものにした彼女の自信が伺えた。マルグリットという役は複雑で、クルチザンヌ(=高級娼婦)でありながらも、知性があって、誇り高くて、でも同時にこんな仕事に身をやつしている自分を憐れんでいる。常に矛盾と戦っているような存在。だから、咳き込んで苦しむ自分の姿を鏡に映して青ざめながらも、アルマンが情熱のまま駆け寄ってきた時には、ちょっとからかってみたりして、大人の女の余裕を見せようとする。真摯な愛に慣れていないから、足元に身を投げ出さんばかりに迫られた時には、思わず動揺してしまう。至福の瞬間と、死の予感に怯える気持ちが交錯する様子を見事に演じていたと思う。全幕を観たような満足感が、ここで再び得られてとても満足。


4)「メリー・ウィドウ」 ※世界初演
(振付:P.ラコット 音楽:F.レハール 衣裳:P.ラコット)
マリ=アニエス・ジロ、マチュー・ガニオ

最初に見たときには、マリ=アニエスの悪趣味一歩手前の迫力ある衣装に仰天した。未亡人であることを示すヴェールをかぶった上にマント。羽を使った髪飾り。黒を基調にストライプをウェストのところで絞ったようなチュチュからは白い脚が覗いているのだけど、決して太くないのに、脚だけ白タイツで露出しているので筋肉質の立派さが目立ってしまう。ヴェールを外され、マントを取ると、お尻のところにはでっかいピンクのリボン。でも、このキッチュな、ちょっとだけクリスチャン・ラクロワ風(でも、ラコット自身のデザインによるものだそう)の派手でゴージャスな衣装、結構洒落が効いていて面白いじゃない、と思えるようになってきた。ただ、マリ=アニエスのゴージャスさに対して、シンプルなタキシードのマチューは、華奢で小僧っ子のように見えちゃう。ちょっとだけバランスが悪かったかも。

でも、作品自体は、とっても楽しくて、ユーモラスで、華やかでガラに相応しいものだった。レビューショーのような小粋な要素もあるところはプティっぽいんだけど、マチューは、ラコット特有の鬼のような脚捌きバットゥリー系のステップを軽やかにこなし、最初は地を這うような軽いマネージュがどんどんダイナミックになっていて、最後はピルエット・ア・ラ・スコンドを見事に決める。マチューは脚のライン、つま先の美しさ、きれいに入る五番が絶品で、あんなにきれいなお顔をしているのに、思わず脚ばっかり観る羽目になっちゃう。

マリ=アニエスの方は、ピケをしながらのマネージュから始まり、軸足をかわるがわる変えながら前に進んでいくフェッテで32回転。あれだけ軸足を変えながらのフェッテはさぞかし難しいだろうに、軽々とこなしているところがさすが。途中で上手の椅子に腰掛け、ギャルソンにシャンパンをついでもらって乾杯すること2回。最初のうちは、マリ=アニエスだけが観客に視線を送っていたけど、そのうちマチューも追随していてウィンクし、思わず客席から笑いが漏れる。しかも二人とも本当にシャンパンを飲んでいるし!ラストは、マチューが白いブーケをマリ=アニエスに捧げ、白いヴェールをかぶせ、めでたくゴールインと思わせて走り去っていくところは「卒業」風で、おっしゃれ~。ラコットの作品で初めて良いと思ったかも!マリ=アニエスに依頼され、このガラのために創ったと言うけど、本当に彼女の個性にぴったりだった。

------------ 休憩 ------------------
5)「ラ・バヤデール」第1幕より
(振付:M.プティパ  音楽:L.ミンクス)
スヴェトラーナ・ルンキナ、バンジャマン・ペッシュ

イリがソロルを踊ると思っていたら、バンジャマンのソロルだった。ガラには珍しく、1幕冒頭のソロルとニキヤが密会する場面。このシーンは、カーテンの向こうから覗いて嫉妬に狂う大僧正がいないとちょっと盛り上がらない。ルンキナはとても美しいのだけど、あまりソロルに恋しているような雰囲気がなかったし、バンジャマンは、オペラ座の白いパジャマと鉢巻のようなソロルの衣装があまり似合わなくて。悪くはないんだけど印象には残りにくい演目になっちゃった。(しかも、幕の陰からマチューが熱心にこのシーンを見ているし)


6)「ロミオとジュリエット」第1幕より“マドリガル”
(振付:R.ヌレエフ 音楽:S.プロコフィエフ)
メラニー・ユレル、マチュー・ガニオ

これまたガラで踊られるのが珍しい、1幕でロミオとジュリエットが愛の芽生えを感じるシーン。ヌレエフ版特有の、一つ一つの音にパを入れていく非常に難しい振付を、メラニーは軽やかに、音に正確にうまく踊っていたと思う。ポール・ド・ブラもきれいだし、古典の技術については非常に高いものを持っているな、って思った。一生懸命ジュリエットの可愛らしく無邪気な表情を作っているのも好感度が高い。あれだけたくさん動く振り付けなので、どうしても、ちょっとやんちゃで中性的なジュリエットになってしまうのは致し方ない。ラストの、抱きしめられてちょっとびっくりした表情もキュートだった。マチューはいうまでもなく、とっても甘く麗しいロミオだったけど、途中で上着がはだけて、モンタビュー家の一員であることが判ってしまった時のあわて方が、一瞬とても真剣な顔になっていたのが素敵だった。いつか彼がロミオを踊る全幕を観たいなって思った。


7)「思いがけない結末 Unintended Consequence」 ※世界初演
(振付:J.ブベニチェク、マリ=アニエス・ジロ 音楽:E.クーパー)
マリ=アニエス・ジロ、イリ・ブベニチェク

