8/30 新潟県中越沖地震チャリティーバレエガラコンサート 桶川公演
初めて行く桶川、とにかく遠かった!行きは比較的電車の乗継が良くて、1時間半でいけたのだけど、帰りは2時間かかってしまった。しかも帰りは例によって凄い雨。
公開ゲネプロが12時と芳賀バレエアカデミーから連絡があったので、11時半くらいに到着したら遅れて1時からになったとのこと。バーレッスンとセンターを少々見ることができた。さすがにみんな動きがきれい。3階席からの見学で、オペラグラスを忘れてきてしまったので細かいところまでチェックできなかったけど、一番真面目に取り組んでいたのはシリル・ピエールだった。センターでもピルエットは毎回7,8回は回っているし、トゥールザンレールの着地も美しい。イリヤ・クズネツォフも身体が大きいのに柔らかいし、つま先がめっちゃきれい。寺島ひろみさんや長澤美絵さんも美しいので目を引いた。柔軟性が凄かったのはエレーナ・コレスニチェンコ。あと、この人の動きはなんてきれいなんだろう、と思ったらそれは、ユリア・マハリナだった。参加していなかったのは、メルクリエフ、大嶋さん&松崎さん、イェブラ。イェブラは客席で弁当を食べていた(笑)
芳賀バレエアカデミーでキャスト表を作って配布してくれたのは良かったのだけど、けっこう間違いが多くて。薔薇の精でイリヤ・クズネツォフって書いてあったのにはちょっとひっくり返りそうになってしまった。それと、ゲネプロ中に高橋晃子さんが怪我をしてしまって、今日は降板。桶川市民ホールは新しくてきれい、とても見やすかったのだけど、床がとても硬そうだ。
物販で売っていたDVDは、インペリアル・ロシア・バレエ団の「白鳥の湖」と「ドン・キホーテ」。両方とも、主演がアリヤ・タニクパエワ。「ドン・キホーテ」はキリル・ラデフがバジルだった。PALフォーマット。「ドン・キホーテ」を買って観たのだけど、アリヤのキトリはとても良い!
ところで、奈良から帰ってきてから、右腕がずっとひどくしびれていて、パソコンで字を打つのがとてもキツイ。腕がちゃんと動いてくれない。通っているバレエ教室の発表会が昨日あって(観に行ったけど、出演はしていない)、8月の平日の大人クラスがお休みになってしまったことで、1ヶ月ほどバレエをお休みしていた。運動不足というのもあるかもしれない。というわけで、いつも以上に遅筆です。
第一部
海賊(2幕)アリヤ・タニクパエワ、ミハイル・マルティニュク
アリヤのメドーラは、フューシャ・ピンクのハーレム・パンツ型。気品と愛らしさを備えた、素敵なメドーラだった。ちょっと安藤美姫似?後ろからアリにサポートされてポーズしている姿がきれい。ヴァリエーションは、フィリピエワのときと違っていて、ABTの「海賊」で使っていたのと同じもの。フェッテはゆっくりだけどとても丁寧。
ミーシャのアリ、普通に上手いんだけど、YouTubeでの映像の彼の方が良かったかな。ちょっとお疲れ気味だったかもしれない。彼は、ポーズのきめ方はすごくカッコいいというかツボを押さえている。
ライモンダ ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・メルクリエフ
またまた長いマントで登場のメルクリエフ。奈良の時から髪を少し切ったみたいで、麗しさアップ。しかしマントがとても長いので、引っかかるんじゃないかと時々ひやっとしちゃった。全幕の場合にはすぐに外しちゃうみたいなんだけど、ずっとつけたまま踊るのはちょっと大変そう。それでも、そのマントをはためかせて走る姿は美しい~。今回、彼は相当日本でファンを増やしたんじゃないかと思う。ステパネンコのライモンダも、姫らしい気品がたっぷりで、場を支配する力がすごい。そのステパネンコに負けない存在感があるから、メルクリエフも貫禄が出てきたってことかしら。
薔薇の精=さいとう 美帆、アントン・コルサコフ
さいとうさんはとても丁寧に可愛らしく踊っていたけど、最初の登場のところでちょっと躓いたのが惜しい。アントンは、奈良で見たときより丸くなっていて、調子もちょっと悪そう。いっぱいいっぱいな感じだった。それでも、彼の薔薇の精って雰囲気はとっても素敵なのだ。白い肌に赤い頬とくちびる、つぶらな瞳、髪に飾ってある薔薇の花も似合っていて、ギリシャ神話を描いた絵画に出てきそうな、美少年顔。
白鳥の湖(2幕)シリル・ピエール、ダリヤ・スホルコワ
この二人の「白鳥の湖」はやっぱり素敵。シリルはサポートに専念しているけど、非常にサポートは上手いし、愛があるんだな、この二人には。軍服チックな衣装もよく似合う。そしてスホルコワの脚と甲!これだけ美しい脚を持っているバレリーナってそうそういないのでは?痩せすぎてもいなくて、適度に女らしい体型、小さな顔。そして、大人な感じの、悲劇性漂う白鳥で、儚く美しかった。全幕を見られる機会があるといいな。マリインスキーも、良いバレリーナを手放しちゃったんだなって思った。