丈の長い、白いビスチェドレスをまとったマリ=アニエスが美しい!「メリーウィドウ」のキッチュな衣装も、彼女のゴージャスな魅力を伝えてはいたけど、やっぱりこっちの方が彼女らしいと思う。イリとマリ=アニエスの共作で、男女の愛の行方が「思いがけない結末」というわけなのだけど、この二人がとても対等な関係、同じ強さや弱さを持った人間として存在しているのがよくわかる。ユニゾンで踊る動きもあればリフトもあり、上半身を大きく動かした流麗な振付で、スタイリッシュなのに人間味もある。同じ動きをしていても、マリ=アニエスは凛々しくも女らしい優しさが感じられる。イリはどうすればマリ=アニエスが一番美しく見えるのかがよくわかっているのではないかと思う。完全にリラックスした関係ではなく、強い信頼はあるけれども緊張感も漂っているのだ。エリザベス・クーパーによる音楽も素敵。イリの動きは独特の柔らかさと生命感があって、彼からも目が離せなくなってしまう。


8)「ベラ・フィギュラ Bella Figura」
(振付:J.キリアン 音楽:G.B.ペルゴレージ、A.ヴィヴァルディ)
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

ハンブルクからの二人がキリアンを踊るというのがまず新鮮。そして、あらためて二人のダンサーとしての無限の引き出しを感じられた演目だった。シルヴィアが愛らしくて演技力があるだけのダンサーではない、身体のコントロール能力も凄いというのがよくわかった。「ベラ・フィギュラ」のこのパートは、客席に背中を向けて踊ることが多いので、背中や四肢の表現力がないとつまらなくなってしまうのだけど、そんな心配はこの二人には無用。「ベラ・フィギュラ」というタイトルの通り、とても美しいフォルムを次々と、時にはシャープに、時には滑らかに作り出し、息もぴったり。天性のダンサーであるこの二人の化学作用で、新しい表現が生まれているなと思うほどだった。(「ベラ・フィギュラ」はNDTが踊った全編は観たことがあるのだけど、印象が全然違う)


------------ 休憩 ------------------

9))「カンツォーニ Canzoni」 ※日本初演
(振付:M.ビゴンゼッティ 音楽:N.ケイヴ)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

振付の一つ一つを見ていけば、フォーサイスのようなオフバランスを使っていたりするのに、どこか温かくて親密な空気が流れているのは、歌に合わせて、ゆっくりとしたムーヴメントだからか。その歌が、ニック・ケイヴの深い声による味わいの濃いものだというのがまた意外。エレオノーラは、やはりコンテンポラリーだと一段と輝きが増しているようで、強くしなやかで、リフトされている姿勢が美しい。バンジャマンの腕によって作り出された環の中に入って踊るという振付が一種独特。バンジャマンはとてもパッショネイトなダンサーだと思うけど、こうやって淡々とモダンな作品を踊る彼というのも素敵だし、彼の魅力が生きていると思う。それと、エレオノーラの、緑色のミニワンピースのような衣装が可愛かった。


10)「バーンスタイン・ダンス」より“Part1 Wrong Note Rag”
(振付:J.ノイマイヤー 音楽:L.バーンスタイン)
アレクサンドル・リアブコ

この公演の白眉と言ってもいいかも!こんなアメリカ~ンな演目をノイマイヤーが振付けていたことを知らなかったけど、ノイマイヤーってアメリカ人だものね。これも歌モノで、軽快でジャジーな音楽に乗って、軽やかにサーシャが舞う。衣装はアルマーニだそうだけど、なんてことのないTシャツとパンツのよう。時々シャツがめくれておへそが出るのがご愛嬌。いつもは真面目そうなサーシャが、お茶目な表情で、ピチピチと奔放に飛び跳ねるのだけど、その中に高度な技術が盛りだくさん。細かくすばやいブリゼ・ボレやカブリオール、脚を180度開いての横へのジュッテなどの古典の技術を音にぴったり合わせて踊る。打ち付けるつま先の美しいこと!上体のしなやかなこと!大変そうには見せずに、サーシャはキュートな笑顔を保ち続ける。ラストのウィンクしながら指ぱっちんも、かわいいのなんのって。ホントにサーシャには、まだ知られざる引き出しがたくさんあるんだなあ、と。爽快な一作、何回でも何回でも観たい!


11)「ダンス組曲」
(振付:J.ロビンス 音楽:J.S.バッハ)
マニュエル・ルグリ/チェロ:宇野陽子

バッハの無伴奏チェロの生演奏に合わせて、ルグリが踊る。パジャマのような赤いジャージの上下(よく観ると、上はヴェルヴェットのような布地みたい)。以前ルグリガラのレッスン見学をしたときにも、赤いジャージを着ていたなあ、なんて思ったりして。この衣装は若干おっさんっぽいのだけど、ミーシャに振付けられたというオリジナルがこの衣装だから仕方ない。初日はチェロの宇野陽子さん(若くて可愛らしい女性)が非常に緊張しているようで、なかなかルグリと視線を交わすことができなくて、彼女ばかりが気になってしまったけど、舞台を繰り返すうちにほぐれてきたようである。幕が上がると、チェロを持つ彼女を見つめる、床にラフに座るルグリ。ちょっと崩した座り方が非常にセクシーで、たしかにこんな風に見られたら、ちょっと緊張して頬を赤らめてしまうかもなんて思ったりして。グランピルエット、ジュッテ、シェネ、バットゥリーなど、いろいろな踊りを見せていく。それにしても、ルグリという人は、彼自身が音楽というか、まるで彼の身体が音楽を奏で、音符になっているかのようだ。つま先の美しさには惚れ惚れ。大体4つのパートに分かれていて、曲と曲の間で、チェリストと視線を交わす。最初のパートでの美しい動きに思わず見入ってしまう。3曲目あたりで、ちょっと長くて単調だと思ってしまうのだけど、4曲目でまたのびのびとした動きにうっとり。その中に、でんぐり返しや側転などもあって、大人の男性が少年に帰ったような無邪気さを見せているのが、なんとも微笑ましい。ラストは、ピルエット・ア・ラ・スゴンドをずっと続けているのだけど、これだけ一人で踊りまくっていて、最後にこんなに体力が残っているのか、と思ってしまうほど。身体的にも、まだ少年のようなのだ。どこまでも正確でエレガント。さすがは生ける舞踊の神様、ルグリ様。

2008/08/09

サシャ・ラデツキー、ABTを退団、オランダ国立バレエに移籍

先日のABTの来日公演でも大活躍した、ソリストのサシャ・ラデツキーが、このたびABTを退団し、オランダ国立バレエに移籍することになったと、ロサンゼルスタイムズが報じています。

http://www.latimes.com/entertainment/news/arts/la-et-quick9-2008aug09,0,6667588.story?page=1&track=rss

ABTには13年間在籍し、2003年にソリストに昇格したサシャは、現在行われているオレンジ・カウンティでの公演を最後に退団するとのことです。映画「センターステージ」ではヒロインに恋するバレエ学校の同級生を演じ、また男性がバレエダンサーになることについての文章をニューズウィーク誌に書くなど多方面で活躍してきた彼。日本公演でも、「ラビット・アンド・ローグ」のびわ湖公演ではラビット役を演じたり、「海賊」ではビルバントとランケデム、「白鳥の湖」ではベンノなどを踊って、日本のファンにもお馴染みの顔となっていました。最近めきめきテクニックも磨かれてきて、美しい脚を持っており演技力もあるダンサーとして貴重な存在だったので、寂しいです。奥様のステラ・アブレラは引き続きABTに在籍するそうです。また、オランダ国立バレエには、プリンシパルとして入団すると聞いています。

新天地での今後の彼の活躍を期待したいところです。でも、「ジゼル」のヒラリオンやペザント・パ・ド・ドゥ、「ロミオとジュリエット」のベンヴォーリオやティボルト、「マノン」の看守、「白鳥の湖」のロットバルト、「ドン・キホーテ」のエスパーダなど本当にいろいろな役柄での彼を観てきただけに、ABTの損失は大きいと思うし、寂しいですね。

8/12追記:オランダ国立バレエのオフィシャルサイトの、ファーストソリストのところに早速サシャの名前が入っていました。オランダ国立バレエは、ファーストソリストが最高位です。

http://www.het-nationale-ballet.nl/index.php?sm=hnb_dancers


センターステージセンターステージ
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エトワールガラBプロ初日…しかしロシアがグルジアを侵攻

今日はエトワール・ガラのBプロ初日でした。本当に暑い一日でしたが、今日も本当に素晴らしい公演でした。Aプロより個性的な演目が多くて、見ごたえたっぷり。この充実度でこのお値段は安いです。

特にイリ・ブベニチェクが振付けた「カノン」は、音楽的この上なく、至福の時間でした。上の階から観ていたのですが、3人のダンサーがユニゾンで動いている時の美しさと言ったら!サーシャもマチューも魅力的でしたが、ダンサーとしてのイリの存在感がすごくて、驚異的な柔らかさと強靭さ、音楽性…。底知れぬ才能を持った人だと改めて実感しました。ルグリとルンキナの「マノン」にはもちろんうっとりさせられました。ルンキナの無垢な中の小悪魔性を秘めた儚い美しさもさることながら、そんなルンキナを軽々と、ボールを転がすようにリフトするルグリの凄さ!しかもこの人は、演技で20歳は若返ることができるから、びっくり。恋する青年そのものでした。ペッシュとシルヴィアのノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」の情感あふれる切なさも、胸に深く染み渡りました。妖精のようなシルヴィアと、情熱的なペッシュ。もちろんサーシャとシルヴィアで観たい気もしたけど、この二人の組み合わせも良かったと思います。あとは「ドリーブ組曲」のマチアス!!!彼の無限の可能性を観る気がしました。去年のルグリガラから1年でこんなに成長するとは。まだ荒削りの部分もあるけれども、どこまでも高い跳躍と、エレガンス、そして独特の甘さが魅力的で、目が離せません。観客に愛されるダンサーのようで、全体のカーテンコールの時も、ルグリの次くらいに多く拍手をもらっていました。年末の「ライモンダ」ではジャン・ド・ブリエンヌを踊るという噂もあるようで、いよいよエトワール昇進も見えてきたのではないかと思います。

*****

ところで、終演後劇場の近くでお茶をしていたら、友達からグルジアとロシアが戦争を始めたというメールが。帰宅したら、本当に大変なことになっていました。

ロシアがグルジア空爆 南オセチア攻撃の報復 交戦状態に
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080808/erp0808082314011-n1.htm

Georgia 'under attack' as Russian tanks roll in
http://edition.cnn.com/2008/WORLD/europe/08/08/georgia.ossetia/index.html?eref=rss_topstories

北京オリンピックの開会式というタイミングで始まってしまいました。プーチン首相は開会式に出席しているということですが…。上記CNNによると、ロシアの戦車や戦闘機がグルジア侵攻を始めたようです。サーカシビリ大統領の声明によれば、一般市民にも死傷者が出ているそうで。

ちょうど、ニーナ・アナニアシヴィリの、スコットランドの新聞に掲載されたインタビューを読んだばかりでした。

http://thescotsman.scotsman.com/features/Georgian-ballerina-who-went-back.4360961.jp

それによれば、ニーナは、グルジアのサーカシビリ大統領直々の依頼で、グルジア国立バレエを立て直すという任を負ったとのことです。2004年にニーナはグルジア国立バレエの芸術監督に就任したわけですが、13歳で彼女は故国を離れロシアに行きました。20数年ぶりに戻ってきたというわけです。グルジア国立バレエは、エジンバラ国際フェスティバルで、8月9日から10日まで「ジゼル」、12日、13日はミックスビルを上演していますが、故郷の一大事にきっとニーナは胸を痛めていることでしょう。平和的な解決がされますように。そして、ニーナやダンサーの皆様に何事もありませんように。ニーナの旦那様はグルジアの外交官ということなので、ますます気になります。

2008/08/07

ダニール・シムキンが高松到着

今日はエトワールガラのAプロ二日目。午後半休をいただいて見に行きました。2回目に観るとだいぶ様子はわかってきました。昨日はなかったカーテンの前でのカーテンコールも入ったし、今日も楽しかったです。

感想を書きたいのですが、暑さですっかりバテてしまったので、また週末にでも書きます。東京はいつからこんな熱帯になってしまったのでしょうか?慣れない暑さに、海外から来たダンサーの皆様も大変な思いをしているのではないかと思います。

さて、樋笠バレエの国際交流公演が8月9日高松と、12日東京で行われます。私も東京公演を観る予定です。
http://hikasa-ballet.com/

8月9日 高松公演 香川県 サンポートホール高松 大ホール 開演15:00
8月12日 東京公演 東京都 五反田ゆうぽうとホール 開演18:30

このガラに出演するダニール・シムキンが無事高松に到着したと、彼のTwitterでのエントリがありました。
http://twitter.com/daniilsimkin

ところが、気の毒なことに、彼の荷物がまだ日本に到着していないようです!コペンハーゲンでスーツケースが置いていかれちゃったようですね。無事公演前に届きますように。

一時期、ダニール・シムキンが高松公演への出演をキャンセルしたのではないかという話がありましたが、また「日々これ口実」のebijiさんが、主催者に彼の出演を確認してくださいました。感謝!