赤の肖像=オクサーナ・クチュルク
女性一人が踊るコンテンポラリーのソロ作品としては、すごく見ごたえがあって面白い演目。激しく美しく、情熱とほんの少しの狂気がほとばしる。腕をもう一方の手でパシっと叩いたり、クラシックバレエのテクニックがベースだけどマッツ・エックみたいなところもあり。クチュルクもボルドーに移籍して、成熟してさらに魅力的なバレリーナになったと思う。
Rain=松崎 えり、大嶋 正樹
松崎えりさんの振付は、オリジナルな才能を感じさせてくれる。二人とも、決して向き合わないで、同じ方向を向いたり背中合わせになったり。その辺で微妙なすれ違いを表現しているのかと。Rainというタイトルも、雨粒を感じているかのような松崎さんの演技で伝わってきた。大嶋さんの上半身のしなやかな動きがきれい。これからも彼の踊りを観る機会がもっとあるといいな。
眠れる森の美女=寺島 ひろみ、アンドレイ・メルクリエフ
今日は嬉しいことに、ヴァリエーションまでしっかりあった!ひろみさんのキラキラのオーロラは初々しくて愛らしい。それに、腕の動きの微妙なニュアンスもとても丁寧で、柔らかで。音楽性も豊かで、音符を奏でているかのよう。そしてもちろん、アンドレイのデジレも、絵に描いたような王子様。サポートは、一箇所メルクリエフが方向を間違えたみたいだけど、あとは問題なし。ぜひ、新国立劇場でアンドレイをゲストに、ひろみさんの「眠れる森の美女」を上演して欲しいなと思った。
白鳥XXI=イーゴリ・イェブラ
イーゴリ・イェブラというダンサーの魅力を余すところなく伝えているこの作品。彼のアラベスクの、なんて伸びやかでしなやかで美しい曲線を描いていること。力強く、雄雄しく羽ばたき、力強く飛翔しつつも、限りある命の儚さを伝えている動き。こういう作品は、これくらい美しい人じゃないと、様にならないなとも感じた。
マノン(第一幕エレジー)=ユリヤ・マハリナ、イリヤ・クズネツォフ
「マノン」のエレジーって、そんなに派手な場面ではなく、ガラなどで上演されることも少ないと思う。だけどこうやって改めて観てみると、リフトがものすごく多く、またリフトされたマノンが体勢を左に右に変えていくので、非常に難しい作品であることがわかる。そこをいかに滑らかに躍らせるかということで、デ・グリューの実力がわかるというもの。イリヤは本調子ではないようだったけど、熱い視線、若々しい恋情、素敵なデ・グリューだった。マハリナも、ドラマティック・バレリーナの本領を発揮していて美しい。彼ら二人の「マノン」を全幕で観る機会はもうないだろうなと思うと、寂しい。
第二部
海賊(1幕 ランケデムとギュリナーラのグランパドドゥ)=寺島 まゆみ、芳賀 望
このペアでこの演目を何回も踊りこんでいるためか、非常に安定感があるし、息もぴったり。まゆみさんもひろみさん同様、指先の動きで細かなニュアンスを出せる人。華奢な身体のどこにこんなパワーがあるのか、跳躍が高くてきれいだし、たおやかでありながら、テクニックもある。芳賀さんのランケデムははまり役。地元公演ということもあって、張り切って技を決めていた。あとはフィニッシュで流れるところがなくなれば。新国立劇場で、ぜひ「海賊」全幕を上演して欲しいと思う。マイレンはガラや発表会でよくアリを踊っているし、あの美しいコール・ドでの花園のシーンもきっと素敵だろう。
新作Ⅱ=松崎 えり、大嶋 正樹
松崎えりさんによるほやほやの新作。赤いプリントの上着の大嶋さんと、ベージュのビスチェの松崎さん、二人とも同じようなだぼっとしたパンツ。松崎さんの振付は、やっぱりヨーロッパ的なコンテンポラリーを感じさせるもの。今回は音楽は歌入り。二人ともなめらかな動きが美しい。大嶋さんの怪我からの回復は順調なようで、とても雄弁に身体で語ってくれた。本当に踊りたくてたまらなかったんだろうな、って思った。二人のダンサーが、決して交わらなくて距離があるところが、いろいろなことを考えさせてくれる。
シェヘラザード=イリヤ・クズネツォフ、エレーナ・コレスニチェンコ
エレーナ・コレスニチェンコのゾベイダが下手で杯を持って横たわっているところから始まる。このエレーナ・コレスニチェンコが、細いのに凹凸はしっかりあるという素晴らしいプロポーションで、非常に色っぽいし美人。やっぱりこの役は、これくらいグラマーな人のほうが似合う。身体をくねらせる時の曲線はやばいくらいの妖艶さ。イリヤの黄金の奴隷。跳躍などを見る限りはやっぱりちょっと不調そうで、奈良のときのほうが出来が良かった気がするけど(ちょっと太った?)、演技のほうはとにかく濃厚で、セクシーで、獰猛でありながら従順さも見せ、ふるいつきたくなるくたいセクシーだった。床の状態があまりよくないようだったけど、足音は全然させないところはさすが。とにかく二人のビンビンの気合とめくるめく官能の世界は十分伝わってきた。絶好調の時のイリヤのシェヘラザード全編が観たい!