8/6 エトワール・ガラAプロ

初日行ってきました~。一応今回全公演観る予定なのです(苦笑)。遅くなっちゃったので(結局終演が10時近くなのです)、一言だけです。

前回はなんだかわけのわからない奇抜な作品なんかも結構あったのに対し、今回は作品の粒が揃っているという感じ。それに前回はプルミエだった人が昇格していたり、キャスト変更の挙句ルグリさんが加わったりとダンサーのグレードも上がった感じだけど、その分、前回の手作り感みたいなのはなかった。あと、前回は、エンディングが映画をイメージしたとってもおしゃれなもので素敵だったけど、今回は普通だったので、ちょっと残念。

シルヴィア・アッツオーニとアレクサンドル・リアブコ、イリ・ブベニチェクのハンブルク組(イリはドレスデンに行っちゃったけど)は、何を踊っても表現力豊かで素晴らしい~!シルヴィアとサーシャの「ベラ・フィギュラ」が観られたのも良かったし、それからサーシャのソロ、「バーンスタイン・ダンス」が若々しくて、明るくて、活力にあふれているけど美しくて、ものすごく良かった!

ルンキナのジゼルは前にも観たことがあって、とてもジゼルらしい、儚くひんやりと冷たく美しいジゼルなのは判っていたけど、マチアスのアルブレヒトが意外と良かった。イメージ的にあまりノーブル系じゃなかったりするマチアスだけど、上半身はエレガントだし、脚もきれいだし、ごくたまに素に戻っていたりしたけど(笑)、ちゃんと貴公子に見えた。テクニックの素晴らしさはいうまでもない。跳躍の高いこと高いこと!まだアルブレヒトは全幕で踊ったことがないと思うので、ぜひ経験して、磨きをかけていって欲しいな~と思った。

エレオノーラとバンジャマンの「椿姫」はパリで全幕を観て(すみません、まだ感想が書けていません)、他のカップルとはまた違った個性で印象に残ったのだけど、1幕の青のPDDという、ガラではあまり踊られないところを踊ったのが良かった。バンジャマンは、本当にこの役に思い入れを持って、情熱的に踊っていると思った。エレはパリで観た時より、マルグリットの病が進行している感じ。前のほうの席で観ていたので、二人の荒い息遣いがずっと聞こえてきて、とても生々しかった。

世界初演の「メリー・ウィドウ」は、途中でギャルソンが2回もシャンパンを注ぎに来たように、シャンパンの泡のように軽く、楽しくて華やかな作品。マリ=アニエスのゴージャスな個性も生きていた。でも、彼女が着用していた衣装のセンスはかなり微妙というか趣味が宜しくない。大柄でがっしりとしたスタイルを強調していたみたいで。タキシード姿のマチューは砂糖菓子のように甘くて美しく、二人の美男美女の並びはうっとりさせてくれるだけに、衣装が…。

ルグリの「ダンス組曲」 は最初は良かったのだけど、ちょっと長いように思えてしまった。チェリストとの掛け合いも、なかなかうまくいっていなかったし。この長い演目で、まったくテンションが落ちることなく正確に美しく踊り続けるルグリさんの体力と若々しさには驚愕。途中ででんぐり返ししたり、側転したりしているのに、単調で、前の作品も男性一人のソロだったけど、そっち(ノイマイヤー)の方が好きだった。

「カンツォーニ」はエレオノーラがぜひ踊りたいと思って実現させた作品だったけど、エレ&バンジャマンの個性が生きていて、粋でカッコいい作品だったと思う。エレはやはりコンテンポラリーだと魅力が生きる。

「思いがけない結末 Unintended Consequence」はいかにもイリの作品的。でもすごく洗練されていて、こちらは切れ味鋭いほうのカッコよさ。マリ=アニエスがとっても男前だった。

ちょっと全部について書く余裕はなかったけど、また明日も行く予定なので、Aプロはまた改めてちゃんと書きたいと思う。全体的にとても楽しめたガラだった! 

1)「ハムレット」第2幕より パ・ド・ドゥ
(振付:J.ノイマイヤー 音楽:M.ティペット)
シルヴィア・アッツォーニ、イリ・ブベニチェク

2)「ジゼル」第2幕より
(振付:M.プティパ、J.コラリ、J.ペロー 音楽:A.アダン)
スヴェトラーナ・ルンキナ、マチアス・エイマン

3)「椿姫」第1幕より
(振付:J.ノイマイヤー 音楽:F.ショパン)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ/ピアノ:上田晴子

4)「メリー・ウィドウ」 ※世界初演
(振付:P.ラコット 音楽:F.レハール 衣裳:P.ラコット)
マリ=アニエス・ジロ、マチュー・ガニオ

------------ 休憩 ------------------
5)「ラ・バヤデール」第1幕より
(振付:M.プティパ  音楽:L.ミンクス)
スヴェトラーナ・ルンキナ、バンジャマン・ペッシュ

6)「ロミオとジュリエット」第1幕より“マドリガル”
(振付:R.ヌレエフ 音楽:S.プロコフィエフ)
メラニー・ユレル、マチュー・ガニオ

7)「思いがけない結末 Unintended Consequence」 ※世界初演
(振付:J.ブベニチェク、マリ=アニエス・ジロ 音楽:E.クーパー)
マリ=アニエス・ジロ、イリ・ブベニチェク

8)「ベラ・フィギュラ Bella Figura」
(振付:J.キリアン 音楽:G.B.ペルゴレージ、A.ヴィヴァルディ)
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ
------------ 休憩 ------------------