アダージョ=アンドレイ・メルクリエフ
急遽追加になったこの演目。振付は誰なのかしら?(「アダージョ」振付:アレックス・ミロシュンチェンコ 、音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ、とのこと。)ブルーの衣装で、髪を下ろしたメルクリエフも、またとっても美しい。彼の美しい動きに酔ったひと時。彼はいつからこんなに素晴らしいダンサーになったのかしら。去年のボリショイ・マリインスキー合同ガラの時にイは、まだまだだったのに。
アゴン=シリル・ピエール、ダリヤ・スホルコワ
スホルコワの美しい脚を堪能。ストラヴィンスキーの難解なスコアにも音がぴったり合っている。二人のコンビネーションも大変良くて、見ごたえたっぷりの演目だった。ダリヤの美しい肢体を、最もきれいに見せる場所にシリルが導いているのが判る。
Ne me quittes pas=アンナ・パシコワ
青いホルターネック、背中の大きく開いたロングドレスのパシコワ、美しい~。ジャック・ブレルの曲。作品としては先ほどのクチュルクのほうがインパクトがあったし、ちょっと印象的に似通った部分もあるけど、二人のバレリーナの持っている性質の違いはよく感じられた。「ドン・キホーテ組曲」でも見せた女っぷりのよさが、ここでも存分に発揮。
くるみ割り人形(パ・ド・ドゥ)=アリヤ・タニクパエワ、ミハイル・マルティニュク
アリヤは、奈良ではチュチュだったと思うんだけどここではオレンジピンクのふんわりとした膝丈のドレスに、ちょこんとティアラを乗せていた。ミーシャは、奈良で失敗したリフトを若干変更し、今回はミスなく乗り切った。彼のくるみ、奈良の時よりずっと良い。特にヴァリエーションの時のはつらつとしたシソンヌや、正確なピルエットが観ていて気持ちよい。とにかく可愛く好感度の高いカップル。
ロミオとジュリエット(バルコニー)=オクサナ・クチュルク、イーゴリ・イェブラ
息が止まりそうになるくらい美しい二人。イェブラの高く柔らかな跳躍には、恋の高ぶりでどこまでも上昇しそうな気持ちが込められているし、初々しくちょっとはにかんだクチュルクのジュリエットは可愛らしい。とても爽やかで、恋に落ちたばかりのどきどきする思いが、とどまるところを知らずにあふれ出ている。こんなにまっすぐに愛し合って幸福感でいっぱいの二人に、悲劇が待っているんだと思うだけで、胸が張り裂けそうになるくらい。この二人が主演してのボルドーの「ロミオとジュリエット」、来日公演熱望!
瀕死の白鳥=ユリヤ・マハリナ
マハリナの瀕死の白鳥は、生きようともがいたり戦ったりすることもなければ、諦念もなく、美しく誇り高い生き物が静かに、しかし絶望し苦しみながら死んでいく様子を、ドラマティックに演じていた。こんな瀕死の白鳥を踊れるのは、彼女だけだと思う。こうやって、彼女の舞踊人生を物語るかのような4分間のドラマを見られる幸せ。
♪フィナーレ: ドン・キホーテ(組曲)ガリーナ・ステパネンコ、アントン・コルサコフ、アンドレイ・メルクリエフ、エレーナ・コレスニチェンコ、アンナ・パシコワ、日本人ダンサー2名他、全員
奈良公演では、アントン・コルサコフがバジルの踊りを全部踊ったというのに、新潟では様々なダンサーが入れ替わり立ち代り彼のパートを踊ったという。今回はどうなるかな、と思ったら入れ替わりヴァージョンだった!