9))「カンツォーニ Canzoni」 ※日本初演
(振付:M.ビゴンゼッティ 音楽:N.ケイヴ)
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

10)「バーンスタイン・ダンス」より“Part1 Wrong Note Rag”
(振付:J.ノイマイヤー 音楽:L.バーンスタイン)
アレクサンドル・リアブコ

11)「ダンス組曲」
(振付:J.ロビンス 音楽:J.S.バッハ)
マニュエル・ルグリ/チェロ:宇野陽子

2008/08/06

クララ8月号の付録DVD

「クララ」の8月号の付録のDVDが、何気にとても内容が充実していると聞いて、バレエ公演の会場で買ったまま、忙しくて雑誌の中身だけ読んでいました。

週末にちょっと時間が空いたときに、DVDを見てみたら、その内容の豪華さにビックリ!このDVD込みで720円なんてお得すぎてどうしよう、って感じでした。

エレーナ・フィリピエワ(キエフ・バレエ)
イレーナ・コシェレワ(ミハイロフスキー劇場)
アナスタシア・ロマチェンコワ(ミハイロフスキー劇場)
佐久間奈緒&ツァオ・チー(バーミンガム・ロイヤル・バレエ)

の4組のインタビューなのですが、ミハイロフスキー劇場の二人のインタビューの間には、たっぷりとバーレッスンやセンターレッスンの映像が入っています。この二人+フィリピエワは、ポアントをどうやってカスタマイズしているかも見せてくれています。

そして何より、フィリピエワのインタビューの間には、セルゲイ・シドルスキーとの「ライモンダ」そして、イーゴリ・コールプとの「白鳥の湖」のリハーサル映像がふんだんに入っているのです!特にこの映像は、コールプのファンには必見のものと思われます。リハーサルでの彼は、ステージ上での毒気も薄く、とてもノーブルだし腕の動きが美しいですね~。

ミハイロフスキーの二人のバレリーナは、素顔がとっても美しいです。そして、ツァオ・チーは、めちゃめちゃハンサムと言うか美しい方なんですね。映画「Mao's Last Dancer」の主演に抜擢されたのもよくわかります。映画スター顔負けのルックスなのですね。

そして、それぞれのインタビューの内容も、とても面白く、見応えがあります。彼ら、彼女たちが語る言葉を聞いていると、ダンサーが真摯に自分の芸術に取り組み、そして努力を重ねていく姿は、私たちの現実の生活、現実の生き方にも大いに参考になるのではないか、というか普遍的な真実なのではないかと思いました。心を込めて踊ること、ダンスだけでなくていろいろな芸術に触れること、一番好きなことのためにはほかの事を犠牲にすること、そして技術を高めていくだけでなく、芸術性を磨いていくこと。バレリーナを目指す人はもちろんのこと、バレエを愛する人にはぜひ見て欲しい映像だと思いました。

今週の金曜日には、もう次の号が出てしまうので、本屋さんで買うなら今のうちに!

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2008/08/05

8/3 ワガノワ・バレエ・アカデミーBプロ

8/3 ワガノワ・バレエ・アカデミーBプロ ティアラこうとう

【第一部】
1. 「クラシック・シンフォニー(古典交響曲)」より≪第1楽章≫ 
アナスタシア・アサベン、ヴャスチスラフ・チュチューキン、アナスタシア・ザクリンスカヤ、エカテリーナ・マリホワ、ヤロスラフ・ルイジョフ、ミハエル・エフグラフォ 他初級生徒

2. 「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
ヴィクトリア・クラスノクーツカヤ、イリヤ・ペトロフ

3. 「シェエラザード」よりデュエット

3. 「くるみ割り人形」よりマーシャと王子のアダージョ 
タチアナ・チグリゾワ、ドミトリー・チモチェーエフ

4.「さくら」
ダリヤ・エルマコワ

5.「ノクターン」
スヴェトラーナ・スィプラートワ、アレクセイ・クズミン

6.「コッペリア」より男性のヴァリエーション
セルゲイ・ウマネツ

7.「偶然の出会い」
オリガ・グロモワ、ワシリー・トカチェンコ

7. 「マルキタンカ」よりパ・ド・シス 
ユーリア・チッカ アレーク・デムチェンコ

【第二部】
「海賊」より第3幕 
メドーラ ユーリア・チェリシケーヴィチ
アリ 中家正博
コンラッド アレクセイ・クズミン
メドーラのヴァリエーション ヴァレリア・イワノワ
ギュリナーラのヴァリエーション 鈴木里依香 他 中、上級生徒

日程の関係と、オーチャードホールでの公演よりチケットが安く、小さめで観やすいティアラこうとうだからこの日を選んだわけだけど、予定されていた「シェヘラザード」がなかったのにちょっとガッカリした。アカデミーの年端の行かない子達による「シェヘラザード」に興味しんしんだったのだ(ちょっと邪な見方?)。

配布されたキャスト表にも「シェヘラザード」とあったのに、順番になった時に「くるみ割り人形」の音楽が流れた時に落胆し、実は第一部は集中力が途切れてしまった。代わりに入った演目「ノクターン」が面白くなくて、多分ドラマティック・バレエというジャンルなのでしょうけど、アカデミーの生徒の表現力ではこのような演目を表現するのは難しいと思った。

「クラシック・シンフォニー」は初級生徒が大部分を占めている中で真ん中を踊るのが上級生徒というもの。アナスタシア・ザクリンスカヤは、名前からも察することができるように、アスィルムラートワとザクリンスキーの娘で、まだ15歳の4年生だけど、両親の容姿を受け継いですごく美人。思いがけず舞台に近い席だったので、すごく間近で生徒たちを観ることができたけど、小さな子たちでも腕や上半身がとても優雅でアカデミック、まさにワガノワ・スタイル!顔の付けかたも素晴らしくきれいでよく揃い、踊るのがとても嬉しそう。男の子たちも結構たくさん出演しているけど、小さな子でもエレガントで王子様のよう。どの子も本当に可愛い。ストーリーのない、ネオクラシック系のアブストラクト作品だけど、様々な年代の子供たちの技量を見せるのにはぴったりだと思う。

「ラ・シルフィード」の二人はとてもよかった。シルフィードのヴィクトリア・クラスノクーツカヤが、ちょっと妖艶なものの、ふわふわ柔らかな空気の精で素敵だったし、ジェームズのイリヤ・ペトロフは脚のラインやつま先もきれいだし、アントルシャも高く跳んでいて、ルックスもキュートだった。クラスノクーツカヤの教師はコワリョーワ、ペトロフはセルツキーと、有名な人に習っているんだな~って思った。

第一部は、「シェヘラザード」ショックがあって、あまり集中できなかったのだけど、現代作品の「偶然の出会い」は面白かったと思う。この作品はそもそも予定になかったのか、パンフレットに解説もないどころか、誰が振付けたのかもわからないのだけど。コンテ作品を踊るのに必要な表現力や現代性、クラシックから逸脱したものもこなせるところを二人とも持っていたし、オリガ・グロモワの身体能力がすごくあったと思う。

「さくら」は、あの「さくら」の曲を使い、両手に扇をひとつずつ持って踊るなんちゃってジャパネスクな作品なのだけど、けっこうアクロバティックで、キワモノながらもわりと面白かった。ダリヤ・エルマコワが細くて色っぽくて、タコ人間のように柔らかかった。

第二部の「海賊」より第三幕は、かなり見ごたえがあった。花園のシーンだけでなく、アリ、メドーラ、コンラッドのパ・ド・トロワも入っている。ただし、コンラッドのヴァリエーションはなし。アリ役の中家正博さんは、ちょっと首が短くてプロポーションはそんなによくはないけど、身長はそこそこあるようだったし、テクニックは相当のものを持っているようで会場を沸かせていた。グラン・テカールやマネージュも見事に決まっていたし、テクニック一辺倒でなく、脚がきれいに伸びていて跳躍の形が美しい。彼もセルツキー先生に習っているそうで。トロワで踊ったメドーラ役の人は、サポートつきのピルエットがちょっとぐらぐらしていたのが残念。コンラッド役のアレクセイ・クズミンはハンサムで素敵だと思ったけど、ヴァリエーションを踊らせてもらえずサポートに徹していたのが気の毒。

花園のシーンは、中・上級生が踊っていたわけだけど、これはなかなか素晴らしい出来で、一流プロのバレエ団のコール・ドにも劣らない。少なくとも、先日のABTの「海賊」のコール・ドよりずっと揃っているし、柔らかくてきれいで音楽性が豊か。何よりも、どの子もキラキラした素敵な笑顔をしていて、本当に踊るのが楽しくて幸せで仕方ないって様子で、観ていて嬉しくなってしまう。こんな笑顔で踊る子達を見たことがないと思うほど。ときどきドキッとするほどの美少女がいたりする。メドーラのヴァリエーションを踊ったヴァレリア・イワノワ、さすがに真ん中を踊るだけの技術があると思った。そしてギュリナーラのヴァリエーションを踊ったのは、留学生の鈴木里依香さん。彼女も、他のロシア人の生徒たちと遜色のないプロポーションとテクニックを持っていたし、やはり輝くような笑顔を持っていて、日本人でこんな笑顔で踊るダンサーってあんまりいないなあ、いいなあ、と思った。

花園のシーンっていつもあまり面白くないなあ、と思っていたけど、音楽を奏でるようにコール・ドが歌い、メロディを主役が歌い上げると、見ごたえがたっぷりあって、楽しめるものだなと思った。

この日がツアーの最終日ということもあり、アルティナイ・アスィルムラートワ校長もカーテンコールに登場。今もなお、とてもスリムで美しい。脚も相変わらずきれいだし。そして上から紙ふぶきが降りてきて、生徒たちが大はしゃぎ。カーテンが完全に下りた後も、カーテンの裏で嬉しそうに、無邪気な歓声をあげるのが聞こえてきた。彼らの声を聴くと、あれだけ踊れていても、やっぱり子供なんだな~って思う。

すごくよいと思ったのは「ラ・シルフィード」の二人だけと思うし、プロではないので見せ方はまだまだという子達が多いと思う。だけど、さすが天下のワガノワだけあって、踊りのスタイルも、そしてプロポーションも非常に揃っていて、磨けばダイヤモンドになるような原石がたくさんいる、と思った。パンフレットが、一人一人の生徒の顔写真の教師の名前、生年月日を書いているのが良い。何年かのちには、スターになる子もいるだろうし、いい資料になるはず。

2008/08/04

マチュー・ガニオのインタビュー記事(エトワール・ガラ用)

ライターの岩城京子さんのサイトで、マチュー・ガニオの「エトワール・ガラ」プロモーション用のインタビュー全文が掲載されています。「AERA」と「シアターガイド」のためのインタビューとのことですが、全文は掲載しきれないということで。主に「椿姫」と「プルースト」について語っています。

http://kyokoiwaki.com/blog.html

一部を引用しますと、

本番で、なにか自分も予期していなかったような感情に出くわすこともあるのでしょうか?

 舞台上でパートナーが僕の目を見つめているとき…、とても感情的な目で僕のことを見つめているとき…、その瞬間に「オー、マイ、ガッド!」と叫びたくなるほど巨大な感情にふいに襲われることがあります(笑)。これは、まったく予期できない感情です。でも僕はそうした体験を舞台上で味わうのが本当に好き。特にパートナーと一緒に踊っているときに、僕が彼女に何かを言って、向こうも何かを言い返してきて、その繰り返して徐々に互いに感情が大きくなっていく。そうした感情の構築作業が好き。ただし、感情に溺れすぎてはダメ。なぜなら「椿姫」で言うならば、ジョン・ノイマイヤーはとても美しくてとても難しいリフトを発明する人だから(笑)。そのステップをきちんとこなすためには、感情に溺れすぎている暇はない。逆にいえば、稽古段階でステップはすべてオートマティックに完璧にこなせるぐらい練習を積んでおけば、少しぐらい本番で感情に流されても大丈夫ということになります。