酒場のあんちゃん二人、大島さんとミーシャ。今回はミーシャはバンダナなしでバジルっぽい衣装。背格好も同じくらいだし(ミーシャの方が若干大きい)、悪がき二人って風情。イェブラとクチュルクはロミジュリの衣装のまま(着替える時間がなかったかな?)、シリルとダリアはバジルとキトリ風の衣装にお着替え。シリルは背が高いのでこういう格好は似合う。ウェイターはイリヤとイェブラなんだけど、イリヤもバジルっぽい衣装で、イェブラはロミオの衣装のまま、腕まくりをしてお酒を配っているので、なんだかとても笑える。イェブラはあんなにハンサムなのに、テーブルの上に飛び乗ってジャンプしたり、とてもノリがいい。
パシコワとコレニスチェンコの美人姐さんたちの、エスパーダをめぐっての戦いは今日もカッコよかった。パシコワが赤系の衣装で、コレニスチェンコは大きなストールを巻いている。二人ともテーブルの上に乗って、華やかにメルセデスのソロを踊る。フラメンコのような対決、片方がエスパーダのマントを拾って振り回すが、落とすと今度はイリヤがそれを拾って、エスパーダよろしく素晴らしいマント捌きを披露。その間、ミーシャが隙あればとコレニスチェンコを口説こうとするところがまた面白い。
ガリーナ姐さんのものすごい勢いの飛び込みを受け止めたのは、腕まくりロミオのイェブラ。もうすぐで腕が地面につきそうなスレスレのところでの見事なキャッチ。
メルクリエフのエスパーダのキメキメぶりは今日もカッコよかった!ものすごく高くバットマンしてアッサンブレで着地してから後ろ足を後ろに移動させての決めポーズ、しびれるほどクール。そして同じ踊りをしようとしたアントンは、イリヤに受け止められちゃった。今回は、みんなのアントンいじりが炸裂していて、ある意味アントンはみんなのアイドルなのかな、なんて思ったりして。
黄色いチュチュから、赤と黒のチュチュに着替えたステパネンコ姐さん。アダージオでは、途中でパートナーがメルクリエフに交代。そしてゆっくりとした音楽の時にシリルにバトンタッチし、見事なリフト~フィッシュダイブを見せた。それからまた、隙あれば取って代わろうとする悪ガキのミーシャに交代すると見せかけて、またイェブラが姐さんの手を取る。そしてフィニッシュはイリヤ。そういうわけで、バジルっぽい衣装の男性ダンサーがいっぱいいた意味がよくわかったというわけ。ここでのレヴェランスは、ガリーナ姐さんを真ん中に、シリル、メルクリエフ、ミーシャ、イェブラ、そしてイリヤ、それにアントンという6人の男性が姐さんを奪い合うというものだった。お祭りじゃないと決して見られない豪華版!そして、こんなに途中でパートナーが代わっても、まったく平気で涼しい顔で踊ってしまうガリーナ姐さんって本当にすごい人なんだわ。
ヴァリエーションは今度こそはしっかりアントンが踊ってくれた。やっぱり本調子ではない模様で、スタミナも切れていたようだったけど、精一杯、一生懸命に踊っているのはよく伝わってくる。ガリーナ姐さんのキトリヴァリエーションは完璧。この人は、まず扇捌きが見事にカッコよく決まっていて、一番美しくダイナミックに見える角度を計算して踊っているとしか思えない。突き刺さるポアントといい、これほどのキトリは他にはいないだろう。
そしてグランフェッテも見事なものだった。前半はダブルが3回にトリプル一回。後半はシングルになったけど、フィニッシュではまたトリプル!コーダのピケも速い速い!姐さんには、衰えという言葉はまったく無縁だといえるだろう。
カーテンコールでは、ちびっこたちがダンサーに花を贈呈。すると、ダンサーたちは花を客席に投げ込んでくれた。今日も最高の公演だった!ラストの新宿公演が楽しみ♪こんなすごいガラを見逃す手はないと思う。体験しないと損だと自信を持ってお勧めできる。桶川は7割くらいの入りだったと思うけど、空席があるのが残念でならない。新宿はもっと客席をいっぱいにして、日本のバレエファンの心意気も見せたいと思った
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