役作りということを、マチューがどう考えて行っているかがよく判ると思います。AERAに載った記事などと読み比べると面白いのではないでしょうか。

NHK「アースウォッチャー」吉田都さん

Side B-alletのゆうさんに教えていただいたNHKの番組、「アース ウォッチャー 月から見た地球」

http://www3.nhk.or.jp/kaguya/broadcast.html

ですが、8月3日の放送分に吉田都さんが出演しました。

世界で活躍するアーティストが、かぐやの撮影する地球の映像とのコラボレーションを行うというもので、都さんは、かぐやから映し出された地球を見て、たった一人で生まれ、たった一人で死んでいく孤独を感じると語っていました。そしてその孤独感を癒してくれるのが愛、というわけで、ひとつの究極の愛の形を描いたマクミランの「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンを、エドワード・ワトソンと踊りました。きっと今回の来日公演で収録されたんでしょうね。(なんで東京ではロイヤル・ガラを行わなかったのか、怒りすら覚えます)

セットの背景には、地球の映像。簡単ながらもバルコニーのセットがあり、米田ゆりさんのピアノの生演奏で踊られました。バレエの番組ではないので、音楽はそのまま流れながらも、ところどころ都さんのインタビュー映像が挿入されてしまっていたり、ナレーションが入っていたのが残念でした。が、もうロイヤルで都さんはジュリエットの全幕を踊らないという噂があり、また、去年のスターダンサーズ・バレエ団で振られたり(あの時のバレエ団の対応は、良くなかったですね)、ロイヤル・ガラは大阪のみの開催だったりと、都さんのジュリエットを観る機会を悉く奪われてきた身としては、切れ切れで、エドワード・ワトソンのソロが観られなかったにとしても、観られて嬉しかったです。本当に繊細で、恋の歓び、高揚感が伝わってくる純情可憐なジュリエットでしたね。いつか生で観られる機会が来ることを切望します。

そのほか、コヴェントガーデンでのリハーサル風景なども少し流れます。

この番組ですが、再放送があります。

8月4日(月)午前9時40分~50分 NHK衛星第2放送


見逃した方はぜひ!

2008/08/03

新国立劇場「ラ・バヤデール」NHK芸術劇場(まだ途中)

8月1日 NHK教育 芸術劇場

ニキヤ:スヴェトラーナ・ザハロワ
ソロル:デニス・マトヴィエンコ
ガムザッティ:湯川麻美子
大僧正:ゲンナーディ・イリイン
王:逸見智彦
アイヤー:神部ゆみ子
マクダヴェヤ:吉本泰久
壷の踊り:真忠久美子
黄金の神像:八幡顕光
影の王国ソリスト:
厚木三杏、川村真樹、丸尾孝子

新国立劇場の「ラ・バヤデール」は別キャストで2回観たけど、ザハロワの主演の日のチケットは譲ってしまったので、こうやってテレビで見られるのはありがたい。バレエ慣れしているNHKのスタッフなので、おおむね観やすい撮影になっていたけど、最前列付近からあおり気味に撮影している時に、指揮者の腕が映り込んでしまったのは残念。それから、7月よりアナログ放送だと「アナログ」というテロップが表示されているのが邪魔だった。ハイビジョンで観るときれいなんだけど、録画するとコピーワンスになっちゃうし、悩ましいところ。

「ラ・バヤデール」という照明の暗い場面の多い作品の性質もあるのだけど、画面が暗くなっていて観づらいところが多かった。1幕の苦行僧たちが踊るところからソロルの登場、それから影の王国のシーン。市販のDVDでもたいていここは暗いのだけど、ハイビジョンの時代になっても、舞台をテレビの画面に再現するのが難しいということだろうか。

新国立劇場のプロダクションは、インドを再現しているということで美術は非常に手がかかっていて美しいのだけど、中間色が中心なので、きらびやかさはあまりなく、良く言えばシックで悪く言えば地味。婚約式のシーンはもう少し派手でもよかったのではないだろうか。婚約式の入場のシーンも、ボリショイやミハイロフスキーでは、ガムザッティは輿に乗り、ソロルは象に乗って登場するのに、ここでは自分で歩いて入場するし。

ニキヤ役のザハロワは、造形がこの世のものと思えないくらい美しい。(亡霊だからこの世のものでもないか)。生の舞台を観る時は顔の表情よりも、脚や腕の動きを観ているわけだけど、テレビで観る場合には細かい表情まで観られる。改めて、ザハロワって顔も本当に美人だな~って思う。その上、長くてよくしなる、カーヴィな脚と美しい甲。背中が柔らかく、長いおみ足がヒョイっと高く上がって5時55分を指している。ニキヤという役が、こんなに脚を高く上げていていいのだろかと思わないこともないし、2幕までは元気が良すぎるのではないかとちょっと思った。でもまあ、ニキヤは舞姫なので、踊りが上手くなくてはいけないからいいのかな。踊りが派手で、完全にボリショイ風になっていたと思う。

演技の方も成熟していた感じで、1幕でのソロルの逢瀬の時の表情は非常に色っぽく、恋する歓びを表現していたと思う。あのシーンでのパ・ド・ドゥは、身も蓋もないことを言っちゃえば、二人が愛をかわしているのを表現していると思うのだけど、以前のザハロワでは考えられなかった、情熱的で官能的な表現が見られたのが良かった。が、相変わらず誰よりもエラそうな気位の高そうなニキヤなのがちょっと笑えた。身分の卑しい舞姫というよりは、お姫様か、神に近く、位の高い巫女という風情。大僧正がその美しさにくらっと来て愛を告白しても、「このあたくしに求愛するなんて100年早いわ」もしくは、「このセクハラ親父、私に話しかけるなんて汚らわしいわ」とでも言わんばかりに、はねつけている。ザハロワ、いつかガムザッティを踊るのを見てみたいと思う。

本物のお姫様であるはずのガムザッティと対決する時も、人の良さそうなガムザッティよりも数倍えらそうな感じで、終始攻勢。ガムザッティに歯向かっていく様子も迫力があって、すっかりガムザッティは気圧されていた。蛇に噛まれた後ですらも、ガムザッティに「あなたがやったんでしょ!言ってご覧!」って怖い顔をしていて、ガムザッティが怯えて逃げちゃうほど。

花篭の踊りでは、花篭を手渡されて、とても嬉しそうな表情を見せるのが印象的。一瞬ごとに変わる、いろいろな感情をこめて踊っているのが良くわかった。新国立の、ニキヤのブルーの衣装がとてもきれい。ボリショイのは臙脂色で地味で野暮ったいけど、このブルーはザハロワの美しさを際立たせている。蛇に噛まれて苦しんだ後(このあたりの演技は、「ジゼル」の狂乱のシーンを思わせた)大僧正から解毒薬を渡され、一瞬逡巡した後、ソロルがそっぽを向いているのを見て絶望してから絶命するところも良かった。

影の王国でのザハロワの際立った美しさは、言うまでもない。ザハロワはちょっと回転系が苦手なので、ヴェールのヴァリエーションは若干もたついていたけど、それ以外は、別世界の、地上ではありえない儚い影のような美を体現していた。

マトヴィエンコは、ザハロワの圧倒的なオーラと比較すると分が悪いけど、私が持っていた印象より、バレエの中の王子的な、優柔不断で若干情けないキャラクターになっていた。踊りのほうも、思っていたよりエレガント系というか。マイムをやる時の腕の動きがすごくきれいだな、と意外な発見をした。絶好調の時のマトヴィエンコはもっと踊れるんじゃないかと思うところがあった。それでも、他キャスト日ではやっていなかった、3幕でのトゥールザンレール6連発は見事にこなしていたし、ザハロワとは何回も組んでいるということもあってか、サポートは上手。文句のつけようもないけど、ソロルは戦士なんだし、最近マトヴィエンコはスパルタクスを当たり役にしているくらいだから、もっと勇壮でもいいんじゃないかと思わないこともない。

印象的なのは、2幕のザハロワの花篭の踊りの時の彼の反応で、生きながら地獄の責め苦を味わっているのではないかという激しい苦悩の表情を浮かべており、ガムザッティとここに座っているのがイヤでイヤで仕方ないという風情。なのに、どうすることもできずに、ニキヤが死んでも駆け寄るものの、そのまま走り去ってしまう。(本編の前に、この「ラ・バヤデール」を改訂振付した牧阿佐美女史が、ソロルがニキヤを抱きしめないまま走り去ってしまうのは、うちだけと胸を張っていたが、そんなことはないと思う。牧女史に言わせると、その後結婚式までやってしまうようなソロルだから、ガムザッティの前でニキヤの亡骸を抱きしめるなんてことはできないはずだということだそうだ)

湯川さんのガムザッティは、気位は高く、気が強そうな反面、実は本当は良い人で、本当のところは気も弱いところを感じさせる。ニキヤが強く出ると、思わずごめんなさい!と言ってしまいそうな感じ。お姫様然とはあまりしていないし、このままでは婚期を逃しそうだから、お願いだからソロルを私に譲って、という悲壮感を感じてしまう。そういうガムザッティ像もありかな、と思う。もう少し華やかさやお嬢様っぽさがほしい気もするけど、女同士の対決後、ニキヤにナイフを向けられ、彼女が逃げた後で見せた「殺してやる」の表情は非常に迫力があり、いい人を怒らせたほうが本当は怖いんだということを思い知らされ、面白いキャラクター作りだと思った。イタリアン・フェッテは若干心もとないところもあったけど、フェッテのほうは難なく踊っていたと思う。この婚約式のシーンは、ABTのオールスターガラで観たばかりだけど、テクニックでも、美貌でもずっと上のはずのミシェル・ワイルズより、湯川さんのほうが印象に残るのだ。

(続く)

お勧めの「ラ・バヤデール」映像

プラテルのキラキラなお姫様ぶりと、ゲランの素晴らしい演技と、イレールのセクシーなソロルが美しい。

ラ・バヤデールラ・バヤデール
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ザハロワのニキヤを比べてみるのもいい。ロベルト・ボッレのソロルは耽美的で、まさにはまり役。

ミラノ・スカラ座バレエ団「ラ・バヤデール」(全3幕)ミラノ・スカラ座バレエ団「ラ・バヤデール」(全3幕)
スヴェトラーナ・ザハーロワ

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2008/08/01

新国立劇場「ラ・バヤデール」これから放映/ロベルト・ボッレ@フェラガモ

本日、8月1日(金)、NHK教育テレビ 「芸術劇場」にて、
5月20日、24日に行われた新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」の公演の模様が放映されます。

10:50pm~ 情報コーナー 新国立劇場公演「ラ・バヤデール」見どころ紹介
11:07pm~ 1:05am 新国立劇場公演「ラ・バヤデール」

<出 演>
スヴェトラーナ・ザハロワ(ニキヤ)
デニス・マトヴィエンコ(ソロル)
湯川麻美子(ガムザッティ)
ゲンナーディ・イリイン(大僧正)  ほか

<演 奏> 指揮:アリクセイ・バクラン   管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
<振 付> マリウス・プティパ
<演出・改訂振付> 牧阿佐美
<収 録> 2008年5月20日、24日 新国立劇場 オペラ劇場(オペラパレス)

見逃してしまった公演なので、楽しみです!

******
今日、用事があって渋谷の某百貨店に行ったところ、サルヴァトーレ・フェラガモのメンズブティックのウィンドウにて、ロベルト・ボッレのファッション写真を発見しました。携帯でさくっと撮った(しかも、自分の携帯が外装が傷んでしまい、修理に出したので旧式の代替機)ので、しかもガラス越しなので写りは良くないですが、うっとりするほど素敵でした~。スーパーモデルのクラウディア・シファーが共演しているみたいです。

Ferragamostore_2

ちなみに、フェラガモのオフィシャルサイトでは、上海で行われたブランド設立80周年のイベントで踊ったロベルトの映像を見ることができます。鼻血モノです~。
http://www.salvatoreferragamo.it/jp/#folderId=/jp/experience/events&

このイベントのスライドショー。クリスティーナ・リッチもいます。
http://www.afpbb.com/article/entertainment/fashion/2372639/2794926

いつもお世話になっているamicaさんの「ロベルト・ボッレのバレエな日々」にこのあたりの情報がいっぱい載っているのでどうぞ!

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